説明

デジタル放送用受信装置

【課題】受信状況に応じて、妨害となる通信信号が入力した場合これを効果的に抑圧し、受信性能が劣化することを防止すること。
【解決手段】妨害信号検出回路2は、デジタル放送の受信信号から特定の周波数成分の信号が出力状態と停止状態を繰り返すバースト性の妨害信号を検出する。妨害信号が検出された場合には、フィルタ回路3の動作を有効化し受信信号に対し妨害信号の周波数成分を抑圧する。妨害信号が検出さない場合にはフィルタ回路3の動作を無効化し、フィルタ回路3の挿入による受信性能の劣化をなくす。また、妨害信号が検出された場合であっても、チューナ回路4にて選局しているチャネルの周波数が所定範囲内にないときにはフィルタ回路3の動作を無効化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地上デジタル放送などのデジタル放送を受信する装置に係り、特に妨害信号に対する受信特性の最適化を図ったデジタル放送用受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国内における地上デジタルテレビ放送は2003年に開始され、現在は放送エリアを拡大しつつ視聴者数を伸ばしている。また、CATVサービスに加入している家庭においても、地上デジタル放送を異なる周波数チャネルで伝送するパススルー方式を用いることで、専用のCATV用STBを使用することなく、地上デジタル放送受信装置を使用して受信することが可能である。
【0003】
地上デジタルテレビ放送は、家庭用デジタル放送受信装置だけでなく、車載用途、携帯電話用途などの移動体用デジタル放送受信装置でも有効に受信できる。これは、デジタル変調方式にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)変調方式を採用し移動体受信に優れた放送システムであること、チャネル帯域の一部分を用いて伝送される1セグメント放送と呼ばれる移動体向け放送が開始されていることによる。
【0004】
デジタルテレビ放送では周波数分割された放送チャネルが使用されている。所望チャネルを受信する場合、所望チャネル以外の周波数チャネルは妨害信号となるため、受信装置の初段にフィルタを設けてこれを抑圧することで好適な受信特性を得ることができる。このフィルタは、所定のカットオフ周波数を有するローパスフィルタとすることで、カットオフ周波数より高い周波数信号を効果的に抑圧することができる。例えば特許文献1には、受信すべきチャネルの周波数から1オクターブ以内にカットオフ周波数を持つフィルタを介して出力する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−45394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地上デジタルテレビ放送はUHF帯の周波数を用いてサービスが行なわれているが、2011年に予定されているアナログ放送の停波以後は、地上デジタル放送の周波数帯域が一部変更される予定である。これにより、以下の課題が発生することが予想される。
【0007】
図10は地上デジタル放送の周波数帯域を示す図である。
符号901は現在の地上デジタル放送の周波数帯域で、約470MHzから約770MHzが使用されている。これには中心周波数が473+1/7MHz(第13チャネル)から、中心周波数が767+1/7MHz(第62チャネル)まで、1チャネルあたり6MHzの周波数帯域幅が全50チャネル分含まれている。
【0008】
符号902は、2011年のアナログ停波以降の地上デジタル放送で使用される周波数帯域であり、約470MHzから約710MHzの範囲に変更される。つまり、地上デジタル放送の上限は中心周波数707+1/7MHz(第52チャネル)となり、符号903で示す710MHzより上側の周波数帯域は、放送以外の通信システムにて使用される予定である。
【0009】
従って地上デジタル放送用受信装置は、2011年までは770MHzまでの周波数帯域901に対応する必要があるが、2011年以降は710MHzまでの周波数帯域902に対応すればよい。そして、710MHzから上側の周波数帯域903で使用が予定されている通信システムの信号は、地上デジタル放送用受信装置にて所望チャネルを受信する際の妨害信号となることが予想される。なお、2011年までは710MHzから上側の周波数帯域903は地上デジタル放送で使用されるため、それまでの期間はこの帯域903の信号を抑圧することはできない。
【0010】
一方符号904は、CATVシステムで使用されている周波数帯域で、90MHzから770MHzまで広帯域にわたる。CATVでは独自の放送以外に、パススルー方式による地上デジタル放送の伝送が実施されており、これにより市販の地上デジタル放送用受信装置にて地上デジタル放送の番組の視聴を可能としている。パススルー方式では、2011年以降も710MHzより上側の周波数帯も含めて使用されると見られ、またCATV事業者によっては、地上デジタル放送を低い周波数に周波数変換して伝送する場合もある。よって、継続して90MHz〜770MHzの広い帯域904に対応する必要がある。
【0011】
従って、帯域904に示すCATV信号を受信しているデジタル放送用受信装置の場合には、前記帯域903で示した710MHzより上側の周波数帯域で使用される通信信号が漏れ込んで妨害信号となることも予想される。
【0012】
前記特許文献1の技術によれば、受信すべきチャネルに対応して決められたカットオフ周波数を持つフィルタが自動的に挿入される構成である。よって、妨害信号が存在しない場合にもフィルタが常に挿入されることになり、それによる信号損失が発生する。
【0013】
本発明の目的は、デジタル放送用受信装置の受信状況に応じて、妨害となる通信信号が入力した場合これを効果的に抑圧し、受信性能が劣化することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のデジタル放送用受信装置は、デジタル放送の受信信号から特定の周波数成分を有する妨害信号を検出する妨害信号検出回路と、受信信号に対し妨害信号の周波数成分を抑圧するフィルタ回路と、フィルタ回路の出力信号に対し選局処理と復調処理と誤り訂正処理を行うチューナ回路と、チューナ回路の出力信号に対しデジタル伸張処理を行う信号処理回路と、フィルタ回路の動作の有効化と無効化を切替える制御部を備える。制御部は、妨害信号が検出された場合にはフィルタ回路の動作を有効化し、妨害信号が検出さない場合にはフィルタ回路の動作を無効化する。
【0015】
ここに前記妨害信号検出回路は、特定の周波数成分の信号が出力状態と停止状態を繰り返すバースト性の信号形態であるとき妨害信号であると判定する。
【0016】
また前記制御部は、妨害信号が検出された場合であって、チューナ回路にて選局しているチャネルの周波数が所定範囲内のときにはフィルタ回路の動作を有効化し、チューナ回路にて選局しているチャネルの周波数が所定範囲内にないときにはフィルタ回路の動作を無効化する。
【発明の効果】
【0017】
妨害となる通信信号が入力する期間だけフィルタが動作するため、通信信号を効果的に抑圧するとともに、フィルタの挿入損失により受信性能が劣化することを最小限にとどめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るデジタル放送用受信装置の第1の実施例を示すブロック図である。
【図2】地上デジタル放送の周波数チャネル配置とフィルタ回路3の特性を示す図である。
【図3】本実施例における妨害信号検出回路2の一例を示すブロック図である。
【図4】バースト検出回路23における妨害信号の検出動作を説明する図である。
【図5】バースト検出回路23に地上デジタル放送信号が入力した場合の動作を説明する図である。
【図6】フィルタ回路3の有効化と無効化を制御する際のフローチャートである。
【図7】本発明に係るデジタル放送用受信装置の第2の実施例を示すブロック図である。
【図8】フィルタ回路3の有効化と無効化の制御条件の例を示す図である。
【図9】フィルタ回路3の有効化と無効化を制御する際のフローチャートである。
【図10】地上デジタル放送の周波数帯域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態では、妨害信号となる放送用以外の通信信号が入力されたことを検出した場合、フィルタを動作させて通信信号を抑圧する構成とした。以下、本発明の2つの実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明に係るデジタル放送用受信装置の第1の実施例を示すブロック図である。10は本実施例のデジタル放送用受信装置であって、1は高周波信号入力端子、2は妨害信号検出回路、3はフィルタ回路、31は第1のスイッチ、32は第2のスイッチ、4はチューナ回路、5は信号処理回路、6は映像音声処理回路、7は中央演算処理回路(CPU)である。
【0021】
以下、本実施例の装置の動作について説明する。放送局から送信される放送信号は図示しないアンテナで受信され、受信された高周波信号は高周波信号入力端子1から入力する。入力する高周波信号の周波数は、例えば地上デジタル放送システムで使用されている470MHzから770MHz、および2011年以降の470MHzから710MHzを想定する。妨害信号検出回路2は高周波信号入力端子1に入力した高周波信号を検波して、妨害信号となる通信信号(710MHz以上)が含まれているか否かを判定する。そして、判定結果に基づき第1、第2のスイッチ31,32を制御するための制御信号を出力する。入力した高周波信号に通信信号が含まれていると判定した場合は、入力した高周波信号がフィルタ回路3を経由してチューナ回路4に供給されるように第1、第2のスイッチ31,32を制御する。すなわち、フィルタ回路3を有効化する。入力した高周波信号に通信信号が含まれていないと判定した場合は、入力した高周波信号がフィルタ回路3を経由することなく、チューナ回路4に供給されるように第1、第2のスイッチ31,32を制御する。すなわち、フィルタ回路3を無効化する。
【0022】
なお、第1、第2のスイッチ31,32が切り替わる際に入力された高周波信号のチューナ回路4への供給が瞬断することが考えられるが、地上デジタル放送には時間インターリーブなどの手法が取り入れられており、後段の誤り訂正処理により復元可能である。
【0023】
フィルタ回路3は、妨害信号となる通信信号の周波数帯域(710MHzより上側)を抑圧し、それ以下の地上デジタル放送の周波数帯域を通過させる特性を持つ。フィルタ回路3を有効化することで、入力した高周波信号に含まれる通信信号を抑圧してチューナ回路4に供給することができる。また、入力した高周波信号に通信信号が含まれていない場合は、フィルタ回路3を無効化する。すなわち、フィルタ回路3を無効化することで、入力した高周波信号を何ら減衰することなくチューナ回路4に供給することができる。
【0024】
チューナ回路4は、図示しない選局回路とデジタル復調回路と誤り訂正回路などから構成されている。選局回路では、チューナ回路4に入力される複数のチャネル周波数の中から、ユーザが視聴を所望する周波数チャネルをデジタル復調回路の入力周波数(例えば57MHz)に変換する選局動作を行なう。選局動作は、局部発振回路が生成する局部発振信号を制御することで行う。なお、選局回路の初段には雑音指数が良く利得の高い低雑音増幅回路(LNA)を設け、受信した地上デジタル放送信号の電界強度が弱い場合でも視聴できるようにしている。また、選局回路には自動利得制御(AGC)回路を設け、デジタル復調回路への出力電圧を一定に保つようにしている。
【0025】
デジタル復調回路では入力された信号に対してデジタル復調処理を行ない、誤り訂正回路に供給する。誤り訂正回路は、デジタル復調された信号に対して誤り訂正符号による誤り訂正処理を施す。誤り訂正処理を施された信号は、トランスポートストリーム形式のデジタルデータ(TS信号)としてチューナ回路4から出力される。
信号処理回路5ではTS信号を入力し、デジタル圧縮された映像信号と音声信号に対する伸張処理を行う。さらに映像音声処理回路6は映像信号と音声信号を、出力端子9から図示しないモニタやスピーカへ出力する。
【0026】
チューナ回路4における選局動作、デジタル復調動作、誤り訂正動作は、CPU7により制御される。ユーザが視聴する番組を変更する場合、リモコンなどから入力された操作信号はCPU7に送られ、CPU7はこの信号に基づきチューナ回路4の選局動作を制御する。
【0027】
以下、各部の構成と動作について詳細に説明する。まず、妨害信号の発生とこれに対するフィルタ回路3の機能について説明する。
【0028】
図2は、地上デジタル放送の周波数チャネル配置とフィルタ回路3の特性を示す図である。縦軸は電力、横軸はチャネル番号である。
符号301は、2011年までの地上デジタル放送の周波数チャネルの配置を模式的に示したものである。UHF帯である周波数470MHzから770MHzの範囲に、第13チャネルから第62チャネルまでの50本のチャネルが配置され、1つのチャネルが占有する帯域幅は約6MHzである。このうち第52チャネルは、中心周波数が707+1/7MHz、周波数帯域は約704MHzから710MHzである。
【0029】
符号302は、アナログ放送が停波する2011年以降の地上デジタル放送の周波数チャネルの配置である。第52チャネルより上側のチャネルが廃止され、第52チャネルが上限周波数チャネルとなる。すなわち、地上デジタル放送の周波数帯域の上限は約710MHzとなる。廃止される710MHz以上の周波数帯域は通信システムにて使用される予定であり、符号303は予想される通信信号の帯域を示す。
【0030】
符号304は、本実施例のフィルタ回路3の通過特性を示し、地上デジタル放送302の上限周波数チャネルである第52チャネル以下を減衰なく通過させ、710MHz以上の通信信号303をできる限り抑圧させる特性としている。このとき、通過させる第52チャネルと抑圧させる通信信号303が近接して配置されるため、フィルタ特性は急峻な勾配とする必要がある。急峻な特性を持つフィルタの実現が難しい場合は、通過帯域内の平坦度、通過損失、および抑圧帯域の減衰度を鑑み、実用上問題のないフィルタ特性を決定する。また、フィルタ回路3の通過特性は符号304で示すローパスフィルタ(LPF)としたが、これに限定しない。通信信号の周波数帯域303を抑圧することができれば、特定の周波数帯域のみを抑圧するバンドエリミネートフィルタを用いてもよい。また、第13チャネルより下側の周波数も抑圧させるバンドパスフィルタ(BPF)を用いれば、UHF帯以外の周波数成分を抑圧することができ妨害対策がより向上する。
【0031】
ここで、通信信号303の存在により予想される地上デジタル放送への妨害について説明する。受信環境によっては、遠距離から伝送されてくる地上デジタル放送の電界強度よりも通信信号の電界強度が大きくなる場合がある。受信装置に、比較的弱い電力のデジタル放送の信号と比較的強い電力の通信信号とが混入した状態で入力すると、次の問題が発生する。通信信号の混入した信号がそのままチューナ回路4に入力した場合、チューナ回路4内の選局回路に設けられるLNAが、強力な通信信号のため出力信号が歪むことがある。また、デジタル放送信号の強度を上げるためにAGC回路の利得を増加すると、通信信号まで増幅してしまい、増幅された通信信号によってAGC回路より後段の回路に歪みが生じてしまう。増幅回路に歪みが発生することにより、デジタル放送信号の振幅変化やデジタル放送信号のCN状態の劣化が発生し、その結果として後段の誤り訂正回路で訂正ができないほどの復号誤りが発生し、映像や音声にノイズが生じてしまう。
【0032】
また、妨害となる通信信号は信号出力がON状態とOFF状態を繰り返すバースト性の信号形態として運用されることが予想される。選局回路内部のAGC回路の利得制御機能は、受信信号の強度を判断してから利得制御結果に反映するまでに一定の時間を要する。受信信号に含まれる通信信号のバースト形態のON状態とOFF状態の周期によっては、AGC回路が誤動作を起こし、デジタル放送信号の振幅が一定にならないことがあり得る。このときもデジタル復調回路以降の受信性能が劣化してしまい、その結果として後段の誤り訂正回路で訂正ができないほどの復号誤りが発生し、映像や音声にノイズが生じてしまう。こうした受信性能の劣化を防ぐために、デジタル放送信号以外の通信信号はチューナ回路4に入力される前に抑圧する必要がある。
【0033】
このような問題に対し、フィルタ回路3を設けることで、チューナ回路4に入力する妨害となる通信信号を抑圧することができる。チューナ回路4では、通信信号が混入することによる受信特性の劣化が発生することはなくなる。また、入力高周波信号に通信信号が含まれていない場合はフィルタ回路3を無効化するため、デジタル放送の信号はフィルタ回路3で減衰することなくチューナ回路4に供給される。
【0034】
図3は、本実施例における妨害信号検出回路2の一例を示すブロック図である。その構成は、結合回路21、バンドパスフィルタ(BPF)22、バースト検出回路23を有し、バースト検出回路23にて妨害信号となる通信信号を検出する。高周波信号は端子24から入力し、かつ端子25から出力して後段のフィルタ回路3またはチューナ回路4へ供給される。端子26からは、第1、第2のスイッチ31,32を制御する制御信号が出力される。
【0035】
妨害信号検出回路2の動作について説明する。結合回路21は、端子24から端子25へ向う高周波信号の信号線に分岐線を近接して配置する構成とし、端子24に入力した高周波信号を分岐させてBPF22に供給する。信号線と分岐線は基板上にパターン状に導体を形成することで、必要な結合度が得られる。その際、BPF22に供給する高周波信号の電力を、端子25へ向う高周波信号の電力に比べて微小な電力とすることで、妨害信号検出回路2を挿入したことによる損失を少なくする。よって、弱電界における受信装置の受信感度特性に与える影響を軽減することができる。一方、妨害信号である通信信号は、デジタル放送信号に比較して強力な信号電力で入力されるため、結合回路21で分岐された後でも通信信号の有無を十分判定することが可能である。この場合、結合回路21で分岐されてBPF22に供給される信号を増幅する増幅回路を設けてもよい。なお、結合回路21を分配回路として構成し、端子24に入力した高周波信号電力をほぼ等分に分配し、一方を端子25に他方をBPF22に供給する構成としても、通信信号の有無を検出する上では何ら問題ない。
【0036】
バンドパスフィルタ(BPF)22は、妨害信号となる通信信号の周波数成分を抽出し、他の周波数成分(地上デジタル放送の帯域)を減衰させる特性を有する。何らかの理由により地上デジタル放送の信号電力が変動した場合でも、BPF22を通すことで、放送信号が後段のバースト検出回路23に入力されることはなく、バースト検出回路23の誤動作を防ぐことができる。この例では、結合回路21とBPF22を別ブロックとして構成しているが、一体化した構成とすることもできる。そのためには、結合回路21を基板上のパターンとして形成する際に、BPF22で通過させる周波数帯域で強く結合するように構成すればよい。なお、結合回路21とBPF22を一体化した場合でも、別途BPFを設ければ、それだけ放送信号に対する減衰動作が確実なものとなる。また、BPF22の経路上に増幅回路を設けた場合には、結合回路21における結合度と増幅回路の利得とを調整することにより、バースト検出回路23にて検出する妨害信号の信号電力を調整することができる。すなわち、電力がある閾値以上の妨害信号だけを検出することが可能となる。
【0037】
バースト検出回路23は妨害信号の有無を検出する回路である。妨害信号となる通信信号は、信号出力がON状態とOFF状態を繰り返すバースト性の信号形態で運用されることが予想される。よってバースト検出回路23では、このバースト形態の特徴を捉えることで妨害信号の有無を判定する。バースト検出回路23は妨害信号の検出結果に基づき、出力端子26から第1、第2のスイッチ31,32に制御信号を送り、妨害信号を検出したときのみフィルタ回路3が有効化されるように制御する。
【0038】
図4は、バースト検出回路23における妨害信号の検出動作を説明する図である。符号401は、入力する妨害信号、すなわちバースト信号の波形を模式的に示したもので、横軸は時間軸である。図示した波形は分かりやすく描いたもので、実際の信号と一致している訳ではない。例えば、バースト信号として720MHzの信号が100μsecの期間出力された場合、その期間に含まれる波数は72000周期となる。さらに変調がかけられるため、振幅、位相、周波数なども一定になるとは限らない。また、バースト信号の出力される期間(ON期間)と停止される期間(OFF期間)の比率についても任意である。例えばバーストの周期が100msec、バースト1つの出力期間が300μsecとすると、バースト信号の出力期間(ON期間)の出現する比率は0.3%と極めて低いものとなる。
【0039】
バースト検出回路23内では、例えばダイオードを用いて包絡線検波を行う。符号402は、バースト信号401を包絡線検波した結果を示す。バースト信号の出力期間(ON期間)のみ包絡線検波出力が現れ、停止期間(OFF期間)には包絡線検波出力は現れない。包絡線検波信号が、符号402のようにある間隔をおいて出力されるときにバースト性の信号、すなわち妨害信号であると見なすことができる。具体的には微分回路を用いることで、バースト的な変化をする信号とそれ以外の信号とを区別することができる。
【0040】
バースト性の信号が検出されると、バースト検出回路23は出力端子26から第1、第2のスイッチ31,32に対して、フィルタ回路3を有効化させるための制御信号を出力する。符号403は制御信号の一例であり、有効化を「1」、無効化を「0」で表している。この例での制御信号は、バースト性信号が検出されている期間は継続して有効化「1」を出力し、バースト性信号が検出されない期間は無効化「0」を出力する。あるいは他の制御信号として、バースト性信号が一定期間にわたり検出できるか、あるいは一定期間にわたり検出できないかを判定し、バースト性信号の検出状態に変化があったときのみ、フィルタ回路3の有効化と無効化の状態を切り替えるための制御信号を出力してもよい。
【0041】
図5は、比較のためにバースト検出回路23に地上デジタル放送信号が入力した場合の動作を説明する図である。符号501は、地上デジタル放送信号の波形を模式的に示したものである。実際のデジタル放送信号は多数の周波数成分を使用して伝送されるため、さまざまな振幅、位相、周波数が含まれる。ただし、前記図4のバースト信号401のように信号が途切れて伝送されることはない。符号502は、地上デジタル放送信号501を包絡線検波した結果を示す。包絡線検波信号502は入力する放送信号501の振幅に依存し、ここでは振幅が一定の場合を示す。放送信号501の振幅が変動すれば、それに応じて包絡線検波信号502の振幅も変動する。しかし、放送信号501はバースト信号のように信号が停止する期間がないので、これを誤って妨害信号と判定することはない。
【0042】
以上のように、本実施例の妨害信号検出回路2及びバースト検出回路23は、高周波信号入力端子1で受信した高周波信号に通信信号(妨害信号)の特徴であるバースト性の信号が含まれているか否かを検出する訳であるが、後段(第1のスイッチ31以降)に供給する高周波信号電力に影響を与えることなく検出することが可能である。
【0043】
なお、ここで示した妨害信号検出回路2はバースト性の妨害信号を検出する一例を示したものであり、妨害信号の形態に応じて、適宜その構成を変更して用いればよい。例えば、結合回路21の結合周波数やBPF22の通過帯域幅を調整した上で、バースト検出回路23は、入力する信号電力がある閾値以上かどうかでフィルタ回路3を制御する構成とすることもできる。これによれば、バースト性の有無とは関係なくある閾値以上の電力を有する妨害信号が入力した場合に、フィルタ回路3を有効化することが可能である。
【0044】
図6は、フィルタ回路3の有効化と無効化を制御する際のフローチャートである。ステップS101は本制御の開始であり、受信動作の開始に連動して行う。ステップS102において、妨害信号検出回路2は、入力された信号に妨害となる通信信号が含まれているか否かを判定する。妨害信号検出回路2により通信信号が含まれていると判定された場合は、ステップS103へ進み、第1、第2のスイッチ31,32を制御してフィルタ回路3を有効化する。妨害信号検出回路2により通信信号が含まれていないと判定された場合は、ステップS104へ進み、第1、第2のスイッチ31,32を制御してフィルタ回路3を無効化する。ステップS103ないしステップS104が実行された後は、ステップS102に戻り上記の動作を繰り返し実行する。
【0045】
この動作では、フィルタ回路3の有効化、無効化が決定された後も、継続して通信信号の有無を検出している。その結果、妨害となる通信信号が検出されていなかった場合でも、通信信号の混入が検出された時点で直ちにフィルタ回路3が有効化され、通信信号が抑圧される。よって、受信特性が通信信号によって影響を受けることがない。また、妨害となる通信信号が検出されていた場合でも、通信信号が検出されなくなった時点で直ちにフィルタ回路3が無効化され、デジタル放送信号の受信信号を減衰させずにチューナ回路4へ供給できる。よって、常に最適な受信特性が維持される。
【0046】
以上のように本実施例の構成によれば、デジタル放送システムが使用する周波数帯域の一部が放送用途以外に使用され、その信号がデジタル放送用受信装置10の受信動作に対する妨害信号となった場合でも、フィルタ回路3の機能の有効化/無効化を好適に制御することで妨害信号を抑圧しデジタル放送信号の減衰を最小にとどめることができる。
【0047】
すなわち、2011年のアナログ放送停波までの期間は現在のデジタル放送をフィルタ挿入による劣化がなく受信するとともに、アナログ放送停波以降に710MHz以上の帯域で予定される通信信号による妨害を好適に抑圧するデジタル放送用受信装置を実現できる。
【0048】
また、CATVシステムでは周波数変換パススルー方式に対応するためにアナログ放送停波以降も使用される710MHz以上のデジタル放送について、フィルタ挿入による劣化もなく受信するデジタル放送用受信装置を実現できる。さらに、CATVにおいて周波数変換パススルー方式によって地上デジタル放送を視聴する場合、放送信号以外の通信信号が混入した際にフィルタを動作させることで通信信号を抑圧し、妨害のない良好な受信性能が実現できる。
【実施例2】
【0049】
図7は、本発明に係るデジタル放送用受信装置の第2の実施例を示すブロック図である。第1の実施例(図1)と同様の機能を有するブロックには同一の符号を付し、その説明は省略する。図1の構成と異なる点は、第1、第2のスイッチ31,32を制御するスイッチ制御回路8を設け、スイッチ制御回路8は妨害信号検出回路2からの出力信号だけでなく、チューナ回路4からの出力信号を組み合わせて第1、第2のスイッチ31,32に制御信号を送るようにした。すなわち、フィルタ回路3の有効化と無効化は、妨害信号の有無と選局チャネルの状態で決定する。ここにスイッチ制御回路8は、チューナ回路4を介して中央演算処理回路(CPU)7から制御を受ける構成であるため、フィルタ回路3の有効化と無効化の制御はCPU7から行うことが可能である。
【0050】
なお、図7で示した構成の変形として、スイッチ制御回路8は、チューナ回路4の出力信号(選局チャネルの情報)に応じて、妨害信号検出回路2の妨害信号検出動作そのものをON/OFF制御してもよい。さらには、チューナ回路4からの出力信号(選局チャネルの情報)はユーザが視聴を所望する周波数チャネルに基づくので、CPU7や信号処理回路5など他のブロックから取得する構成でもよい。
【0051】
図8は、フィルタ回路3の有効化と無効化の制御条件の例を示す図である。選局されている周波数チャネルと妨害信号の有無をパラメータとして、フィルタ回路3の有効化/無効化の状態を表で示している。ここでは、2つの制御モードの例を示す。
【0052】
制御モード1では、チャネルAは第13チャネルから第52チャネルであり、チャネルBは第53チャネルから第62チャネルである。チャネルAに含まれる周波数チャネルが選局されていて、かつ通信信号等の妨害信号が検出されたときのみフィルタ回路3を有効化し、その他の条件ではフィルタ回路3を無効化する。つまり、チャネルBに含まれる周波数チャネルが選局されているときは、妨害信号が検出されてもフィルタ回路3を無効化する。なお、CATVシステムでデジタル放送用受信装置10を使用する場合には、チャネルAに含まれるチャネルは第13チャネルより周波数が低い側の周波数チャネルを含んでもよい。
【0053】
制御モード1によれば、ユーザが視聴を所望する周波数チャネルが第53チャネル以上の場合にはフィルタ回路3の有効化が機能しない。よって、第53チャネル以上で地上デジタル放送が実施されている2011年までの間、および2011年以降にCATVシステムで第53チャネル以上の周波数チャネルを視聴する場合でも、妨害信号検出回路2の誤動作等によりフィルタ回路3が有効化されてしまうことはなく、第53チャネル以上の周波数チャネルを安定して視聴することが可能である。第52チャネル以下の周波数チャネルを視聴する場合は、第1の実施例と同様の動作が実現されるため、2011年以降に通信信号等の妨害信号が混入した場合にはフィルタを有効化して妨害信号を抑圧し、第52チャネル以下の周波数チャネルを好適に視聴することが可能である。
【0054】
制御モード2では、チャネルAを2つに分け、チャネルA1を通信信号の周波数帯域から離れた第13チャネルから第42チャネル、チャネルA2を通信信号の周波数帯域に近接する第43チャネルから第52チャネルとした。この場合は、通信信号の周波数帯域に近接するチャネルA2に含まれる周波数チャネルが選局されていて、かつ通信信号等の妨害信号が検出されたときのみフィルタ回路3を有効化し、その他の条件ではフィルタ回路3を無効化する。つまり、通信信号の周波数帯域から離れたチャネルA1に含まれる周波数チャネルが選局されているときは、妨害信号が検出されてもフィルタ回路3を無効化する。その理由は以下である。
【0055】
受信特性に妨害となる710MHzより高い周波数の通信信号が混入している場合でも、例えば第13チャネルは中心周波数が約473MHzであり通信信号の周波数から大きく離れているため、通信信号による受信特性の影響は少ない。逆にこのような場合にフィルタ回路3を有効化すると、フィルタ回路3の通過周波数帯域の挿入損失分により視聴する周波数チャネルの信号が減衰し、弱電界地域では最悪視聴不可能な状況が発生する可能性がある。よって、弱電界地域において、通信信号の影響が少ない周波数チャネルを受信するときは、フィルタ回路3を使用せずに無効化した方が受信特性の点で望ましいと言える。ここでは通信信号の影響が少なくなる範囲(チャネルA1)を第13チャネルから第42チャネルとしたが、その範囲は受信環境に応じて適宜決めればよい。このように制御モード2によれば、フィルタ回路3の妨害抑圧特性を効果的に利用しつつ、フィルタ回路3の挿入損失による影響を最小にすることができる。
【0056】
ここでは例として、妨害を受けやすいチャネルA(またはチャネルA2)には連続する周波数チャネルを割り当てたが、チューナ回路4の構成によっては、妨害信号の周波数と特定の関係にある周波数のチャネル(特定チャネル)が妨害を受けやすい場合がある。このような例として、チューナ回路4がシングルコンバージョン方式の場合には、通信信号で使用する周波数のイメージ周波数となる周波数チャネルが特定チャネルであり、チューナ回路4がダイレクトコンバージョン方式の場合には、通信信号で使用する周波数と整数比の関係に当たる周波数チャネルが特定チャネルである。このような場合には、チャネルA(またはチャネルA2)には、特定チャネルを含めるのがよい。
【0057】
図9は、本実施例におけるフィルタ回路3の有効化と無効化を制御する際のフローチャートである。ここでは、図8の制御モード1を実行する場合について説明する。ステップS201で本制御を開始する。ステップS202では、チューナ回路4からの選局チャネル情報により、視聴する周波数チャネルがチャネルA(第13チャネルから第52チャネル)とチャネルB(第53チャネルから第62チャネル)のいずれに属するかを判定する。チャネルAに属していればステップS203に進み、妨害信号検出回路2は、入力された信号に妨害となる通信信号が含まれているか否かを判定する。妨害信号検出回路2により通信信号が含まれていると判定された場合は、ステップS204へ進み、スイッチ制御回路8は第1、第2のスイッチ31,32を制御してフィルタ回路3を有効化する。
【0058】
一方、ステップS202の判定で視聴する周波数チャネルがチャネルBに属していれば、ステップS205へ進む。また、ステップS203の判定で妨害信号検出回路2により通信信号が含まれていないと判定された場合も、ステップS205へ進む。ステップS205では、スイッチ制御回路8は第1、第2のスイッチ31,32を制御してフィルタ回路3を無効化する。ステップS204ないしステップS205が実行された後は、ステップS202に戻り上記の動作を繰り返し実行する。
【0059】
このようにして、選局している周波数チャネルが、チャネルB(第53チャネルから第62チャネル)に属していれば、妨害信号の有無に関係なく、フィルタ回路3を強制的に無効化する。ここでは、制御モード1の場合を述べたが、制御モード2の場合も判定する周波数チャネルの範囲を変更するだけで同様に実行できる。
【0060】
本実施例によれば、フィルタ回路3の機能の有効化/無効化を制御する際に、選局する周波数チャネルの情報も考慮して制御する構成としたので、妨害信号の抑圧性能と受信感度性能の向上をバランス良く実現することが可能となる。
【0061】
以上述べた各実施例では、フィルタ回路3の有効化/無効化の切替はその受信状況に応じて自動的に実行されるものであるが、これに加えて、ユーザの操作により、フィルタ回路3の有効化/無効化の手動切替を行うことも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
2…妨害信号検出回路、3…フィルタ回路、31…第1のスイッチ、32…第2のスイッチ、4…チューナ回路、5…信号処理回路、6…映像音声処理回路、7…中央演算処理回路(CPU)、8…スイッチ制御回路、10…デジタル放送用受信装置、21…結合回路、22…バンドパスフィルタ(BPF)、23…バースト波検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送を受信するデジタル放送用受信装置において、
デジタル放送の受信信号から特定の周波数成分を有する妨害信号を検出する妨害信号検出回路と、
上記受信信号に対し上記妨害信号の周波数成分を抑圧するフィルタ回路と、
該フィルタ回路の出力信号に対し選局処理と復調処理と誤り訂正処理を行うチューナ回路と、
該チューナ回路の出力信号に対しデジタル伸張処理を行う信号処理回路と、
上記フィルタ回路の動作の有効化と無効化を切替える制御部を備え、
該制御部は、上記妨害信号検出回路にて上記妨害信号が検出された場合には上記フィルタ回路の動作を有効化し、上記妨害信号検出回路にて上記妨害信号が検出さない場合には上記フィルタ回路の動作を無効化することを特徴とするデジタル放送用受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル放送用受信装置において、
前記妨害信号検出回路は、前記特定の周波数成分の信号が出力状態と停止状態を繰り返すバースト性の信号形態であるとき前記妨害信号であると判定することを特徴とするデジタル放送用受信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデジタル放送用受信装置において、
前記妨害信号検出回路は前記妨害信号を検出するために、基板上のパターン結合により前記特定の周波数成分を抽出することを特徴とするデジタル放送用受信装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載のデジタル放送用受信装置において、
前記制御部は、前記妨害信号検出回路にて前記妨害信号が検出された場合であって、前記チューナ回路にて選局しているチャネルの周波数が所定範囲内のときには前記フィルタ回路の動作を有効化し、前記チューナ回路にて選局しているチャネルの周波数が上記所定範囲内にないときには前記フィルタ回路の動作を無効化することを特徴とするデジタル放送用受信装置。
【請求項5】
請求項5に記載のデジタル放送用受信装置において、
前記フィルタ回路の動作を有効化するのは、前記チューナ回路にて選局しているチャネルの周波数が前記妨害信号の周波数に近接する場合であることを特徴とするデジタル放送用受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−254390(P2011−254390A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128042(P2010−128042)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】