説明

トラクタ

【課題】ラジエータ周囲の熱風遮断性を実現するためのシール部材の耐久性を向上させたトラクタを提供する。
【解決手段】トラクタは、支持ブラケットと、第1突出部60aと、ボンネット20と、第2突出部62aと、弾性シール部材73と、を備えている。支持ブラケットは、ラジエータを支持するためにラジエータの左右に取り付けられる。第1突出部60aは、支持ブラケットから機体左右方向に突出する。ボンネット20は、少なくともラジエータの左右の一部を覆うことが可能である。前記第2突出部62aは、ボンネット20の内側に突出し、当該ボンネット20を閉鎖した際に、第1突出部60aに機体前後方向で対面するようにボンネット20に設けられる。第2突出部62aに弾性シール部材73が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関する。詳細には、トラクタが備えるボンネット内部の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンを備えた車両は、当該エンジン及び付属部品を覆うためのボンネットを備える。特に農業用トラクタ(以下、単にトラクタと呼ぶことがある)においては、エンジンの上部及び左右側面を大きく覆うタイプのボンネットが広く採用されている。このボンネットは、支軸を中心にして上方に回動させて、メンテナンス等の際にエンジンその他の構成を露出させることができるように構成されている。
【0003】
一般的な農業用トラクタにおいて、ボンネットの内部であってエンジンの前方には、ラジエータが配置される。このラジエータは、車体前方に形成されたフロントグリルを介してボンネット内に導入された冷風(外気)をラジエータコアに当てることにより、当該ラジエータコア内を流通しているエンジン冷却液を冷却するためのものである。更に、ラジエータとエンジンの間には、ラジエータコアに強制的に通風するための冷却ファンが配置されている。この冷却ファンは、前方から後方に向かって送風するように構成されており、ラジエータコアに対して前方のフロントグリルからの冷風を効率よく導く。また、冷却ファンのファンシュラウドが、後方のエンジンからの熱気がラジエータコアに流れて行くことを防止している。
【0004】
ところで、以上のような構成では冷却ファンによってボンネット内に風が巻き起こされるため、ラジエータの周囲に隙間があると、エンジンの熱気とラジエータを通過した熱風とがラジエータ前方に吹き戻してしまい、ラジエータの冷却効率が低下してしまう。従って、ラジエータとボンネットとの間の空間を完全に密閉することが好ましいが、ボンネットを開閉可能とする関係上、ラジエータとボンネットとの間を(例えば溶接や溶着によって)固定的に接続して密閉する構成は採ることができない。
【0005】
この点、特許文献1は、冷却ファンの周囲を覆うファンシュラウドの縁部にシール部材を、ボンネットの内面に弾性当接材を設け、ボンネット閉鎖時にはシール部材と弾性当接部材とが当接するように構成することで、ファンシュラウド周囲を密閉してラジエータの前方に熱気が吹き戻さないように構成したトラクタを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2756344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のように農業用トラクタのボンネットは上部及び左右側面を覆うタイプであるので、ボンネットを開閉のために回動させると、ファンシュラウドの車体側方側に配置されたシール部材がボンエット側の弾性当接部材と擦れ、当該シール部材及び弾性当接部材の破損、剥がれの原因となってしまっていた。
【0008】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ラジエータ周囲の熱風遮断性を実現するためのシール部材の耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成のラジエータを備えたトラクタが提供される。即ち、このトラクタは、支持部材と、第1突出部と、ボンネットと、第2突出部と、弾性シール部材と、を備える。前記支持部材は、前記ラジエータを支持するために当該ラジエータの左右に取り付けられる。前記第1突出部は、前記支持部材から機体左右方向に突出する。前記ボンネットは、少なくとも前記ラジエータの左右の一部を覆うことが可能である。前記第2突出部は、前記ボンネットの内側に突出し、当該ボンネットを閉鎖した際に前記第1突出部に機体前後方向で対面するように前記ボンネットに設けられる。前記弾性シール部材は、前記第1突出部又は前記第2突出部の何れか一方に設けられる。
【0011】
これにより、弾性シール部材がボンネット開閉時に擦れて破損や剥がれが発生することを防止し、弾性シール部材によるボンネットとラジエータとの間の熱風遮断性を長期にわたって維持することができる。この結果、エンジンの熱風がラジエータの前方に吹き戻すことを防止し、ラジエータの冷却機能を安定して発揮させることができる。
【0012】
本発明の別の観点によれば、以下の構成のラジエータを備えたトラクタが提供される。即ち、このトラクタは、支持部材と、第1突出部と、ボンネットと、第2突出部と、第1弾性シール部材と、第2弾性シール部材と、を備える。前記支持部材は、前記ラジエータを支持するために当該ラジエータの左右に取り付けられる。前記第1突出部は、前記支持部材から機体左右方向に突出する。前記ボンネットは、少なくとも前記ラジエータの左右の一部を覆うことが可能である。前記第2突出部は、前記ボンネットを閉鎖した際に前記第1突出部の機体正面側又は機体背面側に対面するように当該ボンネットの内側に突出し、当該ボンネット側に設けられる。前記第1弾性シール部材は、前記第1突出部の機体正面側又は機体背面側に設けられる。前記第2シール部材は、前記第2突出部の機体正面側又は機体背面側であって前記第1突出部に対面する側の面に設けられる。
【0013】
これにより、弾性シール部材がボンネット開閉時に擦れて破損や剥がれが発生することを防止し、弾性シール部材によるボンネットとラジエータとの間の熱風遮断性を長期にわたって維持することができる。この結果、エンジンの熱風がラジエータの前方に吹き戻すことを防止し、ラジエータの冷却機能を安定して発揮することができる。また、ボンネット側とラジエータ側がそれぞれ弾性当接部材を備えるので、弾性当接部材を片方のみに備える構成と比べて、更なる熱風遮断性を確保することができる。
【0014】
前記のトラクタにおいては、前記ボンネットには、前照灯と、前記前照灯に接続された電線と、が配置され、前記第2突出部は前記電線を支持していることが好ましい。
【0015】
これにより、前照灯のワイヤハーネスを支持するための特別な支持部材が不要となるため、部品点数を削減してコストを抑えることができる。
【0016】
また、前記のトラクタにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このトラクタは、前記支持部材を固定するとともに、前記ボンネットの閉鎖時において当該ボンネットの下側の少なくとも一部を塞ぐ取付プレートを備える。前記取付プレートの輪郭形状の一部は、前記ボンネットの下方端部の形状に沿うように形成される。前記取付プレートにおいて、その輪郭形状が前記ボンネットの下方端部の形状に沿っている部分には、当該取付プレートの端部に沿って第1シール部材が配置される。前記取付プレートにおいて、その輪郭形状が前記ボンネットの下方端部の形状から外側に突出している部分には、当該取付プレートの前記ボンネット側を向く面に、当該ボンネットの下方端部の形状に沿うように第2シール部材が配置される。
【0017】
これにより、ボンネットの下部を取付プレートによって隙間無く覆うことができるので、ボンネット内に異物が侵入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示した左側面図。
【図2】ボンネットを取り外した様子を示した外観斜視図。
【図3】ボンネットの閉鎖時の様子を示した外観斜視図。
【図4】取付プレートの形状を示した平面図。
【図5】ボンネットの平面断面図。
【図6】ボンネットの側面断面図。
【図7】ボンネット内部の様子を示す平面一部断面図。
【図8】図7の一部拡大図。
【図9】ボンネット開閉時の様子を示す模式的な側面図。
【図10】本発明の第2実施形態に係るトラクタのボンネット内の様子を拡大して示す平面一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るトラクタ(農業用トラクタ)10の左側面図である。
【0020】
図1に示す農作業用の作業車両(作業機)としてのトラクタ10は、プラウ、ハロー、ローダ等の各種装置を必要に応じて装着し、様々な種類の作業を行うことが可能に構成されている。このトラクタ10の前後には前車輪14及び後車輪15が配置されている。
【0021】
トラクタ10の前部には、FRP(繊維強化プラスチック)によって形成され、ヘッドライト17(前照灯)及びサイドライト18を備えたボンネット20が配置されている。このボンネット20は、車体に対して支軸34を介して回転可能に取り付けられており、開閉可能に構成されている。従って、ボンネット20を図中の鎖線で示すように上方に向かって回動させることで、内部を露出させることができる。
【0022】
このボンネット20内にはエンジン19が収容されている。このエンジン19は、トラクタ10が備える機体フレーム11に、直接、又は防振部材等を介して支持されている。ボンネット20の後方にはオペレータが搭乗するためのキャビン16が配置されており、このキャビン16の内部には各種の操作を行うための図略の操作部及び座席部が備えられている。トラクタ10のオペレータは、前記操作部を介して、トラクタ10の走行操作等を行うことができる。
【0023】
エンジン19は、前後方向に延びるクランク軸を有しており、このクランク軸の回転動力を各部に伝達可能に構成されている。このクランク軸はエンジン19のシリンダブロックから前方に突出し、その端部には、冷却ファン28を回転駆動するための図略のプーリ及びベルト等が配置されている。また、クランク軸の後端にはフライホイール(図1において図略)が固定されており、このフライホイールの回転がクラッチ及びシャフト等を介して図略のミッションケースに内蔵されたギア等の動力伝達機構に伝達されて適宜変速された後、前車輪14及び後車輪15等に伝達される。
【0024】
次に、図2及び図3を参照して、ボンネット20及びボンネット20の内部の構成について説明する。図2はボンネット内部の様子を示した外観斜視図、図3はボンネット20を閉鎖した状態を示す外観斜視図である。なお、図2においては、ボンネット内部の様子をより良く図示するため、ボンネットを取り外した状態が描かれている。
【0025】
図2に示すように、ボンネット20の内部には、当該ボンネット20を回転可能に支持する支軸34が配置されている。また、ボンネット20内のエンジン19の前面側には、ラジエータ22と、オイルクーラ25と、サブタンク26と、コンデンサ23と、バッテリ27と、エアクリーナ29と、が配置されている。これらの装置は、ほぼ水平な向きで前記機体フレーム11に固定された板状の取付プレート21の上面側に配置されている。なお、各装置の詳細な構成については後述する。
【0026】
図3に示すように、ボンネット20の正面側にはフロントグリル45が形成されている。これによってボンネット20内部に外気を導入して、前記コンデンサ23、オイルクーラ25及びラジエータ22などを冷却するとともに、エアクリーナ29を介してエンジン19に新鮮な外気を供給することができる。また、ボンネット20には排気口46が形成されており、当該ボンネット20内の熱気を外部に排出することができる。
【0027】
ラジエータ22は、エンジン19のウォータジャケット内の冷却水を循環し、冷却するための循環経路を有している。ラジエータ22の循環経路中には、冷却コア、アッパタンク及びロアタンク等が配置されている。前記冷却コアは、チューブ及びフィン等から構成されており、アッパタンクとロアタンクとによって上下方向で挟み込まれる形となっている。アッパタンク及びロアタンクは、冷却コアのチューブによって接続されるとともに、それぞれが配管等を介してエンジン19のウォータジャケットに接続されている。また、ラジエータ22の近傍には、当該ラジエータ22のオーバーフロー分の冷却水を貯留するためのサブタンク26が配置されている。エンジン19側から送られてきた冷却水は、この循環経路を通過することで冷却され、再びエンジン19側に戻される。
【0028】
エアクリーナ29は、空気中の異物を除去するためのエアクリーナエレメントを内部に収容した構成となっている。このエアクリーナ29はホースによってエンジン19に接続されており、エンジン19の吸気構造の一部を構成している。
【0029】
コンデンサ(復水器)23は、キャビン16内を冷房することが可能な空調装置の一部を構成している。この空調装置は、前記コンデンサ23と、コンプレッサと、膨張弁と、エバポレータと、を主要な構成として備えている。
【0030】
コンデンサ23は、高圧の液状冷媒を通過させるチューブと、該チューブの周囲にコルゲート式又はプレート式等で構成されるフィンと、を主要な構成として備えた熱交換器である。前記チューブは、多数平行に配置した複数のフィンの間を左右方向又は上下方向に蛇行するように配置されている。
【0031】
前記コンプレッサは図略の配管を介してコンデンサ23に接続される。コンデンサ23は前記膨張弁に接続されるとともに、その接続経路の中途にはレシーバドライヤが配置されている。また、膨張弁とエバポレータはキャビン16内部の天井部分に取り付けられている。
【0032】
この構成で、前記コンプレッサがエンジン19の駆動力によって駆動されることで、冷媒となるガスが圧縮されて、高温高圧の半液状の状態でコンデンサ23に送られる。圧縮されたガスが送られたコンデンサ23では冷媒が冷却され、液化が促進されてレシーバドライヤへ送られる。レシーバドライヤは、液化できなかった冷媒を分離するとともに、乾燥剤やストレーナ等によって水分や不純物を取り除く。この結果、液冷媒のみが配管を介して膨張弁へ送られる。膨張弁では冷媒が噴射されることにより減圧され、エバポレータでは、霧状の冷媒(液体)が気化する際に周囲の熱を奪う。この冷やされたエバポレータに室内ファンで送風を行うと、空気が冷却され、キャビン16内を冷房することができる。前記気化された冷媒は、エバポレータを出てコンプレッサに戻され、再び圧縮されて液化し、前記冷房サイクルが繰り返される。
【0033】
オイルクーラ25は、前記ミッションケース内の潤滑油(各種油圧機器の作動油としても用いられる)を冷却するためのものである。このオイルクーラ25の内部には配管が蛇行状に配置されており、この配管の内部をオイルが通過可能に構成されている。前記配管の内外には多数のフィンが配置されており、その放熱効果によってオイルを冷却することができる。
【0034】
次に、ラジエータ22の取付構造について説明する。ラジエータ22の左右両端部には、当該ラジエータ22を支持するための支持ブラケット(支持部材)60が取り付けられている。
【0035】
具体的には、この支持ブラケット60は金属製とされており、縦方向に細長い形状に構成されている。また、支持ブラケット60は、その幅方向一側の端部を直角に折り曲げ、他側の端部を前記一側の端部とは逆方向に直角に折り曲げることで、取付プレート21と平行な平面で切断した断面形状がクランク状となるように形成されている。そして、図2に示すように、この支持ブラケット60は前記折り曲げた両端部が機体左右方向に向き、かつ、当該支持ブラケット60の長手方向が取付プレート21に対してほぼ直交するようにして、当該取付プレート21上に固定されている。
【0036】
以上の構成で、支持ブラケット60から機体左右方向外側に向かって突出する第1突出部60aが形成されている。なお、図2においては機体左側に突出する第1突出部60aのみが図示してあるが、ラジエータ22の機体右側に配置された支持ブラケット60もクランク状に形成されて機体右側に突出する第1突出部を有している。
【0037】
支持ブラケット60の上部には、図2に示す熱気遮蔽板61が固定されている。この熱気遮蔽板61は板状の部材であり、左右の支持ブラケット60の上部を接続するようにして、それぞれの支持ブラケット60の第1突出部60aにネジ止めされている。そして、この熱気遮蔽板61に対して、ラジエータ22のアッパタンクが、例えばゴム等の防振部材を介してネジ止めされている。
【0038】
また、支持ブラケット60の下部には、図略のラジエータステーが固定されている。このラジエータステーは、取付プレート21と略平行になるように配置された板状の部材であり、左右の支持ブラケット60の下部を接続するようにして、それぞれの支持ブラケット60に固定されている。このラジエータステーには適宜形状の孔が形成されており、ラジエータ22のロアタンクの一部を嵌め込んで固定することができるように構成されている。なお、ラジエータ22のロアタンクと支持ブラケット60とは直接固定するのではなく、例えば防振部材を介して固定しても良い。
【0039】
以上のように、ラジエータ22のアッパタンク及びロアタンクがそれぞれ支持ブラケット60に対して固定されている。この構成で、ラジエータ22を取付プレート21に対してほぼ直立するように(即ち、車体進行方向に対してラジエータ22が対面するように)固定することができる。
【0040】
支持ブラケット60を固定するための取付プレート21の形状が、図4の平面図に示されている。図中の2点鎖線は、ラジエータ22、オイルクーラ25、コンデンサ23及びバッテリ27の取付位置を示す。前記支持ブラケット60は、この取付プレート21上に例えば溶接などの方法により固定される。
【0041】
この取付プレート21は、ラジエータ22等を固定する役割のほか、ボンネット20を閉鎖した際に当該ボンネット20の下側を塞いでボンネット20内に異物が侵入しないようにする役割を兼ねている。このため、取付プレート21の前部及び後部を除き、その輪郭形状はボンネット20の下側端部の形状と略一致するように形成されている。また、取付プレート21とボンネット20との間にはシール部材が配置されている。
【0042】
具体的には以下のとおりである。即ち、ボンネット20の閉鎖時においては、図3に示すように、当該ボンネット20の下側端部から取付プレート21が左右に突出したり、ボンネット20の下側端部と取付プレート21との間に隙間ができたりすることがないように構成されている。そして、取付プレート21の車体左右側の端面には、細長く形成された第1シール部材71が取り付けられている。
【0043】
前記第1シール部材71は、ある程度の弾性を備えた素材によって構成されており、具体的にはウェザーストリップとして構成されている。このウェザーストリップは、断面O字状の中空シール部と、断面U字状の取付基部と、が一体的に形成された公知の形状となっている。この第1シール部材71(ウェザーストリップ)は、前記取付基部のU字の内側に取付プレート21の端部を挟み込むことにより、当該取付プレート21の端部に取り付けることができる。このように、第1シール部材71によって取付プレート21の端部を挟み込むことで、図2に示すように、第1シール部材71を当該取付プレート21の左右側端部の形状に沿わせるように配置する。以上の構成で、図3のようにボンネット20を閉鎖した時に、ボンネット20の下側端部が第1シール部材71に当接する。これにより、ボンネット20の下側端部におけるシール性を良好に発揮することができる。
【0044】
なお、この取付プレート21の車体前方側には、前方に飛び出すように突出部21aが形成されている。そして、図3に示すように、ボンネット20の閉鎖時には、この突出部21aがボンネット20の下側端部から車体前方に突出する。このような構成においては、突出部21aの部分に沿わせるようにして第1シール部材71を配置しても、車体前方側のシール性を発揮することができない。そこで、本実施形態では、第1シール部材71を左右に分割して車体前方側を除いた部分に配置し、車体前方側の部分においては第1シール部材71の代わりに第2シール部材72を配置している。
【0045】
この第2シール部材72は、ある程度の弾性を備えた素材(例えばウレタン等)によって構成され、断面形状が略半円形状となるように形成されている。そして、この第2シール部材72を、ボンネット20の下側端部の形状と対応するようにして(左右の第1シール部材71を繋ぐようにして)、接着剤で取付プレート21の上面に貼り付ける(図2を参照)。
【0046】
このように、取付プレート21の輪郭形状とボンネット20の下側端部の形状とが一致している部分には、取付プレート21の端部を挟み込むようにして第1シール部材71を配置し、ボンネット20の下側端部から取付プレート21が外側に向かってハミ出す部分(突出部21a)においては、第2シール部材72を取付プレート21の上面に貼り付けて配置する。これにより、ボンネット20の閉鎖時に、当該ボンネット20と取付プレート21との間で良好なシール性を発揮することができるので、ボンネット20内部に雨水や埃などが侵入することを防止することができる。従って、ボンネット20内部の、ラジエータ22、オイルクーラ25、コンデンサ23及びエアクリーナ29等が汚れることを防止することができる。
【0047】
次に、エンジン19側の熱気がラジエータ22等の上側を通って前方に流入しないようにするための構成について説明する。
【0048】
図2に示すように、ラジエータ22の後方には熱気遮蔽板61が配置されている。この熱気遮蔽板61は、左右幅がラジエータ22の左右幅とほぼ一致するとともに、その上端部はラジエータ22の上側端部から上方に突出するよう構成されている。熱気遮蔽板61の上端部の輪郭は、ボンネット20の内側形状に対応するように形成されるとともに、当該上端部の縁に沿うようにしてシール部材70が配置されている。このシール部材70は、例えばウェザーストリップやウレタン等により構成されている。
【0049】
以上の構成で、ボンネット20の閉鎖時においては、シール部材70がボンネット20の内面に当接する。これにより、エンジン19側の熱気が、ラジエータ22の上側を通って当該ラジエータ22の前方に回り込むことを防ぐことができる。なお、前記熱気遮蔽板61には、ワイヤハーネスや各種パイプ等を挿通させるための挿通孔が形成されている。これにより、熱気を遮断しつつ、当該熱気遮蔽板61の前後をハーネスやパイプで接続することができる。なお、上記熱気遮蔽板61は、ボンネット20の閉鎖時において当該ボンネット20の左右の位置がズレないようにするための位置決め部材としての役割も兼ねている。なお、熱気遮蔽板61の上端部にシール部材70が配置される構成に代えて、あるいはこれに加えて、ボンネット20の内面であって熱気遮蔽板61の上端部に対応する位置に、例えばウレタン等のシール部材を設けても良い。
【0050】
次に、図5、図6及び図7を参照して、エンジン19側の熱気がラジエータ22の左右側方を通って当該ラジエータ22の前方に回り込むことを防ぐための構成について説明する。図5はボンネット20の平面断面図、図6はボンネット20の側面断面図、図7はボンネット20を閉鎖した状態を示す平面図である。なお図7において、ボンネット20内部の様子を示すため、ボンネット20は、その車体上側の一部を切断した状態の断面図として示してある。
【0051】
まず、ボンネット20側の構成について説明する。図5及び図6に示すように、ボンネット20の内側には、ヘッドライトステー17bと、サイドライトステー18bとが、ヘッドライト17とサイドライト18のそれぞれに対応する位置に固定されている。そして、ヘッドライト17の光源17aがヘッドライトステー17bに、サイドライト18の光源18aがサイドライトステー18bに、それぞれ取り付けられている。
【0052】
また、光源17a及び光源18aに電力を供給するための電線(ワイヤハーネス)75が、ボンネット20の内側に沿うように配設されている。この電線75は、ボンネットを開閉する際に車体側の各構成に接触しないよう、クランプ74によってボンネット20の内壁面に沿うように固定されている。なお、このクランプ74は、前記ヘッドライトステー17b及びサイドライトステー18bの適宜の位置に固定されている。
【0053】
ボンネット20の内壁面の左右側方側には、金属製のシール部材ブラケット62が固定されている。このシール部材ブラケット62は、例えば、ボンネット20内面の所定箇所のFRPの樹脂を溶かし、シール部材ブラケット62を押し当てて、その上に樹脂をかぶせて硬化させることで当該ボンネット20の内部に固定することができる。
【0054】
シール部材ブラケット62は、断面が略L字状の細長い部材として構成されており、ボンネット20を閉鎖した状態でほぼ垂直な向きとなるように配置されている。そして、このシール部材ブラケット62の一方の端部がボンネット20の内側に突出して第2突出部62aを形成している。この第2突出部62aの車体後方を向く側の面には、ある程度の弾性を備えた素材(例えばウレタン等)によって形成された弾性シール部材73が接着剤やテープにより貼り付けられている。
【0055】
図7に示すように、ボンネット20の閉鎖時において、第1突出部60aの車体前方を向く面と、第2突出部62aの車体後方を向く面と、が向き合うように、前記シール部材ブラケット62がボンネット20内に固定されている(一側の弾性シール部材73の近傍を拡大して示した図8を併せて参照)。そして、図7に示すように、ボンネット20の閉鎖時において弾性シール部材73は、第1突出部60aと第2突出部62aとに挟まれることによって車体前後方向に圧縮する力が掛かるように配置されている。
【0056】
第1突出部60aと第2突出部62aが以上のように構成されたことの効果について、図9を参照して説明する。図9(a)はボンネット20の開放時の様子を模式的に示した側面断面図、図9(b)はボンネット20の閉鎖時の様子を示した側面断面図である。
【0057】
図2等に示すようにボンネット20は支軸34を中心にして回動するので、ボンネット20の閉鎖時には、弾性シール部材73は支軸34を中心とした円の接線方向の力を第2突出部62aから受ける。これにより、図9(b)の状態で、弾性シール部材73には第1突出部60aと第2突出部62aとによって圧縮方向の力が加えられ、良好なシール性を発揮することができる。また、支軸34は、第1突出部60aよりも後方で、かつ、第1突出部60aの上端の高さよりも高い位置に配置されている。このように構成されていることで、ボンネット20開閉時に、当該ボンネット20に伴って回動する弾性シール部材73が第1突出部60aと接触することがない。従って、ボンネット20開閉の際にシール部材が擦れて剥がれたり破損したりすることがなく、長期にわたって良好なシール性を維持することができる。
【0058】
なお、図5から図8に示すように、シール部材ブラケット62には、電線75がクランプ76を介して取り付けられている。即ち、シール部材ブラケット62が電線75の支持部材を兼ねているので、部品点数を削減してコストを低減することができる。
【0059】
以上で説明したように、第1実施形態のトラクタ10は、支持ブラケット60と、第1突出部60aと、ボンネット20と、第2突出部62aと、弾性シール部材73と、を備えている。支持ブラケット60は、ラジエータ22を支持するために当該ラジエータ22の左右に取り付けられる。第1突出部60aは、支持ブラケット60から機体左右方向に突出する。ボンネット20は、閉鎖した状態で、ラジエータ22の上部及び左右側面を全体的に覆うように構成されている。前記第2突出部62aは、ボンネット20の内側に突出し、当該ボンネット20を閉鎖した際に、第1突出部60aに機体前後方向で対面するようにボンネット20に設けられる。第2突出部62aに弾性シール部材73が設けられる。
【0060】
これにより、弾性シール部材73がボンネット20の開閉時に擦れて破損や剥がれが発生することを防止し、弾性シール部材73によるボンネット20とラジエータ22との間の熱風遮断性を長期にわたって維持することができる。この結果、エンジン19の熱風がラジエータ22の前方に吹き戻すことを防止し、ラジエータ22の冷却機能を安定して発揮させることができる。
【0061】
また、本実施形態のトラクタ10において、ボンネット20には、ヘッドライト17及びサイドライト18と、前記ヘッドライト17及びサイドライト18の光源17a,18aに接続された電線75と、が配置される。第2突出部62aは前記電線75を支持している。
【0062】
これにより、ヘッドライト17及びサイドライト18の電線75を支持するための特別な支持部材が不要となるため、部品点数を削減してコストを抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態のトラクタ10においては、以下のように構成されている。即ち、このトラクタ10は、支持ブラケット60を固定するとともに、ボンネット20の閉鎖時において当該ボンネット20の下側の少なくとも一部を塞ぐ取付プレート21を備える。取付プレート21の輪郭形状の一部は、ボンネット20の下方端部の形状に沿うように形成される。取付プレート21において、その輪郭形状がボンネット20の下方端部の形状に沿っている部分には、当該取付プレート21の端部に沿って第1シール部材71が配置される。取付プレート21において、その輪郭形状がボンネット20の下方端部の形状から外側に突出している部分には、当該取付プレート21の前記ボンネット20側を向く面に、当該ボンネット20の下方端部の形状に沿うように第2シール部材72が配置される。
【0064】
これにより、ボンネット20の下部を取付プレート21によって隙間無く覆うことができるので、ボンネット内に異物が侵入することを防止することができる。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態のトラクタについて、図10を参照して説明する。図10は、この実施形態のボンネット20の閉鎖時における第1突出部60aと第2突出部62aの近傍を拡大して示す平面断面図である。なお、本実施形態において前記第1実施形態と同一又は類似の構成については、図面に同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図10に示すように、第1突出部60aの機体前方側を向く面には、ある程度の弾性を備えた素材(例えばウレタン等)によって形成された弾性シール部材(第1弾性シール部材)77が、例えば接着剤やシールによって貼り付けられている。また、第2突出部62aの機体後方側を向く面には、弾性シール部材としてのウェザーストリップ78(第2弾性シール部材)が取り付けられている。そして、図10に示すように、ボンネットの閉鎖時において、前記弾性シール部材77とウェザーストリップ78とが当接し、第1突出部60aと第2突出部62aとによって圧接力が加えられるように構成されている。
【0067】
即ち、第1実施形態においては第2突出部62aにのみ弾性シール部材を備える構成であったが、本実施形態のように第1突出部60aと第2突出部62aの両方に弾性シール部材を設けることにより、更なるシール性を確保することができる。また、弾性シール部材が板金によって構成された他方の突出部に直接接触することがなくなるので、弾性シール部材の剥がれ、破損などを防止し、当該弾性シール部材の寿命を更に延ばすことができる。
【0068】
以上に説明したように、この第2実施形態のトラクタは、支持ブラケット60、第1突出部60aと、ボンネット20と、第2突出部62aと、第1弾性シール部材77と、ウェザーストリップ78と、を備えている。支持ブラケット60は、ラジエータ22を支持するために当該ラジエータ22の左右に取り付けられる。第1突出部60aは、支持ブラケット60から機体左右方向に突出する。ボンネット20は、閉鎖した状態でラジエータ22の上部及び左右側面を全体的に覆うように構成されている。第2突出部62aは、ボンネット20を閉鎖した際に第1突出部60aの機体正面側に対面するように当該ボンネット20の内側に突出し、当該ボンネット20側に設けられる。第1弾性シール部材77は、第1突出部60aの機体正面側に設けられる。ウェザーストリップ78は、前記第2突出部62aの機体背面側に配置されて第1突出部60aに対面する。
【0069】
これにより、弾性シール部材(第1弾性シール部材77及びウェザーストリップ78)がボンネット20の開閉時に擦れて破損や剥がれが発生することを防止し、弾性シール部材によるボンネット20とラジエータ22との間の熱風遮断性を長期にわたって維持することができる。この結果、エンジン19の熱風がラジエータ22の前方に吹き戻すことを防止し、ラジエータ22の冷却機能を安定して発揮することができる。また、ボンネット20側とラジエータ22側がそれぞれ弾性シール部材を備えるので、弾性シール部材を片方のみに備える構成と比べて、更なる熱風遮断性を確保することができる。
【0070】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0071】
本発明のトラクタは前輪と後輪を備えた四輪タイプのトラクタに限らず、例えばクローラタイプのトラクタとして構成しても良い。
【0072】
上記実施形態では、支持ブラケット60は、熱気遮蔽板61及びラジエータステーを介してラジエータ22を間接的に支持しているが、直接的に支持するように構成しても良い。例えば、支持ブラケット60の曲げられた端部のうち、機体内側に突出する側の端部(第1突出部60aの反対側の端部)に、ネジ止めによってラジエータ22を固定する構成とすることができる。
【0073】
第1実施形態において、弾性シール部材の例としてウェザーストリップやウレタンを挙げたが、ほかの弾性シール部材を用いても良い。
【0074】
また、第1実施形態において、弾性シールをボンネット側(可動側)に設けたが、ラジエータ側(固定側)に弾性シール部材を配置する構成でも良い。固定側であるラジエータ側に弾性シール部材を設けた場合は、当該弾性シール部材の剥がれ等が更に発生しにくくなるというメリットがある。一方、第1実施形態のようにボンネット側に弾性シール部材を配置した場合は、組立性が良好になるというメリットがある。
【0075】
第2実施形態において、ボンネット側にウェザーストリップを配置したが、ラジエータ側に配置しても同様の効果を発揮することができる。また、例えば、ボンネット側とラジエータ側の両方をウェザーストリップとしても良いし、両方をウレタンとしても良い。
【符号の説明】
【0076】
10 トラクタ
17 ヘッドライト(前照灯)
19 エンジン
20 ボンネット
22 ラジエータ
60 支持ブラケット(支持部材)
60a 第1突出部
62 シール部材ブラケット
62a 第2突出部
73 弾性シール部材
75 電線
77 第1弾性シール部材
78 ウェザーストリップ(第2弾性シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータを備えたトラクタにおいて、
前記ラジエータを支持するために当該ラジエータの左右に取り付けられた支持部材と、
前記支持部材から機体左右方向に突出する第1突出部と、
少なくとも前記ラジエータの左右の一部を覆うことが可能なボンネットと、
前記ボンネットの内側に突出し、当該ボンネットを閉鎖した際に前記第1突出部に機体前後方向で対面するように前記ボンネットに設けられた第2突出部と、
前記第1突出部又は前記第2突出部の何れか一方に設けられた弾性シール部材と、
を備えることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
ラジエータを備えたトラクタにおいて、
前記ラジエータを支持するために当該ラジエータの左右に取り付けられた支持部材と、
前記支持部材から機体左右方向に突出する第1突出部と、
少なくとも前記ラジエータの左右の一部を覆うことが可能なボンネットと、
前記ボンネットを閉鎖した際に前記第1突出部の機体正面側又は機体背面側に対面するように当該ボンネットの内側に突出し、当該ボンネット側に設けられた第2突出部と、
前記第1突出部の機体正面側又は機体背面側に設けられた第1弾性シール部材と、
前記第2突出部の機体正面側又は機体背面側であって前記第1突出部に対面する側の面に設けられた第2弾性シール部材と、
を備えることを特徴とするトラクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトラクタであって、
前記ボンネットには、前照灯と、前記前照灯に接続された電線と、が配置され、
前記第2突出部は前記電線を支持していることを特徴とするトラクタ。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のトラクタであって、
前記支持部材を固定するとともに、前記ボンネットの閉鎖時において当該ボンネットの下側の少なくとも一部を塞ぐ取付プレートを備え、
前記取付プレートの輪郭形状の一部は、前記ボンネットの下方端部の形状に沿うように形成され、
前記取付プレートにおいて、その輪郭形状が前記ボンネットの下方端部の形状に沿っている部分には、当該取付プレートの端部に沿って第1シール部材が配置され、
前記取付プレートにおいて、その輪郭形状が前記ボンネットの下方端部の形状から外側に突出している部分には、当該取付プレートの前記ボンネット側を向く面に、当該ボンネットの下方端部の形状に沿うように第2シール部材が配置されることを特徴とするトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−163036(P2010−163036A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6643(P2009−6643)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】