説明

ハイブリッド車両用電動モータ駆動装置及び該装置を備えたハイブリッド車両

【課題】 簡単かつ安価で軽量コンパクトな構成でありながら、既存の自動二輪車等の車両の動力伝達系に対して変更を伴うことなく、良好に電動モータの出力を駆動力として作用させることができるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】 本発明に係るハイブリッド車両は、内燃機関2と電動モータ20とを動力源として備えるハイブリッド車両1であって、電動モータ20により車輪11に駆動力を付与する電動モータ駆動装置10が、車輪11の車軸と略平行な回転軸廻りに回転可能に構成され、少なくとも1つの車輪11の外周付近に当接する駆動ローラ15と、駆動ローラ15を駆動する電動モータ20と、を含んで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電動モータとを動力源として備えた原動機付き自転車、自動二輪車、三輪車等のハイブリッド車両の駆動に利用されるハイブリッド車両用電動モータ駆動装置及び該装置を備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車、三輪車等の車両の動力源としては、燃料を燃焼させて出力を取り出す内燃機関(エンジン)が主に用いられて来た。
しかし、近年においては、内燃機関と比較して、ランニングコストが掛からず、またメンテナンスも容易でその費用も安価であると共に、騒音や振動が少なく静粛性に優れ、更には有害な排気ガスを排出しないため、大気汚染や地球温暖化等を拡大しない地球環境に優しい動力源として、電動モータが注目され実用化されている。
【0003】
このようなことから、内燃機関と電動モータとを動力源として備え、内燃機関と電動モータを同時に運転したり、どちらか一方で運転するようにした所謂ハイブリッド車両も提案されている。
【0004】
ハイブリッド車両の例として、例えば、特許文献1には、内燃機関の出力軸等に対して遊星歯車機構を介して電動モータの出力を作用させるように構成している。
【0005】
また、特許文献2では、内燃機関の出力軸に連結されたスプロケットと、電動モータの出力軸に連結されたスプロケットと、に巻き掛けられたサイレントチェーンを介して、内燃機関と電動モータとを回転連結するようにしたハイブリッド車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−337981号公報
【特許文献2】特開2007−269253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載されているハイブリッド車両では、内燃機関の出力軸に対して電動モータの出力を作用させるための複雑な機構が必要であると共に動力伝達系の構造に対する大幅な変更が必要となることに加え、内燃機関の出力軸に対して電動モータを作用させるため電動モータの設置場所に制約が多く、搭載レイアウトなどの変更などが必要となるなど、大幅な設計変更や生産システムの変更等を伴うこととなり、低コスト化を図ることは難しいといったおそれがある。
【0008】
また、特許文献1や特許文献2に記載されている内容は、動力伝達系の構造や搭載レイアウトの大幅な変更などが必要であるため、既存の内燃機関のみを搭載した自動二輪車等の車両に対して、後付けで電動モータを搭載可能とすることで簡易なハイブリッド車両を提供するといった思想もなく、このような簡易なハイブリッド車両に対する配慮がなされていないのが実情である。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価で軽量コンパクトな構成でありながら、既存の自動二輪車等の車両の動力伝達系に対して変更を伴うことなく、良好に電動モータの出力を駆動力として作用させることができるハイブリッド車両用電動モータ駆動装置及び該装置を備えたハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るハイブリッド車両は、
内燃機関と電動モータとを動力源として備えるハイブリッド車両であって、
電動モータにより車輪に駆動力を付与する電動モータ駆動装置が、
車輪の車軸と略平行な回転軸廻りに回転可能に構成され、少なくとも1つの車輪の外周付近に当接する駆動ローラと、
駆動ローラを駆動する電動モータと、
を含んで構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明において、駆動ローラが、車輪の周方向に複数設けられることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明において、駆動ローラが、共通のブラケットに対して車輪の周方向に2つ配設されることを特徴とすることができる。
【0013】
本発明において、前記電動モータは、前記駆動ローラを挟んでその回転軸の両側から駆動ローラを駆動する一対の電動モータであることを特徴とすることができる。
【0014】
本発明に係るハイブリッド車両用電動モータ駆動装置は、上述した本発明に係るハイブリッド車両に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単かつ安価で軽量コンパクトな構成でありながら、既存の自動二輪車等の車両の動力伝達系に対して変更を伴うことなく、良好に電動モータの出力を駆動力として作用させることができるハイブリッド車両用電動モータ駆動装置及び該装置を備えたハイブリッド車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電動モータ駆動装置を備えたハイブリッド車両の全体構成を示す側面図である。
【図2】(A)は同上実施の形態に係る電動モータ駆動装置(後輪部分)を拡大して模式的に示す側面図であり、(B)は駆動ローラを複数列備えた電動モータ駆動装置(後輪部分)の一例を模式的に示す側面図であり、(C)は駆動ローラ及び電動モータを複数列備えた電動モータ駆動装置(後輪部分)の一例を模式的に示す側面図である。
【図3】同上実施の形態に係る駆動ローラ及び電動モータ周辺の接続例を示した図である。
【図4】同上実施の形態に係る車輪と当接する駆動ローラの当接部形態を示した図である。
【図5】同上実施の形態に係る電動モータ駆動装置(後輪部分)の実際の搭載例(駆動ローラ及び電動モータを車輪周方向に2列備えた場合の例)を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るハイブリッド車両用駆動装置及びハイブリッド車両の一実施の形態について添付の図面を参照して説明する。なお、実施の形態により、本発明は限定されるものではない。
【0018】
本実施の形態に係るハイブリッド車両用駆動装置を備えたハイブリッド車両1は、図1に示すように、内燃機関2を備えた二輪車(原動機付き自転車、自動二輪車など)をベースとして、後輪11の外周付近(最外周付近の側面をも含む概念である)に対して動力を付与する後輪用電動モータ駆動機構10が設けられている。
【0019】
なお、本実施の形態では跨いで乗る形式のオートバイを例示しているが、これに限定されるものではなく、スクータ形式のものや、三輪車や四輪車など(バギーやカートなど)にも適用可能である。
【0020】
図1に示したように、ハイブリッド車両1において、内燃機関2の出力は、スプロケットやチェーンなどからなる動力伝達機構3を介して、後輪11に伝達されている。
【0021】
後輪11は、スイングアーム12、スプリング及びダンパーなどからなるサスペンション装置14により車両フレームに懸架されている。
【0022】
ここで、本実施の形態に係るハイブリッド車両1においては、内燃機関2、動力伝達機構3、スイングアーム12、サスペンション装置14は、従来の二輪車の構造をそのまま利用することができる。
【0023】
前輪101は、車両フレームに対して回動可能に取り付けられるハンドル4に対して、サスペンション装置5を介して取り付けられている。
なお、本実施の形態に係るハイブリッド車両1においては、ハンドル4、サスペンション装置5についても、従来の二輪車の構造をそのまま利用することができる。
【0024】
図1では、前輪101の外周付近(最外周付近の側面をも含む概念である)に対して動力を付与する前輪用電動モータ駆動機構100を設けた場合を示している。但し、後輪用電動モータ駆動機構10或いは前輪用電動モータ駆動機構100の一方を省略することも可能である。
【0025】
ここで、図2に拡大して模式的に示すように、例えば後輪11(或いは前輪101)に作用する後輪用電動モータ駆動装置10(或いは前輪用電動モータ駆動装置101)は、後輪11(或いは前輪101)の外周付近(最外周付近の側面をも含む概念である)に所定の押圧力で当接してその摩擦力で後輪11(或いは前輪101)に回転動力を伝達する駆動ローラ15(或いは駆動ローラ105)を含んで構成されている。
【0026】
なお、図2(A)に示すように、後輪11(前輪101)に対して駆動ローラ15(105)及び電動モータ20(120)を一つ備える構成とすることもできるが、図2(B)に示したように、後輪11(前輪101)の周方向に駆動ローラ15(105)を複数列配設し、これらを単一の電動モータ20(120)にて駆動して駆動力を高めるように構成することができる。更に、図2(C)に示したように、後輪11(前輪101)の周方向に駆動ローラ15(105)及び電動モータ20(120)を複数列配設して駆動力を高めるように構成することができる。
【0027】
図2(B)及び図2(C)では、後輪11(前輪101)の周方向に駆動ローラ15(105)を2つ配設した構成としたが、2つを周方向に配設することで、各駆動ローラ15の回転中心と、後輪11(前輪101)の回転中心と、を結ぶ各直線の長さを等しくできるため(各駆動ローラ15の回転中心と、後輪11(前輪101)の回転中心点を二等辺三角形の頂点となるため)、単一の共通ブラケット13であっても容易に、二つの駆動ローラ15の後輪11(前輪101)の外周付近への当接度合いを均等化することができるといった利点がある。
【0028】
なお、共通のブラケット13に対して3つ以上のX個の駆動ローラ15を後輪11(前輪101)の周方向に配設する場合には、(X−2)個の駆動ローラに対して後輪11(前輪101)の半径方向に対する位置調整可能な構成を設けることが、複数の駆動ローラ15間における後輪11(前輪101)の外周付近への当接度合いの均等化を図るうえで好ましい。
【0029】
ところで、共通のブラケット13に2つの駆動ローラ15を後輪11(前輪101)の周方向に配設したユニットを、後輪11(前輪101)の周方向に複数配設することも可能である。
【0030】
ここで、所定以上空気が抜けてしまって走行安全性が低下しているような場合には、空気を補充することを運転者に促すなどのためにも、空気を所定に補充するまで駆動ローラ15の動力が後輪11(前輪101)の外周へ伝達されないように、駆動ローラ15(105)の位置や弾性付勢力を設定しておくことができ、これにより安全性を高めることが可能である。
【0031】
後輪用電動モータ駆動装置10を構成する駆動ローラ15には 図3に示すように、車両中心軸Xの両側から(車輪回転中心軸に平行な対面方向から)電動モータ20が回転連結され、電動モータ20によって駆動ローラ15は回転駆動されるようになっている。なお、前輪用電動モータ駆動装置100を構成する駆動ローラ105においても同様の構成とすることができる。
【0032】
図1に示したように、後輪用電動モータ駆動装置10(或いは前輪用電動モータ駆動装置100)は、車輪回転中心軸に略一体的に固定されるブラケット(図1では棒状ブラケット)13に、スプリング等を介して後輪10(或いは前輪101)に対して弾性付勢されつつ支持されている。
【0033】
後輪用電動モータ駆動装置10(或いは前輪用電動モータ駆動装置100)の電動モータ20(120)は、ハンドル4のグリップ付近に設けられたスイッチを運転者が操作することにより、電動モータ20への通電量が制御され、運転者の意図に沿った出力で運転されるようになっている。
【0034】
従って、運転者が、後輪用電動モータ駆動装置10(及び/或いは前輪用電動モータ駆動装置100)による駆動を行わせたいときには、例えばハンドル4のグリップ付近に取り付けられたスイッチを指などで押し下げることで、その押し下げ期間中、電動モータ20(120)への通電が行われ、後輪用電動モータ駆動装置10(及び/或いは前輪用電動モータ駆動装置100)による駆動が行われるようになっている。
【0035】
なお、後輪用電動モータ駆動装置10(及び/或いは前輪用電動モータ駆動装置100)による駆動力を変化させたい要求に応じる場合には、その通電量を増やすことができるスライドスイッチ(可変抵抗スイッチ)などを設け、そのスライド量(抵抗値)を操作することで、電動モータ20(120)への通電量を制御して、後輪用電動モータ駆動装置10(及び/或いは前輪用電動モータ駆動装置100)による駆動力を変化させることも可能である。
この場合において、スライドスイッチは、運転者が指を離したら原位置(通電停止)へ復帰するようなスプリング付きのものを採用することができる。
【0036】
また、例えば、後輪用電動モータ駆動装置10(及び/或いは前輪用電動モータ駆動装置100)による駆動を行うと同時に内燃機関2の出力を低下させたいような場合には、運転者は内燃機関2のアクセル(グリップの回転量)を緩めて、後輪用電動モータ駆動装置10(及び/或いは前輪用電動モータ駆動装置100)による駆動負担割合を大きくして、内燃機関2の駆動負担を軽減して燃料消費を抑制するなど、運転者の要求に沿った運転形態を実現することが可能となっている。
【0037】
なお、本実施の形態において、電動モータ20(120)を操作するためのスイッチは、足踏み式のものを採用することができ、更に跨いで乗る形式の場合には膝の内側などを利用して操作する形式のものを採用することができ、スイッチの解放時には、スプリング等によって自動的に原位置(通電停止位置)へ復帰するように構成することが好適である。
【0038】
なお、図1では、電動モータ20(120)への通電量を確保するために、電動モータ20(120)の駆動用のバッテリ200を通常のバッテリとは別に搭載する構成として例示したが、通常搭載されているバッテリを大容量化するなどして、バッテリ200を省略することもできる。
【0039】
ここにおいて、図5に、実際に後輪用電動モータ駆動装置10を搭載したハイブリッド車両1を示しておく。なお、図5に示した搭載例は、駆動ローラ15及び電動モータ20を後輪11の周方向に2列備えた場合の例である。
【0040】
ここで、駆動ローラを片持ち梁のような形で支持する場合、駆動の際の反力等で伝達部材の片持ち支持部が撓んで、効率良く動力を伝達できなくなると共に直進安定性が悪化し、更には伝達部材を回転自在に支持するベアリングに無理な力が作用して騒音や摩耗等を招くといったおそれがある。また、駆動力がダイレクトに車輪に伝わっているといったダイレクト感が薄れ、運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0041】
このようなことから、本実施の形態では、図3や図4に示すように、駆動ローラ15(105)を両持ち梁のように両側から支持する構成とした。但し、本実施の形態においても、駆動ローラ15(105)を片持ち梁のような形で支持する構成とすることもできる。
【0042】
更に、本実施の形態では、駆動を掛けたときに、駆動ローラ15(105)の軸部の捻じれ等の悪影響や、駆動ローラ15(105)を軸支しているベアリング等への無理な力の発生を抑制して、効率良く駆動力を後輪11(前輪101)に伝達することができるように、駆動ローラ15(105)の両側に電動モータ20(120)を配設して、両側から同じ力で駆動ローラ15(105)を駆動する構成とすることができる。
【0043】
なお、後輪の幅方向の片側から伝達部材を駆動する場合には左右非対称であるがために直進性等が悪かったが、本実施の形態のように後輪11(前輪101)の幅方向中心線(車両中心軸X)を挟んで対称に電動モータ20(120)を配設して両側から駆動ローラ15(105)を駆動するようにしたことで、左右非対称な捩れの発生等を抑制できるため、左右対称で効率良く駆動力を後輪11(前輪101)に円滑に伝達することができるため、直進性等の走行性能を高めることができ、安全性を向上させることができる。更には、剛性感やダイレクト感を高めることができるため、運転者に良い印象を与えることができる。
【0044】
また、車両中心軸Xを挟んで両側に比較的重量のある電動モータ20(120)を配設するようにしたので、バランスを取り易くなるため、走行安定性を高めることができる。
【0045】
本実施の形態のように、比較的小容量の電動モータ20(120)を車両中心軸Xを挟んで両側に配設した場合、2倍の容量(出力)の電動モータを片側に1つ備える場合に比べて、電動モータのコストを低く抑えながら、走行安定性を高めることができる点で有利である。
【0046】
すなわち、例えば、2倍の容量(出力)の電動モータを片側に1つ備え、左右のバランスを解消するために、反対側に同じ重さの重量物(ダミー)を配設することも考えられるが、大容量の電動モータは高コスト化する傾向にあると共に、ダミーで重量物を載せるため必要以上に車両重量が増すことになるため、操作性が悪化すると共に、走行燃費などが悪化して充電サイクルが短くなったりバッテリ(充電池)の交換サイクルが短くなるといったおそれがある。
【0047】
また、本実施の形態のように、小容量の電動モータ20(120)を車両中心軸Xに対して左右対称に配設すれば、既述したように、左右非対称な捩れの発生等を抑制できるため左右対称で効率良く駆動力を後輪11(前輪101)に円滑に伝達することができるため、直進性等の走行性能を高めることができ、安全性を向上させることができ、更には、剛性感やダイレクト感を高めることができるため、運転者に良い印象を与えることができるが、このようなメリットは、2倍の容量の電動モータを片側に1つ備え反対側に同じ重さの重量物(ダミー)を配設するような場合には期待できない。
【0048】
ここで、後輪11の幅方向両側に配設される一対の電動モータ20の回転出力軸21と、駆動ローラ15と、の接続は、例えば、図3(A)〜(E)に例示するような形式を、種々の目的や要求に応じて採用することができる。前輪101に関しても同様とすることができる。
【0049】
図3(A)は、プラスチック、ゴム、シリコン、ウレタン等の樹脂製の弾性体である駆動ローラ15(アルミ等の金属製などとすることもできる)に電動モータ20の回転出力軸21を取り付けた場合の一例を示している。駆動ローラ15の弾性により、対面する電動モータ20の回転出力軸21の間の芯ズレなどを吸収することができるため、精密な組み立て等の必要性を排除できるため、製品の低コスト化を図ることができる。
【0050】
図3(B)は、プラスチック、ゴム、シリコン、ウレタン等の樹脂製の弾性体である駆動ローラ15の回転中心部に硬質(金属製や樹脂製)の中空の筒状軸要素22を取り付ける一方で、この筒状軸要素22の中空部22Aに両側から電動モータ20の回転出力軸21を挿入して軸方向摺動自在に接合する。このような軸方向摺動自在な接合により、対面する電動モータ20の回転出力軸21の間に軸方向位置などのズレがあってもこれを吸収することができるため、精密な組み立て等の必要性を排除できるため、製品の低コスト化を図ることができる。
【0051】
図3(C)は、プラスチック、ゴム、シリコン、ウレタン等の樹脂製の弾性体である駆動ローラ15の側面に凹部(或いは凸要素としても良い)23を設ける一方で、この凹部(凸要素)23と所定間隙をもって係合する凸要素(或いは凹部)24を電動モータ20の回転出力軸21側に形成し、これらを係合させることで、駆動ローラ15と、電動モータ20の回転出力軸21と、を回転連結する。このような回転連結により、駆動ローラ15と、電動モータ20の回転出力軸21と、の間で、周方向の位置ズレ(芯ズレ)や軸方向の位置ズレがあってもこれらを効果的に吸収することができるため、精密な組み立て等の必要性を排除できるため、製品の低コスト化を図ることができる。
【0052】
図3(D)は、図3(A)と図3(C)とを片方ずつ組み合わせた接続形式であり、このようにすることで、駆動ローラ15と、電動モータ20の回転出力軸21と、の間で、周方向の位置ズレ(芯ズレ)や軸方向の位置ズレがあってもこれらを効果的に吸収しつつ、より一層低コスト化を促進することができるといった利点がある。
【0053】
図3(E)は、駆動ローラ15を、車輪中心軸Xを挟んで2つに分割した構成としている。対面する駆動ローラ15A、15Bの間には、図3(C)などと同様の凹部(或いは凸要素)を設け、これらを係合させて回転連結させることができる。
【0054】
なお、図3(E)に示したように、例えば、駆動ローラ15A,15Bが相互に接近する方向にスプリング等を介して弾性付勢することで、駆動ローラ15A,15Bを後輪11に多少の摩耗や空気圧変化などが生じていたり、車輪の幅方向中心と駆動ローラの幅方向中心とが多少オフセット(偏心)していても、これらを吸収して良好に当接させることができ、自動調芯のような機能が果たされることで、効率良く動力を伝達することが可能となる。
【0055】
ここで、本実施の形態において採用する電動モータ20(120)としては、車載されている直流バッテリを電源とするため、構成が簡単で駆動制御も容易なブラシ付DCモータ(永久磁石界磁形整流子電動機)、ブラシレスDCモータ(無整流子電動機)などを採用することができる。
【0056】
ここで、ブラシ付DCモータは、ブラシ(整流子)の寿命による交換が必要とされるが、内燃機関等におけるオイル交換、点火プラグ交換などのメンテナンスに比べれば、ブラシ交換は作業も容易であるしコストも掛からないため、あまり大きな問題とはならない。電動モータ本体のコストもブラシ付DCモータが優位であるため、本実施の形態に係る駆動装置においてはブラシ付DCモータ(永久磁石界磁形整流子電動機)の採用が好適である。
【0057】
なお、ブラシ付DCモータのなかでも、鉄芯のないコアレスDCモータが、本実施の形態に係る駆動装置10の電動モータ20として適している。
コアレスDCモータは、回転部に鉄芯がないため、低慣性、高応答であり、軽量化にも寄与する。特に、DCプリントモータは、同じ容量(出力)の場合、回転軸長手方向幅を大幅に短縮することができるため、例えば、車両1の幅方向において電動モータ20の搭載幅に制限がある場合などにおいては、DCプリントモータは有益である。
【0058】
プリントモータは、ガラスまたはセラミックス系の絶縁物の円板に電機子巻線に相当する導電部分が印刷技術によって形成されており、これが整流子をも兼ねた構造となっている。DCプリントモータとしては、例えば、株式会社藤井精密回転機製作所製のプリントモータシリーズ(参考URL:http://www.few.co.jp/html/products.html 又はhttp://www.few.co.jp/pdf/printmotor.pdf)などがある。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態に係るハイブリッド車両1によれば、従来同様の内燃機関2、動力伝達経路3、サスペンション装置14、更にハンドル4、サスペンション装置5などをそのまま利用しながら、後輪11(及び/或いは前輪101)の外周付近に作用する後輪用電動モータ駆動装置10(及び/或いは前輪用電動モータ駆動装置100)を備えるようにしたので、簡単かつ安価で軽量コンパクトな構成でありながら、既存の自動二輪車等の車両の動力伝達系に対して変更を伴うことなく、良好に電動モータの出力を駆動力として作用させることができるハイブリッド車両用駆動装置及び該駆動装置を備えたハイブリッド車両を提供することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る後輪用電動モータ駆動装置10(或いは前輪用電動モータ駆動装置100)によれば、後輪11(前輪101)の外周付近に当接する駆動ローラ15(105)を、一対の電動モータ20(120)が、当該駆動ローラ15(105)を挟んでその回転軸の両側から駆動する構成としたので、簡単かつ安価な構成で長い動力伝達経路を不要とすることができ、更には従来の駆動装置に比べて、走行安定性や走行性能を高く維持することができると共に、小型化、軽量化、低騒音化、低コスト化などを促進することができる。
【0061】
ところで、本実施の形態においては、駆動ローラ15(或いは105)を、後輪11(或いは前輪101)の外周付近に所定の押圧力で当接させて駆動力を後輪11(或いは前輪101)に伝達するが、二輪車等の場合は車体を傾けて曲がる点などに鑑みて車輪の断面形状が外側に凸の円弧形状となっている。このようなことから、その当接(接触)のさせ方としては、図4(A)〜図4(C)に示したような方式が想定され、例えば要求に応じて接触面積を多くすることで、駆動力の伝達を良好なものとすることができる。
【0062】
また、別の当接(接触)のさせ方としては、図4(D)〜図4(E)に示したように、例えば要求に応じて接触面積を狭くして接触面圧を高めることで、駆動力の伝達を良好なものとすることも可能である。
【0063】
本実施の形態に係るハイブリッド車両1は、二輪車(原動機付き自転車、自動二輪車など)として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、三輪車、四輪車など(バギーやカートなど)にも適用可能である。また、電動モータ駆動装置10(100)が備え付けられる車輪は、車両に備わる車輪の一部或いは全部の車輪とすることができる。
【0064】
本実施の形態では、一対の電動モータ20(120)については、同じものを対面させた場合を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば種類や仕様の異なる電動モータを対面させて一対の電動モータとすることも可能である。
【0065】
また、本実施の形態では、図3、図4において、駆動ローラ15(105)の幅方向中心と、当接する後輪11(前輪101)の幅方向中心と、が略一致している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、レイアウト上の制約など種々の事情に応じてこれらをオフセットさせて配置することも可能である。
【0066】
ところで、本実施の形態では、駆動ローラ15(105)に、車両中心軸Xの両側から(車輪回転中心軸に平行な対面方向から)電動モータ20(120)を回転連結する構成としたが、これに限定されるものではなく、片側をベアリング等により支持する一方、他側に電動モータ20(120)を設け、片側のみに設けた電動モータ20(120)によって駆動ローラ15を回転駆動する構成とすることもできる。
【0067】
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 ハイブリッド車両(二輪、三輪、四輪車など)
2 内燃機関(エンジン)
3 動力伝達機構
4 ハンドル
5 サスペンション装置(前輪用:コイルスプリング及びダンパー)
10 後輪用電動モータ駆動装置
11 後輪
12 スイングアーム
13 ブラケット
14 サスペンション装置(後輪用:コイルスプリング及びダンパー)
15 駆動ローラ
20 電動モータ
100 前輪用電動モータ駆動装置
101 前輪
105 駆動ローラ
120 電動モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動モータとを動力源として備えるハイブリッド車両であって、
電動モータにより車輪に駆動力を付与する電動モータ駆動装置が、
車輪の車軸と略平行な回転軸廻りに回転可能に構成され、少なくとも1つの車輪の外周付近に当接する駆動ローラと、
駆動ローラを駆動する電動モータと、
を含んで構成されることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
駆動ローラが、車輪の周方向に複数設けられることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
駆動ローラが、共通のブラケットに対して車輪の周方向に2つ配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記電動モータは、前記駆動ローラを挟んでその回転軸の両側から駆動ローラを駆動する一対の電動モータであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一つに記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一つに記載のハイブリッド車両に用いられるハイブリッド車両用電動モータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148683(P2012−148683A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9144(P2011−9144)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(391019957)キロニー産業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】