説明

トーラス形状のモータシステム

トーラスモータシステムは、中空ステータと、中空ステータ内に形成されたロータ通路に沿ってマグネットシステムによって駆動されるロータと、を有する。ロータはロータ通路内でピストンとして動作して、流体を吸入し、吐出する。ロータにかかる力はすべて、ロータをロータ通路の中心に置こうとする。ロータは吸入口から離れる方向にマグネットシステムで加速され、ロータが吐出口に接近するにつれて減速される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータシステムに関し、より詳細には、ロータが中空の楕円形ステータ内で電磁的に駆動される電磁駆動回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
往復コンプレッサ/ポンプは、多くの用途で、特に、液体流速が比較的遅く、液体の圧力上昇を比較的高くする必要がある環境で使用するのに非常に望ましい。圧力上昇が低く、流速が速いことを必要とする用途に関しては、単純であり、保守に費用がかからず、あまり保守を必要としないことから、回転遠心コンプレッサ/ポンプが有利と言える。
【0003】
通常のエアコンプレッサの負荷は、ピストンが空気を圧縮するために移動するときに、ほとんど線形的に増加する。ポンプ用途では、負荷は移動長さに沿ってほぼ一定である。
【0004】
ともに有効ではあるが、往復ポンプと回転ポンプはそれぞれ、コンプレッサ/ポンプ用途の効率に影響を与える二律背反性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、必要とされる負荷に全体として適合して効率的な動作をもたらす、往復機械および回転機械の両方の利点を備えたポンプ/コンプレッサ用途向けの機械を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるトーラスモータシステムは、中空ステータと、マグネットアセンブリによって中空ステータ内で駆動されるロータと、を有する。中空ステータは、吸入口から吐出口に流体連通するロータ通路を画定する。ロータ通路はステータ内で楕円をなす。ロータは、ロータ通路の内部の楕円形状に適合するために、形状が少なくとも部分的にアーチ形をなす。ロータは、ロータ通路内でピストンとして動作して、流体を吸入し、吐出する。本開示による構造は広い用途を有するが、トーラスモータシステムは、主にポンプ/コンプレッサ用途向けに考案されている。
【0007】
多数のマグネットタイプを本発明で使用できるので、様々なモータタイプ(すなわち、インダクション、永久磁石、切換式リラクタンスなど)がトーラス形状の恩恵を受ける。間隔が最も離れたマグネットを与えるマグネット配置では、ロータを最も速く移動させるが、負荷が最も小さくなる(すなわち、磁気的な引きつけ力は距離とともに減少する)。逆に、間隔が最も接近したマグネットでは、ロータは最も遅く移動するが、負荷ははるかに大きくなる。これは、ロータが吸入部を通るときにロータに加わる負荷が最小になることから好ましい。ガスはロータの前で圧縮され、ロータの後ろで真空が引かれるので、ロータが吐出部に近づくにつれて負荷は増加する。したがって、マグネットは、負荷が最も小さいところで最も離れて離間し、負荷が最も大きいところで最も接近して離間する。これは、直線往復運動するポンプ/コンプレッサに勝る利点である。
【0008】
トーラスモータおよびコンプレッサ(またはポンプ)は、一般的なコンプレッサまたはポンプのような複数の異なるメカニズムではなく、1つのメカニズムである。配管が少なくオイル分離器がないために、エアエンド損失とパッケージ損失が最小限となるので、トーラスモータ/コンプレッサの効率は、回転式コンプレッサと比較して優れている。部品点数が少なく、駆動力と作動体との間にカップリングやギヤが全くないので効率が高くなる。たとえトーラスモータが回転式コンプレッサと同じ効率であっても、トーラスコンプレッサの方が出力効率が15〜20%有利である。
【0009】
通常のコンプレッサに対するトーラスモータ/コンプレッサの利点には、一般に、可動部分が非常に少ないこと、高信頼性、オイルを使用しない運転、高い効率、複雑でなく比較的費用がかからないこと、可変速駆動を用いた効果的な速度制御、漏れ部分が少ないこと、シールしたステータ、および容易に達成される多様な速度/負荷性能が挙げられる。
【0010】
したがって、本発明は、必要とされる負荷に全体として適合して効率のよい運転をもたらす、往復機械および回転機械の両方の利点を備えたポンプ/コンプレッサ用途向けの機械を提示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1Aは、通常、中空ステータ12およびロータ14を有するトーラスモータシステム10を示しており、ロータはマグネットシステム16によって中空ステータ12内で駆動される。モータおよびコンプレッサ(またはポンプ)は、一般的なコンプレッサまたはポンプが2つ(または3つ以上)の別のメカニズムであるのとは対照的に1つのメカニズムである。トーラスモータシステム10のロータは、実際は回転しないで、中空ステータ12によって画定された楕円通路内を動くが、出願人はモータの移動部材をロータと呼ぶ。
【0012】
中空ステータ12は、中空ステータ12の内部と通じた吸入口18と吐出口20とを画定する。モータシステム10は、ガス用のコンプレッサとして説明されるが、流体ポンプのモータシステムや機械モータ駆動体などの他の用途も同様に、本発明の恩恵を受けるのは当然のことである。ロータ通路Rは、中心点Aの周りに画定されるリングとして形成されるのが好ましい。ただし、楕円などの他の形状も本発明で使用することができる。また、ロータ通路Rは、断面が円形(図1B)であるのが好ましいが、他の形状も本発明で使用することができる。
【0013】
図1Cを参照すると、中空ステータ12は、結合されてロータ通路Rを画定する第1のステータ部分22aおよび第2のステータ部分22bで形成されるのが好ましい。ステータ材料は、ステンレス鋼やプラスチックなどの非磁性材料とする。各ステータ部分22a,22bは、互いに鏡像とするのが好ましい。第1のステータ部分22aと第2のステータ部分22bとの間の分離部は、中心点Aを含み、かつロータ通路Rを分割する平面とするのが好ましいが、他の分離平面も本発明で使用できる。
【0014】
図1Dを参照すると、シール24i,24oは、ロータ通路Rの内周Riおよび外周Roの周りに画定される溝25iおよび溝25o内に配置されている。シール24i,24oは、ステータ部分22a,22bがともに組み立てられたときにロータ通路Rをシールする。
【0015】
中空ステータ12は、ロータ通路Rの周りに多数の歯26を画定する。各歯26は、ステータ内径12iおよびステータ外径12oを画定する。各歯は、形状を台形とするのが好ましい。すなわち、歯26の小さい端部はステータの内径12iを画定し、歯26の大きい端部はステータの外径12oを画定する。
【0016】
少なくとも1つの位置合わせピン28が、歯26に形成した開口部30内に取り付けられている。各歯26は、ステータ部分22a,22bによって形成されて、マグネットシステム16を保持し(図1B)、留め具fおよびピン28がロータ通路Rに侵入しないように(図1B)、留め具f用の留め具受け入れ開口部31を提供する。
【0017】
特定の部品構成を図示した実施形態で開示したが、当然のことながら、他の構成も本発明の恩恵を受ける。これに代えて、例えば、ステータ断面が閉じた形状をもたないとする。ステータの側部周りのスロットがスロットの中に延びるピンを案内して、何か他の装置に運動を伝達する。
【0018】
図2Aを参照すると、マグネットシステム16は、中空ステータ12の各歯26の間に取付けられたマグネットアッセンブリ32を有する(図1B)。各マグネットアッセンブリ32は、複数の薄板状マグネット回路ボード34で作られるのが好ましい(図2B)。各マグネット回路ボード34は、中空ステータ12を囲んで容易に組み立てできるように、ボード部分34a,34bで作られている。一方のボード部分34aからなる各薄板が、他方のボード部分34bからなる各薄板と交互配置される。この積層体は、対向するボード部分を正確に配置してボード部分34a,34bを保持するために、層の間にスペーサワッシャ35を有する。マグネット回路ボード34は、冷却フィン36の間に配置され、ねじなどの留め具40でともに保持されるのが好ましい。ねじ40は、中空ステータ12の周りに取付けるために、同様に複数の部分で作られた冷却フィン36に螺入されるのが好ましい。各ボード部分34a,34bが最初に別々に組み立てられ(図2C)、次いで接合留め具40Aを用いてステータを囲むように互いに結合される。
【0019】
図2Bを参照すると、マグネット回路ボード部分34a,34bは、裏側に金属薄片の回路パターンを有する。互いに挟んで組み立てると、マグネット回路ボード34は、金属薄片回路からなるコイルを形成する。回路ボード部分34a(その形状から「バー」)は、マグネットアッセンブリ32に電力を供給する電力供給リードPに接続するための電力供給リードパッドLPを有する。
【0020】
電流は電力供給リードPからリードパッドLPに伝達され、(図では見ることができない)ボードの他方の面にある金属薄片回路に接続されためっきスルーホールを通る。その金属薄片は、U字バー回路ボード部分34b(その形状から「U字バー」)の上面側にある最下部の金属薄片と接合している。この金属薄片はU字バー回路ボード部分34bの上面に延び、隣りのバー回路ボード部分34aの裏面側にある金属薄片などと接合されている。U字バー回路ボードの最内部の金属薄片は、裏面側のパターンにつながっためっきスルーホールを有する。すなわち、ボードを互いにさし挟む(図2A)と、ボードは電磁回路コイルを形成する。
【0021】
一般的に、同じ寸法のボードに対して、金属薄片コイルが大きいほど巻数は少なくなるが、電流をより多く流すことができ、インピーダンスは小さくなる。極限まで行うと、ボードは完全に覆われ、薄板当たり2ターン(片側当たり1ターン)を形成する。この構成は、中央に穴があいた円形の銅薄片であるビッタディスク(Bitter disk)として公知のタイプのマグネット構成に従う。このディスクはまた、半径方向に沿って切断部を有する。これらのディスクはその間に薄い絶縁体を挟まれて螺旋コイルを形成することができる。ディスクは絶縁体のない切断部で短い距離だけ重なる。絶縁体はディスクと同じ形状とする。そのような円形のマグネットは、(一般的な回転モータの長くて薄い巻き線のような)他の形状のものより効率がよく、ビッタディスクマグネットは、円形の巻き線マグネットより効率がよい。
【0022】
当然のことながら、多数のマグネットタイプを本発明で使用することができ、そのため、様々なモータタイプ(すなわち、インダクション、永久磁石、切換式リラクタンスなど)がトーラス形状から恩恵を受けることになる。
【0023】
図3Aを参照すると、積層体がマグネットコアを通り抜け、中空ステータ12を囲んだ状態で、マグネットコイルCt,Cbが、1つはステータ12の上に、1つは底部に、対となってマグネット積層体Lに取付けられていることを別にすれば、切換式リラクタンストーラスモータは、インダクショントーラスモータと同様である。マグネット積層体(図3B)は、磁束の磁路をマグネットの間に形成する。ロータ内の鉄は、回転リラクタンスモータと同様に、マグネットに通電したときに、2つのマグネットの間の間隙に向かって引きつけられる。
【0024】
図4を参照すると、ロータ14は、ロータ通路Rの内部形状に適合するように、形状が少なくとも部分的にアーチ形となっている。ロータ14は、鉄および/または鋼などの磁性材料で作られた薄板42を有する。薄板42は、中空ステータ12の内部形状と合致するようにロータ通路R内に適合する。例えば、断面が円形のロータ通路R(図1B)の場合、ロータ14は、非金属のアーチ形ロータロッド44に互いに保持されたワッシャ形状の多数の薄板42を有する。非金属のアーチ形ロータロッド44は、真ちゅう、ステンレス鋼、プラスチック、または他の同様の材料とするのが好ましい。薄板42は、ねじなどによってアーチ形のロータロッド44に取付けられた先頭保持器46および後部保持器48で互いに挟まれている。保持器46および保持器48は、ステンレス鋼、テフロン、または他の同様の材料の非金属材料で作られるのが好ましく、中空ステータ12のロータ通路R内で少なくとも部分的にシールとして機能する。積層体の好ましい厚さは、マグネットシステム16内のマグネットアッセンブリ32の厚さの約半分から1倍である。各ロータ14は、2組以上の積層体(以降、1組の積層体を1つのロータローブと呼ぶ)を含むのが好ましい。これらのローブの間隔と寸法は、マグネットの間隔と厚さに依存する。
【0025】
ロータにかかる力はすべて、ロータを中空ステータ12のロータ通路Rの中心に置こうとする。磁力と、ロータ14のそばを抜けようとする流体の力と、はともに、ロータをロータ通路Rの中心に置こうとする。これらの力はロータ薄板42の表面に作用し、ロータとステータとの間の公差を最小限にしたならば、シールは全く必要なくなる。すなわち、ロータ14は流体ベアリング(静圧ベアリングと同じ)に支持されて動くか、または圧縮ガスの場合はガスベアリングに支持されて動く。
【0026】
図5を参照すると、制御部50はマグネットシステム16を作動させる。制御部50は、多相電源52を制御する可変速度制御部すなわち切換式リラクタンス速度制御部とすることができる。インダクショントーラスモータおよび切換式リラクタンストーラスモータは、特別に考慮した制御を必要とする。インダクションモータは電源に直接接続することができるが、電子駆動装置の恩恵を享受するのが好ましい。特有の制御要求の他の態様をトーラスモータおよびその関連部品とともにさらに理解するには、本発明の出願人に譲渡され、全体として本明細書に組み込むものとする「マトリクス配列トランジスタによる切換式リラクタンスモータ可変速度ドライブ(TRANSISTOR MATRIX SWITCHED RELUCTANCE VARIABLE SPEED MOTOR DRIVE)」と題した米国特許出願を見るとよい。
【0027】
図5に示すように、3相モータ構成など、多相電源52に対応したマグネットシステム16の構成には、相(1,2,3)が含まれる。マグネットは、一方の端部の各マグネットが他方の端部の各マグネットよりさらに離れているように離間するのが好ましい。この構成には幾つかの利点がある。制御部は1つの周波数を維持するだけでよい。ロータ14は、マグネットの間隔に応じて加速し、減速する(図6)。磁極の間隔は、通常のかご型インダクションモータの場合のような一定間隔ではなく、実際にはある傾度で変化している。
【0028】
このマグネット配置によると、ロータを最も速く移動させるが、負荷を最も小さくするために、間隔が最も離れたマグネットが用意される(すなわち、磁気的な引きつけ力は距離とともに減少する)。逆に、間隔が最も接近したマグネットでは、ロータは最も遅く移動するが、負荷ははるかに大きくなる。これは、ロータが吸入部を通るときにロータに加わる負荷が小さいことから好ましい。(ロータは、ロータの前のガスを圧縮しつつ、ロータの後ろで真空をひいているので)ロータが吐出部に近づくにつれて負荷は増加する。したがって、マグネットは、負荷が最も小さいところで最も離れて離間し、負荷が最も大きいところで最も接近して配置するべきである。
【0029】
この配置は幅広く使用することができるが、主にポンプおよびコンプレッサ用途のために考案された。4つの図6((1)〜(4))は、1サイクルの中の様々な時点を2つのロータ14a,14bとともに示している。2つのロータ14a,14bは、中空ステータ12内の円形通路を移動する。ロータは中空ステータ12を一定の速度で回るわけではない。ロータは、吸入口18を通過するときに加速し、吐出口20に近づいたときに減速する。図6(1)は、ロータ14aが吐出口20に接近している(ロータは速度を落としている)状態を示し、それに対して、ロータ14bは吸入口18を通過している(ロータは速度を上げている)。図6(2)は、大体同じ速度である両方のロータを示している。図6(3)は、速度が異なるために、空気が吸入口18からステータに引き込まれ、それと同時に、ロータ間(左上)の空気が圧縮されている状態を示している。図6(4)は、ロータ14aが吐出口20を通過しており、空気がロータ14bによって押し出されている状態を示している。1サイクルを1つのロータがステータを完全に1周することと定義すると、4つの図((1)〜(4))は1サイクルの半分を示している。各ロータ回転につき2つの圧縮サイクル(各ロータにつき1つ)がある。
【0030】
液体ポンプがより大きい吸入口および吐出口を有しており、後続ロータが吸入口を閉じたときに吐出口が開くことを別にすれば、ポンプ用途も同様である。これは、液体がそれほど収縮しないので、後続ロータが吐出口から液体を押し出すことができるように、吐出口は開いている必要があるためである。
【0031】
複数のロータ14を所望の相対配置に維持しておくために、少なくとも1つのマグネットは、制御装置50に接続したセンサSに応答して、選択的に開閉を切り換えられる。ロータの位置はセンサによって検出され、特定のマグネットを通過するロータが通常より遅くなるように、特定のマグネットがある時間切断される。これにより、ロータを制御でき、同期を維持できる。マグネットは吸入口と吐出口の真向かいに置くのが好ましい(図5)。マグネット用のスイッチはトランジスタとすることができ、センサは、ロータがマグネットに接近したときにロータを検出できるように、マグネットの吸入口側に配置したホール効果素子とすることができる。
【0032】
図7Aおよび図7Bを参照すると、1ローブロータおよび2ローブロータ(図7B)に対するマグネットの通電順序とロータの移動が示されている。マグネットは30°だけ離間している。1ローブロータに対する通電シーケンスは、反時計方向の順にマグネットに通電し、ロータは、ロータの前にある次のマグネットが通電されるたびに反時計方向に30°だけ回転する。
【0033】
図7Bを参照すると、2ローブロータの長さは、マグネット間の距離の1.5倍になっている。2ローブロータには、異なる通電順序がある。図7B(1)は、第1のマグネットが通電された後のロータの位置を示している。これにより、ロータの先導端は第3のマグネットの作用範囲に運ばれる。次いで第3のマグネットに通電して、後続端を第2のマグネットの作用範囲にもってくる。この通電シーケンスは、マグネットに通電するたびにロータを半時計方向に15°だけ移動させる。
【0034】
2ローブロータは1ローブロータ(図7A)の半分の速度で移動するが、負荷は大きい。これは、様々な磁極数を有するロータモータに似ている。ロータに作用する磁力は、ロータローブからマグネットの中心までの距離の2乗の逆数に比例するので、2ローブロータでは、1ローブロータの負荷の2倍をはるかに超える負荷が生じる。ローブが多いほど、モータは、より遅いが出力がより高くなり、一方、ロータは、より多くのローブを追加するために長くしなければならず、これは、ステータの直径を大きくし、より多くのマグネットを使用することを必要とする可能性がある。
【0035】
図8は、12個のマグネットからなるステータにある1ローブ、2ローブ、3ローブ、および4ローブの各ロータに対するマグネットの通電順序を示している。各マグネットは、30°ずつ均等に離間している。図を横切る線は、回転移動を角度で示している。垂直線は、ステータ上のマグネット配置を表している。ロータは通電されたマグネットと整列した位置で示されている。色の濃いロータローブは、通電したマグネットの影響下にあるローブである。
【0036】
第1の通電順序は1ローブロータに関するものである。シーケンスは、0°,30°,60°,90°,120°である。ロータは、マグネットが通電されるたびに30°移動する。
【0037】
第2のシーケンスは、2ローブロータに関するものである。シーケンスは、0°,60°,30°,90°,60°,120°,90°である。ロータは、マグネットが通電されるたびに15°移動する。
【0038】
第3のシーケンスは、3ローブロータに関するものである。シーケンスは、0°,90°,60°,30°,120°,90°,60°である。ロータは、マグネットが通電されるたびに10°移動する。
【0039】
3ローブ以上のモータには問題がある。ローブの長さ、数、およびローブ間隔に依存して、マグネットが2つのローブに作用し、1つを前方に、1つを後方に引っ張ってロータが動かなくなる通電シーケンスとなる場合があり得る。4ローブロータに対する最下部のシーケンスは、この問題を示している(矢印でマークしている)。
【0040】
図9は、2つのマグネットが同時に通電され、2つのロータローブに作用する状態を示している。これは負荷能力を2倍にする。2ローブロータ通電シーケンスは上に示され、4ローブシーケンスは、図8で指摘した欠陥を修正して下に示されている。なお、この図は、マグネットが15°の間隔で離間した24マグネットステータを対象としている。
【0041】
ロータ長さ、ロータローブ数、ローブ間隔、ステータの直径、マグネット数、およびマグネット間隔の中の任意の組み合わせを本発明で使用することができる。これらのオプションは、トーラスモータを様々な速度/負荷用途に適応可能にする。例えば、同じステータを異なるロータと組み合わせて様々な速度/負荷性能を与えることができる。
【0042】
回転スクリュ式コンプレッサの効率に関する主な要素は、エアエンド、モータ、およびパッケージ損失である。エアエンドおよびモータの効率は、機械の寸法が大きくなるにつれて上がる。以下の表は、10〜100馬力の機械のこれら要素の効率範囲を示している。
【0043】
回転スクリュ式エアコンプレッサ(10〜100馬力) 効率
エアエンド効率 75〜85%
モータ効率(高効率) 85〜95%
パッケージ損失 4〜5%
全体効率 60〜75%
トーラスモータ/コンプレッサの効率は、配管が少なくオイル分離器がないためにエアエンド損失がほとんどなく、パッケージ損失が最小限となるので、比較した場合に優れている。コンプレッサの効率は、モータの効率より若干低くなる。マグネット設計に関する制約がほとんどないので、これが、よりすぐれたマグネット設計によってトーラスモータを回転モータよりも効率の高いものとすることができると考える根拠となっている。
【0044】
実施例のトーラスモータは、高回転モータに通常付随する問題なしに高速とすることができる。ロータは慣性が小さく、速度を制限するベアリングがない。大容量を比較的小さいパッケージで移動させることができる。上記の実施例は、実際上低速ポンプとして動作するが、高速にするには、4つのロータと、2組の吸入口,吐出口と、が必要になる。部品点数が少なく、駆動力と作動体との間にカップリングやギヤが全くないので効率が高くなる。また、モータ巻き線の形状も一般的な回転モータより制約が少ないので、より効率的な電磁石設計を用いてより高いシステム効率を実現することができる。たとえトーラスモータが上記と同じ効率であっても、トーラスコンプレッサは、60〜75%に対して80〜90%(15〜20%の優位性)の出力効率を有することができる。
【0045】
特定のステップシーケンスが示され、説明され、主張されたが、別途に指示された場合を除き、ステップは任意の順で行い、分離するかまたは組み合わせることができ、それでもなお、本発明の恩恵を受けることを理解されたい。
【0046】
上述の説明は、限定するものではなく、例示である。上記の教示を考慮して、本発明についての多数の修正と変更が可能である。本発明の好ましい実施形態が開示されたが、当業者ならば、特定の修正が本発明の範囲内であると分かるであろう。したがって、添付の請求項の範囲内において、具体的に説明されたものとは別の方法で本発明を実施することができることを理解されたい。こういう理由から、添付の特許請求の範囲が本発明の真の範囲および内容を究明するために検討されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1A】トーラスモータシステムの全体的な斜視図である。
【図1B】図1Aのトーラスモータシステムを線1B−1Bに沿って切った断面図である。
【図1C】ステータアッセンブリの分解図である。
【図1D】ステータアッセンブリの片側の拡大図である。
【図2A】マグネットアッセンブリの平面図である。
【図2B】図2Aのマグネットアッセンブリ用マグネット回路ボードのおもて面の図である。
【図2C】分解した状態のマグネットアッセンブリの平面図である。
【図2D】図2Aのマグネットアッセンブリの斜視図である。
【図3A】切換式リラクタンストーラスモータシステムの断面図である。
【図3B】別のマグネットアッセンブリの分解図である。
【図4】トーラスモータシステムのロータの側面図である。
【図5】トーラスモータシステムの平面図であり、マグネットシステムの配置を示す図である。
【図6】ステータ内の複数ロータの移動を示すトーラスモータシステムの一連の図である。
【図7A】1ローブロータに対するマグネットの通電順序とロータの移動を概略的に示す図である。
【図7B】2ローブロータに対するマグネットの通電順序とロータの移動を概略的に示す図である。
【図8】12個のマグネットからなるステータにある1ローブ、2ローブ、3ローブ、および4ローブの各ロータに対するマグネットの通電順序を概略的に示す図である。
【図9】同時に2つのマグネットに通電し、24個のマグネットからなるステータにある2ローブおよび4ローブのロータに作用させるマグネットの通電順序を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楕円形のロータ通路を画定する中空ステータと、
前記楕円形のロータ通路内に取付けられ、少なくとも部分的にアーチ形をなすロータと、
前記楕円形のロータ通路に沿って前記ロータを駆動するために、前記中空ステータの周りに取付けたマグネットシステムと、
を有する回転機械。
【請求項2】
さらに、上記楕円形のロータ通路と連通する吸入口および吐出口を有することを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
上記楕円形のロータ通路が、円形であることを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項4】
上記中空ステータが、多数の歯を有することを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項5】
上記マグネットシステムのマグネットアッセンブリが、上記多数の歯の各々の間に取付けられることを特徴とする請求項4に記載の回転機械。
【請求項6】
上記マグネットシステムの各マグネットアッセンブリが、多数の積層したマグネット回路ボードを有することを特徴とする請求項5に記載の回転機械。
【請求項7】
上記マグネット回路ボードの各々が、分割して作られることを特徴とする請求項6に記載の回転機械。
【請求項8】
上記多数の積層したマグネット回路ボードが、マグネットコイルを形成するために交互に配置されることを特徴とする請求項6に記載の回転機械。
【請求項9】
上記マグネット回路ボードの分割体が、バー回路ボード部分とU字バー回路ボード部分を含むことを特徴とする請求項7に記載の回転機械。
【請求項10】
さらに、上記楕円形のロータ通路内に取付けた複数のロータを有することを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項11】
上記ロータが、複数のローブを有することを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項12】
楕円形のロータ通路を画定する中空ステータと、
前記楕円形のロータ通路と連通する吸入口と、
前記楕円形のロータ通路と連通する吐出口と、
前記楕円形のロータ通路内に取付けられ、それぞれが、少なくとも部分的にアーチ形をなす非金属のロッドと、該非金属のロッドに取付けた複数のローブとを有する複数のロータと、
前記複数のロータを前記楕円形のロータ通路に沿って駆動して、前記吸入口から前記吐出口に流体を伝達するために前記中空ステータの周りに取付けたマグネットシステムと、
を有する回転機械。
【請求項13】
上記中空ステータが、多数の歯を有することを特徴とする請求項12に記載の回転機械。
【請求項14】
上記中空ステータが、異なる間隔で離間した多数の歯を有することを特徴とする請求項13に記載の回転機械。
【請求項15】
上記マグネットシステムのマグネットアッセンブリが、上記多数の歯の各々の間に取付けられることを特徴とする請求項13に記載の回転機械。
【請求項16】
上記マグネットシステムが、上記中空ステータの周りに異なる間隔で離間した多数のマグネットアッセンブリを有することを特徴とする請求項12に記載の回転機械。
【請求項17】
ステータの周りに取り付けられ、該ステータの周りで半径上に配列した第1のマグネット、第2のマグネット、および第3のマグネットを有するマグネット群を具備する回転機械内でロータを駆動する方法であって、
(1)前記第1のマグネットに通電するステップと、
(2)前記第3のマグネットに通電するステップと、
(3)前記第2のマグネットに通電するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
マグネットの位置を特定する以下のシーケンス、すなわち、0°,60°,30°,90°,120°,および90°のシーケンスでマグネットに通電するステップを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
吸入口および吐出口を有する回転機械内でロータを駆動する方法であって、
(1)楕円形のロータ通路内の吸入部より後方部分でロータを加速するステップと、
(2)楕円形のロータ通路内の吐出部より前方部分でロータを減速するステップと、
を含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−529470(P2008−529470A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553114(P2007−553114)
【出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/000539
【国際公開番号】WO2006/081055
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507189747)サルエアー コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】