説明

ナノ粒子アリピプラゾール製剤

本発明は、より高い生物学的利用能、より速やかな吸収速度、および治療効果のより速やかな発現を有する、ナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体を含む組成物および方法に関する。ナノ粒子アリピプラゾール組成物は、約2000 nm未満の平均有効粒度を有し、かつ精神疾患および精神障害を含む中枢神経系の疾患および障害の治療に有用な可能性があると考えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、精神疾患や精神障害などの中枢神経系の疾患および障害の治療に有用な化合物および組成物に関する。具体的には本発明は、約2000 nm未満の有効平均粒度を有するナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体を含む組成物に関する。本発明は、ナノ粒子アリピプラゾール製剤、ナノ粒子アリピプラゾール組成物の製造法、およびこのような組成物を使用する治療法にも関する。
【0002】
関連特許出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)項に従って、全体が参照により本明細書に組み入れられる、2005年9月15日に出願された米国仮出願第60/717,325号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景に関する以下の議論は、読み手が本発明を理解することを助けるために提供されるだけであり、本発明に対する先行技術を記載または構成することを承認しているわけではない。
【0004】
A. アリピプラゾールに関する背景
現在、CNSが関与する精神疾患および精神障害を治療するための薬物を含む、中枢神経系(「CNS」)の障害の治療に使用可能な多くの薬物が存在する。これらのなかには、抗精神病薬として知られる薬物がある。抗精神病薬は、統合失調症、双極性障害、および統合失調症様疾患などの重篤な精神疾患の治療に使用されることがしばしばある。
【0005】
抗精神病薬は、基礎となる作用機序を元に、定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬、およびドーパミン部分アゴニストと呼ばれる新規カテゴリーの薬物の3つの広いカテゴリーに分類可能である。
【0006】
多くの抗精神病薬は一般に、脳内のドーパミンD2受容体をブロックすることで作用する。このような受容体は、ドーパミン経路における重要な連結役であり、脳内のドーパミンレベルの増減を担っている。カテコールアミンの神経伝達物質であるドーパミンは、中枢神経系の正常な機能に不可欠なことが報告されており;例えば、脳内ドーパミン濃度の低下はパーキンソン病と関連づけられている一方で、過剰なドーパミンは、統合失調症などの疾患を引き起こす場合がある。
【0007】
フェノチアジン(例えば、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、およびプロクロルペラジン)などの定型抗精神病薬はD2受容体をブロックするが、比較的非特異的であり、かつ他の生化学経路(例えば、黒質線条体、隆起漏斗系、および中脳皮質系の経路)における受容体もブロックする。非定型抗精神病薬(例えば、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、およびジプラシドン)は、典型抗精神病薬よりやや識別力が高いと考えられており、D2受容体に加えて、非定型薬は、5HT2A,C受容体や5HT1A受容体などのセロトニン受容体をブロックすることが報告されている。
【0008】
アリピプラゾールなどのドーパミン部分アゴニストの抗精神病薬は時に、非定型抗精神病薬と呼ばれることがある。これらは、ドーパミン受容体とセロトニン受容体の両方にも作用するという点で非定型抗精神病薬と極めて似ている。アリピプラゾールは、その抗精神病作用に主に、ドーパミンD2受容体における部分アゴニズムによって関与するようである。D2受容体におけるこの部分アゴニズムは、それぞれ統合失調症患者の脳の中脳辺縁領域や中脳皮質領域など、ドーパミン活性が高いまたは低い可能性のある領域におけるドーパミン作動活性を調節すると報告されている。D2受容体における部分アゴニスト活性に加えて、アリピプラゾールは、5-HT1A受容体における部分アゴニストでもあり、他の非定型抗精神病薬と同様、アリピプラゾールは、5-HT2A受容体においてアンタゴニストプロファイルも示す。アリピプラゾールは、ヒスタミン受容体およびαアドレナリン受容体に対して中程度の親和性も有するが、コリン作動性ムスカリン受容体に対しては感知可能な親和性は有さない。
【0009】
向精神薬としても知られるアリピプラゾールは、統合失調症、ならびに双極性障害に伴う急性躁病エピソードおよび混合エピソードの治療に適している。
【0010】
化学的には7-[4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]ブトキシ]-3,4-ジヒドロカルボスチリルとして知られるアリピプラゾールは、C23H27Cl2N3O2の一般式で表され、分子量は448.38である。アリピプラゾールの化学構造を以下に示す。

【0011】
アリピプラゾールは、商品名Abilify(登録商標)として米国で市販されており、Bristol-Myers Squibb(ニュージャージー州プリンストン)によって製造・販売され、かつOtsuka America Pharmaceutical社によって販売されている。これは、用量強度が1錠あたり5 mg、10 mg、15mg、および30 mgである経口投与用の錠剤の形状として入手可能である。錠剤の非活性成分は、乳糖一水和物、コーンスターチ、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびステアリン酸マグネシウムを含む。着色剤は、酸化鉄(黄または赤)、およびFD&C Blue No.2アルミニウムレーキを含む。
【0012】
一般にアリピプラゾールは、初回に毎日10 mgまたは15 mgの量で1日1回のスケジュールで食事の前後に関係なく投与される。アリピプラゾールは系統的に評価されており、10 mg/日〜30 mg/日の用量範囲で有効なことが報告されている。投与レジメンにおける上昇は、定常状態の血漿レベルに達するのに必要な時間である少なくとも2週間後に行われる。
【0013】
アリピプラゾールは線形動態を示し、排出半減期は約75時間であり、定常状態の血漿濃度には約14日で達する。経口投与後の3〜5時間以内にCmaxに達し、経口錠剤の生物学的利用能は約90%ほどである。
【0014】
アリピプラゾールおよびその製剤については例えば、Banno et al.による「Pharmaceutically Useful Carbostyril Derivatives」と題する米国特許第4,734,416号、Oshiro et al.による「Carbostyril Derivatives」と題する米国特許第5,006,528号、およびKimura et al.による「Medicinal Compositions」と題する米国特許第6,884,768号、Parab et al.による「Aripiprazole Oral Solution」と題する米国特許第6,977,257号、およびTsujimoriによる「Process for Preparing Aripiprazole」と題する米国特許第6,995,264号に記載されている。
【0015】
アリピプラゾールの従来の製剤を含む従来の現在入手可能な抗精神病薬は、望ましくない副作用と関連することが多く、その一部は重度で消耗性の場合がある。例えば多くの患者に、薬剤誘発性のパーキンソニズム、急性ジストニア反応、アカシジア、遅発性ジスキネジア、および遅発性ジストニアを含む、薬剤誘発性の錐体外路症状が見られる(例えば、錐体外路症状を評価するための周知のスケールである「The Simpson Angus Scale」および/または「Barnes Akathisia Rating Scale」、および「Abnormal Involuntary Movement Scale(AIMS)」によって判定)。しかし残念なことに、CNS障害(例えば統合失調症や双極性障害)の治療に利用可能な大半の薬物は、疾患の症状に有益な効果をもたらす投与量で使用時に、このような錐体外路の副作用を生じやすい。加えて、多くの薬物が鎮静作用と関連するか、または望ましくない影響を疾患の情動性症状に及ぼし、例えば鬱病の原因となる場合がある。また場合によっては、薬物の長期使用は、上述の遅発性ジスキネジアや遅発性ジストニアなどの不可逆的な状態を招く。
【0016】
さらに、多くの患者は現行の薬物療法には反応しないか、または部分的にしか反応せず、このような部分的反応者もしくは不応者の推定値は、治療を受けた者の40%〜80%で変動する。かなりの数の患者における有害事象の重症度、有効性の不在、およびこれらの薬物を必要とする患者の多くにおいて、それらの精神機能が十分制御されていないという事実は、患者コンプライアンスの不良、ひいては治療効果の低減につながることがしばしばある。
【0017】
したがって、精神症状を制御して除去し、副作用はわずかであるか、または全くなく、かつ患者のコンプライアンスを高めるように製剤化可能な抗精神病薬の製剤が必要とされている。
【0018】
B. ナノ粒子組成物に関する背景
米国特許第5,145,684号(「'684特許」)に最初に記載されたナノ粒子組成物は、薬物の表面から吸収されるか、または表面に結合する、非架橋型の表面安定剤を有する、溶解度の低い治療剤または診断剤の粒子を含む。'684特許では、このようなナノ粒子活性作用物質組成物の作製法についても記載されているが、ナノ粒子アリピプラゾールを含む組成物については記載されていない。ナノ粒子活性作用物質組成物の作製法は例えば、いずれも「Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,518,187号および第5,862,999号;「Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,718,388号;ならびに「Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles」と題する米国特許第5,510,118号に記載されている。
【0019】
ナノ粒子活性作用物質組成物は例えば、全てが特異的に参照により組み入れられる、「Use of Ionic Cloud Point Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization」と題する米国特許第5,298,262号;「Method to Reduce Particle Size Growth During Lyophilization」と題する第5,302,401号;「X-Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging」と題する第5,318,767号;「Novel Formulation For Nanoparticulate X-Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non-ionic Surfactants」と題する第5,326,552号;「Method of X-Ray Imaging Using Iodinated Aromatic Propanedioates」と題する第5,328,404号;「Use of Charged Phospholipids to Reduce Nanoparticle Aggregation」と題する第5,336,507号;「Formulations Comprising Olin 10-G to Prevent Particle Aggregation and Increase Stability」と題する第5,340,564号;「Use of Non-Ionic Cloud Point Modifiers to Minimize Nanoparticulate Aggregation During Sterilization」と題する第5,346,702号;「Preparation and Magnetic Properties of Very Small Magnetic-Dextran Particles」と題する第5,349,957号;「Use of Purified Surface Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization」と題する第5,352,459号;いずれも「Surface Modified Anticancer Nanoparticles」と題する第5,399,363号および第5,494,683号;「Water Insoluble Non-Magnetic Manganese Particles as Magnetic Resonance Enhancement Agents」と題する第5,401,492号;「Use of Tyloxapol as a Nanoparticulate Stabilizer」と題する第5,429,824号;「Method for Making Nanoparticulate X-Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non-ionic Surfactants」と題する第5,447,710号;「X-Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging」と題する第5,451,393号:「Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X-Ray Contrast Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays」と題する第5,466,440号;「Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation」と題する第5,470,583号;「Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbamic Anhydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,472,683号;「Nanoparticulate Diagnostic Dimers as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,500,204号;「Nanoparticulate NSAID Formulations」と題する第5,518,738号;「Nanoparticulate Iododipamide Derivatives for Use as X-Ray Contrast Agents」と題する第5,521,218号;「Nanoparticulate Diagnostic Diatrizoxy Ester X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,525,328号;「Process of Preparing X-Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles」と題する第5,543,133号;「Surface Modified NSAID Nanoparticles」と題する第5,552,160号;「Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids」と題する第5,560,931号;「Polyalkylene Block Copolymers as Surface Modifiers for Nanoparticles」と題する第5,565,188号;「Sulfated Non-ionic Block Copolymer Surfactant as Stabilizer Coatings for Nanoparticle Compositions」と題する第5,569,448号;「Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids」と題する第5,571,536号;「Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carboxylic Anydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,573,749号;「Diagnostic Imaging X-Ray Contrast Agents」と題する第5,573,750号;「Redispersible Nanoparticulate Film Matrices With Protective Overcoats」と題する第5,573,783号;「Site-specific Adhesion Within the GI Tract Using Nanoparticles Stabilized by High Molecular Weight、Linear Poly(ethylene Oxide) Polymers」と題する第5,580,579号;「Formulations of Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays」と題する第5,585,108号;「Butylene Oxide-Ethylene Oxide Block Copolymers Surfactants as Stabilizer Coatings for Nanoparticulate Compositions」と題する第5,587,143号;「Milled Naproxen with Hydroxypropyl Cellulose as Dispersion Stabilizer」と題する第5,591,456号;「Novel Barium Salt Formulations Stabilized by Non-ionic and Anionic Stabilizers」と題する第5,593,657号;「Sugar Based Surfactant for Nanocrystals」と題する第5,622,938号;「Improved Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X-Ray Contrast Agents and Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents」と題する第5,628,981号;「Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbonic Anhydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,643,552号;「Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する第5,718,388号;「Nanoparticles Containing the R(-)Enantiomer of Ibuprofen」と題する第5,718,919号:「Aerosols Containing Beclomethasone Nanoparticle Dispersions」と題する第5,747,001号;「Reduction of Intravenously Administered Nanoparticulate Formulation Induced Adverse Physiological Reactions」と題する第5,834,025号;「Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus (HIV) Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers」と題する第6,045,829号:「Methods of Making Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus (HIV) Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers」と題する第6,068,858号;「Injectable Formulations of Nanoparticulate Naproxen」と題する第6,153,225号;「New Solid Dose Form of Nanoparticulate Naproxen」と題する第6,165,506号;「Methods of Treating Mammals Using Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus(HIV) Protease Inhibitors」と題する第6,221,400号;「Nebulized Aerosols Containing Nanoparticle Dispersions」と題する第6,264,922号;「Methods for Preventing Crystal Growth and Particle Aggregation in Nanoparticle Compositions」と題する第6,267,989号;「Use of PEG-Derivatized Lipids as Surface Stabilizers for Nanoparticulate Compositions」と題する第6,270,806号;「Rapidly Disintegrating Solid Oral Dosage Form」と題する第6,316,029号;「Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」と題する第6,375,986号;「Bioadhesive Nanoparticulate Compositions Having Cationic Surface Stabilizers」と題する第6,428,814号;「Small Scale Mill」と題する第6,431,478号;「Methods for Targeting Drug Delivery to the Upper and/or Lower Gastrointestinal Tract」と題する第6,432,381号;「Apparatus for Sanitary Wet Milling」と題する米国特許第6,582,285号;「Nanoparticulate Dispersions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」と題する米国特許第6,592,903号;「Nanoparticulate Compositions Comprising Amorphous Cyclosporine」と題する第6,656,504号;「System and Method for Milling Materials」と題する第6,742,734号;「Small Scale Mill and Method Thereof」と題する第6,745,962号;「Liquid Droplet Aerosols of Nanoparticulate Drugs」と題する第6,811,767号;「Compositions Having a Combination of Immediate Release and Controlled Release Characteristics」と題する第6,908,626号;「Nanoparticulate Compositions Comprising Copolymers of Vinyl Pyrrolidone and Vinyl Acetate as Surface Stabilizers」と題する第6,969,529号;「System and Method for Milling Materials」と題する第6,976,647号;「Method of Using a Small Scale Mill」と題する第6,991,191号;にも記載されている。
【0020】
加えて、「Controlled Release Nanoparticulate Compositions」と題する米国特許出願公開第20020012675 A1号;「Nanoparticulate Fibrate Formulations」と題する米国特許出願公開第20050276974号;「Nanoparticulate Compositions Having a Peptide as a Surface Stabilizer」と題する米国特許出願公開第20050238725号;「Nanoparticulate Megestrol Formulations」と題する米国特許出願公開第20050233001号;「Compositions Comprising Antibodies and Methods of Using the Same for Targeting Nanoparticulate Active Agent Delivery」と題する米国特許出願公開第20050147664号;「Novel Metaxalone Compositions」と題する米国特許出願公開第20050063913号;「Novel Compositions of Sildenafil Free Base」と題する米国特許出願公開第20050042177号;「Gel Stabilized Nanoparticulate Active Agent Compositions」と題する米国特許出願公開第20050031691号;「Novel Glipizide Compositions」と題する米国特許出願公開第20050019412号;「Novel Griseofulvin Compositions」と題する米国特許出願公開第20050004049号;「Nanoparticulate Topiramate Formulations」と題する米国特許出願公開第20040258758号;「Liquid Dosage Compositions of Stable Nanoparticulate Active Agents」と題する米国特許出願公開第20040258757号;「Nanoparticulate Meloxicam Formulations」と題する米国特許出願公開第20040229038号;「Novel Fluticasone Formulations」と題する米国特許出願公開第20040208833号;「Compositions and Method for Milling Materials」と題する米国特許出願公開第20040195413号;「Solid Dosage Forms Comprising Pullulan」と題する米国特許出願公開第20040156895号;「Novel Nimesulide Compositions」と題する米国特許出願公開第20040156872号;「Novel Triamcinolone Compositions」と題する米国特許出願公開第20040141925号;「Novel Nifedipine Compositions」と題する米国特許出願公開第20040115134号;「Low Viscosity Liquid Dosage Forms」と題する米国特許出願公開第20040105889号;「Gamma Irradiation of Solid Nanoparticulate Active Agents」と題する米国特許出願公開第20040105778号;「Novel Benzoyl Peroxide Compositions」と題する米国特許出願公開第20040101566号;「Nanoparticulate Beclomethasone Dipropionate Compositions」と題する米国特許出願公開第20040057905号;「Nanoparticulate Compositions of Angiogenesis Inhibitors」と題する米国特許出願公開第20040033267号;「Nanoparticulate Sterol Formulations and Novel Sterol Combinations」と題する米国特許出願公開第20040033202号;「Nanoparticulate Nystatin Formulations」と題する米国特許出願公開第20040018242号;「Drug Delivery Systems and Methods」と題する米国特許出願公開第20040015134号;「Nanoparticulate Polycosanol Formulations & Novel Polycosanol Combinations」と題する米国特許出願公開第20030232796号;「Fast Dissolving Dosage Forms Having Reduced Friability」と題する米国特許出願公開第20030215502号;「Nanoparticulate Compositions Having Lysozyme as a Surface Stabilizer」と題する米国特許出願公開第20030185869号;「Nanoparticulate Compositions of Mitogen-Activated Protein(MAP) Kinase Inhibitors」と題する米国特許出願公開第20030181411号;「Compositions Having a Combination of Immediate Release and Controlled Release Characteristics」と題する米国特許出願公開第20030137067号;「Nanoparticulate Compositions Comprising Copolymers of Vinyl Pyrrolidone and Vinyl Acetate as Surface Stabilizers」と題する米国特許出願公開第20030108616号;「Nanoparticulate Insulin」と題する米国特許出願公開第20030095928号;「Method for High Through-put Screening Using a Small Scale Mill or Microfluidics」と題する米国特許出願公開第20030087308号;「Drug Delivery Systems & Methods」と題する米国特許出願公開第20030023203号;「System and Method for Milling Materials」と題する米国特許出願公開第20020179758号;、および「Apparatus for Sanitary Wet Milling」と題する米国特許出願公開第20010053664号は、ナノ粒子活性作用物質組成物について記載しており、かつ特異的に参照により組み入れられる。これらのいずれの参考文献でも、ナノ粒子アリピプラゾールの組成物については記載されていない。
【0021】
非晶質小粒子組成物は例えば、いずれも特異的に参照により本明細書に組み入れられる、「Particulate Composition and Use Thereof as Antimicrobial Agent」と題する米国特許第4,783,484号;「Method for Making Uniformly Sized Particles from Water-Insoluble Organic Compounds」と題する米国特許第4,826,689号;「Method for Making Uniformly-Sized Particles From Insoluble Compounds」と題する米国特許第4,997,454号;「Ultrasmall, Non-aggregated Porous Particles of Uniform Size for Entrapping Gas Bubbles Within and Methods」と題する米国特許第5,741,522号;および「Ultrasmall Porous Particles for Enhancing Ultrasound Back Scatter」と題する米国特許第5,776,496号に記載されている。
【0022】
アリピプラゾールは、精神疾患や精神障害などのCNS障害の治療に高い治癒効果を有する。しかしながら、有害な副作用の重症度、およびこれに伴う患者のコンプライアンスの問題のために、アリピプラゾールを必要とする治療における治療効果が損なわれる可能性がある。したがって当技術分野では、これらの問題、ならびに精神疾患および精神障害の治療におけるその使用と関連する他の問題を克服したアリピプラゾール組成物が必要とされている。高い生物学的利用能、高い溶解速度、少ない薬物投与量、軽度の有害副作用を示し、かつ、患者のコンプライアンスの問題を抑えるか、または除くように投与可能なアリピプラゾール製剤に関する組成物および方法は、こうした必要性を満たすと考えられる。
【発明の開示】
【0023】
発明の概要
本明細書に記載された組成物および方法は、約2000 nm未満の有効平均粒度を有するアリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体を含む組成物に関する。一般に組成物は、ナノ粒子アリピプラゾールの粒子、およびアリピプラゾール粒子の表面から吸収されるか、または表面に結合する少なくとも1種類の表面安定剤を含む。このようなナノ粒子は、結晶相、非晶質相、半結晶相、半非晶質相、またはこれらの混合物であってよい。
【0024】
加えて組成物は、1種類もしくは複数の表面安定剤を含みうる。例えば組成物は、少なくとも1種類の第1の表面安定剤、および少なくとも1種類の第2の表面安定剤を含みうる。例示的な表面安定剤は、1種類もしくは複数の陰イオン性表面安定剤、陽イオン性表面安定剤、非イオン性表面安定剤、両性イオン性表面安定剤、およびイオン性表面安定剤を含みうる。
【0025】
いくつかの態様では組成物は、1種類もしくは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、活性作用物質、またはこれらの組み合わせを追加的に含みうる。いくつかの態様では活性作用物質は、統合失調症、双極性障害、統合失調症様疾患、および関連状態の治療に有用な作用物質を含みうる。一例として活性作用物質は、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジンなどのフェノチアジン;オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、およびジプラシドンなどのブチロフェノン、ならびにこれらの組み合わせを含みうるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書に記載されたナノ粒子アリピプラゾール組成物は、投与量に対してまたはさまざまな形状での投与用に製剤化され得るが、いくつかの態様では、注射用の剤形が好ましい場合がある。例えば、筋肉内(IM)投与または皮下(SC)投与に適切なアリピプラゾール製剤が好ましい場合がある。いくつかの態様では、注射可能な組成物は、注射後にアリピプラゾールのデポ(depot)を形成するように製剤化され得る。この形状では、アリピプラゾールはほぼゼロ次の速度論に従って緩やかに(例えば定常速度で)デポ部位から、2週間〜24週間、2週間〜12週間、2週間〜6週間などの1週間を上回る期間を含むがこれらに限定されない任意の期間をかけて放出され得る。
【0027】
任意の薬学的に許容される投与剤形を利用することができるが、想定される投与剤形は、経口投与、肺投与、直腸投与、結腸投与、非経口投与、大槽内投与、膣内投与、腹腔内投与、眼投与、耳投与、局所投与、舌下投与、鼻投与、および局所投与用の製剤を含むが、これらに限定されない。投与剤形は、生体接着剤、液体分散剤、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム剤、凍結乾燥製剤、錠剤、およびカプセル剤を含んでよく、かつ投与剤形は、制御放出製剤、迅速溶解製剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、ならびに即時放出と制御放出の混合型製剤を含んでよい。これらの投与剤形の組み合わせも想定される。
【0028】
本明細書に開示されたナノ粒子アリピプラゾール組成物は、同じアリピプラゾールの非ナノ粒子組成物と比較して改善された薬物動態学的な特性を示すことも想定される。
【0029】
別の態様では、ナノ粒子アリピプラゾール組成物の薬物動態プロファイルは、摂食対象または絶食対象に投与された場合に実質的に同等であり得;他の態様では、ナノ粒子アリピプラゾール組成物は、摂食対象または絶食対象に投与された場合に生物学的に同等でありうる。
【0030】
加えて、約2000 nm未満の有効平均粒度を有するナノ粒子アリピプラゾール組成物の作製に関連する方法を開示する。一例として方法は、アリピプラゾールの粒子に少なくとも1種類の表面安定剤を、約2000 nm未満の有効平均粒度を有するナノ粒子アリピプラゾール組成物を提供するのに十分な時間および条件で接触させる段階を含みうるが、これに限定されない。いくつかの方法では、接触させる段階は例えば、ミル粉砕、均質化、凍結、鋳型エマルジョン技術、沈殿、超臨界流体法、またはこれらの組み合わせを含みうる。
【0031】
例えば、対象における疾患、障害、症状、または状態の治療もしくは予防にナノ粒子アリピプラゾール製剤を使用する方法も開示する。一例として組成物は、精神疾患や精神障害などの中枢神経系の疾患または障害の治療に使用可能であるが、これに限定されない。例示的な精神疾患および精神障害は、統合失調症、双極性障害、統合失調症様疾患、ならびに関連状態を含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では関連状態は、薬剤誘発性のパーキンソニズム、急性ジストニア反応、アカシジア、遅発性ジスキネジア、および遅発性ジストニアなどがあるがこれらに限定されない薬剤誘発性の錐体外路症状を含みうる。
【0032】
例示的な治療法は、アリピプラゾールまたはその誘導体もしくは塩、および約200 nm未満の有効平均粒度を有する少なくとも1種類の表面安定剤を含む安定なナノ粒子アリピプラゾール組成物を対象に投与する段階を含みうる。いくつかの態様では対象は、精神疾患または精神障害などの中枢神経系の障害であると診断されていてよい。他の態様では組成物は、精神疾患や精神障害などのCNSの疾患または障害を示す症状の治療に使用することができる。
【0033】
本発明の前述の概要と、本発明の以下の詳細な説明はいずれも例示的かつ説明的であり、請求される本発明のさらなる詳細を提供することが意図される。他の目的、利点、および新しい特徴は、本発明の以下の詳細な記載から、当業者に容易に明らかとなる。
【0034】
発明の詳細な説明
A. ナノ粒子アリピプラゾール組成物
本明細書に記載されたナノ粒子組成物は、アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体などの抗精神病薬、および同薬物の表面に結合するか、または表面から吸収される少なくとも1種類の表面安定剤を含む。いくつかの態様では、平均有効粒度は約2000 nm未満でありうる。
【0035】
'684特許で説明されておりかつ以下に詳細に記載されているように、表面安定剤と活性作用物質の全ての組み合わせが、安定なナノ粒子組成物を形成するわけではない。驚くべきことに、安定なナノ粒子アリピプラゾール製剤が作製可能なことが見出されている。
【0036】
非ナノ粒子アリピプラゾール組成物(例えば微結晶性または溶解状態の投与剤形)と比較して、本明細書に記載されたナノ粒子アリピプラゾール組成物の利点には以下が含まれうるが、これらに限定されない:(1)錠剤、または他の固体投与剤形のサイズが小さい;(2)同じ薬理効果を得るのに必要な薬物用量が少なく、したがって重度の副作用が少ない又はほとんど無い;(3)薬物動態プロファイルの改善;(4)生物学的利用能の上昇;(5)絶食状態に対して摂食状態で投与された場合に、ナノ粒子アリピプラゾール組成物の薬物動態プロファイルが実質的に同等である;(6)絶食状態に対して摂食状態で投与された場合に、ナノ粒子アリピプラゾール組成物が生物学的に同等である;(7)ナノ粒子アリピプラゾール組成物の溶解速度が速い;ならびに(8)CNSの疾患、障害、症状、もしくは状態の治療のためまたは抗精神病薬療法の副作用を治療するための他の活性作用物質と組み合わせた、ナノ粒子アリピプラゾール組成物の使用。
【0037】
本明細書に記載された組成物は、任意の薬学的に許容される投与剤形の投与用に製剤化可能である。しかしながら、いくつかの態様では、注射可能な投与剤形(筋肉内注射用または皮下注射用など)が、例えば薬物を連続的に徐々に放出可能なデポとして好ましい場合がある。想定される他の投与剤形は、非経口注射(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下)、固体、液体、生体接着剤、またはエアロゾル状による経口投与、膣内投与、鼻投与、直腸投与、眼投与、局所投与(粉末、軟膏、もしくはドロップ)、舌下投与、大槽内投与、腹腔内投与、または局所投与などを含むが、これらに限定されない。
【0038】
他の態様では好ましい投与剤形は、錠剤などの固体投与剤形でありうる。例示的な固体投与剤形は、錠剤、カプセル剤、サシェ剤、トローチ剤、粉末剤、丸剤、または顆粒剤を含むが、これらに限定されず、かつ固体投与剤形は例えば、迅速溶解投与剤形、制御放出投与剤形、凍結乾燥投与剤形、遅延放出投与剤形、徐放性投与剤形、パルス放出投与剤形、即時放出と制御放出の混合型投与剤形、またはこれらの組み合わせでありうる。
【0039】
本明細書に記載された方法および組成物は、集合的に担体と呼ばれる1種類もしくは複数の非毒性の生理学的に許容される担体、補助剤、またはビヒクルを含むナノ粒子アリピプラゾール組成物とも関連する。
【0040】
本発明は本明細書で、以下に記載され、かつ本出願の全体に記載された複数の定義を使用して説明される。
【0041】
本明細書で用いる「対象」という用語は、動物、好ましくはヒトまたは非ヒトを含む哺乳類を意味するように使用される。「患者」という用語および対象は互換的に使用されうる。
【0042】
本明細書で用いる「約2000 nm未満の有効平均粒度」という用語は、ナノ粒子アリピプラゾール粒子の少なくとも約50%(重量比で、または数もしくは体積による他の適切な測定法による)が例えば、流動場沈降分画法、光子相関分光法、光散乱法、ディスク遠心法、および当業者に既知の他の手法によって測定時に、約2000 nm未満のサイズを有することを意味する。
【0043】
本明細書で用いる「約」とは、当業者によって理解され、使用される文脈によってある程度変動する。仮に、使用される文脈において当業者に明らかでなく同用語が使用される場合、「約」は、特定の数値のプラスマイナス10%を意味する。
【0044】
安定なナノ粒子アリピプラゾールに関して本明細書で用いる「安定な」という用語は、1種類もしくは複数の以下のパラメータを意味するが、これらに限定されない:(1)粒子が、粒子間の引力のために評価可能なほどに凝集もしくは凝塊形成しないか、またはさもなくば経時的に粒度が有意に大きくならないこと;(2)粒子の物理的構造が非晶質相から結晶相への変換などによって経時的に変化しないこと;(3)粒子が化学的に安定なこと;および/または(4)アリピプラゾールが、本発明のナノ粒子調製においてアリピプラゾールの融点か、または融点以上の温度による加熱過程を受けていないこと。
【0045】
「従来の」または「非ナノ粒子」活性作用物質という用語は、可溶化されるか、または約2000 nmを上回る有効平均粒度を有する活性作用物質を意味する。本明細書で定義されるナノ粒子活性作用物質は一般に、約2000 nm未満の有効平均粒度を有する。
【0046】
本明細書で用いる「水に対する溶解度が低い薬物」という用語は、水に対する溶解度が約30 mg/ml未満、約20 mg/ml未満、約10 mg/ml未満、または約1 mg/ml未満である薬物を意味する。
【0047】
本明細書で用いる「治療的有効量」という用語は、治療を要する有意な数の対象に投与される薬物が特定の薬理反応を提供する薬物投与量を意味する。特定の状況で特定の対象に投与される治療的有効量の薬物は、そのような投与量が当業者によって治療的有効量であると思われても、本明細書に記載された状態/疾患の治療に必ずしも常に有効とは限らないことが特に重要である。
【0048】
本明細書で用いる「粒子」という用語は、サイズ、形状、または形態にかかわらず明瞭な粒子、ペレット、ビーズ、または顆粒の存在を特徴とする物品の状態を意味する。本明細書で用いる「多粒子(multiparticulate)」という用語は、サイズ、形状、または形態にかかわらず複数の明瞭なまたは凝集性の粒子、ペレット、ビーズ、顆粒、またはこれらの混合物を意味する。
【0049】
B. ナノ粒子アリピプラゾール組成物の好ましい特徴
1. 高い生物学的利用能
ナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体を含む本発明の組成物は、高い生物学的利用能を示すと考えられており、過去または従来のアリピプラゾール製剤と比較して必要な用量がより少ない。
【0050】
いくつかの態様では、ナノ粒子アリピプラゾール組成物は、哺乳類に投与されると、同じアリピプラゾールの非ナノ粒子投与剤形の場合より少ない投与量で治療結果を生じる。加えて、必要な用量がより少ないことは、従来の抗精神病薬組成物に関連する副作用の重症度、強度、または期間を低下させるか、またはゼロにする可能性がある。
【0051】
2. 優れた薬物動態プロファイル
本明細書に記載されたナノ粒子アリピプラゾール組成物は、哺乳類対象に投与された場合に、望ましい薬物動態プロファイルを示しうる。アリピプラゾール組成物の望ましい薬物動態プロファイルは好ましくは、以下を含むが、これらに限定されない:(1)投与後に哺乳類対象の血漿において分析した、好ましくは、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子製剤のCmaxより大きい、アリピプラゾールまたはその誘導体もしくは塩のCmax;および/または(2)投与後に哺乳類対象の血漿において分析した、好ましくは、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子製剤のAUCより大きい、アリピプラゾールまたはその誘導体もしくは塩のAUC;および/または(3)投与後に哺乳類対象の血漿において分析した、好ましくは、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子製剤のTmaxより小さい、アリピプラゾールまたはその誘導体もしくは塩のTmax。本明細書で用いる、望ましい薬物動態プロファイルとは、アリピプラゾールまたはその誘導体もしくは塩の初回量投与後に測定された薬物動態プロファイルである。
【0052】
1つの態様では、少なくとも1種類のナノ粒子アリピプラゾールまたはその誘導体もしくは塩を含む組成物は、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子製剤(例えばAbilify(登録商標))との比較薬物動態分析で、非ナノ粒子アリピプラゾール製剤が示すTmaxの約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または約5%以下のTmaxを示す。
【0053】
別の態様では、少なくとも1種類のナノ粒子アリピプラゾールまたはその誘導体もしくは塩を含む組成物は、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子製剤(例えばAbilify)との比較薬物動態分析で、非ナノ粒子アリピプラゾール製剤が示すCmaxより少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約1100%、少なくとも約1200%、少なくとも約1300%、少なくとも約1400%、少なくとも約1500%、少なくとも約1600%、少なくとも約1700%、少なくとも約1800%、または少なくとも約1900%大きいCmaxを示す。
【0054】
さらに別の態様では、少なくとも1種類のナノ粒子アリピプラゾールまたはその誘導体もしくは塩を含む組成物は、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子製剤(例えばAbilify)との比較薬物動態分析で、非ナノ粒子アリピプラゾール製剤が示すAUCより少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約225%、少なくとも約250%、少なくとも約275%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約750%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、または少なくとも約1200%大きいAUCを示す。
【0055】
3. 組成物を摂取した対象の摂食・絶食状態の影響を受けない、アリピプラゾール組成物の薬物動態プロファイル
いくつかの態様では、ナノ粒子アリピプラゾール組成物の薬物動態プロファイルは、組成物を摂取した対象の摂食状態または絶食状態に実質的に影響されない。これは、摂食状態と絶食状態におけるナノ粒子アリピプラゾール組成物の投与時に、薬物吸収量や薬物吸収速度にほとんど差がないか、または検出可能な差がないことを意味する。
【0056】
食物の影響を実質的に除く投与剤形の利点は対象にとっての利便性の向上を含むので、対象のコンプライアンスを高める。というのは対象は、食物とともに、または食物をとらない時間に用量を確実に摂取する必要がないからである。対象のコンプライアンスが低いと、薬物が処方される医学的状態の上昇が観察される可能性が高いために、このことは重要である。
【0057】
4.摂食状態と絶食状態で投与された場合のアリピプラゾール組成物の生物学的同等性
いくつかの態様では、絶食状態の対象へのナノ粒子アリピプラゾール組成物の投与は、摂食状態の対象への組成物の投与と生物学的に同等である。摂食状態と絶食状態で投与された場合のナノ粒子アリピプラゾール組成物の吸収に見られる差は好ましくは、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約3%未満である。
【0058】
いくつかの態様では本発明は、少なくとも1種類のナノ粒子アリピプラゾールを含む組成物を含み、このような組成物の絶食状態の対象への投与は、特に米国食品医薬品局および対応する欧州の規制機関(EMEA)によるCmaxおよびAUCに関するガイドラインによって定義される、摂食状態の対象への組成物の投与と生物学的に同等である。米国FDAのガイドラインでは、2つの製品または方法は、AUCおよびCmaxの90%信頼区間(CI)が0.80〜1.25の場合に生物学的に同等とされる(Tmaxの測定値は、規制目的の生物学的同等性に関しては重要ではない)。欧州EMEAのガイドラインに従って2つの化合物または投与状態間の生物学的同等性を示すためには、AUCの90% CIは0.80〜1.25でなければならず、Cmaxの90% CIは0.70〜1.43でなければならない。
【0059】
5.アリピプラゾール組成物の溶解プロファイル
ナノ粒子アリピプラゾール組成物は、予想外に劇的な溶解プロファイルを有すると考えられている。投与された活性作用物質は、速やかに溶解することが好ましい。というのは迅速な溶解は一般に、より迅速な作用発現、およびより大きな生物学的利用能につながるからである。加えて迅速な溶解速度は、薬物の有効性を高めると考えられる、吸収される薬物の用量を増やすことを可能とすると考えられる。アリピプラゾールの溶解プロファイルおよび生物学的利用能を改善するためには、100%に近いレベルに達するように薬物の溶解を高めることが有用であろう。
【0060】
本発明のアリピプラゾール組成物は好ましくは、約5分以内に組成物の少なくとも約20%が溶解する溶解プロファイルを有する。他の態様では、アリピプラゾール組成物の少なくとも約30%または少なくとも約40%が約5分以内に溶解する。さらに他の態様では、アリピプラゾール組成物の好ましくは少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%が約10分以内に溶解する。別の態様では、アリピプラゾール組成物の好ましくは少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%が20分以内に溶解する。
【0061】
いくつかの態様では、溶解は好ましくは、識別能のある媒体中で測定される。このような溶解媒体(dissolution medium)は、胃液中で極めて異なる溶解プロファイルを示す2種類の生成物に関して2つの極めて異なる溶解曲線を生じる;すなわち溶解媒体は、組成物のインビボにおける溶解を予測可能である。例示的な溶解媒体は、界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを0.025 Mで含む水性媒体である。溶解量は分光光度法で決定することができる。回転ブレード法(欧州薬局方)で溶解を測定することができる。
【0062】
6.本発明のアリピプラゾール組成物の再分散性
本明細書に記載されたアリピプラゾール組成物の追加的な特徴は、再分散したアリピプラゾール粒子の有効平均粒度が約2ミクロン未満となるような再分散を含みうる。投与時に本発明のアリピプラゾール組成物が、実質的にナノ粒子サイズまで再分散しない場合に、投与剤形が、アリピプラゾールをナノ粒子サイズに製剤化することでもたらされる利益を失う場合があることから、これは重要である。
【0063】
任意の理論に拘泥するわけではないが、ナノ粒子活性作用物質組成物は、活性作用物質の粒度が小さいことから利益を得ると考えられており;仮に活性作用物質が、投与時に小さな粒子サイズに再分散しないと、ナノ粒子系の極めて高い表面自由エネルギー、および自由エネルギーを全体的に低下させる熱力学的駆動力によって、「クランプ」すなわち凝集した活性作用物質粒子が形成される。このような凝集状粒子の形成によって、投与剤形の生物学的利用能は低下する可能性がある。
【0064】
さらに、本発明のナノ粒子アリピプラゾール組成物は、生体関連水性媒体中における再構成/再分散によって、再分散したアリピプラゾール粒子の有効平均粒度が約2ミクロン未満となることが示されるように、ヒトや動物などの哺乳類への投与時にナノ粒子アリピプラゾール粒子の劇的な再分散を示す。このような生体関連水性媒体は、媒体の生物学的重要性の基礎を形成する、望ましいイオン強度およびpHを示す任意の水性媒体であってよい。望ましいpHおよびイオン強度は、人体内に見られる代表的な生理学的な状態である。このような生体関連水性媒体は例えば、水、電解質水溶液、または任意の塩、酸、塩基の水溶液、または望ましいpHおよびイオン強度を示すこれらの組み合わせでありうる。生体関連媒体中におけるこのような再分散は、アリピプラゾール投与剤形のインビボにおける有効性を予測可能である。
【0065】
生体関連pHは当技術分野で周知である。例えば胃内では、pHの範囲は2よりやや低い(ただし典型的には1より大きい)値から最高4または5である。小腸内では、pHは4〜6の範囲をとる場合があり、結腸内では6〜8の範囲の場合がある。生体関連イオン強度も当技術分野で周知である。絶食状態の胃液のイオン強度は約0.1 Mであり、絶食状態の腸液のイオン強度は約0.14である。これについては例えば、Lindahl et al.、「Characterization of Fluids from the Stomach and Proximal Jejunum in Men and Women」、Pharm. Res., 14(4): 497-502(1997)を参照されたい。
【0066】
試験溶液のpHおよびイオン強度は、特定の化学物質の含有量より重要であると考えられている。したがって、適切なpHおよびイオン強度の値は、強酸、強塩基、塩、1つまたは複数の共役酸-塩基の対(すなわち弱酸と、対応する弱酸の塩)、一塩基および多塩基の電解質などの数多くの組み合わせによって得られる。
【0067】
代表的な電解質溶液は、濃度が約0.001〜約0.1 NのHCl溶液、および濃度が約0.001〜約0.1 MのNaCl溶液、およびこれらの混合物でありうるが、これらに限定されない。例えば電解質溶液は、約0.1 Nまたはこれ未満のHCl、約0.01 Nまたはこれ未満のHCl、約0.001 Nまたはこれ未満のHCl、約0.1 Mまたはこれ未満のNaCl、約0.01 Mまたはこれ未満のNaCl、約0.001 Mまたはこれ未満のNaCl、およびこれらの混合物でありうるが、これらに限定されない。近位消化管のpHおよびイオン強度の条件のために、このような電解質溶液のなかで0.01 MのHClおよび/または0.1 MのNaClが、絶食時のヒトの最も代表的な生理学的条件である。
【0068】
0.001 N HCl、0.01 N HCl、および0.1 N HClの電解質濃度はそれぞれ、pH 3、pH 2、およびpH 1に対応する。したがって、0.01 NのHCl溶液は、胃内に見られる典型的な酸性状態を再現する。0.1 MのNaCl溶液は、消化器液を含む体の全体で見出されるイオン強度条件の妥当な近似を提供するが、0.1 Mより高い濃度を使用して、ヒトのGI管内の摂食時状態を再現することができる。
【0069】
望ましいpHおよびイオン強度を示す、塩、酸、塩基、またはこれらの組み合わせの例示的な溶液は、リン酸/リン酸塩+ナトリウム、カリウム、およびカルシウムの塩化物塩、酢酸/酢酸塩+ナトリウム、カリウム、およびカルシウムの塩化物塩、炭酸/重炭酸塩+ナトリウム、カリウム、およびカルシウムの塩化物塩、ならびにクエン酸/クエン酸塩+ナトリウム、カリウム、およびカルシウムの塩化物塩を含むが、これらに限定されない。
【0070】
他の態様では、再分散したアリピプラゾール粒子(例えば、水中、生体関連媒体中、または任意の他の適切な分散媒中に再分散した粒子)は、光散乱法、顕微鏡法、または他の適切な方法で測定時に、約2000 nm未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約900 nm未満、約800 nm未満、約700 nm未満、約600 nm未満、約500 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約200 nm未満、約150 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、または約50 nm未満の有効平均粒度を有する。
【0071】
さらに他の態様では、再分散したアリピプラゾール粒子は、哺乳類への投与時に、粒子が、光散乱法、顕微鏡法、または他の適切な方法で測定時に、約2000 nm未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約900 nm未満、約800 nm未満、約700 nm未満、約600 nm未満、約500 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約200 nm未満、約150 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、または約50 nm未満の有効平均粒度を有するように再分散する。
【0072】
再分散性は、当技術分野で周知の任意の適切な手段で検討することができる。これについては例えば、「Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」と題する米国特許第6,375,986号の実施例の項を参照されたい。
【0073】
7. 他の活性作用物質とともに使用されるアリピプラゾール組成物
ナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体を含む組成物には追加的に、精神疾患や精神障害などのCNSの疾患または障害の治療に有用な1種類もしくは複数の化合物を含めることができる。加えて、有害な抗精神病薬の副作用の治療に有用な1種類もしくは複数の化合物も想定される。数種類の化合物の例は、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジンなどの1種類もしくは複数のフェノチアジン;オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、およびジプラシドンなどのブチロフェノンを含むが、これらに限定されない。
【0074】
C. ナノ粒子アリピプラゾール組成物
本発明は、アリピプラゾール粒子および少なくとも1種類の表面安定剤を含む組成物を提供する。表面安定剤は好ましくは、アリピプラゾール粒子の表面から吸収されるか、または表面に結合する。いくつかの態様では、表面安定剤は好ましくは、ナノ粒子アリピプラゾール粒子の表面に物理的に吸着するか、または表面に結合するが、アリピプラゾール粒子と、またはそれ自体では化学的に反応しない。他の態様では、個別に吸収された表面安定剤の分子は本質的に分子間の架橋結合を含まない。
【0075】
本発明はアリピプラゾール組成物とともに、担体と総称される1種類もしくは複数の非毒性の生理学的に許容される担体、補助剤、またはビヒクルも含む。組成物は、非経口注射(例えば、静脈内、筋肉内、もしくは皮下)、固体、液体、またはエアロゾルの形状での経口投与、膣内投与、鼻投与、直腸投与、眼投与、局所投与(粉末、軟膏、もしくはドロップ)、舌下投与、大槽内投与、腹腔内投与、局所投与、または生体接着剤投与などに製剤化可能である。
【0076】
1. アリピプラゾール粒子
本発明の組成物は、アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体の粒子を含む。粒子は、結晶相、半結晶相、非晶質相、半非晶質相、またはこれらの組み合わせでありうる。
【0077】
2. 表面安定剤
アリピプラゾールに対する表面安定剤の選択は重要であり、望ましい剤形を実現するためには、広範囲に及ぶ実験を必要とする。したがって本発明は、安定化されたナノ粒子アリピプラゾール組成物が作製可能であるという驚くべき発見に関する。
【0078】
複数の表面安定剤の組み合わせが本発明で使用可能である。本発明で使用可能な有用な表面安定剤は、既知の有機および無機の薬学的賦形剤を含むが、これらに限定されない。このような賦形剤は、さまざまなポリマー、低分子量オリゴマー、天然物、および界面活性剤を含む。表面安定剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、イオン性、および両性イオン性の界面活性剤を含む。
【0079】
表面安定剤の代表例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(現在はヒプロメロースとして知られる)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000などのマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween 20(登録商標)やTween 80(登録商標)などの市販のTweens(登録商標)(ICI Speciality Chemicals));ポリエチレングリコール(例えば、Carbowaxs 3550(登録商標)および934(登録商標)(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、酸化エチレンおよびホルムアルデヒドを含む4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)、およびトライトン(triton)としても知られる)、ポロキサマー(例えば、酸化エチレンと酸化プロピレンのブロック共重合体であるPluronic F68(登録商標)およびF108(登録商標));ポロキサミン(例えば、エチレンジアミンへの酸化プロピレンおよび酸化エチレンの逐次付加に由来する四官能性のブロック共重合体であるPoloxamine 908(登録商標)としても知られるTetronic 908(登録商標)(BASF Wyandotte Corporation, Parsippany, NJ.);Tetronic 1508(登録商標)(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、スルホン酸アルキルアリールポリエーテルであるTritons X-200(登録商標)(Rohm and Haas);ステアリン酸ショ糖とジステアリン酸ショ糖の混合物であるCrodestas F-110(登録商標)(Croda Inc.);Olin-10G(登録商標)または界面活性剤10-G(登録商標)(Olin Chemicals, Stamford, CT)としても知られるp-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール);Crodestas SL-40(登録商標)(Croda, Inc.);ならびにC18H37CH2(CON(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、リゾチーム、ビニルピロリドンと酢酸ビニルのランダム共重合体などを含む。
【0080】
有用な陽イオン性表面安定剤の例は、ポリマー、生体高分子、多糖類、セルロース誘導体、アルギン酸塩、リン脂質、および両性イオン性安定剤などの非ポリマー化合物、ポリ-n-メチルピリジニウム、アンスリルピリジニウムクロリド、陽イオン性リン脂質、キトサン、ポリリシン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、ならびにポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートのジメチル硫酸塩を含むが、これらに限定されない。
【0081】
他の有用な陽イオン性安定剤は、陽イオン性脂質、スルホニウム、ホスホニウム、ならびにステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリドブロミド、N-アルキル(C12-18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C14-18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N-アルキルおよび(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル-トリメチルアンモニウム塩、およびジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、および/またはエトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、およびドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12, C15, C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、ハロゲン化アルキルジメチルアンモニウム、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(ALIQUAT 336(商標))、POLYQUAT 10(商標)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミドなどの四級アンモニウム化合物、コリンエステル(脂肪酸のコリンエステルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物(塩化ステアリルトリモニウムや塩化ジ-ステアリルジモニウムなど)、セチルピリジニウムブロミドまたはクロリド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハライド塩、MIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)(Alkaril Chemical Company)、アルキルピリジニウム塩;アルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、ポリエチレンポリアミン、N、N-ジアルキルアミノアルキルアクリレート、およびビニルピリジンなどのアミン、酢酸ラウリルアミン、酢酸ステアリルアミン、アルキルピリジニウム塩、およびアルキルイミダゾリウム塩などのアミン塩、ならびにアミンオキシド;イミドアゾリニウム塩;プロトン化四級アクリルアミド;ポリ[ジアリルジメチルアンモニウムクロリド]およびポリ-[N-メチルビニルピリジニウムクロリド]などのメチル化四級ポリマー;ならびにカチオン化グアーを含むが、これらに限定されない。
【0082】
このような例示的な陽イオン性表面安定剤、および他の有用な陽イオン性表面安定剤は、J. Cross and E. Singer, Cationic Surfactants: Analytical and Biological Evaluation(Marcel Dekker, 1994);P. and D. Rubingh(Editor), Cationic Surfactants: Physical Chemistry (Marcel Dekker, 1991);およびJ. Richmond, Cationic Surfactants: Organic Chemistry, (Marcel Dekker, 1990)に記載されている。非ポリマー性の表面安定剤は、塩化ベンザルコニウム、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物などの任意の非ポリマー化合物、陽イオン性有機金属化合物、四級亜リン酸化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシルアンモニウム化合物、化学式NR1R2R3R4(+)で表される一級アンモニウム化合物、二級アンモニウム化合物、三級アンモニウム化合物、および四級アンモニウム化合物である。式NR1R2R3R4(+)で表される化合物については、
(i)R1〜R4がCH3ではなく;
(ii)R1〜R4の1つがCH3であり;
(iii)R1〜R4の3つがCH3であり;
(iv)R1〜R4の全てがCH3であり;
(v)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4の1つが炭素原子7個以下のアルキル鎖であり;
(vi)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4の1つが、炭素原子19個以上のアルキル鎖であり;
(vii)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つが官能基C6H5(CH2)nであり(n>1);
(viii)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4の1つが少なくとも1個のヘテロ原子を含み;
(ix)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4の1つが少なくとも1個のハロゲンを含み;
(x)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4の1つが少なくとも1個の環状断片を含み;
(xi)R1〜R4の2つがCH3であり、かつR1〜R4の1つがフェニル環であり;または
(xii)R1〜R4の2つがCH3であり、かつR1〜R4の2つが純粋な脂肪族断片である。
【0083】
このような化合物は、塩化ベヘナルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベヘントリモニウム、塩化ラウラルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化セトリモニウム、フッ化水素酸セチルアミン、クロルアリルメテナミンクロリド(Quaternium-15)、ジステアリルジモニウムクロリド(Quaternium-5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド(Quaternium-14)、Quaternium-22、Quaternium-26、Quaternium-18ヘクトライト、塩酸ジメチルアミノエチルクロリド、塩酸システイン、ジエタノールアンモニウムPOE(10)オレチルエーテルリン酸、ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルエーテルリン酸、タロウアルコニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、塩化ステアラルコニウム、臭化ドミフェン、安息香酸デナトニウム、塩化ミリスタルコニウム、塩化ラウルトリモニウム、エチレンジアミンジヒドロクロリド、塩酸グアニジウム、塩酸ピリドキシン、塩酸イオフェタミン、塩酸メグルミン、メチルベンゼトニウムクロリド、ミトリモニウムブロミド、塩化オレイルトリモニウム、ポリクオタニウム-1、塩酸プロカイン、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトナイト、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオライド、タロウトリモニウムクロリド、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含むが、これらに限定されない。
【0084】
表面安定剤は市販されており、かつ/または当技術分野で既知の手法で調製することができる。これらの表面安定剤の多くは、既知の薬学的賦形剤であり、かつ特異的に参照により組み入れられる、米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association)と英国薬学会(The Pharmaceutical Society of Great Britain)の共同で刊行された、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(The Pharmaceutical Press, 2000)に詳細に記載されている。
【0085】
いくつかの態様では表面安定剤は、コポピドン(copovidone)(例えば、酢酸ビニルとビニルピロリドンのランダム共重合体であるPlasdone(登録商標) S630)、ならびにドキュセートナトリウムである。
【0086】
ポビドンポリマーは、注射可能なナノ粒子ベニジピン組成物の製剤化に有用な例示的な表面安定剤である。ポリビドン(polyvidon)(e)、ポリビドナム(povidonum)、PVP、およびポリビニルピロリドンとしても知られるポビドンポリマーは、Kollidon(登録商標)(BASF Corp.)およびPlasdone(登録商標)(ISP Technologies, Inc.)の商品名で販売されている。これらは、1-エテニル-2-ピロリジノンポリマーおよび1-ビニル-2-ピロリジノンポリマーの化学名を有する多分散系巨大分子である。ポビドンポリマーは、約10,000〜約700,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する一連の製品として商業的に製造されている。いくつかの態様では、好ましいポビドンポリマーの分子量は約40,000ダルトン未満であり;40,000ダルトンを上回るポリマーサイズは、身体からの除去が困難な場合があるので、哺乳類に投与される薬物化合物の表面修飾剤としては、それほど有用ではない可能性がある。
【0087】
ポビドンポリマーは例えば、以下の段階を含むレッペ(Reppe)反応によって作られる:(1)レッペブタジエン合成によって、アセチレンおよびホルムアルデヒドから1,4-ブタンジオールを得る段階;(2)1,4-ブタンジオールを銅上で200℃で脱水素化してγ-ブチロラクトンを形成させる段階;および(3)γ-ブチロラクトンをアンモニアと反応させてピロリドンを得る段階。続いてアセチレンで処理することで、ビニルピロリドンの単量体が得られる。重合は、H2OおよびNH3の存在下で加熱することで進む。The Merck Index, 10th Edition, pp.7581 (Merck & Co., Rahway, NJ, 1983)を参照されたい。
【0088】
ポビドンポリマーの製造過程によって、不均等な鎖長、ひいては異なる分子量の分子を含むポリマーが作られる。このような分子の分子量は、個々の特定の市販のグレードに関して、ほぼ平均か、または重み付けされた平均で変動する。ポリマーの分子量を直接決定することは困難なので、さまざまな分子量のグレードの分類に最も広く使用されている方法は、粘度測定に基づくK値による。さまざまなグレードのポビドンポリマーのK値は、平均分子量の関数であり、粘度測定で得られ、フィケンチャー(Fikentscher)の式に従って計算される。
【0089】
分子量の重量平均であるMwは、光散乱法などによって個々の分子の重量を測定する方法で決定される。表1に、いずれも可溶性の、いくつかの市販のポビドンポリマーの分子量データを示す。
【0090】
【表1】

*分子量が40,000ダルトンを上回るので、このポビドンポリマーは、非経口的に(すなわち注射によって)投与される薬物化合物の表面安定剤としての使用には適切でない可能性がある。
**Mvは粘度-平均分子量であり、Mnは数値-平均分子量であり、Mwは重量-平均分子量である。MwおよびMnは光散乱法および超遠心法によって決定され、Mvは粘度測定によって決定された。
【0091】
表1のデータを元に、注射用組成物に有用な可能性のある例示的な市販のポビドンポリマーは、Plasdone C-15(登録商標)、Kollidon 12 PF(登録商標)、Kollidon 17 PF(登録商標)、およびKollidon 25(登録商標)を含むが、これらに限定されない。
【0092】
3. 他の薬学的賦形剤
本発明の薬学的組成物は、1種類もしくは複数の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤を含んでもよい。このような賦形剤は当技術分野で既知である。
【0093】
充填剤の例は、乳糖一水和物、無水乳糖、およびさまざまなデンプンを含み;結合剤の例は、さまざまなセルロース、および架橋ポリビニルピロリドン、Avicel(登録商標) PH101、およびAvicel(登録商標) PH 102、微結晶セルロース、ならびにケイ化微結晶セルロース(ProSolv SMCC(商標))などの微結晶セルロースである。
【0094】
圧縮される粉末の流動性に作用する作用物質を含む適切な潤滑剤は、Aerosil(登録商標) 200などのコロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルを含む。
【0095】
甘味剤の例は、ショ糖、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテーム、およびアセスルファムなどの任意の天然または非天然の甘味剤を含む。香味剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、風船ガム香料、および果実フレーバーなどを含む。
【0096】
保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、ブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチルアルコールやベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール化合物、または塩化ベンザルコニウムなどの四級化合物を含む。
【0097】
適切な希釈剤は、微結晶セルロース、乳糖、第二リン酸カルシウム、糖類、および/または前述の任意の混合物などの薬学的に許容される不活性な充填剤を含む。希釈剤の例は、Avicel(登録商標) PH101やAvicel(登録商標) PH102などの微結晶セルロース;乳糖一水和物、無水乳糖、およびPharmatose(登録商標) DCL21などの乳糖;Emcompress(登録商標)などのリン酸水素二カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;ショ糖;およびグルコースを含む。
【0098】
適切な崩壊剤は、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および化工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロス-ポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、およびこれらの混合物を含む。
【0099】
緩衝剤の例は、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、および他の有機酸から作製された緩衝剤を含む。
【0100】
湿潤剤または分散剤の例は、天然のホスファチド、例えばレシチン、またはn-アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレン-オキシセタノール、または酸化エチレンと脂肪酸由来の部分エステルの縮合生成物、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどのヘキシトール、または酸化エチレンと脂肪酸由来の部分エステルの縮合生成物、ならびにヘキシトール無水物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートを含む。
【0101】
発泡剤の例は、有機酸および炭酸塩または重炭酸塩などの発泡性結合化合物(effervescent couple)を含む。適切な有機酸は例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸、ならびに無水物および酸性塩を含む。適切な炭酸塩および重炭酸塩は例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、炭酸L-リシン、および炭酸アルギニンを含む。または、発泡結合化合物の重炭酸ナトリウム成分のみが存在してもよい。
【0102】
4. ナノ粒子アリピプラゾールの粒度
本明細書に開示された組成物はナノ粒子アリピプラゾールを含み、ここで、アリピプラゾール粒子は、光散乱法、顕微鏡法、流動場沈降分画法、光子相関分光法、ディスク遠心法、または他の適切な方法で測定時に約2000 nm(すなわち2ミクロン)未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約900 nm未満、約800 nm未満、約700 nm未満、約600 nm未満、約500 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約200 nm未満、約150 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、または約50 nm未満の有効平均粒度を有しうる。
【0103】
「有効平均粒度が約2000 nm未満である」という用語は、重量比で(または体積や数などの他の適切な測定値で)少なくとも50%のアリピプラゾール粒子が、有効平均に満たない粒度を有すること、すなわち上記の手法で測定時に約2000 nm未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満などの粒度を有することを意味する。いくつかの態様では、アリピプラゾール粒子の少なくとも約70%、約90%、または約95%が、有効平均未満の粒度、すなわち約2000 nm未満、1900 nm、1800 nm、1700 nmなどの粒度を有する。他の態様では、同粒子の少なくとも約99%が、有効平均粒度に満たない粒度、すなわち約2000 nm未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満などの粒度を有する。
【0104】
本明細書で用いる、ナノ粒子アリピプラゾール組成物のD50の値は、重量比で(または体積や数などの他の適切な測定値で)50%未満のアリピプラゾール粒子が含まれる粒度である。同様にD90は、重量比で(または体積や数などの他の適切な測定値で)90%未満のアリピプラゾール粒子が含まれる粒度である。
【0105】
5. アリピプラゾールおよび表面安定剤の濃度
アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体と、1種類もしくは複数の表面安定剤の相対量は変動しうる。個々の成分の最適量は例えば、選択されるアリピプラゾールの種類、親水親油バランス(HLB)、融点、および安定剤の水溶液の表面張力などに依存する可能性がある。
【0106】
いくつかの態様では、アリピプラゾールの濃度は、他の賦形剤を含まないアリピプラゾールおよび少なくとも1種類の表面安定剤の全合計乾燥重量に基づき、重量比で約99.5%〜約0.001%、約95%〜約0.1%、または約90%〜約0.5%で変動しうる。他の態様では組成物は、重量比で約5%〜約50%の量で存在するアリピプラゾールを含んでよい。
【0107】
他の態様では、少なくとも1種類の表面安定剤の濃度は、他の賦形剤を含まないアリピプラゾールおよび少なくとも1種類の表面安定剤の全合計乾燥重量に基づき、重量比で約0.5%〜約99.999%、約5.0%〜約99.9%、または約10%〜約99.5%で変動しうる。他の態様では安定剤は、重量比で約0.1%〜約50%の量で存在してよい。
【0108】
6. 注射可能なナノ粒子アリピプラゾール製剤
いくつかの態様では、注射用のナノ粒子アリピプラゾール製剤が提供される。以下の例は、ナノ粒子注射可能な製剤の範囲を、いかなる点でも制限する意図はなく、むしろ本明細書に記載されたようにかつ当技術分野で既知の方法によって利用可能な、例示的な製剤を提供する。いくつかの態様では、注射可能な製剤は、低注射容量で高濃度の薬物を含んでよい。さらに作用持続期間は、粒度を、ひいては溶解度を操作することで制御可能であり、結果的に長期間、例えば2日以上、5日以上、7日以上、10日以上、または14日以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、もしくは4か月以上にわたって有効な血中レベルが得られる。説明目的の非制限的な組成物を重量比(%w/w)で以下に示す:
アリピプラゾール 5〜50%
安定剤ポリマー 0.1〜50%
保存剤(任意選択) 0.05〜0.25%
pH調整剤 pHは約6〜約7
注射用水 適量
【0109】
例示的な保存剤は、メチルパラベン(%w/wで約0.18%)、プロピルパラベン(%w/wで約0.02%)、フェノール(%w/wで約0.5%)、およびベンジルアルコール(最高2% v/v)を含む。例示的なpH調整剤は水酸化ナトリウムであり、例示的な液体担体は注射用滅菌水である。他の有用な保存剤、pH調整剤、および液体担体は、当技術分野で周知である。
【0110】
注射可能なアリピプラゾール製剤用の例示的な表面安定剤は、ポビドンポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロビドン(providone)、ポリビニルピロリドン(PVP)、Pluronic、Tween(登録商標)、PEG-リン脂質、およびこれらの混合物などの安定剤を含んでよいが、これらに限定されない。いくつかの態様では、分子量が約40,000ダルトン未満のポビドンなどの安定剤が好ましい場合がある。このような安定剤は、有効平均粒度を有効性に望ましい期間にわたって維持するのに十分な量で、アリピプラゾール粒子の表面に吸収される可能性がある。さらにナノ粒度は、IM経路またはSC経路のいずれかによる投与時に、望ましい血中レベルプロファイルおよび作用持続期間を得るように操作可能である。
【0111】
7. 例示的なナノ粒子アリピプラゾールの錠剤製剤
複数の例示的なアリピプラゾールの錠剤製剤を以下に示す。これらの例は、本発明の範囲をいかなる点においても制限する意図はなく、むしろ本明細書に記載された手順および当技術分野で既知の方法で利用可能な、アリピプラゾールの例示的な錠剤製剤を提供する。このような例示的な錠剤は、コーティング剤を含んでもよい。



【0112】
D. ナノ粒子アリピプラゾール製剤の作製法
本発明の別の局面は、ナノ粒子アリピプラゾール製剤の作製法を含む。ナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体の組成物は例えば、ミル粉砕、均質化、沈殿、凍結、鋳型エマルジョン技術、または超臨界流体法で作製することができる。ナノ粒子組成物の例示的な作製法は、いずれも特異的に参照により組み入れられる、'684特許、「Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,518,187号;「Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,718,388号;「Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,862,999号;「Co-Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers」と題する米国特許第5,665,331号;「Co-Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers」と題する米国特許第5,662,883号;「Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents」と題する米国特許第5,560,932号;「Process of Preparing X-Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles」と題する米国特許第5,543,133号;「Method of Preparing Stable Drug Nanoparticles」と題する米国特許第5,534,270号;「Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles」と題する米国特許第5,510,118号;「Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation」と題する米国特許第5,470,583号に記載されている。
【0113】
結果として得られるナノ粒子アリピプラゾール組成物は、注射可能な液体投与剤形に、デポとして、液体分散剤、制御放出剤形、固体投与剤形、凍結乾燥剤形、液体投与剤形として、エアロゾル、軟膏、クリーム剤、制御放出製剤、迅速溶解製剤、凍結乾燥製剤、錠剤カプセル剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、迅速放出と制御放出の混合型製剤などとして使用可能である。
【0114】
1. ナノ粒子アリピプラゾールの分散剤を得るためのミル粉砕
アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体をミル粉砕してナノ粒子分散剤を得る方法は、アリピプラゾール粒子を、アリピプラゾールの溶解度が低い液体分散媒中に分散させ、次に機械的な手段によって粉砕媒体の存在下で、アリピプラゾールの粒度を望ましい有効平均粒度に低減する段階を含む。分散媒は例えば、水、ベニバナ油、エタノール、t-ブタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサン、またはグリコールでありうる。いくつかの態様では、好ましい分散媒は水である。
【0115】
アリピプラゾール粒子は、粒度低下の前、最中、その後に、分散媒に添加可能な少なくとも1種類の表面安定剤の存在下で、粒度を低減することができる。液体分散媒は、生理学的pHで、例えば粒度低下過程中に約3.0〜約8.0の範囲内に維持可能であり;いくつかの態様ではpHの範囲は、より好ましくは、粒度低下過程中に約5.0〜約7.5の範囲内でありうる。
【0116】
希釈剤などの他の化合物を、粒度低下過程中にアリピプラゾール/表面安定剤組成物に添加することができる。分散液は連続的に、またはバッチモードで作製することができる。
【0117】
一例として、注射可能なナノ粒子アリピプラゾール製剤の調製法は、以下の段階を含むが、これらに限定されない:(1)アリピプラゾールを、これらに限定されないが、ポビドンポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルピロリドン(PVP)、Pluronic、Tween(登録商標)、PEG-リン脂質、および分子量が約40,000ダルトン未満のこれらの混合物のうち1つもしくは複数の安定剤などを含む、液体分散媒中に分散させる段階:;ならびに(2)アリピプラゾールの粒度を約1〜2 μm未満の有効平均粒度に機械的に低減する段階。いくつかの態様では、液体分散媒のpHは、粒度低下過程中に約3.0〜約8.0の範囲に維持可能であり;他の態様では、pHは約7.4に維持可能である。
【0118】
2. ナノ粒子アリピプラゾール組成物を得るための沈殿法
望ましいナノ粒子アリピプラゾール組成物を作製する別の方法は、ミクロ沈殿法(microprecipitation)である。これは、溶解度の低い活性作用物質の安定な分散液を、任意の微量の毒性溶媒または可溶化した重金属不純物を含まない1種類もしくは複数の表面安定剤、および1種類もしくは複数のコロイド状の安定性促進性の表面活性作用物質の存在下で調製する方法である。このような方法は例えば、以下の段階を含む:(1)アリピプラゾールを適切な溶媒に溶解する段階;(2)段階(1)で得られた製剤を、少なくとも1種類の表面安定剤を含む溶液に添加する段階;および(3)段階(2)に由来する製剤を、適切な非溶媒を使用して沈殿させる段階。この方法には、形成された任意の塩(存在する場合)の透析またはダイアフィルトレーションによる除去、および従来の手段による分散液の濃縮を続けることができる。
【0119】
3.ナノ粒子アリピプラゾール組成物を得るための均質化
活性作用物質のナノ粒子組成物を調製する例示的な均質化法は、「Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles」と題する米国特許第5,510,118号に記載されている。このような方法は、アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体の粒子を液体分散媒中に分散させた後に、分散液を均質化して、アリピプラゾールの粒度を望ましい有効平均粒度に減ずる段階を含む。アリピプラゾール粒子は、少なくとも1種類の表面安定剤の存在下で粒度を減ずることが可能である。またはアリピプラゾール粒子は、1種類もしくは複数の表面安定剤に、摩擦の前または後のいずれかにおいて接触させることが可能である。希釈剤などの他の化合物を、アリピプラゾール/表面安定剤組成物に、粒度低下過程の前、最中、またはその後のいずれかの時点で添加することができる。分散液は連続的に、またはバッチモードで作製することができる。
【0120】
4. ナノ粒子アリピプラゾール組成物を得るための低温法
望ましいナノ粒子アリピプラゾール組成物の別の作製法は、液体中への噴霧凍結(「SFL」)による。この手法では、安定剤を含む有機溶液または有機性水溶液のアリピプラゾールを、液体窒素などの低温液体中に注入する。アリピプラゾール溶液の液滴は、結晶化および粒子成長を最小化するために、ひいてはナノ構造を有するアリピプラゾール粒子を製剤化するのに十分な速度で凍結する。溶媒系および処理条件の選択によって、ナノ粒子アリピプラゾール粒子は、多様な粒子形態を取り得る。単離段階では、アリピプラゾール粒子の凝集または成長を避ける条件で、窒素および溶媒が除去される。
【0121】
SFLを補う手法として、超高速凍結法(「URF」)で、表面面積の極めて大きい同等のナノ構造を有するアリピプラゾール粒子を作製することができる。URFは、アリピプラゾールの有機溶液または有機水溶液を、低温基質上の安定剤とともに含む。
【0122】
5. ナノ粒子アリピプラゾール組成物を得るためのエマルジョン技術
望ましいナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体の組成物を作る別の方法は、鋳型エマルジョン技術による。鋳型エマルジョン技術では、粒度の分布が制御されかつ溶解挙動が迅速である、ナノ構造を有するアリピプラゾール粒子が作られる。この方法は、調製後にアリピプラゾールおよび安定剤を含む非水溶液によって膨潤される水中油型のエマルジョンを含む。アリピプラゾール粒子の粒度の分布は、制御可能で、かつ同過程で最適化可能な特性をアリピプラゾールに付与する前のエマルジョン液滴のサイズの直接的な結果である。さらに、溶媒および安定剤を選択的に使用することで、エマルジョンの安定性が、オストワルド成長なしに、またはオストワルド成長を抑えながら達成される。続いて溶媒および水が除去され、安定化されたナノ構造を有するアリピプラゾール粒子が回収される。さまざまなアリピプラゾール粒子の形状は、処理条件を適切に制御することで達成できる。
【0123】
6. ナノ粒子アリピプラゾール組成物を得るための超臨界流体法の使用
1997年4月24日に公開された、Pace et al.による、国際公開特許出願WO 97/144407では、化合物を溶液に溶解後に、適切な表面修飾剤の存在下で溶液を圧縮ガス、液体、または超臨界流体に吹き付けることで調製される、平均粒度が100 nm〜300 nmの、水に不溶性の生物学的に活性のある化合物の粒子について開示されている。
【0124】
7. 無菌製品の作製
注射可能な組成物の開発には、無菌製品の製造が必要である。本発明の製造過程は、無菌懸濁液に関する典型的な既知の製造過程と似ている。典型的な無菌懸濁物の製造過程の流れ図を以下に示す:

【0125】
括弧内に任意選択の段階を示したように、一部の処理は、粒度低下法および/または滅菌法に依存する。例えば、媒体前処理は、媒体を使用しないミル粉砕法には必要ない。仮に最終滅菌が、化学的および/または物理的な不安定性のためにできない場合は、滅菌処理を使用することができる。
【0126】
E. 本発明のナノ粒子アリピプラゾール組成物を使用する方法
本発明のさらに別の局面は、本明細書に記載された組成物を使用する方法を提供する。本発明の組成物は、統合失調症、双極性障害に伴う急性躁病エピソードおよび混合エピソード、ならびに他の統合失調症様疾患を含むがこれらに限定されない精神疾患や精神障害などのCNSの疾患および障害の治療に有用であると考えられている。したがって、いくつかの態様では、このような方法は、精神疾患や精神障害などの中枢神経系の障害についてヒトを含む哺乳類を治療する段階を含んでよく;このような治療は精神科療法を含みうる。いくつかの態様では治療は、ナノ粒子アリピプラゾール組成物を含む組成物を哺乳類に投与する段階を含みうる。
【0127】
このような組成物は、任意の薬学的に許容される剤形で投与可能であるが;いくつかの態様では、注射可能な製剤が好ましい場合がある。
【0128】
例えば注射可能な製剤は、ボーラスまたはデポを形成するように、筋肉内注射または皮下注射として投与可能であり;デポは例えば緩やかかつ安定に対象の中枢神経系中に溶解することで作用持続時間を長くすることが可能となる。したがって、注射可能な製剤は、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射ほかの注射後におけるアリピプラゾールの制御放出を可能とするように構成可能である。例えば、粒度および賦形剤濃度を、3日以上、5日以上、7日以上、10日以上、14日以上、20日以上、30日以上、2か月以上、3か月以上、または4か月以上にわたって制御放出を可能とする(例えば、対象のアリピプラゾールの血中濃度が有効治療域内に留まる)ように調整することができる。いくつかの態様では組成物は、注射されたデポがアリピプラゾールを治療レベルで約2〜約24週;約2〜約6週;約2〜約4週;および約1〜約4週の期間、放出可能なように製剤化することができる。
【0129】
抗精神病薬療法、および中枢神経系障害の治療では、インビボで必要な治療量の薬物を輸送する薬物投与剤形を提供し、かつ薬物を生物によって速やかに、かつ一貫した様式で利用可能なようにすることが有用である。これらの目的は、上述した(例えば筋肉内注射による)デポの形成を介して、本明細書に記載されたアリピプラゾールなどの注射可能なナノ粒子製剤を使用することで達成可能である。いくつかの態様では薬物は、デポから血流中に一定の速度で放出され、したがって適切な用量の薬物が患者に連続的に長期間にわたって提供される。この方法(例えばデポの注射)も、患者のコンプライアンスの改善につながる。例えば、1か月に1回の単回注射は、適切な治療用量を1か月間にわたって患者にもたらし、錠剤やカプセル剤の服用を毎日思い出したり判断したりする努力は不要である。
【0130】
筋肉内投与または皮下投与用のアリピプラゾールの例示的な注射可能製剤は、望ましい有効性持続期間、有効平均粒度を維持するのに十分な量でアリピプラゾールの表面から吸収されるポビドンポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロビドン、ポリビニルピロリドン(PVP)、Pluronic、Tween(登録商標)、PEG-リン脂質、および分子量が約40,000ダルトン未満のこれらの混合物などがあるがこれらに限定されない1種類もしくは複数の安定剤を含むナノ粒子アリピプラゾールを含んでよい。非経口投与用に製剤化された、このようなアリピプラゾール組成物には、精神疾患や精神障害などの、さまざまなタイプのCNSの疾患または障害の治療において、毒性のある共溶媒の必要性がなく、アリピプラゾールの有効性を高める可能性がある。
【0131】
非経口注射に適した組成物は、生理学的に許容される無菌の水性溶液もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液、または乳濁液、および無菌の注射可能な溶液もしくは分散液への再構成用の無菌粉末を含みうる。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、これらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性は例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することで、分散剤の場合は必要な粒度を維持することで、および界面活性剤を使用することで維持可能である。
【0132】
ナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体の組成物には、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含めることもできる。微生物の成長は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤によって確実に防ぐことができる。糖や塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい場合もある。注射可能な薬学的剤形の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅延させる作用物質を使用することで実現可能である。
【0133】
加えて、より高い濃度のナノ粒子アリピプラゾールが、従来の形状のアリピプラゾールと比較して、より少量の注射可能な用量サイズ(ひいては、より小さな体積)で輸送され得ることが予想される。したがって対象は、ナノ粒子アリピプラゾール製剤の注射後に、従来の製剤の注射と比較して、不快感もしくは刺激をわずかにしか感じないか、または全く感じないことが予想される。
【0134】
経口投与用の固体投与剤形も想定され、かつこれはカプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、および顆粒剤を含むが、これらに限定されない。このような固体投与剤形では、活性作用物質は以下の少なくとも1種類と混合される:(a)クエン酸ナトリウムやリン酸二カルシウムなどの1種類もしくは複数の不活性な賦形剤(すなわち担体);(b)デンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤;(c)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、およびアラビアゴムなどの結合剤;(d)グリセロールなどの保湿剤;(e)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、一部のケイ酸塩複合体、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(f)パラフィンなどの溶解遅延剤;(g)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(h)セチルアルコールやグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤;(i)カオリンやベントナイトなどの吸着剤;ならびに(j)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物などの潤滑剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合は、投与剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0135】
経口投与用の液体投与剤形は、薬学的に許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルを含みうる。アリピプラゾールに加えて、液体投与剤形は、水や他の溶媒などの、当技術分野で一般に使用されている不活性希釈剤、可溶化剤、および乳化剤を含みうる。例示的な乳化剤には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油などの油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などがある。
【0136】
このような不活性な希釈剤のほかに、組成物は、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤などの補助剤を含んでもよい。
【0137】
本開示は、対象におけるアリピプラゾールの生物学的利用能(例えば血漿レベル)を速やかに高める方法も提供する。一例として、このような方法は、ナノ粒子アリピプラゾールを含む有効量の組成物を対象に非経口的または経口的に投与する段階を含みうるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの態様ではアリピプラゾール組成物は、経口的に、および標準的な薬物動態プラクティスにしたがって投与可能であり、組成物は、従来の投与剤形より約50%大きい、約40%大きい、約30%大きい、約20%大きい、または約10%大きい生物学的利用能を有しうる。加えて、標準的な薬物動態プラクティスに従って絶食状態の対象を分析した場合に、ナノ粒子アリピプラゾール組成物は、最大血漿濃度プロファイルを、組成物の初回量投与後の約6時間以内に、約5時間以内に、約4時間以内に、約3時間以内に、約2時間以内に、約1時間以内に、または約30分以内に生じる可能性がある。
【0138】
ある態様では注射可能な組成物が好ましい場合があるが、アリピプラゾール化合物は、経口的、直腸内、眼、非経口的(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、もしくは皮下)、大槽内、肺内、膣内、腹腔内、局所(例えば、粉末、軟膏、もしくはドロップ)を含むがこれらに限定されない任意の従来の手段によって、生体接着剤として、または口腔内もしくは鼻腔内へのスプレーとして対象に投与されることが想定される。
【0139】
本明細書で用いる「対象」という用語は、動物、好ましくはヒトまたは非ヒトを含む哺乳類を意味するように使用される。患者および対象という用語は互換的に使用されうる。
【0140】
アリピプラゾールの投与量に関して本明細書で用いる「治療的有効量」という用語は、アリピプラゾールが治療を要する有意な数の対象に投与される際に、特異的な薬理反応を提供する投与量を意味する。特定の状況で特定の対象に投与される「治療的有効量」は、このような投与量が当業者によって「治療的有効量」であると考えられたとしても、本明細書に記載された疾患の治療に常に有効であるとは限らないことは強調すべきである。アリピプラゾールの投与量が、特定の状況では、経口投与量として、または、血液中に測定される薬物レベルに関して測定されることも理解されたい。
【0141】
当業者であれば、アリピプラゾールの有効量が実験的に決定可能であり、かつ純粋な形状で使用可能なこと、またはそのような形状が、薬学的に許容される塩、エステル、もしくはプロドラッグの形状で存在することを理解するであろう。本発明のナノ粒子組成物中のアリピプラゾールの実際の投与量レベルは、特定の組成物および投与法に望ましい治療反応を得るのに有効な量のアリピプラゾールを得る際に変動しうる。したがって、選択された投与量レベルは、投与されるアリピプラゾールの望ましい治療効果、投与経路、力価、望ましい治療期間、および他の因子に依存する。
【0142】
用量単位の組成物は、1日用量の作製に使用可能な、約数の量を含んでよい。しかしながら、任意の特定の患者に対する特異的な用量レベルが、達成される細胞反応または生理学的反応のタイプおよび規模;使用される特定の作用物質または組成物の活性;使用される特定の作用物質または組成物;患者の年齢、体重、全般的健康、性別、および食習慣;作用物質の投与時間、投与経路、および排出速度;治療期間;特定の作用物質と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;ならびに医学分野で周知の同様の因子といったさまざまな因子に依存することが理解されるであろう。
【0143】
実施例
以下の実施例を、本発明を説明する目的で供する。しかしながら、本発明の趣旨および範囲は、これらの実施例に記載された特定の条件または詳細に制限されないと理解されたい。
【0144】
実施例1
この実施例の目的は、アリピプラゾールの適切なナノ粒子製剤を同定する手順を説明することにある。
【0145】
本研究は、特定の投与様式、本研究ではナノ粒子アリピプラゾールの非経口投与のために最も適切な安定剤を同定するために、いくつかの表面安定剤(本研究では17種類の異なる表面安定剤、および安定剤の組み合わせが選択された)をスクリーニングすることで実施可能である。
【0146】
以下の実施例は、例示的な表面安定剤を混合した5%(w/w)のアリピプラゾールの水性分散剤に基づく。表2には、特定の表面安定剤の例示的な重量パーセンテージを示す;脱イオン水が、重量パーセントを100%にするために使用された。表3に、追加的な好ましい安定剤を列挙した。このような製剤は、NanoMill(登録商標) 0.01(NanoMill Systems, King of Prussion, PA;例えば米国特許第6,431,478号を参照)の10 ml容のチャンバー中で、500ミクロンのPolyMill(登録商標)摩擦媒体(attrition media)(Dow Chemical Co.)とともに(例えば89%の媒体量)ミル粉砕可能である。分散剤は、固体40%に対して表面安定剤2.4%となるように製剤化可能である。例示的な過程では、混合物は、2500〜3500 rpmの速度で30〜90分かけて(例えば2500 rpmで60分間)ミル粉砕可能であり;最適なミル粉砕速度およびミル粉砕時間は、任意の製剤を対象に実験的に決定されうる。
【0147】
ミル粉砕後は、ミル粉砕済みのアリピプラゾール粒子の粒度を、脱イオン化済みの蒸留水中で、Horiba LA 910粒度分析装置で測定することができる。追加的または代替的に、Lecia DM5000B顕微鏡およびLecia CTR 5000光源(Laboratory Instruments & Supplies(I) Ltd. Ashbourne CO MEATH ROI)を使用して粒子を評価することができる。配合が成功すれば、初期の平均径および/またはD50のミル粉砕済みのアリピプラゾールの粒度は約2000 nm未満になると考えられる。粒度は、さまざまな時間の超音波処理後に、例えば30秒間、60秒間、または90秒間の超音波処理後に評価することもできる。配合が成功すれば、初期平均径、および/またはD50のミル粉砕済みの粒度は約2000 nm未満になると考えられる。
【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
このような組み合わせによって、投与時の作用時間を変化させることになる、ナノ粒度の異なる安定な分散剤が得られる可能性がある。前臨床試験および臨床試験で、望ましい長い作用持続時間と関連する最適な剤形および粒子を同定することができる。
【0151】
さまざまな変形および変更が、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明の方法および組成物に関して成され得ることは当業者には明らかであろう。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物に含まれる場合に、提供される本発明の変形および変更を対象とすることが意図される。
【0152】
使用された用語および用語は、説明目的で使用され、制限するように使用されず、かつこのような用語および用語の使用において示された、かつ記載された特徴およびその一部分の任意の等価物を除外することは意図されないが、さまざまな変形が本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって本発明は、特定の態様および最適な特徴によって説明されたが、本明細書で開示された概念の変形および/または変更は、当業者によって遂行可能であること、またこのような変形および変更が本発明の範囲に含まれると見なされることを理解されたい。
【0153】
加えて本発明の特徴または局面が、マーカッシュ・グループまたは代替対象の他のグループによって記載される場合、当業者であれば、本発明が、マーカッシュ・グループまたは他のグループの任意の個々の成員または成員の下位群に関して記載されることを理解するであろう。
【0154】
また特に明記されない限りにおいて、さまざまな数値が態様に提供される場合は、追加的な態様が範囲の終末点として任意の2つの異なる値によって記載される。このような範囲も、記載された本発明の範囲に含まれる。
【0155】
本明細書に引用された全ての参考文献、特許、および/または出願は、全ての表および図を含むそれらの全体が、参照により本明細書に、個々の参考文献の全体が個別に参照により本明細書に組み入れられる場合と同じ程度に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 約2000 nm未満の平均有効粒度を有するアリピプラゾールの粒子;および
(b) 少なくとも1種類の表面安定剤
を含む、安定なナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体の組成物。
【請求項2】
アリピプラゾールが、結晶相、非晶質相、半結晶相、半非晶質相、およびこれらの混合物からなる群より選択される形状である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アリピプラゾール粒子の有効平均粒度が、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約900 nm未満、約800 nm未満、約700 nm未満、約600 nm未満、約500 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約200 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、および約50 nm未満からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
(a)非経口投与、経口投与、肺投与、静脈内投与、直腸投与、眼内(ophthalmic)投与、結腸投与、大槽内投与、膣内投与、腹腔内投与、眼(ocular)投与、耳投与、局所投与、舌下投与、鼻投与、生体接着剤投与、および局所投与からなる群より選択される投与のために;
(b)液体分散剤、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム剤、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル剤からなる群より選択される投与剤形へと;
(c)制御放出製剤、即時溶解製剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、即時放出と制御放出の混合型製剤からなる群より選択される投与剤形へと;または
(d)(a)、(b)、および(c)の任意の組み合わせ
で製剤化される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
1種類または複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
(a)アリピプラゾールの量が、他の賦形剤を含まないアリピプラゾールおよび少なくとも1種類の表面安定剤の全合計重量に基づき、重量比で約99.5%〜約0.001%、約95%〜約0.1%、および約90%〜約0.5%からなる群より選択され;
(b)少なくとも1種類の表面安定剤が、他の賦形剤を含まないアリピプラゾールおよび少なくとも1種類の表面安定剤の全合計乾燥重量に基づき、重量比で約0.5%〜約99.999%、重量比で約5.0%〜約99.9%、および重量比で約10%〜約99.5%からなる群より選択される量で存在し;または
(c)(a)および(b)の組み合わせ
である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種類の第1の表面安定剤、および少なくとも1種類の第2の表面安定剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
表面安定剤が、陰イオン性表面安定剤、陽イオン性表面安定剤、両性イオン性表面安定剤、非イオン性表面安定剤、およびイオン性表面安定剤からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種類の表面安定剤が、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、ホスファチド、デキストラン、グリセロール、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸化エチレンおよびホルムアルデヒドを含む4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー、ポロキサマー;ポロキサミン、荷電性リン脂質、ジオクチルスルホコハク酸塩(スルホコハク酸ジオクチルナトリウム)、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホン酸アルキルアリールポリエーテル、ステアリン酸ショ糖とジステアリン酸ショ糖の混合物、C18H37CH2C(O)N(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;リゾチーム、PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、リゾチーム、酢酸ビニルとビニルピロリドンのランダム共重合体、陽イオン性ポリマー、陽イオン性生体ポリマー、陽イオン性多糖、陽イオン性セルロース誘導体、陽イオン性アルギン酸塩、陽イオン性非ポリマー化合物、陽イオン性リン脂質、陽イオン性脂質、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド、スルホニウム化合物、ジメチル硫酸ポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ホスホニウム化合物、四級アンモニウム化合物、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロリド、ココナツトリメチルアンモニウムブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムブロミド、N-アルキル(C12-18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C14-18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル-トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキルアミノアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12トリメチルアンモニウムブロミド、C15トリメチルアンモニウムブロミド、C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、ハロゲン化アルキルジメチルアンモニウム、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、POLYQUAT 10(商標)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物、臭化セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハライド塩、MIRAPOL(商標)、ALKAQUAT(商標)、アルキルピリジニウム塩;アミン、アミン塩、アミンオキシド、イミドアゾリニウム塩、プロトン化四級アクリルアミド、メチル化四級ポリマー、ならびにカチオン化グアーからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種類の表面安定剤が、ポビドン、ポビドンポリマー、Plasdone(登録商標)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリマー、高分子量ポリオキシアルキレンエーテル、Pluronic(商標)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールのリン脂質、ジオキシコール酸、ジオクチルスルホコハク酸、ラウリル硫酸ナトリウム、B20-5000(登録商標)およびスルホン酸化B20-5000などのトリブロック共重合体表面修飾剤、チロキサポール、ならびにレシチンからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
皮下注射または筋肉内注射用に製剤化される、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
注射後にデポ(depot)を形成するように製剤化される、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
組成物の薬物動態プロファイルが、該組成物を摂取する対象の摂食状態または絶食状態に有意に影響されない、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
絶食状態と比較して、摂食状態で投与された場合に、有意に異なる吸収レベルを生じない、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
絶食状態に対して絶食状態で投与された場合の、本発明の活性作用物質組成物の吸収の差が、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、および約3%未満からなる群より選択される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
絶食状態の対象への組成物の投与が、摂食状態の対象への該組成物の投与と生物学的に同等である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
「生物学的同等性」が、
(a)CmaxおよびAUCの両方に関する90%信頼区間が0.80〜1.25であること;または
(b)AUCに関する90%信頼区間が0.80〜1.25であり、およびCmaxに関する90%信頼区間が0.70〜1.43であること
によって確立される、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
(a)投与後に哺乳類対象の血漿において分析したアリピプラゾールのTmaxが、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子組成物のTmaxより小さい;
(b)投与後に哺乳類対象の血漿において分析したアリピプラゾールのCmaxが、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子組成物のCmaxより大きい;
(c)投与後に哺乳類対象の血漿において分析したアリピプラゾールのAUCが、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子組成物のAUCより大きい;または
(d)(a)、(b)、および(c)の任意の組み合わせ
である、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
(a)Tmaxが、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子組成物によって示されるTmaxの約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、および約5%以下のTmaxからなる群より選択されるか;
(b)Cmaxが、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子組成物によって示されるCmaxより少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約1100%、少なくとも約1200%、少なくとも約1300%、少なくとも約1400%、少なくとも約1500%、少なくとも約1600%、少なくとも約1700%、少なくとも約1800%、または少なくとも約1900%大きいCmaxからなる群より選択されるか;
(c)AUCが、同じ投与量で投与された同じアリピプラゾールの非ナノ粒子製剤によって示されるAUCより少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約225%、少なくとも約250%、少なくとも約275%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約750%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、または少なくとも約1200%大きいAUCからなる群より選択されるか;または
(d)(a)、(b)、および(c)の任意の組み合わせ
である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
精神疾患または精神障害の治療に有用な1種類もしくは複数の活性作用物質を追加的に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
精神疾患または精神障害が、統合失調症様疾患、統合失調症、双極性障害、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
1種類もしくは複数の活性作用物質が、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、およびプロクロルペラジン、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
(a)哺乳類に投与された場合にアリピプラゾール粒子が、約2ミクロン未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約900 nm未満、約800 nm未満、約700 nm未満、約600 nm未満、約500 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約200 nm未満、約150 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、および約50 nm未満からなる群より選択される有効平均粒度を有するように再分散するか;
(b)アリピプラゾール粒子が約2ミクロン未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約900 nm未満、約800 nm未満、約700 nm未満、約600 nm未満、約500 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約200 nm未満、約150 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、および約50 nm未満からなる群より選択される有効平均粒度を有するように、組成物が生体関連媒体中に再分散するか;または
(c)(a)および(b)の組み合わせ
である、請求項1記載の組成物。
【請求項24】
アリピプラゾールの粒子に、少なくとも1種類の表面安定剤を、約2000 nm未満の有効平均粒度を有するナノ粒子アリピプラゾール組成物を提供するのに十分な時間および条件で接触させる段階を含む、ナノ粒子アリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体の組成物を調製する方法。
【請求項25】
接触させる段階が、ミル粉砕、均質化、凍結、エマルジョン技術、超臨界流体粒子作成技術、沈殿、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
(a)約2000 nm未満の平均有効粒度を有するアリピプラゾールまたはその塩もしくは誘導体の粒子;および
(b)少なくとも1種類の表面安定剤
を含む有効量の組成物を対象に投与する段階を含む、対象における統合失調症、双極性障害、統合失調症様疾患、および関連状態を治療する方法。
【請求項27】
統合失調症、双極性障害、および関連状態の治療に有用な1種類もしくは複数の活性作用物質をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
関連状態が、錐体外路症状、薬剤誘発性のパーキンソニズム、急性ジストニア反応、アカシジア、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
皮下注射用または筋肉内注射用に製剤化される、請求項26記載の組成物。
【請求項30】
組成物が経口錠剤の形状である、請求項26記載の方法。

【公表番号】特表2009−508859(P2009−508859A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531269(P2008−531269)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/035634
【国際公開番号】WO2007/035348
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(504234473)エラン ファーマ インターナショナル リミテッド (3)
【Fターム(参考)】