説明

データ収集方法,基板処理装置,基板処理システム

【課題】データ解析の精度を低下させることなく,データの記憶容量の消費を抑える。
【解決手段】所定のサンプリング周期で各MC340A,340B,340C等によって計測器350A,350B,350C等から計測データを取得してデータ記憶手段640に記憶する際に,サンプリング制御手段614は,装置状態が基板処理実行状態でない場合(例えばアイドリング状態)には,基板処理実行状態である場合よりもサンプリング周期を長くすることによって,データ記憶手段に記憶されるデータ量を極力少なくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,データ収集方法,基板処理装置,基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては,被処理基板(以下,単に「基板」とも称する)として例えば半導体ウエハ,FPD(Flat Panel Display)基板などに所定のプロセス処理を施すための様々な基板処理装置が用いられている。例えばプラズマ処理装置は,処理室内の載置台に基板を載置し,処理室内の電極に高周波電力を印加するとともに,処理ガスを導入して基板上に処理ガスのプラズマを発生させることにより,エッチング処理や成膜処理などを行う。
【0003】
このような処理装置は,その運転状況を制御あるいは監視するための各種パラメータを有しており,それらをコントロールあるいはモニタして,様々な処理を最適条件で行えるようにしている。パラメータとしては,例えば処理室内温度,電極温度,処理室内圧力,処理ガスの流量の制御データ,プラズマの状態を把握するための光学データ,電極と高周波電源とのインピーダンス整合をとる整合器からの電気データなどが挙げられる。このような基板処理装置により基板の処理を行う際には,各パラメータをそれぞれの測定器によりモニタしながら常に最適な処理が行えるよう基板処理装置を制御する。
【0004】
例えば下記特許文献1,2には,複数のプロセスパラメータを分析し,これらのパラメータを解析用データとして統計的に相関させてプロセス特性やシステム特性の変化を検出したり,検出値の変動量に基づいて解析用データを補正したりするものが提案されている。また,上記複数のパラメータを解析用データとして多変量解析の1つである主成分分析の手法を用いて少数の統計的データにまとめ,この統計的データに基づいて処理装置の運転状況を監視及び評価する方法もある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−87323号公報
【特許文献2】特開2004−39952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,上述したような基板処理装置には,基板の処理にあたって様々な装置状態がある。例えば基板を複数枚ごとに連続処理する場合,複数枚の基板を連続処理している基板処理実行状態以外にも,その処理が終了した後に次の複数枚の基板の連続処理を開始するまでのアイドリング状態がある。また,装置を組み立てて立ち上げる際の状態,基板処理装置内の部品の交換時期が近い状態や装置に異常が発生している状態などがある。
【0007】
ところが,パラメータの数は数十種類にも及ぶため,測定器からパラメータとして取得するデータ量は非常に多く,しかも従来は上記のような装置状態の如何に拘わらず,一定のサンプリング周期(例えば0.1秒)で各測定器から各パラメータのデータを収集していたため,そのデータ量はさらに多くなってしまっていた。したがって,これらのデータを保存するデータ記憶手段(例えばハードディスク)の容量が短期間で枯渇してしまうという問題があった。
【0008】
また,基板処理装置に異常が発生した場合には,主として基板処理を実行している状態のときのデータを解析するため,基板処理を実行していない状態例えばアイドリング状態のときのデータがデータ記憶手段に大量に保存されていると,解析に必要なデータを検索するのに非常に時間がかかるという問題もあった。しかも,アイドリング状態のときは基板が処理されていないので,異常などが発生していなければ大量のデータは必要ない。
【0009】
この点,測定器からデータを取得する際のサンプリング周期を長くすれば,データ量を少なくすることができるので,データ記憶手段における記憶容量の消費を抑えることができるとも考えられる。ところが,装置状態に拘わらずサンプリング周期を短くしてしまうと,例えば基板処理を実行している状態のときのデータ量も少なくなってしまうので,そのようなデータを解析する必要が生じたときに,データ解析の精度が低下する虞がある。さらに,製造コストの観点からは,できる限り少ない容量のデータ記憶手段を使用することが望まれる。
【0010】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,データ解析精度を低下させることなく,データ記憶手段に記憶されるデータを極力少なくすることができ,データ記憶手段における記憶容量の消費を抑えることができるデータ収集方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備え,少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器からデータを収集する基板処理装置のデータ収集方法であって,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得してデータ記憶手段に記憶する工程を有し,前記基板処理装置の状態に応じて前記サンプリング周期を変更することを特徴とするデータ収集方法が提供される。
【0012】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備える基板処理装置であって,少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器と,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得するサンプリング手段と,前記計測データを記憶するデータ記憶手段と,前記基板処理装置の異なる状態ごとにサンプリング周期を予め記憶するサンプリング周期記憶手段と,前記サンプリング周期を,前記基板処理装置の状態に基づいて前記サンプリング周期記憶手段から取得した前記サンプリング周期に変更する制御を行うサンプリング制御手段と,を備えることを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0013】
このような本発明によれば,基板処理装置の状態に応じてサンプリング周期が変更されるため,常に同じ周期でサンプリングする場合に比べて,収集されるデータ量を少なくすることができる。これにより,データ解析などのために必要性の低いデータを少なくするようにサンプリング周期を変更することができるため,データ解析の精度を低下させることなく,データ記憶手段の記憶容量の消費を抑えることができる。さらに,基板処理装置の状態ごとに適切なサンプリング周期を設定すれば,サンプリングされたデータを用いたデータ解析を行うことで,より精度の高い解析結果を得ることができる。
【0014】
また,上記基板処理装置の状態が基板処理実行状態であるか否かを判断し,前記基板処理装置の状態が基板処理実行状態でない場合(例えばアイドリング状態の場合)には,基板処理実行状態である場合よりも前記サンプリング周期を長くすることが好ましい。これにより,データ解析などのために必要性の高いデータ(例えば基板処理実行状態のときのデータ)よりも,データ解析などのために必要性の低いデータ(例えばアイドリング状態のときのデータ)が少なくなるようにデータ収集を行うことができる。したがって,データ解析精度を低下させることなく,データ記憶手段の記憶容量の消費を抑えることができる。
【0015】
また,上記基板処理装置の状態が基板処理実行状態でない場合であっても,装置立ち上げ状態の場合には,少なくとも基板処理実行状態である場合の前記サンプリング周期と同じか,又はそれよりも短くすることが好ましい。これにより,例えば基板処理実行状態でない場合であっても,装置トラブルが発生する可能性が高くてデータ解析を行う可能性が高いような状態,すなわち装置立ち上げ状態の場合は,データ量が減らないようにすることができる。例えば装置立ち上げ状態の場合のサンプリング周期を基板処理実行状態である場合のサンプリング周期と同じにすることにより,装置トラブルが発生した際に行うデータ解析の精度の低下を防止することができる。また,装置立ち上げ状態の場合のサンプリング周期を基板処理実行状態である場合のサンプリング周期よりも短くすることにより,さらにデータ量を増やすことができるので,データ解析の精度を向上させることもできる。
【0016】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備える基板処理装置であって,少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器と,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得するサンプリング手段と,前記計測データを記憶するデータ記憶手段と,前記データ記憶手段に記憶された計測データを解析するデータ解析手段と,前記データ解析手段による解析結果に応じて前記サンプリング周期を変更する制御を行うサンプリング制御手段と,を備えることを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0017】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,被処理基板に所定の処理を施すための処理室及び少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器を備える基板処理装置と,前記複数の計測器からのデータを処理するデータ処理装置とをネットワークで接続した基板処理システムであって,前記基板処理装置は,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得するサンプリング手段と,取得した計測データを前記ネットワークを介して前記データ処理装置に送信する通信手段とを備え,データ処理装置は,前記基板処理装置からの計測データを受信する通信手段と,受信した計測データを記憶するデータ記憶手段と,前記データ記憶手段に記憶された計測データの解析を行うデータ解析手段と,前記データ解析手段による解析結果に応じて前記サンプリング周期を変更する制御を行うサンプリング制御手段とを備えることを特徴とする基板処理システムが提供される。
【0018】
このような本発明によれば,データ解析手段による解析結果に応じてサンプリング周期が変更されるため,常に同じ周期でサンプリングする場合に比べて,収集されるデータ量を少なくすることができる。これによって,データ記憶手段の記憶容量の消費を抑えることができる。
【0019】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備え,少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器からデータを収集する基板処理装置のデータ収集方法であって,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得してデータ記憶手段に記憶する工程を有し,前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記基板処理装置の状態が異常状態であるか否かを判断し,前記基板処理装置の状態が異常状態である場合には,異常状態でない場合よりも前記サンプリング周期を短くすることを特徴とするデータ収集方法が提供される。
【0020】
このような本発明によれば,データ解析手段による解析結果に応じてサンプリング周期が変更されるため,常に同じ周期でサンプリングする場合に比べて,収集されるデータの量を少なくすることができる。これによって,データ記憶手段の記憶領域の消費を抑えることができる。しかも,基板処理装置の状態が異常状態である場合には,短いサンプリング周期で計測データをサンプリングするため,異常状態でない場合よりもデータ量を多くすることができる。これにより,異常状態にある基板処理装置の状態を詳細に解析することができ,データ解析の精度をより高めることができる。
【0021】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備え,少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器からデータを収集する基板処理装置のデータ収集方法であって,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得してデータ記憶手段に記憶する工程を有し,前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記基板処理装置の状態を予測し,前記予測結果に基づいて前記サンプリング周期を変更することを特徴とするデータ収集方法が提供される。
【0022】
このような本発明によれば,予測結果に基づいてサンプリング周期が変更されるため,常に同じ周期でサンプリングする場合に比べて,収集されるデータの量を少なくすることができる。これによって,データ記憶手段の記憶領域の消費を抑えることができる。
【0023】
この場合,例えばデータ記憶手段に記憶された計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記処理室内に設けられた部品の消耗度を予測し,前記予測した消耗度が予め設定された閾値を超えたか否かを判断し,前記閾値を超えた場合には,前記閾値を超えない場合よりも前記サンプリング周期を短くすることが好ましい。これによって,部品の交換時期が近づいた場合には,より多くのデータをサンプリングして部品の消耗予測の精度を上げることができる。
【0024】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,被処理基板を処理する処理室を複数備え,少なくとも前記各処理室に設けられた複数の計測器からデータを収集する基板処理装置のデータ収集方法であって,前記処理室ごとに,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得してデータ記憶手段に記憶する工程を有し,前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記処理室ごとにサンプリング周期を変更することを特徴とするデータ収集方法が提供される。
【0025】
この場合,例えば前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記各処理室の状態が異常状態であるか否かを判断し,前記処理室ごとに,前記各処理室の状態が異常状態である場合には,異常状態でない場合よりも前記サンプリング周期を短くする。また,前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記処理室ごとに状態を予測し,その予測結果に応じて,前記処理室ごとに前記サンプリング周期を変更するようにしてもよい。
【0026】
このような本発明によれば,基板処理装置が複数の処理室を備える場合,処理室ごとにサンプリング周期が変更されるため,処理室ごとに適切な周期でデータを収集することができる。例えば,処理室ごとに異なる処理が行われる場合には,それぞれの処理の状態を解析するために必要なデータのみを収集することができる。この結果,収集されるデータの量を必要最小限とすることができ,データ記憶手段の記憶領域の無駄な消費を抑えることができる。
【0027】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,被処理基板に所定の処理を施すための処理室及び少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器を備える基板処理装置と,前記複数の計測器からのデータを処理するデータ処理装置と,ホストコンピュータとをネットワークで接続した基板処理システムであって,前記基板処理装置は,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得するサンプリング手段と,取得した計測データを前記ネットワークを介して前記データ処理装置に送信する通信手段とを備え,データ処理装置は,前記ホストコンピュータからの信号及び前記基板処理装置からの計測データを受信する通信手段と,受信した計測データを記憶するデータ記憶手段と,前記ホストコンピュータから信号に基づいて前記基板処理装置の状態を判断し,その状態に応じて前記サンプリング周期を変更する制御を行うサンプリング制御手段とを備えることを特徴とする基板処理システムが提供される。
【0028】
このような本発明によれば,サンプリング制御手段は,ホストコンピュータから信号に基づいて基板処理装置の状態を判断する。したがって,ホストコンピュータを用いて,基板処理システム全体のサンプリング周期を一括管理することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば,データ解析などのために必要最小限のデータを収集することができるため,データ解析の精度を低下させることなく,データ記憶手段の記憶容量の消費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
(第1実施形態にかかる基板処理装置の構成例)
先ず,本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す図である。この基板処理装置100は,被処理基板例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」ともいう)Wに対して成膜処理,エッチング処理などの各種の処理を行う処理ユニット110と,この処理ユニット110に対してウエハWを搬出入させる搬送ユニット120とを備える。
【0032】
搬送ユニット120は,図1に示すように,基板収納容器の一例としてのカセット容器132(132A〜132C)と処理ユニット110との間でウエハを搬出入する搬送室130を有している。搬送室130は,断面略多角形(例えば長方形)の箱体状に形成されている。搬送室130の一側面には,複数のカセット台134(134A〜134C)が並設されている。これらカセット台134A〜134Cはそれぞれ,カセット容器132A〜132Cを載置可能に構成されている。
【0033】
各カセット容器132(132A〜132C)には,例えば最大25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容できるようになっており,内部が例えばNガス雰囲気で満たされた密閉構造となっている。そして,搬送室130はその内部へゲートバルブを介してウエハWを搬出入可能に構成されている。なお,カセット台134とカセット容器132の数は,図1に示す例に限られるものではない。
【0034】
搬送室130の端部には,位置決め装置としてのオリエンタ(プリアライメントステージ)136が設けられている。このオリエンタ136では,例えばウエハWのオリエンテーションフラットやノッチなどを検出して位置合せを行う。
【0035】
搬送室130内には,例えばリニア駆動機構によって長手方向(図1の搬送室130内に示す矢印方向)に沿ってウエハWを搬送する搬送ユニット側搬送機構(搬送室内搬送機構)170が設けられている。搬送ユニット側搬送機構170は,後述する制御部300からの制御信号に従って動作する。なお,搬送ユニット側搬送機構170は,図1に示すような2つのピック(エンドエフェクタ)を有するダブルアーム機構に限らず,1つのみのピックを有するシングルアーム機構であってもよい。
【0036】
次に,処理ユニット110の構成例について説明する。例えばクラスタツール型の基板処理装置の場合,処理ユニット110は,図1に示すように断面多角形(例えば六角形)に形成された共通搬送室150の周囲に,複数の処理室200(第1〜第4処理室200A〜200D)及びロードロック室160M,160Nを気密に接続して構成される。
【0037】
処理室200A〜200Dでは,ウエハWに例えば成膜処理(例えばプラズマCVD処理)やエッチング処理(例えばプラズマエッチング処理)などの各種処理が施される。処理室200A〜200Dはそれぞれ,各処理室200A〜200D内へ処理ガスやパージガスなど所定のガスを導入可能なガス導入系(図1では省略),各処理室200A〜200D内を排気可能な排気系(図1では省略)が接続されている。なお,これら処理室200A〜200Dの構成例は後述する。また,処理室200の数は,図1に示す例に限られるものではない。
【0038】
上記共通搬送室150は,各処理室200A〜200Dの間,又は各処理室200A〜200Dと各第1,第2ロードロック室160M,160Nとの間でウエハWを搬出入する機能を有する。共通搬送室150は横断面多角形(例えば六角形)に形成されており,その周りに上記各処理室200(200A〜200D)がそれぞれゲートバルブを介して接続されているとともに,第1,第2ロードロック室160M,160Nの先端がそれぞれゲートバルブ(真空側ゲートバルブ)を介して接続されている。第1,第2ロードロック室160M,160Nの基端は,それぞれゲートバルブ(大気側ゲートバルブ)を介して搬送室130の他側面に接続されている。
【0039】
第1,第2ロードロック室160M,160Nは,ウエハWを一時的に保持して圧力調整後に,次段へ受け渡す機能を有している。第1,第2ロードロック室160M,160Nの内部にはそれぞれ,ウエハWを載置可能な受渡台が設けられている。
【0040】
このような処理ユニット110では,上述したように共通搬送室150と各処理室200A〜200Dとの間及び共通搬送室150と上記各ロードロック室160M,160Nとの間はそれぞれ気密に開閉可能に構成され,クラスタツール化されており,必要に応じて共通搬送室150内と連通可能になっている。また,上記第1及び第2の各ロードロック室160M,160Nと上記搬送室130との間も,それぞれ気密に開閉可能に構成されている。
【0041】
共通搬送室150内には,例えば屈伸・昇降・旋回可能に構成された多関節アームよりなる処理ユニット側搬送機構(共通搬送室内搬送機構)180が設けられている。処理ユニット側搬送機構は,各ロードロック室160M,160N及び各処理室200A〜200Dとの間でウエハWを搬送する。処理ユニット側搬送機構180は,制御部300からの制御信号に基づいて駆動するようになっている。なお,処理ユニット側搬送機構180は,図1に示すような2つのピックを有するダブルアーム機構に限らず,1つのみのピックを有するシングルアーム機構であってもよい。
【0042】
基板処理装置100には,上記搬送ユニット側搬送機構170,処理ユニット側180,各ゲートバルブ,オリエンタ136などの制御を含め,基板処理装置100全体の動作を制御する制御部300が設けられている。この制御部300の構成例は後述する。
【0043】
(処理室の構成例)
次に,各処理室200A〜200Dの構成例について図面を参照しながら説明する。図2は,各処理室200A〜200Dとその周辺装置の構成例を示すブロック図である。ここでは,各処理室200A〜200Dの構成は同様とし,各処理室200A〜200Dの構成要素を示す符号からA〜Dを省略して代表的に説明する。したがって,例えば処理室200という場合は各処理室200A〜200Dを示す。
【0044】
図2に示すように,処理室200は,例えばアルミニウムで形成された処理容器201を備え,その内部には,下部電極202を絶縁材202Aを介して支持する昇降可能なアルミニウム製の支持体203と,この支持体203の上方に配置されプロセスガスを供給するシャワーヘッド204を備えている。シャワーヘッド204は,上部電極としても機能するものであり,絶縁材204Cを介して処理室200の側壁と電気的に絶縁されている。以下,シャワーヘッド204を上部電極204とも称する。
【0045】
上部電極204には,第1の高周波電源204Eが接続されており,その給電線には整合器204Dが介挿されている。この第1の高周波電源204Eは,50〜150MHzの範囲の電力を出力する。このように高い周波数の電力を上部電極204に印加することにより,処理室200内に好ましい解離状態でかつ高密度のプラズマを形成することができ,低圧条件下のプラズマ処理が可能となる。この第1の高周波電源204Eの出力周波数は,50〜80MHzが好ましく,典型的には図示した60MHz又はその近傍の周波数が採用される。
【0046】
処理室200の側壁には,検出窓222が設けられており,処理室200の側壁の外側には,検出窓222を介して処理室200内のプラズマ発光を検出する分光器などの光学計測器220が設けられている。
【0047】
処理室200は,処理容器201内の上側に位置する小径の上室201Aと下側に位置する大径の下室201Bとから構成される。下室201Bの上部にはウエハWを搬出入するための出入口が形成され,この出入口にはゲートバルブ206が取り付けられている。
【0048】
下部電極202には,VIプローブなどの電気計測器207C,整合器207A,電力計(計測器)207Bを介して第2の高周波電源207が接続されている。この第2の高周波電源207は数百kHz〜十数MHzの範囲の電力を出力する。このような範囲の周波数を下部電極202に印加することにより,被処理基板であるウエハWに対してダメージを与えることなく適切なイオン作用を与えることができる。第2の高周波電源207の周波数は,典型的には図示した2MHzなどの周波数が採用される。なお,本実施形態では,第2の高周波電源207から2MHzの高周波電力が出力される。下部電極202にはこの2MHzの高周波電力の他に,これを基本波とする整数倍波(例えば4MHz,8MHz,10MHzなど)も印加される。
【0049】
整合器207Aは,例えばコンデンサC,可変コンデンサC1,C2,及びコイルLを内蔵し,可変コンデンサC1,C2を調整することによって,下部電極202と第2の高周波電源207とのインピーダンス整合を取っている。また,整合器207A内には,下部電極202側(高周波電圧の出力側)の高周波(RF)電圧Vppを測定する検出器(図示せず)を備える。また,整合器207Aは,電圧計(計測器)207aを備え,この電圧計207aにより第2の高周波電力の供給ライン(電線)と処理室200のグランド(接地)との間の電圧Vdcが計測される。
【0050】
第2の高周波電源207から出力される第2の高周波電力は,電力計207Bによって測定される。また,上室201A内に発生するプラズマに基づく基本波(例えば高周波電力の進行波及び反射波など)及び高調波における高周波電圧(V),高周波電流(I),高周波位相(P),インピーダンス(Z)は,下部電極202に印加される高周波電力を電気計測器207Cが計測することによって検出される。
【0051】
下部電極202の上面には,静電チャック208が配置され,この静電チャック208の電極板208Aには直流電源209が接続されている。高真空下で直流電源209から電極板208Aに高電圧を印加することにより,ウエハWを静電チャック208に静電吸着することができる。この静電チャック208の電極板208Aと直流電源209との間には,静電チャック208の印加電流,印加電圧を検出する電力計209aが接続されている。
【0052】
下部電極202の外周には,上室201A内で生成したプラズマをウエハWに集めるためのフォーカスリング210aが配置されている。フォーカスリング210aの下側には支持体203の上部に取り付けられた排気リング211が配置されている。この排気リング211には複数の孔が全周に渡って周方向等間隔に形成され,上室201A内のガスはこれらの孔を介して下室201Bへ排気される。
【0053】
支持体203は,ボールネジ機構212とベローズ213が動作することによって,上室201Aと下室201Bとの間を昇降する。ウエハWを下部電極202上に供給する場合には,支持体203が下降することによって下部電極202が下室201Bまで下降し,ゲートバルブ206を開放して,共通搬送室150内の処理ユニット側搬送機構(共通搬送室内搬送機構)180(図1参照)がウエハWを下部電極202上に供給する。なお,ベローズ213の外側にはベローズカバー216が備えられている。
【0054】
支持体203の内部には冷媒配管214に接続された冷媒流路203Aが形成されている。この冷媒配管214を介して冷媒流路203Aに冷媒を循環させることによって,ウエハWが所定の温度に調整される。
【0055】
支持体203,絶縁材202A,下部電極202,及び静電チャック208にはそれぞれガス流路203Bが形成されている。ガス導入機構215は,ガス配管215Aを介して静電チャック208とウエハWとの間の細隙に,バックサイドガスとして例えばHeガスを所定の圧力で供給する。このHeガスによって静電チャック208とウエハWとの間の熱伝導性が高められる。バックサイドガスの圧力は圧力計215Bによって検出される。ガス導入機構215には例えばマスフローコントローラ(図示せず)が設けられており,このマスフローコントローラによりバックサイドガスのガス流量を検出し制御することができる。
【0056】
上部電極204の上面にはガス導入部204Aが形成され,このガス導入部204Aには配管217を介してプロセスガス供給系218が接続されている。プロセスガス供給系218は,Cガス供給源218A,Oガス供給源218D,Arガス供給源218Gを有している。
【0057】
これらのガス供給源218A,218D,218Gはそれぞれ,バルブ218B,218E,218H及びマスフローコントローラ218C,218F,218Iを介してそれぞれのガスを所定の流量で上部電極204へ送出する。これによって,上部電極204には,所定の配合比の混合ガスが供給される。上部電極204の下面には複数の孔204Bが全面に渡って均等に設けられており,これらの孔204Bを介して上部電極204から上室201A内へ混合ガスがプロセスガスとして供給される。
【0058】
処理室200は,排気管201Cを介して真空ポンプなどからなる排気系219に接続されている。排気管201Cには,APC(Auto Pressure Controller)バルブ201Dが設けられており,処理室200内のガス圧力に応じてAPCバルブの開度が自動的に調節される。
【0059】
(制御部の構成例)
基板処理装置100の制御部300の構成例を図面を参照しながら説明する。図3は制御部300の構成を示すブロック図である。同図に示すように,制御部300は,装置制御部(以下,「EC:Equipment Controller」と称する)310,複数のモジュール制御部(以下,「MC:Module Controller」と称する)340A,340B,340C,…,計測器350A,350B,350C,…,通信手段360,及びこれらを接続するスイッチングハブ370を備える。
【0060】
EC310は,MC340A,340B,340C,…を統括して基板処理装置100全体の動作を制御する主制御部(マスタ制御部)を構成する。例えばEC310は,EC本体を構成するCPU(中央処理装置),このCPUが行う各種データ処理のために使用されるメモリ領域などを設けたRAM(ランダム・アクセス・メモリ),操作画面や選択画面などを表示する液晶ディスプレイなどで構成される表示手段,オペレータによるプロセスレシピの入力や編集など種々のデータの入力,所定の記憶媒体へのプロセスレシピやプロセス・ログの出力など種々のデータの出力などを行うことができる入出力手段,基板処理装置100に漏電などの異常が発生した際に報知する警報器(例えばブザー)などの報知手段,例えばホストコンピュータ500などの外部装置と通信を行うための通信手段を備える。また,EC310は,基板処理装置100の種々の処理を実行するための処理プログラムや,この処理プログラムを実行するために必要な情報を記憶する記憶手段を備える。
【0061】
各MC340A,340B,340C,…は,基板処理装置100の搬送室130,オリエンタ136,ロードロック室160M,160N,共通搬送室150,処理室200A〜200Dなどの各モジュールの動作を制御する副制御部(スレーブ制御部)を構成する。
【0062】
また,各MC340A,340B,340C,…は,各計測器350A,350B,350C,…が計測した信号(以下,「計測信号」と称する)を所定の周期でサンプリングする機能も兼ね備える。
【0063】
計測器350A,350B,350C,…はそれぞれ,各モジュールに備えられ,各モジュールの状態や各モジュール内のウエハWの状態を示す信号を計測する。そして,各MC340A,340B,340C,…は,各計測器350A,350B,350C,…が計測した信号をサンプリングして,このサンプリングして得られたサンプリングデータ,すなわち計測データ(以下,単に「データ」とも称する)を通信手段360に送信する。
【0064】
基板処理装置100の通信手段360は,例えばLAN(Local Area Network)などのネットワーク400を介してデータ処理装置600に電気的に接続されている。通信手段360は,データ処理装置600との間での各種データのやりとりがTCP/IP等のプロトコルに基づいて行われる。通信手段360は,例えば各MC340A,340B,340C,…からのサンプリングデータをデータ処理装置600に送信する。
【0065】
ホストコンピュータ500は,基板処理装置100が設置される工場全体の製造工程を管理する。ホストコンピュータ500は,ネットワーク400を介して,基板処理装置100における制御部300内のEC310に接続されている。EC310は例えばホストコンピュータ500との論理的なインターフェイス手段としての通信手段例えばHCI(Host Communication Interface)を有し,このHCIによって,ホストコンピュータ500との間での各種データのやりとりがTCP/IP等のプロトコルに基づいて行われる。なお,通信手段の構成は上記に限られることはない。これにより,ホストコンピュータ500は,EC310を介して基板処理装置100を制御することもできる。また,ホストコンピュータ500は,無人搬送車(図示せず)などを制御してカセット容器を基板処理装置100のカセット台134A〜134Cにセットさせる。
【0066】
データ処理装置600は,通信手段360から受け取ったサンプリングデータを記憶するとともに,このサンプリングデータを用いて各種演算処理を実行する。また,データ処理装置600は,制御部300内の各MC340A,340B,340C,…のデータサンプリング動作を制御する。
【0067】
(データ処理装置,MC,計測器の構成例)
データ処理装置600,MC340A,340B,340C,…,及び計測器350A,350B,350C,…の構成例を図面を参照しながら説明する。図4はこれらの構成を示すブロック図である。以下,各構成について,計測データ及びサンプリングデータの流れに沿って説明する。
【0068】
図4に示すように,各計測器350A,350B,350C,…は,例えば,パラメータ信号計測器352,光学的信号計測器354,及び電気的信号計測器356から構成されている。このうちパラメータ信号計測器352は,基板処理装置100の処理室200内に導入する処理ガスの流量,処理室200内の圧力,処理室200内に対向して設置された電極の少なくとも一方に与えられる高周波電力など,制御可能なパラメータを計測する。また,光学的信号計測器354は,処理室200内に励起されたプラズマ状態を把握するためのプラズマ分光などの光学的信号を計測するものであり,具体的には光学計測器220がこれに相当する。また,電気的信号計測器356は,基板処理装置100の状態を示す電気的信号を測定するものであり,具体的には処理室200の下部電極202に接続されている電気計測器207C,電力計207B,電圧計207a,静電チャック208の電極板208Aと直流電源209との間に接続されている電力計209aなどがこれに相当する。
【0069】
本実施形態では,計測信号としては,例えば各マスフローコントローラ218C,218F,218Iによって計測されたガス流量を示す信号,APCバルブ201DのAPC開度を示す信号,電力計209aから検出された静電チャック208の印加電流信号,印加電圧信号,圧力計215Bによって検出されたバックサイドガスのガス圧力を示す信号,整合器207Aにおける測定値(例えば整合状態での可変コンデンサC1,C2のポジション,高周波電力供給ライン(電線)と接地間の電圧Vdc)を示す信号,電気計測器207Cによる測定値(例えば高周波電力の進行波及び反射波など)を示す信号,光学計測器220より検出される処理室200内のプラズマの発光スペクトル信号タ,発光強度信号タなどが挙げられる。
【0070】
各MC340A,340B,340C,…は,パラメータ信号サンプリング手段342,光学的信号サンプリング手段344,及び電気的信号サンプリング手段346を備えており,対応する計測器350A,350B,350C,…が測定した上記信号をサンプリングしてサンプリングデータを得る。例えば,MC340Aのパラメータ信号サンプリング手段342は,計測器350Aのパラメータ信号計測器352が計測したパラメータ信号をサンプリングする。同様に,MC340Aの光学的信号サンプリング手段344は,計測器350Aの光学的信号計測器354が計測した光学的信号をサンプリングし,MC340Aの電気的信号サンプリング手段346は,計測器350Aの電気的信号計測器356が計測した電気的信号をサンプリングする。
【0071】
各MC340A,340B,340C,…は,サンプリングデータを通信手段360へ送信する。通信手段360は,受信したサンプリングデータを例えばTCP/IPなどの通信プロトコルに従って加工してデータ処理装置600へ送信する。なお,各MC340A,340B,340C,…にデータ通信手段を備えて,各MC340A,340B,340C,…から直接,データ処理装置600へデータを送信するようにしてもよい。ただし,複数の処理室を備える基板処理装置100の場合,制御部300に搭載されるMCの数は処理室の分だけ多くなる。この場合,本実施形態のように各MC340A,340B,340C,…からデータ処理装置600へのデータ通信を制御する通信手段360を備えることが好ましい。これによって,ネットワーク400のトラフィック状態や送信データの量に応じた効率のよいデータ通信が実現する。
【0072】
以上の制御部300からのサンプリングデータを受信するデータ処理装置600は,演算手段610,プログラム記憶手段620,モデル記憶手段630,データ記憶手段640,サンプリング周期記憶手段650,及び通信手段660を備えている。なお,データ処理装置600は,例えばコンピュータで構成される。演算手段610は,少なくともデータ解析手段612とサンプリング制御手段614としての機能を備えている。
【0073】
データ解析手段612は,制御部300の通信手段360が送信し通信手段660が受信した各種のサンプリングデータを統計的に処理することによって各データの相関関係を求め,この相関関係に基づいて,基板処理装置100の状態やウエハWの処理状態を予測するために用いるモデルを作成する。そして,データ解析手段612は,この作成したモデルと制御部300から受信したサンプリングデータを用いて,基板処理装置100の状態やウエハWの処理状態を予測する。また,データ解析手段612は,制御部300から受信したサンプリングデータから,基板処理装置100の状態やウエハWの処理状態が正常であるか否かを判定する。データ解析手段612は,この予測結果及び判定結果を,通信手段660を介して制御部300のEC310に通知する。EC310は,予測結果又は判定結果に基づいて,基板処理装置100の動作を継続,変更,又は中断する。
【0074】
サンプリング制御手段614は,例えば基板処理装置100の運転状態やデータ解析手段612によるデータ解析結果に応じて,サンプリング周期を変えて計測データをサンプリングするように,各MC340A,340B,340C,…のパラメータ信号サンプリング手段342,光学的信号サンプリング手段344,及び電気的信号サンプリング手段346のサンプリング動作を制御する。このサンプリング制御手段614によるサンプリング制御方法の詳細については後述する。
【0075】
プログラム記憶手段620は,データ解析手段612が実行する多変量解析プログラムや単変量解析プログラムなどの演算プログラム及びサンプリング制御手段614が実行するサンプリング制御プログラムを記憶する。
【0076】
モデル記憶手段630は,データ解析手段612が作成したモデルを記憶する。また,データ解析手段612は,基板処理装置100の状態やウエハWの処理状態を予測する際に,モデル記憶手段630からモデルを読み出して,これを用いて演算処理を実行する。
【0077】
プログラム記憶手段620とモデル記憶手段630はそれぞれ,半導体メモリなどの記録手段で構成してもよく,ハードディスクなどの記録手段にそれぞれのメモリ領域を設けて構成してもよい。
【0078】
データ記憶手段640は,制御部300の通信手段360が送信し,通信手段660が受信するサンプリングデータを記憶する。このデータ記憶手段640としては,ランダムアクセスが可能であり,アクセス速度が速く,かつ容量の大きい記憶手段,例えばハードディスクを用いることが好ましい。
【0079】
サンプリング周期記憶手段650は,複数のサンプリング周期データを記憶する。サンプリング制御手段614は,サンプリング周期記憶手段650から一のサンプリング周期データを読み出して,その周期で計測データをサンプリングするようにパラメータ信号サンプリング手段342,光学的信号サンプリング手段344,及び電気的信号サンプリング手段346を制御する。サンプリング周期記憶手段650は,半導体メモリなどの記憶手段で構成してもよく,データ記憶手段640として用いられるハードディスクなどの記憶手段にメモリ領域を設けて構成してもよい。
【0080】
通信手段660は,ネットワーク400を介して制御部300の通信手段360に電気的に接続されており,サンプリングデータの受信やサンプリング制御手段614が出力する制御信号の送信などを行う。
【0081】
ところで,本実施形態においては,多変量解析として,部分最小二乗法(以下,「PLS:Partial Least Squares法」と称す)と主成分分析(以下,「PCA:Principal Component Analysis」と称する)が用いられる。このうち,PLS法は,基板処理装置100の状態予測,基板処理装置100に備えられている部品の消耗予測,及びウエハWの処理結果予測などに用いられる。また,PCAは,基板処理装置100の異常検出などに用いられる。
【0082】
PLS法は,例えばJOURNAL OF CHEMOMETRICS, VOL.2(PP211-228)(1998)に掲載されている。PLS法においては,複数のプラズマ反映パラメータが説明変量とされ,複数の制御パラメータ及び装置状態パラメータが目的変量とされ,両者を関連付けた下記式(1)のモデル式(回帰式などの予測式,相関関係式)が作成される。下記式(1)のモデル式において,Xは説明変量の行列を意味し,Yは被説明変量(予測値)の行列を意味する。また,Bは説明変量の係数(重み)からなる回帰行列であり,Eは残差行列である。
【0083】
Y=BX+E …(1)
【0084】
このPLS法は,行列X,Yそれぞれに多数の説明変量及び被説明変量があってもそれぞれの少数の実測値があればXとYの関係式を求めることができる。しかも,少ない実測値で得られた関係式であっても安定性及び信頼性の高いものであることもPLS法の特徴である。
【0085】
本実施形態では,データ解析手段612は,プログラム記憶手段620からPLS法用のプログラムを読み出し,説明変数,目的変数とするデータをプログラムの手順に従って処理し,上記式(1)を求める。そして,データ解析手段612は,上記式(1)を求めれば,後は説明変量とするデータを行列Xに当てはめることによって目的変数を予測することができる。しかもこの予測値は信頼性の高いものになる。
【0086】
一方のPCAは,多くのパラメータからなる資料から,少数の特徴的なパラメータを合成し,この合成パラメータ(主成分)から資料を分析するものである。本実施形態にかかる基板処理装置100のように基板処理装置の状態を示すパラメータとして非常に多くのプラズマ反映パラメータ,制御パラメータ,装置状態パラメータ等がある場合には,PACは,基板処理装置100の状態を把握するうえで有効な手法と言える。
【0087】
本実施形態では,データ解析手段612は,プログラム記憶手段620からPCA用のプログラムを読み出し,プログラムの手順に従って,多数のパラメータに対してPCAによるデータ解析を行い,残差二乗和,主成分得点,主成分得点二乗和などの指標を算出し,基板処理装置100の状態異常を検出する。
【0088】
(基板処理装置の状態)
ここで,基板処理装置100の装置状態について図面を参照しながら説明する。基板処理装置100の装置状態は,大局的には,ウエハの処理を実行している基板処理実行状態と,基板処理実行状態でない場合に分けられる。基板処理実行状態でない場合としては,ウエハの処理待ちの状態であるアイドリング状態や,ウエハの処理を実行できる状態にするための装置立ち上げ状態がある。本実施形態では,基板処理実行状態でない場合としてアイドリング状態を挙げて説明する。
【0089】
このような本実施形態における基板処理装置100の状態遷移図を図5に示す。本実施形態では,図5に示すように,基板処理装置100の装置状態としてアイドリング状態ST1と基板処理実行状態ST2を考える。
【0090】
基板処理装置100がアイドリング状態ST1のときは,これから処理を行うウエハWを収容するカセット容器がセットされるまで待ち状態となっている。このアイドリング状態ST1のときに,カセット容器がカセット台134A〜134Cのいずれか,又はすべてにセットされると,基板処理装置100の装置状態は,アイドリング状態ST1から基板処理実行状態ST2に遷移する(TR12)。カセット容器は,例えばホストコンピュータ500からの指令に応じて無人搬送車(図示せず)によって基板処理装置100まで搬送され,カセット台にセットされる。
【0091】
サンプリング制御手段614は,基板処理装置100の装置状態が基板処理実行状態ST2であるか否かを,基板処理装置100又はホストコンピュータ500からの情報に基づいて判断する。基板処理装置100からの情報としては,例えばカセット台134A〜134Cにカセット容器が載置されたか否かの情報で判断することができる。具体的には,EC310は例えばカセット台134A〜134Cに設けられたセンサ(図示せず)によってカセット容器がセットされたか否かを検出する。EC310はカセット容器がセットされたことを検出すると,検出信号をサンプリング制御手段614に送信する。サンプリング制御手段614は,検出信号を受信すると,基板処理装置100がアイドリング状態ST1から基板処理実行状態ST2に遷移したと判断する。
【0092】
また,ホストコンピュータ500からの情報としては,無人搬送車でカセット容器を搬送する際に,ホストコンピュータ500から出される搬送指令が挙げられる。サンプリング制御手段614は,この搬送指令に基づいて基板処理装置100がアイドリング状態ST1から基板処理実行状態ST2に遷移したと判断することができる。サンプリング制御手段614は,ホストコンピュータ500からの搬送指令の有無を監視し,搬送指令があったときに基板処理装置100がアイドリング状態ST1から基板処理実行状態ST2に遷移したと判断するようにしてもよい。
【0093】
なお,ホストコンピュータ500又は基板処理装置100は,基板処理装置100の装置状態が遷移するごとに,サンプリング制御手段614に遷移後の装置状態についての装置状態データを送信するようにしてもよい。これによれば,サンプリング制御手段614は装置状態データに基づいて基板処理装置100の装置状態を判断することができる。
【0094】
ここで,基板処理装置100の状態が基板処理実行状態ST2のときの動作について説明する。先ず,搬送ユニット側搬送機構170によりカセット容器132A〜132CのいずれかからウエハWを搬出し,これをオリエンタ136まで搬送する。このオリエンタ136でウエハWの位置決めを行い,その後,ロードロック室160M又は160Nへ搬送する。このとき,必要なすべての処理が完了した処理完了ウエハWがロードロック室160M又は160Nにあれば,処理完了ウエハWを搬出してから,未処理ウエハWを搬入する。
【0095】
次に,ロードロック室160M又は160Nの未処理ウエハWを処理ユニット側搬送機構180によってそのウエハWが処理される処理室,例えば処理室200Aへ搬送する。この処理室200AでウエハWに対して所定の処理を施す。そして,処理室200Aでの処理が完了した処理済ウエハWを処理ユニット側搬送機構180によって処理室200Aから搬出する。このとき,そのウエハWが連続して複数の処理室200で処理する必要があれば,次の処理を行う他の処理室200,例えば処理室200BへウエハWを搬入し,その処理室200Bでの処理を実行する。
【0096】
このようにしてウエハWに対する必要なすべての処理が完了した後,その処理完了ウエハを逆の手順で元のカセット容器132A〜132Cに戻す。そして,すべてのウエハWの処理が完了してカセット容器132A〜132Cに戻されると,EC310はウエハ処理が終了したことをホストコンピュータ500に通知する。ホストコンピュータ500は,その通知を受けると,無人搬送車に対して,カセット容器132A〜132Cを基板処理装置100から搬出するように指令を出す。
【0097】
このようにして,無人搬送車によってカセット容器132A〜132Cが基板処理装置100の外部へ搬出されると,すなわちカセット容器132A〜132Cがカセット台134A〜134Cから取り除かれると基板処理装置100は,再びアイドリング状態ST1に遷移する(TR21)。なお,サンプリング制御手段614は,基板処理装置100が基板処理実行状態ST2からアイドリング状態ST1に遷移したことは,上記と同様に基板処理装置100又はホストコンピュータ500からの情報に基づいて判断する。
【0098】
(サンプリング周期)
ここで,第1実施形態におけるサンプリング周期について図面を参照しながら説明する。第1実施形態におけるサンプリング周期記憶手段650には,上述した基板処理装置100の状態それぞれに対して設定されたデータサンプリング周期が記憶される。サンプリング周期の設定は,例えば,データ処理装置600に備えられたデータ入力手段(図示せず)を用いてオペレータが行うようにしてもよく,またホストコンピュータ500を介して行うようにしてもよい。
【0099】
図6は,サンプリング周期記憶手段650に記憶されるサンプリング周期と装置状態との関係を示すデータテーブルである。図6に示すように,アイドリング状態ST1にはサンプリング周期TA(例えば,1s)が設定され,基板処理実行状態ST2にはサンプリング周期TB(例えば,100ms)が設定される。サンプリング周期の設定は,例えばデータ処理装置600に備えられたデータ入力手段(図示せず)を用いてオペレータが行うようにしてもよく,またホストコンピュータ500を介して行うようにしてもよい。
【0100】
(データ収集処理の具体例)
次に,本実施形態にかかるデータ収集処理の具体例について図面を参照しながら説明する。図7は,本実施形態にかかるデータ収集処理の具体例を示すフローチャートである。データ収集処理は,データ処理装置600の演算手段610により所定のプログラムに基づいて実行される。この場合,先ずサンプリング制御手段614によって,基板処理装置100の状態に応じてサンプリング周期を変更する制御が行われる(ステップS110,S120,S130)。
【0101】
具体的にはステップS110にて基板処理装置100の装置状態が基板処理実行状態か否かを判断する。そして,基板処理装置100が基板処理実行状態ST2ではないと判断した場合,例えば上記のようなアイドリング状態ST1にあると判断した場合には,ステップS120にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,アイドリング状態ST1に対応するサンプリング周期TAを読み出す。
【0102】
そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測された信号をサンプリング周期TAでサンプリングするように制御信号を送信する。なお,この制御信号は,データ処理装置600の通信手段660と制御部300の通信手段360を介して送受信される。
【0103】
また,ステップS110にて装置状態が基板処理実行状態ST2であると判断した場合には,ステップS130にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,基板処理実行状態ST2に対応するサンプリング周期TBを読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測された信号をサンプリング周期TBでサンプリングするように制御信号を送信する。
【0104】
ここで,第1実施形態にかかる基板処理装置100の状態と,各MC340A,340B,340C,…によるサンプリング周期との関係を示す波形図を図8に示す。同図に示すように,各MCの各サンプリング手段は,装置状態が基板処理実行状態ST2のときにはサンプリング周期TB(例えば100ms)で計測信号をサンプリングし,装置状態がアイドリング状態ST1のときにはサンプリング周期TBよりも長いサンプリング周期TA(例えば1s)で計測信号をサンプリングする。これによって,アイドリング状態ST1のときには,基板処理実行状態ST2のときよりもサンプリングデータを少なくすることができる。
【0105】
こうして基板処理装置100において各MC340A,340B,340C,…によってサンプリングされたデータは,通信手段360によりネットワーク400を介してデータ処理装置600の通信手段660に送信される。そして,データ処理装置600では,ステップS140にて通信手段660で受信したサンプリングデータをデータ記憶手段640に逐次格納する。
【0106】
次に,ステップS150にてデータ収集を終了するか否かを判断する。例えば装置稼働終了やメンテナンスなどのために基板処理装置100を停止する操作やホストコンピュータ500からの指令があったときに,これらの操作や指令に基づいてデータ収集処理を終了するか否かを判断する。ステップS150にてデータ収集を終了しないと判断した場合は上記のステップS110の処理に戻り,データ収集を終了すると判断した場合は一連のデータ収集処理を終了する。
【0107】
上述のようにデータ記憶手段640に記憶されるサンプリングデータは,例えば基板処理装置100に異常が発生した際に原因究明などを行うためのデータ解析の他に,基板処理装置100の異常判定,異常予測,基板処理装置100の部品の消耗予測などのデータ解析にも用いられる。したがって,このようなデータ解析のために必要性の高い基板処理実行状態ST2のときのデータを減らすことなく,データ解析のために必要性の低いアイドリング状態ST1のときのデータを減らすことにより,データ解析の精度を低下させることなく,データ記憶手段640の記憶容量の消費を抑えることができる。
【0108】
また,基板処理実行状態ST2のときのサンプリング周期TBを従来よりも短くして,より多くのデータを取得することもできる。これによって,従来以上に基板処理装置100の異常を正確かつ早期に発見できるとともに,部品の交換時期を正確に予測することもできる。また,基板処理実行状態ST2のときのデータは,ウエハWの処理結果の予測などにも用いられるため,基板処理実行状態ST2のデータをより多く取得することにより,ウエハWの処理結果の予測精度も向上させることができる。
【0109】
これに対して,アイドリング状態ST1では,ウエハの処理を行うわけではないので,基板処理実行状態ST2のときに比べてデータ量が少なくても,異常判断や異常予測を十分に行うことができる。
【0110】
この点,本発明では,データ解析のために必要性が高いデータであるか否かを装置状態に基づいて判断することができる点に注目し,基板処理装置100の状態に応じて異なるサンプリング周期で計測信号をサンプリングする。これによれば,必要性の高いデータ(例えば基板処理実行状態のときのデータ)よりも,必要性の低いデータ(例えばアイドリング状態のときのデータ)が少なくなるようにデータ収集を行うことができる。これにより,データ解析の精度を低下させることなく,データ記憶手段640の記憶容量の消費を抑えることができる。また,基板処理装置の状態ごとに適切なサンプリング周期を設定することができるため,より精度の高い解析結果を得ることができる。
【0111】
また,データ解析のために必要性の低いデータを極力少なくすることができるため,データ解析に用いるデータの検索時間を短縮することができる。これによって,より短時間でデータ解析が完了するため,解析結果をウエハWの処理や基板処理装置100の運転に早期に反映させることができる。
【0112】
なお,上記のようにデータ解析のために必要性の低いデータを極力少なくすることができるので,データ記憶手段640にはデータ解析のために必要性の高いデータの記憶領域がより広く確保されることになり,より遠い過去に取得したデータをデータ記憶手段640に記憶しておくこともできる。この結果,基板処理装置100の状態履歴やウエハWの処理履歴を遠い過去に遡って検証することができるようになる。
【0113】
また,データ解析のために必要性が高いデータをより多く記憶することができるため,データ解析結果の精度を向上させることができる。例えば,部品消耗の予測精度が向上するため,部品の交換時期を正確に把握することができる。さらに,基板処理装置100の状態を長期間にわたってモニタリングすることもできるようになる。しかも,基板処理装置100と他の基板処理装置との間の特性ばらつきも把握することができるようになる。
【0114】
(第2実施形態)
次に,本発明の第2実施形態にかかるデータ収集処理について図面を参照しながら説明する。なお,第2実施形態にかかる基板処理装置100及びデータ処理装置600の構成は,図1〜図4に示すものと同様であるため,その詳細な説明を省略する。
【0115】
先ず,本実施形態にかかる基板処理装置100の状態を示す状態遷移図を図9に示す。第2実施形態では,基板処理実行状態でない場合として,基板処理装置100が稼働していない停止状態ST0から電源を投入して立ち上げるときの立ち上げ状態(以下,単に「立ち上げ状態」という)も考慮する。
【0116】
停止状態ST0とは,基板処理装置100が稼働していない状態をいい,電源がオフになっている状態をいう。なお,停止状態ST0には,基板処理装置100の電源をオフにして修理,点検,部品交換などのメンテナンスを行っている場合も含まれる。
【0117】
立ち上げ状態ST3とは,基板処理装置100に電源を投入して最初に稼働して立ち上げるときの状態や,基板処理装置100のメンテナンス終了後に装置の立ち上げを行うときの状態をいう。工場において基板処理装置100を組立てて,装置の立ち上げを行うときの状態も含まれる。
【0118】
基板処理装置100は,停止状態ST0から電源が投入されると,立ち上げ状態ST3になり(TR03),その後,アイドリング状態ST1へ遷移する(TR31)。例えば停止状態ST0の基板処理装置100の電源を投入すると,処理室内の温度や圧力などの制御パラメータが調整され,ウエハの処理が可能な状態に立ち上げられる。すると,基板処理装置100は,アイドリング状態ST1に遷移し,ウエハの処理待ちとなる。
【0119】
この場合,サンプリング制御手段614は,基板処理装置100の装置状態が立ち上げ状態ST3である否かを,基板処理装置100又はホストコンピュータ500からの情報に基づいて判断する。例えば基板処理装置100の電源が投入されたか否かにより,装置状態が立ち上げ状態ST3になったと判断することができる。また,制御パラメータの調整は例えばEC310によって制御されるので,サンプリング制御手段614は,EC310から制御パラメータの調整が終了したことの通知を受信することによって,装置状態が立ち上げ状態ST3からアイドリング状態ST1になったと判断することができる。
【0120】
なお,その他の装置状態及び遷移条件については第1実施形態と同様であるためここでは説明を省略する。
【0121】
(サンプリング周期)
ここで,第2実施形態におけるサンプリング周期について図面を参照しながら説明する。第2実施形態におけるサンプリング周期記憶手段650には,上記第1実施形態と同様に,基板処理装置100の状態それぞれに対して設定されたデータサンプリング周期が記憶される。図10は,サンプリング周期記憶手段650に記憶されるサンプリング周期と装置状態との関係を示すデータテーブルである。
【0122】
図10に示すように,アイドリング状態ST1にはサンプリング周期TA(例えば,1s)が設定され,基板処理実行状態ST2にはサンプリング周期TB(例えば,100ms)が設定され,立ち上げ状態ST3にはサンプリング周期TC(例えば,100ms)が設定される。サンプリング周期の設定は,例えば,データ処理装置600に備えられたデータ入力手段(図示せず)を用いてオペレータが行うようにしてもよく,またホストコンピュータ500を介して行うようにしてもよい。
【0123】
(データ収集処理の具体例)
次に,本実施形態にかかるデータ収集処理の具体例について図面を参照しながら説明する。図11は,本実施形態にかかるデータ収集処理の具体例を示すフローチャートである。データ収集処理は,データ処理装置600の演算手段610により所定のプログラムに基づいて実行される。この場合,先ずサンプリング制御手段614によって,基板処理装置100の状態に応じてサンプリング周期を変更する制御が行われる(ステップS110,S112,S114,S120,S130)。
【0124】
具体的にはステップS110にて基板処理装置100の装置状態が基板処理実行状態か否かを判断する。ステップS110にて装置状態が基板処理実行状態でないと判断した場合は,ステップS112にて基板処理装置100の装置状態が立ち上げ状態か否かを判断する。ステップS112にて装置状態が立ち上げ状態であると判断した場合は,ステップS114にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,立ち上げ状態ST3に対応するサンプリング周期TCを読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測された信号をサンプリング周期TCでサンプリングするように制御信号を送信する。
【0125】
また,ステップS112にて装置状態が立ち上げ状態ではないと判断した場合は,アイドリング状態であると判断し,ステップS120にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,アイドリング状態ST1に対応するサンプリング周期TAを読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測された信号をサンプリング周期TAでサンプリングするように制御信号を送信する。
【0126】
また,ステップS110にて基板処理装置100が立ち上げ状態ST3であると判断した場合には,ステップS130にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,基板処理実行状態ST2に対応するサンプリング周期TBを読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測された信号をサンプリング周期TBでサンプリングするように制御信号を送信する。
【0127】
ここで,第2実施形態にかかる基板処理装置100の状態と,各MC340A,340B,340C,…によるサンプリング周期との関係を示す波形図を図12に示す。なお,基板処理実行状態ST2におけるサンプリング波形は,図8と同様であるため図12では省略している。同図に示すように,各MCの各サンプリング手段は,アイドリング状態ST1のときにはサンプリング周期TA(例えば1s)で計測信号をサンプリングし,装置状態が立ち上げ状態ST3のときにはサンプリング周期TAよりも短いサンプリング周期TC(例えば100ms)で計測信号をサンプリングする。これによって,装置状態が基板処理実行状態でない場合であっても,装置トラブルが発生し易い立ち上げ状態のときには,アイドリング状態よりもサンプリングデータを多くすることにより,装置トラブルが発生した場合に行われるデータ解析の精度を向上させることができる。
【0128】
こうして基板処理装置100において各MC340A,340B,340C,…によってサンプリングされたデータは,通信手段360によりネットワーク400を介してデータ処理装置600の通信手段660に送信される。そして,データ処理装置600では,ステップS140にて通信手段360で受信したサンプリングデータをデータ記憶手段640に逐次格納する。
【0129】
次に,ステップS150にてデータ収集処理を終了するか否かを判断する。ステップS150にてデータ収集を終了しないと判断した場合は上記のステップS110の処理に戻り,データ収集を終了すると判断した場合は一連のデータ収集処理を終了する。
【0130】
上述したように,基板処理装置100を立ち上げる際には,一般的に装置異常の発生頻度が高くなる。例えば冷却水や冷媒の供給不良,温度制御,ガス流量制御のゼロ点調整不良などが発生し得る。このため,立ち上げ状態ST3にある基板処理装置100からはより多くのデータを取得することが好ましい。
【0131】
この点,本実施形態によれば,基板処理装置100が立ち上げ状態ST3のときは,アイドリング状態ST1にあるときよりも計測信号を短い周期でサンプリングする。これによって,立ち上げ時におけるサンプリングデータの量を増やすことがでる。したがって,基板処理装置100の異常解析を高精度に行うことができ,短時間で基板処理装置100を立ち上げることができる。なお,本実施形態では,立ち上げ状態ST3のときのサンプリング周期TCを基板処理実行状態ST2である場合のサンプリング周期TBと同じに設定しているが,サンプリング周期TCをサンプリング周期TBよりも短くしてもよい。この場合,さらにデータ量を増やすことができるため,データ解析の精度をさらに向上させることができる。
【0132】
(第3実施形態)
次に,本発明の第3実施形態にかかるデータ収集処理について図面を参照しながら説明する。第3実施形態では,基板処理装置100に異常が発生している状態のときのデータは,データ解析のために必要性が高いことに着目し,装置状態が異常状態か否かについても考慮する。この場合,装置状態が異常状態か否かは,データ解析の結果に基づいて判断することができるので,第3実施形態ではデータ解析の結果に応じてサンプリング周期を変更する場合を含めたデータ収集処理について説明する。なお,第3実施形態にかかる基板処理装置100及びデータ処理装置600の構成は,図1〜図4に示すものと同様であるため,その詳細な説明を省略する。
【0133】
データ処理装置600のデータ解析手段612は,データ記憶手段640に記憶されているサンプリングデータを解析することによって,例えば基板処理装置100の異常検出,状態予測,基板処理装置100の部品の消耗予測,ウエハWの処理結果予測を行うことができる。
【0134】
データ解析手段612によるデータ解析結果が例えば所定の閾値を超えたとき,サンプリング制御手段614はサンプリング周期記憶手段650にアクセスして,データ解析結果に対応するサンプリング周期を読み出して,各MC340A,340B,340C,…に対して,それまでのサンプリング周期を読み出したサンプリング周期に変更するように制御信号を送信する。なお,本実施形態では,データ解析結果の具体例として,基板処理装置100の異常検出結果を用いる。ただし,その他のデータ解析結果についても同様に本実施形態に適用することができる。
【0135】
(サンプリング周期)
ここで,第3実施形態におけるサンプリング周期について図面を参照しながら説明する。第3実施形態におけるサンプリング周期記憶手段650には,上述した第1,2実施形態と同様に,基板処理装置100の状態それぞれに対して設定されたデータサンプリング周期が記憶される。さらに,異常検出を行うアイドリング状態ST1と基板処理実行状態ST2については異常発生の前後に分けて設定されたデータサンプリング周期が記憶される。
【0136】
図13は,サンプリング周期記憶手段650に記憶されるサンプリング周期と装置状態との関係を示すデータテーブルである。図13に示すように,異常が発生する前のアイドリング状態ST1にはサンプリング周期TA1(例えば1s)が設定され,異常が発生した後のアイドリング状態ST1にはサンプリング周期TA2(例えば10ms)が設定される。また,異常が発生する前の基板処理実行状態ST2にはサンプリング周期TB1(例えば100ms)が設定され,異常が発生した後の基板処理実行状態ST2にはサンプリング周期TB2(例えば10ms)が設定される。そして,立ち上げ状態ST3にはサンプリング周期TC(例えば100ms)が設定される。
【0137】
(データ収集処理の具体例)
次に,本実施形態にかかるデータ収集処理の具体例について図面を参照しながら説明する。図14は,本実施形態にかかるデータ収集処理の具体例を示すフローチャートである。データ収集処理は,データ処理装置600の演算手段610により所定のプログラムに基づいて実行される。この場合,先ずサンプリング制御手段614によって,基板処理装置100の状態に応じてサンプリング周期を変更する制御が行われる(ステップS110,S112,S114,S116,S118,S120,S122,S130,S132)。
【0138】
具体的にはステップS110にて基板処理装置100の装置状態が基板処理実行状態か否かを判断する。ステップS110にて装置状態が基板処理実行状態でないと判断した場合は,ステップS112にて基板処理装置100の装置状態が立ち上げ状態か否かを判断する。ステップS112にて装置状態が立ち上げ状態であると判断した場合は,ステップS114にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,立ち上げ状態ST3に対応するサンプリング周期TCを読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測された信号をサンプリング周期TCでサンプリングするように制御信号を送信する。
【0139】
また,ステップS112にて装置状態が立ち上げ状態ではないと判断した場合は,アイドリング状態であると判断し,ステップS116にて装置状態が異常状態か否かを判断する。この場合,装置状態が異常状態か否かは,例えばデータ解析手段612によるデータ解析の異常判定の結果に基づいて判断する。データ解析手段612はデータ記憶手段に記憶されたデータに対してPCAによるデータ解析を行い,残差二乗和,主成分得点,主成分得点二乗和などの指標を算出し,その指標が所定の閾値を超えるか否かを監視している。そして,データ解析の結果である指標が所定の閾値を超えていなければ装置状態は異常状態でない(正常状態)と判定し,所定の閾値を超えていれば装置状態は異常状態であると判定する。サンプリング制御手段614は,このようなデータ解析手段612による判定結果に基づいて装置状態が異常状態か否かを判断する。
【0140】
そして,ステップS116にて装置状態が異常状態でないと判断した場合には,ステップS120にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,アイドリング状態ST1に対応するサンプリング周期TA1を読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測されたデータをサンプリング周期TAでサンプリングするように制御信号を送信する。
【0141】
これに対して,ステップS116にて装置状態が異常状態であると判断した場合には,ステップS122にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,異常発生後のアイドリング状態ST1に対応するサンプリング周期TA2を読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測されたデータをサンプリング周期TA2でサンプリングするように制御信号を送信する。この場合,サンプリング周期TA1からサンプリング周期TA2に変更され,サンプリングデータ量が増加する。
【0142】
また,上記ステップS110にて装置状態が基板処理実行状態であると判断した場合には,ステップS118にて装置状態が異常状態であるか否かを判断する。ステップS118にて装置状態が異常状態でないと判断した場合には,ステップS130にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,基板処理実行状態ST2に対応するサンプリング周期TB1を読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測されたデータをサンプリング周期TB1でサンプリングするように制御信号を送信する。
【0143】
これに対して,ステップS118にて装置状態が異常発生であると判断した場合には,ステップS132にてサンプリング周期記憶手段650へアクセスし,異常発生後の基板処理実行状態ST2に対応するサンプリング周期TB2を読み出す。そして,サンプリング制御手段614は,各MC340A,340B,340C,…に対して,各計測器350A,350B,350C,…によって計測されたデータをサンプリング周期TB2でサンプリングするように制御信号を送信する。この場合,サンプリング周期TB1からサンプリング周期TB2に変更され,サンプリングデータの量が増加する。
【0144】
図15は,基板処理実行状態ST2のときに基板処理装置100に異常が発生したときの各MC340A,340B,340C,…によるサンプリング周期の変化を示す波形図である。なお,アイドリング状態ST1のときに基板処理装置100に異常が発生したときも図15と同様にサンプリング周期が変更される。ここではその図示を省略する。同図に示すように,サンプリング制御手段614によって制御される各MC340A,340B,340C,…は,基板処理実行状態ST2のときに基板処理装置100に異常が発生していない間はサンプリング周期TB1(例えば100ms)で計測データをサンプリングし,基板処理装置100に異常が発生した時点からそれまでよりも短いサンプリング周期TB2(例えば10ms)で計測データをサンプリングする。このとき,サンプリングデータの量は単位時間あたり10倍に増加する。
【0145】
こうして基板処理装置100において各MC340A,340B,340C,…によってサンプリングされたデータは,通信手段360によりネットワーク400を介してデータ処理装置600の通信手段660に送信される。そして,データ処理装置600では,ステップS140にて通信手段360で受信したサンプリングデータをデータ記憶手段640に逐次格納する。
【0146】
次に,ステップS150にてデータ収集処理を終了するか否かを判断する。ステップS150にてデータ収集を終了しないと判断した場合は上記のステップS110の処理に戻り,データ収集を終了すると判断した場合は一連のデータ収集処理を終了する。
【0147】
なお,第3実施形態では,データ記憶手段640に記憶されたデータを解析し,その解析結果に基づいて基板処理装置100の状態が異常状態であるか否かを判断し,サンプリング周期を変更する場合について説明したが,データ記憶手段640に記憶されたデータを解析し,その解析結果に基づいて基板処理装置100の状態を予測し,その予測結果に基づいてサンプリング周期を変更するようにしてもよい。
【0148】
具体的には例えばデータ解析手段612が,データ記憶手段640に記憶されたデータを上述したPLS法などによって解析し,その解析結果に基づいて処理室内に設けられた部品(例えば上部電極やフォーカスリングなど)の消耗度を予測する。そして,装置状態が部品消耗状態にあるか否かを,予測した消耗度が予め設定された閾値を超えたか否かを判断し,閾値を超えた場合には,閾値を超えない場合よりもサンプリング周期を短くしてデータ量を増やすようにしてもよい。
【0149】
この場合,例えば図14のステップS116において,装置状態が異常発生状態か否かのみならず,装置状態が部品消耗状態か否かについても判断する。そして,装置状態が部品消耗状態である場合,すなわち予測した消耗度が予め設定された閾値を超えない場合にはステップS120にてサンプリング周期をTA1とし,閾値を超えた場合には,ステップS122にてサンプリング周期をTA2とする。そして,図14のステップS118においてもステップS116の場合と同様に装置状態が部品消耗状態か否かについても判断する。これにより,基板処理装置100の装置状態が異常状態のみならず,部品消耗状態にあるときにも,データ量を増やすことができる。
【0150】
上述したように,データ解析手段612によるデータ解析結果が所定の閾値を超えたときには,基板処理装置100からはより多くのデータを取得して,解析結果の精度をより向上させることが好ましい。例えばデータ解析が基板処理装置100の異常検出,状態予測,ウエハの処理結果予測に関する場合,データ解析の結果の精度が高ければ,基板処理装置100の状態をより正確に判定することができ,状態予測も正確に行うことができる。また,データ解析が基板処理装置100の部品の消耗予測に関する場合,データ解析の結果の精度が高ければ,部品の交換時期を正確に判断することができる。また,データ解析がウエハWの処理結果予測に関する場合,データ解析の結果の精度が高ければ,正確な処理結果の予測が行えるため,基板処理装置100の運転を適切に監視できるようになり,結果としてウエハWの製造歩留まりを向上させることができる。
【0151】
この点,本実施形態によれば,データ解析結果に応じてサンプリング周期が変更される。具体的にはデータ解析結果が所定の閾値を超えたときにはサンプリング周期を短くしてより多くのサンプリングデータを取得するようにする。これによって,データ解析結果が所定の閾値を超えた後のデータ解析の精度をより一層高めることができる。この結果,基板処理装置100の状態予測,部品の消耗予測,ウエハWの処理結果予測の精度を向上させることができる。
【0152】
なお,本実施形態ではデータ解析結果に対して一つの閾値を設定して,その閾値を超えたか否かに応じてサンプリング周期を変更しているところ,複数の閾値を設定して,データ解析結果が閾値を超えるごとにサンプリング周期を変更するようにしてもよい。これによれば,例えば基板処理装置100の異常度が高まるとサンプリング周期を短くして,より詳細な異常原因の究明を行うことができる。
【0153】
(第4実施形態)
次に,本発明の第4実施形態にかかるデータ収集処理について図面を参照しながら説明する。第4実施形態では,例えば図1に示す基板処理装置100の各処理室200A〜200Dから得られる計測信号をサンプリングする際の周期を処理室200A〜200Dごとに設定する場合について説明する。
【0154】
図15は,サンプリング周期記憶手段650に記憶されるサンプリング周期と装置状態との関係を示すデータテーブルである。図15に示すデータテーブルには,サンプリング周期と装置状態との関係が各処理室200A〜200Dごとに記憶される。
【0155】
例えば処理室200Aについては,異常が発生する前のアイドリング状態ST1にはサンプリング周期TAA1(例えば1s)が設定され,異常が発生した後のアイドリング状態ST1にはサンプリング周期TAA2(例えば10ms)が設定される。また,異常が発生する前の基板処理実行状態ST2にはサンプリング周期TAB1(例えば100ms)が設定され,異常が発生した後の基板処理実行状態ST2にはサンプリング周期TAB2(例えば10ms)が設定される。そして,立ち上げ状態ST3にはサンプリング周期TAC(例えば100ms)が設定される。
【0156】
処理室200Bについても,処理室200Aの場合と同様に,サンプリング周期TBA1,TBA2,TBB1,TBB2,TBCが設定される。これと同様に,処理室200Cについては,サンプリング周期TCA1,TCA2,TCB1,TCB2,TCCが設定され,処理室200Dについては,順にサンプリング周期TDA1,TDA2,TDB1,TDB2,TDCが設定される。
【0157】
ところで,基板処理装置100において,すべての処理室200A〜200Dで同じプロセス処理が行われる場合もあるが,処理室ごとに異なるプロセス処理が実行される場合もある。例えば処理室200A,200BではウエハWに対するエッチング処理が行われ,処理室200C,200Dでは成膜処理が行われることもある。この場合,すべての処理室から得られる計測信号を同じ周期でサンプリングすると,精度の高いデータ解析結果を得るために必要なデータ量に対して,サンプリングデータの量に過不足が生じるおそれがある。また,ある処理室においてサンプリングデータの量が多すぎるとデータ記憶手段640の記憶容量が不足してしまうとともに,短時間のデータ解析が難しくなる。逆に,ある処理室について,サンプリングデータの量が少なすぎると,その処理室に関して正確なデータ解析結果が得られなくなる。
【0158】
本実施形態によれば,処理室ごとにサンプリング周期を設定することができるため,処理室で行われるプロセス処理に応じて,データ解析のために必要最小限のデータを取得することができる。したがって,データ記憶手段640の記憶容量の消費を抑えつつ,より精度の高い解析結果を効率よく得ることができる。
【0159】
上記第4実施形態では,処理室200A〜200Dごとにサンプリング周期を設定する場合を説明したが,処理室以外のモジュール,具体的には搬送室130,オリエンタ136,共通搬送室150,及びロードロック室160M,160Nごとにサンプリング周期を設定するようにしてもよい。
【0160】
なお,上記ネットワーク400には,上記基板処理装置100のみを接続してもよく,また他の基板処理装置として上記と同様の種類の基板処理装置を複数接続してもよい。また,熱処理装置,スパッタリング装置など他の種類の基板処理装置を接続するようにしてもよい。
【0161】
また,データ処理装置600は,例えばアドバンスド・グループ・コントローラ(以下,「AGC」と称する)として構成し,AGCによって各基板処理装置についてのデータ収集処理を行うようにしてもよい。なお,AGCは,上述したデータ収集処理の他,各基板処理装置100のレシピ(プロセス条件値)の集中管理等を行うようにしてもよい。AGCは,1台のコンピュータで構成してもよく,複数台のコンピュータで構成してもよい。また,サーバとクライアントに分けて機能を分散させるように構成してもよい。
【0162】
なお,この場合,基板処理装置100の通信手段360は,例えばAGCとの論理的なインターフェイス手段であるRAP(Remote Agent Process)として構成し,RAPによってAGCとの間での各種データのやりとりをネットワーク400を介して行うようにしてもよい。
【0163】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0164】
例えば上記第1〜第4実施形態では,計測信号の種類(例えば,パラメータ信号,光学的信号,電気的信号)ごとにサンプリング周期を変えるようにしてもよい。これによれば,より一層緻密なサンプリング制御が実現し,データ記憶手段640の記憶容量の消費をさらに抑えることができる。
【0165】
また,上記第1〜第4実施形態では,サンプリング周期記憶手段650にサンプリング周期をテーブル形式で予め記憶する場合に即して説明したが,データ記憶手段640の全記憶容量又は空き容量に応じて,データ記憶手段640が記憶しているサンプリング周期をダイナミックに更新するようにしてもよい。
【0166】
また,上記第1〜第4実施形態では,サンプリング制御手段614をデータ処理装置600に設けた場合について説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,サンプリング制御手段614を,例えば基板処理装置100の制御部300に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は,データ収集方法,基板処理装置,基板処理システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】同実施形態にかかる処理室とその周辺装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1の基板処理装置に備えられた制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態にかかるデータ処理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】同実施形態にかかる基板処理装置の状態遷移図である。
【図6】図4のデータ処理装置のサンプリング周期記憶手段が記憶するデータテーブルの内容を示す図である。
【図7】同実施形態にかかるデータ収集処理の例を示すフローチャートである。
【図8】図1の基板処理装置の状態とサンプリング周期との関係を示す波形図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる基板処理装置の状態遷移図である。
【図10】同実施形態にかかるデータ処理装置のサンプリング周期記憶手段が記憶するデータテーブルの内容を示す図である。
【図11】同実施形態にかかるデータ収集処理の例を示すフローチャートである。
【図12】同実施形態にかかる基板処理装置の状態とサンプリング周期との関係を示す波形図である。
【図13】本発明の第3実施形態にかかるデータ処理装置のサンプリング周期記憶手段が記憶するデータテーブルの内容を示す図である。
【図14】同実施形態にかかるデータ収集処理の例を示すフローチャートである。
【図15】同実施形態にかかる基板処理装置の状態とサンプリング周期との関係を示す波形図である。
【図16】本発明の第4実施形態にかかるデータ処理装置のサンプリング周期記憶手段が記憶するデータテーブルの内容を示す図である。
【符号の説明】
【0169】
100 基板処理装置
110 処理ユニット
120 搬送ユニット
130 搬送室
132(132A〜132C) カセット容器
134(134A〜134C) カセット台
136 オリエンタ
150 共通搬送室
160(160M,160N) ロードロック室
170 搬送ユニット側搬送機構
180 処理ユニット側搬送機構
200(200A〜200D) 処理室
201 処理容器
202 下部電極
204 上部電極
204A ガス導入部
204D 整合器
204E 高周波電源
206 ゲートバルブ
207 高周波電源
207a 電圧計
207A 整合器
207B 電力計
207C 電気計測器
208 静電チャック
209 直流電源
209a 電力計
214 冷媒配管
215B 圧力計
218 プロセスガス供給系
219 排気系
220 光学計測器
300 制御部
310 装置制御部
340A,340B,340C モジュール制御部
342 パラメータ信号サンプリング手段
344 光学的信号サンプリング手段
346 電気的信号サンプリング手段
350A,350B,350C 計測器
352 パラメータ信号計測器
354 光学的信号計測器
356 電気的信号計測器
360 通信手段
370 スイッチングハブ
400 ネットワーク
500 ホストコンピュータ
600 データ処理装置
610 演算手段
612 解析手段
614 サンプリング制御手段
620 プログラム記憶手段
630 モデル記憶手段
640 データ記憶手段
650 サンプリング周期記憶手段
660 通信手段
ST0 停止状態
ST1 アイドリング状態
ST2 基板処理実行状態
ST3 立ち上げ状態
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備え,少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器からデータを収集する基板処理装置のデータ収集方法であって,
所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得してデータ記憶手段に記憶する工程を有し,
前記基板処理装置の状態に応じて前記サンプリング周期を変更することを特徴とするデータ収集方法。
【請求項2】
前記基板処理装置の状態が基板処理実行状態であるか否かを判断し,
前記基板処理装置の状態が基板処理実行状態でない場合には,基板処理実行状態である場合よりも前記サンプリング周期を長くすることを特徴とする請求項1に記載のデータ収集方法。
【請求項3】
前記基板処理装置の状態が基板処理実行状態でない場合であっても,装置立ち上げ状態の場合には,少なくとも基板処理実行状態である場合の前記サンプリング周期と同じか,又はそれよりも短くすることを特徴とする請求項2に記載のデータ収集方法。
【請求項4】
被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備え,少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器からデータを収集する基板処理装置のデータ収集方法であって,
所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得してデータ記憶手段に記憶する工程を有し,
前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記基板処理装置の状態が異常状態であるか否かを判断し,前記基板処理装置の状態が異常状態である場合には,異常状態でない場合よりも前記サンプリング周期を短くすることを特徴とするデータ収集方法。
【請求項5】
被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備え,少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器からデータを収集する基板処理装置のデータ収集方法であって,
所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得してデータ記憶手段に記憶する工程を有し,
前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記基板処理装置の状態を予測し,前記予測結果に基づいて前記サンプリング周期を変更することを特徴とするデータ収集方法。
【請求項6】
前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記処理室内に設けられた部品の消耗度を予測し,前記予測した消耗度が予め設定された閾値を超えたか否かを判断し,前記閾値を超えた場合には,前記閾値を超えない場合よりも前記サンプリング周期を短くすることを特徴とする請求項5に記載のデータ収集方法。
【請求項7】
被処理基板を処理する処理室を複数備え,少なくとも前記各処理室に設けられた複数の計測器からデータを収集する基板処理装置のデータ収集方法であって,
前記処理室ごとに,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得してデータ記憶手段に記憶する工程を有し,
前記データ記憶手段に記憶された前記計測データを解析し,その解析結果に基づいて前記処理室ごとにサンプリング周期を変更することを特徴とするデータ収集方法。
【請求項8】
被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備える基板処理装置であって,
少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器と,
所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得するサンプリング手段と,
前記計測データを記憶するデータ記憶手段と,
前記基板処理装置の異なる状態ごとにサンプリング周期を予め記憶するサンプリング周期記憶手段と,
前記サンプリング周期を,前記基板処理装置の状態に基づいて前記サンプリング周期記憶手段から取得した前記サンプリング周期に変更する制御を行うサンプリング制御手段と,
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
被処理基板に所定の処理を施すための処理室を備える基板処理装置であって,
少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器と,
所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得するサンプリング手段と,
前記計測データを記憶するデータ記憶手段と,
前記データ記憶手段に記憶された計測データを解析するデータ解析手段と,
前記データ解析手段による解析結果に応じて前記サンプリング周期を変更する制御を行うサンプリング制御手段と,
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
被処理基板に所定の処理を施すための処理室及び少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器を備える基板処理装置と,前記複数の計測器からのデータを処理するデータ処理装置とをネットワークで接続した基板処理システムであって,
前記基板処理装置は,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得するサンプリング手段と,取得した計測データを前記ネットワークを介して前記データ処理装置に送信する通信手段とを備え,
データ処理装置は,前記基板処理装置からの計測データを受信する通信手段と,受信した計測データを記憶するデータ記憶手段と,前記データ記憶手段に記憶された計測データの解析を行うデータ解析手段と,前記データ解析手段による解析結果に応じて前記サンプリング周期を変更する制御を行うサンプリング制御手段とを備えることを特徴とする基板処理システム。
【請求項11】
被処理基板に所定の処理を施すための処理室及び少なくとも前記処理室に設けられた複数の計測器を備える基板処理装置と,前記複数の計測器からのデータを処理するデータ処理装置と,ホストコンピュータとをネットワークで接続した基板処理システムであって,
前記基板処理装置は,所定のサンプリング周期で前記計測器から計測データを取得するサンプリング手段と,取得した計測データを前記ネットワークを介して前記データ処理装置に送信する通信手段とを備え,
データ処理装置は,前記ホストコンピュータからの信号及び前記基板処理装置からの計測データを受信する通信手段と,受信した計測データを記憶するデータ記憶手段と,前記ホストコンピュータから信号に基づいて前記基板処理装置の状態を判断し,その状態に応じて前記サンプリング周期を変更する制御を行うサンプリング制御手段とを備えることを特徴とする基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−42005(P2008−42005A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215730(P2006−215730)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】