説明

デカップリングセル配置方法及びデカップリングセル配置装置

【課題】デカップリングセルの配置を短時間で網羅的に行うことができるデカップリングセル配置方法を提供すること。
【解決手段】セル配置装置は、タイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を、当該着目パスの電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出し、該タイミング余裕度をノイズ許容量に変換し、該ノイズ許容量と着目パスにおける電源ノイズ量とを比較し、該比較結果に基づいてその着目パスに対するデカップリングセルの配置の要否を判断するようにした。即ち、タイミング余裕度に基づき、電源ノイズ量を算出し、その電源ノイズ量とノイズ許容量とを比較してデカップリングセルの配置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置にデカップリングセル(キャパシタ)を配置するデカップリングセル配置方法及びデカップリングセル配置装置に関するものである。
近年の半導体装置は、大規模化にともなって同時期に動作する素子数が増大している。このことは、電源ノイズの発生の原因となり、半導体装置の安定した動作の妨げとなる。そこで、半導体装置の高電位側電源配線と低電位側電源配線との間にデカップリングセル(キャパシタ)を介在させることにより、電源ノイズの低減が図られている。そして、このようなデカップリングセル容量を備えた半導体装置において、そのデカップリング容量を効率的にレイアウトし、かつ設計工数を削減することが必要となっている。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置は、プロセスの微細化、高速化、低電圧化、高集積化が進められている。高集積化により、多くのセルが同じタイミングで動作するようになってきている。この同時動作により、半導体装置内において、電源電圧が変動し、その変動により発生する電源ノイズや、電源電圧の変動によるタイミングのズレにより誤動作を招く場合がある。このため、半導体装置には、電源電圧の変動を抑制するためにデカップリングセルが設けられている。
【0003】
従来、デカップリングセルの配置は、半導体装置の設計段階において、電源ノイズ(DvD)解析が可能なEDAツールを用いて動的な電源電圧の変動を求め、ノイズ量を低減するように行われている。しかし、ノイズ量は解るものの、デカップリングセルを配置する位置やその容量値対するノイズ量の判断基準は不明である。このため、デカップリングセルを配置したレイアウトデータを用いて再度解析を行う、つまりカットアンドトライ的にデカップリングセルを配置していた。この手法では、デカップリングセルの配置に時間がかかり、高集積化された半導体装置には不適当である。また、上記手法では、電源ノイズの影響により発生するタイミングのズレによる動作不良等を解消することができない。
【0004】
上記の問題に対し、電源変動の影響が懸念されるパスを抽出し、Spice等の動作シミュレーションを行い、その結果がタイミング的に違反しているか否かを判断し、違反している場合にパスの近傍にデカップリングセルを追加し、その追加後のデータに対して再度解析を行う、という手法が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この手法では、配置したデカップリングセルがタイミング等に与える影響が再度解析を行った結果でしかわからないため、容量値を集束させる、つまり1つのパスにおける不具合を解消するために必要な容量値を決定するまでに要する時間が判らない。また集束に要する時間は、パス毎に異なる場合がある。このため、一定の時間で処理するパスの数が制限され、集積化されて多数のパスを含む半導体装置の全体に対してデカップリングセルの要否判断と容量値の決定を網羅的に行うことができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、デカップリングセルの配置を短時間で網羅的に行うことができるデカップリングセル配置方法及びデカップリングセル配置装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、半導体集積回路装置の配置情報に対して、デカップリングセルを配置する位置情報を記憶装置に記憶するデカップリングセル配置装置が実行するデカップリングセル配置方法であって、前記デカップリングセル配置装置は、タイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を、当該着目パスの電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出し、該タイミング余裕度をノイズ許容量に変換し、該ノイズ許容量と着目パスにおける電源ノイズ量とを比較し、該比較結果に基づいてその着目パスに対するデカップリングセルの配置の要否を判断するようにした。
【0008】
この構成によれば、タイミング余裕度に基づき、電源ノイズ量を算出し、その電源ノイズ量とノイズ許容値とを比較してデカップリングセルを配置するようにしたため、電源ノイズ量に応じてデカップリングセルの容量値が容易に決定される。その結果、デカップリングセルがタイミングに与える影響を再度解析する必要がなく、手戻りが少ないため適したデカップリングセルを短時間で配置することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデカップリングセル配置方法において、前記デカップリングセル配置装置は、記憶装置に記憶されたタイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を取得する第1のステップと、前記着目パスにおける理想電圧における基準遅延時間とそのDC的電源電圧依存性を得る第2のステップと、前記DC的電源電圧依存性に基づいて、タイミングスラック量と等価な遅延変動量を示すDC的電圧ドロップ量を得る第3のステップと、前記DC的電圧ドロップ量に基づいて前記基準遅延時間に対するノイズ許容量を得る第4のステップと、電源ノイズ解析結果から着目パスにおける電源ノイズ波形を得る第5のステップと、電源ノイズ波形に対して前記基準遅延時間内におけるノイズの積分値を順次算出し、該算出した複数の積分値から積分量最大値を得る第6のステップと、前記ノイズ許容量と前記積分量最大値とを比較する第7のステップと、比較結果に基づき、着目パスにおける電源ノイズ量を低減するためデカップリングセルを追加配置する第8のステップと、を実行するようにした。
【0010】
この構成によれば、タイミング余裕度に基づき、電源ノイズ量を算出し、その電源ノイズ量とノイズ許容値とを比較してデカップリングセルの配置するようにしたため、電源ノイズ量に応じてデカップリングセルの容量値が容易に決定される。その結果、デカップリングセルがタイミングに与える影響を再度解析する必要がなく、手戻りが少ないため適したデカップリングセルを短時間で配置することができる。また、DC的電源電圧依存性を求め、そのDC的電圧ドロップ量に基づいてノイズ許容値を設定するようにしたため、Spiceを用いる場合に比べて簡易にデカップリングセルを配置することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のデカップリングセル配置方法において、前記デカップリングセル配置装置は、前記第1のステップにおいて、着目パスのパス遅延値に対して電源電圧変動の許容値を設定し、その設定したパス遅延値に対するタイミングスラック量を取得するようにした。この構成によれば、着目パスにおいて、遅延値に対応して容易にタイミング余裕度を得ることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のデカップリングセル配置方法において、前記デカップリングセル配置装置は、前記第6のステップにおいて、着目パスを構成する複数のインスタンスにおける電源ノイズ波形のうち、最大の変動量を示す電源ノイズ波形を選択し、その電源ノイズ波形における積分値を順次算出するようにした。この構成によれば、着目パスにおいて、効果の大きな場所にデカップリングセルを配置することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法において、前記デカップリングセル配置装置は、前記第6のステップにおいて、前記基準遅延時間の範囲を経過時間に沿って順次移動させて前記積分値を順次算出するようにした。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法において、前記デカップリングセル配置装置は、前記第8のステップにおいて、前記電源ノイズ波形を、前記ノイズ許容量に応じてスケーリングし、そのスケーリング後のピーク値をターゲットドロップ量とし、そのターゲットドロップ量に基づいて配置するデカップリングセルの容量値を設定するようにした。この構成によれば、電源ノイズ量に対応してデカップリングセルの容量を容易に設定することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至6のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法において、前記デカップリングセル配置装置は、前記第8のステップにおいて、前記電源ノイズ波形に対応するインスタンスの近傍にデカップリングセルを配置するようにその配置位置を決定し、前記デカップリングセルの容量値と配置位置とを記憶するようにした。
【0016】
請求項8に記載の発明は、半導体集積回路装置の配置情報に対して、デカップリングセルを配置する位置情報を記憶装置に記憶するデカップリングセル配置装置であって、タイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を、当該着目パスの電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出し、該タイミング余裕度をノイズ許容量に変換し、該ノイズ許容量と着目パスにおける電源ノイズ量とを比較し、該比較結果に基づいてその着目パスに対するデカップリングセルの配置の要否を判断するようにした。
【0017】
この構成によれば、タイミング余裕度に基づき、電源ノイズ量を算出し、その電源ノイズ量とノイズ許容量とを比較してデカップリングセルを配置するようにしたため、電源ノイズ量に応じてデカップリングセルの容量値が容易に決定される。その結果、デカップリングセルがタイミングに与える影響を再度解析する必要がなく、手戻りが少ないため適したデカップリングセルを短時間で配置することができる。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のデカップリングセル配置装置において、記憶装置に記憶されたタイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を取得するスラック量取得手段と、前記着目パスにおける理想電圧における基準遅延時間とそのDC的電源電圧依存性を得る依存性取得手段と、前記DC的電源電圧依存性に基づいて、タイミングスラック量と等価な遅延変動量を示すDC的電圧ドロップ量を得るドロップ量取得手段と、前記DC的電圧ドロップ量に基づいて前記基準遅延時間に対するノイズ許容量を得る許容値取得手段と、電源ノイズ解析結果から着目パスにおける電源ノイズ波形を得るノイズ波形取得手段と、電源ノイズ波形に対して前記基準遅延時間内におけるノイズの積分値を順次算出し、該算出した複数の積分値から積分量最大値を得る最大値取得手段と、前記ノイズ許容量と前記積分量最大値とを比較する比較手段と、比較結果に基づき、着目パスにおける電源ノイズ量を低減するためデカップリングセルを追加配置する配置手段と、を備えた。
【0019】
この構成によれば、タイミング余裕度に基づき、電源ノイズ量を算出し、その電源ノイズ量とノイズ許容量とを比較してデカップリングセルの配置するようにしたため、電源ノイズ量に応じてデカップリングセルの容量値が容易に決定される。その結果、デカップリングセルがタイミングに与える影響を再度解析する必要がなく、手戻りが少ないため適したデカップリングセルを短時間で配置することができる。また、DC的電源電圧依存性を求め、そのDC的電圧ドロップ量に基づいてノイズ許容量を設定するようにしたため、Spiceを用いる場合に比べて簡易にデカップリングセルを配置することができる。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のデカップリングセル配置装置において、前記スラック量取得手段は、着目パスのパス遅延値に対して電源電圧変動の許容値を設定し、その設定したパス遅延値に対するタイミングスラック量を取得するようにした。この構成によれば、着目パスにおいて、遅延値に対応して容易にタイミング余裕度を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、デカップリングセルの配置を短時間で網羅的に行うことが可能なデカップリングセル配置方法及びデカップリングセル配置装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1は、デカップリングセル配置装置11の概略構成図である。
デカップリングセル配置装置11は一般的なCAD(Computer Aided Design) 装置からなり、中央処理装置(以下、CPU)12、メモリ13、記憶装置14、表示装置15、入力装置16、及びドライブ装置17を備え、それらはバス18を介して相互に接続されている。
【0023】
CPU12は、メモリ13を利用してプログラムを実行し、デカップリングセル配置に必要な処理を実現する。メモリ13には、デカップリングセル配置処理を行うために必要なプログラムとデータが格納され、メモリ13としては、通常、キャッシュ・メモリ,システム・メモリ,及びディスプレイ・メモリ等(図示略)を含む。
【0024】
表示装置15は、レイアウト表示、パラメータ入力画面等の表示に用いられ、これには通常、CRT,LCD,PDP等(図示略)が用いられる。入力装置16は、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられ、これにはキーボード及びマウス装置等(図示略)が用いられる。
【0025】
記憶装置14は、通常、磁気ディスク装置,光ディスク装置,光磁気ディスク装置等(図示略)を含む。記憶装置14には、図1に示すデカップリングセル配置処理のためのプログラムデータ(以下、プログラム)及び各種のデータファイル(以下、ファイル)31〜33が格納される。CPU12は、入力装置16による指示に応答してプログラムや各種ファイルに格納されるデータを適宜メモリ13へ転送し、プログラムを逐次実行する。そして、CPU12は、プログラムの実行に必要なファイルやデータの読み込み、プログラムの実行によるファイルやデータの作成を、記憶装置14に対して行う。この記憶装置14は、データベースとしても使用される。
【0026】
CPU12が実行するプログラムは、記録媒体19にて提供される。ドライブ装置17は、記録媒体19を駆動し、その記憶内容にアクセスする。CPU12は、ドライブ装置17を介して記録媒体19からプログラムを読み出し、それを記憶装置14にインストールする。尚、記録媒体19に格納して提供するものは、プログラムに限らず、ライブラリ等の各種データを提供しても良い。
【0027】
記録媒体19としては、メモリカード,フレキシブルディスク,光ディスク(CD-ROM,DVD-ROM,… ),光磁気ディスク(MO,MD,…)等(図示略)、任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体を使用することができる。尚、半導体メモリや外部接続されるハードディスク装置等が用いられても良い。この記録媒体19に、上述のプログラムを格納しておき、必要に応じて、メモリ13にロードして使用することもできる。
【0028】
尚、記録媒体19には、通信媒体を介してアップロード又はダウンロードされたプログラムを記録した媒体、ディスク装置、通信媒体を介してセル配置装置11(コンピュータ)が接続されるサーバ装置の記憶装置、等を含む。更に、コンピュータによって直接実行可能なプログラムを記録した記録媒体だけでなく、自身又は他の記録媒体(ハードディスク等)にインストールすることによって実行可能となるようなプログラムを記録した記録媒体や、暗号化されたり、圧縮されたりしたプログラムを記録した記録媒体も含む。
【0029】
図2は、デカップリングセル配置処理のフローチャートである。
上記セル配置装置11は、このステップ21〜28の各処理を実行し、半導体集積回路装置(LSI)におけるデカップリングセル配置を行う。この処理において、セル配置装置11は、ファイル31,32のデータ(情報)に基づいて算出した数値に基づいて、デカップリングセルの追加配置の要否を判断し、ファイル33にデカップリングセルの位置情報を格納する。これらファイル31〜33は、図1に示す記憶装置14に格納されている。また、セル配置装置11は、上記処理において算出した一時的な値をワーク領域35に格納する。このワーク領域35は、図1に示すメモリ13又は記憶装置14上に作成される。
【0030】
各ステップについて説明する。
先ず、ステップ21(スラック量取得手段)において、セル配置装置11は、ファイル31のタイミング解析結果から着目パスのタイミングスラック量Tsを取得する。タイミング解析結果は、例えば静的タイミング解析ツール(STA)により生成される。STAは、回路素子や配線の信号遅延時間を積算し、信号経路(パス)の伝播遅延時間を計算する。セル配置装置11は、半導体集積回路を構成する所定のパスに着目し、その着目パスにおけるタイミングスラック量Tsを、電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出する。更に、セル配置装置11は、そのタイミング余裕度を電源ノイズ許容量に変換する。この変換としては、固定値、着目パスにおけるパス遅延と所定の係数値により算出した値を用いる。
【0031】
一例として、図3(a)に示すように、2つのフリップフロップ回路(以下、FF回路)41,42に対してクロック信号CKがバッファ回路43,44を介してそれぞれ供給され、第1のFF回路41の出力信号が複数の論理回路(例えばバッファ回路)45を介して第2のFF回路42に供給される場合を考える。この回路において、クロック信号CKを第2のFF回路42に供給するクロックパスと、第1のFF回路41の出力信号が第2のFF回路42に供給されるデータパスが存在する。FF回路41,42は、クロック信号の立ち上がりエッジにおける入力信号を保持し、その入力信号レベルと等しいレベルの信号を出力する。
【0032】
図3(b)に示すように、第1のFF回路41におけるクロック信号CK1の立ち上がりに対し、第2FF回路42におけるクロック信号CK2の立ち上がりは、クロック信号CKを伝達する配線経路(クロックパス)における遅延を受ける。この遅延時間がクロックパス遅延である。一方、第1のFF回路41の出力信号の変化に対し、第2のFF回路42の入力信号の変化は、それらの間のパス(データパス)における遅延(バッファ回路45による遅延、等)を受ける。例えば、第2のFF回路42において必要なセットアップ(SETUP)時間はセルライブラリに格納されており、このセットアップ時間と、データの変化からクロック信号CK2の立ち上がりまでの時間との差がタイミング余裕度(タイミングスラック量)となる。
【0033】
パスおける遅延時間は、電源電圧変動の影響を受ける。クロック信号による同期した動作により問題となり得るのは、電源電圧の降下である。例えば、バッファ回路では、電源電圧の降下により出力信号を変化させる時間が長くなる、つまり遅延時間が増加する。従って、図3(a)に示す回路において、タイミングを厳しくする(タイミング余裕を少なくする)には、第2のFF回路42における入力信号のタイミングを遅らせるか、第2のFF回路42におけるクロック信号CK2の立ち上がりタイミングを進める。
【0034】
電源電圧の降下を設計段階で考慮するため、半導体集積回路装置における電源電圧変動の許容値をパスの遅延時間に対して加味する、つまりパスにおけるタイミングを変更する。それらのタイミングの変更は、タイミング解析に用いられるオンチップバラツキ係数(OCV係数)に対して電源電圧変動係数(DvD係数)を、所定の演算式(例えば、OCV=(OCV×(1−DvD係数))により考慮することにより行うことが可能である。上記したように、電源電圧の変動(降下)は、遅延時間を増加させる。従って、遅延時間を増加可能なパスを着目パス(又は対象パスという)とする。図3(a)に示す回路では、セットアップ時間について考慮する場合にはデータパスが着目パスとなる、ホールド時間について考慮する場合にはクロックパスが着目パスとなる。着目パスにおいて、遅延時間を増加させてタイミング解析を行い、その解析結果におけるタイミングスラック量Tsを取得する。尚、パスにおける遅延時間を変更するためにDvD係数を用いたが、許容量を固定値にて設定してもよい。
【0035】
次に、ステップ22(依存性取得手段)において、セル配置装置11は、着目パスにおける理想電圧時の遅延量(基準遅延時間)Tpと、そのDC電源電圧の依存性を得る。例えば、図4(a)に示すように、セル45a,45bの電源端子に対し、高電位電源Vに接続された電圧源46から駆動電圧を供給する。そして、その電圧源46における電圧を変更することで、電源電圧のDC的な変化に対する遅延時間の変化の特性を取得する。各セルにおける理想電圧時の遅延時間は、セルライブラリに格納されている。遅延計算又はSpiceを用い、図4(b)に示すように、着目パス、つまりバッファ回路45aの入力信号の変化(図3(a)に示す第1のFF回路41の出力信号の変化)から第2のFF回路42の入力信号が変化するまでに要する時間を基準遅延時間Tpとして算出する。更に、電源電圧を変化(−ΔV)させた時の遅延時間の増加(ΔD)を求める。これらにより、図4(c)に示すように、電源電圧に対する遅延時間DのDC特性(電圧−遅延値特性)を求める。尚、図において、この特性の傾きα(=ΔD/ΔV)等のパラメータを求めることとしてもよい。尚、図4(c)において、横軸V−ΔVは電源電圧の降下を示し、縦軸D+ΔDは遅延時間の増加を示す。
【0036】
次に、ステップ23(ドロップ量取得手段)において、セル配置装置11は、タイミングスラック量Tsと等価な遅延変動量を示すDC的電圧ドロップ量Ddを得る。図5に示すように、基準遅延時間Tpに対して、タイミングスラック量Tsだけ変化した点における電圧値を求め、その電圧値と基準電圧(高電位電源V)との差を、DC的電圧ドロップ量Ddとする。尚、特性の傾きαによりDC的電圧ドロップ量Dd(=Ts/α)により求めても良い。また、セルの特性に応じて、既知の一次式による近似を行うようにしてもよい。
【0037】
次に、ステップ24(許容値取得手段)において、セル配置装置11は、基準遅延時間Tp内でのノイズ許容量Csを算出する。図6に示すように、ノイズ許容量Csは、基準遅延時間TpとDC的電圧ドロップ量Ddとの積(Cs=Tp・Dd)として求める。
【0038】
次に、ステップ25(ノイズ波形取得手段)において、セル配置装置11は、電源ノイズ解析結果から着目パスを構成するインスタンス(回路図上で使用される論理素子(論理ゲート)や回路ブロック:セル,マクロセル等)の電源端子における電源ノイズ波形を得る。図7に示すように、ファイル51〜53の配置情報(レイアウトデータ),タイミングデータ,セルライブラリに基づいて、既存のDvD解析ツール54を実行し、その実行結果である電源電圧変動波形を電源ノイズ波形としてファイル55に格納する。セル配置装置11は、このファイル55に格納された電源ノイズ波形を読み込む。尚、この電源ノイズ解析は、セル配置装置11が行っても、他のコンピュータにて行っても良い。
【0039】
次に、ステップ26(最大値取得手段)において、セル配置装置11は、基準遅延時間Tpにおけるノイズの積分値を得る。図8(a)は、1つのインスタンスにおける電源ノイズ波形を示す。セル配置装置11は、着目パス内の各インスタンスにおける電源ノイズ波形のうち、変動量Vpeakが最大となる電源ノイズ波形を対象とする。セル配置装置11は、図8(b)に示すように、時間経過に従って、積分値を得る基準遅延時間Tpを移動させ、それぞれの積分値を求める。その積分値は、図8(b)において、太線のように変化する。そして、セル配置装置11は、最大の積分値(積分量最大値)Inを求める。
【0040】
次に、ステップ27(比較手段)において、セル配置装置11は、ステップ24において求めたノイズ許容量Csとステップ26において求めた積分量最大値Inとを大小比較する。そして、セル配置装置11は、積分量最大値Inがノイズ許容量Csより大きい(Yes)場合には、ステップ28に移行し、その着目パスに対してデカップリングセルの配置を行う。一方、積分量最大値Inがノイズ許容量Cs以下(No)の場合、セル配置装置11は、その着目パスに対してデカップリングセルの配置が必要無いとして次の着目パスに対する検証を行うべく、ステップ21に移行する。
【0041】
ステップ28(配置手段)において、セル配置装置11は、着目パスにおける電源ノイズ量を低減するためデカップリングセルを追加配置する。追加する対象は、パス内のピークドロップ発生箇所であり、この発生箇所は、ステップ26において選択した電源ノイズ波形のインスタンスである。また、セル配置装置11は、図9に示すように、積分量最大値Inがノイズ許容量Cs以下となるように電源ノイズ波形L1をスケーリング(電圧方向に縮小)し、その縮小波形L2におけるピーク値をターゲットドロップ量TDとする。そして、セル配置装置11は、電源ノイズ波形の最大値Vpeakとターゲットドロップ量TDに基づいて配置するデカップリングセルの容量値を決定する。そして、セル配置装置11は、決定したデカップリングセルの配置位置及び容量値を図2に示すファイル33に格納する。そして、次の着目パスに対する解析を行うべく、ステップ21へ移行する。尚、ステップ27及びステップ28において、その時の着目パスが解析対象のパスの最終、つまり対象とする全てのパスについてデカップリングセルの配置の要否を判断し終わると、セル配置装置11は、図2に示す処理を終了する。
【0042】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)セル配置装置11は、タイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を、当該着目パスの電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出し、該タイミング余裕度をノイズ許容量に変換し、該ノイズ許容量と着目パスにおける電源ノイズ量とを比較し、該比較結果に基づいてその着目パスに対するデカップリングセルの配置の要否を判断するようにした。その結果、デカップリングセルがタイミングに与える影響を再度解析する必要がなく、手戻りが少ないため適したデカップリングセルを短時間で配置することができる。
【0043】
(2)セル配置装置11は、先ず、ステップ21においてタイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を取得し、次に、ステップ22において着目パスにおける理想電圧における基準遅延時間とそのDC的電源電圧依存性を得る。次に、ステップ23においてDC的電源電圧依存性に基づいて、タイミングスラック量と等価な遅延変動量を示すDC的電圧ドロップ量を求め、ステップ24においてDC的電圧ドロップ量に基づいて基準遅延時間に対するノイズ許容量を求める。次に、ステップ25において電源ノイズ解析結果から着目パスにおける電源ノイズ波形を求め、ステップ26において電源ノイズ波形に対して基準遅延時間内におけるノイズの積分値を順次算出し、該算出した複数の積分値から積分量最大値を得る。次に、ステップ27においてノイズ許容量と積分量最大値とを比較し、ステップ28において比較結果に基づき、着目パスにおける電源ノイズ量を低減するためデカップリングセルを追加配置するようにした。その結果、手戻りが少ないため適したデカップリングセルを短時間で配置することができる。また、DC的電源電圧依存性を求め、そのDC的電圧ドロップ量に基づいてノイズ許容量を設定するようにしたため、Spiceを用いる場合に比べて簡易にデカップリングセルを配置することができる。
【0044】
(3)セル配置装置11は、ステップ21において、着目パスのパス遅延値に対して電源電圧変動の許容値を設定し、その設定したパス遅延値に対するタイミングスラック量を取得するようにした。この構成によれば、着目パスにおいて、遅延値に対応して容易にタイミング余裕度を得ることができる。
【0045】
(4)セル配置装置11は、ステップ26において、着目パスを構成する複数のインスタンスにおける電源ノイズ波形のうち、最大の変動量を示す電源ノイズ波形を選択し、その電源ノイズ波形における積分値を順次算出するようにした。この構成によれば、着目パスにおいて、効果の大きな場所にデカップリングセルを配置することができる。
【0046】
(5)セル配置装置11は、ステップ28において、電源ノイズ波形を、ノイズ許容量に応じてスケーリングし、そのスケーリング後のピーク値をターゲットドロップ量とし、そのターゲットドロップ量に基づいて配置するデカップリングセルの容量値を設定するようにした。この構成によれば、電源ノイズ量に対応してデカップリングセルの容量を容易に設定することができる。
【0047】
尚、上記実施の形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施の形態において、セル配置装置11は、プログラムを実行するコンピュータにて実現したが、各ステップに対応する手段として動作する回路を組み合わせてセル配置装置を構成してもよい。
【0048】
上記各実施の形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
半導体集積回路装置の配置情報に対して、デカップリングセルを配置する位置情報を記憶装置に記憶するデカップリングセル配置装置が実行するデカップリングセル配置方法であって、
前記デカップリングセル配置装置は、タイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を、当該着目パスの電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出し、該タイミング余裕度をノイズ許容量に変換し、該ノイズ許容量と着目パスにおける電源ノイズ量とを比較し、該比較結果に基づいてその着目パスに対するデカップリングセルの配置の要否を判断するようにした、ことを特徴とするデカップリングセル配置方法。
(付記2)
前記デカップリングセル配置装置は、
記憶装置に記憶されたタイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を取得する第1のステップと、
前記着目パスにおける理想電圧における基準遅延時間とそのDC的電源電圧依存性を得る第2のステップと、
前記DC的電源電圧依存性に基づいて、タイミングスラック量と等価な遅延変動量を示すDC的電圧ドロップ量を得る第3のステップと、
前記DC的電圧ドロップ量に基づいて前記基準遅延時間に対するノイズ許容量を得る第4のステップと、
電源ノイズ解析結果から着目パスにおける電源ノイズ波形を得る第5のステップと、
電源ノイズ波形に対して前記基準遅延時間内におけるノイズの積分値を順次算出し、該算出した複数の積分値から積分量最大値を得る第6のステップと、
前記ノイズ許容量と前記積分量最大値とを比較する第7のステップと、
比較結果に基づき、着目パスにおける電源ノイズ量を低減するためデカップリングセルを追加配置する第8のステップと、
を実行する、ことを特徴とする付記1に記載のデカップリングセル配置方法。
(付記3)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第1のステップにおいて、着目パスのパス遅延値に対して電源電圧変動の許容値を設定し、その設定したパス遅延値に対するタイミングスラック量を取得する、ことを特徴とする付記2に記載のデカップリングセル配置方法。
(付記4)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第6のステップにおいて、着目パスを構成する複数のインスタンスにおける電源ノイズ波形のうち、最大の変動量を示す電源ノイズ波形を選択し、その電源ノイズ波形における積分値を順次算出する、ことを特徴とする付記2又は3に記載のデカップリングセル配置方法。
(付記5)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第6のステップにおいて、前記基準遅延時間の範囲を経過時間に沿って順次移動させて前記積分値を順次算出する、ことを特徴とする付記2乃至4のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法。
(付記6)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第8のステップにおいて、前記電源ノイズ波形を、前記ノイズ許容量に応じてスケーリングし、そのスケーリング後のピーク値をターゲットドロップ量とし、そのターゲットドロップ量に基づいて配置するデカップリングセルの容量値を設定するようにした、ことを特徴とする付記2乃至5のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法。
(付記7)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第8のステップにおいて、前記電源ノイズ波形に対応するインスタンスの近傍にデカップリングセルを配置するようにその配置位置を決定し、前記デカップリングセルの容量値と配置位置とを記憶するようにした、ことを特徴とする付記2乃至6のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法。
(付記8)
半導体集積回路装置の配置情報に対して、デカップリングセルを配置する位置情報を記憶装置に記憶するデカップリングセル配置装置であって、
タイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を、当該着目パスの電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出し、該タイミング余裕度をノイズ許容量に変換し、該ノイズ許容量と着目パスにおける電源ノイズ量とを比較し、該比較結果に基づいてその着目パスに対するデカップリングセルの配置の要否を判断するようにした、ことを特徴とするデカップリングセル配置装置。
(付記9)
記憶装置に記憶されたタイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を取得するスラック量取得手段と、
前記着目パスにおける理想電圧における基準遅延時間とそのDC的電源電圧依存性を得る依存性取得手段と、
前記DC的電源電圧依存性に基づいて、タイミングスラック量と等価な遅延変動量を示すDC的電圧ドロップ量を得るドロップ量取得手段と、
前記DC的電圧ドロップ量に基づいて前記基準遅延時間に対するノイズ許容量を得る許容値取得手段と、
電源ノイズ解析結果から着目パスにおける電源ノイズ波形を得るノイズ波形取得手段と、
電源ノイズ波形に対して前記基準遅延時間内におけるノイズの積分値を順次算出し、該算出した複数の積分値から積分量最大値を得る最大値取得手段と、
前記ノイズ許容量と前記積分量最大値とを比較する比較手段と、
比較結果に基づき、着目パスにおける電源ノイズ量を低減するためデカップリングセルを追加配置する配置手段と、
を備えた、ことを特徴とする付記8に記載のデカップリングセル配置装置。
(付記10)
前記スラック量取得手段は、着目パスのパス遅延値に対して電源電圧変動の許容値を設定し、その設定したパス遅延値に対するタイミングスラック量を取得する、ことを特徴とする付記9に記載のデカップリングセル配置装置。
(付記11)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第6のステップにおいて、着目パスを構成する複数のインスタンスにおける電源ノイズ波形のうち、最大の変動量を示す電源ノイズ波形を選択し、その電源ノイズ波形における積分値を順次算出する、ことを特徴とする付記9又は10に記載のデカップリングセル配置装置。
(付記12)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第6のステップにおいて、前記基準遅延時間の範囲を経過時間に沿って順次移動させて前記積分値を順次算出する、ことを特徴とする付記9乃至11のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置装置。
(付記13)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第8のステップにおいて、前記電源ノイズ波形を、前記ノイズ許容量に応じてスケーリングし、そのスケーリング後のピーク値をターゲットドロップ量とし、そのターゲットドロップ量に基づいて配置するデカップリングセルの容量値を設定するようにした、ことを特徴とする付記9乃至12のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置装置。
(付記14)
前記デカップリングセル配置装置は、前記第8のステップにおいて、前記電源ノイズ波形に対応するインスタンスの近傍にデカップリングセルを配置するようにその配置位置を決定し、前記デカップリングセルの容量値と配置位置とを記憶するようにした、ことを特徴とする付記9乃至13のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置装置。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施形態のデカップリングセル配置装置の概略構成図である。
【図2】デカップリングセル配置処理のフローチャートである。
【図3】(a)(b)はスラック量取得の説明図である。
【図4】(a)〜(c)はドロップ量対遅延変動特性抽出の説明図である。
【図5】タイミングスラックから電圧ドロップ量の変換を示す説明図である。
【図6】ノイズ許容量算出の説明図である。
【図7】ノイズ波形の算出を示すフローチャートである。
【図8】(a)(b)はノイズ波形積分値算出の説明図である。
【図9】デカップリングセルの追加判定の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
11 デカップリングセル配置装置
Cs ノイズ許容量
Dd DC的電圧ドロップ量
In 積分量最大値
L1 電源ノイズ波形
TD ターゲットドロップ量
Tp 基準遅延時間
Ts タイミングスラック量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路装置の配置情報に対して、デカップリングセルを配置する位置情報を記憶装置に記憶するデカップリングセル配置装置が実行するデカップリングセル配置方法であって、
前記デカップリングセル配置装置は、タイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を、当該着目パスの電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出し、該タイミング余裕度をノイズ許容量に変換し、該ノイズ許容量と着目パスにおける電源ノイズ量とを比較し、該比較結果に基づいてその着目パスに対するデカップリングセルの配置の要否を判断するようにした、ことを特徴とするデカップリングセル配置方法。
【請求項2】
前記デカップリングセル配置装置は、
記憶装置に記憶されたタイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を取得する第1のステップと、
前記着目パスにおける理想電圧における基準遅延時間とそのDC的電源電圧依存性を得る第2のステップと、
前記DC的電源電圧依存性に基づいて、タイミングスラック量と等価な遅延変動量を示すDC的電圧ドロップ量を得る第3のステップと、
前記DC的電圧ドロップ量に基づいて前記基準遅延時間に対するノイズ許容量を得る第4のステップと、
電源ノイズ解析結果から着目パスにおける電源ノイズ波形を得る第5のステップと、
電源ノイズ波形に対して前記基準遅延時間内におけるノイズの積分値を順次算出し、該算出した複数の積分値から積分量最大値を得る第6のステップと、
前記ノイズ許容量と前記積分量最大値とを比較する第7のステップと、
比較結果に基づき、着目パスにおける電源ノイズ量を低減するためデカップリングセルを追加配置する第8のステップと、
を実行する、ことを特徴とする請求項1に記載のデカップリングセル配置方法。
【請求項3】
前記デカップリングセル配置装置は、前記第1のステップにおいて、着目パスのパス遅延値に対して電源電圧変動の許容値を設定し、その設定したパス遅延値に対するタイミングスラック量を取得する、ことを特徴とする請求項2に記載のデカップリングセル配置方法。
【請求項4】
前記デカップリングセル配置装置は、前記第6のステップにおいて、着目パスを構成する複数のインスタンスにおける電源ノイズ波形のうち、最大の変動量を示す電源ノイズ波形を選択し、その電源ノイズ波形における積分値を順次算出する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のデカップリングセル配置方法。
【請求項5】
前記デカップリングセル配置装置は、前記第6のステップにおいて、前記基準遅延時間の範囲を経過時間に沿って順次移動させて前記積分値を順次算出する、ことを特徴とする請求項2乃至4のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法。
【請求項6】
前記デカップリングセル配置装置は、前記第8のステップにおいて、前記電源ノイズ波形を、前記ノイズ許容量に応じてスケーリングし、そのスケーリング後のピーク値をターゲットドロップ量とし、そのターゲットドロップ量に基づいて配置するデカップリングセルの容量値を設定するようにした、ことを特徴とする請求項2乃至5のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法。
【請求項7】
前記デカップリングセル配置装置は、前記第8のステップにおいて、前記電源ノイズ波形に対応するインスタンスの近傍にデカップリングセルを配置するようにその配置位置を決定し、前記デカップリングセルの容量値と配置位置とを記憶するようにした、ことを特徴とする請求項2乃至6のうちの何れか一項に記載のデカップリングセル配置方法。
【請求項8】
半導体集積回路装置の配置情報に対して、デカップリングセルを配置する位置情報を記憶装置に記憶するデカップリングセル配置装置であって、
タイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を、当該着目パスの電源ノイズに対するタイミング余裕度として抽出し、該タイミング余裕度をノイズ許容量に変換し、該ノイズ許容量と着目パスにおける電源ノイズ量とを比較し、該比較結果に基づいてその着目パスに対するデカップリングセルの配置の要否を判断するようにした、ことを特徴とするデカップリングセル配置装置。
【請求項9】
記憶装置に記憶されたタイミング解析結果から着目パスにおけるタイミングスラック量を取得するスラック量取得手段と、
前記着目パスにおける理想電圧における基準遅延時間とそのDC的電源電圧依存性を得る依存性取得手段と、
前記DC的電源電圧依存性に基づいて、タイミングスラック量と等価な遅延変動量を示すDC的電圧ドロップ量を得るドロップ量取得手段と、
前記DC的電圧ドロップ量に基づいて前記基準遅延時間に対するノイズ許容量を得る許容値取得手段と、
電源ノイズ解析結果から着目パスにおける電源ノイズ波形を得るノイズ波形取得手段と、
電源ノイズ波形に対して前記基準遅延時間内におけるノイズの積分値を順次算出し、該算出した複数の積分値から積分量最大値を得る最大値取得手段と、
前記ノイズ許容量と前記積分量最大値とを比較する比較手段と、
比較結果に基づき、着目パスにおける電源ノイズ量を低減するためデカップリングセルを追加配置する配置手段と、
を備えた、ことを特徴とする請求項8に記載のデカップリングセル配置装置。
【請求項10】
前記スラック量取得手段は、着目パスのパス遅延値に対して電源電圧変動の許容値を設定し、その設定したパス遅延値に対するタイミングスラック量を取得する、ことを特徴とする請求項9に記載のデカップリングセル配置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−250630(P2008−250630A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90496(P2007−90496)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】