説明

データ処理方法、データ処理装置およびデータ記録方法

【課題】 インク同士の接触によって生じる凝集を軽減しつつも、どうしても発生する凝集箇所を好適に配置させることによって一様性に優れた画像を出力する。
【解決手段】
例えば凝集を起こすなどの弊害が懸念されるインク色を特定色とし、特定色とこれ以外のインクに対し、排他的でありながらその積層過程においてドットの配置の低周波数成分が抑えられるようなマスクパターンを用意する。これにより、画像の完成に至る各段階のドットの接触や重なりを、極力排除することが出来、色ムラや時間差ムラを抑制することができる。更に、ドットの接触や重なりが排除しきれない場合でも、そのような接触箇所が好適に分散して配置されるので、視覚的に目障りになりにくい画像を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色のインクを滴として記録媒体に記録する際に特徴的なマスクパターンを使用して画像を形成する際の、データ処理方法、データ処理装置およびデータ記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年来のパーソナルコンピュータ等情報処理機器の普及に伴い、画像形成端末としての記録装置も急速に発展および普及してきた。特に種々の記録装置の中でも、インクを滴として吐出させて様々な記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置は、低騒音でありながら高密度かつ高速な記録動作が可能で、カラー記録にも容易に対応でき、低廉である。このように、優れた特長を数々有していることから、インクジェット記録装置は今やパーソナルユースの記録装置の主流となりつつある。
【0003】
しかし、インクジェット記録ヘッドの複数のノズル間においては、その製造工程上、どうしてもインクを吐出する方向や量に僅かなばらつきが発生してしまう。また、シリアル型の記録装置においては、各記録走査の間に行われる副走査量(紙送り)に、多少なりとも構成上の誤差を含んでいる。このような誤差やばらつきは、インクが記録された記録媒体において、スジや濃度ムラのような画像弊害の原因となる。
【0004】
このような画像弊害を回避するために、シリアル型のインクジェット記録装置においては、マルチパス記録という記録方法を採用することが多い。
【0005】
図1は、マルチパス記録を説明するために、記録ヘッドおよび記録パターンを模式的に示した図である。P1001は記録ヘッドを示し、ここでは簡単のため8個のノズルを有しているものとする。ノズルは、図のように第1および第2の2つのグループに分割され、各ノズル群には4つずつのノズルが含まれている。P0002AおよびP0002Bはマスクパターンを示し、各ノズルが記録を行うことが許容される画素(記録許容画素)を黒塗り、許容されない画素(記録非許容画素)を白塗りで示している。各ノズル群が記録するパターンは互いに補完の関係にあり、これらを重ね合わせると4×4の画素に対応した領域の記録が完成される。
【0006】
P003およびP0004で示した各パターンは、記録走査を重ねていくことによって画像が完成されていく様子を示している。各記録走査が終了するたびに、記録媒体は図の矢印の方向にグループ幅分ずつ搬送される。よって、記録媒体の同一領域(各ノズル群の幅に対応する領域)は、2回の記録走査で画像が完成される。
【0007】
このようなマルチパス記録を採用することによって、上述したスジや濃度ムラのような画像弊害を低減することが出来る。各ノズルの吐出特性や搬送量にばらつきがあったとしても、これらの特性が広範囲に分散され、目立たなくなるからである。
【0008】
図1では、同一の画像領域に対して2回の記録走査を行う2パスのマルチパス記録を例に説明したが、マルチパス記録はこれに限定されるものではない。より多い記録走査数で画像を完成させる構成であっても良い。マルチパス数が多くなればなるほど、各ノズルの吐出特性や搬送量のばらつきは、より広い範囲に分散されるので、より滑らかな画像を得ることが出来る。
【0009】
マルチパス記録の効果を十分に得るためには、同一の画像領域に対して行われる複数の記録走査の夫々で、ほぼ同数ずつのドットが記録されることが要される。記録するドット数に極端な偏りがあると、各ノズルの吐出特性や搬送量のばらつきが分散されなくなり、スジや濃度ムラのような画像弊害が低減されないからである。
【0010】
図1では記録データが100%デューティーである場合を例に説明したが、記録すべきドットデータは階調値や採用する面積階調法(量子化法)によって様々に変化する。このような状況に配慮し、いかなる面積階調法によるいかなる階調の画像データが入力された場合であっても、極力上記条件を満たすマスクパターンとして、記録許容画素と非許容画素がランダムに配置されたマスクパターンを生成する技術が開示されている。(例えば特許文献1参照。)そして、このような技術を実施した記録装置も数多く提供されている。
【0011】
マルチパス記録においては、上記条件に配慮しつつも、マスクパターンの配列を更に工夫することによって、記録装置特有の様々な機械的問題が画像に表れるのを抑制することが出来る。
【0012】
例えば、特許文献2には、分散性に優れ低周波数成分が高周波数成分に比べて抑えられたドット配置のマスクパターンを適用する方法が開示されている。マルチパス記録では、1回の記録走査の記録位置が他の記録走査に対してずれてしまった場合、使用しているマスクパターンの模様(テクスチャー)が視認される。特に記録ヘッドを記録媒体に対し往復で記録走査する場合に、このような現象は顕著に現れる。この場合であっても、特許文献2の方法を採用すれば、マスクパターンの模様が顕在化したとしても、分散性に優れ視覚的に好ましい模様であるので目障りになり難く、画像品位への影響が現れ難いのである。
【0013】
なお、特許文献2によれば、斥力ポテンシャルの概念を用いて記録許容画素の配置を決定するようなマスクパターンの生成方法が開示されている。このマスクパターンによれば、それを用いて形成されるドット同士が近接して配置されることをできるだけ避けるように構成されており、記録許容画素の配置を周波数成分で見ると、低周波数成分が少ないものとなる。
【0014】
ところで、近年のインクジェット記録システムにおいては、記録素子(ノズル)の高密度化、吐出周波数の高速化およびインクの種類の多様化が著しく、記録媒体の単位面積に対し単位時間に付与されるインクの量が増大化しつつある。この様な状況において、記録媒体によっては、インクの吸収速度がインクの付与速度に十分対応しきれない状況が生じて来た。具体的には、付与された複数のインク滴が、吸収前の記録媒体表面で互いに接触および融合し、画像問題を引き起こしていたのである。記録媒体上の隣接する位置に記録されたインク滴同士は、記録媒体への吸収が迅速に行われない場合、互いの表面張力によって引き合って大きな塊を形成する。このような塊を本明細書ではグレインと称する。一度このようなグレインが生成されると、次に隣接した位置に付与されたインク滴はさらにこのグレインに引き寄せられやすくなる。すなわち、最初に発生したグレインが核となって徐々に成長し、やがて大きなグレインを生成してしまうのである。特に、ブルー、レッド、およびグリーンのように、2種類以上のインクを同一画素に記録する場合には、これらインクがすべてほぼ同時に付与されると、ここに発生するグレインは更に大きくなり、これが原因でビ−ディングと称される画像弊害が招致される。
【0015】
ビーディングを低減させるには、各色のインクがなるべく分散した位置に記録されるようなマスクパターンを使用することが有効である。こうすることで、異なる色のインクから生成されるグレイン自体を極力抑えることが出来るからである。しかしながら、これだけでは、ビーディングの低減は必ずしも十分ではない。
【0016】
図2(a)〜(c)は、上記ビーディングの問題を説明するための模式図である。ここでは、マルチパス記録における1走査でシアン、マゼンタ、イエローの順にインクが記録媒体に付与される過程を段階的に示している。図2(a)は、シアンドット10Cが記録された直後の状態を示している。それぞれのシアンドット10Cは、使用するシアン用のマスクパターンに基づいて記録され、記録媒体に完全に吸収されるまで、図のように記録媒体の表面に盛り上がった状態で配置している。
【0017】
図2(b)は、シアンドット10Cが記録された後で記録媒体に吸収される前に、マゼンタドット10Mが、記録された直後の状態を示している。マゼンタドット10Mにおいても、使用するマゼンタ用のマスクパターンに基づいて記録され、記録媒体に完全に吸収されるまで、図のように記録媒体の表面に盛り上がった状態で配置している。シアンインクとマゼンタインクに用いられるマスクパターンは互いに異なるものであるが、マスクの記録許容画素の関係あるいは、各色の記録デューティーによっては、シアンドット10Cとマゼンタドット10Mが互いに接蝕する箇所も生じる。このような場合、これら2つのドットは互いの表面張力によって連結し、グレインを形成する。図ではこのような箇所を×印で示している。
【0018】
図2(c)は、シアンドット10Cおよびマゼンタドット10Mが記録された後で記録媒体に吸収される前に、イエロードット10Yが、記録された直後の状態を示している。イエロードット10Yにおいても、イエロー用のマスクパターンに基づいて記録され、記録媒体に完全に吸収されるまで、図のように記録媒体の表面に盛り上がった状態で配置している。イエローインクにおいても、シアンインクやマゼンタインクとは異なるマスクパターンを用いているが、シアンドット10Cやマゼンタドット10Mと接蝕する箇所も生じ、グレインが形成される。図ではこのような箇所を×印で示している。
【0019】
このように、シアン、マゼンタおよびイエローそれぞれに対し特許文献2に記載のような分散性の高いマスクを作成し、且つこれらが互いに異なるように配置にした場合であっても、図に示したようなグレインは発生し、不規則に散在する。そして、この状態がビーディングとして視認される結果となっていた。すなわち、特許文献2を含む従来のマスクパターンにおいては、異なるインク色が経時的に積層されて行く過程を考慮して作成されたものではなかったので、インクの吸収速度が記録速度に対応しきれない場合には、ビーディングが避けられなかったのである。
【0020】
このような問題に対応するため、特許文献3では、特許文献2に記載のマスクパターンの概念を更に発展させ、記録媒体上で生じるグレインを分散性の高い状態で配置させるように配慮されたマスクパターンが開示されている。すなわち、グレインは生じてしまうことを前提としつつも、これらグレインを分散性の高い状態で配置させるために、各色のマスクの論理積や論理和の低周波数成分を抑えるように、互いに関連性を持たせて設計するのである。以下、本明細書においてはこのような特徴を有するマスクパターンを積層マスクと称することとする。近年のように記録素子(ノズル)の高密度化、小液滴化、吐出周波数の高速化およびインク種類の多様化が著しい状況の中、特許文献3に記載の積層マスクを用いることにより、銀塩写真に匹敵する高精細で高画質な画像を出力することが可能となっている。
【0021】
ところで、上述したマルチパス記録は画質を向上させるためには有効な手段であるが、記録速度を低下させるという欠点も有している。このような中、マルチパス数を低下させずに記録速度を向上させるための方法として、記録ヘッドの双方向記録が有効となる。但し、双方向のマルチパス記録には双方向ムラと呼ばれる画像弊害が発生しやすく、これを解決することが大きな課題となる。双方向ムラの原因の1つに、異色インクの記録順に伴う色ムラが挙げられる。以下に、色ムラについて簡単に説明する。
【0022】
シリアル型のインクジェット記録装置においては、複数色のインクを吐出するためのノズル列を主走査方向に並列して配置した構成が多い。このような構成で双方向記録を行うと、記録媒体にインクを付与する色の順番は、往路走査と復路走査で逆転することになる。
【0023】
図3(a)および(b)は、双方向記録時のインクの付与順序を説明するための模式図である。ここでは、2パスのマルチパスでカラー画像を記録する状態を示している。2パスのマルチパス記録の場合、最初の記録走査(1パス)が往路走査で行われた領域は、次の記録走査(2パス)は復路走査で行われる。また、この領域に隣接する領域では、上記復路走査が最初の記録走査(1パス)となり、更に続く往路走査が次の記録走査(2パス)となる。図3(a)および(b)は、これら隣接する領域に対するインクの付与順序の違いを示している。すなわち、シアン→マゼンタ→イエロー→イエロー→マゼンタ→シアンの順にインクが付与される領域(a)と、イエロー→マゼンタ→シアン→シアン→マゼンタ→イエローの順でインクが付与される領域(b)とが交互に配置することになる。記録媒体においては、インクの組み合わせが同じであっても、記録媒体への付与順序が異なると、発色も異なることが一般に知られている。すなわち、このように記録走査の方向に伴ってインクの付与順序が異なる2種類の領域が副走査方向に交互に配置することは、発色の異なる2種類の領域が交互に配置することになり、これが色ムラとして認知されるのである。
【0024】
ところで、このような色ムラはそれぞれのインク色を付与する時間差にも影響を受ける。
【0025】
図4は、シアンとマゼンタを滴として同じ箇所に付与する際の記録媒体への吸収状態を説明するための模式図である。ここでは、例として、インクジェット記録用の光沢紙に、シアンドットを記録した上にマゼンタドットを記録する際の記録状態を、記録媒体の上面および断面から示している。図4(a)は、シアンドットを記録したが、マゼンタドットをまだ記録していない状態を示している。一般に、インクジェット用に開発された光沢紙などでは、付与されたインク滴はほぼ真円に近い形で図のようなドットを形成する。同図(b)は、シアンドットを記録し、比較的短時間経過した後にマゼンタドットを記録した状態を示している。先行して記録されたシアンドットは、同図(a)の状態よりも記録媒体の深さ方向にも平面方向にも大きくにじんでいる。一方同図(c)は、シアンドットを記録し、比較的長時間経過した後にマゼンタドットを記録した状態を示している。先行して記録されたシアンドットは、同図(a)の状態とほぼ同等な状態で記録媒体に浸透している。
【0026】
図4(b)および(c)ともにシアン→マゼンタの順で記録される状態ではあるが、両者を記録するタイミングの差に応じてこのようなインク浸透状態の違いが表れる。そして、このような浸透状態の違いは、表面から観察した場合の発色の差となって現れる。ここでは、シアンとマゼンタの組み合わせを例に説明したが、このような現象はこの組み合わせに限られるものではない。2つのドットが異なるタイミングで記録媒体の同位置に付与される場合には少なからず生じる現象である。なお、図ではシアンドットに対しマゼンタドットを同位置に付与した状況を示したが、記録ヘッドの状態によって、2つのドットは互いにずれる状況も十分にありうる。このような場合、重なり合った領域のみが図で示した傾向を示すので、形成されるドットの形状はより複雑に変化する。
【0027】
図5は、双方向記録を行った際に、上記のようなインクの付与タイミングの差に応じて生じる時間差ムラを説明するための模式図である。ここでは、記録ヘッド102を用いて2パスのマルチパス記録を双方向で行う状態を示している。まず、第1の記録走査において、記録ヘッド102は往路走査にて約50%の画像を記録する。その後、記録媒体は図の副走査方向に記録ヘッドの半分の幅に相当する分だけ搬送され、記録ヘッド102は記録媒体に対し図の第2記録走査の位置に配置される。
【0028】
続く第2記録走査で記録ヘッド102は、復路方向においてやはり50%の画像を記録する。このとき、第1の記録走査で既に50%の記録された領域は、残りの50%の画像が補完されるように記録される。当該領域において、図の領域Aでは、第1の記録走査の後比較的長時間の経過の後第2の記録走査が行われる。すなわち、第1の記録走査によって記録が行われてから第2の記録走査による記録が行われるまでには、記録ヘッドが画像の右端部まで走査し、反転し、更に復路方向に走査して戻ってくるまでの時間が経過している。一方、領域Bでは、第1の記録走査の比較的直後に第2の記録走査が行われている。すなわち、第1の記録走査によって記録が行われてから第2の記録走査による記録が行われるまでには、記録ヘッドが反転する時間しか殆ど含まれないのである。
【0029】
領域Aのように比較的長い時間をおいて第1の記録走査と第2の記録走査が行われる領域では、2つの記録走査で重ねて記録されるドットの浸透状態は図4(c)のようになる。図5では、このような領域を比較的高い濃度で示している。また、領域Bのように比較的短い時間をおいて第1の記録走査と第2の記録走査が行われる領域では、2つの記録走査で重ねて記録されるドットの浸透状態は図4(b)のようになる。図5では、このような領域を比較的低い濃度で示している。結果、双方向記録を行った際、領域Aのような発色を示す領域と、領域Bのような発色を示す領域とが、副走査方向に交互に現れることになり、これが時間差ムラとなって認知されるのである。時間差ムラは、記録する画像の幅(主走査方向の長さ)が大きいほど顕著に現れる。
【0030】
図6は、4パス双方向のマルチパス記録を行った際の時間差ムラを説明するための図である。4パス双方向記録の場合、全ての領域が4回の記録走査によって画像が形成され、各記録走査間の時間差も様々になる。すなわち、例えば図の領域Aにおいては、第1記録走査の記録タイミングと第2記録走査の記録タイミングの間隔および第3記録タイミングと第4記録タイミングの間隔は長いが、第2記録走査での記録タイミングと第3記録タイミングの間隔は短い。領域Bについては逆である。領域Aおよび領域B共に様々なタイミングで複数回の記録走査が行われているので、2パスのマルチパス記録ほど時間差ムラの影響は現れない。しかしながら、領域Aおよび領域Bについて、全ての記録タイミングが同一であるわけではない。やはりある程度の時間差ムラ弊害は現れる。
【0031】
以上説明したように、双方向のマルチパス記録には色ムラと時間差ムラに代表される双方向ムラが大きな課題となっていた。
【0032】
特許文献4には双方向記録時の色ムラや時間差ムラを極力回避するために、ムラの目立ちやすいインク色に対し、他のインクとは異なるマスクパターンを用意するインクジェット記録方法が開示されている。具体的には、弊害を起こしやすいインクを、同じ記録走査では他のインク色と異なる位置に記録させるようなマスクパターンを使用するのである。他色と重なることによって弊害を起こしやすいシアンインクに、他のインクと異なる(排他的な)マスクを使用すれば、色ムラや時間差ムラが低減された一様な画像を出力することが期待できる。
【0033】
【特許文献1】特開平7−52390号公報
【特許文献2】特開2002−144552号公報
【特許文献3】特開2006−044258号公報
【特許文献4】特開平5−278232公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
ところで、本発明者らが検討を行ったところ、既に説明したグレインについても、あるいは時間差ムラや色ムラについても、基本の4色の中で特にシアンインクがその弊害を目立たせやすくすることが確認された。類推するに、シアンインクに用いられることの多いフタロシアニンを基本骨格とする色材の化学的性質がその原因と考えられる。シアンインクは他色との混合条件によって記録媒体内で定着状態の差異となる色材の凝集の程度差を発生しやすく、時間差ムラや色ムラを悪化させやすいと考えられる。
【0035】
しかしながら、このように特定のインクが画像劣化の原因を招致する状況においても、特許文献1〜3に記載の方法では、各インク色を同レベルに扱っていた。よって、特定インクと他色インクとの接触に伴う凝集は排除しきれず、画像品位を劣化させていた。
【0036】
これに対し特許文献4には双方向記録時の色ムラや時間差ムラを極力回避するために、ムラの目立ちやすいインク色に対し、他のインクとは異なるマスクパターンを用意するインクジェット記録方法が開示されている。具体的には、他色と接触することによって弊害を起こしやすい例えばシアンインクを、同じ記録走査では他のインク色と排他的な位置(完全に重ならない位置)に記録させるようなマスクパターンを使用するのである。このようにすれば、シアンインクに対するインクの重複は完全に回避され、ビーディンを抑制しつつも、色ムラや時間差ムラも低減された一様な画像出力が期待できる。
【0037】
しかしながら、特許文献4に記載のマスクパターンは、特許文献2や3のようにドットの分散性を考慮して作成されたものではなかった。更に、記録素子(ノズル)の高密度化、小液滴化、吐出周波数の高速化が推し進められる昨今、凝集しやすいインクで他と異なる(排他的な)マスクパターンを用いるようにしても、インク滴同士の接触を完全に回避することは難しい状況となる。よって、特許文献4においても、数こそ少ないが、ある程度の凝集は発生し、発生後の凝集についてはなんら配慮もされていなかった。すなわち、既に説明したいかなる特許文献を採用しても、凝集が原因で生じるビーディング、色ムラさらに時間差ムラについて、未だ解決されないままであった。
【0038】
本発明は、上述した問題点を解消するためになされたものである。すなわち、その目的とするところは、インク同士の接触によって生じるグレインの発生と凝集の程度差を軽減しつつも、どうしても発生するグレインの発生と凝集の程度差発生箇所を好適に配置させることによって一様性に優れた画像を出力することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
そのために本発明は、複数種類のドットを記録媒体に記録する複数のノズル群を、記録媒体の同一領域に対し複数回の走査を行なうために、当該複数回の走査それぞれで記録する画像データを生成するためのデータ処理方法であって、前記複数種類のドットそれぞれに対応した複数種類のマスクパターンを用いて、前記複数種類のドットに対応した画像データを前記複数回の走査それぞれで記録する画像データに分割する工程を有し、前記複数種類のマスクパターンのうち、少なくとも第1の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンにおける記録許容画素の配列と第2の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンにおける記録許容画素の配列は排他の関係にあり、前記複数の第1マスクパターンのうちの所定の第1マスクパターンと前記複数の第2マスクパターンのうちの所定の第2マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも小さい特性を有するように、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンそれぞれの記録許容画素は互いに関連付けて配列されていることを特徴とする。
【0040】
また、複数種類のドットを記録媒体に記録する複数のノズル群を、記録媒体の同一領域に対し複数回の走査を行なうために、当該複数回の走査それぞれで記録する画像データを生成するためのデータ処理方法であって、前記複数種類のドットそれぞれに対応した複数種類のマスクパターンを用いて、前記複数種類のドットに対応した画像データを前記複数回の走査それぞれで記録する画像データに分割する工程を有し、前記複数種類のマスクパターンのうち、少なくとも第1の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンにおける記録許容画素の配列と第2の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンにおける記録許容画素の配列は排他の関係にあり、前記複数の第1マスクパターンのうちの所定の第1マスクパターンと前記複数の第2マスクパターンのうちの所定の第2マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも小さい特性を有するように、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンそれぞれの記録許容画素は互いに関連付けて配列されていることを特徴とする。
【0041】
更に、複数種類のドットを記録媒体に記録する複数のノズル群を、記録媒体の同一領域に対し複数回の走査を行なうために、当該複数回の走査それぞれで記録する画像データを生成するためのデータ処理方法であって、前記複数種類のドットそれぞれに対応した複数種類のマスクパターンを用いて、前記複数種類のドットに対応した画像データを前記複数回の走査それぞれで記録する画像データに分割する工程を有し、前記複数種類のマスクパターンのうち、少なくとも第1の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンにおける記録許容画素の配列と第2の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンにおける記録許容画素の配列は排他の関係にあり、前記複数の第1マスクパターンのうちの所定の第1マスクパターンと前記複数の第2マスクパターンのうちの所定の第2マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも小さい特性を有し、且つ前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも小さい特性を有するように、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンそれぞれの記録許容画素は互いに関連付けて配列されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、画像の完成に至る各段階のドットの接触や重なりを、極力排除することが出来、色ムラや時間差ムラを抑制することができる。更に、ドットの接触や重なりが排除しきれない場合でも、そのような接触箇所が好適に分散して配置されるので、視覚的に目障りになりにくい画像を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図7(a)および(b)は、本実施形態に係るデータ処理装置としてのパーソナルコンピュータ(以下、単にPCとも言う)およびこれと接続する記録装置の制御構成を説明するためのブロック図である。
【0044】
図7(a)において、ホストコンピュータであるPC100は、オペレーティングシステム(OS)102によって、アプリケーションソフトウエア101、プリンタドライバ103、モニタドライバ105の各ソフトウエアを動作させる。アプリケーションソフトウエア101は、ワープロ、表計算、インターネットブラウザなどに関する処理のほか、画像の生成などを行う。モニタドライバ105は、アプリケーションソフトウエア101で作成した画像などをモニタ106に表示するための処理を実行する。
【0045】
プリンタドライバ103は、アプリケーションソフトウエア101からOS102へ発信される画像データを処理し、記録装置104で記録可能な2値の吐出データを生成する。このとき生成される吐出データは、記録装置104で用いるインクの種類、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)の4色分となっている。プリンタドライバ103で実行する画像処理の詳細については後述する。
【0046】
ホストコンピュータ100は、以上のソフトウエアを動作させるためのハードウエアとして、CPU108、ハードディスク(HD)107、RAM109、ROM110などを備えている。CPU108は、ROM110に格納されているプログラムに従って各ソフトウエアの処理を実行し、RAM109はその際のワークエリアとして用いられる。
【0047】
図7(b)は、上述したPC100から受信した画像データに従って、記録媒体に記録を実行する記録装置104の制御構成を説明するためのブロック図である。PC100から入力される画像データや各種コマンドは、インターフェイス(I/F)703を介して記録装置104に入力される。記録装置内に備えられたCPU700は、記録装置104に備えられた各機構を制御し、装置全体の動作を司っている。ROM701にはCPU700が実行するプログラムや、後述する本発明の特徴的なマスクパターンなど、記録装置の動作に関わる様々なパラメータが格納されている。また、RAM702は、CPU700が様々な処理を行う際のワークエリアとして使用される。CPU700やI/F703、および各機構はメインバスライン705によって接続されている。
【0048】
図において、操作部706はユーザと直接的にコマンドの授受を行うために記録装置の前面に設けられており、電源ON/OFFキーやリジュームキー、また各種LEDなどが配備されている。回復系制御回路707は、CPU700からのコマンドに応じて回復系モータを駆動し、記録ヘッドのメンテナンス処理を行うための複数の機構を動作させる。
【0049】
ヘッド温度制御回路714は、記録ヘッドJ0010に設けられたサーミスタ712によって記録ヘッドJ0010の温度を取得し、この温度にあわせて記録ヘッドの温度調整を行う。ヘッド駆動回路J0009は、I/F703から受信されCPU700によって画像処理された記録データに従って記録ヘッドJ0010を駆動し、インクの吐出を実行させる。
【0050】
キャリッジ駆動回路716は、記録ヘッドJ0010が搭載されたキャリッジM4000(図8参照)を所定の速度で往復走査させる。紙搬送制御回路717は、記録媒体の給排紙を行ったり、記録中の記録媒体を所定量ずつ搬送したりする。
【0051】
図8は、記録装置104の内部機構を説明するための斜視図である。本実施形態の記録装置104はシリアル型のインクジェット記録装置であり、インクを吐出するノズルを複数備えた記録ヘッドJ0010用いて記録媒体に画像を形成する。記録ヘッドJ0010には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)のインクのそれぞれを収容したインクタンクH1900からインクが供給される。キャリッジM4000は記録ヘッドJ0010とインクタンクH1900を搭載した状態で、キャリッジ駆動制御回路716によって図のX方向(主走査方向)に移動する。この移動中、記録ヘッドJ0010の各ノズルはヘッド駆動回路J0009によって、2値の吐出データに基づいてインクを吐出する。このような記録ヘッドJ0010による1回の記録主走査が終了すると、記録媒体は紙搬送制御回路717によって、図のY方向(副走査方向)に所定量だけ搬送される。以上の記録主走査と副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に画像が順次形成されていく。
【0052】
図9(a)および(b)は、本実施形態の記録ヘッドJ0010の吐出口面を説明するための図である。記録ヘッドJ0010は、同図(b)に示すように、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)用のチップを含む6色分のチップが主走査方向に並列して構成されている。図9(a)は、1色分のチップ構成を説明するための拡大図である。2805は共通液室であり、インクタンクからインクが供給される。共通液室2805のインクは、左右に配置する複数の液路2804に供給される。個々の液路の内部には電気熱変換体が備えられており、ここに所定の電圧パルスを印加することにより吐出口2803からインク滴が吐出する。左右の吐出口列において、個々の吐出口は600dpi(ドット/インチ;参考値)のピッチで256個ずつ配列している。更に左右の吐出口列は、副走査方向に半ピッチ分ずれて配置しているので、1つのチップにおいては、副走査方向に1200dpi(ドット/インチ;参考値)の密度で512個の吐出口が配列していることになる。本実施形態において、それぞれの吐出口からは約3ピコリットルのインク滴が吐出される。
【0053】
図10は、ホストPC100および記録装置104で行う画像処理の流れを説明するためのブロック図である。記録実行時、アプリケーション101で作成された画像データは、OS102を介してプリンタドライバ103に渡される。プリンタドライバ103は、受け取った画像データに対し、前段処理J0002、後段処理J0003、γ補正J0004、2値化処理J0005、印刷データの作成J0006を実行する。以下に、各処理を簡単に説明する。
【0054】
前段処理J0002は色域(Gamut)のマッピングを行う。この処理は、sRGB規格の画像データR、G、Bによって再現される色域を、記録装置によって再現される色域内に写像するためのデータ変換となる。具体的にはR、G、Bのそれぞれが8bitで表現された256階調のデータを、3次元のLUTを用いることにより、異なる内容のR、G、Bの8bitのデータに変換する。
【0055】
後段処理J0003は、上記色域のマッピングがなされたR、G、Bデータに基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した色分解データY、M、CおよびKを求める。ここでは前段処理と同様に、3次元LUTにて補間演算を併用して処理を行う。
【0056】
γ補正J0004は、後段処理J0003によって求められた色分解データの各色のデータごとに、その濃度値(階調値)変換を行う。具体的には、記録装置の各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用い、上記色分解データが記録装置の階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。
【0057】
2値化処理J0005は、8ビットの色分解データY、M、C、Kのそれぞれについて、量子化処理を行い1ビットのデータに変換する。本実施形態では、誤差拡散法を用いて、256階調の8ビットデータを、2階調の1ビットデータに変換する。
【0058】
プリンタドライバ103の処理の最後の印刷データ作成処理J0006では、2値化された1ビットデータC、M、K、Yを内容とする2値の画像データに印刷制御データなどを付して印刷データを作成する。2値の画像データは、ドットの記録を示すドット記録データと、ドットの非記録を示すドット非記録データから構成される。また、印刷制御データは、「記録媒体情報」、「記録品位情報」、「給紙方法」のような記録制御に関わる情報から構成されている。以上のようにして生成された印刷データは、記録装置104へ供給される。
【0059】
記録装置104では、プリンタドライバ100から受信した2値データに対し、マスクデータ変換処理J0008を実行する。マスクデータ変換処理J0008では、得られたドット記録データと、印刷制御データによって定められるマスクパターンとの間で論理積をとる。本実施形態で用いられるマスクパターンの特徴については、後に詳しく説明する。論理積の結果得られた2値データは、複数回走査の1回分の記録走査で個々の記録素子が吐出する吐出データとなり、ヘッド駆動回路J0009へ転送される。駆動回路J0009に入力された各色の1bitデータは、記録ヘッドJ0010の駆動パルスに変換され、各色の記録ヘッドJ0010より所定のタイミングでインクが吐出される。これにより、1回分の記録主走査が実行される。
【0060】
本実施形態の記録装置104は、様々な記録モードに基づき、様々な形態のマルチパス記録を実行可能である。マルチパス記録に用いられるマスクパターンは記録モードごとに又インク色ごとに複数種類用意されており、これらは予め記録装置内に備えられたメモリに格納されている。
【0061】
以下に本実施形態に使用するマスクパターンの特徴について説明する。ここでは、4パスのマルチパス記録を行うものとし、各色のマスクパターンは約25%ずつの記録許容率となっている。記録許容画素の分散性については、特許文献3に記載の積層マスクの特徴を有している。すなわち、各色のマスクパターンについても、更に他色のマスクパターンを重ね合わせた(論理和)場合においても、分散性に優れ低周波数成分が高周波数成分よりも低く抑えられるように、記録許容画素の配置が各色で関連付けて定められている。なお、本明細書において、「低周波数成分」とは、周波数成分(パワースペクトル)が存在する空間周波数領域のうち、半分より低周波側にある成分を指し、「高周波数成分」とは半分より高周波側にある成分を指す。
【0062】
加えて、本実施形態の特徴としては、特定色であるシアンについては、上記条件を満たしつつも他の3色に対して排他の関係が成り立つように設計されている。
【0063】
図11〜図14は、記録媒体の同一領域を記録する際に用いる本実施形態のマスクパターンの特徴を説明するための模式図である。図11は、特許文献1などに記載されている各色共通のランダムマスクの一部(8画素×8画素領域)を示した図である。ここでは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックにおいて同一領域に対するマスクパターンは共通である。下方に示した図は、4色を重ねた状態を示しており、1回の走査で4色のドットが重なる状況が生じている。このような記録状態においては、グレインが原因となるビーディングが激しく発生するとともに、課題の項で説明したような双方向記録における、色ムラや時間差ムラも目立ちやすくなる。
【0064】
図12は、特許文献3などに開示されている積層マスクの一部(8画素×8画素領域)を示した図である。ここでは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックにおいてマスクパターンは個別であり、それぞれが分散性の高い、すなわち低周波数成分が高周波数成分よりも高い状態を保っている。下方に示した図は4色を重ねた状態を示しているが、この状態においてもドットの記録画素の分散性は高い状態が保たれている。このように各色が互いに完全に排他な状態を保つことが出来れば、グレインに起因するビーディングや色ムラ、時間差ムラなどの問題も抑えることが出来る。
【0065】
しかしながら、一般に、1つの画素に記録されるドットは当該画素の領域よりも大きく設計されている。すなわち、隣接する画素に記録されたドット同士は互いに重なり合う領域を少なからず有しており、当該領域については上述したグレイン、色ムラ、時間差ムラのような弊害の招致は免れ得ない。また、全色を完全に排他の関係にするためには、例えば本実施形態のように4色のインクを用いる場合には4パス以上のマルチパス記録でなければ実現できなくなってしまう。近年のようにより多くの種類のインクを用いる場合、全インク色を完全に排他の関係にするには、より多くのマルチパス数が要される。
【0066】
このような状況において本発明者らは、特別に上記弊害が目立ちやすいインク色(以下、特定色と称す)が存在し、他色間の弊害が然程問題視されない場合には、特定色のみが他色に対して完全に排他であるような工夫を施すことが有効であるという知見に至った。この場合、特定色とは、例えば他色と化学的に反応するなどして凝集を引き起こす程度を変えやすいインクを示す。
【0067】
図13は、本実施形態のマスクパターンの一部(8画素×8画素領域)を示した図である。ここでも図12と同様に、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックにおいてマスクパターンは個別であり、それぞれが分散性の高い状態を保っている。しかしながら、マゼンタ、イエローおよびブラックの組み合わせについては、これらは互いに完全に排他な状態になく、シアンのみが他の3色に対し完全に排他な状態となっている。下方に示した図は4色を重ねた状態を示しているが、シアンドットのみがいずれの画素においても他のドットと重なり合っていない。
【0068】
図14は、図11〜図13で説明したそれぞれのマスクパターンを用いて、一様なグレー画像を4パス双方向で記録した場合の、主走査方向両端部の色差を経時的に測定した結果を示した図である。ここで、主走査方向両端部とは図6において領域Aおよび領域Bに相当する部分である。図において、横軸は記録後の経過時間を示している。一般に、インクジェット記録においては、記録媒体にインクが付与された直後からインクが記録媒体に吸収され完全に定着するまでにある程度の時間を有する。そして、その定着の度合いに応じて発色も変化する。領域AB間の色差も、完全に0にはならないが、図に示すように時間と共に徐々に低減していく。
【0069】
曲線aは、図11で示した全色共通のランダムマスクパターンを用いた場合の結果を示している。曲線bは、図12で示した各色完全排他の積層マスクを用いた場合の結果を示している。更に、曲線cは図13に示した本実施形態のマスクパターンを用いた場合を示している。図からも判るように、本実施形態のマスクパターンが最も領域AB間の色相差が少ない。すなわち、副走査方向に連続する領域間の色相の違いも目立ち難くなり、色ムラおよび時間差ムラに起因する双方向ムラの弊害が3つのマスクパターンの中で最も少ないことを意味している。
【0070】
本実施形態のマスクパターンの生成方法については、特許文献3の方法を利用することが出来る。但し、各色のマスクパターンの記録許容画素を設定していく工程において、シアンについては他の3色に対し完全に排他であることを条件にして、特許文献3に従った積層マスクを生成すればよい。
【0071】
以上の説明ではシアンを特定色として説明してきたが、本発明および本実施形態はこれに限るものではない。シアンを特定色とした理由は、既に説明したようにシアン色材はフタロシアニンを基本骨格としていることが多く、他色との混合の際に凝集性に変化を起こしやすいからである。すなわち、シアンのマスクパターンを排他に設定することにより、同一記録走査におけるシアンインクと他色との混合が積極的に回避され、図3で説明したような色ムラや図4および図5で説明したような時間差ムラが抑制されるからである。しかしながら、このようなシアン色材の凝集性を特別に変化させるインクが特定できるような場合であれば、そのインクを特定色として定めても上記と同様の効果を得ることは出来ることは言うまでもない。
【0072】
但し、単純に特定色のみを他色に対し排他にするのみでは、特許文献4と同様の効果しか得られない。これに対し、本発明は、同一記録走査において積層されて行く(論理和によって得られる)各色ドットの分散性が好ましい状態である上に、更に特定色が排他的なドット配置となっていることを特徴としている。これら2つの条件を同時に満たすことによって、双方向のマルチパス記録においても一様性に優れた画像出力を実現することが出来る。特許文献4のみの構成では、各色の積層工程においてドットの分散性が考慮されていない。よって、特定色のドットを排他的に配置出来たとしても、どうしても生じてしまうグレインが好ましい状態で分散されないので、ビーディングという一様性を損ねる画像弊害が確認される。
【0073】
本発明および本実施形態において、特定色が他のインクと接触することによって起こる凝集を抑えるためには、特定色のみが他のインクに対して排他的でさえあれば、他のインク色同士は同じマスクパターンを使用しても構わない。複数のインク色のドットが同じ画素に記録されていても、これらと特定色のドットとの間で分散性に優れた関係と排他の関係が保たれていれば、弊害は抑制され本発明の効果は得られるからである。この場合、少なくとも2つのマスクパターンが用意されていればよく、全色に対して異なるマスクパターンを用意する場合よりもメモリを抑えることが出来る。更に、このように特定色以外のドットが記録される画素の数は少なく抑えられた方が、特定色と他色との接触をより積極的に回避することが出来るという利点もある。
【0074】
以下に、本実施形態を検証するために、本発明者らが行ったいくつかの実験およびその結果を説明する。実験は、記録媒体に対し4パス双方向のマルチパス記録によって複数のインクで一様なグレー画像を記録し、記録された画像の双方向ムラおよび時間差ムラを目視で確認するものである。
【0075】
以下の検証例では、いずれも図7で説明した記録装置と図9で説明した記録ヘッドを用いた。記録ヘッドの駆動周波数は30KHzとし、キャリッジの走査速度は25KHzとした。記録媒体はキヤノン製のPR101を用い、インクはキャノン製のBCI7を用いた。
【0076】
(検証例1)
検証例1ではシアンを特定色として扱った。具体的には、シアン、マゼンタおよびイエローの積層関係において低周波数成分を抑えながらも、シアンのみが他の2色に対し完全に排他的なマスクパターンを使用した。そして、このように記録した記録物を、従来技術に基づいて作成したいくつかのマスクパターンを使用して記録した記録物と比較した。従来技術のマスクパターンには、例えば、3色で互いに異なるが分散性が考慮されていないマスクパターンや、3色の積層関係において分散性の考慮はされているが特定色であるシアンが排他的に構成されてはいないマスクパターンが含まれている。いずれのマスクパターンを使用して記録した記録物よりも、本実施形態のマスクパターンを使用して記録した記録物が、色ムラ、時間差ムラおよびビーディングの弊害が少ないことが確認された。
【0077】
(検証例2)
図15は、本検証例で使用したマスクパターンを説明するための模式図である。ここでは32画素×32画素の領域を有するマスクパターンを2種類(0chと1ch)示している。検証例2でもシアンを特定色とし、0chで示したマスクパターンを使用して記録を行った。他の2色は1chで示したマスクパターンを使用した。すなわち、シアンのみが他の2色に対し排他的でありながら、シアン以外の2色は同一のマスクパターンであり、且つシアンと他色の積層関係においてはドットの分散性に優れたマスクパターンとなっている。そして、このように記録した記録物を、検証例1と同様に従来技術に基づいて作成したいくつかのマスクパターンを使用して記録した記録物と比較した。結果、本検証例のマスクパターンを使用して記録した記録物が、色ムラおよび時間差ムラの弊害が少ないことが確認された。
【0078】
(検証例3)
検証例3では、基本の3色シアン、マゼンタ、イエローに対し、更にライトシアンおよびライトマゼンタを加えて検証を行った。本例においても図15で示したマスクパターンを使用した。但し、本検証例では、シアン、マゼンタおよびイエローで0chのマスクパターンを使用し、ライトシアンおよびシアンでは1chのマスクパターンを使用した。すなわち、ライトシアンおよびシアンが他の3色に対し排他的でありながら、同じ色材を含有するライトシアンとシアンの2色は同一のマスクパターンであり、一方の他の3色も同一のマスクパターンとした。更に、これら2種類のマスクパターンの積層関係においてはドットの分散性に優れたものとなっている。そして、このように記録した記録物を、上記検証例と同様に従来技術のマスクパターンを使用して記録した記録物と比較したところ、本検証例のマスクパターンを使用して記録した記録物が、色ムラおよび時間差ムラの弊害が最も少ないことが確認された。
【0079】
以上説明したように本実施形態においては、互いに凝集を起こす懸念のあるインク色に対し、互いに排他的でありながらその積層過程においてドットの配置が分散性に優れるようなマスクパターンを用意している。すなわち、各色のマスクパターンの論理和(少なくとも論理積)によって得られる記録許容画素の周波数成分において、低周波数成分が高周波数成分よりも少なく抑えられるようにマスクパターンが各色で関連付けて構成されている。これにより、画像の完成に至る各段階のドットの接触や重なりを、極力排除することが出来、色ムラや時間差ムラを抑制することができるようになる。更に、比較的高濃度の画像を記録する場合のように、ドットの接触や重なりが排除しきれない場合でも、そのような接触箇所が好適に分散して配置されるので、視覚的に目障りになりにくい画像を得ることが出来る。
【0080】
(第2の実施形態)
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に図8で示した記録装置および図9で示した記録ヘッドを用いるものとする。但し、本実施形態においては、2パスのマルチパス記録を行うものとし、各色のマスクパターンは約50%ずつの記録許容率となっている。
【0081】
図16は、2パス記録を説明するために、記録ヘッド、マスクパターンおよび記録媒体を模式的に示した図である。本実施例においても、シアン、マゼンタおよびイエローのインクを用い、各色のノズル群は記録ヘッドの走査方向に対して図のように並列している。往路走査で記録を行った場合、記録媒体にはシアン、マゼンタ、イエローの順にインクが付与される。一方、復路走査で記録を行った場合、往路走査と逆の順番すなわちイエロー、マゼンタ、シアンの順に記録媒体にインクが付与される。2パスのマルチパス記録の場合、紙送り方向に配列するノズル群は第1グループと第2グループに分割され、それぞれのグループに宛がわれるマスクパターンは互いに補完の関係が成り立っている。図では、シアン、マゼンタ、およびイエローそれぞれの第1グループに対するマスクをC1、M1、およびY1として表し、同じく第2グループをC2、M2およびY2として表している。C1とC2、M1とM2、更にY1とY2はそれぞれ互いに補完の関係が成り立っている。各記録走査が終了するたびに、記録媒体は図の副走査方向にグループ幅分ずつ搬送される。よって、記録媒体の同一領域(各ノズル群の幅に対応する領域)は、2回の記録走査で画像が完成される。
【0082】
記録媒体上の領域Aは、往路走査によって最初の記録走査が行われる領域であり、当該領域に対するインクの付与順序は、マスクの種類もあわせて考えると、C1→M1→Y1→Y2→M2→C2となる。一方、復路走査によって最初の記録走査が行われる領域Bに対するインクの付与順序は、Y1→M1→C1→C2→M2→Y2となる。
【0083】
本実施形態では、シアンを特定色とし、シアンのみが他色に対し排他的なマスクパターンとする。
【0084】
図17は、本実施形態で使用するマスクパターンを説明するための模式図である。ここでは簡単のため、は32画素×32画素の領域を有するマスクパターンで示しているが、実際には副走査方向には各ノズルグループに含まれるノズル数分画素領域、主走査方向にも更に大きな画素領域を有している。本実施形態では、2種類のマスクパターン(0chと1ch)を用意し、特定色であるシアンのみが0chのマスクパターン、マゼンタおよびイエローが1chのマスクパターンを用いて記録を行うようにしている。
【0085】
本実施形態のように2パスのマルチパス記録を行う場合、各マスクパターンの記録許容率は50%であるので、第1グループにおける0chと1chは互いに排他かつ補完の関係を満たしている。また、同じチャンネルにおいては第1グループ用のマスクパターンと第2グループ用のマスクパターンは補完の関係にあるので、第1グループの0chと第2グループの1ch、および第1グループの1chと第2グループの0chは同一のマスクパターンとなる。すなわち、本実施形態によれば2種類のマスクパターンを3色のノズル列で交互に使用することが出来、第1の実施形態に比べてマスクパターンのために用意するメモリは少なくて済む。
【0086】
本実施形態の場合、同じ記録走査で特定色と非特定色は互いに排他の関係にあるので、凝集はある程度抑制されるが、同じ記録走査で特定色と非特定色が隣接した画素に記録されるので、凝集を完全に回避することは出来ない。但し、このように発生した凝集の箇所が、視覚的に好適な状態に分散されることから、画像弊害として認知されるに至らないことが期待できる。
【0087】
以上説明したように本実施形態によれば、2パス双方向のマルチパスにおいても、特定色と他色のマスクパターンを、互いに排他な関係で且つ分散性に優れた(低周波数成分の抑えられた)状態にした。これにより、色ムラや時間差ムラに伴う画像弊害とビーディングに伴う画像弊害の両方を抑制することが可能となった。
【0088】
(第3の実施形態)
本実施形態においても、上記実施形態と同様に図8で示した記録装置を用いる。但し、記録ヘッドについては、同じインク色で大ドットと小ドットの記録を行うことが出来るものを用いる。
【0089】
図18(a)および(b)は、本実施形態で用いる記録ヘッドを図9と同様に示した図である。本実施形態の記録ヘッドでは吐出口の配列ピッチおよび配列数は図9の記録ヘッドと同じであるが、シアンおよびマゼンタについては、吐出口の大きさが左右で異なるノズル群がそれぞれ2つずつ用意されている。図18(a)を参照するに、左列に含まれる大ドット用の吐出口からは約3ピコリットル、右列に含まれる小ドット用の吐出口からは約1ピコリットルのインク滴が吐出される。
【0090】
このように同一のインク色で2段階のドット径すなわち2段階の階調が表現可能な場合、大ドットおよび小ドットが使用される割合は、表現しようとする画像の濃度によって異なる。
【0091】
図19は、所定のインク色(シアンあるいはマゼンタ)に対応する256階調の濃度データ(入力値)を、大ドットのための濃度データと小ドットのための濃度データに分解するための信号値変換を説明するための図である。入力値が低階調の場合、小ドットのみが使用される。そして、入力値が上昇するにつれ、小ドットの出力値も上昇する。入力値が略中間値(128)に達した段階から大ドットの記録が開始され、出力値の上昇とともに大ドットの出力値が上昇する。一方中間値以降の小ドットの出力値は、大ドットの出力値の増加と共に減少していく。
【0092】
このように、複数段階のドット径を用いて記録を行うことにより、より広い範囲の階調をより滑らかに表現することが出来る。そして、例えば図19に矢印で示した入力値のように、大ドットも小ドットも出力値が0ではない場合においては、大ドットと小ドットが互いに重ならない位置に記録する方が、より精細な階調表現のために好ましいことが知られている。
【0093】
よって、本実施形態では、同色で異なる径のドットがなるべく重なって記録されないように、大ドットと小ドットで互いに排他的なマスクパターンを用いる。例えば、シアンおよびマゼンタの大ドットで図15に示した0chのマスクパターンを用い、同色の小ドットでは1chのマスクパターンを用いる。こうすることにより、図20に示すように、大ドットと小ドットのそれぞれの記録位置を好適に分散させることが出来るので、大ドットと小ドットによる凝集を抑制しつつも、各色の階調性を滑らかに表現することが可能となる。
【0094】
これに対し、階調性の向上よりも特定色のインクの凝集性の方が問題視される場合には、特定色の大ドットと小ドットに0chのマスクパターン、それ以外のインク色には全て1chのマスクパターンを使用するようにしてもよい。
【0095】
このように本発明は、反応性の高いインクに起因して発生する凝集を回避するのみならず、大ドットや小ドットを用いた際の階調性の向上のような他の目的のためにも、好適に採用することが出来る。
【0096】
なお、図19に示したような信号値変換は、図10で説明した後段処理J0003の最終段階あるいはγ補正J0004の前段階で処理することが出来る。
【0097】
以上の説明では、大ドットと小ドットという2段階のドット径を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、大、中、小の3種類やそれ以上の種類のドット径を用いる場合であってもよい。
【0098】
以上説明した実施形態では、本発明の特徴となるマスクパターンが、記録装置内のメモリに格納されている形態で説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。図7で示したPC100が、マスクデータ変換処理J0008までの処理を実行するデータ処理装置として機能してもよく、この場合はPC100内で製造された2値データが、記録動作に先立って記録装置104に転送されればよい。マスクデータ変換処理を実行する画像処理部が記録装置にあろうと、ホスト装置にあろうと、あるいはこれらが一体的に構成された装置であろうと、本発明の範疇に含まれる。
【0099】
また、本発明で適用できるインクの種類は、上述の実施形態で説明したインクの種類に限定されるものではない。例えば、CMYおよびブラックの基本色にライト系(ライトシアンやライトマゼンタなど)のインクを加えるほか、レッド、ブルー、グリーンなどの特色インクをさらに加えて用いることもできる。また、色材として染料を含有する染料インクや色材として顔料を含有する顔料インクを用いながらも、染料インクと顔料インク間の凝集が懸念されるような場合にも、本発明を好適に採用することが出来る。
【0100】
更にまた、本発明は、画像品位や取り扱いを向上させるためのインク以外の液体を吐出する場合も適用することが可能である。インク以外の液体としては、例えばインク中の色材を凝集あるいは不溶化させる反応液が挙げられる。この場合、この反応液と積極的に反応させたいインクについては、当該反応液と同じマスクパターンを使用し、この反応液と極力反応させたくないインクについては、これらと排他なマスクパターンを使用するようにすれば良い。
【0101】
本発明における特定色とは他色と接触することにより化学的に反応する材料を含有したインクに限定されるものではない。第1や第2の実施形態のように凝集に伴う画像弊害を抑制するためであるにせよ、第3の実施形態のように階調性を向上させるためであるにせよ、他と分離して記録した方が好ましい結果が得られるインクを、本発明は特定色とすることが出来る。
【0102】
更に、以上の実施形態では、記録装置で用いる複数種類のインク全てについて、上述の実施形態で説明した積層マスクを適用し、特定色と他色群に分類して記録する方法で説明した。しかし、本発明では、他色群のうちの一部でありながら、画像弊害を引き起こし難いインクについては、特定色と同じマスクパターンを用いて記録することも出来る。例えば、ブラックのように記録デューティ(記録ドット数)が他色に比べて低いことが予め予想されるインクや、特定色との相互作用の程度が少ないインク、あるいは特定色と類似した成分を有するインクなどがこれに相当する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】マルチパス記録を説明するために、記録ヘッドおよび記録パターンを模式的に示した図である。
【図2】(a)〜(c)は、ビーディングの問題を説明するための模式図である。
【図3】(a)および(b)は、双方向記録時のインクの付与順序を説明するための模式図である。
【図4】(a)〜(c)は、シアンとマゼンタを滴として同じ箇所に付与する際の記録媒体への吸収状態を説明するための模式図である。
【図5】双方向記録を行った際に、上記のようなインクの付与タイミングの差に応じて生じる時間差ムラを説明するための模式図である。
【図6】4パス双方向のマルチパス記録を行った際の時間差ムラを説明するための図である。
【図7】(a)および(b)は、本実施形態に係るデータ処理装置としてのパーソナルコンピュータおよびこれと接続する記録装置の制御構成を説明するためのブロック図である。
【図8】記録装置の内部機構を説明するための斜視図である。
【図9】(a)および(b)は、本実施形態の記録ヘッドJ0010の吐出口面を説明するための図である。
【図10】ホストPC100および記録装置104で行う画像処理の流れを説明するためのブロック図である。
【図11】記録媒体の同一領域を記録する際に用いるマスクパターンの一例を説明するための模式図である。
【図12】記録媒体の同一領域を記録する際に用いるマスクパターンの一例を説明するための模式図である。
【図13】記録媒体の同一領域を記録する際に用いる本実施形態のマスクパターンを説明するための模式図である。
【図14】図11〜図13で説明したそれぞれのマスクパターンを用いて、一様なグレー画像を4パス双方向で記録した場合の、主走査方向両端部の色差を経時的に測定した結果を示した図である。
【図15】検証例2で使用したマスクパターンを説明するための模式図である。
【図16】2パス記録を説明するために、記録ヘッド、マスクパターンおよび記録媒体を模式的に示した図である。
【図17】第2の実施形態で使用するマスクパターンを説明するための模式図である。
【図18】(a)および(b)は、本実施形態で用いる記録ヘッドを図9と同様に示した図である。
【図19】256階調の濃度データ(入力値)を、大ドットのための濃度データと小ドットのための濃度データに分解するための信号値変換を説明するための図である。
【図20】大ドットと小ドットの分散状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0104】
100 ホスト装置
104 記録装置
700 CPU
701 ROM
702 RAM
J0008 マスクデータ変換処理
J0009 ヘッド駆動回路
J0010 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のドットを記録媒体に記録する複数のノズル群を、記録媒体の同一領域に対し複数回の走査を行なうために、当該複数回の走査それぞれで記録する画像データを生成するためのデータ処理方法であって、
前記複数種類のドットそれぞれに対応した複数種類のマスクパターンを用いて、前記複数種類のドットに対応した画像データを前記複数回の走査それぞれで記録する画像データに分割する工程を有し、
前記複数種類のマスクパターンのうち、少なくとも第1の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンにおける記録許容画素の配列と第2の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンにおける記録許容画素の配列は排他の関係にあり、
前記複数の第1マスクパターンのうちの所定の第1マスクパターンと前記複数の第2マスクパターンのうちの所定の第2マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも小さい特性を有するように、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンそれぞれの記録許容画素は互いに関連付けて配列されていることを特徴とするデータ処理方法。
【請求項2】
複数種類のドットを記録媒体に記録する複数のノズル群を、記録媒体の同一領域に対し複数回の走査を行なうために、当該複数回の走査それぞれで記録する画像データを生成するためのデータ処理方法であって、
前記複数種類のドットそれぞれに対応した複数種類のマスクパターンを用いて、前記複数種類のドットに対応した画像データを前記複数回の走査それぞれで記録する画像データに分割する工程を有し、
前記複数種類のマスクパターンのうち、少なくとも第1の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンにおける記録許容画素の配列と第2の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンにおける記録許容画素の配列は排他の関係にあり、
前記複数の第1マスクパターンのうちの所定の第1マスクパターンと前記複数の第2マスクパターンのうちの所定の第2マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも小さい特性を有するように、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンそれぞれの記録許容画素は互いに関連付けて配列されていることを特徴とするデータ処理方法。
【請求項3】
複数種類のドットを記録媒体に記録する複数のノズル群を、記録媒体の同一領域に対し複数回の走査を行なうために、当該複数回の走査それぞれで記録する画像データを生成するためのデータ処理方法であって、
前記複数種類のドットそれぞれに対応した複数種類のマスクパターンを用いて、前記複数種類のドットに対応した画像データを前記複数回の走査それぞれで記録する画像データに分割する工程を有し、
前記複数種類のマスクパターンのうち、少なくとも第1の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンにおける記録許容画素の配列と第2の種類のドットを記録するための前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンにおける記録許容画素の配列は排他の関係にあり、
前記複数の第1マスクパターンのうちの所定の第1マスクパターンと前記複数の第2マスクパターンのうちの所定の第2マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも小さい特性を有し、且つ前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも小さい特性を有するように、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンそれぞれの記録許容画素は互いに関連付けて配列されていることを特徴とするデータ処理方法。
【請求項4】
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンは同じ記録走査で使用されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ処理方法。
【請求項5】
前記複数の第1マスクパターンは互いに補完の関係にあり、且つ前記複数の第2マスクパターンも互いに補完の関係にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のデータ処理方法。
【請求項6】
前記第1の種類のドットは特定の材料を含有するインクのドットであり、前記第2の種類のドットは前記特定の材料と化学的に反応する成分を含有する液体のドットであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のデータ処理方法を実行する画像処理部を備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項8】
前記データ処理装置は、前記複数種類のドットを記録する前記複数のノズル群を記録媒体の同一領域に対して複数回走査して記録を行う記録装置であることを特徴とする請求項7に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記データ処理装置は、前記複数種類のドットを記録する複数のノズル群を記録媒体の同一領域に対して複数回走査して記録を行う記録装置に接続されるホスト装置であることを特徴とする請求項7に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載のデータ処理方法に従って生成された画像データに従って、前記複数のノズル群を記録媒体の同一領域に対して複数回走査して記録を行うことを特徴とするデータ記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−207385(P2008−207385A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44340(P2007−44340)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】