説明

ディスプレイセル構造物および電極保護層組成物

本発明は、ディスプレイデバイス性能の向上のためのディスプレイセル構造物(20)および電極保護層を構成する組成物に関する。該組成物は、ガラス転移温度が約100℃より低い極性オリゴマーまたはポリマー材料を含んで成り、得られるディスプレイセル構造物または電極保護層は80ダルトン分子量当たり約1より小さい架橋点の平均架橋密度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイデバイスの性能を向上させるディスプレイセル構造物および電極保護層の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動ディスプレイ(EPD:electrophoretic display)は、溶媒中に懸濁した帯電色素粒子の電気泳動現象に基づく非発光型ディスプレイデバイスである。それは1969年に初めて提案された。このディスプレイは通常、スペーサーによって離隔されて相対向する電極を備えた二つのプレートを含む。そのうちの一つの電極は通常透明である。帯電した色素粒子が分散した着色溶媒を含む電気泳動流体が二つのプレート間に閉じ込められている。二つの電極間に電圧差を印加すると、色素粒子は一方の側または他方に移動するため、眺める側から色素粒子の色または溶媒の色が見える。
【0003】
改良されたEPD技術が米国特許第6,930,818号(WO01/67170に対応)、米国特許第6,672,921号(WO02/01281号に対応)、および米国特許第6,933,098号(WO02/65215号に対応)に開示されており、これらの開示事項は全て参照する事によって本明細書に組込まれる。これらの改良されたEPDセルは、リソグラフィ加工法によるか、または第一基材層上に被覆された放射線硬化可能な組成物層を、よく規定された形状、大きさ、およびアスペクト比を有するマイクロカップを形成するようにマイクロエンボス加工(microembossing)するかによって製造される。このマイクロカップを次に電気泳動流体で満たし、封止層で封止する。第二基材層を、この満たされかつ封止されたマイクロカップ上に、好ましくは接着剤層で、ラミネートする。
【0004】
米国特許第5,961,804号および第5,930,026号に開示されているマイクロカプセル型EPDは実質的にはマイクロカプセルの二次元アレイから成り立っており、その各々のマイクロカプセル中には誘電性溶媒の電気泳動流体および、その誘電性溶媒と視覚的なコントラストを示す帯電した色素粒子の懸濁物とを含む。このマイクロカプセルは、それ自身二つの電極間に挟持されている透明なマトリックスまたはバインダー中に固定化(immobilized)されてよい。
【0005】
全てのタイプの電気泳動ディスプレイにとって、画像(image)双安定性(bistability)は最重要課題の一つである。しかしある場合には、画像双安定性は逆バイアスが原因で悪化し得る。「逆バイアス」の用語は通常、電気泳動ディスプレイに用いられる誘電性物質のキャパシタ放電効果によって誘発される電圧を表現する目的で使われる。逆バイアスの極性は印加された駆動電圧の極性とは反対であるため、逆バイアスは粒子が意図した方向とは反対方向に移動する原因となり得る。そのため、ディスプレイ画像のコントラストと双安定性が劣ることとなる。逆バイアスの一例を図1に示す。印加電圧が+40Vから0Vに低下したときに電気泳動流体によって感知される電圧が「逆バイアス」と呼ばれ、その極性はネガティブ(印加電圧の極性と反対)である。
【0006】
上記の誘電性物質が通常、ディスプレイセル構造物および電極板および電気泳動流体との間の薄膜ポリマー層の形成に用いられる。マイクロカプセル型のディスプレイの場合そのポリマー層は、接着剤層、マイクロカプセル壁、マイクロカプセルに基づくディスプレイセルが分散しているポリマーマトリックス、またはタイレイヤー(tie layer)であり得る。マイクロカップ型ディスプレイの場合、ポリマー層は、接着剤層、封止層、マイクロカップおよび底面電極板との間の層(即ち、プライマー層)、またはタイレイヤーであり得る。ここで云う「ポリマー層」の用語はまた、本発明に関する限りにおいて、「電極保護層」または「誘電体層」と呼ぶこともあり得る。
【0007】
電気泳動ディスプレイの所望の電気的特性を達成するためには、ディスプレイセル構造物およびディスプレイのポリマー層の抵抗率を制御しなければならない。電気泳動ディスプレイの所望の電気的特性を達成するための基本原理は、電気泳動流体の抵抗率を高めること、ならびに/またはディスプレイセル構造物および/もしくはポリマー層の抵抗率を下げることを含む。電気泳動流体の抵抗率を高める余地は限られているものの、ディスプレイセル構造物および/またはポリマー層の抵抗率を下げることは、より期待し得る選択肢であると考えられる。
【0008】
米国特許第6,657,772号は、導体フィラーを接着剤組成物に混合することによって接着剤層の体積抵抗率を下げることができることを開示している。しかしながら、電気泳動ディスプレイに用いられる接着剤層に要求される約1010オーム・cmの体積抵抗率を達成するためには、このアプローチを採用することは非常に困難であることも、その特許は認めている。その特許は更に、導体フィラーの体積抵抗率は、最終ブレンドの意図された体積抵抗率より約2オーダー小さくあるべきではないとも述べ、約10から約1011オーム・cmの範囲の体積抵抗率を有する接着剤層は、少なくとも約5×1011オーム・cmの体積抵抗率を有する接着性物質と約10オーム・cm以上の体積抵抗率を有するフィラーとの混合物によってのみ達成し得るとクレームしている。
【0009】
誘電性物質中に導入され得る導体フィラーの大部分は透明ではなく、ディスプレイセル構造物およびポリマー層の組成物中に均一に分散するためには、面倒な粉砕(grinding)または磨砕(milling)を必要とする。フィラー粒子の凝集はまた、ディスプレイ上の画像の不十分な均一性、斑点形成、または時によっては回路の短絡のような好ましからざる結果を来たし得る。
【0010】
マイクロカップに基づく電気泳動ディスプレイの場合、マイクロカップ構造物または電極保護層への導体フィラー粒子の導入はマイクロカップの製造に問題を生ずる傾向がある。欠陥を有するマイクロカップが、マイクロカップ形成方法(例えば、マイクロエンボス加工またはフォトリソグラフィ露光)中の不十分なまたは不均一な露光によって発生し得る。更に、フィラー粒子の粒子寸法が、粒子を含む層の表面粗さまたは厚さの程度に較べて相対的に大きい場合には、特に導体フィラーの硬度が、使用するシム(shim)材料または導体フィルムの硬度より高い場合には、エンボス加工中にエンボスシム(embossing shim)または導体フィルム(ITO/PETなど)に損傷が観察されることがある。
【0011】
そのようなポリマー組成物から形成されるポリマー構造物の体積抵抗率を下げるために、従来は、低抵抗フィラー(金属酸化物およびポリエーテルブロックアミドエラストマー等)が、ポリマーの相互連結用またはパーコレーション(浸透性)ネットワーク形成用としてポリマー組成物中に添加されていた。しかしながら、この方式によるポリマー構造相互連結またはパーコレーションネットワークは常に、被分散相として低抵抗のフィラーを有する二相系である。光学的には、二相系はしばしばポリマー構造物の外観の変化(例えば、増加した不透明性)をもたらす。もし低抵抗のフィラーが十分に分散されていないと、形成されたポリマー構造物は暗い色を示す。更に、パーコレーションネットワークに基づくシステムは、フィラー粒子は互いに十分に接触してはいるが、システムの抵抗を支配するには十分ではなく、パーコレーション閾値を越えて、しかし依然としてパーコレーション閾値に近い低抵抗フィラーの充填をしばしば必要とする。その結果、システムの抵抗は連続相の抵抗から分散相の抵抗へとシャープに遷移する。実際において、システムが整合性のとれた確実に期待通りの電気的特性を達成するように処方することは難しいこともあり得る。なぜならばシステムの成功は、フィラー粒子の凝集構造および正確な充填量ならびにフィラー物質に由来する不純物量等の種々の因子に依存するからである。
【0012】
「発明の概要」
本発明はディスプレイデバイスの性能を向上させるためのディスプレイセル構造物および/または電極保護層の組成物に関する。
【0013】
更に詳しく説明すれば、電気泳動ディスプレイの性能が、ディスプレイセル構造物および/または電極保護層を極性オリゴマーまたはポリマー材料を含んで成る組成物から形成することによって向上し得ることが見出された。そのような極性オリゴマーまたはポリマー材料は、ニトロ基(−NO)、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COO)、アルコキシ基(−OR:Rはアルキル基)、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素)、シアノ基(−CN)、またはスルホン基(−SO)等の基の少なくとも一つを有するオリゴマーまたはポリマー材料を含んで成る群から選ぶことができる。極性オリゴマーまたはポリマー材料は組成物中の他の成分と相溶性でなければならず、また単に混合するだけで容易に加工することができる。
【0014】
極性オリゴマーまたはポリマー材料のガラス転移温度は好ましくは約100℃より低く、更に好ましくは約60℃より低い。なお、極性オリゴマー材料の場合、ガラス転移温度とは、溶媒蒸発または硬化等の処理後の材料のガラス転移温度を意味する。
【0015】
この組成物から形成されたディスプレイセル構造物および電極保護層は、好ましくは80ダルトン分子量あたり約1架橋点より小さい平均架橋密度、更に好ましくは120ダルトン分子量あたり約1架橋点より低い平均架橋密度を有する。
【0016】
極性オリゴマーまたはポリマー材料の濃度は、組成物の重量基準で約1%以上、好ましくは約3%以上、最も好ましくは約10%以上であり得る。
【0017】
そのような組成物によって、電気泳動流体の抵抗率の約1/1000〜100倍の意図する抵抗率を有するディスプレイセル構造物および/または電極保護層を達成し得る。
【0018】
ディスプレイセル構造物および/または電極保護層の抵抗率は約10〜1012オーム・cmの間にあり得て、その結果良好な電気絶縁特性を提供することができる。
【0019】
本発明の第一の要旨は、ディスプレイセル構造物および/または電極保護層の形成のための上述の組成物を対象とする。
【0020】
本発明の第二の要旨は、上述のような組成物からディスプレイセル構造物および/または電極保護層を形成することを含む電気泳動ディスプレイ性能の向上方法を対象とする。
【0021】
本発明の第三の要旨は、上述のような組成物から形成されるディスプレイセル構造物および電極保護層を含む電気泳動ディスプレイを対象とする。
【0022】
本発明は、本出願の背景技術の項で概要を説明した課題に対する解決策を提供する。第一に、本発明は鮮明なディスプレイセル構造物および/または電極保護層を製造するための単一相システムを含む。このディスプレイセル構造物および/または電極保護層の抵抗は組成物中における極性オリゴマーまたはポリマー材料の濃度と線形の相関を有し、その結果、形成されるディスプレイセル構造物および電極保護層の再現性、統一性(consistency)、および電気抵抗の微調整のし易さを確実なものとする。第二に、ディスプレイセル構造物および/または電極保護層の電気抵抗は、電気泳動流体の電気抵抗と同等かまたは低めに制御でき、その結果、逆バイアス問題を解消し、印加電圧の有効性を高める。本発明は更に、予備駆動(pre-drive)波形方式を含む他の方式よりも逆バイアスを解消するという点で優れている。なぜならば、本発明はバッチ単位での整合性を有し、その結果として製造過程中においてより高い許容性を有するからである。逆バイアスが無いと、ディスプレイの更新速度(update rate)を増加するために極めて簡単な駆動波形を使用することができる。有効電圧が高いほど、高いスイッチング速度が達成できる。更に重要なことには、本発明の組成物は配合が容易であり、広範な種々のディスプレイ用途に対応することができる。
【0023】
「発明の詳細な説明」
「定義」
本明細書において他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語は、当該技術分野の当業者が一般的に使用し、および理解する常套の定義に基づいて使用する。
【0024】
用語「マイクロカップ」は、米国特許第6,930,818号に記載されているように、マイクロエンボス加工法またはフォトリソグラフィ加工法のような方法によって形成できるカップ状の窪み(indentations)に使用する。この特許の開示事項は全て参照する事によって本明細書に組込まれる。
【0025】
用語「マイクロカップ」は本発明の具体的な実施態様を説明するために用いられるものの、本発明は電気泳動ディスプレイセルのあらゆるタイプに適用することができると理解すべきである。そのようなタイプのセルには、マイクロカップに基づくディスプレイセル、仕切り型(partition type)ディスプレイセル(エム エイ フーパー および ブイ ノボトニー、アイイーイーイー「トランスアクション エレクトロニック デバイス」第26巻(第8号):1148頁〜1152頁(1979年)(M.A.Hopper and V.Novotny,IEEE Trans. Electr. Dev.,26(8):1148−1152(1979))を参照)、マイクロカプセル型ディスプレイセル(米国特許第5,961,804号および5,930,026号)、およびマイクロチャンネル型ディスプレイセル(米国特許第3,612,758号)が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0026】
更に、本発明の有用性は電気泳動ディスプレイに限られるものではない。本発明は、他の方式のディスプレイデバイスであって、それが電流経路に誘電体層を有し、その誘電体層の抵抗を低下させることがディスプレイデバイスの性能を向上させるものである限り、そのようなディスプレイセル構造物および/または電極保護層にも適用できる。そのようなディスプレイデバイスの例には液晶ディスプレイが含まれる。
【0027】
用語「プライマー層」または「タイレイヤー(tie layer)」は本発明に具体的な幾つかの実施態様において用いるものの、本発明は、具体的に引用するプライマー層またはタイレイヤーにだけではなく、封止層、接着剤層、絶縁層、基材層、またはディスプレイデバイス中の他の同等な誘電体層にも適用できるものと理解すべきである。これらの層全体を総称的に、本願中では「電極保護層」または「誘電体層」と称する。
【0028】
「ディスプレイセル構造物および/または電極保護層」のような表現において用いる用語「および/または」は、説明する特定の特徴がディスプレイセル構造物または電極保護層のいずれかに当てはまるか、または双方に当てはまることを意味することを意図している。
【0029】
用語「電極保護層(複数でもよい)」は、ある特有の特徴が一つのまたは複数の電極保護層に当てはまることを意味することを意図している。この定義は、例えば「誘電体(複数でもよい)」のような表現にも当てはまる。
【0030】
用語「Dmax」はディスプレイの達成し得る最大光学密度を表す。
用語「Dmin」はディスプレイの達成し得る最小光学密度を表す。
用語「コントラスト比」はDmax状態に対するDmin状態の反射率(反射される光の%)の比を表す。
【0031】
用語「低抵抗」は電気泳動流体の抵抗率の100倍以下の抵抗率、または1012オーム・cmより小さい抵抗率を表す。低い低効率は恒常的な本体特性である。
【0032】
図2Aおよび2BはWO01/67170号に開示されているマイクロカップ法によって得られる典型的なディスプレイセルを表す。マイクロカップ系ディスプレイセル(20)は第1電極層(21)と第2電極層(22)との間に挟持されている。
【0033】
図に見られるように、薄層(23)がディスプレイセル(20)と第2電極層(22)の間に必要に応じて存在してもよい。薄層(23)はディスプレイセルと第2電極層との間の接着を改善するために有用なプライマー層であってよい。別の態様では、ディスプレイセルがエンボス加工法によって作成される場合には、薄層(23)はディスプレイセル材料の薄層であってよい(図2B参照)。
【0034】
プライマー層の厚さは通常約0.1〜約5ミクロンであり、好ましくは約0.1〜約1ミクロンである。
【0035】
ディスプレイセル(20)を電気泳動流体で満たし、ディスプレイセルの開放側を封止層(24)で封止する。第1電極層(21)を、封止されたディスプレイセル上に、好ましくは接着剤層(25)によってラミネートする。
【0036】
一つの実施態様では、マイクロカップ系電気泳動ディスプレイは第1電極層(21)側から眺められる。この場合、第1電極層(21)、封止層(24)、および必要に応じて用いられる接着剤層(25)は透明でなければならない。他の実施態様では、マイクロカップ系電気泳動ディスプレイは第2電極層(22)側から眺められる。この場合、第2電極層(22)、プライマー層(23)、およびディスプレイセル層は透明でなければならない。
【0037】
面内(in-plane)スイッチングEPDの場合、電極層(21または22)の一つは絶縁層で置き換えられている。
【0038】
ディスプレイセル構造物(例えば、マイクロカップ)はWO01/67170号に開示されているようなマイクロエンボス法またはフォトリソグラフィ法によって製造することができる。マイクロエンボス法においては、エンボス可能な組成物を第2電極層(22)の導体側に被覆し、その後加圧下に型押し(embossed)してマイクロカップアレイを形成する。この際、離型性を改良するため、エンボス可能な組成物を被覆する前に、電極層とセル構造物間の接着を増強するために導体層を薄いプライマー層(23)で予備処理してもよい。
【0039】
エンボス可能な組成物は、本発明に関していえば、極性オリゴマーまたはポリマー材料を含む。そのような極性オリゴマーまたはポリマー材料は、少なくともニトロ基(−NO)、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COO)、アルコキシ基(−OR:Rはアルキル基)、ハロゲン(即ち、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素)、シアノ基(−CN)、またはスルホン基(−SO)等の基の少なくとも一つを有するオリゴマーまたはポリマー材料から成る群から選ばれる。
【0040】
極性オリゴマーまたはポリマー材料のガラス転移温度は好ましくは約100℃より低く、更に好ましくは約60℃より低い。
【0041】
このような組成物から形成されるディスプレイセル構造物および電極保護層は、好ましくは80ダルトン分子量当たり約1つの架橋点より小さい平均架橋密度、更に好ましくは120ダルトン分子量あたり約1つの架橋点より小さい平均架橋密度を有する。適切な架橋密度は、組成物に異なる官能基分子量(functional molecular weights)を有する極性オリゴマーまたはポリマー材料を組み合わせることによって達成することができる。例えば、所望の架橋密度を達成するために、相対的に高い官能基分子量を有するオリゴマーまたはポリマー材料と他の低い官能基分子量を有するオリゴマーまたはポリマー材料とをブレンドしてもよい。
【0042】
適切な極性オリゴマーまたはポリマー材料の例としては、非制限的例としてポリヒドロキシ官能性化ポリエステルアクリルート(例えば、ビーディーイー(BDE)1025:ボーマー・スペシャリティ社(Bomar Specialties Co)、ウインステッド(Winsted)、CT)、またはエトキシル化ノニルフェノールアクリレート(例えば、SR504:サートマー社(Sartomer Company))、エトキキシル化トリメチロールプロパンアクリレート(例えば、SR9035:サートマー社)、またはエトキキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、SR494:サートマー社)のようなアルコキシル化アクリレートがある。
【0043】
極性オリゴマーまたはポリマー材料は組成物中の他の成分と相溶性があり、また単に混合するだけで容易に加工することができる。
【0044】
組成物中における極性オリゴマーまたはポリマー材料の重量%は、約1%以上、好ましくは約3%以上、最も好ましくは約10%以上であってよい。
【0045】
そのような組成物によって、電気泳動流体の抵抗率の約1/1000〜約100倍の意図する抵抗率を有するディスプレイセル構造物および/または電極保護層を達成できる。ディスプレイセル構造物および/または電極保護層は、約10から1012オーム・cmの間の所望の抵抗率を有することができる。実際上は、マイクロカップ構造物の底面が厚いほど、より低い抵抗率が要求される。
【0046】
許容できる架橋密度およびマイクロカップの良好な機械強度を確保するために、本発明のエンボス可能な組成物中に多官能性のモノマーまたはオリゴマーをも加えることができる。このことは、エンボス加工において離型する場合およびディスプレイセル構造物の機械的特性にとって特に重要である。必要な機械的特性と表面特性を達成しディスプレイセル構造物の寿命を確保するために、合理的に高いガラス転移温度を有するそのような多官能性モノマーまたはオリゴマーを、エンボス可能な組成物中の極性オリゴマーまたはポリマー材料の低いガラス転移温度を補償するために用いることができる。有用な多官能性モノマーおよびオリゴマーとしては、非限定的例として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、ユーシービー社(UCB))、5官能性モノマー(SR399、サートマー社(Sartomer Company))、ウレタンジアクリレート(CN983,サートマー社)、ポリエステルヘキサアクリレート(EB830、ユーシービー社)等がある。通常、そのような多官能性モノマーまたはオリゴマーを10%以上、組成物中に添加できる。
【0047】
必要に応じて、エンボス加工中または終了後の良好な離型性を確保するために、エンボス可能な組成物中に離型剤を添加する。そのような離型剤には限定的でない例として、シリコン界面活性剤(例えば、シルウエット(Silwet))またはシリコンアクリレート等のようなシリコン官能化された小分子、オリゴマーおよびポリマーが含まれ、好ましくは約0.01%〜約5%程度の濃度である。
【0048】
プライマー層組成物は、その層が存在する場合には、硬化後に少なくとも部分的にはエンボス可能な組成物またはマイクロカップ材料と相溶性を有する。実際、その組成物はエンボス可能な組成物と同じであってよい。したがって、ディスプレイのプライマー層(23)もまたディスプレイセル構造物用の上述の組成物から構成できる。
【0049】
必要に応じて、導体基材とマイクロカップ構造物への良好な接着性を確保するために、プライマー層組成物中に接着促進剤を添加することができる。そのような接着促進剤としては、非限定的例として、カルボキシル化アクリレート、ヒドロキシル化アクリレート、アクリル酸金属塩などを、好ましくは約0.1%から約15%の濃度で含み得る。
【0050】
必要に応じて、UV硬化工程が望ましいときにはUV硬化のために光開始剤をプライマー層および/またはエンボス可能な組成物中に含有することもできる。
【0051】
エンボス可能な組成物は好ましくは無溶媒で配合する。しかしながら、MEK等の溶媒を約5%以下の濃度で使用することもできる。
【0052】
固形成分は、組成物中の液体成分と最初に混合し、固形成分を完全に混合する。必要なら溶媒を添加してもよい。固形成分の溶解を促進するために超音波を使用してもよい。
【0053】
マイクロエンボス加工は、典型的には、エンボス可能な組成物のガラス転移温度より高い温度で実施する。加熱された雄型または型を押付ける加熱された型枠を、マイクロエンボス加工処理温度および圧力を制御するために用いてもよい。
【0054】
マイクロカップ(20)アレイを得るように、エンボス可能な組成物が固化する間に、または固化した後に離型する。エンボス可能な組成物の固化は冷却、放射線による架橋、または加熱等の機構で達成できる。エンボス可能な組成物の固化をUV照射で達成する場合には、透明な導体層を通してエンボス可能な組成物にUVを照射する。それに代えて、UVランプを型の内部に設置してもよい。この場合には、予めパターン形成された雄型を通してエンボス可能な組成物にUV光を照射できるためには、型は透明でなければならない。
【0055】
マイクロカップを電気泳動流体で満たした後に、米国特許出願第09/518,488号に開示されている方法のいずれの方法で封止してもよい。この特許開示事項は全て参照する事によって本明細書に組込まれる。簡単に云えば、電気泳動流体で満たされたマイクロカップ系セルがポリマー封止層で封止され、このポリマー封止層は封止組成物から形成できる。この封止組成物は前述のディスプレイセル構造物用のエンボス可能な組成物と同一であり得る。封止組成物は、電気泳動流体よりも低い比重を有することが好ましい。また、封止組成物は電気泳動流体と相溶性の無いことが好ましい。
【0056】
一方法として、封止は電気泳動流体の充填前に電気泳動流体中に封止組成物を分散させ、充填後には封止組成物は電気泳動流体の上部に透明層を形成し、その後、ポリマー封止組成物を溶媒蒸発、界面反応、湿気、熱、放射線またはこれらの硬化機構のいずれかの組合せによって固化することによって達成される。他の方法として、電気泳動流体を封止組成物で表面コーティングし、その後に溶媒蒸発、界面反応、湿気、熱、放射線またはこれらの硬化機構のいずれかの組合せによる固化によって封止を達成する。いずれの方法でもポリマー封止層はその場で固化する。
【0057】
封止されたマイクロカップを最終的に、接着剤層(25)を予め被覆しておいてもよい第1電極層(21)でラミネートする。なお、本発明の組成物は接着剤層の形成にも用い得る。
【0058】
本発明の組成物はディスプレイデバイスのタイレイヤー(tie layer)にも有用である。用語「タイレイヤー」は背面板(backplane)上に印刷され、被覆され、またはラミネートされた層を指す。背面板は、プリント回路基板(PCB)、フレキシブルプリント回路(FPC)、薄膜トランジスター(TFT)背面板、フレキシブルプリント電子背面板(printed electronic backplane)等であってよい。従来、ディスプレイパネルを背面板と一体にする前に、ディスプレイパネルを背面板にぴったりと、そして確実にラミネートするためには背面板を先に処理して平滑な表面を確保しなければならなかった。平滑な背面板表面を作るために、背面板表面のギャップまたは裂け目を通常、ポリ(エポキシ)またはフォトレジストのような材料で満たす。ある場合には、研磨が必要な場合もある。これらの工程は費用を要するものではないが、労力を要するものである。
【0059】
これらの工程は、しかしながら、本発明によって完全に省くことができる。例えば、平坦でない背面板の表面に本発明の組成物を印刷するか被覆し、引き続いてその組成物を硬化することによって、平滑な表面の背面板を得ることができる。組成物の背面板表面上への均等な分配を確かなものとするために、硬化する前に、被覆された組成物層の上に剥離層を(好ましくは押圧によって)配置することもでき、剥離層は硬化後に剥離される。
【0060】
タイレイヤーは二つの駆動電極間で追加的(extra)誘電体層として作用する。この追加的層は低抵抗を有するので、電気泳動分散物に対する有効電圧の損失または減少を防ぐ。更に、低抵抗材料は塗膜厚さの許容幅を広げ、その結果、方法の許容幅をも広げることができる。
【0061】
加えて、液体状(硬化前)である組成物は背面板表面の深いギャップまたは細かな裂け目にも到達し得る。この特性は、低抵抗とあいまって、隣接する電極によって生み出された電場が、埋められたギャップの真上の電気泳動分散体に到達するのを許容する。その結果、ギャップ領域のスイッチング性能はセグメント電極領域と類似なものとなり得る。ギャップ領域は、スイッチング作動中はもはや不活性ではないので、シャープで鮮明な画像を達成することができる。
【0062】
また、硬化した組成物を背面板表面にラミネートすることもできる。
【0063】
タイレイヤーは15μmまで、好ましくは10μmまでの厚みをとることができる。
【0064】
本発明の組成物を着色することもできる。着色は色素または染料を組成物に溶解または分散させることによって達成できる。タイレイヤーの場合には、異なる色の組成物を所望のように異なる領域において背面板表面に適用することができる。それに代えて、異なる色の硬化した組成物層を異なる領域の上にラミネートすることもできる。
【実施例】
【0065】
当業者が本発明をより明確に理解し、そして実施することができるようにするために、以下の実施例を提示する。それらの実施例は、本発明の範囲を何ら制限するものではなく、単に例示して代表するにすぎない。
【0066】
「調製例1」 反応性保護コロイドRf−アミンの合成
【0067】
【化1】

【0068】
17.8gのクライトックス(Krytox)(登録商標)メチルエステル(デュポン、分子量=約1780、g=約10)を、12gの1,1,2−トリクロトリフルオロエタン(アルドリッチ)と1.5gのα、α、α−トリフルオロトルエン(アルドリッチ)とを含む溶媒混合物中に溶解した。得られた溶液を、2gmのα、α、α−トリフルオロトルエンと30gの1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン中に7.3gのトリス(2−アミノエチル)アミン(アルドリッチ)を含む溶液中に室温で2時間、撹拌しながら滴下した。この混合物を更に8時間撹拌して反応を完結させた。粗生成物のIRスペクトルは1780cm−1のメチルエステルに基づくC=O振動の消失とアミド生成物に基づく1695cm−1のC=O振動の発現を明瞭に示唆していた。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、続いて100℃で4〜6時間、真空溜去した。粗生成物を次に50mlのPFS2溶媒(ソルベイ ソレキシス(Solvay Solexis)のパーフルオロポリエステル)中に溶解し、20mlの酢酸エチルで3回抽出し、その後乾燥して、精製した生成物(Rf−アミン1900)を17g得た。この生成物はHT200における卓越した溶解性を示した。
【0069】
同様な手順で、Rf−アミン4900(g=約30)、Rf−アミン2000(g=約11)、Rf−アミン800(g=約4)、Rf−アミン650(g=約3)等の異なる分子量を有する他の反応性Rf−アミンを合成した。Rf−アミン350も、クライトックス(登録商標)メチルエステルをCFCFCFCOOCH(シンクエストラボ(SynQuest Labs)、Alachua,Floridaから)で置き換えた他は同様な手順で調製した。
【0070】
「調製例2」 HT200中への色素のマイクロカプセル化
8.93gのデスモデュール(Desmodur)(登録商標)N3400脂肪族ポリイシアネート(バイエルAGより)を4.75gのアセトン(99.9%、バーディック&ジャクソン( Burdick&Jackson)より)中に溶解し、回転子−固定子(roter−stator)型ホモゲナイザー(アイカ ウルトラ−ターラックス T25(IKA ULTRA−TURRAX T25),アイカ ワークス(IKA WORKS))で周囲温度下10秒間均質化した。その溶液に13.61gのTiO(R706、デュポンより)を添加して2分間均質化した。得られたTiOの分散液に1.42gの1,5−ペンタンジオール(バスフ)、0.3gのトリエタノールアミン(99%、ダウ)、2.75gのポリプロピレンオキシド(MW=725,アルドリッチより)、及び1.25gのアセトンを含有する溶液を添加して、30秒間均質化した。次に、0.37gのジブチル錫ジラウレート(アルドリッチ)の2%アセトン溶液を添加し、1分30秒間均質化した。最後に、Rf−アミン4900(上記調製例1に従って製造した)2.25gを含有するHT−200(ソルベイ ソレクシス)の50gを添加し、4分間均質化した。得られたマイクロ粒子分散体は次に、マイクロ粒子を後硬化するために、一晩80℃に加熱下、低剪断力で撹拌した。
【0071】
このようにして調製したマイクロカプセル化されたTiO粒子を10重量%及びHT−200中の黒色染料3.3重量%添加して電気泳動分散液を調製した。
【0072】
「実施例1」
I.プライマー層を被覆した導体フィルムの製造
4.004gのアイロスティック(Irostic)S9815−18ポリウレタン(ハンツマン(Huntsman),Auburn Hills,MI)、0.554gの樹枝状のポリエステルアクリレートオリゴマーBDE1025(ボマースペシャルティ社(Bomar Specialties Co)、Winsted,CT)、0.25gの単官能性酸エステルCD9050(サートマー社(Sartomer Company)、Exton、PA)、0.096gの光開始剤サルキュア(Sarcure)SR1124またはITX(サートマー)、0.096gの光開始剤イルガキュア(Irgacure)369(チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Spexialty Chemicals),Tarrytown,NY)、45gの2−ブタノン(アルドリッチ,Milwaukee,WI)、40gの酢酸n−ブチル(アルドリッチ)、および10gのシクロヘキサノン(アルドリッチ)を含むプライマー溶液を、全ての成分が完全に溶解するまで混合した。
【0073】
このようにして調製したプライマー溶液をT#3ドローダウン・バー(drawdown bar)を用いて3ミル又は5ミル厚さのITO/PETフィルム(CPフィルム社、Martinsville、VA)上に被覆した。被覆したITOフィルムを80℃で10分間乾燥し、被覆面を硬化するために、その後冷却するか最小限光量の紫外光に曝した。
【0074】
II.プライマー層を被覆した導体フィルム上でのマイクロカップの調製
10.5gのエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート SR494(サートマー社、Exton,PA)、21.65gのエトキキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート SR502(サートマー)、10.5gのポリエステルヘキサアクリレート エベクリル(Ebecryil)830(ユーシービーケミカルズ(UCB Chemicals),Smyrna,GA)、4.93gのアミンアクリレート CN373(サートマー)、0.7gの光開始剤サルキュア(Sarcure)SR1124(ITX、サルトマー)、0.1gの光開始剤イルガキュア(Irgacure)369(チバスペシャルティケミカルズ,Tarrytown,NY)、0.12gの光開始剤チバキュア(Chivacure)BMS(カイテクケミカルズ社(Chitec Chemical Co)、台湾、中国)、1.5gのポリエーテルシロキサン共重合体 シルウエット(Silwet)L−7210(ジーイー シリコーン(GE Silicone))、および1.5gのシリコンアクリレート テゴラド(Tego Rad)2200Nを含有するマイクロカップ溶液を、13インチのロール面を持つ2連式ミル(2-Tier Jar Mill)(ユーエス ストーンウエア社(US Stoneware Inc.))で全ての成分が完全に溶解するまで十分に混合した。このようにして調製したマイクロカップ溶液を超音波タンク中で1時間、脱泡した。
【0075】
このマイクロカップ溶液を、110μm(長さ)×110μm(巾)×25μm(深さ)×11μm(マイクロカップ間の隔壁のトップ表面の巾)のアレイ用の8インチ×8インチ電鋳Ni雄型上に徐々に被覆した。過剰の液体を除いてそれをNi型の「谷」に押しやるためにプラスチック製ブレードを用いた。コートされたNi型をオーブン中で65℃、5分間加熱し、上記ステップIで調製したプライマー層を被覆したITO/PETフィルムを、プライマー層がNi型に面するようにして、ローラー温度250°F、ラミネーション速度1cm/sec.にプリセットしたホットロールラミネーター(ケムインスツルメント(Chemical Instrument)、Fairfield,Ohio)を用いてラミネートした。ロール圧は80psi.に設定した。パネルサンプルがラミネーターから出されると直ぐに硬化する様に、Model・LS−218CB長波長/短波長UVランプをフィルターグラスなしで用いた。次にITO/PETフィルムをNi型から約30度の剥離角度で剥離して、ITO/PETフィルム上に8インチ×8インチのマイクロカップアレイを形成した。マイクロカップアレイがうまく離型されたことが観察された。このようにして得たマイクロカップアレイを更にUVコンベヤー(Dバルブ)硬化システム(DDU、LosAngls,CA)を用いて、UV放射線量1.0J/cmで後硬化した。
【0076】
III.マイクロカップの充填と封止
調製例2の項で調製した電気泳動流体を上記ステップIIで調製したマイクロカップ内に#0のドローダウンバーを使って充填した。次に、充填したマイクロカップを、11.9重量部(乾燥基準)のポリウレタン アイロスティック(Irostic)S−9815−15(ハンツマン(Huntsman),Auburn Hills,MI)、2.1重量部のウレタンジアクリレート CN983(サートマー社、Exton,PA)、0.1重量部の光開始剤イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ,Tarrytown,NY)、40.8重量部のMEK,40.8重量部の酢酸イソプロピル(IPAc)、および4.3重量部のCHO(シクロヘキサノン)から成る上端部の封止/接着溶液でドクターブレードを使ってオーバーコートした。封止層を1分間風乾した後、充填されたマイクロカップ上に継ぎ目の無い封止層を形成するために80℃のオーブン中で2分間加熱した。ラミネーターを使い、120℃、20cm/min.の線速度で、上端部が封止されたマイクロカップを5milのITO/PETフィルム上に直接ラミネートした。ラミネート後にそのサンプルを、UVコンベヤーを二度、10ft/minの速度と2.56W/cmのUV強度(それは0.856J/cmに等価である)で通してUV硬化した。
【0077】
IV.試験
一体化したEPDサンプルを20Vで0.1Hzの逆バイアス波形に付したが(図3参照)、逆バイアスは検知されなかった(図4参照)。図4はサンプルの20Vの矩形波駆動下での光学的応答を示す。
【0078】
「実施例2」
マイクロカップ溶液中のSR9035をSR502で置換した以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0079】
得られた一体化EPDサンプルを、図3に示すように20Vで0.1Hzの逆バイアス波形に付した。この場合も逆バイアスは検知されなかった。
【0080】
実施例1および2で得られた全てのマイクロカップフィルムは卓越した機械強度と導体基材表面への良好な接着性を示した。
【0081】
「実施例3」(比較例)
プライマー層溶液とマイクロカップ溶液を置換した以外は、実施例1の操作を繰り返した。プライマー層溶液とマイクロカップ溶液を以下のように調製した:
【0082】
プライマー層溶液:
1.42gのアイロスティックS9815−18ポリウレタン(ハンツマン,Auburn Hills,Exton,PA)、2.22gのCN983ポリウレタンアクリレートオリゴマー(サートマー社、Exton,PA)、1.11gのEb1290六官能性ポリウレタン(UCBケミカルズ,Smyrna,GA)、0.12gの光開始剤サルキュアSR1124(ITXサートマー)、0.12gの光開始剤イルガキュア369(チバスペシャルティケミカルズ,Tarrytown,NY)、0.05gの光開始剤イルガキュア819(チバスペシャルティケミカルズ)、0.01gのイルガノックス(Irganox)1035(チバスペシャルティケミカルズ)、20gの2-ブタノン(アルドリッチ,Milwaukee,WI)、45gの酢酸n−ブチル(アルドリッチ)、および30gのシクロヘキサノン(アルドリッチ)を含有するプライマー溶液を全ての成分が完全に溶解するまで混合した。
【0083】
マイクロカップ溶液:
35.33gのビスフェノールAエポキシジアクリレート エベクリル(Ebecryl)600(UCBケミカルズ,Smyrna,GA)、45.94gのジペンタエリスリトールペンタアクリレート SR399(サートマー社、Exton,PA)、9.32gのポリエチレングリコールジアクリレート SR610(サートマー)、6.38gのシリコンヘキサアクリレート エベクリル1360(UCBケミカル)、0.13gの光開始剤イルガキュア819(チバスペシャルティケミカルズ,Tarrytoen,NY)、1.99gの光開始剤イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ)、0.40gのイルガノックス1035(チバスペシャルティケミカルズ)、0.5gのチヌビン(Tinuvin)770(チバスペシャルティケミカルズ)、および10gのアセトン(アルドリッチ,Milwaukee,WI)を含有するマイクロカップ溶液を13インチのロール面を備えた2連式ミル(USストーンウエア社)で完全に混合した。こうして調製したマイクロカップ溶液を超音波槽中で1時間、脱泡した。
【0084】
この比較例で得た一体化EPDサンプルに、図3に示すように20Vで0.1Hzの逆バイアス波形をかけた。この場合には、ひどい逆バイアスが検知された(図5参照)。図5は20Vでの矩形波駆動時におけるそのサンプルの光学的応答を示す。
【0085】
「実施例4」
I.タイレイヤー被覆プリント回路基板(PCB)の製造
10.0gのSR415(エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート、サートマー社)、および0.05gのイルガキュア500(50%のベンゾフェノンと50%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの混合物、チバスペシャルティケミカルズ)を混合してタイレイヤー配合物を調製した。タイレイヤー配合物の固形分および粘度はそれぞれ100%および25℃で225センチポアズであった。PCB基板をMEKおよびイソプロピルアルコールで清浄にした。PCB基板上では、二つのセグメント電極間のギャップが深さ30−40μm、巾150μmと測定された。そのタイレイヤー配合物を、背面板の一方の縁付近に厚層のストリップとしてシリンジで供給した。UV50剥離フィルム(CPFフィルム社)を一番上に配置し、ロールラミネーター(EAGLE35 GBC)を用いて室温下、5fpmのラミネーション速度で背面板上にラミネートした。ラミネーションの方向は、タイレイヤー配合物のある一方の縁から対面の縁方向に向いてである。UV強度が0.8J/cm(H管)、コンベヤー速度が10fpmのUVコンベヤー装置をタイレイヤーの硬化に使った。硬化後、UV50剥離フィルムを剥離した。
【0086】
II.タイレイヤーで被覆したPCB上へのEPDの製造
実施例1で調製した充填されそして封止されたマイクロカップを有するディスプレイパネルを、一体化EPDパネルを製造するために、タイレイヤーで被覆したPCBの上面にラミネートした。
【0087】
III.EPD性能の、比較例との比較
タイレイヤーを被覆したEPDパネルおよび被覆していないEPDパネルを比較するために、40Vの駆動電圧を用い、室温および10℃にてコントラスト比を測定した。違いは認められなかった(表1参照)。EPDパネルのスイッチング性能におけるいかなる僅かな差異をも観察するために、中間的応答状態へスイッチするように短パルスを10℃で用いた。
【0088】
表1:室温および10℃での、タイレイヤーの有無におけるEPDのコントラスト比
【0089】
【表1】

【0090】
タイレイヤーの層厚の影響も調べた。結果は、厚さが9−10μmまでのタイレイヤーを有するEPDパネルは、室温および10℃ともに、タイレイヤーなしのパネルと同様なコントラスト比(40V)を有することを示した(表2参照)。
【0091】
表2:タイレイヤーの異なる厚さがEPDのコントラスト比に及ぼす影響
【0092】
【表2】

【0093】
裸のPCBで裏打ちされたEPDにおいては、二つのセグメント電極間のギャップは駆動中には不活性であり、スイッチング中およびスイッチされた画像上にはギャップが明瞭に視認できた。セグメント間のギャップは、PCB基板上にタイレイヤーを供給することにより実質的に消滅した。セグメント間のギャップは、セグメント間のギャップに充填されたタイレイヤーの抵抗率が低いために、隣接するセグメントと同様なスイッチング性能を示した。また、異なる温度および湿度のような異なるスイッチング条件下でのクロストークも観察されなかった。
【0094】
本発明をその具体的な実施態様に関して説明したが、本発明の概念および範囲から逸脱することなく、当業者にとっては種々の変化が可能であり、均等物による置換が可能であることは理解されるべきである。加えて、特定の状況、材料、組成、製法、製造の工程を本発明の目的、概念、及び範囲に適応させるために多くの変形が可能である。そのような全ての変形は本願の特許請求の範囲内のものであることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は逆バイアス現象を示す。
【図2A】図2Aはマイクロカップ法により作成された電気泳動ディスプレイ(EPD)セルの模式図を示す。
【図2B】図2Bはマイクロカップ法により作成された電気泳動ディスプレイ(EPD)セルの模式図を示す。
【図3】図3は実施例で使用した駆動波形(20V及び0.1Hz)を示す。
【図4】図4は実施例1のEPDサンプルでは逆バイアスが存在しないことを示す。
【図5】図5は実施例3(比較例)のEPDサンプルでは逆バイアスが存在することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイセルまたは電極保護層を製造するための組成物であって、前記組成物は約100℃より低いガラス転移温度を有する極性オリゴマーまたはポリマー材料を含んで成り、得られるディスプレイセルまたは電極保護層は、80ダルトン分子量当たり約1架橋点より小さい平均架橋密度を有する組成物。
【請求項2】
前記極性オリゴマーまたはポリマー材料が、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基またはスルホネート基の少なくとも一つの基を有するオリゴマーまたはポリマー材料から成る群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ガラス転移温度が約60℃より低い請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋密度が120ダルトン分子量当たり約1架橋点より小さい請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記極性オリゴマーまたはポリマー材料の濃度が約1重量%以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記濃度が約3重量%以上である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記濃度が約10重量%以上である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記極性オリゴマーまたはポリマー材料が、ポリヒドロキシ官能化ポリエステルアクリレートまたはアルコキシル化アクリレートである請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
多官能化モノマーまたはオリゴマーを更に含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
更に剥離剤を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
更に接着促進剤を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
更に光開始剤を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
着色されたものである請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ディスプレイデバイスの性能を向上させる方法であって、前記方法は、約100℃より低いガラス転移温度を有する極性オリゴマーまたはポリマー材料を含む組成物からディスプレイセルまたは電極保護層を形成することを含んで成り、得られるディスプレイセルまたは電極保護層は、80ダルトン分子量当たり約1架橋点より小さい平均架橋密度を有する方法。
【請求項15】
前記極性オリゴマーまたはポリマー材料が、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基またはスルホネート基の少なくとも一つの基を有するオリゴマーまたはポリマー材料から成る群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ガラス転移温度が約60℃より低い請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記架橋密度が120ダルトン分子量当たり約1架橋点より小さい請求項14に記載の方法。
【請求項18】
約100℃より低いガラス転移温度を有する極性オリゴマーまたはポリマー材料を含んで成る組成物から形成されるディスプレイセルを有して成るディスプレイデバイスであって、得られるディスプレイセルは80ダルトン分子量当たり約1架橋点より小さい平均架橋密度を有するディスプレイデバイス。
【請求項19】
約100℃より低いガラス転移温度を有する極性オリゴマーまたはポリマー材料を含んで成る組成物から形成される電極保護層を更に有して成るディスプレイデバイスであって、得られる電極保護層は、80ダルトン分子量当たり約1架橋点より低い平均架橋密度を有する請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項20】
前記ディスプレイセルが約10〜約1012オーム・cmの抵抗率を有する請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項21】
前記電極保護層が約10〜約1012オーム・cmの抵抗率を有する請求項19に記載のディスプレイデバイス。
【請求項22】
前記電極保護層がプライマー層である請求項19に記載のディスプレイデバイス。
【請求項23】
前記電極保護層が封止層である請求項19に記載のディスプレイデバイス。
【請求項24】
前記電極保護層が接着剤層である請求項19に記載のディスプレイデバイス。
【請求項25】
前記電極保護層がタイレイヤーである請求項19に記載のディスプレイデバイス。
【請求項26】
前記タイレイヤーが異なる色の領域を有する請求項25に記載のディスプレイデバイス。
【請求項27】
電気泳動ディスプレイである請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項28】
液晶ディスプレイである請求項18に記載のディスプレイデバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−509206(P2009−509206A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532330(P2008−532330)
【出願日】平成18年9月18日(2006.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/036548
【国際公開番号】WO2007/038103
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(500327016)シピックス・イメージング・インコーポレーテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】SiPix Imaging,Inc
【住所又は居所原語表記】1075 Montague Expressway,Milpitas,California95035,United States of America
【Fターム(参考)】