説明

ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーションプログラム

【課題】履歴として記憶された経路エレメントがユーザによく知られている経路エレメントであるか否かの判断の精度を向上させる。
【解決手段】ナビゲーション装置は、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶部9aと、通行履歴記憶部9aに記憶された履歴に基づいて、通行履歴記憶部9aに記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定部84と、記憶コスト決定部84にて決定された記憶コストを含む経路全体の経路コストが最小になるように、経路エレメントを組み合わせることにより、目的地までの経路を探索する経路探索部85と、経路探索部85にて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーション部86とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーションプログラムに関し、特に、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶するナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーションプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、出発地から目的までの経路案内をして、ユーザの移動をサポートするシステムである。このようなナビゲーション装置では、ユーザが目的地を設定すると、現在位置(出発地)から目的地までの経路の探索が行なわれる。ナビゲーション装置では、地図上の交差点ごとに分割された道路及び交差点の情報が経路エレメントとして記憶されており、経路探索では、経路エレメントを組み合わせて、距離、平均走行時間、道幅、右左折回数等を含む(但し、優先内容に応じてそれぞれに重みがつけられる)経路コストが最小になる組合せを経路として探索する。そして、探索された経路が、ナビゲーション装置の表示装置に表示されるとともに、経路と現在位置とに応じた経路案内が実行される。
【0003】
ナビゲーション装置による経路案内は、常にユーザに必要とされるとは限らない。例えば、ユーザが目的地までの経路をよく知っているような場合は、過度の経路案内の情報はユーザにとって不要である。
【0004】
そこで、従来、経路案内において、簡易ガイドモードと詳細ガイドモードの使い分けを行なうナビゲーション装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。この従来のナビゲーション装置では、ユーザがよく知っている経路を案内する場合には、簡易な経路案内を行う簡易ガイドモードが実行され、ユーザがあまり知らない経路を案内する場合には、詳細な経路案内を行う詳細ガイドモードが実行される。このように経路案内における案内レベルを適宜に変更するために、ナビゲーション装置は、経路案内をする経路エレメントをユーザがよく知っているのかあまり知らないのかを把握する必要がある。
【0005】
また、上記の従来のナビゲーション装置では、経路探索を行う場合にも、ある出発地からある目的地までの経路エレメントの組合せが複数あるときには、ユーザがよく知っている経路エレメントを多く通るように経路を探索する。このためにも、ナビゲーション装置は、探索される経路中の経路エレメントをユーザがよく知っているのかあまり知らないのかを把握する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−10572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のナビゲーション装置では、過去に所定回数以上通ったことのある経路エレメントを、常用経路エレメント、即ちユーザがよく知っている経路エレメントであると判断することで、ユーザがその経路エレメントをよく知っているかあまり知らないかを把握していた。
【0008】
しかしながら、通行の回数のみに基づいてユーザがよく知っている経路エレメントであるか否かを判断すると、例えば、過去の一定期間にはよく通っていたが、現在ではほとんど通らなくなり、よく知っているとはいえなくなっている(忘れてしまっている)経路エレメントも、ユーザがよく知っている経路エレメントとして認識されてしまう。
【0009】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶するナビゲーション装置において、履歴として記憶された経路エレメントがユーザによく知られている経路エレメントであるか否かの判断の精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のナビゲーション装置は、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶部と、前記通行履歴記憶部に記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶部に記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定部と、前記記憶コスト決定部にて決定された記憶コストを含む経路全体の経路コストが最小になるように、経路エレメントを組み合わせることにより、目的地までの経路を探索する経路探索部と、前記経路探索部にて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーション部とを備えた構成を有している。
【0011】
この構成によれば、通行履歴記憶部に記憶された履歴に基づいて、経路エレメントの記憶コストが決定される。記憶コストは、ユーザが当該経路エレメントを記憶している可能性を示す値である。記憶コスト決定部は、例えば、当該経路エレメントを過去に何回も通過したことがあるが、最近はまったく通過していない場合には、ユーザが当該経路エレメントを記憶している可能性は低いので、記憶コストを低く決定してよい。また、記憶コスト決定部は、例えば、当該経路エレメントを通過した回数は少ないが、当該経路エレメントをごく最近に通過したのであれば、ユーザは当該経路エレメントを記憶している可能性が高いので、記憶コストを高く決定してよい。経路探索部は、ユーザが経路エレメントを記憶している可能性に基づいて経路エレメントを組み合わせて、経路を探索するので、ユーザが記憶している経路エレメントを優先して経路を探索する場合に、好適にそのような経路探索が行える。
【0012】
また、上記のナビゲーション装置において、前記ナビゲーション部は、前記経路探索部にて探索された前記経路に含まれる経路エレメントの記憶コストに基づいて、案内レベルの異なる経路案内をしてよい。
【0013】
この構成によれば、ナビゲーション部は、通過する経路エレメントをユーザが記憶している可能性に基づいて、案内レベルの異なる経路案内をすることができ、ユーザが記憶している経路エレメントについては簡易な案内にするなど、ナビゲーション部は、通過する経路エレメントをユーザが記憶している可能性に応じて案内レベルを適宜に変更できる。
【0014】
また、上記のナビゲーション装置は、前記通行履歴記憶部に記憶された各経路エレメントの、前記記憶コスト決定部にて決定された記憶コストを記憶する記憶コスト記憶部をさらに備えていてよく、前記経路探索部は、前記目的地までの複数通りの経路候補に含まれる経路エレメントについて、前記記憶コスト記憶部に記憶された前記記憶コストを参照して、前記経路コストを求めてよい。
【0015】
この構成によれば、ナビゲーション装置は、通行履歴記憶部に記憶される各経路エレメントについて、予め記憶コストを記憶しておくので、複数通りの経路候補について、記憶コストを含む経路コストを求める際にその都度経路エレメントの記憶コストの決定を行なう必要がなく、経路探索を高速化できる。なお、ナビゲーション装置は、経路エレメントを通過するごとに記憶コスト記憶部の記憶コストを更新してよい。
【0016】
また、本発明の別の態様のナビゲーション装置は、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶部と、前記通行履歴記憶部に記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶部に記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定部と、目的地までの経路を探索する経路探索部と、前記経路探索部にて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーション部とを備え、前記ナビゲーション部は、前記経路探索部にて探索された前記経路に含まれる経路エレメントの記憶コストに応じて、案内レベルの異なる経路案内をするという構成を有している。
【0017】
この構成によれば、ナビゲーション部は、通過する経路エレメントをユーザが記憶している可能性に基づいて、案内レベルの異なる経路案内をすることができ、ユーザが記憶している経路エレメントについては簡易な案内にするなど、ナビゲーション部は、通過する経路エレメントをユーザが記憶している可能性に応じて案内レベルを適宜に変更できる。
【0018】
また、上記のナビゲーション装置において、前記通行履歴記憶部に記憶される経路エレメントの履歴には、日付の情報が含まれていてよく、前記記憶コスト決定部は、前記日付の情報を考慮して前記記憶コストを決定してよい。
【0019】
この構成によれば、履歴における日付の情報を用いて記憶コストを好適に決定できる。履歴に日付の情報が含まれていることで、記憶コスト決定部は、例えば、履歴を日付順に並べ替えて直近の一定回数の行動の履歴のみを参照したり、履歴を日付順に並べ替えてある経路エレメントを最後に通行したとき以後の行動回数や現在までの期間を把握したりすることが可能となる。なお、履歴には、日付の情報に加えてさらに時刻の情報が含まれていてもよい。
【0020】
また、上記のナビゲーション装置において、前記記憶コストは、(a)直近の一定回数の行動において当該経路エレメントを通行した割合、(b)当該経路エレメントを最後に通行したとき以後の行動回数、(a’)直近の一定期間の行動において当該経路エレメントを通行した割合、(b’)当該経路エレメントを最後に通行したときまでの期間、(a)又は(a’)及び(b)又は(b’)に基づいて決定されてよい。
【0021】
これらの構成によれば、その経路エレメントの通行回数自体が多くない場合にも、ユーザがその経路エレメントをよく記憶している可能性が高い場合に、記憶コストを高くできるとともに、その経路エレメントの通行回数が多い場合であっても、ユーザがその経路エレメントをよく記憶している可能性が低い場合には、記憶コストを低くできる。
【0022】
また、上記のナビゲーション装置において、前記通行履歴記憶部に記憶される経路エレメントの履歴には、重みが付与されていてよく、前記記憶コスト決定部は、前記重みを考慮して前記記憶コストを決定してよい。
【0023】
この構成によれば、経路エレメントを通行した場合に、種々の条件に応じて重みを付けて履歴が記憶され、記憶決定コスト決定部は、その重みを考慮して記憶コストを決定するので、ユーザが記憶している可能性が高い経路エレメントをより正確に把握したうえで記憶コストを決定できる。
【0024】
また、上記のナビゲーション装置において、前記重みは、当該経路エレメントが、前記ナビゲーション部による経路案内に従った通行によるものであるか否かに応じて、付与されてよい。
【0025】
ナビゲーション部による経路案内によらずに通行した場合には、その経路エレメントはユーザの記憶に残りやすいと考えられるので、この構成によれば、ユーザが記憶している可能性が高い経路エレメントをより正確に把握できる。
【0026】
また、上記のナビゲーション装置において、前記重みは、当該経路エレメントの長さに応じて、付与されてよい。
【0027】
経路エレメント(道路)が長い場合には、その経路エレメントはユーザの記憶に残りやすいと考えられるので、この構成によれば、ユーザが記憶している可能性が高い経路エレメントをより正確に把握できる。
【0028】
また、上記のナビゲーション装置において、前記重みは、当該経路エレメントの付近のランドマークの有無に応じて、付与されてよい。
【0029】
経路エレメントにランドマークがある場合には、その経路エレメントはランドマークと関連付けられてユーザの記憶に残りやすいと考えられるので、この構成によれば、ユーザが記憶している可能性が高い経路エレメントをより正確に把握できる。
【0030】
本発明の別の態様は、ナビゲーション方法であって、この方法は、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶ステップと、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定ステップと、前記記憶コスト決定ステップにて決定された記憶コストを含む経路全体の経路コストが最小になるように、経路エレメントを選択することにより、目的地までの経路を探索する経路探索ステップと、前記経路探索ステップにて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーションステップとを含んでいる。
【0031】
この構成によれば、記憶された履歴に基づいて、経路エレメントの記憶コストが決定される。経路探索ステップでは、ユーザが経路エレメントを記憶している可能性に基づいて経路エレメントを組み合わせて、経路を探索するので、ユーザが記憶している経路エレメントを優先して経路を探索する場合に、好適にそのような経路探索が行える。
【0032】
本発明の別の態様のナビゲーション方法は、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶ステップと、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定ステップと、目的地までの経路を探索する経路探索ステップと、前記経路探索ステップにて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーションステップとを含み、前記ナビゲーションステップは、前記経路探索部にて探索された前記経路に含まれる経路エレメントの記憶コストに応じて、案内レベルの異なる経路案内をする。
【0033】
この構成によれば、通過する経路エレメントをユーザが記憶している可能性に基づいて、案内レベルの異なる経路案内をすることができ、ユーザが記憶している経路エレメントについては簡易な案内にするなど、案内レベルを適宜に変更できる。
【0034】
本発明のさらに別の態様は、ナビゲーションプログラムであり、このプログラムは、コンピュータに、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶ステップと、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定ステップと、前記記憶コスト決定ステップにて決定された記憶コストを含む経路全体の経路コストが最小になるように、経路エレメントを選択することにより、目的地までの経路を探索する経路探索ステップと、前記経路探索ステップにて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーションステップとを実行させるためのプログラムである。
【0035】
この構成によれば、記憶された履歴に基づいて、経路エレメントの記憶コストが決定される。経路探索ステップでは、ユーザが経路エレメントを記憶している可能性に基づいて経路エレメントを組み合わせて、経路を探索するので、ユーザが記憶している経路エレメントを優先して経路を探索する場合に、好適にそのような経路探索が行える。
【0036】
本発明の別の態様のナビゲーションプログラムは、コンピュータに、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する履歴記憶ステップと、前記履歴記憶ステップにて記憶された前記履歴に基づいて、前記履歴記憶ステップにて記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定ステップと、目的地までの経路を探索する経路探索ステップと、前記経路探索ステップにて探索された経路に従って、前記経路探索ステップにて探索された前記経路に含まれる経路エレメントの記憶コストに応じて、案内レベルの異なる経路案内をするナビゲーションステップとを実行させるためのプログラムである。
【0037】
この構成によれば、通過する経路エレメントをユーザが記憶している可能性に基づいて、案内レベルの異なる経路案内をすることができ、ユーザが記憶している経路エレメントについては簡易な案内にするなど、案内レベルを適宜に変更できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、記憶された履歴に基づいて、経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストが決定されるので、単に経路エレメントの通行回数に従って判断する場合と比較して、ユーザがよく知っている経路エレメントをより正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態におけるナビゲーション装置の要部構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態における経路エレメントの履歴のデータ構造を示す図
【図4】本発明の実施の形態における記憶コスト決定のフローチャート
【図5】本発明の実施の形態における経路探索の例を示す図
【図6】本発明の実施の形態における経路探索及び経路探索のフローチャート
【図7】本発明の実施の形態の変形例における経路エレメントの履歴のデータ構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態のナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるナビゲーション装置の要部構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施の形態におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。まず、図2を参照して、本実施の形態におけるナビゲーション装置100の全体構成を説明する。
【0041】
ナビゲーション装置100は、その一部構成によって経路探索装置としても機能する。図1に示すように、ナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、送受信機11、音声コントローラ12、スピーカ13、音声認識装置14、マイク15、リモコンセンサ16、リモートコントロール端末(以下、リモコンと称する)17、及びこれら各装置が接続された制御装置8を備えている。
【0042】
位置検出器1は、車両の絶対方位を検出するための地磁気センサ2、車両の相対方位を検出するためのジャイロスコープ3、車両の走行距離を検出する距離センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を測定するグローバルポジショニングシステム(GPS)のためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2、3、4、5は、いずれも周知のものである。これらのセンサ等2、3、4、5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサ等2、3、4、5により各々を補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては、上述したうちの一部で位置検出器1を構成してもよく、更に、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の車速センサ等を用いてもよい。
【0043】
地図データ入力器6は、例えばDVD−ROM、CD−ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどの図示しない記憶媒体を備えている。その記憶媒体には、道路データ、背景データ、文字データ及び施設データなどを含むデジタル地図データが格納されている。道路データは、経路エレメントごとに格納されている。経路エレメントには、交差点(ノード)及び交差点と交差点とを結ぶ道路(リンク)の情報が含まれる。各経路エレメントには経路エレメントIDが付与されている。地図データ入力器6は、それらのデータを制御装置8に入力する。
【0044】
操作スイッチ群7は、表示装置10と一体になったタッチパネルからなり、表示装置10に表示された地図の縮尺変更、メニュー表示選択、目的地設定、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、表示画面変更、音量調整等の各種入力に使用される。操作スイッチ群7において、一部又は全部のスイッチが、表示装置10の周辺に設けられるメカニカルなスイッチであってもよい。
【0045】
リモコン17には、図示しない複数の操作スイッチが設けられ、その操作スイッチの操作により操作スイッチ群7と同様の入力操作が行える。リモコン17に入力された入力操作を表す信号は、リモコンセンサ16を介して制御装置8へ供給される。
【0046】
外部メモリ9は、例えば、メモリカードやハードディスク等であり、書き込み可能な記憶媒体を備えている。この外部メモリ9には、ユーザによって設定された自宅位置や、テキストデータ、画像データ、音声データ等の各種データが記憶される。
【0047】
表示装置10は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイによって構成され、その表示装置10の所定の地図表示領域には、車両の現在位置に対応する自車位置マークが地図データによって生成された車両周辺の道路地図上に重畳表示される。また、表示装置10には、その他に、現在時刻、渋滞情報などの他の情報表示を付加的に表示することもできる。
【0048】
送受信機11は、外部との通信接続をするための通信機であり、道路に敷設されたビーコンや各地のFM放送局を介して、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)センタから提供される道路交通情報(交通渋滞情報、交通規制除法を含む)、気象情報、日付情報、曜日情報、施設情報、広告情報を受信するVICSセンサと接続され、この道路交通情報等を制御装置8へ送信する。また、上記制御装置8で処理した情報を送受信機11から出力することもできる。なお、送受信機11は、インターネットに接続して、インターネット経由で道路交通情報等を受信してもよい。
【0049】
スピーカ13は、音声コントローラ12から入力された音声出力信号に基づき所定の音声(案内のための音声や画面操作の説明、音声認識結果等)を外部に出力する。
【0050】
マイク15は、操作者が発声した音声を電気信号として音声認識装置14に入力する。音声認識装置14は、マイク15から入力された操作者の入力音声と、内部に記憶する認識辞書(不図示)中の語彙データ(比較対照パターン)とを照合し、最も一致度の高いものを認識結果として音声コントローラ12に入力する。
【0051】
音声コントローラ12は、音声認識装置14を制御するとともに、音声入力のあった操作者に対し、スピーカ13を通じてトークバック出力制御(音声出力)する。また、音声認識装置14の認識結果を制御装置8に入力する処理も行う。
【0052】
制御装置8は、通常のコンピュータであり、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するためのバスラインを備えている。ROMには、制御装置8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。
【0053】
制御装置8は、音声認識装置14からの情報に基づき、操作者の発声に対する所定の処理及び操作スイッチ群7あるいはリモコン17の入力操作に対する所定の処理(例えば、外部メモリ9への地図データの記憶処理、地図縮尺変更処理、メニュー表示選択処理、目的地設定処理、経路探索実行処理、経路案内処理、現在位置修正処理、表示画面変更処理、音量調整処理等)を実行する。また、制御装置8で処理された経路案内音声情報等は、音声コントローラ12を介してスピーカ13から適宜報知される。
【0054】
図1は、本発明の実施の形態におけるナビゲーション装置100の要部構成を示すブロック図である。外部メモリ9は、通行履歴記憶部9a及びコスト評価関数記憶部9bを備えている。
【0055】
通行履歴記憶部9aには、過去に通行した経路エレメントの履歴が記憶されている。通行した経路エレメントの履歴は、後述する履歴記憶処理部88によって、通行履歴記憶部9aに記憶される。図3は、経路エレメントの履歴のデータ構造を示す図である。図3に示すように、通行履歴記憶部9aには、経路エレメントの1回の通行ごとに、その経路エレメントを通行したユーザのユーザID、通行した経路エレメントの経路エレメントID、記憶コスト、通行日時及び行動IDが記憶されている。通行履歴記憶部9aにおいて、ユーザID及び経路エレメントIDと関連付けられた記憶コストを記憶した部分が本発明の記憶コスト記憶部に相当する。なお、記憶コストは、通行履歴記憶部9aではなく、別の領域に、ユーザごとに経路エレメントIDとともに記憶され、この記憶領域が本発明の記憶コスト記憶部とされてもよい。
【0056】
記憶コストは、記憶コスト決定部84にて決定されて記憶される。記憶コストの決定方法については後述する。行動IDの「行動」とは、ある出発地からある目的地まで移動することをいう。ある出発地から複数の経路エレメントを通過してある目的地まで移動した場合には、その移動の過程で通過した経路エレメントには、同一の行動IDが付与される。
【0057】
コスト評価関数記憶部9bは、車両の現在位置から目的地までの経路探索に使用する下式(1)に示すコスト評価関数Ciを記憶している領域である。
Ci=α・l(i)+β・t(i)+γ・w(i)+δ・n(i)+ε・m(i)
・・・(1)
式(1)において、l(i)は距離のコスト、t(i)は平均走行時間のコスト、w(i)は道幅のコスト、n(i)は右左折回数のコスト、m(i)は記憶コストである。また、係数α、β、γ、δ、εは重み係数であり、後述する優先項目設定部83にて設定された優先項目に従って変化する。
【0058】
なお、記憶コストm(i)は、ユーザが当該経路エレメントを記憶している可能性が高いほど低くなる値である。また、式(1)に示すコスト評価関数Ciは、一例であり、コスト評価関数Ciに、距離、平均走行時間、道幅、右左折回数以外のパラメータ(例えば、制限速度や信号機の数など)が含まれていてもよい。
【0059】
制御装置8は、ユーザ特定部81と、目的地設定部82と、優先項目設定部83と、記憶コスト決定部84と、経路探索部85と、ナビゲーション部86と、案内レベル決定部87と、履歴記憶処理部88とを備えている。
【0060】
ユーザ特定部81は、運転者が誰であるかを特定する。ユーザ特定部81は、予め登録された複数のユーザのリストを表示装置10に表示し、その表示装置10に表示されたリストから、操作スイッチ群7又はリモコン17の操作により、運転者から選択を受けることよってユーザを特定する。
【0061】
目的地設定部82は、経路探索及び経路案内の対象となる目的地を設定する。目的地は、ユーザが操作スイッチ群7又はリモコン17を操作することで設定される。目的地設定部82は、ユーザの年齢等のユーザ情報及び日時等の状況情報に基づいて、目的地を自動的に推定することで目的地を設定してもよい。
【0062】
優先項目設定部83は、経路探索部85にて経路を探索する際に、優先する項目を設定する。優先する項目は、ユーザが操作スイッチ群7又はリモコン17を操作することで設定される。優先する項目には、距離、時間、一般道、道幅が含まれ、さらに、本実施の形態において特有の記憶も含まれる。
【0063】
記憶コスト決定部84は、通行履歴記憶部9aに記憶された各経路エレメントについて、記憶コストを決定する。記憶コストとは、ユーザが当該経路エレメントを記憶している可能性の低さを示す値であり、ユーザが当該経路エレメントを記憶している可能性が低いほど高い値をとる。記憶コスト決定部84は、通行履歴記憶部9aに記憶されたユーザごとの履歴に基づいて、この記憶コストを決定する。
【0064】
記憶コスト決定部84は、単に、履歴に基づいて、当該経路エレメントを過去に何回通行したかという観点だけでなく、履歴に含まれる経路エレメントを通行した日時(単に日付のみでもよい)に基づいて、ユーザが当該経路エレメントを記憶している可能性に応じたコストを、記憶コストとして決定する。具体的には、本実施の形態では、記憶コストは、(a)直近の一定回数の行動において当該経路エレメントを通行した割合、(b)当該経路エレメントを最後に通行したとき以後の行動回数、(a’)直近の一定期間の行動において当該経路エレメントを通行した割合、又は(b’)当該経路エレメントを最後に通行したときまでの期間に基づいて決定されてよい。
【0065】
記憶コストは、連続的な値であってもよいし、離散的な値であってもよい。例えば、(a)について、直近の一定回数の行動において当該経路エレメントを通行した割合を100%から減算した値を記憶コストとしてもよいし、直近の一定回数の行動において当該経路エレメントを通行した割合が0%、0〜50%、50〜100%のそれぞれの場合について、記憶コストを2、1、0としてもよい。
【0066】
上記の(a)は、実際に日常的に通行している経路エレメントの記憶コストを低くするという考え方である。例えば、毎年1回習慣的に通行する経路エレメントは、数年にわたって履歴を記憶していくことで、その経路エレメントを通行した回数が増加し、全履歴におけるその経路エレメントを通行した割合が増加していくことがあるが、このような経路エレメントをユーザがよく記憶している経路エレメントとするのは適切でない。
【0067】
そこで、(a)では、直近の一定回数の行動においてその経路エレメントを通行した割合に基づいて記憶コストを決定している。例えば、毎日1往復の行動(毎日2回の行動)を行なうことを想定して、直近の1ヶ月(行動回数は60回)において、2週間に1回以上の割合で通行する経路エレメントを、よく記憶している経路エレメント(記憶コスト:1)とし、2日に1回以上の割合で通行する経路エレメントを、よりよく記憶している経路エレメント(記憶コスト:0)とする場合には、直近の60回の行動において通行した割合が、0%以上4%未満の場合は記憶コストを2とし、4%以上25%未満の場合は記憶コストを1とし、25%以上の場合は記憶コストを0とすることができる。
【0068】
また、上記の(b)は、記憶に新しい経路エレメントの記憶コストを低くするという考え方である。即ち、これまでに1回しか通行したことがないであっても、それがごく最近通行した経路エレメントであれば、今現在において記憶が新しく、ユーザがよく記憶している可能性が高いといえるが、逆に、例えば数年前には頻繁に通行していたが最近はまったく通行していないといった経路エレメントは、全走行履歴におけるその経路エレメントを通行した割合が高い場合があるが、今現在では記憶がなくなっている可能性がある。
【0069】
そこで、(b)では、その経路エレメントを最後に通行したとき以後の行動回数に基づいて記憶コストを決定している。例えば、上記のように毎日1往復の行動(毎日2回の行動)を行なうことを想定した場合に、最後に通行したときから現在までの間の行動回数が、3回未満の場合には記憶コストを0とし、3回以上14回未満の場合には記憶コストを1とし、14回以上の場合には記憶コストを2とすることができる。
【0070】
上記の(a’)及び(b’)は、それぞれ(a)及び(b)における行動回数を期間で置き換えたものである。記憶コストは(a)又は(a’)及び(b)又は(b’)を適宜に組み合わせて決定してもよい。例えば、(a)と(b’)を組み合わせることで、直近の一定回数の行動において通行した割合(a)が比較的小さい場合でも、最後に通行したときまでの期間(b’)が短ければ、ユーザはその経路エレメントをよく記憶しているものとすることができ、また、直近の一定回数の行動において通行した割合(a)が大きければ、最後に通行したときまでの期間(b’)が比較的長くても、ユーザはその経路エレメントをよく記憶しているものとするという柔軟な対応が可能になる。
【0071】
なお、上記の(a)における一定回数や(a’)における一定期間は、ユーザの行動頻度に応じて調整してもよい。即ち、ユーザの行動頻度が高い場合には、(a)における一定回数を大きくし、又は(a’)における一定期間を短く、ユーザの行動頻度が低い場合には、(a)における一定回数を小さくし、又は(a’)における一定期間を長くしてよい。
【0072】
図4は、記憶コスト決定部84における記憶コスト決定処理のフローチャートである。記憶コスト決定部84は、経路エレメントを通行したか否かを監視し(ステップS41)、経路エレメントを通行した場合には(ステップS41でYES)、その履歴が履歴記憶処理部88によって通行履歴記憶部9aに追加されるので、その経路エレメントを含む履歴に基づいて、通行履歴記憶部9aに記憶された各経路エレメントの記憶コストを決定し(ステップS42)、決定した記憶コストを通行履歴記憶部9aに記憶させる(ステップS43)。そして、ステップS41に戻って、再び経路エレメントを通行したか否かを監視する。
【0073】
経路探索部85は、地図データ入力器6から入力される地図データに基づいて、位置検出器1によって検出された車両の現在位置(出発地)から目的地設定部82で設定された目的地までの経路を探索する。経路探索部85は、地図データ入力器6に記憶された経路エレメントを組み合わせることにより経路を探索する。
【0074】
経路探索部85は、コスト評価関数記憶部9cに記憶された式(1)に示すコスト評価関数Ciを用い、例えば、ダイクストラ法などの公知の手法によって、式(1)に示すコスト評価関数Ciの値(経路コスト)が最小となるような経路を探索する。式(1)に示すコスト評価関数Ciにおける係数α、β、γ、δ、εは、優先項目設定部83にて設定された優先項目に応じて決定される。記憶コストm(i)は、通行履歴記憶部9aに記憶されているので、経路コストを求める際には、経路探索部85はそれを参照する。
【0075】
経路探索部85は、送受信機11から交通渋滞情報及び交通規制情報を含む道路交通情報を取得して、交通渋滞情報や交通規制情報がある場合には、それらを考慮して最適な経路を探索する。具体的には、交通渋滞や交通規制があればそれらを避けるように、最適な経路を探索する。そして、探索された経路に関する関連情報がある場合は、表示装置10によって表示し、又はスピーカ13によって音声で出力する。例えば、経路の途中にある施設のイベント情報等があれば、適宜のタイミングでこの情報をユーザに提供する。このとき、表示装置10やスピーカ13は、関連情報提示部に該当する。
【0076】
図5は、経路探索の例を示す図である。図5において、経路エレメントのうち、交差点(ノード)は黒丸で示され、道路(リンク)は交差点同士を結ぶ線分で示されている。図5は、出発地Sから目的地Gまでの経路を探索する例を示している。この例において、経路エレメントei4、er5、ei5、er6、ei6、er7、ei8、er8の記憶コストが低い(ユーザがよく記憶している可能性が高い)ものとする。
【0077】
距離を優先する場合には、出発地Sから、リンクer1、ノードei1、リンクer2、ノードei2、リンクer3、ノードei3、リンクer4を経て、ノードei4で左折をして、リンクer9、ノードei9、リンクer10、ノードei10、リンクer11、ノードei11、リンクer12、ノードei7、リンクer8の順で目的地Gに到達する経路が探索される。一方、記憶が優先される場合には、ノードei4から記憶コストの低いリンクer5、ノードei5、リンクer6、ノードei6、リンクer7、ノードei7、リンクer8という順で目的地Gに到達する経路が探索される。
【0078】
ナビゲーション部86は、経路探索部85によって探索された経路、位置検出器1によって逐次検出される車両の現在位置、及び、地図データ入力器6からの地図データに基づいて、経路案内を実行する。
【0079】
ナビゲーション部86は、案内レベル決定部87から出力される案内レベルに応じて経路案内の案内レベルを変更する。即ち、ナビゲーション部86は、案内すべき経路エレメントが記憶コストの低い(ユーザがよく記憶している可能性が高い)経路エレメントであるときは、案内レベルを低くして、簡易な案内情報を提供する。一方、案内すべき経路エレメントの記憶コストが高い(ユーザがよく記憶している可能性が低い)経路エレメントであるときは、案内レベルを高くして、詳細な案内情報を提供する。例えば、詳細な案内情報では「300m先、ガソリンスタンドが角にある交差点yを左折してください」と案内するところを、簡易な案内情報では「この先、交差点yを左折してください」と案内する。
【0080】
案内レベル決定部87は、通行履歴記憶部9aに記憶された各経路エレメントの記憶コストに基づいて案内レベルを決定してナビゲーション部86に出力する。案内レベル決定部87は、記憶コストが高い(ユーザが記憶している可能性が低い)経路エレメントについては、案内レベルを高くし、記憶コストが低い(ユーザが記憶している可能性が高い)経路エレメントについては、案内レベルを低くする。
【0081】
図6は、経路探索及び経路探索を行う処理のフローチャートである。まず、ユーザ特定部81がユーザを特定する(ステップS61)。次に、目的地設定部82が目的地を設定する(ステップS62)。そして、経路探索部85に対して経路探索の指示がされる(ステップS63)。経路探索部85は、位置検出器1から現在位置(出発地)を取得する(ステップS64)。
【0082】
そして、経路探索部85は、複数の経路候補を取得して(ステップS65)、それぞれについて、優先項目設定部83にて設定された優先項目に応じたパラメータのコスト評価関数Ciを用いて、それぞれの経路候補の経路コストを求める(ステップS66)。このとき、経路候補に含まれる経路エレメントの記憶コストm(i)は、ステップS61にて特定されたユーザに対応するものを通行履歴記憶部9aより取得する。
【0083】
次に、経路探索部85は、経路コストが最も低い経路を探索経路として決定する(ステップS67)。経路が決定すると、ナビゲーション部86は、ナビゲーションを実行する(ステップS68)。このとき、ナビゲーション部86は、案内する経路エレメントの記憶コストに基づいて、その経路エレメントに対する案内レベルを変更する。
【0084】
履歴記憶処理部88は、位置検出器1からの現在位置の情報及び地図データ入力部6からの地図データに基づいて、実際に通行した経路エレメントを履歴として通行履歴記憶部9aに記憶する。通行履歴記憶部9aに記憶する経路エレメントの履歴は図3にて説明した通りである。なお、履歴記憶処理部88は、ナビゲーション部86による経路案内を行なっているか否かに関らず、通行した経路エレメントを通行履歴記憶部9aに記憶する。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態のナビゲーション装置100によれば、記憶コスト決定部84は、単に過去に通行した回数に基づいて各経路エレメントをよく知っているか否かを決めるのではなく、履歴に基づいて、各経路エレメントについて、ユーザが記憶している可能性が高いか否かを示す記憶コストを決定する。よって、例えば、通行した回数は多いものの最近は通行していない経路エレメントの記憶コストを高くしたり(記憶している可能性が低いとする)、通過した回数は少ないもののごく最近通行した経路エレメントの記憶コストを低くしたり(記憶している可能性が高いとする)というように、より公的に、ユーザが実際によく知っているか否かを判断できる。
【0086】
この結果、経路探索において、ユーザが知っている経路エレメントを優先する場合には、そのような経路探索を好適に行うことができ、また、ユーザが知っている経路エレメントについて経路案内の案内レベルを低くする場合には、そのような案内レベルの変更をより好適に行なうことができる。
【0087】
上記の実施の形態には、種々の変形が可能である。例えば、上記の実施の形態のナビゲーション装置100は、上述のような記憶コストを考慮した経路探索を行なう機能及び記憶コストに応じて案内レベルの異なる経路案内を行なう機能を備えていたが、いずれか一方のみを備えていてもよい。
【0088】
また、上記の実施の形態では、経路エレメントについて、通行の方向を特定していないが、経路エレメントを通行の方向ごとに通行履歴記憶部9aに記憶し、記憶コストも通行の方向ごとに決定及び記憶してよい。即ち、道路(リンク)について、その通行方向ごとに記憶コストを決定してもよく、また、交差点(ノード)について、進入方向ごと、又は、進入方向と退出方向との組合せごとに、記憶コストを決定してもよい。
【0089】
また、上記の実施の形態では、記憶コスト決定部84は、経路エレメントを通過するごとに記憶コストを決定したが、記憶コスト決定部84は、1回の行動(即ち、出発地から目的地までの移動)が終わったか否かを監視して、目的地に到着した時点で、その行動において通行した経路エレメントが付加された履歴に基づいて、通行履歴記憶部9aに記憶された経路エレメントの記憶コストを決定してもよい。
【0090】
また、記憶コスト決定部84は、予め通行履歴記憶部9aに記憶されたすべての経路エレメントについて記憶コストを求めて通行履歴記憶部9aに記憶しておかなくても、経路探索部85が経路を探索する過程で、その都度必要な経路エレメントについて、記憶コストを決定してもよい。即ち、決定した記憶コストを通行履歴記憶部9aに記憶しておかない構成としてもよい。
【0091】
上記の実施の形態では、複数の記憶コストを例示したが、記憶コストは上記に例示したものに限られない。記憶コストは、過去の履歴に基づいて決定されるものであって、通行履歴記憶部に記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示すものであれば、上記以外のものであってもよい。例えば、通行履歴記憶部9aに記憶されたすべての経路エレメントにおける当該経路エレメントの占める割合に基づいて決定されてよい。この場合は、その割合が大きいほど記憶コストを小さくする。例えば、その割合が、0%、10%未満、10%以上である場合の記憶コストをそれぞれ2、1、0としてもよい。また、例えば、通行履歴記憶部9aに記憶されたすべての経路エレメントにおける、当該経路エレメントの数に基づいて決定されてもよい。この場合は、その数が多いほど記憶コストは小さくする。例えば、その数が、0回、3回未満、3回以上である場合の記憶コストをそれぞれ2、1、0としてよい。
【0092】
また、上記の実施の形態では、ユーザ特定部81は、予め登録された複数のユーザのリストを表示装置10に表示して運転者にそのリストから選択してもらうことで、ユーザを特定したが、座席が電動であって、その座席位置を記憶するメモリ機能があり、ユーザごとに座席位置が記憶されている場合は、そのメモリ機能の利用と連動してユーザを特定してもよい。
【0093】
また、上記の実施の形態では、実際に通行した経路エレメントのみを履歴として記憶したが、実際に通行した経路エレメントの周辺の経路エレメントについても履歴を記憶してよい。
【0094】
また、目的地についても履歴を記憶し、記憶コストを決定することで、よく記憶している地点を利用した経路案内を行うようにしてもよい。例えば、ユーザが「○○デパート」をよく記憶している場合には、「この先の交差点を左折してください」という経路案内の代わりに、「この先の交差点を○○デパート方向に左折してください」という経路案内をしてもよい。
【0095】
また、上記の履歴記憶処理部88は、経路エレメントを1回通行するごとに、その経路エレメントの履歴を通行履歴記憶部9aに記憶したが、このとき、種々の条件に従って重みをつけて履歴を記憶してもよい。
【0096】
図7は、履歴に重みをつける場合の経路エレメントの履歴のデータ構造を示す図である。経路エレメントの履歴は、経路エレメントの1回の通行ごとに、その経路エレメントを通行したユーザのユーザID、通行した経路エレメントの経路エレメントID、記憶コスト、通行日時、行動IDに加えて、重みのデータを有する。即ち、図3を参照して説明した実施の形態では、経路エレメントの履歴のすべてのレコードが、1回の通行という同じ重みを持っていたが、この変形例では、種々の状況に応じて、例えば、1.5回の通行、0.5回の通行というように、異なる重みを持つ。重みは、履歴記憶処理部88によって付与されて、通行履歴記憶部9aに記憶される。重みは、例えば、ナビゲーション部86による経路案内に従った通行であるか否か、経路エレメント(道路)の長さ、及びランドマークの有無に応じて付与される。以下、具体例を説明する。
【0097】
履歴記憶処理部88は、ある経路エレメントを通行したときに、その通行がナビゲーション部86による経路案内に従った通行である場合は、重みを1とし、ナビゲーション部86による経路案内を行なわない状態で通行した場合には、重みを10とする。即ち、ナビゲーションに従って通行した場合には、1回の通行としてカウントし、ナビゲーション部86による経路案内によらずに通行した場合には、10回の通行としてカウントする。これは、ナビゲーション部86による経路案内によらずに通行した場合の方が、ユーザによってその経路エレメントの印象が深く、その経路エレメントを記憶している可能性が高いからである。また、この場合には、記憶が確実に定着している可能性があるので、重みを重くすることができる。
【0098】
履歴記憶処理部88は、また、ある経路エレメント(道路)を通行したときに、その経路エレメントが100m未満であれば、重みを0.5とし、100m以上500m未満であれば、重みを1とし、500m以上であれば、重みを1.5とする。経路エレメントである道路が長いほどユーザの記憶に残りやすいからである。
【0099】
履歴記憶処理部88は、また、ある経路エレメントを通行したときに、その経路エレメントの付近に記憶に残りやすいランドマーク(例えば、百貨店などの商業施設、鉄道の駅、塔、橋など)がある場合には、重みを3とし、そのようなランドマークがない場合には重みを1とする。ランドマークがある経路エレメントはユーザの記憶に残り易いからである。
【0100】
記憶コスト決定部84は、上記の実施の形態と同様にして記憶コストを決定するが、このとき、例えば、当該経路エレメントを通行した割合を求める際には、重みに基づいて割合を求める。例えば、10回の行動において、ある経路エレメントの履歴として、重み2の履歴と重み1の履歴があるとすると、その10回の行動において当該経路エレメントを通行した割合は、(2+1)/10=30%となる。
【0101】
なお、記憶コスト決定部84は、この変形例のように履歴に重みが付与されている場合に、上記の実施の形態のように日時を考慮して記憶コストを決定するのではなく、日時を考慮せずに記憶コストを決定してよい。即ち、この変形例によれば、履歴における日時を考慮しなくても、ユーザが当該経路エレメントを記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定することができる。
【0102】
なお、重みは、ナビゲーション部による経路案内に従った通行であるか否か、経路エレメント(道路)の長さ、及びランドマークの有無のうちの一部のみに基づいて付与されてもよく、また、他の要因に応じて付与されてもよい。
【0103】
また、ナビゲーション装置100は、車両に搭載されるものであってもよいし、持ち歩ける形式のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、記憶された履歴に基づいて、経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストが決定されるので、単に経路エレメントの通行回数に従って判断する場合と比較して、ユーザがよく知っている経路エレメントをより正確に把握できるという優れた効果を有し、過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶するナビゲーション装置等として有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 位置検出器
2 地磁気センサ
3 ジャイロスコープ
4 距離センサ
5 GPS受信機
6 地図データ入力器
7 操作スイッチ群
8 制御装置
81 ユーザ特定部
82 目的地設定部
83 優先項目設定部
84 記憶コスト決定部
85 経路探索部
86 ナビゲーション部
87 案内レベル決定部
88 履歴記憶処理部
9 外部メモリ
9a 通行履歴記憶部
9b コスト評価関数記憶部
10 表示装置
11 送受信機
12 音声コントローラ
13 スピーカ
14 音声認識装置
15 マイク
16 リモコンセンサ
17 リモコン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶部と、
前記通行履歴記憶部に記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶部に記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定部と、
前記記憶コスト決定部にて決定された記憶コストを含む経路全体の経路コストが最小になるように、経路エレメントを組み合わせることにより、目的地までの経路を探索する経路探索部と、
前記経路探索部にて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーション部と、
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記ナビゲーション部は、前記経路探索部にて探索された前記経路に含まれる経路エレメントの記憶コストに基づいて、案内レベルの異なる経路案内をすることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記通行履歴記憶部に記憶された各経路エレメントの、前記記憶コスト決定部にて決定された記憶コストを記憶する記憶コスト記憶部をさらに備え、
前記経路探索部は、前記目的地までの複数通りの経路候補に含まれる経路エレメントについて、前記記憶コスト記憶部に記憶された前記記憶コストを参照して、前記経路コストを求める
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶部と、
前記通行履歴記憶部に記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶部に記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定部と、
目的地までの経路を探索する経路探索部と、
前記経路探索部にて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーション部と、
を備え、
前記ナビゲーション部は、前記経路探索部にて探索された前記経路に含まれる経路エレメントの記憶コストに応じて、案内レベルの異なる経路案内をすることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
前記通行履歴記憶部に記憶される経路エレメントの履歴には、日付の情報が含まれており、
前記記憶コスト決定部は、前記日付の情報を考慮して前記記憶コストを決定する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記記憶コストは、直近の一定回数の行動において当該経路エレメントを通行した割合に基づいて決定されることを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記記憶コストは、当該経路エレメントを最後に通行したとき以後の行動回数に基づいて決定されることを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記記憶コストは、直近の一定期間の行動において当該経路エレメントを通行した割合に基づいて決定されることを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記記憶コストは、当該経路エレメントを最後に通行したときまでの期間に基づいて決定されることを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記記憶コストは、直近の一定回数の行動において当該経路エレメントを通行した割合又は直近の一定期間の行動において当該経路エレメントを通行した割合、及び当該経路エレメントを最後に通行したとき以後の行動回数又は当該経路エレメントを最後に通行したときまでの期間に基づいて決定されることを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記通行履歴記憶部に記憶される経路エレメントの履歴には、重みが付与されており、
前記記憶コスト決定部は、前記重みを考慮して前記記憶コストを決定する
ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
前記重みは、当該経路エレメントが、前記ナビゲーション部による経路案内に従った通行によるものであるか否かに応じて、付与されていることを特徴とする請求項11に記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
前記重みは、当該経路エレメントの長さに応じて、付与されていることを特徴とする請求項11に記載のナビゲーション装置。
【請求項14】
前記重みは、当該経路エレメントの付近のランドマークの有無に応じて、付与されていることを特徴とする請求項11に記載のナビゲーション装置。
【請求項15】
過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶ステップと、
前記通行履歴記憶ステップにて記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定ステップと、
前記記憶コスト決定ステップにて決定された記憶コストを含む経路全体の経路コストが最小になるように、経路エレメントを選択することにより、目的地までの経路を探索する経路探索ステップと、
前記経路探索ステップにて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーションステップと、
を含むことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項16】
過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶ステップと、
前記通行履歴記憶ステップにて記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定ステップと、
目的地までの経路を探索する経路探索ステップと、
前記経路探索ステップにて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーションステップと、
を含み、
前記ナビゲーションステップは、前記経路探索部にて探索された前記経路に含まれる経路エレメントの記憶コストに応じて、案内レベルの異なる経路案内をすることを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項17】
過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶ステップと、
前記通行履歴記憶ステップにて記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定ステップと、
前記記憶コスト決定ステップにて決定された記憶コストを含む経路全体の経路コストが最小になるように、経路エレメントを選択することにより、目的地までの経路を探索する経路探索ステップと、
前記経路探索ステップにて探索された経路に従って、経路案内をするナビゲーションステップと、
をコンピュータに実行させるためのナビゲーションプログラム。
【請求項18】
過去に通行した経路エレメントの履歴を記憶する通行履歴記憶ステップと、
前記通行履歴記憶ステップにて記憶された前記履歴に基づいて、前記通行履歴記憶ステップにて記憶された経路エレメントについて、それをユーザが記憶している可能性の低さを示す記憶コストを決定する記憶コスト決定ステップと、
目的地までの経路を探索する経路探索ステップと、
前記経路探索ステップにて探索された経路に従って、前記経路探索ステップにて探索された前記経路に含まれる経路エレメントの記憶コストに応じて、案内レベルの異なる経路案内をするナビゲーションステップと、
をコンピュータに実行させるためのナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251865(P2012−251865A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124385(P2011−124385)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】