説明

ディジタル位相同期装置

【課題】入力された正弦波と周波数が等しく、かつ位相が同期した正弦波を、簡易で正確に、出力する装置を提供する。
【解決手段】位相差検出回路1は、外部から入力された第一の正弦波と正弦波生成回路5より出力する第二の正弦波との位相差を、ディジタル信号処理により算出する。その算出値に基づいて第二の正弦波の位相と周波数を調整するので、正弦波生成回路5は入力された第一の正弦波に周波数が等しく、かつ位相が同期した第二の正弦波を簡易に正確に出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、入力された正弦波と周波数が等しく、かつ位相が同期した正弦波を出力するディジタル位相同期装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ回路において内部発振器にフィードバック制御をかけて、入力された正弦波と周波数が等しく、かつ位相が同期した正弦波を出力する位相同期回路(Phase Locked Loop:以後「PLL」という)が知られている。
【0003】
図7は、従来のPLLのブロック図である。従来のPLLは図7で示すように、位相比較器101、ローパスフィルタ102、電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator 、以後「VCO」という)103で構成されている。
【0004】
位相比較器101は、VCO103の出力である正弦波と入力された正弦波との位相を比較して、位相差信号を出力する。
【0005】
ローパスフィルタ102は、前記位相比較器101が出力した位相差信号を入力し、含まれる高周波成分及び雑音を除去してVCOの電圧制御信号として出力する。
【0006】
VCO103は、入力された電圧制御信号により発振周波数を制御する電圧制御発振器であり、ローパスフィルタ102から出力される電圧制御信号によって発振周波数を変化させ正弦波を出力する。その出力は同時に位相比較器101の一方の入力となる。
【0007】
VCO103の出力である正弦波の位相が、入力された正弦波の位相より進んでいれば発振周波数を下げて位相を遅らせ、遅れていれば発振周波数を上げて位相を進める。このように入力された正弦波との位相差をなくすようにVCO103を制御することで、入力された正弦波の位相と同期した正弦波を出力することができる。周波数を変更して位相を同期させているので、位相が常に同期している場合、周波数も一致している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のPLLはアナログ方式で、出力する正弦波の位相を入力正弦波の位相に同期させているため、出力した正弦波の振幅が一定にならないという不具合があった。なぜなら、入力される電圧によりVCO103が発振周波数を変化させることで、PLLはその出力する正弦波の位相を入力された正弦波の位相に同期させているが、このVCO103の出力には振幅に影響を与えるノイズが含まれていて、PLLの出力する正弦波の振幅にも影響を与えるからである。この不具合を解決するためには、回路が複雑化することと、量産時の再現性を保障できないという問題があった。
【0009】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、入力された正弦波と周波数が等しく、かつ位相が同期した正弦波を、簡易で正確に、出力する装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本願発明によって提供されるディジタル位相同期装置は、外部から第一の正弦波を入力する正弦波入力手段と、第二の正弦波を生成する正弦波生成手段と、前記第一、第二の正弦波をそれぞれ第一、第二の正弦波信号データにA/D変換する変換手段と、前記第一、第二の正弦波信号データの位相差を演算する位相差演算手段と、前記位相差演算手段により演算された位相差に基づいて位相オフセット調整を行い、前記第二の正弦波の位相を、前記第一の正弦波の位相に同期させる位相調整手段と、前記第二の正弦波の位相角速度を変化させることにより、前記第二の正弦波の周波数を前記第一の正弦波の周波数に一致させる周波数調整手段と、前記位相調整手段および周波数調整手段により調整された前記第二の正弦波を出力する出力手段とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
この構成によれば、外部から入力された第一の正弦波と正弦波生成手段で生成された第二の正弦波の位相差を、ディジタル信号処理により算出して、その算出値に基づいて第二の正弦波の位相と周波数を調整するので、第一の正弦波と周波数が等しく、かつ位相が同期した第二の正弦波を、簡易で正確に、出力することができる。
【0013】
好ましい実施形態によれば、請求項1に記載のディジタル位相同期装置において、前記位相差演算手段は、前記第一の正弦波信号データx[k]と第二の正弦波信号データy[k]の位相差を式(1)〜(7)により算出する(請求項2)。
【0014】
【数3】

ここで、「x’[k]」,「y’[k]」はそれぞれx[k] ,y[k]を微分した信号データ、「A1」,「A2」はそれぞれx[k] ,y[k]の振幅値を示す。また、「ω」は位相角速度を示し、「k+1」は、サンプリングデータの時間軸上の位置kに対して1つ後の時間軸上の位置を示し、「k−1」は、上記kに対して1つ前の時間軸上の位置を示す。
【0015】
【数4】

【0016】
この構成によれば、変換手段から出力される2つの信号データx[k],y[k]と、これらを微分して得られる2つの信号データx’ [k],y’ [k]とを用いて、位相差演算手段により、入力される2つの交流信号の位相差を正確に求めることができる。
【0017】
本願発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、本願発明に係るディジタル位相同期装置のブロック図である。
【0020】
ディジタル位相同期装置は、図1で示すように、位相差検出回路1、位相オフセット調整回路2、位相角速度調整回路3、内部発振回路4、正弦波生成回路5により構成されている。
【0021】
位相差検出回路1は、外部から入力された信号と正弦波生成回路5より出力され当該位相差検出回路1に帰還される信号との位相差を検出し、検出した位相差データを位相オフセット調整回路2および位相角速度調整回路3に出力する。外部から入力された信号を基準として、位相を同期させた信号を正弦波生成回路5で生成するので、以後、外部から入力された信号を「基準波」、正弦波生成回路5より出力され当該位相差検出回路1に帰還される信号を「内部生成波」という。
【0022】
図2は、位相差検出回路1の内部構成を示すブロック図である。
【0023】
位相差検出回路1は、2つのA/D変換回路11,12、2つの微分演算回路13,14、算出演算回路15、数式演算回路16により構成されている。
【0024】
A/D変換回路11は外部から入力されたアナログ信号である基準波をディジタル信号に変換して、所望の周波数の信号データである基準波信号データx[k]を抽出して出力するものである。A/D変換回路12は正弦波生成回路5から入力されたアナログ信号である内部生成波をディジタル信号に変換して、所望の周波数の信号データである内部生成波信号データy[k]を抽出して出力するものである。
【0025】
微分演算回路13は、A/D変換回路11から入力された基準波信号データx[k]を微分して微分基準波信号データx′[k]を出力するものである。微分演算回路14は、A/D変換回路12から入力された内部生成波信号データy[k]を微分して微分内部生成波信号データy′[k]を出力するものである。算出演算回路15は、外部から与えられた周波数情報に基づいて1/[2sin(ω) ]を演算により求め、その値を各微分演算回路13,14に出力するものである。数式演算回路16は、A/D変換回路11,12から入力された基準波信号データx[k]と内部生成波信号データy[k]、微分演算回路13,14から入力された微分基準波信号データx′[k]と微分内部生成波信号データy′[k]に基づいて、下記に示す(12)〜(14)式を演算するものである。
【0026】
まず、微分演算回路13,14には、式(8)、(9)に示す基準波信号データx[k]及び内部生成波信号データy[k]が入力される。
【0027】
【数5】

【0028】
ここで、A1は基準波信号の振幅値であり、A2は内部生成波信号の振幅値である。また、「ω」は位相角速度であり、「k」はA/D変換回路11、12によるサンプリングデータの時間軸上の位置を示す。
【0029】
次いで、微分演算回路13,14では、基準波信号データx[k]及び内部生成波信号データy[k]に基づいて各信号データにおける直交成分x′[k],y′[k]が以下の演算式(10)、(11)により求められる。
【0030】
【数6】

【0031】
そして、各信号データx[k],y[k]および、これらにおける直交成分x′[k],y′[k]は、数式演算回路16に入力され、下記に示す演算式(12)、(13)に基づく演算が行われることにより、cos(φ),sin(φ)が求められ、演算式(14)により位相差φが求められる。
【0032】
【数7】

【0033】
なお、cos(φ),sin(φ)は、以下のようにして求められる。ここでは、アナログ信号として正弦波x(θ),y(θ)を考えると、x(θ),y (θ)は以下の(15)、(16)式で表される。
【0034】
【数8】

【0035】
ここで、x(θ),y(θ)を微分した値x′(θ),y′(θ)は、は、それぞれ以下の(17)、(18)式で表される。
【0036】
【数9】

【0037】
また、α=θ、β=θ−φとすると、α−β=φとなる。そのため、sin(φ) ,cos(φ) は、それぞれ以下の(19)、(20)式で表される。
【0038】
【数10】

【0039】
そして、(15)〜(18)式を変形してそれぞれ(19)式、(20)式に代入すると、sin(φ) ,cos(φ) は、それぞれ以下の(21)、(22)式で表される。
【0040】
【数11】

【0041】
このように、位相差検出回路1では、入力される基準波信号データ、内部生成波信号データおよび周波数情報から、ディジタル信号処理により、上記した演算式(8)〜(14)を用いて基準波と内部生成波との位相差φを求めるので、正確にかつ高速に位相差を求めることができる。
【0042】
なお、実際には内部生成波信号データは(9)式において位相角速度ωも異なってくるので、上記により求めた位相差ph0により位相オフセット調整を行い、更に求めた位相差ph1に基づき位相角速度ω’を増減してωに近づける。これを繰り返すことで内部生成波の位相が基準波に同期され、内部生成波の周波数が基準波の周波数と一致する。具体的には以下のように行われる。
【0043】
内部生成波の位相角速度をω’(=ω−Δω:Δω>0)とすると、内部生成波信号デ
ータy[k]は(23)式となり、この式を変形すると(24)式となる。k=k1のとき、(24)式の内部生成波信号データy[k]と(8)式の基準波信号データx[k]との位相差を検出すると、ph0=φ+Δω・k1となるので、この位相差ph0(内部
生成波が基準波より遅れている位相差)を内部生成波の位相に加えることで位相オフセット調整を行うと、(25)式となり、この式を変形すると(26)式となる。次に、k=k2(k2>k1)のとき、(24)式の内部生成波信号データy[k]と(8)式の基準波信号データx[k]との位相差を検出すると、ph1=Δω(k2−k1)となる。
Δω>0、k2>k1なのでph1>0となり、ω’を増加させる。ω’がωと一致する
までこれを繰り返すことで、内部生成波の位相が基準波に同期され、内部生成波の周波数が基準波の周波数と一致する。
【0044】
【数12】

【0045】
図1に戻って、位相オフセット調整回路2は、位相差検出回路1が出力する位相差データを位相オフセット調整データに変換して出力する。このデータ変換は、0〜2πの値となる位相差データを、図3(a)に示す位相情報アドレスのビット数nに対応した0〜2n−1の値に変換する。例えば、1/2πは2n-2−1,πは2n-1−1となる。実際は2進数となるので1/2π、πは上位2ビットがそれぞれ01,10でそれ以外が0となる。また、位相差検出回路1が出力する位相差データφは、内部生成波が基準波より遅れている位相差であり、逆に内部生成波が基準波より進んでいる場合はマイナスとなるので、2π+φを位相差データとすることで、内部生成波が基準波より遅れている位相差とすることができる。
【0046】
位相角速度調整回路3は、位相差検出回路1が出力する位相差データがプラス、すなわち、内部生成波の方が基準波より位相が遅れている場合は1、位相差データがマイナス、すなわち、内部生成波の方が基準波より位相が進んでいる場合は−1を位相角速度調整データとして出力する。
【0047】
内部発振回路4は、正弦波生成回路5の同期を取るための基準クロックを発生させる発振源である。
【0048】
正弦波生成回路5はいわゆるダイレクトディジタルシンセサイザ(以下、「DDS」という)であり、位相オフセット調整回路2と位相角速度調整回路3からの入力により、正弦波を生成し内部生成波として出力する。また、正弦波生成回路5の出力である内部生成波は基準波との位相差を検出するために、位相差検出回路1に入力される。
【0049】
DDSは1周期分の波形の振幅データを波形メモリに記憶してあり、波形メモリのアドレスを指す位相情報アドレスを変化させることで、出力する波形の周波数と位相を調整する。本願の正弦波生成回路5は、波形メモリに正弦波の振幅データを記憶している。位相情報アドレスの増加量がNの場合、位相情報アドレスは基準クロックごとに0、N,2N,3N,…と増加していく。また、nビットで構成されている位相情報アドレスは2n−1、すなわちnビットを超えると、オーバーフロー分は無視して下位nビットだけを用いるので、2n−1の次に0に戻る。よって、図4(a)のように位相情報アドレスの増加量が常にNの場合、その入力に対して、波形メモリへの出力である位相情報アドレスは基準クロックごとにN増加し、図4(b1)のようなのこぎり波となる。また、図3(b)に示すように、波形メモリはnビットで構成される各アドレスに正弦波の振幅を、1周期分、位相の順に格納している。よって、位相情報アドレスであるのこぎり波入力による波形メモリの出力は、正弦波の振幅に相当するディジタル値となる(図4(b2)参照)。この出力をアナログ変換して、正弦波を出力する。
【0050】
ここで、位相情報アドレスの増加量が大きい場合、位相情報アドレスが2n−1に達する間隔が短くなる。つまり出力正弦波の周期は短くなり、周波数が大きくなる(図4(c1),(c2)参照)。また、初めの位相情報アドレスをN’にすると、出力正弦波の位相はその分進むことになる(図4(d1),(d2)参照)。
【0051】
図5は正弦波生成回路5の内部構成を示すブロック図である。正弦波生成回路5は、位相演算回路51、波形メモリ52、D/A変換回路53、フィルタ54により構成されている。
【0052】
位相演算回路51は、位相角速度調整回路3より入力した位相角速度調整データと、位相オフセット調整回路2より入力した位相オフセット調整データとから、内部発振回路4による基準クロックに同期して、位相情報アドレスを決定し出力する。
【0053】
位相演算回路51は、位相角速度データレジスタ511、位相累算回路512、位相オフセット加算回路513により構成されている。
【0054】
位相角速度データレジスタ511は、位相角速度調整回路3より入力された位相角速度調整データを、設定している位相角速度データに加算したうえで出力する。位相角速度データレジスタ511には、初期設定の周波数に応じた値を初期値として設定してあり、入力された位相角速度調整データの値により位相角速度データを1ずつ増減する。この位相角速度データが、先述の位相情報アドレスの増加量に該当し、位相角速度調整データにより正弦波生成回路の出力正弦波の周波数を微調整することになる。ここで、位相情報アドレスがnビットで構成されていて、位相情報アドレスの増加量がNの場合、位相情報アドレスは2n/N回の基準クロックを1回の周期としてオーバーフローする(図4(b1)参照)。すなわち、基準クロックの周波数をfclk[Hz]とすると、正弦波生成回路の出力正弦波の周波数はfclk*N/2n[Hz]となり、Nが1増加すると、fclk/2n[Hz]増加する。
【0055】
例えば、位相情報アドレスが32ビットで構成されていて、内部発振回路4の周波数が50MHzの場合、1単位が約0.012Hzとなる。位相情報アドレスのビット数により1単位の周波数が変わり、ビット数を大きくすることで精度の高い周波数調整ができる。また、初期設定周波数が10MHzの場合、位相角速度データは10MHz/0.012Hzで約869565217となり、この整数値が位相角速度データレジスタ511の初期値として設定されている。
【0056】
位相累算回路512は、内部発振回路4からの基準クロックに同期して、位相角速度データレジスタ511が出力する位相角速度データを累積加算し、位相情報アドレスとして出力する。例えば、位相角速度データがNの状態が続いている場合、基準クロックごとにN,2N,3N,…を出力し、2n−1の次に0に戻るのこぎり波出力となる(図4(b1)参照)。
【0057】
位相オフセット加算回路513は、位相累算回路512が出力する位相情報アドレスに位相オフセット調整回路2が出力する位相オフセット調整データを加算して出力する。内部生成波が基準波より遅れている位相を加えることで、内部生成波の位相を基準波に合わせる。例えば、位相オフセット調整データがN’=2n-2−1(1/2πに相当)の場合、通常0から始まる位相情報アドレスがN’から始まって、図4(d1)のようになり、この入力による後述の波形メモリ53の出力は、図4(d2)のように、位相が1/2π進むことになる。
【0058】
波形メモリ52は、位相演算回路51が出力した位相情報アドレスに基づき、該当するアドレスに格納されていた正弦波の振幅データを波形データとして出力する。
【0059】
D/A変換回路53は、内部発振回路4からの基準クロックに同期して、波形メモリ52が出力する波形データをD/A変換して、正弦波を出力する。
【0060】
フィルタ54は、D/A変換回路53が出力した正弦波から不要波(スプリアス)を除去して出力する。
【0061】
こうして、正弦波生成回路5の出力である内部生成波と外部から入力された基準波との位相差を、位相差検出回路1で検出し、その位相差をなくすように正弦波生成回路5をフィードバック制御して内部生成波を生成することで、基準波と周波数が等しく、かつ位相が同期した正弦波を出力することができる。
【0062】
次に、検出した位相差により位相と周波数を同期させる制御の処理手順について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0063】
位相差検出回路1からの出力である位相差ph0(内部生成波と基準波の位相差、内部生成波のほうが遅れている場合プラスになる)を検出し(S1)、ph0が0かどうか判別する(S2)。ph0=0(ステップS2:YES)の場合、すなわち内部生成波と基準波の位相があっている場合、位相を同期する必要がないので、ステップS4に進む。ph0≠0(ステップS2:NO)の場合、内部生成波と基準波の位相を同期するために、正弦波生成回路から出力する内部生成波の位相をph0進める(S3)。
【0064】
ステップS3で位相を合わせても、周波数の違いによる位相差は残る。次に、この位相差ph1を検出し(S4)、ph1が0より大きいか否かを判別する(S5)。ph1>0(ステップS5:YES)の場合、すなわち内部生成波の位相が基準波の位相より遅れている場合、内部生成波の位相角速度が小さいので、正弦波生成回路の位相角速度を増加させ(S6)、ステップS1に戻る。ph1<=0(ステップS5:NO)の場合、更にph1が0より小さいか否かを判別する(S7)。ph1<0(ステップS7:YES)の場合、すなわち内部生成波の位相が基準波の位相より進んでいる場合、内部生成波の位相角速度が大きいので、正弦波生成回路の位相角を減少させ(S8)、ステップS1に戻る。ph1=0(ステップ7:NO)の場合、内部生成波の位相が基準波の位相と同期しているので、そのまま位相角速度を変えずに、ステップS1に戻る。
【0065】
これを繰り返すことで、位相が基準波に同期され、内部生成波の周波数が基準波の周波数と一致する。
【0066】
上記のように、本実施形態によれば、入力された正弦波と周波数が等しく、かつ位相が同期した正弦波を、簡易で正確に、出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本願発明に係るディジタル位相同期装置のブロック図である。
【図2】位相差検出回路1の内部構成を示すブロック図である。
【図3】位相情報アドレスと波形メモリを説明するための図である。
【図4】DDSの動作を説明するための図である。
【図5】正弦波生成回路5の内部構成を示すブロック図である。
【図6】検出した位相差により、位相と周波数を同期させる制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】従来のPLL(位相同期回路)のブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
1 位相差検出回路
11,12 A/D変換回路
2 位相オフセット調整回路
3 位相角速度調整回路
4 内部発振回路
5 正弦波生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から第一の正弦波を入力する正弦波入力手段と、
第二の正弦波を生成する正弦波生成手段と、
前記第一、第二の正弦波をそれぞれ第一、第二の正弦波信号データにA/D変換する変換手段と、
前記第一、第二の正弦波信号データの位相差を演算する位相差演算手段と、
前記位相差演算手段により演算された位相差に基づいて位相オフセット調整を行い、前記第二の正弦波の位相を、前記第一の正弦波の位相に同期させる位相調整手段と、
前記第二の正弦波の位相角速度を変化させることにより、前記第二の正弦波の周波数を前記第一の正弦波の周波数に一致させる周波数調整手段と、
前記位相調整手段および周波数調整手段により調整された前記第二の正弦波を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする、ディジタル位相同期装置。
【請求項2】
前記位相差演算手段は、前記第一の正弦波信号データx[k]と第二の正弦波信号データy[k]の位相差を式(1)〜(7)により算出することを特徴とする請求項1に記載のディジタル位相同期装置。
【数1】

ここで、「x’[k]」,「y’[k]」はそれぞれx[k] ,y[k]を微分した信号データ、「A1」,「A2」はそれぞれx[k] ,y[k]の振幅値を示す。また、「ω」は位相角速度を示し、「k+1」は、サンプリングデータの時間軸上の位置kに対して1つ後の時間軸上の位置を示し、「k−1」は、上記kに対して1つ前の時間軸上の位置を示す
【数2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−221548(P2007−221548A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40845(P2006−40845)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】