説明

ハイブリッド車両およびその制御方法

【課題】ハイブリッド車両のバッテリレス走行において、電気システム内部での過電圧等の電圧異常の発生を防止することによって走行距離を確保することである。
【解決手段】ハイブリッド車20は、バッテリ50の異常時には、SMR55をオフしてバッテリレス走行を実行する。HVECU70は、バッテリレス走行時には、MG1およびMG2のトルク上下限範囲に基づいて、MG1およびMG2の出力トルクによって発生できる電力線54の電力変化量の上下限範囲を設定するとともに、電力線54の電圧VHを電圧指令値に近付けるために必要な前記電力変化量の指令値を算出する。HVECU70は、さらに、指令値と上下限範囲との比較に基づいて、MG1およびMG2の出力トルクによる電力制御の可否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両およびその制御方法に関し、より特定的には、車載蓄電装置を不使用とした走行モードを有するハイブリッド車両の走行制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した自動車として、走行用電動機および内燃機関を搭載したハイブリッド車両が注目されている。ハイブリッド車両の駆動系の一態様として、エンジンと、電動機と、発電機とが、プラネタリギヤで構成された動力分割機構を介して機械的に連結されたものが知られている。
【0003】
特開2007−196733号公報(特許文献1)、特開2008−279978号公報(特許文献2)および特開2007−137373号公報(特許文献3)には、このような駆動系を有するハイブリッド車両において、車載蓄電装置の充放電が禁止されている状態で、バッテリを電気システムから切離して走行(以下、バッテリレス走行とも称する)する場合における走行制御が記載されている。
【0004】
特許文献1には、バッテリ走行時には、発電機による発電電力と、平滑コンデンサの端子間電圧を耐圧以下となるように調整するための補正トルクとに基づいて、電動機のトルク指令値を設定することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、バッテリレス走行の際に、駆動軸に要求される要求トルクに迅速に対応するために、エンジンの目標回転数と現在の回転数との差が所定以上のときには、発電機のインバータをゲート遮断することが記載されている。また、エンジンの目標回転数と現在の回転数との差が小さいときには、コンデンサ電圧を目標電圧に一致させるためのフィードバック制御に基づいて、電動機および発電機の出力トルクを設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−196733号公報
【特許文献2】特開2008−279978号公報
【特許文献3】特開2007−137373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,3に記載されるハイブリッド車両のバッテリレス走行では、発電機および/または電動機のトルクによって、インバータ直流側の直流電圧(平滑コンデンサ電圧)を制御するための電力制御が実行される。しかしながら、車両状態によっては、車両走行のために必要なトルクを確保すると、電力制御のためのトルク分を確保できなくなる可能性がある。このような状態の下で、特許文献1,3に記載されたバッテリレス走行を継続すると、電力制御のためのトルクの不足分によって電力バランスが崩れることにより、平滑コンデンサの蓄積電力が徐々に増加あるいは減少する。この結果、過電圧等の電圧異常が発生すると、それ以降、電動機を駆動することが困難になるため、走行が継続不能となる虞がある。
【0008】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、ハイブリッド車両のバッテリレス走行において、電気システム内部での過電圧等の電圧異常の発生を防止することによって走行距離を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面では、ハイブリッド車両は、内燃機関と、発電機と、電動機と、蓄電装置と、電力制御部とを備える。内燃機関は、駆動軸との間に動力伝達経路を有するように構成される。発電機は、内燃機関の動力の少なくとも一部を用いて発電するように構成される。電動機は、駆動軸との間に動力伝達経路を有するように構成される。蓄電装置は、電動機および発電機の双方と電気的に接続された電力線に対して、開閉器を介して電気的に接続される。電力制御部は、開閉器が開放された走行状態において、車両駆動力を発生しつつ電力線の電圧を制御するように、発電機および電動機の出力トルクを制御するように構成される。特に、電力制御部は、発電機および電動機のトルク範囲に基づいて、電動機および発電機の出力トルクによって発生できる電力線の電力変化量の上下限範囲を設定するとともに、電力線の電圧を電圧指令値に制御するために必要な電力変化量の指令値を算出する。そして、電力制御部は、指令値と上下限範囲との比較に基づいて、電動機および発電機の出力トルクによる電力制御の可否を判定する。
【0010】
好ましくは、電力制御部は、電力制御範囲設定部と、制御演算部と、制御判定部とを含む。電力制御範囲設定部は、車両駆動力を発生するための電動機の上限トルクおよび発電機の下限トルクに基づいて、電動機および発電機の出力トルクによって発生できる電力変化量の上限値および下限値を算出する。制御演算部は、電力線の電圧と電圧指令値との偏差に基づいて指令値を算出する。制御判定部は、指令値が上限値から下限値までの範囲の外であるときに、電力線の電圧にさらに基づいて、電力制御の可否を判定する。
【0011】
また好ましくは、電動機および発電機の各々は、永久磁石モータである。ハイブリッド車両は、第1および第2の電力変換器を含む。第1の電力変換器は、電力線と発電機との間に電気的に接続されて、発電機の出力トルクを制御するために電力線および発電機の間で双方向の電力変換を実行するように構成される。第2の電力変換器は、電力線と電動機との間に電気的に接続されて、電動機の出力トルクを制御するために電力線および電動機の間で双方向の電力変換を実行するように構成される。そして、ハイブリッド車両は、開閉器が開放された走行状態において電力制御が不可と判断された場合には、第1の電力変換器の動作を停止して走行を継続するように制御される。
【0012】
さらに好ましくは、電力制御部は、電力線の電圧が所定の電圧範囲内であるときには、上限値から下限値までの範囲に制限するように指令値を設定する。
【0013】
好ましくは、ハイブリッド車両は、第1から第3の回転要素のうちのいずれか2つの回転要素の回転数が決定されると残余の1つの回転要素の回転数が決定されるとともに、第1から第3の回転要素のうちのいずれか2つの回転要素に入出力される動力に基づいて残余の1つの回転要素に動力を入出力するように構成される差動装置をさらに備える。そして、第1の回転要素は、内燃機関の出力軸と機械的に連結され、第2の回転要素は、発電機の出力軸と機械的に連結され、第3の回転要素は、駆動軸および電動機の出力軸と機械的に連結される。
【0014】
この発明の他の局面では、ハイブリッド車両の制御方法であって、ハイブリッド車両は、駆動軸との間に動力伝達経路を有するように構成された内燃機関と、内燃機関の動力の少なくとも一部を用いて発電するための発電機と、駆動軸との間に動力伝達経路を有するように構成された電動機と、電動機および発電機の双方と電気的に接続された電力線に対して開閉器を介して電気的に接続される蓄電装置とを搭載する。制御方法は、走行中に蓄電装置の異常が検知された場合に、開閉器を開放するステップと、開閉器が開放された走行状態において、車両走行のための発電機および電動機のトルク範囲を設定するステップと、設定されたトルク範囲に基づいて、電動機および発電機の出力トルクによって発生できる電力線の電力変化量の上下限範囲を算出するステップと、電力線の電圧を電圧指令値に制御するために必要な電力変化量の指令値を算出するステップと、指令値と上下限範囲との比較に基づいて、電動機および発電機の出力トルクによる電力制御の可否を判定するステップとを備える。
【0015】
好ましくは、判定するステップは、指令値が上下限範囲の外であるときに、電力線の電圧にさらに基づいて、電力制御の可否を判定するステップを含む。
【0016】
また好ましくは、電動機および発電機の各々は、永久磁石モータである。ハイブリッド車両は、電力線と発電機との間に電気的に接続されて、発電機の出力トルクを制御するために電力線および発電機の間で双方向の電力変換を実行するための第1の電力変換器と、電力線と電動機との間に電気的に接続されて、電動機の出力トルクを制御するために電力線および電動機の間で双方向の電力変換を実行するための第2の電力変換器とをさらに備える。制御方法は、開閉器が開放された走行状態において電力制御が不可と判断された場合には、第1の電力変換器の動作を停止して走行を継続するように制御するステップをさらに備える。
【0017】
さらに好ましくは、判定するステップは、指令値が上限値から下限値までの範囲の外であり、かつ、電力線の電圧が所定の電圧範囲内であるときには、上限値から下限値までの範囲に制限するように指令値を設定する。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ハイブリッド車両のバッテリレス走行において、電気システム内部での過電圧等の電圧異常の発生を防止することによって走行距離を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態によるハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】図1に示したモータジェネレータを駆動制御するための電気システムの回路図である。
【図3】図1に示したハイブリッド車両の走行時における共線図である。
【図4】本発明の実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置によるバッテリレス走行制御における電力制御のための機能ブロック図である。
【図5】システム電圧とトルク上限値との関係を示す概念図である。
【図6】本発明の実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置によるバッテリレス走行制御における電力制御の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置によるバッテリレス走行制御のための機能ブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態によるバッテリレス走行制御の制御処理を示すフローチャートである。
【図9】駆動トルクの上下限範囲の設定手法を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態によるハイブリッド車両の概略構成図である。
図1を参照して、本実施の形態によるハイブリッド車両20は、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26と、トーショナルダンパ28と、3軸式の動力分割機構30と、バッテリ50とを備える。クランクシャフト26は、トーショナルダンパ28を介して、動力分割機構30に連結される。
【0022】
ハイブリッド車両20は、さらに、モータジェネレータMG1,MG2(以下、単に、MG1,MG2と称する)と、変速機60と、ハイブリッド車両20の駆動系全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」とも称する)70とを備える。
【0023】
MG2は、変速機60を介して動力分割機構30に連結される。MG1,MG2の各々は、正トルクおよび負トルクの両方を出力可能であり、電動機として駆動できるとともに発電機としても駆動することができる。
【0024】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する「内燃機関」である。エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」とも称する)24は、クランク角センサ23からのクランクシャフト26のクランク角度等、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力される。エンジンECU24は、HVECU70と通信しており、HVECU70からエンジン22の制御指令を受ける。エンジンECU24は、各種センサからの信号に基づくエンジン22の運転状態に基づいて、HVECU70からの制御指令に従ってエンジン22が作動するように、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量制御などのエンジン制御を実行する。さらに、エンジンECU24は、必要に応じて、エンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。
【0025】
動力分割機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合するとともにリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、キャリア34とを含む。キャリア34は、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するように構成される。動力分割機構30は、サンギヤ31、リングギヤ32、およびキャリア34を回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。
【0026】
キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が連結され、サンギヤ31には、サンギヤ軸31aを介してMG1の出力軸が連結される。「駆動軸」としてのリングギヤ軸32aは、リングギヤ32の回転に伴って回転する。リングギヤ軸32aには、変速機60を介してMG2の出力軸が連結される。以下では、リングギヤ軸32aを、駆動軸32aとも称する。
【0027】
駆動軸32aは、ギヤ機構37およびデファレンシャルギヤ38を介して駆動輪39a,39bに機械的に連結されている。したがって、動力分割機構30によりリングギヤ32、すなわち、駆動軸32aに出力された動力は、ギヤ機構37,デファレンシャルギヤ38を介して駆動輪39a,39bに出力されることになる。
【0028】
このように、動力分割機構30は「差動装置」に対応する。また、キャリア34は「第1の回転要素」に対応し、サンギヤ31は「第2の回転要素」に対応し、リングギヤ32は「第3の回転要素」に対応する。
【0029】
変速機60は、MG2の出力軸48と駆動軸32aとの間に所定の減速比Grを与えるように構成される。変速機60は、代表的には、遊星歯車機構により構成される。変速機60は、外歯歯車のサンギヤ65と、このサンギヤ65と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ66と、サンギヤ65に噛合するとともにリングギヤ66に噛合する複数のピニオンギヤ67とを含む。プラネタリキャリアは、ケース61に固定されるので、複数のピニオンギヤ67は、公転することなく、自転のみを行なう。すなわち、サンギヤ65およびリングギヤ66の回転速度の比(減速比)が固定される。
【0030】
なお、変速機60の構成は図1の例に限定されるものではない。また、変速機60を介することなく、MG2の出力軸およびリングギヤ軸(駆動軸)32aが連結される構成としてもよい。
【0031】
MG1が発電機として機能するときには、キャリア34から入力されるエンジン22からの動力が、サンギヤ31側およびリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配される。一方、MG1が電動機として機能するときには、キャリア34から入力されるエンジン22からの動力と、サンギヤ31から入力されるMG1からの動力とが統合されて、リングギヤ32に出力される。
【0032】
MG1,MG2は、代表的には、三相の永久磁石型同期電動機により構成される。MG1,MG2は、コンバータ40およびインバータ41,42を介して,バッテリ50との間で電力のやりとりを行なう。インバータ41,42の各々は、複数個のスイッチング素子を有する一般的な三相インバータによって構成される。
【0033】
バッテリ50は、「蓄電装置」の代表例として示される。バッテリ50には、代表的には、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池が適用される。ただし、バッテリ50に代えて、電気二重層キャパシタ等の他の蓄電装置、あるいは、二次電池と他の蓄電装置とを組み合わせたものを用いてもよい。
【0034】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」とも称する)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号が入力される。たとえば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、図示しない電流センサからのバッテリ50の充放電電流,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度などが、バッテリECU52に入力される。バッテリECU52は、必要に応じて、バッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC:State of Charge)も演算している。
【0035】
バッテリ50と、SMR(System Main Relay)55と、コンバータ40と、インバータ41,42とによって、ハイブリッド車両20の電気システムが構成される。SMR55は、バッテリ50とコンバータ40との間に配置される。
【0036】
図2は、図1に示したMG1,MG2を駆動制御するための電気システムの回路図である。
【0037】
図2を参照して、SMR55がオフ状態であると、バッテリ50は電気システムから切離される。SMR55がオン状態であると、バッテリ50が電気システムに接続される。SMR55は、HVECU70からの制御信号に応答してオンオフされる。たとえば、イグニッションスイッチ80がオンされた状態で、ユーザが運転開始のための操作を行うことによって、電気システムの起動が指示される。電気システムの起動が指示されると、HVECU70は、SMR55をオンする。
【0038】
コンバータ40は、リアクトルおよび2つの電力用半導体スイッチング素子(以下、単にスイッチング素子とも称する)によって構成される、一般的な昇圧チョッパ回路の構成を有する。電力用半導体スイッチング素子としては、バイポーラトランジスタや、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)、あるいは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等を用いることができる。各スイッチング素子には、逆並列ダイオードが接続される。
【0039】
MG1と接続されたインバータ41は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つスイッチング素子を有する。各スイッチング素子には逆並列ダイオードが設けられている。
【0040】
MG1の図示しない固定子に巻回された各相コイル(U、V,W)は、中性点112において交互に接続される。インバータ41の各相アームにおけるスイッチング素子の接続点は、MG1の各相コイルの端部にそれぞれ接続される。
【0041】
インバータ42は、インバータ41と同様に、一般的な三相インバータの構成を有する。MG2の図示しない固定子に巻回された各相コイル(U、V,W)は、中性点122において交互に接続される。インバータ42の各相アームにおけるスイッチング素子の接続点は、MG2の各相コイルの端部にそれぞれ接続される。
【0042】
バッテリ50から放電された電力をMG1もしくはMG2に供給する際、電圧がコンバータ40により昇圧される。逆に、MG1もしくはMG2により発電された電力をバッテリ50に充電する際、電圧がコンバータ40により降圧される。
【0043】
コンバータ40とインバータ41および42との間の電力線54上の直流電圧であるシステム電圧VHは、電圧センサ180により検出される。電圧センサ180の検出結果は、モータECU45に送信される。
【0044】
コンバータ40は、システム電圧VHと、バッテリ50の電圧Vbとの間で、双方向の直流電圧変換を実行する。コンバータ40のスイッチング素子のデューティは、電力線54のシステム電圧VHが電圧指令値VHrに合致するように制御される。
【0045】
インバータ41は、電力線54上の直流電圧をスイッチング素子のオンオフにより交流電圧に変換する。変換された交流電圧は、MG1に供給される。また、インバータ41は、MG1が回生発電によって発生した交流電力を直流電力に変換する。
【0046】
同様に、インバータ42は、電力線54上の直流電圧を交流電圧に変換して、MG2に供給する。また、インバータ42は、MG2が回生発電によって発生した交流電力を直流電力に変換する。
【0047】
このように、コンバータ40とインバータ41,42とを電気的に接続する電力線54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成される。このため、MG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができる。したがって、バッテリ50は、MG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、MG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。
【0048】
MG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」とも称する)45により駆動制御される。モータECU45には、MG1,MG2を駆動制御するために必要な信号が入力される。たとえば、MG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や、図示しない電流センサにより検出されるMG1,MG2に印加される相電流などが、モータECU45へ入力される。回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいて、MG1,MG2の回転速度が検出できる。
【0049】
モータECU45は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの動作指令に従って、MG1,MG2を駆動制御する。具体的には、モータECU45は、MG1およびMG2の出力トルクが、トルク指令値Tr1およびTr2に合致するように、インバータ41,42へのスイッチング制御信号を出力する。たとえば、モータECU45は、トルク指令値Tr1,Tr2に従って設定される電流指令値と、MG1,MG2の電流検出値との偏差に基づいて、インバータ41,42の出力電圧指令(交流電圧)を演算する。そして、インバータ41,42のスイッチング制御信号は、たとえばパルス幅変調制御に従って、インバータ41,42が出力する擬似交流電圧が、それぞれの出力電圧指令に近づくように生成される。インバータ41は「第1の電力変換器」に対応し、インバータ42は「第2の電力変換器」に対応する。
【0050】
再び図1を参照して、HVECU70は、CPU(Central Processing Unit)72を中心とするマイクロプロセッサとして構成される。HVECU70は、CPU72と、処理プログラムやマップ等を記憶するROM(Read Only Memory)74と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを含む。HVECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。
【0051】
また、HVECU70は、上述のように、エンジンECU24、モータECU45および、バッテリECU52と、通信ポートを介して接続されている。これにより、HVECU70は、他のECUとの間で各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、エンジンECU24、モータECU45および、バッテリECU52についても、HVECU70と同様に、マイクロプロセッサによって構成できる。また、図1では、HVECU70、エンジンECU24、モータECU45および、バッテリECU52を別個のECUとして記載したが、これらの機能の一部または全部を統合したECUを配置することも可能である。あるいは、図示された各ECUの機能をさらに分割するように、ECUを配置してもよい。
【0052】
HVECU70は、車両状態に適した走行を行なうための走行制御を実行する。たとえば、車両発進時および低速走行時には、エンジン22を停止した状態で、MG2の出力によってハイブリッド車両20は走行する。定常走行時には、エンジン22を始動して、エンジン22およびMG2の出力によってハイブリッド車両20は走行する。特に、エンジン22を高効率の動作点で動作させることによって、ハイブリッド車両20の燃費が向上する。
【0053】
エンジン22、MG1およびMG2が動力分割機構30を介して連結されることで、エンジン22、MG1およびMG2の回転数は、図3に示すように共線図で結ばれる関係になる。
【0054】
図3を参照して、走行時には、MG2は主に「電動機」として動作し、MG1は主に「発電機」として動作する。以下では、MG2のトルクおよび回転数をTmおよびNmとも表記し、MG1のトルクおよび回転数をTgおよびNgとも表記する。
【0055】
エンジン22は、エンジン要求パワーに基づいて定められた動作点(エンジン回転数NeおよびエンジントルクTe)で動作するように、エンジンECU24(図1)によって制御される。
【0056】
MG1のトルクTgおよび回転数Ngは、エンジン回転数Neを上記動作点に従った目標回転数とするように制御される。上述のように、通常走行時には、MG1は負トルク(Tg<0)を出力し、発電する状態となる。
【0057】
このとき、エンジントルクTeの反力を受け持つように出力されたトルクTgによって、駆動軸32aに伝達される直達トルクTepは、Tep=−Tg×(1/ρ)で示される。なおρは、動力分割機構30におけるギヤ比である。
【0058】
一方、変速機60のギヤ比(減速比)Grを用いて、MG2のトルクTmによって駆動軸32aに発生するトルクは、Tm×Grで示される。したがって、駆動軸32a(リングギヤ32)に作用する駆動トルクTpについて、下記(1)式が成立する。
【0059】
Tp=Tm×Gr−Tg×(1/ρ) …(1)
ハイブリッド車両20では、バッテリ50に異常が発生して充放電が禁止されると、SMR55をオフ状態として、バッテリ50を電気システムから切り離した状態で、図3に示した共線図に従って走行を継続する。以下では、バッテリ50を不使用とした走行を「バッテリレス走行」と称し、バッテリレス走行時の走行制御について、「バッテリレス走行制御」と称する。
【0060】
バッテリレス走行時には、バッテリ50を電力バッファとして使用することができない。このため、MG1およびMG2全体での入出力電力ΔPが、そのまま電力線54(平滑コンデンサC0)に対して入出力される。ΔPは、下記(2)式で示される。ΔP<0のときに、MG1,MG2から電力線54へ電力が供給され(MG1,MG2の発電側)、ΔP>0のときに、電力線54からMG1,MG2へ電力が供給される(MG1,MG2の電力消費側)ものとする。
【0061】
ΔP=Tm×Nm+Tg×Ng …(2)
バッテリレス走行時には、電力線54のシステム電圧VHが、P=(1/2)×C×VH×VHの関係に従って、入出力電力ΔPに応じて変化する。なお、平滑コンデンサC0のキャパシタンスをCとする。したがって、ΔPによる電圧変化ΔVHは、下記(3)式によって示される。MG2の消費電力よりもMG1の発電電力の方が大きいΔP<0のときには、ΔVH>0であり、システム電圧VHが上昇する。
【0062】
ΔP=−(C/2)×2×VH×ΔVH
=−C×VH×ΔVH …(3)
システム電圧VHが変動すると、MG1,MG2のトルク変動に繋がるため、コンバータ40が使用できないバッテリレス走行時でも、システム電圧VHは電圧指令値VHrに制御されることが好ましい。
【0063】
このため、バッテリレス走行時には、電力線54の入出力電力ΔPの調整によってシステム電圧VHを制御するように、MG1,MG2の出力トルクによる電力制御を実行することが好ましい。
【0064】
一方で、車両駆動力を確保する観点から、電力制御に使用できるMG1,MG2の出力トルクが制約される可能性がある。このような状態では、電力制御を実行しているにも関らず、入出力電力ΔPが継続的に過剰あるいは不足することによって、システム電圧VHが徐々に上昇あるいは低下する虞がある。この結果、システム電圧VHが管理上の上限電圧あるいは下限電圧に達してしまうような電圧異常が発生すると、インバータ41,42の動作が不能となることにより、これ以上の走行継続が不能となる虞がある。
【0065】
したがって、本実施の形態では、車両駆動力の確保およびシステム電圧VHの制御のための電力制御の両方を実行する下で、電力制御による電圧維持が可能な状態であるか否かを逐次判定するようなバッテリレス走行制御を実行する。
【0066】
図4は、本発明の実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置によるバッテリレス走行制御における電力制御のための機能ブロック図である。図4に記載された各機能ブロックは、HVECU70によるハードウェア処理および/またはソフトウェア処理によって実現することができる。
【0067】
図4を参照して、バッテリレス走行における電力制御部400は、電力制御範囲設定部410と、制御演算部420と、電力制御判定部430とを含む。
【0068】
MGトルク上下限設定部300は、当該制御周期における、MG1のトルク上限値T1maxおよびトルク下限値T1minと、MG2のトルク上限値T2maxおよびトルク下限値T2minとを設定する。
【0069】
トルク上限値は、たとえば、図5に示されるように、当該制御周期におけるシステム電圧およびモータジェネレータの回転数によって決まる。
【0070】
図5を参照して、MG1,MG2の各々が出力可能な上限トルクは、MG回転数およびシステム電圧に応じて変化する。同一のMG回転数の下では、システム電圧VHが低い程、出力可能な上限トルクが低下する。一方で、同一のシステム電圧下では、回転数が高くなる程、出力可能な上限トルクが低下する。
【0071】
トルクおよび/または回転数が負の範囲でも、MGトルクの絶対値と、MG回転数の絶対値と、システム電圧VHとの間には、上記と同様の関係が成立する。したがって、各制御周期において、システム電圧VHおよび回転数(Ng,Ne)に照らして、トルク上限値T1max,T2maxおよび/またはトルク下限値T1min,T2minを設定できる。
【0072】
あるいは、回転要素の過高回転やMG1,MG2の過高温等からの部品・機器保護の観点から、トルク(絶対値)の増大を制限するために、トルク上限値T1max,T2maxおよび/またはトルク下限値T1min,T2minが設定されてもよい。
【0073】
また、急峻なトルク変動を抑制するために、前回の制御周期における出力トルクからの変化量を所定値以下に制限するように、MG1のトルク上下限値T1max,T1minおよびMG2のトルク上下限値T2max,T2minが設定されてもよい。
【0074】
MGトルク上下限設定部300は、上記のような観点を総合して、各制御周期において、当該制御周期でのトルク上限値T1max,T2maxおよびトルク下限値T1min,T2minを設定する。
【0075】
再び図4を参照して、電力制御範囲設定部410は、MG1,MG2の出力トルクを用いた電力制御によって電力線54に発生させることができる電力変化量ΔPの上下限範囲を算出する。具体的には、電力制御範囲設定部410は、MGトルク上下限設定部300によって設定されたMG1およびMG2のトルク上下限範囲に少なくとも基づいて、ハイブリッド車両20の最低限の駆動力を確保するためのMG1下限トルクおよびMG2上限トルクを設定する。そして、MG1下限トルクおよびMG2上限トルクに基づいて、ΔPの上下限範囲が算出される。電力制御範囲設定部410は、ΔPの上下限範囲に基づいて、電力線54の入出力電力の指令値(電力指令値)の上限値Prmaxおよび下限値Prminを設定する。Prmax〜Prminは、MG1およびMG2トルクを用いた電力制御によって電力線54に生じさせることが可能な電力変化量の上下限範囲に相当する。
【0076】
制御演算部420は、システム電圧VHと、システム電圧の電圧指令値VHrとに基づいて、電力補正指令値ΔPrおよびこのΔPrを含む電力指令値Prを算出する。電力補正指令値ΔPrは、システム電圧VHを電圧指令値VHrに近付けるための、電力線54の入出力電力の変化量を示す。電力補正指令値ΔPrは、電力線54の電力が不足しているときには負値(ΔPr<0)に設定され、電力線54の電力が過剰なときには正値(ΔPr>0)に設定される。
【0077】
電力制御判定部430は、制御演算部420からの電力指令値Pr*と、電力制御範囲設定部410からの電力指令上限値Prmaxおよび電力指令下限値Prminとの比較に基づいて、電力制御の可否を判定するとともに、最終的な電力指令値Prを設定する。なお、電力制御判定部430は、電力制御の可否判定結果を示すフラグFblを生成する。
【0078】
次に、図4に示した機能ブロック図に係るバッテリレス走行制御を実現するための制御処理を、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0079】
図6に示すフローチャートに示される制御処理は、バッテリレス走行制御時に、所定の制御周期毎に実行される。なお、図6に示した各ステップにおける制御処理は、HVECU70によるソフトウェア処理および/またはハードウェア処理によって実行されるものとする。
【0080】
図6を参照して、HVECU70は、ステップS50により、最低限の駆動力を確保するためのMG1下限トルクTgminおよびMG2上限トルクTmmaxを設定する。MG1下限トルクおよびMG2上限トルクは、図4のMGトルク上下限設定部300の機能によって設定されたオリジナルのトルク上限値T1max,T2maxおよびトルク下限値T1min,T2minと、最低限の駆動トルクを発生するための所定条件とに基づいて設定される。この所定条件は、たとえば、Tg<−ε(すなわち、T1max=−ε)かつ、Tm>ε(すなわち、T2min=ε)である(εは正の定数)。
【0081】
HVECU70は、ステップS52により、下記(4)式に従って、MG1下限トルクTgminから電力変化量ΔPの下限値ΔPmin(MG1,MG2が発電側)を算出する。
【0082】
ΔPmin=Tgmin/(ρ×Gr)×Nm+Tgmin×Ng
=Tgmin×(Ng+Nm/(ρ×Gr)) …(4)
式(4)は、式(2)にTg=TgminおよびTm=Tgmin/(ρ×Gr)を代入することによって得られる。なお、(1)式で、Tp=0と置くことにより、Tm=Tg/(ρ×Gr)の関係が得られる。
【0083】
さらに、HVECU70は、ステップS53により、下記(5)式に従って、MG2上限トルクTmmaxから電力変化量ΔPの上限値ΔPmax(MG1,MG2が電力消費側)を算出する。
【0084】
ΔPmax=Tmmax×Nm+(Tmmax×Gr×ρ)×Ng
=Tmmax×(Nm+Ng×Gr×ρ) …(5)
式(5)は、式(2)にTm=TmmaxおよびTg=Tmmax×Gr×ρを代入することによって得られる。上述のように、(1)式で、Tp=0と置くことにより、Tg=Tm×Gr×ρの関係が得られる。
【0085】
HVECU70は、ステップS54により、下記(6)式に従って、電力電荷量ΔPの上限値ΔPmaxから電力指令上限値Prmaxを算出する。電力指令上限値Prmaxは、電力線54の電力減少側、すなわち、MG1,MG2の電力消費側における最大電力値である。
【0086】
Prmax=ΔPmax−Ploss−Pax …(6)
式(6)において、Plossは、MG1,MG2による損失電力である。たとえば、Plossは、MG1およびMG2のそれぞれについて、回転数の関数として設定することができる。また、Paxは、電力線54の電力を使用して動作する補機負荷の消費電力である。
【0087】
同様に、HVECU70は、ステップS56により、下記(7)式に従って、電力電荷量ΔPの下限値ΔPminから電力指令下限値Prminを算出する。電力指令下限値Prminは、電力線54の電力増加側、すなわち、MG1,MG2の発電側における最大電力値である。
【0088】
Prmin=ΔPmin−Ploss−Pax …(7)
このようにして、MG1,MG2の出力トルクを用いた電力制御による電力指令値の上下限範囲、すなわち、電力制御によって電力線54に発生できる電力変化量の上下限範囲が設定される。ステップS50〜S54による処理は、図4の電力制御範囲設定部410の機能に相当することが理解される。
【0089】
続いて、HVECU70は、ステップS56により、システム電圧VHを電圧指令値VHrに制御するための電力指令値Pr*を算出する。ステップS56による処理は、図4の制御演算部420の機能に相当する。たとえば、電力指令値Pr*は、下記(8)式に従って設定される。
【0090】
Pr*=ΔPr+Ploss+Pax …(8)
式(8)中において、電力補正指令値ΔPrは、電圧偏差(VH−VHr)に対してPID制御演算を実行した制御演算値を示す。なお、電力指令値Pr*は、VHr>VHのときには、電力線54の電力が不足しているのでPID制御演算によって負方向に変化する。反対に、VHr<VHのときには、電力線54の電力が過剰であるので、電力指令値Pr*は、PID制御演算によって正方向に変化する。
【0091】
さらに、HVECU70は、ステップS58により、ステップS56で演算された電力指令値Pr*と、ステップS54で設定された電力指令値の上下限範囲(Prmax〜Prmin)とを比較する。
【0092】
HVECU70は、電力指令値Pr*がPrmax〜Prminの範囲内のとき(S58のYES判定時)には、ステップS70により、ステップS56で演算された電力指令値Pr*をそのまま電力指令値Prとする。
【0093】
一方で、電力指令値Pr*がPrmax〜Prminの範囲外のときは、電力制御を継続しても、システム電圧VHを電圧指令値VHrへ向けて変化させることができない。すなわち、この状態が継続すると、システム電圧VHは、電圧指令値VHrから離れて、徐々に上昇あるいは低下することが予測される。
【0094】
したがって、HVECU70は、電力指令値Pr*がPrmax〜Prminの範囲外のとき(S58のNO判定時)には、ステップS60により、電力制御によるシステム電圧VHの安定化不能と判定して、以下のステップS62〜S65の処理によって対応する。
【0095】
HVECU70は、ステップS62では、現在のシステム電圧VHが所定電圧範囲V1〜V2内であるか否かを判定する。この電圧範囲の下限値V1および上限値V2は、システム電圧VHの制御上限値Vmaxおよび制御下限値Vminに対してマージンを持つように予め定められる(すなわち、V1>Vmin,V2<Vmax)。なお、VH>Vmaxまたは、VH<Vminとなると、電圧異常と判定されて、以降でのインバータ41,42の駆動が禁止されるため走行が困難になる。
【0096】
HVECU70は、システム電圧VHが所定電圧範囲V1〜V2内であるときには、ステップS65により、制限付きで電力制御を実行する。具体的には、Pr*>PrmaxであるときにはPr=Prmaxに設定され、Pr*<PrminであるときにはPr=Prminに設定される。すなわち、ステップS52〜S54で設定された最低限の駆動トルクを確保可能なように制限して、電力制御が実行される。
【0097】
一方、HVECU70は、システム電圧VHが所定電圧範囲V1〜V2の外であるときには、ステップS64により、電力制御を非実行として、他の走行態様によりバッテリレス走行を実行するように指示する。ステップS62がNO判定のとき、図4のフラグFblはオンされる。
【0098】
たとえば、フラグFblがオンされると、MG1がシャットダウンされる。MG1がシャットダウンされると、インバータ41を構成する各スイッチング素子がオフに固定されて、インバータ41の動作が停止される。これにより、MG1のトルク制御は中止されるので、MG1は、回転抵抗として作用する永久磁石の磁界による引摺りトルクを発生させることになる。そして、MG1の発電電力は、この逆起電力による発電量に抑えられる。これにより、システム電圧VHが過電圧となることを防止できる。反対に、システム電圧VHが低下したときに(VH<V1)には、MG2をシャットダウンしてインバータ42の動作を停止してもよい。
【0099】
このように本実施の形態では、最低限の車両駆動力を確保した上で、システム電圧VHの制御のための電力制御を実行するときに、電力制御による電圧維持が可能な状態であるか否かを逐次判定する。これにより、電力バランスが崩れた状態での電力制御が継続されることによって、システム電圧VHが正常範囲から外れることを防止できる。
【0100】
次に、上述した電力制御を組み込んだ、本実施の形態によるバッテリレス走行制御について、図7を用いて説明する。
【0101】
図7は、本発明の実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置によるバッテリレス走行制御のための機能ブロック図である。図7に示す各機能ブロックについても、HVECU70によるハードウェア処理および/またはソフトウェア処理によって実現することができる。
【0102】
図7を参照して、バッテリレス走行制御部500は、バッテリレス走行時において、車両駆動力を発生しつつ電力制御を実行するように、MG1,MG2のトルク指令値Tr1,Tr2を設定する。バッテリレス走行制御部500は、図4に示したMGトルク上下限設定部300および電力制御部400に加えて、MGトルク換算部520と、駆動トルク上下限設定部540と、駆動トルク設定部550と、MGトルク換算部560と、MGトルク設定部570とを含む。
【0103】
MGトルク換算部520は、電力制御部400によって設定された電力指令値Prに従った電力を電力線54に入出力するための、MG1,MG2の必要トルク(以下、電力制御トルクとも称する)T1p,T2pを演算する。
【0104】
駆動トルク上下限設定部540は、MGトルク上下限設定部300によって設定されるトルク上下限範囲(T1max〜T1min,T2max〜T2min)を、電力制御トルクT1p,T2pで修正することによって、駆動トルクTpの上下限を設定する。
【0105】
駆動トルク上下限設定部540は、MGトルク上下限設定部300によって設定されたMG1のトルク上下限値T1max,T1minおよびMG2のトルク上下限値T2max,T2minと、MGトルク換算部520によって演算された電力制御トルクT1p,T2pとに基づいて、駆動軸32aに出力可能なトルク上限値Tpmaxおよびトルク下限値Tpminを設定する。後程詳細に説明するように、トルク上限値Tpmaxおよびトルク下限値Tpminは、MG1およびMG2による電力制御トルクT1p,T2pを確保した上で、MG1,MG2の出力トルクをMGトルク上下限設定部300による上下限範囲内としたときにおける、駆動軸トルクの上下限範囲を規定するものである。
【0106】
駆動トルク設定部550は、駆動トルク上下限設定部540によって設定された駆動トルクの上下限範囲内(Tpmax〜Tpmin)で、要求トルクTp*0に最も近いトルクを、駆動トルク指令値Tp*に設定する。
【0107】
要求トルクTp*0は、ハイブリッド車両20の車両状態(代表的には、車速Vおよびアクセル開度Acc)に基づいて設定される、ユーザ要求に対応した車両駆動力を発生するための駆動軸トルクに相当する。
【0108】
MGトルク換算部560は、駆動トルク設定部550によって設定された駆動トルク指令値Tp*を、MG1,MG2の出力トルクに換算する。これにより、MG1,MG2の駆動力制御トルクT1d,T2dが算出される。MGトルク換算部560は「第2のトルク算出部」に対応する。
【0109】
MGトルク設定部570は、MGトルク換算部560によって設定された駆動力制御トルクT1d,T2dと、MGトルク換算部520によって設定された電力制御トルクT1p,T2pとの和に従って、MG1,MG2のトルク指令値T1r,T2rを設定する。
【0110】
次に、図7に示した機能ブロック図に係るバッテリレス走行制御を実現するための制御処理を、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0111】
図8に示すフローチャートによる制御処理は、バッテリレス走行制御時に、所定の制御周期毎に実行される。なお、図8に示した各ステップにおける制御処理は、HVECU70によるソフトウェア処理および/またはハードウェア処理によって実行されるものとする。
【0112】
図8を参照して、HVECU70は、ステップS100により、バッテリ異常によりバッテリ50の充放電が禁止されている状態であるか否かを判定する。そして、充放電禁止時(S100のYES判定時)には、HVECU70は、ステップS102により、SMR55をオフする。さらに、バッテリレス走行制御のための以降のステップS105〜S170が実行される。
【0113】
一方、HVECU70は、バッテリ50が使用できるとき(S100のNO判定時)には、バッテリレス走行制御のための以降のステップS105〜S170をスキップする。
【0114】
HVECU70は、ステップS105では、MG1トルクおよびMG2トルクの上下限値を設定する。ステップS105の処理は、図4のMGトルク上下限設定部300の機能に相当する。これにより、今回の制御周期における、オリジナルのトルク上限値T1max,T2maxおよびトルク下限値T1min,T2minが設定される。
【0115】
さらに、HVECU70は、ステップS110により、システム電圧VHを電圧指令値VHrに制御するための電力制御を実行する。ステップS110では、図6に示したフローチャートに従う制御処理が実行される。この結果、電力制御可否判定が実行されるとともに、電力指令値PrおよびフラグFblが生成される。
【0116】
HVECU70は、ステップS115により、ステップS110での電力制御可否判定の結果に基づいて、電力制御を実行するか否かを判断する。たとえば、フラグFblに基づいて、ステップS115での判断が実行される。
【0117】
上述のように、フラグFblがオンされて電力制御が実行できないとき(S115のNO判定時)には、HVECU70は、ステップS117に処理を進めて、電力制御を非実行とするように、バッテリレス走行態様の変更を指示する。たとえば、上述のように、MG1をシャットダウンとしてバッテリ走行を継続する。
【0118】
HVECU70は、フラグFblがオフされており電力制御を実行するとき(S115のYES判定時)には、ステップS120〜S170の処理によって、MG1およびMG2のトルク指令値Tr1,Tr2を設定する。
【0119】
HVECU70は、ステップS120では、ステップS110で設定された電力指令値Prに基づいて、MG1,MG2の電力制御トルクT1p,T2pを算出する。ステップS120による処理は、図7のMGトルク換算部520の機能に相当する。
【0120】
電力制御トルクT1p,T2pは、駆動軸トルクに影響を与えることなく、電力指令値Prに従った電力を電力線54に対して入出力するための、MG1,MG2の出力トルクに相当する。電力制御トルクT1p,T2pは、下記のように求めることができる。
【0121】
まず、(1)式で、Tp=0と置くとともに、Tm=T2pおよびTg=T1pを代入することによって、下記(9)式が得られる。
【0122】
0=T2p×Gr−T1p×(1/ρ) …(9)
(9)式より、電力制御トルクT1pおよびT2pの間には、下記(10)式の関係が成立することが理解される。
【0123】
T1p=T2p×ρ×Gr …(10)
さらに、(2)式において、ΔP=Prとし、Tm=T2pとし、Tgに(6)式のT1pを代入することにより、下記(11)式が得られる。
【0124】
Pr=T2p×Nm+T2p×ρ×Gr×Ng
=T2p×(Nm+(ρ×Gr×Ng)) …(11)
(11)式より、MG2の電力制御トルクT2pは、下記(12)式で示されることが理解される。
【0125】
T2p=Pr/(Nm+(ρ×Gr×Ng)) …(12)
また、(12)式および(10)式から、MG1の電力制御トルクT1pは下記(13)式で示される。
【0126】
T1p=Pr×(ρ×Gr)/(Nm+(ρ×Gr×Ng)) …(13)
MG1およびMG2が電力制御トルクT1p,T2pを出力すると、駆動軸32aに作用するトルクを変化させることなく(Tp=0)、電力指令値Prに従った電力を電力線54に対して入出力することができる。
【0127】
HVECU70は、ステップS130では、電力制御トルクT1p,T2pの出力を確保するために、ステップS105で設定されたMG1およびMG2のトルク上下限範囲を修正する。さらに、HVECU70は、ステップS140では、ステップS130で求められたMG1,MG2のトルク上下限値に基づいて、駆動軸32aのトルク上下限値Tpmax,Tpminを設定する。すなわち、ステップS130およびS140による処理は、図7に示した駆動トルク上下限設定部540の機能に対応する。
【0128】
ステップS130では、オリジナルのトルク上限値T1maxおよびトルク下限値T1minから電力制御トルクT1pを減算することによって、MG1について修正後のトルク上限値T1max♯およびトルク下限値T1min♯が求められる。同様に、オリジナルのトルク上限値T2maxおよびトルク下限値T2minから電力制御トルクT2pを減算することによって、MGについて修正後のトルク上限値T2max♯およびトルク下限値T2min♯が求められる。
【0129】
トルク上限値T1max♯およびトルク下限値T1min♯によって、電力制御トルクT1pを確保した上で、オリジナルのトルク上下限範囲T1max〜T1minに収まるように、駆動トルク確保のためにMG1が出力可能なトルク範囲が示される。同様に、トルク上限値T2max♯およびトルク下限値T2min♯によって、電力制御トルクT2pを確保した上で、駆動トルク確保のためにMG2が出力可能なトルク範囲が示される。
【0130】
ステップS140では、ステップS130で修正されたトルク上下限値に基づいて、駆動軸32aに出力される駆動トルクの上下限値が演算される。
【0131】
ここで、電力バランスを保った上で、すなわちΔPr=0として駆動トルクTpを発生するためのMG1,MG2のトルクTg,Tmの関係は、(2)式においてΔP=0と置くことで、下記(14)式で示される。
【0132】
Tg=−(Nm/Ng)×Tm …(14)
(14)式を(1)式に代入してTgを消去することにより、ΔP=0としたときの駆動トルクTpとMG2のトルクTmとの関係は、(15)式で示される。
【0133】
Tp=Tm×Gr+(1/ρ×Nm/Ng)×Tm
=(Gr+(1/ρ×Nm/Ng))×Tm …(15)
(11)式に、MG2についてのトルク上限値T2max♯およびT2min♯を代入することにより、MG2トルク制限からの駆動トルクTpの上下限値Tpmax2,Tpmin2が得られる。
【0134】
同様に、(14)式を(1)式に代入してTmを消去することにより、ΔP=0としたときの駆動トルクTpとMG1のトルクTgとの関係は、(16)式で示される。
【0135】
Tp=−(Ng/Nm×Gr)×Tg−(1/ρ)×Tg
=−(1/ρ+Gr×Ng/Nm)×Tg …(16)
したがって、(16)式に、MG1についてのトルク上限値T1max♯およびT1min♯を代入することにより、MG1トルク制限からの駆動トルクTpの上下限値Tpmax1,Tpmin1が得られる。
【0136】
図9を参照して、MG1トルク制限からの駆動トルクの上下限範囲(Tpmax1〜Tpmin1)と、MG2トルク制限からの駆動トルクの上下限範囲(Tpmax2〜Tpmin2)とが重なる範囲が、駆動トルクTpの上下限範囲に設定される。すなわち、駆動トルク上限値Tpmax=min(Tpmax1,Tpmax2)であり、駆動トルク下限値Tpmin=max(Tpmin1,Tpmin2)である。これにより、電力制御トルクT1p,T2pの出力を確保した上で、駆動軸32aに出力可能な駆動トルクTpの上下限範囲(Tpmax〜Tpmin)、すなわち、駆動トルク指令値Tp*の設定可能範囲が定められる。
【0137】
再び、図8を参照して、HVECU70は、ステップS150により、駆動トルク上下限値Tpmax,Tpminとユーザからの要求トルクTp*0とに基づいて、駆動トルク指令値Tp♯を設定する。ステップS150の処理は、図7の駆動トルク設定部550の機能に対応する。
【0138】
ステップS150では、駆動トルク指令値Tp*は、ステップS140で設定された駆動トルクTpの上下限範囲(Tpmax〜Tpmin)内で、要求トルクTp*0に最も近い値に設定される。具体的には、Tp*0>Tpmaxのときには、Tp*=Tpmaxに設定される。同様に、Tp*0<Tpminのときには、Tp*=Tpminに設定される。また、Tpmin<Tp*0<Tpmaxのときには、Tp*=Tp*0に設定されることになる。
【0139】
そしてHVECU70は、ステップS160により、ステップS150で設定された駆動トルク指令値Tp*から、MG1,MG2の駆動力制御トルクT1d,T2dを算出する。駆動力制御トルクT1d,T2dは、電力制御を実行した上で、駆動トルク指令値Tp*に従った駆動トルクを発生するためのMG1,MG2の出力トルクに相当する。ステップS160による処理は、図4のMGトルク換算部560の機能に対応する。
【0140】
駆動力制御トルクT1dは、式(16)において、Tp=Tp*とし、Tg=T1dとすることによって、式(17)によって求められる。
【0141】
T1d=−Tp*/(1/ρ+Gr×Ng/Nm) …(17)
同様に、駆動力制御トルクT2dは、式(15)において、Tp=Tp*とし、Tm=T2dとすることによって、式(18)によって求められる。
【0142】
T2d=Tp*/(Gr+(1/ρ×Nm/Ng)) …(18)
HVECU70は、ステップS170により、MG1,MG2のトルク指令値Tr1,Tr2を設定する。ステップS170の処理は、図7のMGトルク設定部570の機能に対応する。
【0143】
ステップS170では、下記の式(19),(20)に基づいて、最終的なトルク指令値T1r,T2rが算出される。
【0144】
T1r=T1p+T1d …(19)
T2r=T2p+T2d …(20)
そして、図2に示した電気システムによって、MG1,MG2の出力トルクが、トルク指令値T1r,T2rに従って制御される。
【0145】
このように、本実施の形態によるハイブリッド車両のバッテリレス走行制御では、電力制御による電圧維持が可能な状態であるか否かを逐次判定した上で、電力制御を実行するための電力制御トルクT1p,T2pが確保可能な範囲に絞って、駆動トルク出力のためのMG1,MG2の出力トルクを設定できる。
【0146】
このため、電力バランスが崩れた状態での電力制御が継続されることによって、システム電圧VHが正常範囲から外れることを防止できるので、バッテリレス走行中に電圧異常が発生して走行不能となる可能性を抑制できる。この結果、バッテリレス走行の航続距離を延ばすことが期待できる。
【0147】
さらに、電力制御が実行できるときには、コンバータ40が使用できないバッテリレス走行においても、システム電圧VHが安定するので、MG1,MG2の出力トルクの変動が抑制される。この結果、車両走行性が向上する。また、MG1,MG2の両方のトルクによって電力制御を行なうので、電力制御を実現した上でMG1,MG2から出力可能なトルク範囲が広くなる。この結果、バッテリレス走行における車両駆動力が確保し易くなることにより、走行性能が向上する。
【0148】
なお、本発明が適用されるハイブリッド車両の構成は、図1の例示に限定されるものではない点について確認的に記載する。具体的には、内燃機関と、内燃機関の動力の少なくとも一部を用いて発電する発電機と、発電機の発電電力が供給される電力線の電力によって駆動軸にトルクを出力する電動機とを用いてバッテリレス走行を実行することが可能な構成であれば、本実施の形態で説明したバッテリレス走行制御に従って、発電機および電動機の出力トルクを適切に設定することができる。
【0149】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、車載蓄電装置を不使用とした走行モードを有するハイブリッド車両の走行制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0151】
20 ハイブリッド車両、22 エンジン、23 クランク角センサ、24 エンジンECU、26 クランクシャフト、28 トーショナルダンパ、30 動力分割機構、31,65 サンギヤ、31a サンギヤ軸、32,66 リングギヤ、32a リングギヤ軸(駆動軸)、33,67 ピニオンギヤ、34 キャリア、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 コンバータ、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、45 モータECU、48 出力軸(MG2)、50 バッテリ、52 バッテリECU、54 電力ライン、60 変速機、61 ケース、70 HVECU、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、112,122 中性点、180 電圧センサ、300 MGトルク上下限設定部、400 電力制御部、410 電力制御範囲設定部、420 制御演算部、430 電力制御判定部、500 バッテリレス走行制御部、520,560 MGトルク換算部、540 駆動トルク上下限設定部、550 駆動トルク設定部、570 トルク設定部、C0 平滑コンデンサ、Fbl フラグ、MG1 モータジェネレータ(発電機)、MG2 モータジェネレータ(電動機)、Ne エンジン回転数、Ng MG1回転数、Nm MG2回転数、Pr*,Pr 電力指令値、Prmax 電力指令上限値、Prmin 電力指令下限値、T1r,T2r トルク指令値、T1p,T2p 電力制御トルク、T1max,T2max MGトルク上限値(オリジナル)、T1min,T2min トルク下限値(オリジナル)、T1d,T2d 駆動力制御トルク、Te エンジントルク、Tep 直達トルク、Tg MG1トルク、Tm MG2トルク、Tp*0 要求トルク、Tp* 駆動トルク指令値、Tpmax 駆動トルク上限値、Tpmin 駆動トルク下限値、VH システム電圧、VHr 電圧指令値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸との間に動力伝達経路を有するように構成された内燃機関と、
前記内燃機関の動力の少なくとも一部を用いて発電するための発電機と、
前記駆動軸との間に動力伝達経路を有するように構成された電動機と、
前記電動機および前記発電機の双方と電気的に接続された電力線に対して、開閉器を介して電気的に接続される蓄電装置と、
前記開閉器が開放された走行状態において、車両駆動力を発生しつつ前記電力線の電圧を制御するように、前記発電機および前記電動機の出力トルクを制御するための電力制御部とを備え、
前記電力制御部は、前記発電機および前記電動機のトルク範囲に基づいて、前記電動機および前記発電機の出力トルクによって発生できる前記電力線の電力変化量の上下限範囲を設定するとともに、前記電力線の電圧を電圧指令値に制御するために必要な入出力電力の指令値を算出し、前記指令値と前記上下限範囲との比較に基づいて、前記電動機および前記発電機の出力トルクによる電力制御の可否を判定する、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記電力制御部は、
前記車両駆動力を発生するための前記電動機の上限トルクおよび前記発電機の下限トルクに基づいて、前記電動機および前記発電機の出力トルクによって発生できる前記電力変化量の上限値および下限値を算出するための電力制御範囲設定部と、
前記電力線の電圧と前記電圧指令値との偏差に基づいて前記指令値を算出するための制御演算部と、
前記指令値が前記上限値から前記下限値までの範囲の外であるときに、前記電力線の電圧にさらに基づいて、前記電力制御の可否を判定する制御判定部とを含む、請求項1記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記電動機および前記発電機の各々は、永久磁石モータであり、
前記ハイブリッド車両は、
前記電力線と前記発電機との間に電気的に接続されて、前記発電機の出力トルクを制御するために前記電力線および前記発電機の間で双方向の電力変換を実行するための第1の電力変換器と、
前記電力線と前記電動機との間に電気的に接続されて、前記電動機の出力トルクを制御するために前記電力線および前記電動機の間で双方向の電力変換を実行するための第2の電力変換器とをさらに備え、
前記ハイブリッド車両は、前記開閉器が開放された走行状態において前記電力制御が不可と判断された場合には、前記第1の電力変換器の動作を停止して走行を継続するように制御される、請求項1または2記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記電力制御部は、前記電力線の電圧が所定の電圧範囲内であるときには、前記上限値から前記下限値までの範囲に制限するように前記指令値を設定する、請求項2記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
第1から第3の回転要素のうちのいずれか2つの回転要素の回転数が決定されると残余の1つの回転要素の回転数が決定されるとともに、前記第1から第3の回転要素のうちのいずれか2つの回転要素に入出力される動力に基づいて残余の1つの回転要素に動力を入出力するように構成される差動装置をさらに備え、
前記第1の回転要素は、前記内燃機関の出力軸と機械的に連結され、
前記第2の回転要素は、前記発電機の出力軸と機械的に連結され、
前記第3の回転要素は、前記駆動軸および前記電動機の出力軸と機械的に連結される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
駆動軸との間に動力伝達経路を有するように構成された内燃機関と、前記内燃機関の動力の少なくとも一部を用いて発電するための発電機と、前記駆動軸との間に動力伝達経路を有するように構成された電動機と、前記電動機および前記発電機の双方と電気的に接続された電力線に対して、開閉器を介して電気的に接続される蓄電装置とを搭載したハイブリッド車両の制御方法であって、
前記制御方法は、
走行中に前記蓄電装置の異常が検知された場合に、前記開閉器を開放するステップと、
前記開閉器が開放された走行状態において、車両走行のための前記発電機および前記電動機のトルク範囲を設定するステップと、
設定された前記トルク範囲に基づいて、前記電動機および前記発電機の出力トルクによって発生できる前記電力線の電力変化量の上下限範囲を算出するステップと、
前記電力線の電圧を電圧指令値に制御するために必要な前記電力変化量の指令値を算出するステップと、
前記指令値と前記上下限範囲との比較に基づいて、前記電動機および前記発電機の出力トルクによる電力制御の可否を判定するステップとを備える、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
前記判定するステップは、
前記指令値が前記上下限範囲の外であるときに、前記電力線の電圧にさらに基づいて、前記電力制御の可否を判定するステップを含む、請求項6記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項8】
前記電動機および前記発電機の各々は、永久磁石モータであり、
前記ハイブリッド車両は、
前記電力線と前記発電機との間に電気的に接続されて、前記発電機の出力トルクを制御するために前記電力線および前記発電機の間で双方向の電力変換を実行するための第1の電力変換器と、
前記電力線と前記電動機との間に電気的に接続されて、前記電動機の出力トルクを制御するために前記電力線および前記電動機の間で双方向の電力変換を実行するための第2の電力変換器とをさらに備え、
前記制御方法は、
前記開閉器が開放された走行状態において前記電力制御が不可と判断された場合には、前記第1の電力変換器の動作を停止して走行を継続するように制御するステップをさらに備える、請求項6または7に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項9】
前記判定するステップは、
前記指令値が前記上限値から前記下限値までの範囲の外であり、かつ、前記電力線の電圧が所定の電圧範囲内であるときには、前記上限値から前記下限値までの範囲に制限するように前記指令値を設定する、請求項7記載のハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−153220(P2012−153220A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13151(P2011−13151)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】