ハイブリッド車両の駆動力制御装置
【課題】駆動力段差の発生を抑制するに好適なハイブリッド車両の駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】加速意図としてアクセル開速度ΔAPOを用い、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値未満の低速度であるときは、実アクセル開度に対して小さい値となるような遅開き特性βにより修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値及び第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値以上である時は、実アクセル開度に対して前記遅開き特性βよりも大きくなる早開き特性αにより修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値の間であれば、前記遅開き特性βと早開き特性αとの中間特性となるような開度特性に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替えるようにした。
【解決手段】加速意図としてアクセル開速度ΔAPOを用い、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値未満の低速度であるときは、実アクセル開度に対して小さい値となるような遅開き特性βにより修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値及び第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値以上である時は、実アクセル開度に対して前記遅開き特性βよりも大きくなる早開き特性αにより修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値の間であれば、前記遅開き特性βと早開き特性αとの中間特性となるような開度特性に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替えるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータジェネレータからの動力のみにより走行する電気走行(EV)モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力により走行可能なハイブリッド走行(HEV)モードとを有するハイブリッド車両の駆動力制御装置に関する。特に、アクセル開度の修正により、加速意図に応じたEV走行時間の延長を可能にするに好適なハイブリッド車両の駆動力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクセル開度の修正により、加速意図に応じたEV走行時間の延長を可能にするハイブリッド車両の駆動力制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、実アクセル開度と制御用アクセル開度との対応関係が、1:1に変化する早開き特性と、1:1未満に変化する遅開き特性と、を備える。そして、運転者の加速意図を判断する因子としてアクセル開速度が、予め設定した閾値未満である間は遅開き特性に基づき、アクセル開速度が予め設定した閾値を超える場合には早開き特性に基づき、制御入力用アクセル開度を設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-126901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、早開き線を選択するアクセル開速度閾値を超えた時点でアクセル開速度の大きさに関わらず早開き特性に切り替えるため、アクセル開速度が前記閾値を僅かに超えても早開き特性を選択することになる。このため、早開き特性に切り替った途端に駆動力が必要以上に上昇する駆動力段差を発生し、車両のコントロール性を悪化させる場合があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、駆動力段差の発生を抑制するに好適なハイブリッド車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能なハイブリッド車両を対象とする。
【0008】
そして、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両である。
【0009】
本発明はかかるハイブリッド車両において、加速意図としてアクセル開速度を用い、アクセル開速度が第一閾値未満の低速度であるときは、アクセル開度の検出値に対して小さい値となるような遅開き特性により修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。
【0010】
また、アクセル開速度が第一閾値以上であり且つ第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値以上である時は、アクセル開度の検出値に対して前記遅開き特性よりも大きくなるような早開き特性により修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。
【0011】
また、アクセル開速度が第一閾値と第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値の間であれば、前記遅開き特性と早開き特性との中間特性となるような開度特性に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替えるようにした。
【発明の効果】
【0012】
したがって、本発明では、第二閾値を第一閾値よりも大きい値で、かつ遅開き特性から早開き特性に切り替えても駆動力段差が小さくなるアクセル開速度値に設定した。このため、アクセル開速度が第二閾値を超える場合には、遅開き特性から早開き特性に切り替えても駆動力段差を小さくでき、運転者の駆動力要求に応じた走行が可能となる。
【0013】
また、アクセル開速度が第一閾値と第二閾値の間であれば、前記遅開き特性と早開き特性の中間特性となるような開度特性とすることで、運転者の駆動力要求に応じた走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の着想を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図。
【図2】パワートレーンの制御システムを示すブロック線図。
【図3】制御システムにおける統合コントローラの機能別ブロック線図。
【図4】目標駆動力演算部が目標駆動力を求めるときに用いる目標駆動力の特性線図。
【図5】目標駆動力演算部がモータジェネレータのアシストトルクを求めるときに用いるアシストトルクの特性線図。
【図6】ハイブリッド車両の電気走行(EV)モード領域およびハイブリッド走行(HEV)モード領域を示す領域線図。
【図7】ハイブリッド車両のバッテリ蓄電状態に対する目標充放電量特性を示す特性線図。
【図8】車速に応じた最良燃費線までのエンジントルクの上昇経過を示すエンジントルク上昇経過説明図。
【図9】変速制御部で変速機の変速比を設定する変速特性線図。
【図10】実アクセル開度に対する制御入力アクセル開度の早開き特性および遅開き特性を示す特性線図。
【図11】アクセル開度選択判定の制御フローチャート。
【図12】制御用アクセル開度演算の制御フローチャート。
【図13】アクセル開速度の第一閾値を示すマップ。
【図14】アクセル開速度の第二閾値を示すマップ。
【図15】第2クラッチの配列を変更した例(A),(B)を示すハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のハイブリッド車両の駆動力制御装置の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の前記したハイブリッド車両の駆動力制御装置を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを例示する。このハイブリッド車両は、フロントエンジン・リヤホイールドライブ車(後輪駆動車)をベース車両とし、これをハイブリッド化したものである。図中、1は、第1動力源としてのエンジンであり、2は駆動車輪(後輪)である。
【0017】
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、通常の後輪駆動車と同様にエンジン1の車両前後方向後方に自動変速機3をタンデムに配置している。即ち、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合してモータジェネレータ5を設け、このモータジェネレータ5を、第2動力源として具える。
【0018】
モータジェネレータ5は、駆動モータ(電動機)として作用し、ジェネレータ(発電機)としても作用するもので、エンジン1および自動変速機3間に配置する。このモータジェネレータ5およびエンジン1間、より詳しくは、軸4とエンジンクランクシャフト1aとの間に第1クラッチ6を介挿し、この第1クラッチ6によりエンジン1およびモータジェネレータ5間を切り離し可能に結合する。ここで第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
【0019】
モータジェネレータ5および駆動車輪(後輪)2間に第2クラッチ7を介挿し、この第2クラッチ7によりモータジェネレータ5および駆動車輪(後輪)2間を切り離し可能に結合する。第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
【0020】
自動変速機3は、周知の任意なものでよく、複数の変速摩擦要素(クラッチやブレーキ等)を選択的に締結・解放することで、これら変速摩擦要素の締結・解放の組み合わせにより伝動系路(変速段)を決定するものとする。従って自動変速機3は、入力軸3aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸3bに出力する。この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置8により左右後輪2へ分配して伝達され、車両の走行に供される。但し自動変速機3は、上記したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよいのは言うまでもない。
【0021】
ところで図1においては、モータジェネレータ5および駆動車輪2を切り離し可能に結合する第2クラッチ7として専用のものを新設するのではなく、自動変速機3内に既存する変速摩擦要素を流用する。この場合、第2クラッチ7が締結により上記の変速段選択機能(変速機能)を果たして自動変速機3を動力伝達状態にするのに加え、第1クラッチ6の解放・締結との共働により、後述するモード選択機能を果たし得ることとなり、専用の第2クラッチが不要でコスト上大いに有利である。
【0022】
なお、第2クラッチ7は専用のものを新設してもよく、この場合、図15(A)のように、第2クラッチ7は自動変速機3の入力軸3aとモータジェネレータ軸4との間に設けたり、図15(B)のように、自動変速機3の出力軸3bと後輪駆動系との間に設ける。
【0023】
上記した図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、停車状態からの発進時などを含む低負荷・低車速時に用いられる電気走行(EV)モードが要求される場合、第1クラッチ6を解放し、第2クラッチ7の締結により自動変速機3を動力伝達状態にする。なお第2クラッチ7は、自動変速機3内の変速摩擦要素のうち、現変速段で締結させるべき変速摩擦要素であって、選択中の変速段ごとに異なる。
【0024】
この状態でモータジェネレータ5を駆動すると、当該モータジェネレータ5からの出力回転のみが変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して変速機出力軸3bより出力する。変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をモータジェネレータ5のみによって電気走行(EV走行)させることができる。
【0025】
高速走行時や大負荷走行時などで用いられるハイブリッド走行(HEV走行)モードが要求される場合、第2クラッチ7の締結により自動変速機3を対応変速段選択状態(動力伝達状態)にしたまま、第1クラッチ6も締結させる。この状態では、エンジン1からの出力回転およびモータジェネレータ5からの出力回転の双方が変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸3bより出力する。変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をエンジン1およびモータジェネレータ5の双方によってハイブリッド走行(HEV走行)させることができる。
【0026】
かかるHEV走行中において、エンジン1を最適燃費で運転させるとエネルギーが余剰となる場合、この余剰エネルギーによりモータジェネレータ5を発電機として作動させることで余剰エネルギーを電力に変換する。そして、この発電電力をモータジェネレータ5のモータ駆動に用いるよう蓄電しておくことでエンジン1の燃費を向上させることができる。
【0027】
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンを成すエンジン1、モータジェネレータ5、第1クラッチ6、および第2クラッチ7は、図2に示すようなシステムにより制御する。図2の制御システムは、パワートレーンの動作点を統合制御する統合コントローラ20を具える。パワートレーンの動作点は、目標エンジントルクと、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)と、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量とで規定する。
【0028】
統合コントローラ20には、上記パワートレーンの動作点を決定するために、下記各信号が入力される。入力される信号としては、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ11からの信号と、モータジェネレータ回転数を検出するモータジェネレータ回転センサ12からの信号と、変速機入力回転数を検出する入力回転センサ13からの信号と、がある。また、変速機出力回転数を検出する出力回転センサ14からの信号と、車両への要求負荷を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ15(運転負荷検出手段)からの信号と、が入力される。さらに、ブレーキ油圧(BPS)を検出するブレーキ油圧センサ23と、モータジェネレータ5用の電力を蓄電しておくバッテリ9の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ16からの信号と、が入力される。
【0029】
なお、上記したセンサのうち、エンジン回転センサ11、モータジェネレータ回転センサ12、入力回転センサ13、および出力回転センサ14はそれぞれ、図1に示すように配置することができる。
【0030】
統合コントローラ20は、上記入力情報のうちアクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数(車速VSP)から、運転者が希望している車両の駆動力を実現可能な運転モード(EVモード、HEVモード)を選択する。また、統合コントローラ20は、アクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数(車速VSP)から、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)、目標第1クラッチ伝達トルク容量、および目標第2クラッチ伝達トルク容量をそれぞれ演算する。目標エンジントルクはエンジンコントローラ21に供給され、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)はモータジェネレータコントローラ22に供給される。
【0031】
エンジンコントローラ21は、エンジントルクが目標エンジントルクとなるようエンジン1を制御する。また、モータジェネレータコントローラ22はモータジェネレータ5のトルク(または回転数)が目標モータジェネレータトルク(または目標モータジェネレータ回転数)となるよう、バッテリ9およびインバータ10を介してモータジェネレータ5を制御する。
【0032】
統合コントローラ20は、目標第1クラッチ伝達トルク容量および目標第2クラッチ伝達トルク容量に対応したソレノイド電流を第1クラッチ6および第2クラッチ7の締結制御ソレノイド(図示せず)に供給する。そして、統合コントローラ20は、第1クラッチ6の伝達トルク容量が目標伝達トルク容量に一致するよう、また、第2クラッチ7の伝達トルク容量が目標第2クラッチ伝達トルク容量に一致するよう、第1クラッチ6および第2クラッチ7を個々に締結力制御する。
【0033】
なお、運転者による要求負荷を表すアクセル開度APOについては、これをそのまま用いず、後述するアクセル開度演算手段80より演算した制御用アクセル開度が、上記のモード選択や駆動力制御に使用される。
【0034】
統合コントローラ20は、上記した運転モード(EVモード、HEVモード)の選択、そして目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標第1クラッチ伝達トルク容量、および目標第2クラッチ伝達トルク容量の演算を、図3の機能別ブロック線図で示すように実行する。
【0035】
なお、図3に示す機能ブロック線図において、入力されるアクセル開度APOは、前記したアクセル開度演算手段80により設定された制御用アクセル開度が入力される。以下の説明では、アクセル開度APOは、制御用アクセル開度を示している。
【0036】
目標駆動力演算部30では、図4に示す目標定常駆動トルクマップと図5に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速から、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0037】
運転モード選択部40では、図6に示すEV−HEV領域マップを用いて、アクセル開度APOおよび車速VSPから目標とする運転モードを決定する。図6に示すEV−HEV領域マップから明らかなように、高負荷・高車速時はHEVモードを選択し、低負荷・低車速時はEVモードを選択する。また、運転モード選択部40では、EV走行中にアクセル開度APOおよび車速VSPの組み合わせで決まる運転点がEV→HEV切り換え線を越えてHEV領域に入るとき、EVモードからエンジン1始動を伴うHEVモードへのモード切り換えを行う。また、運転モード選択部40では、HEV走行中に運転点がHEV→EV切り換え線を越えてEV領域に入るとき、HEVモードからエンジン1停止およびエンジン1切り離しを伴うEVモードへのモード切り換えを行うものとする。エンジン始動停止線はバッテリの容量SOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下させて設定されている。
【0038】
エンジン1の始動処理は、EV状態で図6に示すエンジン始動線をアクセル開度APOが越えた時点で、実行される。即ち、前記第2クラッチ7を半クラッチ状態にスリップさせるように第2クラッチ7のトルク容量を制御し、第2クラッチ7がスリップ開始したと判断した後に第1クラッチ6の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を作動させてモータジェネレータ回転数とエンジン回転数が近くなったところで第1クラッチ6を完全に締結し、その後第2クラッチ7をロックアップさせてHEVモードに遷移させる。
【0039】
図3の目標充放電演算部50では、図7に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリ蓄電状態SOCから目標充放電量(電力)を演算する。
【0040】
動作点指令部60では、アクセル開度APOと、目標駆動力と、目標運転モードと、車速VSPと、目標充放電電力とから、これらの動作点到達目標を演算する。即ち、動作点到達目標として、時々刻々の過渡的な目標エンジントルクと、目標モータジェネレータトルクと、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量に対応した目標ソレノイド電流と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量と、目標変速段とを演算する。また、現在の動作点から図8に示す最良燃費線までエンジントルクを上げるのに必要な出力を演算し、これと上記目標充放電量(電力)tPとを比較し、小さい方の出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0041】
変速制御部70では、上記の目標第2クラッチ伝達トルク容量と、目標変速段とを入力され、これら目標第2クラッチ伝達トルク容量および目標変速段が達成されるよう自動変速機3内の対応するソレノイドバルブを駆動する。これにより図1の自動変速機3は、第2クラッチ7を目標第2クラッチ伝達トルク容量が達成されるよう締結制御されつつ、目標変速段が選択された動力伝達状態になる。図8の実線はアップシフト線、破線はダウンシフト線をそれぞれ示す変速マップである。そして、車速とアクセル開度APOから現在の変速段から次変速段をいくつにするか判定し、変速要求があれば変速クラッチを制御をして変速させる。
【0042】
アクセル開度演算手段80は、実アクセル開度との対応関係が、1:1に変化する早開き特性の制御用アクセル開度と、1:1未満に変化する遅開き特性の制御用アクセル開度と、を演算し、アクセルペダルの踏込み状態に応じて使い分ける。即ち、早開き特性の制御用アクセル開度は、検出された実アクセル開度APOに対して、図10に示すように、1:1の関係を持つよう早開き特性αにより決定した通常の制御用アクセル開度である。また、遅開き特性の制御用アクセル開度は、検出された実アクセル開度APOに対して、図10に示すように、1:1未満の関係を持つよう遅開き特性βにより小さく修正して得られる制御用アクセル開度である。なお、遅開き特性βは、例えば、実アクセル開度APO=2/8〜3/8未満の低開度領域D2でのみ上記の遅開き特性βを持つものとし、それ以外の領域D2より小さいアクセル開度領域D1及び領域D2より大きいアクセル開度領域D3では、早開き特性αと同じ特性を持つものとする。
【0043】
アクセル開度演算手段80は、図11に示すアクセル開度選択判定及び図12に示す制御用アクセル開度演算の制御フローチャートに基づいて、遅開き特性β及び早開き特性αに基づく制御用アクセル開度を設定する。
【0044】
図11に示すアクセル開度選択判定の制御フローチャートは、アクセル開速度に応じて、遅開き特性βと、早開き特性αを選択するための早開き候補とを選定するものである。
【0045】
先ず、ステップS1では、変速機3の変速モードがスポーティな走行感覚を必要とするマニアルレンジであるか否かを判定する。変速機3がマニアルレンジである時は、運転者がスポーティな走行感覚を選択していると判定してステップS8を経由してステップS9へ進み、変速機3がマニアルレンジでない時はステップS2へ進む。
【0046】
ステップS2では、車両走行モードが高駆動力を必要とするHEVモードであるか否かを判定する。走行モードがHEVモードである時は、運転者がスポーティな走行感覚を選択していると判定してステップS8を経由してステップS9に進み、走行モードがHEVモードでない時(EVモード)はステップS3へ進む。
【0047】
ステップS3では、加速意図判定がスポーティ状態であるか否かを判定する。加速意図判定としては、例えば、車両の前後方向加速度、横加速度が予め設定した設定値を超えている車両走行状態とか、坂道等の路面状態に基づいて、運転者の加速意図を検出するスポーティ走行検出装置24により求める。加速意図判定がスポーティ状態である時は、運転者がスポーティな走行感覚を選択していると判定してステップS8を経由してステップS9に進み、加速意図判定がスポーティ状態でない時はステップS4へ進む。
【0048】
ステップS8では、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にあるか否かを判定する。そして、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にない時にはステップS4へ進み、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にある時にはステップS9に進み、早開き特性αとして判定させる。
【0049】
即ち、ステップS1で判定するマニアルレンジ選択時やステップS3で判定するスポーティ走行時は、駆動力要求が大きいため、低開度から大きな駆動力をいつもだせるようにすることで、加速意図にあった走行ができるようになる。
【0050】
また、ステップS2で判定するHEVモード走行においては、遅開き特性βによる制御用アクセル開度では、アクセル操作感と駆動力変化とのマッチングに違和感を生じる場合がある。このため、HEVモードにおいては、遅開き特性βを選択しないようにすることで、実アクセル開度に対する駆動力がリニアに近くなり、違和感を低減できる。
【0051】
ところで、ステップS1〜ステップS3のいずれかの判定がYESとなった場合に、遅開き特性βの制御用アクセル開度が選択された状態から直ちに早開き特性αの制御用アクセル開度に変更すると、制御用アクセル開度が急激に変化(増加)する場合がある。即ち、図10において、遅開き特性βと早開き特性αとは、実アクセル開度がゼロ付近領域D1と特定の開度以上の領域D3では重なる特性となっているが、これらの間の領域D2では遅開き特性βと早開き特性αとが重なっていない。このため、遅開き特性βと早開き特性αとが重なっていない領域D2で制御用アクセル開度を遅開き特性βから早開き特性αへ変更すると、制御用アクセル開度が急激に大きくなり、駆動力段差をもって発生される駆動力が急激に大きくなり、運転感覚に違和感を生じる。以上の理由により、ステップS8での判定により、遅開き特性βと早開き特性αとの制御用アクセル開度に開度差が小さいアクセル開度領域D1,D3で、遅開き特性βから早開き特性αへ切り替えるようにすることで、駆動力段差による違和感を低減することができる。
【0052】
ステップS4では、アクセル開度選択判定の前回値が遅開き特性βであるか否かを判定する。そして、前回値が遅開き特性βである時にはステップS5へ進み、前回値が早開き特性αである時にはステップS6へ進む。
【0053】
ステップS5では、アクセル開速度ΔAPOが予め設定した第1閾値を超える時にはステップS10へ進み、早開き候補と判定し、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超えた際のアクセル開速度ΔAPOを記憶する。また、ステップS5でのアクセル開速度ΔAPOが予め設定した第1閾値未満である時にはステップS11へ進み、遅開き特性βと判定する。即ち、アクセル開度選択判定の前回値が遅開き特性βである場合には、アクセル開速度ΔAPOが、第一閾値を超える場合に早開き候補とし、第一閾値未満である場合には遅開き特性βに留める。また、ステップS10で記憶された早開き候補となった際のアクセル開速度ΔAPOは、後述する制御用アクセル開度の演算に使用される。
【0054】
前記アクセル開速度ΔAPOを判定して遅開き特性βと早開き候補とを選択する第一閾値は、図13に示すように、車速が低い領域でアクセル開速度を大きくし、車速の上昇に連れてアクセル開速度を小さくするよう設定している。即ち、低車速域では、変速比がローギヤであり、駆動力及びその変化割合が大きいため、制御用アクセル開度が遅開き特性βから早開き特性αに変化する際の駆動力段差も大きくなる。このため、低車速域では、早開き候補へ変化するアクセル開速度を設定する第一閾値を大きく設定している。しかしながら、高車速域は、変速比が比較的ハイギヤであり、駆動力が小さくなるため、走りの性能を良くするために、小さいアクセル開速度ΔAPOで早開き候補に切り替えたいためである。
【0055】
ステップS6では、アクセル開速度ΔAPOが予め設定した第1閾値を超える時にはステップS12へ進み、早開き候補と判定し、アクセル開速度ΔAPOが予め設定した第1閾値未満である時にはステップS7へ進む。
【0056】
ステップS7では、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にあるか否かを判定する。そして、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にない時にはステップS12へ進み、早開き特性αを継続させ、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にある時にはステップS13へ進み、遅開き特性βとして判定させる。
【0057】
即ち、アクセル開度選択判定の前回値が早開き特性αである場合には、アクセル開速度ΔAPOが、第一閾値を超える場合と、第一閾値を下回る場合であっても実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にない時には、早開き特性αを維持させる。また、アクセル開速度ΔAPOが、第一閾値を下回る場合であり且つ実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にある時に、遅開き特性βと判定する。
【0058】
言い換えれば、遅開き特性βが選択されている状態では、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値未満である間は遅開き特性βとし、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超える時に早開き候補とする。また、早開き特性αが選択されている状態では、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超える時に早開き特性αを維持させる。また、早開き特性αが選択されている状態では、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値未満であっても、早開き特性αと遅開き特性βとが重ならない実アクセル開度領域D2では早開き特性αを維持させる。そして、早開き特性αと遅開き特性βとが重なる実アクセル開度領域D1,D3となった時点で遅開き特性βへ変更させる。このように、早開き特性αと遅開き特性βとが重なる実アクセル開度領域D1,D3、即ち、遅開き特性βと早開き特性αとの制御用アクセル開度に開度差が小さいところで、早開き特性αと遅開き特性βとを切り替えることにより、駆動力段差による違和感を低減することができる。
【0059】
図12に示す制御用アクセル開度演算の制御フローチャートは、遅開き特性β・早開き特性α及び両者の中間特性γの制御用アクセル開度を演算して出力するものである。
【0060】
先ず、ステップS21では、図11に示すアクセル開度選択判定が遅開き特性βであるか否かが判定される。アクセル開度選択判定が、遅開き特性βの判定である時にはステップS24へ進み、遅開き特性βの判定でない(早開き候補及び早開き特性α)時にはステップS22へ進む。ステップS22では、図11に示すアクセル開度選択判定が早開き特性αの判定であるか否かが判定される。アクセル開度選択判定が、早開き特性αである時にはステップS26へ進み、早開き特性αの判定でない(早開き候補)時にはステップS23へ進む。ステップS23では、図11に示すアクセル開度選択判定が、早開き候補となった際の記憶されたアクセル開速度ΔAPOが第二閾値以下であるか否かが判定される。
【0061】
前記した第二閾値は、図14に示すように、早開き特性αの制御用アクセル開度と遅開き特性βの制御用アクセル開度との差開度に応じて、実アクセル開度毎に、アクセル開速度ΔAPOの判定値を設定する。具体的には、図10において、遅開き特性βのポイントAと早開き特性αのポイントBとは実アクセル開度は同じであるが、制御用アクセル開度はA−B間の間隔だけ開度が隔たっている。また、早開き特性αのポイントBと同じ制御用アクセル開度を備える遅開き特性βにおけるアクセル開度はポイントCである。従って、遅開き特性βでアクセル開度がポイントAに到達した時点のアクセル開速度ΔAPOにより所定時間後にポイントCに到達する、若しくは、超えることができるアクセル開速度(第二閾値)を設定する。そして、この第二閾値にポイントAでのアクセル開速度ΔAPOが到達していれば、遅開き特性βから早開き特性αに切り替えるようにする。
【0062】
このようにすると、制御用アクセル開度は、遅開き特性βのポイントC近辺から早開き特性αのポイントBに移行するのみとできるため、駆動力段差を発生させない、若しくは、低減できることとなる。即ち、遅開き特性βにおいて実アクセル開度がポイントAから、(実アクセル開度がポイントAと同じである)早開き特性αのポイントBと制御用アクセル開度が同じとなる遅開き特性βのポイントCに、所定時間後に到達するアクセル開速度ΔAPOにより設定する。図14に示すアクセル開速度ΔAPOの第二閾値は、実アクセル開度毎に早開き特性αと遅開き特性βとの乖離に応じて夫々設定したものである。
【0063】
前記したアクセル開速度ΔAPOの第二閾値は、早開き特性αと遅開き特性βの差が大きくなる実アクセル開度において大きく、第二閾値が最大値となる実アクセル開度からアクセル開度増加側及び減少側へ離れるほど、アクセル開速度ΔAPOの第二閾値を小さくなる。このため、早開き特性αと遅開き特性βの差が小さいときは、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超えた時点で、遅開き特性βから早開き特性αに切り替えても、駆動力段差が小さいために違和感を生じない。このことは、例えば、ギヤ比がハイギヤで実アクセル開度が小開度で駆動力が小さくなる高車速領域においては、早開き特性αと遅開き特性βの差が小さく第二閾値も小さくなる。このため、小さいアクセル開速度ΔAPOで駆動力段差を抑制しつつ早開き特性αに切り替えることができ、走りの性能を良くすることができる。
【0064】
ステップS23において、早開き候補となった際の記憶されたアクセル開速度が第二閾値以下である時にはステップS25へ進み、早開き候補となった際の記憶されたアクセル開速度が第二閾値を超える時にはステップS26へ進む。
【0065】
ステップS24では、図10の遅開き特性βに基づいて制御用アクセル開度を演算する。ステップS26では、図10の早開き特性αに基づいて制御用アクセル開度を演算する。また、ステップS25においては、ステップS10で保存されたアクセル開速度ΔAPOに基づいて、早開き特性αと遅開き特性βとの間に設定した(図10の破線で示す)中間早開き特性γに基づいて制御用アクセル開度を演算する。この中間早開き特性αは、保存されたアクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値との間にある場合に設定され、保存されたアクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値との間を内分する比率に応じて補間演算する下記式、
制御用アクセル開度=遅開き特性βに基づいて演算された制御用アクセル開度+[{早開き特性αの制御用アクセル開度(ポイントB)−遅開き特性βの制御用アクセル開度(ポイントA)}×(保存されたアクセル開速度ΔAPO−第一閾値)/(第二閾値−第一閾値)]・・・式
に基づき制御用アクセル開度を演算する。
【0066】
このように、保存されたアクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値の間であれば、遅開き特性βと早開き特性αの間となるような開度特性とすることで、開度特性の切り替わり時の駆動力段差を低減することができ、運転者の駆動力要求に応じた走行を可能とすることができる。
【0067】
ステップS27では、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βが重なる領域D1,D3にあるか否かが判定される。そして、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βが重なる領域D1,D3にない場合には、ステップS24〜ステップS26のいずれかにより演算した制御用アクセル開度を継続させる。しかし、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βが重なる領域D1,D3にある場合には、ステップS28に進み、ステップS10で記憶したアクセル開速度ΔAPOをリセットし、ステップS25により演算した制御用アクセル開度をリセットする。
【0068】
これは、保存したアクセル開速度ΔAPOに応じて制御用アクセル開度を演算するため、使用するアクセル開速度ΔAPOが変動すると演算した制御用アクセル開度も変動し、その結果、駆動力も変動して、車両の挙動が乱れる可能性があるためである。よって、ステップS25で演算に使用するアクセル開速度ΔAPOは、運転状態に応じて、ステップS10により常に更新される。なお、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βが重なる領域D1,D3では、遅開き特性β・早開き特性αの制御用アクセル開度と中間早開き特性γの制御用アクセル開度との開度差が小さい。このため、中間早開き特性γをリセットして開度特性を切り替えても駆動力段差による違和感を低減することができるためである。
【0069】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0070】
(ア)加速意図としてアクセル開速度ΔAPOを用い、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値未満の低速度であるときは、実アクセル開度の検出値に対して小さい値となるような遅開き特性βにより修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。
【0071】
また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値以上であり且つ第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値以上である時は、実アクセル開度の検出値に対して前記遅開き特性βよりも大きくなるような早開き特性αにより修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。
【0072】
また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値の間であれば、前記遅開き特性βと早開き特性αとの中間特性となるような開度特性に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替えるようにした。
【0073】
即ち、第二閾値を第一閾値よりも大きい値で、かつ遅開き特性βから早開き特性αに切り替えても駆動力段差が小さくなるアクセル開速度に設定した。このため、アクセル開速度ΔAPOが第二閾値を超える場合には、遅開き特性βから早開き特性αに切り替えても駆動力段差を小さくでき、運転者の駆動力要求に応じた走行が可能となる。
【0074】
また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値の間であれば、前記遅開き特性βと早開き特性αとの中間特性となるような開度特性γとすることで、運転者の駆動力要求に応じた走行が可能となる。
【0075】
(イ)車両の前後加速度、横加速度、道路勾配による車両走行状態及び路面状態に基づいて運転者の加速意図を検出するスポーティ走行検出装置を備える。そして、前記遅開き特性βを選択している時には、前記スポーティ走行検出装置がスポーティ走行状態と判定した場合には、アクセル開速度ΔAPOに関わらず遅開き特性βから早開き特性αに切り替え、スポーティ走行状態と判定している間は早開き特性αを選択し続ける。また、前記早開き特性αを選択している時は、スポーティ走行状態と判定している間は遅開き特性βに戻らないようにしている。即ち、駆動力要求が大きいスポーティ走行時は、低開度から大きな駆動力をいつもだせるようにすることで、加速意図にあった走行ができるようになる。
【0076】
(ウ)ハイブリッド走行モードが選択されている走行中においては、早開き特性αが選択される。即ち、EV走行モードを維持させやすくするために、遅開き特性βとしてHEV走行に切り替わるアクセル開度を大きくしている。そのため、アクセル開度が大きくなるにつれてアクセル開度に対する駆動力の出方が急速に大きくなるので、リニア感が損なわれる。ただし、同時にEVモードからHEVモードへの切り替わりが起こるので、その違和感がやや軽減できている。従って、HEVモード走行においては、違和感を生じる遅開き特性βを選択しないようにすることで、アクセル開度に対する駆動力がリニアに近くなり、違和感を低減できる。
【0077】
(エ)遅開き特性βから早開き特性αへの切り替え、及び、早開き特性αから遅開き特性βへの切り替えは、遅開き特性βと早開き特性αとが重なっている実アクセル開度領域D1,D3で実行される。即ち、遅開き特性βと早開き特性αの差が大きい実アクセル開度領域D2で、遅開き特性βから早開き特性αへ及びその逆へ切り替えると駆動力段差が大きく違和感が大きくなる。このため、遅開き特性βと早開き特性αの差が小さい実アクセル開度領域D1,D3で、切り替えるようにすることで、駆動力段差による違和感を低減することができる。
【0078】
(オ)第二閾値は、実アクセル開度毎の早開き特性αと遅開き特性βとの差に基づいて設定され、早開き特性αと遅開き特性βとが接近するに連れて第二閾値は小さく設定される。このため、早開き特性αと遅開き特性βの差が小さいときは、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超えた時点で、遅開き特性βから早開き特性αに切り替えても、駆動力段差が小さいために違和感を生じない。このことは、例えば、ギヤ比がハイギヤで実アクセル開度が小開度で駆動力が小さくなる高車速領域においては、早開き特性αと遅開き特性βの差が小さく第二閾値も小さくなる。このため、小さいアクセル開速度ΔAPOで駆動力段差を抑制しつつ早開き特性αに切り替えることができ、走りの性能を良くすることができる。
【0079】
(カ)アクセル開速度ΔAPOが第一閾値以上となったときのアクセル開速度値を保存する。そして、前記遅開き特性βと早開き特性αとの中間特性となるような開度特性は、前記保存されたアクセル開速度ΔAPO値で第一第二閾値間を内分する比率に基づいて、早開き特性αと遅開き特性βとの間を内分するよう補間演算した開度特性γとする。そして、前記保存されたアクセル開速度ΔAPO値若しくはアクセル開速度ΔAPO値に基づいて補完演算された開度特性は、実アクセル開度が遅開き特性βと早開き特性αとが重なっているアクセル開度領域D1,D3に到達した時点でリセットされる。即ち、保存したアクセル開速度ΔAPOに応じて制御用アクセル開度を演算するため、使用するアクセル開速度ΔAPOが変動すると演算した制御用アクセル開度も変動し、その結果、駆動力も変動して、車両の挙動が乱れる。よって、保存されたアクセル開速度ΔAPOは、運転状態に応じて、常に更新されるようにして、駆動力の変動や車両の挙動が乱れを防止する。
【符号の説明】
【0080】
1 エンジン
2 駆動車輪
3 変速機
5 モータジェネレータ
6 第1クラッチ
7 第2クラッチ
8 ディファレンシャルギヤ装置
9 バッテリ
10 インバータ
11 エンジン回転センサ
12 モータジェネレータ回転センサ
13 変速機入力回転センサ
14 変速機出力回転センサ
15 アクセル開度センサ
16 バッテリ蓄電状態センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータジェネレータコントローラ
24 スポーティ走行検出装置
80 アクセル開度演算手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータジェネレータからの動力のみにより走行する電気走行(EV)モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力により走行可能なハイブリッド走行(HEV)モードとを有するハイブリッド車両の駆動力制御装置に関する。特に、アクセル開度の修正により、加速意図に応じたEV走行時間の延長を可能にするに好適なハイブリッド車両の駆動力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクセル開度の修正により、加速意図に応じたEV走行時間の延長を可能にするハイブリッド車両の駆動力制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、実アクセル開度と制御用アクセル開度との対応関係が、1:1に変化する早開き特性と、1:1未満に変化する遅開き特性と、を備える。そして、運転者の加速意図を判断する因子としてアクセル開速度が、予め設定した閾値未満である間は遅開き特性に基づき、アクセル開速度が予め設定した閾値を超える場合には早開き特性に基づき、制御入力用アクセル開度を設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-126901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、早開き線を選択するアクセル開速度閾値を超えた時点でアクセル開速度の大きさに関わらず早開き特性に切り替えるため、アクセル開速度が前記閾値を僅かに超えても早開き特性を選択することになる。このため、早開き特性に切り替った途端に駆動力が必要以上に上昇する駆動力段差を発生し、車両のコントロール性を悪化させる場合があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、駆動力段差の発生を抑制するに好適なハイブリッド車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能なハイブリッド車両を対象とする。
【0008】
そして、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両である。
【0009】
本発明はかかるハイブリッド車両において、加速意図としてアクセル開速度を用い、アクセル開速度が第一閾値未満の低速度であるときは、アクセル開度の検出値に対して小さい値となるような遅開き特性により修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。
【0010】
また、アクセル開速度が第一閾値以上であり且つ第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値以上である時は、アクセル開度の検出値に対して前記遅開き特性よりも大きくなるような早開き特性により修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。
【0011】
また、アクセル開速度が第一閾値と第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値の間であれば、前記遅開き特性と早開き特性との中間特性となるような開度特性に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替えるようにした。
【発明の効果】
【0012】
したがって、本発明では、第二閾値を第一閾値よりも大きい値で、かつ遅開き特性から早開き特性に切り替えても駆動力段差が小さくなるアクセル開速度値に設定した。このため、アクセル開速度が第二閾値を超える場合には、遅開き特性から早開き特性に切り替えても駆動力段差を小さくでき、運転者の駆動力要求に応じた走行が可能となる。
【0013】
また、アクセル開速度が第一閾値と第二閾値の間であれば、前記遅開き特性と早開き特性の中間特性となるような開度特性とすることで、運転者の駆動力要求に応じた走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の着想を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図。
【図2】パワートレーンの制御システムを示すブロック線図。
【図3】制御システムにおける統合コントローラの機能別ブロック線図。
【図4】目標駆動力演算部が目標駆動力を求めるときに用いる目標駆動力の特性線図。
【図5】目標駆動力演算部がモータジェネレータのアシストトルクを求めるときに用いるアシストトルクの特性線図。
【図6】ハイブリッド車両の電気走行(EV)モード領域およびハイブリッド走行(HEV)モード領域を示す領域線図。
【図7】ハイブリッド車両のバッテリ蓄電状態に対する目標充放電量特性を示す特性線図。
【図8】車速に応じた最良燃費線までのエンジントルクの上昇経過を示すエンジントルク上昇経過説明図。
【図9】変速制御部で変速機の変速比を設定する変速特性線図。
【図10】実アクセル開度に対する制御入力アクセル開度の早開き特性および遅開き特性を示す特性線図。
【図11】アクセル開度選択判定の制御フローチャート。
【図12】制御用アクセル開度演算の制御フローチャート。
【図13】アクセル開速度の第一閾値を示すマップ。
【図14】アクセル開速度の第二閾値を示すマップ。
【図15】第2クラッチの配列を変更した例(A),(B)を示すハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のハイブリッド車両の駆動力制御装置の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の前記したハイブリッド車両の駆動力制御装置を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを例示する。このハイブリッド車両は、フロントエンジン・リヤホイールドライブ車(後輪駆動車)をベース車両とし、これをハイブリッド化したものである。図中、1は、第1動力源としてのエンジンであり、2は駆動車輪(後輪)である。
【0017】
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、通常の後輪駆動車と同様にエンジン1の車両前後方向後方に自動変速機3をタンデムに配置している。即ち、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合してモータジェネレータ5を設け、このモータジェネレータ5を、第2動力源として具える。
【0018】
モータジェネレータ5は、駆動モータ(電動機)として作用し、ジェネレータ(発電機)としても作用するもので、エンジン1および自動変速機3間に配置する。このモータジェネレータ5およびエンジン1間、より詳しくは、軸4とエンジンクランクシャフト1aとの間に第1クラッチ6を介挿し、この第1クラッチ6によりエンジン1およびモータジェネレータ5間を切り離し可能に結合する。ここで第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
【0019】
モータジェネレータ5および駆動車輪(後輪)2間に第2クラッチ7を介挿し、この第2クラッチ7によりモータジェネレータ5および駆動車輪(後輪)2間を切り離し可能に結合する。第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
【0020】
自動変速機3は、周知の任意なものでよく、複数の変速摩擦要素(クラッチやブレーキ等)を選択的に締結・解放することで、これら変速摩擦要素の締結・解放の組み合わせにより伝動系路(変速段)を決定するものとする。従って自動変速機3は、入力軸3aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸3bに出力する。この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置8により左右後輪2へ分配して伝達され、車両の走行に供される。但し自動変速機3は、上記したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよいのは言うまでもない。
【0021】
ところで図1においては、モータジェネレータ5および駆動車輪2を切り離し可能に結合する第2クラッチ7として専用のものを新設するのではなく、自動変速機3内に既存する変速摩擦要素を流用する。この場合、第2クラッチ7が締結により上記の変速段選択機能(変速機能)を果たして自動変速機3を動力伝達状態にするのに加え、第1クラッチ6の解放・締結との共働により、後述するモード選択機能を果たし得ることとなり、専用の第2クラッチが不要でコスト上大いに有利である。
【0022】
なお、第2クラッチ7は専用のものを新設してもよく、この場合、図15(A)のように、第2クラッチ7は自動変速機3の入力軸3aとモータジェネレータ軸4との間に設けたり、図15(B)のように、自動変速機3の出力軸3bと後輪駆動系との間に設ける。
【0023】
上記した図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、停車状態からの発進時などを含む低負荷・低車速時に用いられる電気走行(EV)モードが要求される場合、第1クラッチ6を解放し、第2クラッチ7の締結により自動変速機3を動力伝達状態にする。なお第2クラッチ7は、自動変速機3内の変速摩擦要素のうち、現変速段で締結させるべき変速摩擦要素であって、選択中の変速段ごとに異なる。
【0024】
この状態でモータジェネレータ5を駆動すると、当該モータジェネレータ5からの出力回転のみが変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して変速機出力軸3bより出力する。変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をモータジェネレータ5のみによって電気走行(EV走行)させることができる。
【0025】
高速走行時や大負荷走行時などで用いられるハイブリッド走行(HEV走行)モードが要求される場合、第2クラッチ7の締結により自動変速機3を対応変速段選択状態(動力伝達状態)にしたまま、第1クラッチ6も締結させる。この状態では、エンジン1からの出力回転およびモータジェネレータ5からの出力回転の双方が変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸3bより出力する。変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をエンジン1およびモータジェネレータ5の双方によってハイブリッド走行(HEV走行)させることができる。
【0026】
かかるHEV走行中において、エンジン1を最適燃費で運転させるとエネルギーが余剰となる場合、この余剰エネルギーによりモータジェネレータ5を発電機として作動させることで余剰エネルギーを電力に変換する。そして、この発電電力をモータジェネレータ5のモータ駆動に用いるよう蓄電しておくことでエンジン1の燃費を向上させることができる。
【0027】
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンを成すエンジン1、モータジェネレータ5、第1クラッチ6、および第2クラッチ7は、図2に示すようなシステムにより制御する。図2の制御システムは、パワートレーンの動作点を統合制御する統合コントローラ20を具える。パワートレーンの動作点は、目標エンジントルクと、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)と、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量とで規定する。
【0028】
統合コントローラ20には、上記パワートレーンの動作点を決定するために、下記各信号が入力される。入力される信号としては、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ11からの信号と、モータジェネレータ回転数を検出するモータジェネレータ回転センサ12からの信号と、変速機入力回転数を検出する入力回転センサ13からの信号と、がある。また、変速機出力回転数を検出する出力回転センサ14からの信号と、車両への要求負荷を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ15(運転負荷検出手段)からの信号と、が入力される。さらに、ブレーキ油圧(BPS)を検出するブレーキ油圧センサ23と、モータジェネレータ5用の電力を蓄電しておくバッテリ9の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ16からの信号と、が入力される。
【0029】
なお、上記したセンサのうち、エンジン回転センサ11、モータジェネレータ回転センサ12、入力回転センサ13、および出力回転センサ14はそれぞれ、図1に示すように配置することができる。
【0030】
統合コントローラ20は、上記入力情報のうちアクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数(車速VSP)から、運転者が希望している車両の駆動力を実現可能な運転モード(EVモード、HEVモード)を選択する。また、統合コントローラ20は、アクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数(車速VSP)から、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)、目標第1クラッチ伝達トルク容量、および目標第2クラッチ伝達トルク容量をそれぞれ演算する。目標エンジントルクはエンジンコントローラ21に供給され、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)はモータジェネレータコントローラ22に供給される。
【0031】
エンジンコントローラ21は、エンジントルクが目標エンジントルクとなるようエンジン1を制御する。また、モータジェネレータコントローラ22はモータジェネレータ5のトルク(または回転数)が目標モータジェネレータトルク(または目標モータジェネレータ回転数)となるよう、バッテリ9およびインバータ10を介してモータジェネレータ5を制御する。
【0032】
統合コントローラ20は、目標第1クラッチ伝達トルク容量および目標第2クラッチ伝達トルク容量に対応したソレノイド電流を第1クラッチ6および第2クラッチ7の締結制御ソレノイド(図示せず)に供給する。そして、統合コントローラ20は、第1クラッチ6の伝達トルク容量が目標伝達トルク容量に一致するよう、また、第2クラッチ7の伝達トルク容量が目標第2クラッチ伝達トルク容量に一致するよう、第1クラッチ6および第2クラッチ7を個々に締結力制御する。
【0033】
なお、運転者による要求負荷を表すアクセル開度APOについては、これをそのまま用いず、後述するアクセル開度演算手段80より演算した制御用アクセル開度が、上記のモード選択や駆動力制御に使用される。
【0034】
統合コントローラ20は、上記した運転モード(EVモード、HEVモード)の選択、そして目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標第1クラッチ伝達トルク容量、および目標第2クラッチ伝達トルク容量の演算を、図3の機能別ブロック線図で示すように実行する。
【0035】
なお、図3に示す機能ブロック線図において、入力されるアクセル開度APOは、前記したアクセル開度演算手段80により設定された制御用アクセル開度が入力される。以下の説明では、アクセル開度APOは、制御用アクセル開度を示している。
【0036】
目標駆動力演算部30では、図4に示す目標定常駆動トルクマップと図5に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速から、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0037】
運転モード選択部40では、図6に示すEV−HEV領域マップを用いて、アクセル開度APOおよび車速VSPから目標とする運転モードを決定する。図6に示すEV−HEV領域マップから明らかなように、高負荷・高車速時はHEVモードを選択し、低負荷・低車速時はEVモードを選択する。また、運転モード選択部40では、EV走行中にアクセル開度APOおよび車速VSPの組み合わせで決まる運転点がEV→HEV切り換え線を越えてHEV領域に入るとき、EVモードからエンジン1始動を伴うHEVモードへのモード切り換えを行う。また、運転モード選択部40では、HEV走行中に運転点がHEV→EV切り換え線を越えてEV領域に入るとき、HEVモードからエンジン1停止およびエンジン1切り離しを伴うEVモードへのモード切り換えを行うものとする。エンジン始動停止線はバッテリの容量SOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下させて設定されている。
【0038】
エンジン1の始動処理は、EV状態で図6に示すエンジン始動線をアクセル開度APOが越えた時点で、実行される。即ち、前記第2クラッチ7を半クラッチ状態にスリップさせるように第2クラッチ7のトルク容量を制御し、第2クラッチ7がスリップ開始したと判断した後に第1クラッチ6の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を作動させてモータジェネレータ回転数とエンジン回転数が近くなったところで第1クラッチ6を完全に締結し、その後第2クラッチ7をロックアップさせてHEVモードに遷移させる。
【0039】
図3の目標充放電演算部50では、図7に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリ蓄電状態SOCから目標充放電量(電力)を演算する。
【0040】
動作点指令部60では、アクセル開度APOと、目標駆動力と、目標運転モードと、車速VSPと、目標充放電電力とから、これらの動作点到達目標を演算する。即ち、動作点到達目標として、時々刻々の過渡的な目標エンジントルクと、目標モータジェネレータトルクと、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量に対応した目標ソレノイド電流と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量と、目標変速段とを演算する。また、現在の動作点から図8に示す最良燃費線までエンジントルクを上げるのに必要な出力を演算し、これと上記目標充放電量(電力)tPとを比較し、小さい方の出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0041】
変速制御部70では、上記の目標第2クラッチ伝達トルク容量と、目標変速段とを入力され、これら目標第2クラッチ伝達トルク容量および目標変速段が達成されるよう自動変速機3内の対応するソレノイドバルブを駆動する。これにより図1の自動変速機3は、第2クラッチ7を目標第2クラッチ伝達トルク容量が達成されるよう締結制御されつつ、目標変速段が選択された動力伝達状態になる。図8の実線はアップシフト線、破線はダウンシフト線をそれぞれ示す変速マップである。そして、車速とアクセル開度APOから現在の変速段から次変速段をいくつにするか判定し、変速要求があれば変速クラッチを制御をして変速させる。
【0042】
アクセル開度演算手段80は、実アクセル開度との対応関係が、1:1に変化する早開き特性の制御用アクセル開度と、1:1未満に変化する遅開き特性の制御用アクセル開度と、を演算し、アクセルペダルの踏込み状態に応じて使い分ける。即ち、早開き特性の制御用アクセル開度は、検出された実アクセル開度APOに対して、図10に示すように、1:1の関係を持つよう早開き特性αにより決定した通常の制御用アクセル開度である。また、遅開き特性の制御用アクセル開度は、検出された実アクセル開度APOに対して、図10に示すように、1:1未満の関係を持つよう遅開き特性βにより小さく修正して得られる制御用アクセル開度である。なお、遅開き特性βは、例えば、実アクセル開度APO=2/8〜3/8未満の低開度領域D2でのみ上記の遅開き特性βを持つものとし、それ以外の領域D2より小さいアクセル開度領域D1及び領域D2より大きいアクセル開度領域D3では、早開き特性αと同じ特性を持つものとする。
【0043】
アクセル開度演算手段80は、図11に示すアクセル開度選択判定及び図12に示す制御用アクセル開度演算の制御フローチャートに基づいて、遅開き特性β及び早開き特性αに基づく制御用アクセル開度を設定する。
【0044】
図11に示すアクセル開度選択判定の制御フローチャートは、アクセル開速度に応じて、遅開き特性βと、早開き特性αを選択するための早開き候補とを選定するものである。
【0045】
先ず、ステップS1では、変速機3の変速モードがスポーティな走行感覚を必要とするマニアルレンジであるか否かを判定する。変速機3がマニアルレンジである時は、運転者がスポーティな走行感覚を選択していると判定してステップS8を経由してステップS9へ進み、変速機3がマニアルレンジでない時はステップS2へ進む。
【0046】
ステップS2では、車両走行モードが高駆動力を必要とするHEVモードであるか否かを判定する。走行モードがHEVモードである時は、運転者がスポーティな走行感覚を選択していると判定してステップS8を経由してステップS9に進み、走行モードがHEVモードでない時(EVモード)はステップS3へ進む。
【0047】
ステップS3では、加速意図判定がスポーティ状態であるか否かを判定する。加速意図判定としては、例えば、車両の前後方向加速度、横加速度が予め設定した設定値を超えている車両走行状態とか、坂道等の路面状態に基づいて、運転者の加速意図を検出するスポーティ走行検出装置24により求める。加速意図判定がスポーティ状態である時は、運転者がスポーティな走行感覚を選択していると判定してステップS8を経由してステップS9に進み、加速意図判定がスポーティ状態でない時はステップS4へ進む。
【0048】
ステップS8では、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にあるか否かを判定する。そして、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にない時にはステップS4へ進み、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にある時にはステップS9に進み、早開き特性αとして判定させる。
【0049】
即ち、ステップS1で判定するマニアルレンジ選択時やステップS3で判定するスポーティ走行時は、駆動力要求が大きいため、低開度から大きな駆動力をいつもだせるようにすることで、加速意図にあった走行ができるようになる。
【0050】
また、ステップS2で判定するHEVモード走行においては、遅開き特性βによる制御用アクセル開度では、アクセル操作感と駆動力変化とのマッチングに違和感を生じる場合がある。このため、HEVモードにおいては、遅開き特性βを選択しないようにすることで、実アクセル開度に対する駆動力がリニアに近くなり、違和感を低減できる。
【0051】
ところで、ステップS1〜ステップS3のいずれかの判定がYESとなった場合に、遅開き特性βの制御用アクセル開度が選択された状態から直ちに早開き特性αの制御用アクセル開度に変更すると、制御用アクセル開度が急激に変化(増加)する場合がある。即ち、図10において、遅開き特性βと早開き特性αとは、実アクセル開度がゼロ付近領域D1と特定の開度以上の領域D3では重なる特性となっているが、これらの間の領域D2では遅開き特性βと早開き特性αとが重なっていない。このため、遅開き特性βと早開き特性αとが重なっていない領域D2で制御用アクセル開度を遅開き特性βから早開き特性αへ変更すると、制御用アクセル開度が急激に大きくなり、駆動力段差をもって発生される駆動力が急激に大きくなり、運転感覚に違和感を生じる。以上の理由により、ステップS8での判定により、遅開き特性βと早開き特性αとの制御用アクセル開度に開度差が小さいアクセル開度領域D1,D3で、遅開き特性βから早開き特性αへ切り替えるようにすることで、駆動力段差による違和感を低減することができる。
【0052】
ステップS4では、アクセル開度選択判定の前回値が遅開き特性βであるか否かを判定する。そして、前回値が遅開き特性βである時にはステップS5へ進み、前回値が早開き特性αである時にはステップS6へ進む。
【0053】
ステップS5では、アクセル開速度ΔAPOが予め設定した第1閾値を超える時にはステップS10へ進み、早開き候補と判定し、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超えた際のアクセル開速度ΔAPOを記憶する。また、ステップS5でのアクセル開速度ΔAPOが予め設定した第1閾値未満である時にはステップS11へ進み、遅開き特性βと判定する。即ち、アクセル開度選択判定の前回値が遅開き特性βである場合には、アクセル開速度ΔAPOが、第一閾値を超える場合に早開き候補とし、第一閾値未満である場合には遅開き特性βに留める。また、ステップS10で記憶された早開き候補となった際のアクセル開速度ΔAPOは、後述する制御用アクセル開度の演算に使用される。
【0054】
前記アクセル開速度ΔAPOを判定して遅開き特性βと早開き候補とを選択する第一閾値は、図13に示すように、車速が低い領域でアクセル開速度を大きくし、車速の上昇に連れてアクセル開速度を小さくするよう設定している。即ち、低車速域では、変速比がローギヤであり、駆動力及びその変化割合が大きいため、制御用アクセル開度が遅開き特性βから早開き特性αに変化する際の駆動力段差も大きくなる。このため、低車速域では、早開き候補へ変化するアクセル開速度を設定する第一閾値を大きく設定している。しかしながら、高車速域は、変速比が比較的ハイギヤであり、駆動力が小さくなるため、走りの性能を良くするために、小さいアクセル開速度ΔAPOで早開き候補に切り替えたいためである。
【0055】
ステップS6では、アクセル開速度ΔAPOが予め設定した第1閾値を超える時にはステップS12へ進み、早開き候補と判定し、アクセル開速度ΔAPOが予め設定した第1閾値未満である時にはステップS7へ進む。
【0056】
ステップS7では、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にあるか否かを判定する。そして、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にない時にはステップS12へ進み、早開き特性αを継続させ、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にある時にはステップS13へ進み、遅開き特性βとして判定させる。
【0057】
即ち、アクセル開度選択判定の前回値が早開き特性αである場合には、アクセル開速度ΔAPOが、第一閾値を超える場合と、第一閾値を下回る場合であっても実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にない時には、早開き特性αを維持させる。また、アクセル開速度ΔAPOが、第一閾値を下回る場合であり且つ実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βとが重なる開度領域D1,D3にある時に、遅開き特性βと判定する。
【0058】
言い換えれば、遅開き特性βが選択されている状態では、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値未満である間は遅開き特性βとし、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超える時に早開き候補とする。また、早開き特性αが選択されている状態では、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超える時に早開き特性αを維持させる。また、早開き特性αが選択されている状態では、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値未満であっても、早開き特性αと遅開き特性βとが重ならない実アクセル開度領域D2では早開き特性αを維持させる。そして、早開き特性αと遅開き特性βとが重なる実アクセル開度領域D1,D3となった時点で遅開き特性βへ変更させる。このように、早開き特性αと遅開き特性βとが重なる実アクセル開度領域D1,D3、即ち、遅開き特性βと早開き特性αとの制御用アクセル開度に開度差が小さいところで、早開き特性αと遅開き特性βとを切り替えることにより、駆動力段差による違和感を低減することができる。
【0059】
図12に示す制御用アクセル開度演算の制御フローチャートは、遅開き特性β・早開き特性α及び両者の中間特性γの制御用アクセル開度を演算して出力するものである。
【0060】
先ず、ステップS21では、図11に示すアクセル開度選択判定が遅開き特性βであるか否かが判定される。アクセル開度選択判定が、遅開き特性βの判定である時にはステップS24へ進み、遅開き特性βの判定でない(早開き候補及び早開き特性α)時にはステップS22へ進む。ステップS22では、図11に示すアクセル開度選択判定が早開き特性αの判定であるか否かが判定される。アクセル開度選択判定が、早開き特性αである時にはステップS26へ進み、早開き特性αの判定でない(早開き候補)時にはステップS23へ進む。ステップS23では、図11に示すアクセル開度選択判定が、早開き候補となった際の記憶されたアクセル開速度ΔAPOが第二閾値以下であるか否かが判定される。
【0061】
前記した第二閾値は、図14に示すように、早開き特性αの制御用アクセル開度と遅開き特性βの制御用アクセル開度との差開度に応じて、実アクセル開度毎に、アクセル開速度ΔAPOの判定値を設定する。具体的には、図10において、遅開き特性βのポイントAと早開き特性αのポイントBとは実アクセル開度は同じであるが、制御用アクセル開度はA−B間の間隔だけ開度が隔たっている。また、早開き特性αのポイントBと同じ制御用アクセル開度を備える遅開き特性βにおけるアクセル開度はポイントCである。従って、遅開き特性βでアクセル開度がポイントAに到達した時点のアクセル開速度ΔAPOにより所定時間後にポイントCに到達する、若しくは、超えることができるアクセル開速度(第二閾値)を設定する。そして、この第二閾値にポイントAでのアクセル開速度ΔAPOが到達していれば、遅開き特性βから早開き特性αに切り替えるようにする。
【0062】
このようにすると、制御用アクセル開度は、遅開き特性βのポイントC近辺から早開き特性αのポイントBに移行するのみとできるため、駆動力段差を発生させない、若しくは、低減できることとなる。即ち、遅開き特性βにおいて実アクセル開度がポイントAから、(実アクセル開度がポイントAと同じである)早開き特性αのポイントBと制御用アクセル開度が同じとなる遅開き特性βのポイントCに、所定時間後に到達するアクセル開速度ΔAPOにより設定する。図14に示すアクセル開速度ΔAPOの第二閾値は、実アクセル開度毎に早開き特性αと遅開き特性βとの乖離に応じて夫々設定したものである。
【0063】
前記したアクセル開速度ΔAPOの第二閾値は、早開き特性αと遅開き特性βの差が大きくなる実アクセル開度において大きく、第二閾値が最大値となる実アクセル開度からアクセル開度増加側及び減少側へ離れるほど、アクセル開速度ΔAPOの第二閾値を小さくなる。このため、早開き特性αと遅開き特性βの差が小さいときは、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超えた時点で、遅開き特性βから早開き特性αに切り替えても、駆動力段差が小さいために違和感を生じない。このことは、例えば、ギヤ比がハイギヤで実アクセル開度が小開度で駆動力が小さくなる高車速領域においては、早開き特性αと遅開き特性βの差が小さく第二閾値も小さくなる。このため、小さいアクセル開速度ΔAPOで駆動力段差を抑制しつつ早開き特性αに切り替えることができ、走りの性能を良くすることができる。
【0064】
ステップS23において、早開き候補となった際の記憶されたアクセル開速度が第二閾値以下である時にはステップS25へ進み、早開き候補となった際の記憶されたアクセル開速度が第二閾値を超える時にはステップS26へ進む。
【0065】
ステップS24では、図10の遅開き特性βに基づいて制御用アクセル開度を演算する。ステップS26では、図10の早開き特性αに基づいて制御用アクセル開度を演算する。また、ステップS25においては、ステップS10で保存されたアクセル開速度ΔAPOに基づいて、早開き特性αと遅開き特性βとの間に設定した(図10の破線で示す)中間早開き特性γに基づいて制御用アクセル開度を演算する。この中間早開き特性αは、保存されたアクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値との間にある場合に設定され、保存されたアクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値との間を内分する比率に応じて補間演算する下記式、
制御用アクセル開度=遅開き特性βに基づいて演算された制御用アクセル開度+[{早開き特性αの制御用アクセル開度(ポイントB)−遅開き特性βの制御用アクセル開度(ポイントA)}×(保存されたアクセル開速度ΔAPO−第一閾値)/(第二閾値−第一閾値)]・・・式
に基づき制御用アクセル開度を演算する。
【0066】
このように、保存されたアクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値の間であれば、遅開き特性βと早開き特性αの間となるような開度特性とすることで、開度特性の切り替わり時の駆動力段差を低減することができ、運転者の駆動力要求に応じた走行を可能とすることができる。
【0067】
ステップS27では、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βが重なる領域D1,D3にあるか否かが判定される。そして、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βが重なる領域D1,D3にない場合には、ステップS24〜ステップS26のいずれかにより演算した制御用アクセル開度を継続させる。しかし、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βが重なる領域D1,D3にある場合には、ステップS28に進み、ステップS10で記憶したアクセル開速度ΔAPOをリセットし、ステップS25により演算した制御用アクセル開度をリセットする。
【0068】
これは、保存したアクセル開速度ΔAPOに応じて制御用アクセル開度を演算するため、使用するアクセル開速度ΔAPOが変動すると演算した制御用アクセル開度も変動し、その結果、駆動力も変動して、車両の挙動が乱れる可能性があるためである。よって、ステップS25で演算に使用するアクセル開速度ΔAPOは、運転状態に応じて、ステップS10により常に更新される。なお、実アクセル開度が早開き特性αと遅開き特性βが重なる領域D1,D3では、遅開き特性β・早開き特性αの制御用アクセル開度と中間早開き特性γの制御用アクセル開度との開度差が小さい。このため、中間早開き特性γをリセットして開度特性を切り替えても駆動力段差による違和感を低減することができるためである。
【0069】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0070】
(ア)加速意図としてアクセル開速度ΔAPOを用い、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値未満の低速度であるときは、実アクセル開度の検出値に対して小さい値となるような遅開き特性βにより修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。
【0071】
また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値以上であり且つ第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値以上である時は、実アクセル開度の検出値に対して前記遅開き特性βよりも大きくなるような早開き特性αにより修正した制御用アクセル開度に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替える。
【0072】
また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値の間であれば、前記遅開き特性βと早開き特性αとの中間特性となるような開度特性に基づき、駆動力の決定と走行モードを切り替えるようにした。
【0073】
即ち、第二閾値を第一閾値よりも大きい値で、かつ遅開き特性βから早開き特性αに切り替えても駆動力段差が小さくなるアクセル開速度に設定した。このため、アクセル開速度ΔAPOが第二閾値を超える場合には、遅開き特性βから早開き特性αに切り替えても駆動力段差を小さくでき、運転者の駆動力要求に応じた走行が可能となる。
【0074】
また、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値と第二閾値の間であれば、前記遅開き特性βと早開き特性αとの中間特性となるような開度特性γとすることで、運転者の駆動力要求に応じた走行が可能となる。
【0075】
(イ)車両の前後加速度、横加速度、道路勾配による車両走行状態及び路面状態に基づいて運転者の加速意図を検出するスポーティ走行検出装置を備える。そして、前記遅開き特性βを選択している時には、前記スポーティ走行検出装置がスポーティ走行状態と判定した場合には、アクセル開速度ΔAPOに関わらず遅開き特性βから早開き特性αに切り替え、スポーティ走行状態と判定している間は早開き特性αを選択し続ける。また、前記早開き特性αを選択している時は、スポーティ走行状態と判定している間は遅開き特性βに戻らないようにしている。即ち、駆動力要求が大きいスポーティ走行時は、低開度から大きな駆動力をいつもだせるようにすることで、加速意図にあった走行ができるようになる。
【0076】
(ウ)ハイブリッド走行モードが選択されている走行中においては、早開き特性αが選択される。即ち、EV走行モードを維持させやすくするために、遅開き特性βとしてHEV走行に切り替わるアクセル開度を大きくしている。そのため、アクセル開度が大きくなるにつれてアクセル開度に対する駆動力の出方が急速に大きくなるので、リニア感が損なわれる。ただし、同時にEVモードからHEVモードへの切り替わりが起こるので、その違和感がやや軽減できている。従って、HEVモード走行においては、違和感を生じる遅開き特性βを選択しないようにすることで、アクセル開度に対する駆動力がリニアに近くなり、違和感を低減できる。
【0077】
(エ)遅開き特性βから早開き特性αへの切り替え、及び、早開き特性αから遅開き特性βへの切り替えは、遅開き特性βと早開き特性αとが重なっている実アクセル開度領域D1,D3で実行される。即ち、遅開き特性βと早開き特性αの差が大きい実アクセル開度領域D2で、遅開き特性βから早開き特性αへ及びその逆へ切り替えると駆動力段差が大きく違和感が大きくなる。このため、遅開き特性βと早開き特性αの差が小さい実アクセル開度領域D1,D3で、切り替えるようにすることで、駆動力段差による違和感を低減することができる。
【0078】
(オ)第二閾値は、実アクセル開度毎の早開き特性αと遅開き特性βとの差に基づいて設定され、早開き特性αと遅開き特性βとが接近するに連れて第二閾値は小さく設定される。このため、早開き特性αと遅開き特性βの差が小さいときは、アクセル開速度ΔAPOが第一閾値を超えた時点で、遅開き特性βから早開き特性αに切り替えても、駆動力段差が小さいために違和感を生じない。このことは、例えば、ギヤ比がハイギヤで実アクセル開度が小開度で駆動力が小さくなる高車速領域においては、早開き特性αと遅開き特性βの差が小さく第二閾値も小さくなる。このため、小さいアクセル開速度ΔAPOで駆動力段差を抑制しつつ早開き特性αに切り替えることができ、走りの性能を良くすることができる。
【0079】
(カ)アクセル開速度ΔAPOが第一閾値以上となったときのアクセル開速度値を保存する。そして、前記遅開き特性βと早開き特性αとの中間特性となるような開度特性は、前記保存されたアクセル開速度ΔAPO値で第一第二閾値間を内分する比率に基づいて、早開き特性αと遅開き特性βとの間を内分するよう補間演算した開度特性γとする。そして、前記保存されたアクセル開速度ΔAPO値若しくはアクセル開速度ΔAPO値に基づいて補完演算された開度特性は、実アクセル開度が遅開き特性βと早開き特性αとが重なっているアクセル開度領域D1,D3に到達した時点でリセットされる。即ち、保存したアクセル開速度ΔAPOに応じて制御用アクセル開度を演算するため、使用するアクセル開速度ΔAPOが変動すると演算した制御用アクセル開度も変動し、その結果、駆動力も変動して、車両の挙動が乱れる。よって、保存されたアクセル開速度ΔAPOは、運転状態に応じて、常に更新されるようにして、駆動力の変動や車両の挙動が乱れを防止する。
【符号の説明】
【0080】
1 エンジン
2 駆動車輪
3 変速機
5 モータジェネレータ
6 第1クラッチ
7 第2クラッチ
8 ディファレンシャルギヤ装置
9 バッテリ
10 インバータ
11 エンジン回転センサ
12 モータジェネレータ回転センサ
13 変速機入力回転センサ
14 変速機出力回転センサ
15 アクセル開度センサ
16 バッテリ蓄電状態センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータジェネレータコントローラ
24 スポーティ走行検出装置
80 アクセル開度演算手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能で、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両において、
加速意図としてアクセル開速度を用い、アクセル開速度が第一閾値未満の低速度であるときは、アクセル開度の検出値に対して小さい値となるような遅開き特性により修正した制御用アクセル開度に基づき、
また、アクセル開速度が第一閾値以上であり且つ第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値以上である時は、アクセル開度の検出値に対して前記遅開き特性よりも大きくなるような早開き特性により修正した制御用アクセル開度に基づき、
また、アクセル開速度が第一閾値と第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値の間であれば、前記遅開き特性と早開き特性との中間特性となるような開度特性に基づき、
駆動力の決定と走行モードを切り替えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項2】
車両の前後加速度、横加速度、道路勾配による車両走行状態及び路面状態に基づいて運転者の加速意図を検出するスポーティ走行検出装置を備え、
前記遅開き特性を選択している時には、前記スポーティ走行検出装置がスポーティ走行状態と判定した場合には、アクセル開速度に関わらず遅開き特性から早開き特性に切り替え、スポーティ走行状態と判定している間は早開き特性を選択し続け、
前記早開き特性を選択している時は、スポーティ走行状態と判定している間は遅開き特性に戻らないようにすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項3】
ハイブリッド走行モードが選択されている走行中においては、早開き特性が選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項4】
遅開き特性から早開き特性への切り替え、及び、早開き特性から遅開き特性への切り替えは、遅開き特性と早開き特性とが重なっているアクセル開度領域で実行されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記第二閾値は、アクセル開度毎の早開き特性と遅開き特性との差に基づいて設定され、早開き特性と遅開き特性とが接近するに連れて第二閾値は小さく設定されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項6】
アクセル開速度が第一閾値以上となったときのアクセル開速度値を保存し、
前記遅開き特性と早開き特性の間となるような開度特性は、前記保存されたアクセル開速度値で第一,第二閾値間を内分する比率に基づいて、早開き特性と遅開き特性との間を内分するよう補間演算した開度特性であり、
前記保存されたアクセル開速度値若しくはアクセル開速度値に基づいて補完演算された開度特性は、アクセル開度が遅開き特性と早開き特性とが重なっているアクセル開度領域に到達した時点でリセットされることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項1】
動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能で、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両において、
加速意図としてアクセル開速度を用い、アクセル開速度が第一閾値未満の低速度であるときは、アクセル開度の検出値に対して小さい値となるような遅開き特性により修正した制御用アクセル開度に基づき、
また、アクセル開速度が第一閾値以上であり且つ第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値以上である時は、アクセル開度の検出値に対して前記遅開き特性よりも大きくなるような早開き特性により修正した制御用アクセル開度に基づき、
また、アクセル開速度が第一閾値と第一閾値よりも大きい値に設定した第二閾値の間であれば、前記遅開き特性と早開き特性との中間特性となるような開度特性に基づき、
駆動力の決定と走行モードを切り替えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項2】
車両の前後加速度、横加速度、道路勾配による車両走行状態及び路面状態に基づいて運転者の加速意図を検出するスポーティ走行検出装置を備え、
前記遅開き特性を選択している時には、前記スポーティ走行検出装置がスポーティ走行状態と判定した場合には、アクセル開速度に関わらず遅開き特性から早開き特性に切り替え、スポーティ走行状態と判定している間は早開き特性を選択し続け、
前記早開き特性を選択している時は、スポーティ走行状態と判定している間は遅開き特性に戻らないようにすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項3】
ハイブリッド走行モードが選択されている走行中においては、早開き特性が選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項4】
遅開き特性から早開き特性への切り替え、及び、早開き特性から遅開き特性への切り替えは、遅開き特性と早開き特性とが重なっているアクセル開度領域で実行されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記第二閾値は、アクセル開度毎の早開き特性と遅開き特性との差に基づいて設定され、早開き特性と遅開き特性とが接近するに連れて第二閾値は小さく設定されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【請求項6】
アクセル開速度が第一閾値以上となったときのアクセル開速度値を保存し、
前記遅開き特性と早開き特性の間となるような開度特性は、前記保存されたアクセル開速度値で第一,第二閾値間を内分する比率に基づいて、早開き特性と遅開き特性との間を内分するよう補間演算した開度特性であり、
前記保存されたアクセル開速度値若しくはアクセル開速度値に基づいて補完演算された開度特性は、アクセル開度が遅開き特性と早開き特性とが重なっているアクセル開度領域に到達した時点でリセットされることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動力制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−91619(P2012−91619A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239381(P2010−239381)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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