説明

ハイブリッド電気自動車における冷却システムの補助ポンプ構成

【課題】車両のエンジンに連結される冷却システムのために種々のシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】1つの実施例の方法は、エンジンの停止中に、補助ポンプを作動させて、冷却液をヒータコアに流し、エンジンの作動中に、エンジンポンプを作動させて、冷却液をヒータコア、およびラジエータに流し、作動条件に基づいて、選択的に補助ポンプを作動させ、ヒータコアへの流れを補助することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括すれば、自動車のエンジンと組み合わされる冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと組み合わされる冷却システムは、熱を車両の車室(乗員室)に供給するとともに、エンジンの構成要素を冷却すべく冷却液を循環させるために、エンジンドリブンポンプを用いる。ハイブリッド電気自動車においては、電動補助ポンプは、エンジンの停止中にも車室の暖房を続けるためにシステムに含められ得るが、上記補助ポンプは、エンジンの作動中には作動しない。
【0003】
エンジンの作動中に、エンジンドリブンポンプと伴に補助ポンプが用いられる例は、米国特許出願公開第2008/0251303号明細書に開示されている。この引例では、高温冷却回路は、エンジンドリブンポンプを含み、低温冷却回路は、電動ポンプを含んでいる。選択された作動状態の下で、高温および低温回路は流体的連通状態になり得るが、2台のウォーターポンプのうちの一方だけが、作動し得る。冷却回路が流体的連通状態のときにウォーターポンプが両方とも作動状態になる一例は、エンジンのコールド・スタートの間である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一旦エンジンの温度が上昇すると、両方のポンプは作動状態に維持されるが、冷却回路は、低温冷却回路の低温状態を維持するために、両者間で流体的連通状態となることなく作動する。上記のように、エンジンドリブンポンプは、高い出力を維持し、電動ポンプからの助けを受けることなく、そして、エンジンの連続的な高負荷状態でエンジン温度を管理するために十分な流れを送り出すのに十分な大きさに設定されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、上記課題を認識し、少なくとも部分的にそれらに取り組むアプローチを工夫した。一つの実施例においては、車両のエンジンと組み合わされる冷却システムのための方法が開示される。この方法は、エンジンが停止している間に、補助ポンプを作動させて、冷却液をヒータコアに流し、およびエンジンが作動している間に、エンジン・ポンプを作動させて、冷却液をヒータコア、およびラジエータに流し、並びに作動条件に基づいて、選択的に補助ポンプを作動させ、ヒータコアへの流れを補助することを含む。
【0006】
例えば、補助ポンプは、エンジンが作動していて、エンジン温度が閾値温度より高い状態において、エンジンドリブンポンプがエンジン温度を管理する動作を補助するために、起動され得る。このようにして、より少ない冷却しか必要でないときに、エンジンドリブンポンプを作動させるために必要な力は小さく維持され得る。さらにまた、エンジンが作動していてエンジン温度が高い間に補助ポンプが用いられる場合には、エンジンドリブンポンプは、その低減された出力のために、小型化され得る。
【0007】
上記の概要は、さらに詳細な説明で述べられる概念の抜粋を簡略化された形で示すために提供されていることは理解されるべきである。それは、請求された主題の重要な点または本質的特徴を特定することを意味するものではなく、その範囲は、独自に、詳細な説明に続く請求項により定義される。さらにまた、請求された主題は、上記のいかなる欠点を解決する実施態様にも、本開示のいかなる部分にも限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ハイブリッド電気自動車における冷却システムを有するエンジンの模式図を示す。
【図2】冷却システムを流れる冷却液の実施例を例示する回路図を示す。
【図3】冷却システムを流れる冷却液の他の実施例を例示する回路図を示す。
【図4】エンジンの停止中に冷却システムを制御するためのルーチンを例示するフローチャートを示す。
【図5】エンジンの作動中に冷却システムを制御するためのルーチンを例示するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明は、ハイブリッド電気推進システムを有する車両において、エンジンが作動しているときに、選択された作動状態である間、エンジンドリブンウォーターポンプを補助するために電動補助ポンプを作動させる方法に関する。補助ポンプは、エンジンが停止中で、かつ、車両はまだ作動状態(例えばハイブリッド電気自動車の電気専用モード)であるときに、冷却液をヒーターコアに循環させて、熱を車両の乗員に供給するために、作動させることができる。加えて、補助ポンプは、エンジンが作動しているときに作動させることもできる。例えば、補助ポンプは、エンジン温度が閾値温度より高いエンジン作動状態である間、作動させることができる。上記のような構成において、補助ポンプは、エンジンドリブンポンプ(例えば、暖かい環境状態での拡張された高いエンジン負荷の間)の動作を補助でき、その結果、エンジンドリブンポンプを作動させるために、より少ない力しか必要とされない。このようにして、エンジンドリブンポンプを小型化でき、燃費およびエンジン効率は向上され得る。
【0010】
次に、図1においては、自動車102の冷却システム100についての例示の実施例が図式的に例示される。冷却システム100は、廃熱を吸収するために、冷却液を内燃機関10および排気ガス再循環(EGR)冷却器54に循環させ、加熱された冷却液を、それぞれ冷却液流路82,84を介してラジエータ80、および/またはヒータコア90に供給する。
【0011】
特に、図1は、エンジン10と組み合わされ、エンジン冷却液をエンジンドリブンウォーターポンプ86を経由させて、エンジン10から、EGR冷却器54を介してラジエータ80に循環させ、冷却液流路82を介してエンジン10へと戻す冷却システム100を示す。エンジンドリブンウォーターポンプ86は、フロントエンドアクセサリドライブ36(FEAD)を介してエンジンに連結され、ベルト、チェーン,などを介してエンジンスピードと比例して回転するようにしてもよい。具体的には、エンジンドリブンポンプ86は、エンジンブロック、ヘッド、その他の流路を介して冷却液を循環させてエンジンの熱を吸収し、その熱はラジエータ80を介して周囲の空気中に移送される。ポンプ86が遠心ポンプである例では、発生する圧力(およびその結果、生じる流れ)は、クランクシャフトの速度と比例してもよく、図1の例ではエンジン速度に正比例する。冷却液の温度は、冷却液流路82に設けられて冷却液が閾値温度に達するまで閉じるように保たれ得るサーモスタットバルブ38によって、制御され得る。
【0012】
さらに、エンジンが作動中であるとともに、車両102がゆっくり走行するか、または停止しているときに、ラジエータ80に流れる気流を維持するために、ファン92がラジエータ80に連結され得る。いくつかの例では、ファン速度は、コントローラ12によって制御されてもよい。または、ファン92は、エンジンドリブンウォーターポンプ86に連結されてもよい。
【0013】
図1に示すように、エンジン10は、排気ガス再循環(EGR)システム50を含むことができる。EGRシステム50は、EGR流路56を介して、排気流路48から吸気流路44まで、排気ガスの所望の部分を送ることができる。吸気流路44に供給されるEGRの量は、コントローラ12により、EGRバルブ52を介して変えられ得る。さらに、EGRセンサ(不図示)は、EGR流路56中に配置されることができ、圧力、温度、および排気ガスの濃度のうちの1つ以上の表示(indication)を提供してもよい。または、EGRは、排気酸素センサ、および/または吸気酸素センサに基づいて制御されてもよい。ある条件の下では、EGRシステム50は、燃焼室内部の空気と燃料との混合気の温度を調整するために用いられ得る。EGRシステム50は、さらに、エンジン10に再導入される排気ガス49を冷却するためのEGR冷却器54を含んでもよい。このような実施例では、エンジン10から流出する冷却液は、ラジエータ80への冷却液流路82に移動する前に、EGR冷却器54を循環するようにされてもよい。
【0014】
EGR冷却器54を通過した後に、冷却液は、上記のように冷却液流路82を介して流れ、および/または冷却液流路84を介して、熱を車室104へ移送し得るヒータコア90に流れることができ、そして、冷却液はエンジン10へ戻る。いくつかの例では、エンジンドリブンポンプ86は、両方の冷却液流路82,84に冷却液を循環させるように作動できる。図1の例のように車両102がハイブリッド電気推進システムを備えている他の例では、エンジンドリブンポンプに加えて電動補助ポンプ88を冷却システムに含めることができる。このように、補助ポンプ88は、エンジン10の停止中(例えば電気だけでの運転中)に、ヒータコア90に冷却液を循環させるため、および/またはエンジンの作動中に、エンジンドリブンポンプ86を補助するために用いることができる。この点については、以下に詳述する。エンジンドリブンポンプ86と同様に、補助ポンプ88は遠心ポンプであってもよい。しかしながら、ポンプ88によって生じる圧力(およびその結果、生じる流れ)は、エネルギ蓄積装置25によってポンプに供給される電力の量と比例し得る。
【0015】
この例示的実施例において、ハイブリッド推進システムは、モーター、発電機、その他、およびこれらの組み合わせを含み得るエネルギ変換装置24を含む。エネルギ変換装置24は、さらに、電池、コンデンサ、フライホイール、圧力容器などを含み得るエネルギ蓄積装置25に連結されて示される。エネルギ変換装置は、車両の動作および/またはエンジンからのエネルギを吸収して、吸収されたエネルギをエネルギ蓄積装置による蓄積に適した形態のエネルギに変換するために作動し得る(例えば、発電機を作動させる。)。エネルギ変換装置は、また、出力(力、仕事、トルク、速度、その他)を駆動輪106、エンジン10(例えば、モーターを作動させる)、補助ポンプ88などに供給するために作動され得る。エネルギ変換装置は、ある例では、モーターだけ、発電機だけ、またはモーターと発電機との両方、エネルギ蓄積装置と車両の駆動輪および/またはエンジンとの間でエネルギの適切な変換を行うために使用される種々の他のコンポーネントを含み得ることは理解されるべきである。
【0016】
ハイブリッド電気推進の実施例は、車両が、エンジンだけ、エネルギ変換装置(例えばモーター)だけ、または両方の組合せで走行できるフルハイブリッドシステムを含むことができる。エンジンが主要なトルク源であって、ハイブリッド推進システムが付加的トルクを選択的に、例えばティップ・イン(tip-in)、または他の状況の間に発生するために、働く補助的または緩やかなハイブリッド構成も、また、用いることができる。さらに、スタータ/発電機、および/またはスマートオールタネータシステムも、また、用いられ得る。加えて、上記の各種コンポーネントは、車両コントローラ12により制御されてもよい(後述)。
【0017】
以上の説明から、典型的なハイブリッド電気推進システムは、さまざまな作動モードが可能であることは理解されるべきである。フルハイブリッドな実施において、例えば、推進システムは、エネルギ変換装置24(例えば電動モータ)を車両を推進させる唯一のトルク・ソースとして用いて作動してもよい。この「電気専用」作動モードは、制動、低速中、交通信号で停止中などに使用され得る。他のモードにおいては、エンジン10は、オンにされて、駆動輪106を駆動する唯一のトルク・ソースとして作動する。「アシスト」モードと呼ばれ得るさらに別のモードでは、ハイブリッド推進システムは、エンジン10により供給されるトルクを補足し、協働して働くことができる。上記のように、エネルギ変換装置24は、また、トルクがエンジン10および/またはトランスミッションから吸収される発電モードで作動することもできる。さらにまた、エネルギ変換装置24は、エンジン10が異なる燃焼モードの間で遷移する間(例えば、スパーク点火モードと、圧縮点火モードとの間で遷移する間)に、トルクを増大させるか、または吸収するために働き得る。
【0018】
図1は、さらに、制御システム14を示す。制御システム14は、制御ルーチンおよび本明細書で説明される動作を実行するために、エンジン10の種々のコンポーネントに通信的に接続され得る。例えば、図1に示すように、制御システム14は、電子式ディジタルコントローラ12を含んでいてもよい。コントローラ12は、マイクロプロセッサ・ユニット、入出力ポート、実行可能なプログラムおよび調整値のための電子的記憶媒体、ランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリ(keep alive memory)、およびデータバスを含むマイクロコンピュータであってもよい。図示のように、コントローラ12は、複数のセンサ16から入力を受け取ることができる。上記センサは、ユーザー入力および/またはセンサ(例えばトランスミッションギアポジション、アクセルペダル入力、制動装置入力、トランスミッションセレクタポジション、車速、エンジン速度、エンジンに流れる空気流量、周囲温度、吸気温度など)冷却システム・センサ(例えば冷却液温度、ファン速度、車室温度、周囲湿度など)、その他を含むことができる。さらに、コントローラ12は、種々のアクチュエータ18と通信し得る。上記アクチュエータは、エンジンのアクチュエータ(例えば燃料噴射器、電子制御吸気スロットルプレート、点火プラグなど)、冷却システムのアクチュエータ(例えばエアハンドリングベント、および/または車室気候制御システムのダイバータバルブなど)、その他を含むことができる。いくつかの例においては、記憶媒体は、後述する方法や予想されるが特に示されない他の変形例を実行するためにプロセッサによって演算可能な命令を示す、コンピュータが読み取り可能なデータによって、プログラムされることができる。
【0019】
ここで示されるように、エンジンから冷却液へ伝達される廃熱の量は、作動状態に応じて変化し、そして、空気の流れに伝達される熱量に影響を及ぼし得る。例えば、エンジンの出力トルク、または燃料流量が減少するにつれて、発生する廃熱の量は比例して減少し得る。このような減少する出力は、アイドリング状態に代表され、対応して、走行作動(driving operation)に比べ比較的低速なエンジン速度で、そして冷却液の流量が減少する結果となり得る。いくつかの状況(例えば低い周囲温度および延長されたアイドル運転)の間、2つの並列なループ構成における、冷却液の流量の減少とともに冷却液に伝達される熱の減少は、後部の暖房システムにおける空気の流れの不十分に低い温度という結果になり得る。
【0020】
次に、図2および図3においては、冷却液流回路(例えば冷却回路)についての例示的実施例が示される。図2の実施例において、ヒータコアを流れる冷却液の流れは、補助ポンプを介して補助され得る。図3の実施例においては、補助ポンプは、ヒータコアに加えてエンジンおよびEGR冷却器を介した冷却液の流れを補助するために用いられる。
【0021】
図2は、図1で示された実施例と類似の冷却システムの例示的実施例を示す。図示のように、冷却回路200は、エンジンドリブンウォーターポンプ86を共用し、連通する2つの並列なループ201,202を有する。
【0022】
ループ201では、ポンプ86は、エンジン10、およびEGR冷却器54に冷却液をポンプ輸送するために作動する。冷却液は、EGR冷却器54からラジエータ80に循環され、ポンプ86に戻る。上記のように、冷却液はエンジンから熱を吸収してラジエータに伝達し、そこで冷却され得る。図2に示されるとともに、図1に関して説明されたように、冷却回路200はサーモスタット38を含むことができる。サーモスタット38は、クーラントの温度が閾値に達するまで閉じたままにされて、冷却液がラジエータに流れるのを阻止することにより、冷却液の流れを制御し得る。このようにして、エンジンは、より急速に温められ得る。さらに、ファン92はポンプ86に連結され(図1参照)、このファン92は、ポンプ速度と比例した速度、例えば1:1などの速度比で回転してもよい。他の例では、ポンプ86の速度が増加するにつれてファン92の速度も増加し、また、その逆であってもよい。
【0023】
図2のループ202では、ポンプ86は、エンジン10、およびEGR冷却器54に冷却液をポンプ輸送するために作動する。冷却液は、EGR冷却器54を通過した後に、ヒータコア90に循環され、ポンプ86に戻る。図2に示すように、ループ202は、また、補助ウォーターポンプ88を含む。補助ポンプ88は、ハイブリッド自動車動作の電気単独モードの間に作動される電動ポンプであってもよい。加えて、補助ポンプ88は、エンジンが作動している間、例えば、追加の冷却液の流れが、システムにエンジン温度を許容される範囲内に維持するかまたは低下させることを可能にさせる場合などに、選択的に作動され得る。さらに、図2に示すように、ヒータコアファン94は、補助ポンプ88に連結されてもよい。ヒータコアファン94は、ポンプ88と比例した速度、例えば1:1などの速度比で回作動し得る。このように、以下に図4および図5に関して、より詳細に説明するように、補助ポンプは、エンジンドリブンポンプ86の動作を補助し得る。
【0024】
図3に移って、冷却システムの冷却回路の別の実施例が示される。冷却回路300は、図2と同様にしてファン92に連結され得るエンジンドリブンウォーターポンプ86を共用し、連通する3つの並列なループ301,302,303を有する。冷却液は、ポンプ86を介してループ301,302,303に循環され得る。さらに、補助ウォーターポンプ88は、ポンプ86からループ302,303に流れる冷却液が、補助ポンプ88によって補助されるように、ループ302に含められ得る。図3の例に示すように、ヒータコアファン94は、やはり図2のそれと同じようにして、補助ポンプ88に連結されてもよい。このようにして、以下に、より詳細に説明するように、エンジン10、EGR冷却器54、およびヒータコア90を流れる冷却液は、選択された作動状態の間、補助ポンプ88によって補助され得る。
【0025】
他の実施態様において、冷却システムは、第2の補助ウォーターポンプを含むことができる。例えば、1つの構成中で、1台の補助ポンプがエンジンおよびEGR冷却器内で冷却液を循環させるために用いられ、第2の補助ポンプがヒータコアに冷却液を循環させるために用いられる間に、エンジンドリブンポンプが、冷却液をラジエータに循環させるために利用され得る。
【0026】
次に、冷却システムの補助ポンプを作動させるための制御ルーチンについて、図4および図5を参照して説明する。図4のフローチャートは、エンジンがオフである場合の、例えば図1に示したような冷却システム100(または図2に示したような冷却システム200など)の冷却システムのための制御ルーチン400を例示する。具体的には、ルーチン400は、エンジンの温度を決定し、そのエンジン温度に基づいて、少なくともヒータコアに冷却液を循環させる。さらに、冷却液の流量は、例えばエンジン温度、および車室の暖房要求などの動作パラメータに基づいて調整されてもよい。
【0027】
ルーチン400における410では、エンジンが作動しているかどうかが決定される。エンジンが作動していると決定される場合、ルーチン400は422に移行し、ルーチン500が実行されて、ルーチン400は終了する。一方、エンジンがオフであると決定される場合、ルーチン400は412へ進み、補助ポンプが作動しているかどうかが決定される。補助ポンプが作動中でない場合、補助ポンプはルーチン400における424で起動される。ハイブリッド電気自動車において、エンジンが停止され、かつ、車両は依然作動していることが望ましい場合(例えば、電気単独モード作動)、蓄積されているエネルギが、例えば補助ポンプなどの電気的コンポーネントに電力を供給するために用いられる。このようにして、車室は、エンジンがオフである間であっても暖められ得る。
【0028】
一実施例において、ヒータコアファンの空気の流量は、ヒータコアを流れる冷却液の流量に正比例してもよい。このように、車室に供給される熱は、補助ポンプ/ヒータコアファンの速度に基づいて調整され得る。
【0029】
一旦、補助ポンプが作動中であるかと決定されるか、または補助ポンプが起動されると、図4のルーチン400は、414へと続き、補助ポンプが冷却液をヒータコアに循環させる。冷却液がヒータコアを通ってエンジンへ戻るように流れ始めると、ルーチン400における416で、エンジン温度が第2の閾値温度を越えるかどうかが決定される。エンジン温度が第2の閾値より高くないと決定されると、ルーチン400は420に移行し、冷却液の流れが、例えば車室の暖房要求などの動作パラメータに基づいて調整される。例えば、車両の乗員(例えばドライバ)が車室内をより暖めることを求める場合、補助ポンプへの電力、したがって冷却液の流量が増大し得る。
【0030】
一方、エンジン温度が第2の閾値温度より高いと決定される場合、図4のルーチン400は418へ進み、エンジンの温度を低下させ、および/または維持するために、冷却液がラジエータに循環させられる。いくつかの実施形態では、上記のように、ラジエータへの流れはサーモスタットバルブを介して制御され得る。そして、この場合、サーモスタットバルブは、エンジン温度が第2の閾値温度よりも高く上昇した場合に、冷却液がラジエータに流れるのを許容するために開かれ得る(例えば、電子制御サーモスタットを介して、または、機械式サーモスタットを介して)。一旦、補助ポンプがラジエータに冷却液を循環させ始めると、ルーチン400は420へ進み、流れが動作パラメータに基づいて調整される。例えば、エンジンの温度が上昇している場合、ラジエータへの冷却液の流れは、補助ポンプの動作(例えば速度、ポンプ容量、その他)を増加させることによって、増加できる。
【0031】
このように、ハイブリッド電気自動車が電気単独モードで作動するときに、補助電動ポンプは、エンジン、およびヒータコア、および/またはラジエータに冷却液を循環させるために利用できる。さらに、エンジンの温度、および車室の暖房要求などのパラメータに基づいて、補助ポンプからの冷却液の流れが調整され得る。例えば、車室の暖房の増加が要請されるときに、ポンプの流れが増加させられ得る。図5に関して後述するように、エンジンの作動中には、補助ポンプの動作は、続行され得る。
【0032】
図5のフローチャートは、エンジンが作動している場合の、例えば図1の冷却システム100(または図2に示したような冷却システム200など)などの冷却システムのための制御ルーチン500を例示する。具体的には、ルーチン500は、エンジンからラジエータ、および/またはヒータコアまで熱を移送するために、エンジンドリブンポンプを通って、また、選択された作動状態の間、補助ポンプを通って流れる冷却液の流れを制御する。
【0033】
ルーチン500における510では、エンジンが作動しているかどうかが決定される。エンジンが作動していないと決定される場合、ルーチン500はルーチン526に移行し、ルーチン400が実行されて、ルーチン500は終了する。510でエンジンが作動していると決定されると、ルーチン500は512へと続き、エンジンドリブンウォーターポンプがオンにされる。一旦エンジンドリブンポンプがオンにされると、ルーチン500は514へ進み、冷却液が冷却システム内でヒータコアに循環させられる。
【0034】
図5のルーチン500における516では、エンジンの温度が第1の閾値温度より高いかどうかが決定される。エンジンの温度が第1の閾値温度より低いと決定される場合、ルーチン500は514に戻り、エンジンドリブンポンプは、冷却液をヒータコアに循環させるように作動する。一方、エンジンの温度が第1の閾値温度より高いと決定される場合、ルーチン500は518へ進み、エンジンドリブンポンプは、冷却液をヒータコアに加えてラジエータにポンプ輸送するために作動する。
【0035】
一旦、冷却液がラジエータに流れると、ルーチン500は、520で、エンジンの温度が第2の閾値より高いかどうか決定する。温度が第2の閾値より高くない場合、ルーチン500は518に戻り、エンジンドリブンポンプは、冷却液をラジエータとヒータコアとに循環させ続ける。エンジンの温度が第2の閾値より高いと決定される場合、ルーチン500は522へと続き、ヒータコアへの冷却液の流れを補助するために、補助ウォーターポンプが起動される。いくつかの実施形態では、上記のように、補助ポンプは、エンジンドリブンポンプがヒータコアに加えて、冷却液をエンジンおよびEGR冷却器内で循環させるのを補助し得る。
【0036】
補助ポンプが起動された後、ルーチン500は524へ進み、補助ポンプからの冷却液の流れ(例えば補助ポンプの補助程度)が、種々の動作パラメータに基づいて調整され、補助ポンプは「高性能な(smart)」ポンプとして作動する。例えば、補助ポンプの補助程度は、車速、エンジン冷却液の温度、周囲温度、および/またはこれらの組み合わせに基づいて調整され得る。例えば、車輛速度が減少すると、ラジエータを通る気流が少なくなり得、そして、補助ポンプの補助程度は、例えばファン速度がすでに最大速度であるときのエンジン温度を維持するために、増加し得る。別の例として、補助ポンプの補助程度は、周囲温度(例えば車両の外側の温度)の変化に応答して調整され得る。この場合、周囲温度が増加するにつれて、補助ポンプの補助程度は増加し得る。周囲温度が上がるにつれて、補助ポンプの補助程度は、エンジンの温度を維持するとともに、エンジンドリブンポンプを作動させる力を小さく維持するために、増加する。
【0037】
さらに、補助ポンプの動作およびファン速度は、互いに調整されることができ、さらに、エンジン速度によって調整されてもよい。エンジン速度が増加するにつれて、例えば、より少ない補助ポンプの動作が用いられるようにしてもよい。なぜならば、速度の増加は、機械式ポンプからのポンプ流の増加を引き起こすからである。同様に、ファン速度が減少するにつれて、補助ポンプの動作は補償のために増加し得る。さらに他の、ファンと補助ポンプとの動作の間の調整が用いられてもよい。さらに、例えばエンジン・トルク、および/または出力レベルなどの他の状況も、考慮されることができ、そこにおいて、高いエンジン負荷のときに、冷却液の温度が上昇する前であっても、温度上昇の割合を低下させるために、補助ポンプが先行的に結合されて、増加したレベルで作動させられることができる、そして、このように、エンジン・トルク、および/またはパワーを制限する措置がとられるまでに、高い、またはピークのエンジン負荷を維持する能力が延長される。例えば、エンジン・トルク、および/またはパワーが、選択された冷却液温度閾値を上回ると制限され得る場合、システムは、そのような状況を予想でき、そこで、エンジンが高負荷である場合に、エンジン冷却液温度が高い方の閾値より低くても、補助ポンプを結合する(または補助ポンプの作動を増大させる。)。
【0038】
このように、補助電動ポンプは、エンジンドリブンポンプと並行して、選択的に利用され得る。加えて、補助ポンプは、さまざまな作動中のエンジン、車両、および車室の暖房、ならびに例えば車輛速度や周囲温度などの冷却システム作動パラメータに応答して、補助ポンプの補助程度を変化させるように、調整(例えば、速度、ポンプ容量、その他)されることができる。補助ポンプに供給される力、そして補助ポンプの補助程度を調整することによって、1つの実施例において、高温でのエンジン作動の間、補助ポンプがエンジン・ポンプを補助しない構成と比較して、エンジンドリブンポンプを作動させるための力の量を低減(そして、エンジンドリブンポンプを小型化)できる。
【0039】
ここで、本明細書に含まれる実施例の制御および評価ルーチンは、さまざまなエンジン、および/または車輛システムの構成に適用することができる。本明細書に記載されている特定のルーチンは、例えば、イベントドリブン、インタラプトドリブン、マルチタスキング、マルチスレッディングなどの1つ以上の任意の数の処理手法を代表し得る。上記のように例示されたさまざまな振舞い、動作、または機能は、例示された順序で実行され、並列に実行され、または場合によっては省略されてもよい。同様に、処理の順序は、本明細書に記載されている例示の実施例の特徴および効果を達成するために必ずしも必要とされるものではなく、図示および説明の容易さのために提供されるものである。例示された1つ以上の振舞い、または機能は、用いられる特定の手法に応じて、繰り返し実行されてもよい。さらに、記載されている振舞いは、エンジン制御システムのコンピュータが可読な記憶媒体にプログラムされるコードをグラフィカリに表し得る。
【0040】
本明細書において開示される構成およびルーチンは、本質的に例示であり、これらの特定の実施例は、様々なバリエーションが可能であり、限定的に解釈されるものでないことはいうまでもない。例えば、上記の技術は、V6(V型6気筒)、I4、I6、V12、対向4、その他のタイプのエンジンに適用可能である。本開示の主題は、本明細書において開示される、種々のシステムおよび構成、他の特徴、機能、および/または特性の、あらゆる、新規で非自明的な組合せおよびサブコンビネーションを含む。
【0041】
以下の請求項は、特に新規で非自明であると考えられる特定の組合せおよびサブコンビネーションを強調するものである。これらの請求項は、「1つの」要素、または「第1の」要素、またはこれらと等価なものに言及し得る。この種の請求項は、1つ以上のそのような要素を有することを(incorporation)含み、2つ以上のそのような要素を必須とすることも除外することもないと理解されなければならない。開示された特徴、機能、要素、および/または特性の、他の組合せおよびサブコンビネーションは、本願の請求項の補正によって、または、本願または関連出願での新規な請求項の提示によって、請求され得る。そのような請求項は、最初の請求項に対して、より広いか、より狭いか、等しいか、または異なる範囲であっても、また、現在の開示の主題の範囲内に含まれるとみなされる。
【符号の説明】
【0042】
10 エンジン(内燃機関)
12 電子式ディジタルコントローラ
14 制御システム
16 センサ
18 アクチュエータ
24 エネルギ変換装置
25 エネルギ蓄積装置
36 フロントエンドアクセサリドライブ
38 サーモスタットバルブ
44 吸気流路
48 排気流路
49 排気ガス
50 排気ガス再循環(EGR)システム
52 EGRバルブ
54 排気ガス再循環冷却器
56 EGR流路
80 ラジエータ
82 冷却液流路
84 冷却液流路
86 エンジンドリブンウォーターポンプ
88 電動補助ポンプ
90 ヒータコア
92 ファン
94 ヒータコアファン
100 冷却システム
102 自動車(車両)
104 車室
106 駆動輪
200 冷却システム(冷却回路)
201 ループ
202 ループ
300 冷却回路
301 ループ
302 ループ
303 ループ
400 制御ルーチン
500 制御ルーチン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータおよびヒータコアを有するエンジン冷却システムのための方法であって、
エンジンの停止中に、補助ポンプを作動させて、冷却液をヒータコアに流し、
エンジンの作動中に、エンジンドリブンポンプを作動させて、冷却液をヒータコア、およびラジエータに流し、作動条件に基づいて選択的に補助ポンプを作動させ、ヒータコア、およびラジエータへの流れを補助することを含む方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
エンジンは、ハイブリッド電気推進システムに結合され、上記補助ポンプは電動ポンプである方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、
上記選択的に補助ポンプを作動させることが、エンジンの冷却液の温度が閾値温度より高いことに応答して補助ポンプを作動させることを含む方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、さらに、
エンジンの作動中に、作動条件に基づいて補助ポンプの補助程度を調整することを含む方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、
上記作動条件が、エンジン速度を含み、
少なくとも1つの状態において、エンジン速度が減少するときに、補助ポンプの補助程度が増加する方法。
【請求項6】
請求項5の方法であって、
上記作動条件が周囲温度を含み、
少なくとも1つの状態において、周囲温度が上昇するときに、補助ポンプの補助程度が増加する方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、さらに、
エンジンの停止中に、補助ポンプを作動させて、冷却液をヒータコア、およびラジエータに流すことを含む方法。
【請求項8】
車両のエンジンに連結されたエンジン冷却システムのための方法であって、
エンジンの停止中に、補助ポンプを作動させて、冷却液をヒータコアに流し、
エンジンの作動中に、エンジンドリブンポンプを作動させて、冷却液をヒータコア、およびラジエータに流し、作動条件に基づいて選択的に補助ポンプを作動させ、ヒータコア、およびラジエータへの流れを補助し、作動条件に基づいて補助ポンプの補助程度を調整することを含む方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、
上記車両が、ハイブリッド電気推進システムを備え、
補助ポンプの補助程度が、エンジンの出力に基づく方法。
【請求項10】
請求項8の方法であって、
上記補助ポンプは電動ポンプである方法。
【請求項11】
請求項8の方法であって、
上記選択的に補助ポンプを作動させることが、エンジンの冷却液の温度が閾値温度を越えたときに補助ポンプを起動することを含む方法。
【請求項12】
請求項8の方法であって、
上記作動条件が、エンジン速度を含み、
補助ポンプの補助程度が、エンジン速度の増大に応答して減少する方法。
【請求項13】
請求項8の方法であって、
上記作動条件が周囲温度を含み、
補助ポンプの補助程度が、周囲温度の低下に応答して減少する方法。
【請求項14】
自動車のエンジン用の冷却システムであって、
エンジンドリブンポンプと、
上記エンジンドリブンポンプと連通する補助ポンプと、
ラジエータを含み、上記エンジンドリブンポンプが、当該第1のループ内の上記ラジエータに冷却液を循環させる第1のループと、
ヒータコアを含み、上記補助ポンプが、当該第2のループ内の上記ヒータコアに冷却液を循環させる、上記第1のループと並列な第2のループと、
コンピュータが可読な記憶媒体を有し、上記補助ポンプおよびエンジンドリブンポンプを作動させるためのコントローラとを備え、
上記記憶媒体は、
エンジンの停止中に、補助ポンプを作動させて、冷却液をヒータコアに流し、
エンジンの作動中に、エンジンドリブンポンプを作動させて、冷却液をヒータコア、およびラジエータに流し、作動条件に基づいて選択的に補助ポンプを作動させて、ヒータコアへの流れを補助し、
エンジンの作動中に、作動条件に基づいて補助ポンプの補助程度を調整する
ための命令を含むシステム。
【請求項15】
請求項14のシステムであって、
上記車両が、ハイブリッド電気推進システムを備え、上記補助ポンプは電動ポンプであるシステム。
【請求項16】
請求項14のシステムであって、
上記第1のループが、サーモスタットバルブを有し、
上記サーモスタットバルブは、エンジン温度が第1の閾値温度よりも高く上昇した後に、冷却液がラジエータに流れるのを許容するために開くシステム。
【請求項17】
請求項14のシステムであって、
上記選択的に補助ポンプを作動させることが、エンジンの冷却液の温度が第2の閾値温度より高く上昇したときに補助ポンプをオンにすることを含むシステム。
【請求項18】
請求項14のシステムであって、
作動条件が、エンジン速度、および周囲温度を含むシステム。
【請求項19】
請求項18のシステムであって、
補助ポンプの補助程度が、周囲温度の上昇に応答して増加するシステム。
【請求項20】
請求項18のシステムであって、
補助ポンプの補助程度が、エンジン速度の増大に応答して減少するシステム。
【請求項21】
請求項14のシステムであって、
さらに、ヒータコアファンを備え、
ヒータコアファン気流量が、ヒータコアに流れる冷却液の流量に正比例するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−116366(P2011−116366A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271301(P2010−271301)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(503136222)フォード グローバル テクノロジーズ、リミテッド ライアビリティ カンパニー (236)
【Fターム(参考)】