説明

ナット検査装置

【課題】溶接ナットの座面に形成した溶接用凸部の良否を判定可能なナット検査装置を提供する。
【解決手段】溶接ナットNを座面が上向きの姿勢で送り出す振動フィーダ1と、振動フィーダ1から送り出された溶接ナットNを乗せて搬送するベルトコンベヤ2と、ベルトコンベヤ2で搬送される溶接ナットNの溶接用凸部nが通過する位置にレーザ光Lを照射する投光器3と、投光器3から照射されたレーザ光Lを検知する受光器4と、受光器4で検知したレーザ光Lの光量に基づいて溶接ナットNの溶接用凸部nの良否を判定する判定部5とを有する構成をナット検査装置に採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナットの座面に形成した凸部または凹部の良否を判定するナット検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接ナットは、座面に複数の溶接用凸部が形成され、この溶接用凸部を金属板に抵抗溶接して用いる。このとき、欠如した溶接用凸部があると、溶接ナットが傾いた姿勢で溶接され、溶接ナットにボルトを装着するのが難しくなる。また、溶接ナットが正常に溶接された場合であっても、溶接強度が低下して事故につながるおそれがある。
【0003】
一方、溶接ナットの溶接不良を検査する装置として、金属板に溶接した溶接ナットのねじ孔にテーパピンを挿入し、そのピンのテーパ面が溶接ナットに当接したときのテーパピンの位置を検出し、その検出した位置を、予め設定された基準値と比較して溶接ナットが傾いていないか検査する装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、この検査装置は、溶接ナットの傾きは検査することができるが、溶接ナットが傾かないで溶接された場合、溶接用凸部の欠如を検査することができない。このように溶接用凸部の欠如した溶接ナットが検査から漏れると、特に高い信頼性を必要とする自動車用部品では、重大な事故につながるおそれがある。そのため、ナットの座面に形成した凸部の良否を判定可能なナット検査装置が望まれていた。
【0005】
また、径方向に延びる溝を座面に形成したキャッスルナットも、座面の溝の深さが適正範囲から外れるとナットのゆるみ止め効果を十分に発揮せず、重大な事故につながるおそれがある。そのため、ナットの座面に形成した凹部の良否を判定可能なナット検査装置も望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2001−259856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、ナットの座面に形成した凸部または凹部の良否を判定可能なナット検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、座面に凸部または凹部を形成したナットを前記座面が上向きの姿勢で送り出す供給装置と、その供給装置から送り出されたナットを乗せて搬送するベルトコンベヤと、そのベルトコンベヤで搬送される前記ナットの凸部または凹部が通過する位置にレーザ光を照射する投光器と、その投光器から照射されたレーザ光を検知する受光器と、その受光器で検知したレーザ光の光量に基づいてナットの前記凸部または前記凹部の良否を判定する判定部とを有する構成をナット検査装置に採用した。
【0009】
このナット検査装置は、前記ベルトコンベヤの上方に、ベルトコンベヤの搬送方向に延びるスリットを形成するガイド部材を設け、前記ナットの外周に形成された互いに平行な面を前記スリットの縁で案内するようにすると好ましく、さらに、前記ガイド部材を、前記供給装置側の端から前記ベルトコンベヤの搬送方向に向かって次第に幅が狭くなるスリットを形成する姿勢矯正部と、その姿勢矯正部から前記ベルトコンベヤの搬送方向に連なって一定の幅のスリットを形成する姿勢保持部とで構成するとより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
このナット検査装置は、投光器が、ナットの凸部または凹部の通過する位置にレーザ光を照射するので、ナットの凸部または凹部の形状に応じて、受光器で検知するレーザ光の光量が変化する。そのため、受光器で検知するレーザ光の光量が、ナットの凸部または凹部の形状の良否によって差を生じ、その差によりナットの凸部または凹部の良否を判定することができる。
【0011】
さらに、前記ベルトコンベヤの上方に、ベルトコンベヤの搬送方向に延びるスリットを形成するガイド部材を設けたものは、前記ナットの外周に形成された互いに平行な面を前記スリットの縁で案内してナットの姿勢を一定にするので、座面の凸部または凹部が一定の姿勢でレーザ光を通過し、より安定した検査が可能である。
【0012】
さらに、前記ガイド部材を、前記供給装置側の端から前記ベルトコンベヤの搬送方向に向かって次第に幅が狭くなるスリットを形成する姿勢矯正部と、その姿勢矯正部から前記ベルトコンベヤの搬送方向に連なって一定の幅のスリットを形成する姿勢保持部とで構成したものは、供給装置が送り出したナットの姿勢を姿勢矯正部で矯正するので、供給装置が送り出したナットの姿勢がばらついているときにも、安定した検査を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、この発明のナット検査装置の実施形態を示す。このナット検査装置は、溶接ナットNの座面に形成した溶接用凸部nの検査装置であり、ナットNを送り出す振動フィーダ1と、振動フィーダ1から送り出されたナットNを乗せて搬送するベルトコンベヤ2と、レーザスリット光Lを照射する投光器3と、投光器3から照射されたレーザスリット光Lを検知する受光器4と、受光器4で検知したレーザスリット光Lの光量に基づいてナットNの溶接用凸部nの良否を判定する判定部5とを有する。
【0014】
振動フィーダ1は、水平方向に対して傾斜したレール6と、レール6に振動を与える振動装置(図示せず)とからなる。ナットNは、レール6上面に形成された溝7に座面を上向きにした姿勢で並べて配置され、レール6の振動により溝7に沿って移動して順にベルトコンベヤ2に送り出される。このときナットNは、レンチをかける六角形の部分の互いに平行な面がレール6の溝7で案内され、一定の姿勢でベルトコンベヤ2に送り出される。
【0015】
ベルトコンベヤ2は、振動フィーダ1から送り出されたナットNを乗せる無端のベルト8と、ベルト8を駆動するドライブプーリ(図示せず)と、ベルト8に従動するアイドラプーリ9とを有する。アイドラプーリ9には回転計(図示せず)が取り付けられており、この回転計からの出力信号に基づいてベルト8上のナットNの移動量を検知可能となっている。また、ベルト8は、振動フィーダ1がナットNを送り出す速度よりも大きい速度で駆動され、振動フィーダ1から連続して送り出されるナットN同士の間に隙間を形成する。
【0016】
ベルトコンベヤ2の上方には、1対のガイドプレート10、10が固定して設けられている。各ガイドプレート10は、振動フィーダ1側の端からベルトコンベヤ2の搬送方向に向かって次第に幅が狭くなるスリット11aを形成する姿勢矯正部10aと、姿勢矯正部10aからベルトコンベヤ2の搬送方向に連なって一定の幅のスリット11bを形成する姿勢保持部10bとからなる。振動フィーダ1から送り出されてベルトコンベヤ2に乗り移ったナットNは、乗り移りの際に姿勢にばらつきを生じても、六角形の部分の互いに平行な面がスリット11aの縁で案内されて一定の姿勢に矯正され、その後、スリット11bの縁で案内されて姿勢が保持される。
【0017】
投光器3は、ベルトコンベヤ2上のナットNの溶接用凸部nが通過する位置にレーザスリット光Lを照射する。投光器3が照射したレーザスリット光Lは、受光器4で検知され、溶接ナットNの溶接用凸部nがレーザスリット光Lの位置を通過すると、受光器4で検知されるレーザスリット光Lの光量が変化する。
【0018】
判定部5は、アイドラプーリ9の回転計からの出力信号と、受光器4からの出力信号とに基づいて、図2に示すように、ナットNの移動に伴うレーザスリット光Lの光量の変化量wを演算する。光量の変化量wは、レーザスリット光Lの位置にナットNがないときに受光器4が検知する光量を基準とした光量の減少量である。
【0019】
つぎに、レーザスリット光Lの光量の変化量wが、予め設定したしきい値T1を何回超えるかを数え、しきい値T1を超える回数が良品のナットNの溶接用凸部nの個数に対応しているか否かを判定する。しきい値T1を超える回数が、良品のナットNの溶接用凸部nの個数に対応する回数よりも少なければ、溶接用凸部nが欠如していると考えられるので、溶接用凸部nの個数が不良であると判定する。
【0020】
さらに、レーザスリット光Lの光量の変化量wが、予め設定したしきい値T2を超えた量を積算し、その積算値(図2の斜線部分の面積)が、良品のナットNの溶接用凸部nの大きさに対応する範囲にあるか否かを判定する。積算値が、良品のナットNの溶接用凸部nの大きさに対応する範囲を下回っていれば、溶接用凸部nが良品よりも小さいと考えられるので、溶接用凸部nの大きさが不良であると判定する。同様に、積算値が、良品のナットNの溶接用凸部nの大きさに対応する範囲を上回っているときも、溶接用凸部nが良品よりも大きいと考えられるので、溶接用凸部nの大きさが不良であると判定する。
【0021】
このように、このナット検査装置を用いると、溶接ナットNを金属板に溶接する前に溶接ナットNの溶接用凸部nの個数を検査し、溶接用凸部nが欠如した溶接ナットNによる溶接不良を未然に防止することができる。さらに、溶接ナットNの溶接用凸部nの大きさも検査することができるので、溶接用凸部nの大きさの不良による溶接強度の低下も防止することができる。そのため、自動車用部品に使用する溶接ナットなど、特に高い信頼性を必要とする溶接ナットの信頼性を大幅に向上させることができる。
【0022】
また、ベルトコンベヤ2の上方に、ベルトコンベヤ2の搬送方向に延びるスリット11a、11bを形成するガイドプレート10を設けたので、溶接ナットNの溶接用凸部nが一定の姿勢でレーザスリット光Lの位置を通過し、検査がより安定する。
【0023】
また、ガイドプレート10の姿勢矯正部10aがナットNの姿勢を矯正するので、振動フィーダ1から送り出されたナットNの姿勢がばらついているときにも、安定した検査を行なうことができる。
【0024】
また、このナット検査装置を用いると、図3(a)に示す段付きナットDの段の高さdを検査することもできる。すなわち、レーザスリット光Lの光量の変化量wが、予め設定したしきい値T3を超えた量を積算し、その積算値(図3(b)の斜線部分の面積)が、良品の段付きナットDの段の高さdに対応する範囲にあるか否かを判定する。積算値が、良品の段付きナットDの段の高さdに対応する範囲を下回っていれば、段の高さdが良品よりも小さいと判定する。同様に、積算値が、良品の段付きナットDの段の高さdに対応する範囲を上回っているときは、段の高さdが良品よりも大きいと判定する。
【0025】
また、図4に示すように、径方向に延びる複数の溝mを座面に形成したキャッスルナットCも、図5に示すように、複数の対の投光器3と受光器4を溝mの方向に設置し、各受光器4で検知したレーザスリット光Lの光量に基づいて溝mの深さを検査することができる。
【0026】
上記実施形態では、溶接用凸部nの良否の判定に、受光器4で検知したレーザスリット光Lの光量の変化量wを用いることにより、投光器3以外の光源から受光器4に入る光の影響を打ち消し、検査精度を向上させているが、受光器4で検知される光量を直接用いてもよい。要は、受光器4で検知したレーザスリット光Lの光量に基づいて溶接用凸部nの良否を判定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明のナット検査装置の実施形態を示す斜視図
【図2】図1のナット検査装置の判定部の制御を説明する図
【図3】(a)は段付きナットの斜視図、(b)は(a)の段付きナットを図1のナット検査装置で検査するときの判定部の制御を説明する図
【図4】キャッスルナットの斜視図
【図5】図4のキャッスルナットをこの発明のナット検査装置で検査するときの投光器と受光器の配置例を示す平面図
【符号の説明】
【0028】
1 振動フィーダ
2 ベルトコンベヤ
3 投光器
4 受光器
5 判定部
10 ガイドプレート
10a 姿勢矯正部
10b 姿勢保持部
11a、11b スリット
N 溶接ナット
n 溶接用凸部
L レーザスリット光
D 段付きナット
d 段の高さ
C キャッスルナット
m 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面に凸部または凹部を形成したナットNを前記座面が上向きの姿勢で送り出す供給装置1と、その供給装置1から送り出されたナットNを乗せて搬送するベルトコンベヤ2と、そのベルトコンベヤ2で搬送される前記ナットNの凸部または凹部が通過する位置にレーザ光Lを照射する投光器3と、その投光器3から照射されたレーザ光Lを検知する受光器4と、その受光器4で検知したレーザ光Lの光量に基づいてナットNの前記凸部または前記凹部の良否を判定する判定部5とを有するナット検査装置。
【請求項2】
前記ベルトコンベヤ2の上方に、ベルトコンベヤ2の搬送方向に延びるスリット11a,11bを形成するガイド部材10を設け、前記ナットNの外周に形成された互いに平行な面を前記スリット11a,11bの縁で案内する請求項1に記載のナット検査装置。
【請求項3】
前記ガイド部材10を、前記供給装置1側の端から前記ベルトコンベヤ2の搬送方向に向かって次第に幅が狭くなるスリット11aを形成する姿勢矯正部10aと、その姿勢矯正部10aから前記ベルトコンベヤ2の搬送方向に連なって一定の幅のスリット11bを形成する姿勢保持部10bとで構成した請求項2に記載のナット検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−121022(P2007−121022A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311368(P2005−311368)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(392010050)株式会社ユタカ (13)
【Fターム(参考)】