説明

ドライバ状態判別装置、および運転支援装置

【課題】ドライバの状態を詳細に判定したりまたはその判定結果を用いてドライバの運転支援を行うことが可能な装置を提供する。
【解決手段】ドライバ状態判別装置10は、ドライバの車両操作の反応遅れを検出する操作遅れ検出手段22と、ドライバの車両操作の速度を検出する操作速度検出部23と、操作遅れ検出部22の検出結果および操作速度検出部23の検出結果の組合せに基づいてドライバの異常状態を判別する判別手段24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバの状態を判別するドライバ状態判別装置、および、ドライバの状態に応じた運転支援制御を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来文献(特許文献1)には、ドライバの異常状態を判定する異常操舵判定装置が示されている。この異常操舵判定装置は、ドライバのハンドル操作を検出して、検出されたドライバのハンドル操作が、ドライバの正常状態でのハンドル操作よりも遅れている場合に、ドライバの異常状態を判定する。
【特許文献1】特開平5−85221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来文献に係る異常操舵判定装置は、ドライバの状態を正常状態または異常状態のいずれか一方であることを判定するのみである。よって、従来文献に係る異常操舵判定装置では、ドライバの状態をより詳細に判定したり、またはその判定結果を用いてドライバの運転支援を行うことができない。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、ドライバの状態を詳細に判定したりまたはその判定結果を用いてドライバの運転支援を行うことが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明のドライバ状態判別装置は、ドライバの車両操作の反応遅れを検出する操作遅れ検出手段と、ドライバの車両操作の速度を検出する操作速度検出手段と、操作遅れ検出手段の検出結果および操作速度検出手段の検出結果の組合せに基づいてドライバの異常状態を判別する判別手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、ドライバ状態判別装置は、ドライバの車両操作の反応遅れを検出すると共に、ドライバの車両操作の速度を検出して、操作遅れ検出手段の検出結果および操作速度検出手段の検出結果の組合せに基づいてドライバの異常状態を判別する。よって、ドライバの車両操作からドライバの異常状態を詳細に判別することができる。
【0007】
また、本発明のドライバ状態判別装置において、判別手段は、操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、ドライバの生体能力低下状態を判別することが好ましい。
【0008】
この構成によれば、ドライバ状態判別装置は、操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、ドライバの生体能力低下状態を判別する。よって、ドライバの車両操作からドライバの生体能力低下状態を判別することができる。
【0009】
また、本発明のドライバ状態判別装置において、判別手段は、操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出される場合に、ドライバの飲酒状態を判別することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ドライバ状態判別装置は、操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出される場合に、ドライバの飲酒状態を判別する。よって、ドライバの車両操作からドライバの飲酒状態を判別することができる。
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の運転支援装置は、ドライバの車両操作の反応遅れを検出する操作遅れ検出手段と、ドライバの車両操作の速度を検出する操作速度検出手段と、操作遅れ検出手段の検出結果および操作速度検出手段の検出結果の組合せに応じた運転支援制御を決定する運転支援制御決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、運転支援装置は、ドライバの車両操作の反応遅れを検出すると共に、ドライバの車両操作の速度を検出して、操作遅れ検出手段の検出結果および操作速度検出手段の検出結果の組合せに応じた運転支援を行う。よって、ドライバの車両操作に応じた運転支援を行うことができる。
【0013】
また、本発明の運転支援装置において、運転支援制御決定手段は、ドライバの車両操作を抑制する運転抑制制御を行うものであり、操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、運転抑制制御における抑制度合いを低減することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、運転支援装置は、ドライバの車両操作を抑制する運転抑制制御を行うものであり、操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、運転抑制制御における抑制度合いを低減する。よって、ドライバの生体能力が低下している場合に、運転抑制制御における抑制度合いを低減して、生体能力低下状態に適した制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ドライバの状態を詳細に判定したりまたはその判定結果を用いてドライバの運転支援を行うことが可能な装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置(ドライバ状態判別装置)10の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、運転支援装置10は、運転支援ECU20(Electronic Control Unit)10と、自動運転ECU30と、ドライバの車両操作を検出するための操作検出センサ11,12,13と、自車両の周辺を監視する周辺センサ14と、自車両の周辺の装置と通信する通信装置15と、車両の挙動を制御するための車両制御機構31,32と、を備えている。
【0018】
操作検出センサ11,12,13は、ドライバによるアクセルペダルの踏み込みを検出するためのアクセルペダルセンサ11と、ドライバによるブレーキペダルの踏み込みを検出するためのブレーキペダルセンサ12と、ドライバによるハンドル操作を検出するための操舵角センサ13と、を含む。
【0019】
周辺センサ14は、ミリ波レーダ、画像センサ、レーザレーダ、超音波センサなどの周辺を監視するセンサである。この周辺センサ14の検出値(例えば、周辺車両等の物体からの反射情報など)は、自車両の周辺に存在する周辺車両を認識し、自車両からの相対的な距離、角度、速度などの周辺車情報を算出するために用いられる。
【0020】
通信装置15は、自車両の周辺に存在する周辺車両と通信するための車々間通信装置と、路側に設置されたインフラストラクチャと通信するための路車間通信装置と、を含む。通信装置15は、周辺車両およびインフラストラクチャと通信することにより、自車両の周辺に存在する周辺車両を認識し、自車両からの相対的な距離、角度、速度などの周辺車情報を取得する。
【0021】
車両制御機構31,32は、車両の速度を制御するための加減速制御機構31と、車両の移動方向を制御するための操舵制御機構32と、を含む。加減速制御機構31は、ドライバによるアクセルペダルの踏み込みに応じて車両速度を加速し、ドライバによるブレーキペダルの踏み込みに応じて車両速度を減速する。操舵制御機構32は、ドライバによるハンドル操作に応じて車輪を転舵する。
【0022】
自動運転ECU30は、加減速制御機構31および操舵制御機構32を制御して、自車両を自動的に走行させるための装置である。例えば、自動運転ECU30は、前方の他車両に追従して自車両を走行させたり、現在地から目的地まで車両を走行させたりする。なお、自動運転ECU30は、マイクロプロセッサ等のハードウェアおよびソフトウェアを利用して構成されている。
【0023】
運転支援ECU20は、アクセルペダルセンサ11、ブレーキペダルセンサ12、操舵角センサ13などから検出値を取り込む。そして、運転支援ECU20は、これらのセンサの検出値に基づいてドライバの状態を判別し、ドライバの状態に応じた運転支援制御を行う。運転支援ECU20は、操作予測部21、操作遅れ検出部22、操作速度検出部23、ドライバ状態判別部24、運転支援制御決定部25を備えている。なお、運転支援ECU20は、マイクロプロセッサ等のハードウェアおよびソフトウェアを利用して構成されている。
【0024】
操作予測部21は、ドライバの操作を予測するための処理部である。操作予測部21は、車両の周辺の状況に対応付けて正常状態にあるドライバのとる確率の高い操作が登録された操作予測データを有している。例えば、操作予測データには、自車両の先行車が希望速度よりも遅く、且つ、隣りの走行車線が空いている状況に対応付けて、車両を隣りの走行車線に車線移動させるためのハンドル操作が登録されている。また例えば、操作予測データには、自車両が先行車に追いついた状況に対応付けて、車両を減速させるためにアクセルペダルの踏み込みを緩めてからブレーキペダルの踏み込みを強める操作が登録されている。操作予測部21は、実際の車両の周辺の状況が、操作予測データに登録された状況となった場合には、その状況に対応付けて登録されたドライバの車両操作(アクセル操作、ブレーキ操作、ハンドル操作)があることを予測する。なお、操作予測データには、ドライバのとる操作に併せて、ドライバが正常状態である場合にドライバがその操作を行う標準的な操作タイミングおよび標準的な操作速度が登録されている。よって、操作予測部21は、ドライバの車両操作があることを予測した場合に、その車両操作の操作タイミングおよび操作速度も予測する。
【0025】
なお、操作予測部21の操作予測データは、車両の周辺の状況やドライバの車両操作などに基づいて学習したものとすればよい。すなわち、車両の周辺の状況とドライバの車両操作との対応関係を普段のドライバの手動運転時に認識し、この認識された対応関係を得るたびに操作予測データに反映させればよい。これにより、操作予測データは、ドライバ個人の特性を学習したものとすることができる。
【0026】
操作遅れ検出部22は、操作予測部21によりドライバの操作が予測された場合には、実際にドライバにより操作が行われるタイミングが、操作予測データに登録された操作タイミングよりも遅れるか否かを検出する。すなわち、操作遅れ検出部22は、アクセルペダルセンサ11、ブレーキペダルセンサ12および操舵角センサ13の検出値を取り込んで、操作予測データに登録された操作タイミングを基準タイミングとして、この基準タイミングから実際にドライバにより操作が行われたタイミングまでに経過した時間を、ドライバの操作の反応遅れ時間として算出する。なお、操作遅れ検出部22は、ドライバによるアクセルペダル、ブレーキペダル、ハンドルなどの大きな操作に着目し、ドライバの操作の反応遅れ時間を算出すればよい。
【0027】
操作速度検出部23は、操作予測部21によりドライバの操作が予測された場合には、実際のドライバによる操作速度(例えば、ハンドルの回転速度、アクセルの踏込み速度、ブレーキの踏込み速度など)が、操作予測データに登録された操作速度よりも速いか否かを検出する。より詳しくは、操作速度検出部23は、アクセルペダルセンサ11、ブレーキペダルセンサ12および操舵角センサ13の検出値を取り込んで、操作予測データに登録された操作速度を基準速度として、実際のドライバによる操作速度が基準速度よりも予め設定された閾値を超えている場合には、実際のドライバによる操作速度が過剰速度であることを検出する。
【0028】
ドライバ状態判別部24は、操作遅れ検出部22の検出結果および操作速度検出部23の検出結果の組合せに基づいてドライバの状態を判別する。より詳しくは、(a)ドライバ状態判別部24は、操作遅れ検出部22によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されず、操作速度検出部23によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、ドライバの状態が車両の運転に適した正常状態であることを判別する。(b)ドライバ状態判別部24は、操作遅れ検出部22によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されず、操作速度検出部23によりドライバの車両操作の過剰速度が検出される場合に、ドライバの状態が異常状態の一つである危険運転状態であることを判別する。
【0029】
(c)ドライバ状態判別部24は、操作遅れ検出部22によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出部23によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、ドライバの状態が車両の運転に適さない異常状態の一つである生体能力低下状態であることを判別する。(d)ドライバ状態判別部24は、操作遅れ検出部22によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出部23によりドライバの車両操作の過剰速度が検出される場合に、ドライバの状態が異常状態の一つである飲酒状態であることを判別する。
【0030】
なお、ドライバ状態判別部24による上記判別は、次の生理学的な事実に基づいている。すなわち、例えばドライバが病気を原因とする生体能力低下状態にある場合には、(c1)運動機能の低下、(c2)集中力の低下、がドライバに発生する。よって、この状態では、(c1),(c2)に起因して、ドライバによるハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作タイミングに反応遅れが生じる。但し、この状態では、ドライバによるハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作速度は平常時と殆ど変わらず、標準的な値となる。
【0031】
一方、ドライバがアルコール類を摂取して飲酒状態にある場合には、(d1)中枢神経の麻痺に伴う運動機能の低下、(d2)視力(特に動体視力)の低下に伴う視野の狭小化、(d3)集中力の低下、(d4)身体の平衡感覚の鈍化、(d5)理性および自制心の低下に伴う運動の粗雑化、がドライバに発生する。よって、この状態では、(d1)〜(d4)に起因して、ドライバによるハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作タイミングに反応遅れが生じる。さらに、この状態では、(d5)に起因して、ドライバによるハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作速度は平常時よりも大きくなり、標準値より予め設定された閾値を超えて過剰な値となる。
【0032】
運転支援制御決定部25は、ドライバ状態判別部24による判別結果に基づいて、ドライバの状態に応じた運転支援制御を決定する。例えば、運転支援制御決定部25は、次のように運転支援制御を決定する。(a)運転支援制御決定部25は、ドライバが正常状態である場合には、ドライバは車両を問題なく運転可能であるため、車両の運転支援制御を行わないことを決定する。(b)運転支援制御決定部25は、ドライバが危険運転状態である場合には、ドライバに車両を安全に運転させるために、警告音等を発することを決定する。
【0033】
(c)運転支援制御決定部25は、ドライバが生体能力低下状態である場合には、ドライバ自身による車両操作を抑制する運転抑制制御の抑制度合いを低減し、この運転抑制制御を行うことを決定する。例えば、運転支援制御決定部25は、ドライバの粗雑な手動操作を抑制しつつ手動運転を許可することを決定する。また例えば、運転支援制御決定部25は、ドライバの手動操作による走行状態から自動運転ECU30の自動運転制御による走行状態に切り換えて、車両を病院等の目的地まで自動的に走行させることを決定する。運転支援制御決定部25は、ドライバの手動操作による走行状態から自動運転ECU30の自動運転制御による走行状態に切り換えて、車両を緊急停止させることを決定してもよい。
【0034】
(d)運転支援制御決定部25は、ドライバが飲酒状態である場合には、ドライバの車両操作を抑制する運転抑制制御を行うことを決定する。例えば、運転支援制御決定部25は、ドライバの手動操作による走行状態から自動運転ECU30の自動運転制御による走行状態に切り換えて、車両を緊急停止させることを決定する。運転支援制御決定部25は、ドライバに対する警告処理を行うことを決定してもよい。
【0035】
なお、運転支援制御決定部25が行う運転抑制制御とは、ドライバ自身による車両操作を抑制するための車両制御であり、ドライバによる手動運転の継続が抑制される車両制御である。運転抑制制御が実行されている時には、ドライバがハンドル、アクセル、ブレーキなどを操作してもその操作は加減速制御機構31および操舵制御機構32の制御には反映されず、車両は路側等で停止状態となる。また、運転抑制制御において車両操作が抑制される度合いは、状況に応じて調節可能である。例えば、ドライバが生体能力低下状態にある状況では、運転抑制制御の抑制度合いを低減することにより、ドライバの粗雑な手動運転を抑制しつつ手動運転を可能としたり、ドライバの手動運転や自動運転ECU30により車両を病院等へ移動する制御のみを可能としたりする。
【0036】
本実施形態の運転支援装置10によれば、運転支援装置10は、ドライバの車両操作の反応遅れを検出すると共に、ドライバの車両操作の速度を検出して、操作遅れ検出部22の検出結果および操作速度検出部23の検出結果の組合せに基づいてドライバの異常状態を判別する。よって、ドライバの車両操作からドライバの異常状態を判別することができる。そして、運転支援装置10は、ドライバの車両操作の反応遅れを検出すると共に、ドライバの車両操作の速度を検出して、操作遅れ検出部22の検出結果および操作速度検出部23の検出結果の組合せに応じた運転支援を行う。よって、ドライバの車両操作に応じた運転支援を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の運転支援装置10によれば、運転支援装置10は、ドライバの車両操作を抑制する運転抑制制御を行うものであり、操作遅れ検出部22によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、操作速度検出部23によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、運転抑制制御における抑制度合いを低減する。よって、ドライバの生体能力が低下している場合に、運転抑制制御における抑制度合いを低減して、車両を所望の場所(例えば、病院等)へ移動させることができる。
【0038】
図2および図3のフローチャートを参照して、本実施形態の車両の運転支援装置10による処理について説明する。この処理は、運転支援装置10により繰り返し実行される。
【0039】
運転支援ECU20は、車両の周辺の状況やドライバの車両操作などに基づいてドライバの操作を予測する(S201)。すなわち、運転支援ECU20は、車両の周辺の状況が操作予測データに登録された状況となった場合に、その状況に対応付けて登録されたドライバの車両操作があることを予測する。
【0040】
次に、運転支援ECU20は、アクセルペダルセンサ11、ブレーキペダルセンサ12および操舵角センサ13からの検出値を取り込んで、実際のドライバによる操作タイミングおよび操作速度を取得する(S202)。そして、運転支援ECU20は、実際にドライバにより操作が行われるタイミングが、操作予測データに登録された正常状態での標準的な操作タイミングよりも遅れるか否かを検出する(S203)。ここで、運転支援ECU20は、操作予測データに登録された操作タイミングを基準タイミングとして、この基準タイミングから実際にドライバにより操作が行われたタイミングまでに経過した時間を、ドライバの操作の反応遅れ時間として算出する。
【0041】
次に、運転支援ECU20は、ドライバの操作の反応遅れ時間が長規定時間(例えば2秒間)を超えているか否かを判定する(S204)。運転支援ECU20は、ドライバの操作の反応遅れ時間が長規定時間を超えている場合には、ドライバの生体能力が低下しており運転に適していない状態Caであることを設定する(S205)。一方、運転支援ECU20は、ドライバの操作の反応遅れ時間が長規定時間を超えていない場合には、ステップ206の処理に進む。
【0042】
次に、運転支援ECU20は、ドライバの操作の反応遅れ時間が短規定時間(例えば1秒間)を超えているか否かを判定する(S206)。ここで、運転支援ECU20は、ドライバの操作の反応遅れ時間が短規定時間を超えている場合には、ドライバが飲酒している可能性がある状態Cbであることを設定する(S207)。一方、運転支援ECU20は、ドライバの操作の反応遅れ時間が短規定時間を超えていない場合には、ステップ208の処理に進む。
【0043】
次に、運転支援ECU20は、車両の走行速度が規定走行速度(例えば60km/h)を超えているか否かを判定する(S208)。ここで、運転支援ECU20は、車両の走行速度が規定走行速度を超えている場合には、ドライバが飲酒している可能性がある状態Ccであることを設定する(S209)。一方、運転支援ECU20は、車両の走行速度が規定走行速度を超えていない場合には、ステップ210の処理に進む。
【0044】
次に、運転支援ECU20は、ドライバによるアクセルペダル、ブレーキペダル、ハンドルなどの操作速度が操作予測データに登録された正常状態での標準的な操作速度よりも規定値(30%)を超えているか否かを判定する(S210)。ここで、運転支援ECU20は、ドライバによる操作速度が操作予測データに登録された操作速度よりも規定値を超えている場合には、ドライバが飲酒している可能性がある状態Cdであることを設定する(S211)。一方、運転支援ECU20は、ドライバによる操作速度が操作予測データに登録された操作速度よりも規定値を超えていない場合には、ステップ212の処理に進む。
【0045】
次に、運転支援ECU20は、ステップ205で状態Caが設定されている状況(条件1)であるか否かを判定する(S212)。ここで、運転支援ECU20は、条件1を満たす場合には、ドライバは運転に適さない生体能力低下状態であるため、生体能力低下状態に対応するための制御を行う(S213)。例えば、運転支援ECU20は、ドライバの粗雑な手動操作を抑制しつつ手動運転を許可する。また例えば、運転支援ECU20は、ドライバの手動操作による走行状態から自動運転ECU30の自動運転制御による走行状態に切り換えて、車両を病院等の目的地まで自動的に走行させる。また例えば、運転支援ECU20は、ドライバの手動操作による走行状態から自動運転ECU30の自動運転制御による走行状態に切り換えて、車両を緊急停止させる。一方、運転支援ECU20は、条件1を満たさない場合には、ステップ214の処理に進む。
【0046】
次に、運転支援ECU20は、ステップ205で状態Caが設定されておらず、ステップ207で状態Cbが設定されており、ステップ209,211で状態Ccまたは状態Cdの少なくとも一方が設定されている状況(条件2)であるか否かを判定する(S214)。ここで、運転支援ECU20は、条件2を満たす場合には、ドライバは運転に適さない飲酒状態であるため、飲酒状態に対応するための制御を行う(S215)。例えば、運転支援ECU20は、ドライバの手動操作による走行状態から自動運転ECU30の自動運転制御による走行状態に切り換えて、車両を緊急停止させる。また例えば、運転支援ECU20は、ドライバに対する警告処理を行う。一方、運転支援ECU20は、条件2を満たさない場合には、ステップ216の処理に進む。
【0047】
次に、運転支援ECU20は、ステップ205,207,209で状態Ca,Cb,Ccが設定されておらず、ステップ209で状態Cdが設定されている状況(条件3)であるか否かを判定する(S216)。ここで、運転支援ECU20は、条件3を満たす場合には、ドライバは飲酒状態ではないものの危険運転状態であるため、危険運転状態に対応するための制御を行う(S217)。例えば、運転支援ECU20は、ドライバに対する警告処理を行う。一方、運転支援ECU20は、条件3を満たさない場合には、ドライバは正常状態であるため、処理を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置を示す構成図である。
【図2】車両の運転支援装置による処理のフローチャート(前半部分)である。
【図3】車両の運転支援装置による処理のフローチャート(後半部分)である。
【符号の説明】
【0049】
10…運転支援装置(ドライバ状態判別装置)、11…アクセルペダルセンサ、12…ブレーキペダルセンサ、13…操舵角センサ、14…周辺センサ、15…通信装置、20…運転支援ECU、21…操作予測部、22…操作遅れ検出部、23…操作速度検出部、24…ドライバ状態判別部、25…運転支援制御決定部、30…自動運転ECU、31…加減速制御機構、32…操舵制御機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの車両操作の反応遅れを検出する操作遅れ検出手段と、
ドライバの車両操作の速度を検出する操作速度検出手段と、
前記操作遅れ検出手段の検出結果および前記操作速度検出手段の検出結果の組合せに基づいてドライバの異常状態を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とするドライバ状態判別装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、前記操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、ドライバの生体能力低下状態を判別することを特徴とする請求項1に記載のドライバ状態判別装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、前記操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出される場合に、ドライバの飲酒状態を判別することを特徴とする請求項1または2に記載のドライバ状態判別装置。
【請求項4】
ドライバの車両操作の反応遅れを検出する操作遅れ検出手段と、
ドライバの車両操作の速度を検出する操作速度検出手段と、
前記操作遅れ検出手段の検出結果および前記操作速度検出手段の検出結果の組合せに応じた運転支援制御を決定する運転支援制御決定手段と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
前記運転支援制御決定手段は、ドライバの車両操作を抑制する運転抑制制御を行うものであり、前記操作遅れ検出手段によりドライバの車両操作の反応遅れが検出されると共に、前記操作速度検出手段によりドライバの車両操作の過剰速度が検出されない場合に、前記運転抑制制御における抑制度合いを低減することを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−37415(P2009−37415A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201105(P2007−201105)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】