説明

ハイブリッド車両

【課題】ハイブリッド車両の異音の発生を抑制する。
【解決手段】エンジン22と、第2モータジェネレータ52とによって駆動され、車両駆動軸61に加わる実駆動トルクを検出する駆動トルクセンサ49と、エンジン22の回転数を増減する制御部70と、を備えるハイブリッド車両100であって、制御部70は、ドライバの運転操作に基づいて要求駆動トルクを設定するドライバ要求駆動トルク設定手段74と、駆動トルクセンサ49によって検出した実駆動トルクが正または負のいずれか一方の側にある場合に、ドライバ要求駆動トルク設定手段74によって設定した要求駆動トルクの正負が切り替わった際に、エンジン22の回転数の変化割合を所定の値にするエンジン回転数変化処理手段75と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼室に直接噴射するエンジンによって駆動される車両では、エンジンの燃焼によって発生するエンジン発生トルクを検出し、成層燃焼と均質燃焼とを切り換えて、限られたシリンダ容積でも車両の駆動に必要なトルクを出力することが行われている。しかし、エンジン発生トルクはエンジンの各気筒の燃焼サイクルによって変動するので、エンジン全体としてのエンジン発生トルクの変動を検出することが難しい場合がある。また、各種の検出装置のバラつきと各気筒の燃焼によるトルク変動との違いが認識できず、燃料系統に異常があると誤判断して不必要に成層燃焼を禁止する場合があった。このため、エンジン発生トルクが正確に検出できないような状態と判断した場合には、エンジン発生トルクの検出をマスクする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2000−205028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、エンジンとモータジェネレータとによって車両を駆動するハイブリッド車両が多く用いられるようになってきている。このようなハイブリッド車両では、エンジンの出力とモータジェネレータの出力によってドライブシャフトを駆動するように構成されている。ドライブシャフトはディファレンシャルギヤなど多くのギヤがかみ合わされたギヤ装置を介して車軸に駆動トルクを伝達しているものであるが、駆動トルクが略ゼロ近傍になった際にエンジンの出力トルクとモータジェネレータの出力トルクに変動が生じるとギヤのバックラッシュによるガタつきが発生し、ギヤの歯が隣接するギヤの歯とぶつかって異音が発生する場合があった。この異音の発生を抑制するには、エンジンの駆動軸へのトルク出力が略ゼロとなってきた際にモータジェネレータのトルクを制御してギヤががたつかないように正方向、或いは負方向に微小なトルクを掛けて、ギヤの歯を一方方向に押し付けることが行われる。
【0005】
一方、ハイブリッド車両では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度と車速とに基づいて駆動軸に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸に出力されるように、エンジンとモータジェネレータとが運転制御される。ハイブリッド車両では、モータジェネレータは車両を駆動する動力を出力したり、バッテリの充電をする負荷となったりするので、エンジンの出力トルクはトルクからモータジェネレータの動作状態に基づいて決められることとなる。例えば、エンジンの出力トルクは車両の駆動に必要な出力トルクからモータジェネレータの車両駆動用出力トルクを差し引いたものとする場合や、車両の駆動に必要な出力トルクに充電のためにモータジェネレータを駆動するためのトルクを加えたトルクとする場合がある。
【0006】
しかし、このようにエンジンの出力トルクを制御しようとしても、エンジンの回転数の変動が大きい場合には、エンジンのクランクシャフトの慣性モーメントなどの影響で実際にエンジンから出力されるトルクがモータジェネレータの動作状態に基づいて設定した出力トルクとずれてくる。そして、駆動軸への出力トルクがゼロ近傍となってくると、実際のエンジンの出力トルクとモータジェネレータの動作状態から設定したトルクとの間に差が生じてしまい、モータジェネレータの出力トルクを制御してギヤの歯を一方側に押し付けておくことができなくなり、ギヤから異音の発生することがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、ハイブリッド車両の異音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハイブリッド車両は、エンジンと、モータジェネレータとによって駆動され、車両駆動軸に加わる実駆動トルクを検出する駆動トルク検出手段と、エンジンの回転数を増減する制御部と、を備えるハイブリッド車両であって、制御部は、ドライバの運転操作に基づいて要求駆動トルクを設定する要求駆動トルク設定手段と、駆動トルク検出手段によって検出した実駆動トルクが正または負のいずれか一方の側にある場合に、要求駆動トルク設定手段によって設定した要求駆動トルクの正負が切り替わった際に、エンジン回転数の変化割合を所定の値にするエンジン回転数変化処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のハイブリッド車両において、制御部は、モータジェネレータの出力又はモータジェネレータへの出力指令に基づいて、エンジンから出力されるトルクのうち直接車両を駆動するエンジン直行トルクを推定するエンジン直行トルク推定手段と、駆動トルク検出手段によって検出した実駆動トルクが正または負のいずれか一方の側にある場合に、要求駆動トルク設定手段によって設定した要求駆動トルクの正負が切り替わった際に、推定されたエンジン直行トルクの時間変化割合を低減するエンジン直行トルク変化割合低減手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ハイブリッド車両の異音の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるハイブリッド車両の構成を示す系統図である。
【図2】本発明のハイブリッド車両の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明のハイブリッド車両の駆動トルクの変動を示す説明図である。
【図4】本発明のハイブリッド車両の他の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明のハイブリッド車両の他の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態のハイブリッド車両100は、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の遊星歯車装置30と、遊星歯車装置30に接続された第1モータジェネレータ51と、遊星歯車装置30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続された第2モータジェネレータ52と、充放電可能な二次電池であるバッテリ50と、制御部70とを備えている。
【0013】
遊星歯車装置30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なうよう構成されている。遊星歯車装置30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31には第1モータジェネレータ51が、リングギヤ32には車両駆動用動力出力軸であるリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、第1モータジェネレータ51が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、第1モータジェネレータ51が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力される第1モータジェネレータ51からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびディファレンシャルギヤ62を介して、車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0014】
減速ギヤ35は、第2モータジェネレータ52の回転軸48の回転数を減速してリングギヤ軸32aに伝達可能に構成されている。減速ギヤ35は、外歯歯車のサンギヤ36と、このサンギヤ36と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ37と、サンギヤ3に噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のピニオンギヤ38と、複数のピニオンギヤ38を自転かつ公転自在に保持するキャリア39とを備える遊星歯車機構として構成されている。減速ギヤ35のサンギヤ36には第2モータジェネレータ52の回転軸48が、リングギヤ37にはリングギヤ軸32aが接続されている。また、キャリア39はケースに固定されており、その回転が禁止されている。
【0015】
第1、第2モータジェネレータ51,52は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、第1、第2インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。また、バッテリ50と第1、第2インバータ41,42との間にはバッテリ50の電圧を昇圧して各インバータ41,42に供給する昇圧コンバータ53が接続されている。
【0016】
制御部70は、信号の処理を行うCPU71と、処理プログラムを記憶するROM72と、データを一時的に記憶するRAM73と、アクセル、ブレーキの開度や車両の速度に基づいてドライバの要求駆動トルクを設定するドライバ要求駆動トルク設定手段74と、エンジン22の回転数の時間変化割合を所定の値にするエンジン回転数変化処理手段75と、エンジン22から出力されるトルクのうち直接車両を駆動するエンジン直行トルクを推定するエンジン直行トルク推定手段76と、エンジン直行トルクの時間変化割合を低減するエンジン直行トルク変化割合低減手段77と、を備えている。
【0017】
制御部70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。また、ギヤ機構60の中で車両の全駆動トルクを伝達する駆動軸61には実際の実駆動トルクを検出する駆動トルクセンサ49が取り付けられ、駆動トルクセンサ49は制御部70に接続され、制御部70に実際の車両駆動トルクが入力されるように構成されている。また、エンジン22、各インバータ41,42、昇圧コンバータ53はそれぞれ制御部70に接続され、制御部70の指令で駆動するよう構成されている。エンジン22に取り付けられているエンジン22のクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクシャフト回転位置センサ24、各モータジェネレータ51,52に取り付けられている回転子位置検出センサ43,44は制御部70に接続され、エンジン22の回転数、各モータジェネレータ51,52の回転子の位置の各信号はそれぞれ制御部70に入力されるよう構成されている。バッテリ50は制御部70に接続され、出力電圧、出力電流、温度等のデータが制御部70に入力されるよう構成されている。
【0018】
以上のように構成されたハイブリッド車両100の動作について説明する。図2のステップS101に示すように、ハイブリッド車両100の走行中、制御部70はドライバによるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Acc、ブレーキペダルポジションBP,車速Vを各センサ84,86,88から取得する。そして、図2のステップS102に示すように、制御部70は、ドライバの各ペダル83,85の踏み込み量、車速、シフトレバー81のポジションに基づいて、リングギヤ軸32a或いは駆動軸61に出力すべき動力をドライバ要求駆動トルクとして計算し、その値をドライバ要求駆動トルク(指令値)として設定する(ドライバ要求駆動トルク設定工程)。また、制御部70は、図2のステップS103に示すように、駆動トルクセンサ49から実際に駆動軸61に伝達されている実駆動トルクを取得する。
【0019】
図3に示すように、ハイブリッド車両100が走行している間には、線aで示すドライバ要求駆動トルク(指令値)は、ドライバのアクセルペダル83、ブレーキペダル85の踏み込み量等によって常に変動している。しかし、例えば、アクセルペダル83が踏み込まれても実際にエンジン22からの出力が増加して駆動軸61からディファレンシャルギヤ62を介して駆動輪63a,63bに駆動トルクが出力されるまでには時間遅れがあり、その分だけ実際に駆動軸61に出力されている実駆動トルクの変化はドライバ要求駆動トルク(指令値)の変化よりも緩やかになっている。
【0020】
このため、図3の時間tに示すように、線bで示す実駆動トルクが次第にゼロに向かって低下してきており、まだ正のトルクとなっている場合でも、線aで示すドライバ要求駆動トルクは、変動によって正のトルクから負のトルクに切り替わることがある。すると、制御部70は、エンジン22から駆動軸61に出力されるエンジン直行トルクを略ゼロとして、第2モータジェネレータ52からの出力トルクを微小な負トルクとして、ディファレンシャルギヤ62のギヤの歯を接触させてバックラッシュなどによってギヤがガタつかないようにしようとする。ところが、実際に駆動軸61に出力されている実トルクはエンジン22の回転変化による慣性モーメントの影響によりドライバ要求駆動トルクのようには変化せず、図3の線bに示すように、まだ正となっている。このため、第2モータジェネレータ52のギヤの歯を押し付けようとするトルクは逆にバックラッシュの隙間のある側にギヤの歯を回転させてしまう。このように、実駆動トルクの正負が切り替わる前にドライバ要求駆動トルク(指令値)が正負で切り替わってしまうと、ギヤの歯打ち音あるいは異音が発生する。図3に示す時間t、tでも同様の現象か発生するので、ハイブリッド車両100の搭乗者は、ガタつき音として認識されてしまう。
【0021】
そこで、制御部70は、図2のステップS104、図3に示す時間tに示すように、実駆動トルクの正負が切り替わる前にドライバ要求駆動トルクが正負で切り替わった場合には、図2のステップS105に示すようにエンジン22の回転数の変化レートを所定の一定値とする処理を行う(エンジン回転数変化処理工程)。すると、ドライバのアクセルペダル83の踏み込み量とは別にエンジンの回転数の変化の割合が一定となりエンジン直行トルクの変化が少なくなる。そして、この変化の少なくなったエンジン直行トルクに基づいてドライバ要求駆動トルク(指令値)を再設定し、制御部70は、再設定したエンジン直行トルクの変化に応じて第2モータジェネレータ52への出力指令を変化させる。これよって、図3の点線cで示すように、ドライバ要求駆動トルク(指令値)の変化と実駆動トルクの変化の差が少なくなってくる。
【0022】
そして、制御部70は、図3の時間tのように、実駆動トルクの正負が切り替わってから所定の時間がたったら、エンジン回転数の変化を所定の一定値とする動作を終了し、通常の走行状態となる。
【0023】
本実施形態では、駆動軸61に出力される実駆動トルクの正負が切り替わるのと略同時にドライバ要求駆動トルク(指令値)の正負が切り替わるので、制御部70が、エンジン22から出力されるエンジン直行トルクを略ゼロとして、第2モータジェネレータ52からの出力トルクを微小なトルクとして、ディファレンシャルギヤ62のギヤの歯をトルクによって接触させてバックラッシュなどによってギヤがガタつかないようすることができる。これによって、本実施形態はディファレンシャルギヤ62のガタつきを押さえてハイブリッド車両100の異音の発生を抑制することができる。
【0024】
図4を参照して、本発明の他の動作について説明する。先に図1から図3を参照して説明した実施形態と同一の部分には同様の符号を付して、その説明は省略する。
【0025】
本実施形態では、図4のステップS201に示すように、ハイブリッド車両100の走行中、制御部70はアクセル開度、ブレーキ開度、車速などを取得し、図4のステップS202に示すようにドライバ要求駆動トルク(指令値)として設定する(ドライバ要求駆動トルク設定工程)。
【0026】
制御部70は、図4のステップS203に示すように、ドライバ要求駆動トルクから第2モータジェネレータ52の出力トルク、或いは出力トルク指令値を差し引いて、エンジン22から駆動軸61、ディファレンシャルギヤ62に伝達されるエンジン直行トルクを推定する(エンジン直行トルク推定工程)。そして、図4のステップS205、図3に示す時間tに示すように、実駆動トルクの正負が切り替わる前にドライバ要求駆動トルクが正負で切り替わった場合には、先に説明した実施形態と同様、図4のステップS206に示すようにエンジン22の回転数の変化レートを所定の一定値とする処理を行う(エンジン回転数変化処理工程)。すると、ドライバのアクセルペダル83の踏み込み量とは別にエンジンの回転数の変化の割合が一定となりエンジン直行トルクの変化が少なくなる。
【0027】
また、一定のレートでエンジン22の回転数が変化した場合には、エンジンの回転数の変化に消費される駆動トルクは略一定で、試験などによって消費される駆動トルクを予測することができる。制御部70は、図2のステップS207に示すように、エンジン直行トルクを試験などで予測した回転変化の際の予想駆動トルクを用いて補正する(エンジン直行トルク補正工程)。これにより、実際のエンジン直行トルクに近いトルクをエンジン直行トルクとして再設定することができる。そして、制御部70は、再設定したエンジン直行トルクの変化に応じて第2モータジェネレータ52への出力指令を変化させる。これによって、図3の点線cで示すように、ドライバ要求駆動トルク(指令値)の変化と実駆動トルクの変化の差が少なくなってくる。
【0028】
このため、本実施形態では、先に説明した実施形態と同様、駆動軸61に出力される実駆動トルクの正負が切り替わるのと略同時にドライバ要求駆動トルク(指令値)の正負が切り替わるので、制御部70が、エンジン22から出力されるエンジン直行トルクを略ゼロとして、第2モータジェネレータ52からの出力トルクを微小なトルクとして、ディファレンシャルギヤ62のギヤの歯をトルクによって接触させてバックラッシュなどによってギヤがガタつかないようすることができる。これによって、本実施形態はディファレンシャルギヤ62のガタつきを押さえてハイブリッド車両100の異音の発生を抑制することができる。
【0029】
図5を参照して、本発明の他の動作について説明する。先に図4を参照して説明した実施形態と部分には同様の符号を付して、その説明は省略する。
【0030】
図5のステップS305に示すように、本実施形態では、実駆動トルクの正負が切り替わる前にドライバ要求駆動トルク(指令値)が正負で切り替わった場合には、図5のステップS306に示すようにエンジン直行トルクの時間変化割合を低減するようにして、実トルクとドライバ要求駆動トルクとの差異を小さくしているものである。図4を参照して説明した実施形態では、エンジン22の回転数の変化レートを一定とし、エンジン直行トルクを補正してドライバ要求駆動トルクとして再設定し、図3の点線cで示すように、ドライバ要求駆動トルク(指令値)の変化と実駆動トルクの変化の差を少なくしたが、本実施形態は、例えば、ドライバがアクセルペダル83の踏み込み量を変化させることによってエンジン22の出力トルクが変化してエンジン直行トルクが変化した場合であっても、エンジン直行トルクの変化があまり変化しないものとして(エンジン直行トルク変化割合低減工程)、ドライバ要求駆動トルク(指令値)を再設定するものである。例えば、エンジン直行トルク変化割合の低減は、エンジン直行トルクがあまり変化しないようにフィルタ処理あるいはなまし処理を行うこととしてもよい。そして、処理後のエンジン直行トルクををエンジン直行トルクとして再設定し、再設定したエンジン直行トルクの変化に応じて第2モータジェネレータ52への出力指令を変化させることによって、図3の点線cに示すように、ドライバ要求駆動トルク(指令値)の変化が緩やかになり、実駆動トルクとの差異が小さくなる。
【0031】
このため、本実施形態では、先に説明した各実施形態と同様、ディファレンシャルギヤ62のガタつきを押さえてハイブリッド車両100の異音の発生を抑制することができる。
【0032】
以上説明した実施形態では、ギヤ機構60の中で車両の全駆動トルクを伝達する駆動軸61に実駆動トルクを検出する駆動トルクセンサ49を取り付けて実駆動トルクを検出することとして説明したが、実駆動トルクを検出する方法はこれに限らず、例えば制御部70で第1、第2モータジェネレータ51,52に出力される電流と、エンジン22の燃料流量などを用いて計算した駆動トルクを実駆動トルクとしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
22 エンジン、24 クランクシャフト回転位置センサ、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 遊星歯車装置、31,36 サンギヤ、32,37 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33,38 ピニオンギヤ、34,39 キャリア、35 減速ギヤ、41 第1インバータ、42 第2インバータ、43,44 回転子位置検出センサ、48 回転軸、49 駆動トルクセンサ、50 バッテリ、51 第1モータジェネレータ、52 第2モータジェネレータ、53 昇圧コンバータ、60 ギヤ機構、61 駆動軸、62 ディファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、70 制御部、71 CPU、72、ROM、73 RAM、74 ドライバ要求駆動トルク設定手段、75 エンジン回転数変化処理手段、76 エンジン直行トルク推定手段、77 エンジン直行トルク変化割合低減手段、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、100 ハイブリッド車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータジェネレータとによって駆動され、
車両駆動軸に加わる実駆動トルクを検出する駆動トルク検出手段と、
エンジンの回転数を増減する制御部と、を備えるハイブリッド車両であって、
制御部は、
ドライバの運転操作に基づいて要求駆動トルクを設定する要求駆動トルク設定手段と、
駆動トルク検出手段によって検出した実駆動トルクが正または負のいずれか一方の側にある場合に、要求駆動トルク設定手段によって設定した要求駆動トルクの正負が切り替わった際に、エンジン回転数の変化割合を所定の値にするエンジン回転数変化処理手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両であって、
制御部は、
モータジェネレータの出力又はモータジェネレータへの出力指令に基づいて、エンジンから出力されるトルクのうち直接車両を駆動するエンジン直行トルクを推定するエンジン直行トルク推定手段と、
駆動トルク検出手段によって検出した実駆動トルクが正または負のいずれか一方の側にある場合に、要求駆動トルク設定手段によって設定した要求駆動トルクの正負が切り替わった際に、推定されたエンジン直行トルクの時間変化割合を低減するエンジン直行トルク変化割合低減手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230725(P2011−230725A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104932(P2010−104932)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】