説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】ハイブリッド駆動装置において、モータ軸の軸受圧入面を加工する際に、作業性を妨げることをなくして加工工数を低減するとともに、モータ軸の加工を容易とし、また、モータの全長を短くし、スペース的にも有利とすることにある。
【解決手段】回転位置検出機構をセンサステータとセンサロータとにより構成し、センサステータをモータケースに固定し、モータロータの端面にモータロータの抜け止め用のロータ端板を配設し、このロータ端板とモータロータとをロータ軸に固定するとともに、ロータ端板にはロータ軸の長手方向でモータケース側へ延出させた支持部を設け、この支持部にセンサロータを固定して設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド駆動装置に係り、特に車両に駆動源としてエンジンとモータ(発電動機)とを搭載したハイブリッド駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両としては、近年、環境問題・省エネルギ等の問題から、駆動源として、燃料の燃焼により駆動力を発生させるエンジンと、電気により駆動力を発生させるモータ(発電動機)とを組み合わせて設け、効率の良い駆動源を選択して走行する、いわゆるハイブリッド電気自動車(HEV)がある。
【0003】
図11に示す如く、ハイブリッド電気自動車等の車両に利用されるモータ402は、主として、永久磁石式のDCブラシレスモータであり、モータケース404に嵌合されるモータステータ406と、永久磁石408が挿入された珪素鋼板を積層したモータロータ410とからなり、そして、このモータロータ410の両端面には、珪素鋼板を押さえ込み・永久磁石408の抜け止めを行うように、ロータ端板412・412をロータ軸414に設置してボルト若しくはカシメ等の固定手段により固定する構造である。また、モータ402の位置を検出するように、回転位置検出機構(回転センサ:レゾルバ)416を設けている。この回転位置検出機構416は、回転部であるセンサロータ418をロータ軸414の内側の一方の軸受部420に設置するとともに、検出部であるセンサステータ422をモータケース404の長手方向に延出した支持部424に設置している。また、軸受部420と支持部424との間に軸受426及びシール材428を配設するとともに、ロータ軸414の内側の他方の軸受部430とモータケース404の隔壁432の支持部434との間に軸受436及びシール材438を配設している。
【0004】
また、図12に示す如く、ハイブリッド電気自動車等の車両に利用されるモータ502は、主として、永久磁石式のDCブラシレスモータであり、モータケース504に嵌合されるモータステータ506と、永久磁石508が挿入された珪素鋼板を積層したモータロータ510とからなり、そして、このモータロータ510の両端面には、珪素鋼板を押さえ込み・永久磁石508の抜け止めを行うように、ロータ端板512・512をロータ軸514に設置してボルト若しくはカシメ等の固定手段により固定する構造である。また、モータ502の位置を検出するように、回転位置検出機構(回転センサ:レゾルバ)516を設けている。この回転位置検出機構516は、回転部であるセンサロータ518をロータ軸514の外側の支持部520に設置するとともに、検出部であるセンサステータ522をモータケース504の取付部524に設置している。また、ロータ軸514の内側の一方の軸受部526とモータケース504の一方の支持部528との間に軸受530及びシール材532を配設するとともに、ロータ軸514の内側の他方の軸受部534とモータケース504の隔壁536の他方の支持部538との間に軸受540及びシール材542を配設している。
【0005】
従来、エンジンとモータとを組み合わせたハイブリッド駆動装置には、モータをハウジングの隔壁とモータサポートとの間に挟持して、モータ及び回転センサ(レゾルバ)の組み付け時の位置決めを容易に行わせ、また、回転センサのセンサステータをモータサポートに取り付けるとともに、回転センサの回転体であるセンサロータをモータロータ上に配置したものがある。
ブラシレスモータには、電源線と信号線とをロータの軸心に対して互いに放射方向の位置に配置し、また、回転センサ(レゾルバ)のセンサロータをロータ軸に取り付けるとともに、回転センサのセンサステータをマウントユニットに収容して設けたものがある。
エンジンとモータとを組み合わせたハイブリッド駆動装置(電気式トルクコンバータ)には、エンジンと、モータジェネレータと、エンジンと変速機との間に配置された合成分配機構とから構成され、また、回転センサ(レゾルバ)のセンサロータをロータサポートに取り付けるとともに、回転センサのセンサステータをケース部材に取り付けたものがある。
エンジンとモータとを組み合わせたハイブリッド駆動装置には、発電動機(モータ)と回転位置検出機構(回転センサ)との間に防磁部材を設け、また、回転位置検出機構のセンサステータをモータケースに取り付けるとともに、回転位置検出機構のセンサロータをクランク軸に取り付けたものがある。
エンジンとモータとを組み合わせたハイブリッド駆動装置には、回転センサ(レゾルバ)を、モータのモータステータの内側に配設したものがある。
【特許文献1】特開2000−224797
【特許文献2】特開2004−23840
【特許文献3】特開2001−113970
【特許文献4】特開2001−78373
【特許文献5】特開2001−260672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両に駆動源としてエンジンとモータとを搭載したハイブリッド駆動装置においては、回転位置検出機構(回転センサ)を設置する場合に、図11、図12に示すように、回転部であるセンサロータをロータ軸の軸受部又はロータ軸の一部に延出した支持部に設置するとともに、検出部であるセンサステータをモータケースに設置しているので、モータの全長が延びたり、若しくは、ロータ軸の構造が複雑となってしまい、加工工数が増加し、しかも、軸受等を設置するロータ軸の軸受部の外周面としての軸受圧入面の加工が困難になるという不都合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両に駆動源としてエンジンとモータとを搭載するとともに、前記エンジンの出力軸と前記モータの出力軸との間に動力分配機構を設け、前記モータをモータロータとモータステータとで構成し、前記モータの出力軸に配設されるロータ軸に前記モータロータを配設するとともに、前記モータステータを前記モータが収容されるモータケースに固定し、前記モータの回転を検出する回転位置検出機構を設けたハイブリッド駆動装置において、前記回転位置検出機構をセンサステータとセンサロータとにより構成し、前記センサステータを前記モータケースに固定し、前記モータロータの端面に前記モータロータの抜け止め用のロータ端板を配設し、このロータ端板と前記モータロータとを前記ロータ軸に固定するとともに、前記ロータ端板には前記ロータ軸の長手方向で前記モータケース側へ延出させた支持部を設け、この支持部に前記センサロータを固定して設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のハイブリッド駆動装置は、回転位置検出機構のセンサロータを、モータロータの端面に固定するロータ端板の一部に延出した支持部に固定して設けることから、モータ軸の軸受圧入面を加工する際に、作業性を妨げることがなくなり、加工工数を低減するとともに、モータ軸の加工を容易とし、また、ロータ軸にセンサロータを固定しないので、モータ軸の全長を短くし、スペース的にも有利とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明は、加工する際の作業性を妨げず、また、モータ軸の全長を短くする目的を、回転位置検出機構のセンサロータを、ロータ端板に延出した支持部に設けて実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1〜図6は、この発明の第1実施例を示すものである。
【0011】
図4において、2はハイブリッド車両(図示せず)に搭載されるエンジン、4はこのエンジン2に連結されるハイブリッド駆動装置である。ハイブリッド車両には、駆動源として、燃料の燃焼により駆動力を発生させるエンジン2と、電気により駆動力を発生させるハイブリッド駆動装置4内の後述する各モータとを搭載している。ハイブリッド駆動装置4は、変速部6とモータ部8と差動部10とを備えている。
【0012】
ハイブリッド駆動装置4のハウジング12は、変速部6及び差動部10側の変速ケース14と、モータ部8側で後述の各モータを収容するモータケース16とからなる。変速ケース14は、エンジン2側の第1変速ケース18と、この第1変速ケース18に連設した第2変速ケース20とからなる。モータケース16には、エンジン2側の端面に、第2変速ケース20に接合するエンジン側プレート22が取付ボルト24により付設されるとともに、エンジン2から離れた側の端面に、エンド側プレート26が取付ボルト28により付設されている。そして、変速ケース14とモータケース16とは、エンジン側プレート22を介して取付ボルト30により一体的に組み付けられる。
【0013】
また、第1変速ケース18に第1隔壁32が連設し、第2変速ケース20に第2隔壁34が連設し、モータケース16の略中央部位に第3隔壁36が連設している。これにより、ハウジング12内には、エンジン2と第1隔壁32との間でフライホイール用室38が形成され、第1隔壁32と第2隔壁34との間で変速用室40及び差動用室42が形成され、エンジン側プレート22と第3隔壁36との間で駆動用室44が形成され、第3隔壁36とエンド側プレート26との間で発電用室46が形成される。
【0014】
このハウジング12内においては、エンジン2の出力軸としてのクランク軸48と同心上に入力軸50が配設されているとともに、この入力軸50と平行にカウンタ軸52が配設され、また、フライホイール用室38にフライホイール54が配設され、変速用室40に動力分配機構56が配設され、差動用室42に差動機58が配設され、発電用室46に第1モータ(MG1)60が配設され、駆動用室44に第2モータ(MG2)62が配設されている。動力分配機構56は、図5に示す如く、シンプソンタイプのものであり、エンジン2側の第1遊星歯車列64と、この第1遊星歯車列64に連結してエンジン2から離間した側の第2遊星歯車列66とが一体的になって構成されている。
【0015】
クランク軸48の端部には、入力軸50のエンジン2側の端部に軸支されたフライホイール54が取り付けられている。このフライホイール54には、入力軸50に固定したダンパ68が連結している。
【0016】
ハイブリッド駆動装置4は、エンジン2の駆動力を、クランク軸48の端部のフライホイール54に連結したトルク変調調整用のダンパ68を介して入力軸50に入力する。この入力軸50は、第1変速ケース18にワンウェイクラッチ70を介して、エンジン2の正転方向にのみ回転自在に、第1隔壁32に軸支されている。
【0017】
ワンウェイクラッチ70は、ワンウェイクラッチホルダ72に内装された状態で第1隔壁32に取り付けられている。
【0018】
このワンウェイクラッチホルダ72の外周には、駆動輪(図示せず)に駆動力を出力するための出力ギヤ74が回転自在に軸支されている。
【0019】
この出力ギヤ74には、カウンタ軸52に固定したカウンタギヤ76が噛み合って設けられている。また、カウンタ軸52には、駆動力を差動機58に伝達する終減速ギヤ列78が設けられている。この終減速ギヤ列78は、カウンタ軸52に固定したドライブギヤ80と、このドライブギヤ80に噛み合ったドリブンギヤ82とからなる。このドリブンギヤ82は、差動機58のデフケース84に固定されている。更に、この差動機58には、駆動輪を取り付けた車軸86が連結されている。出力ギヤ74は、カウンタ軸52のカウンタギヤ76により1段減速され、終減速ギヤ列88により差動機58を介して車軸86から駆動輪に駆動力を伝達する。
【0020】
図5に示す如く、動力分配機構56において、第1遊星歯車列64は、第1リングギヤ88と、この第1リングギヤ88に噛み合って回転軸90の第1軸部92に回転可能に支持された第1ピニオンギヤ94と、この第1ピニオンギヤ94に噛み合ったサンギヤ部96の第1サンギヤ98とで構成される。第1リングギヤ88は、アーム部100を介して前記出力ギヤ74に連結している。回転軸90の第1軸部92には、入力軸50に固定した第1キャリヤ102が取り付けられている。
【0021】
また、第2遊星歯車列66は、第2リングギヤ104と、この第2リングギヤ104に噛み合って前記回転軸90の第2軸部106に回転可能に支持された第2ピニオンギヤ108と、この第2ピニオンギヤ108に噛み合ったサンギヤ部96の第2サンギヤ110とで構成される。回転軸90の第2軸部106には、図4に示す如く、取付ボルト112により第1キャリヤ102に固定した第2キャリヤ114が取り付けられている。
【0022】
一方、入力軸50のエンジン2側から離間した端部には、図4に示す如く、オイルポンプ116が設けられている。このオイルポンプ116は、入力軸50のエンジン2側から離間した端部に固定したポンプロータ118と、このポンプロータ118を覆ってポンプ室120を形成するように、エンド側プレート26に取付ボルト122により取り付けられたポンプカバー124とから構成され、入力軸50内のオイル通路126を介して動力分配機構56を含む各部を強制的に潤滑するオイルを供給するものである。
【0023】
図1に示す如く、第1モータ60は、発電用室46内に配設され、主として発電に用いられるものであり、ロータ軸128を構成する第1ロータ軸130の外周面に固定した第1モータロータ132と、この第1モータロータ132に対応してモータケース16の内周面に固定された第1モータステータ134とからなる。第1モータロータ132は、永久磁石(図示せず)が挿入された珪素鋼板を積層して形成されている。
【0024】
第1ロータ軸130は、前記サンギヤ部96に連結し且つ入力軸50の長手方向に延設した筒形状のモータ出力軸136に嵌合される軸受部138と、この軸受部138の外周面の略中央部位に連設して径方向の外側に指向した連結部140と、この連結部140の外周部位の取付部142とからなり、この取付部142の外周面に第1モータロータ132を設置する第1ロータ設置部144を形成している。よって、連結部140は、軸受部138と取付部142との間に設けられている。また、取付部142のエンジン2側の端部位には、径方向で外側に突出した取付用突部142Aが形成されている。
【0025】
軸受部138は、エンジン2側の一側軸受部146と、エンジン2から離れた側の他側軸受部148とからなり、外周面が、後述する各軸受及びシール材を圧入するための軸受圧入面として、研磨砥石等で精密加工されるものである。
【0026】
第1ロータ設置部144に設置される第1モータロータ132の端面には、第1モータロータ132の珪素鋼板を押さえ込み・永久磁石の抜け止めを行うように、抜け止め用の第1ロータ端板150が配設される。この第1ロータ端板150は、取付用突部142Aと第1モータロータ132のエンジン2側の端面全体との間に配置される第1一側端板152と、第1モータロータ132のエンジン2から離間した側の端面全体に配置される第1他側端板154とからなる。
【0027】
この第1ロータ端板150の第1他側端板154には、第1ロータ軸130の取付部142の端面とモータケース16としてのエンド側プレート26との間に嵌合されるように内側に指向した係合部156と、第1ロータ軸130の長手方向でエンド側プレート26側に延出した支持部158とが設けられている。
【0028】
取付用突部142Aと第1一側端板152と第1モータロータ132と第1他側端板154とには、第1ロータ取付ボルト160をエンジン2側から第1ロータ軸130の長手方向に指向して挿着するように、第1取付側ボルト孔162と第1一側ボルト孔164と第1ロータボルト孔166と第1他側ボルト孔168とが形成されている。第1ロータ取付ボルト160は、エンジン2側から第1取付側ボルト孔162と第1一側ボルト孔164と第1ロータボルト孔166と第1他側ボルト孔168とに挿通され、第1ロータ軸130の取付部142に第1一側端板152と第1モータロータ132と第1他側端板154とを一体的に固定する。
【0029】
また第1ロータ軸130の一側軸受部146の外周面と第3隔壁36の一側保持部170の内周面との間には、連結部140側から順次に、第1一側軸受172と第1一側シール材174とが並んで設けられている。また、第1モータ軸130の他側軸受部148の外周面とエンド側プレート26の他側保持部176の内周面との間には、連結部140側から順次に、第1他側軸受178と第1他側シール材180とが並んで設けられている。
【0030】
図2に示す如く、第2モータ62は、駆動用室44内に配設され、主として駆動に用いられるものであり、ロータ軸138を構成する第2ロータ軸182の外周面に固定した第2モータロータ184と、この第2モータロータ184に対峙してモータケース16の内周面に固定された第2モータステータ186とからなる。第2モータロータ184は、永久磁石(図示せず)が挿入された珪素鋼板を積層して形成されている。
【0031】
第2ロータ軸182には、第2モータ62の出力軸としての機能を有し、エンジン2側の端部に第2遊星歯車列66の第2リングギヤ104に溶接等の固着手段により連結されるギヤ連結部188と、このギヤ連結部188に連設した取付部190とを備え、この取付部190の外周面に第2モータロータ184を設置する第2ロータ設置部192を形成している。また、取付部190のエンジン2側の端部位には、径方向で外側に突出した取付用突部190Aが形成されている。
【0032】
第2ロータ設置部192に設置される第2モータロータ184の端面には、第2モータロータ184の珪素鋼板を押さえ込み・永久磁石の抜け止めを行うように、抜け止め用の第2ロータ端板194が配設される。この第2ロータ端板194は、取付用突部190Aと第2モータロータ184のエンジン2側の端面全体との間に配置される第2一側端板196と、第2モータロータ184のエンジン2から離間した側の端面全体に配置される第2他側端板198とからなる。
【0033】
第2他側端板198と第2モータロータ184と第2一側端板196と取付用突部190Aとには、第2ロータ取付ボルト200をエンジン2から離間した側から第2ロータ軸182の長手方向に指向して挿着するように、第2他側ボルト孔202と第2ロータボルト孔204と第2一側ボルト孔206と第2取付ボルト孔208とが形成されている。第2ロータ取付ボルト200は、エンジン2から離間した側から第2他側ボルト孔202と第2ロータボルト孔204と第2一側ボルト孔206と第2取付ボルト孔208とに挿通され、第2ロータ軸182の取付部190に第2他側端板198と第2モータロータ184と第2一側端板196とを一体的に固定する。
【0034】
第2モータ軸182の内周面と第3隔壁36の一側保持部170に連設して入力軸50と平行な延長部210の外周面との間には、第3隔壁36側から順次に、第2一側軸受212と第2他側軸受214と第2シール材216とが並んで設けられている。
【0035】
従って、図1、図2に示す如く、動力分配機構56は、エンジン2の出力軸であるクランク軸48と各モータの各出力軸との間に配設される。また、ロータ軸128は、発電用の第1モータ60が配設される第1ロータ軸130と駆動用の第2モータ62が配設される第2ロータ軸182とにより構成される。更に、第1ロータ軸130と第2ロータ軸182とは、径方向で重なるように、モータ出力軸136に配設されるとともに、第2ロータ軸182の内周には、少なくとも動力分配機構56の一部が配設されている。
【0036】
また、ハイブリッド駆動装置4には、第1、第2モータ60、62の回転を検出する第1、第2回転位置検出機構(回転センサ:レゾルバ)218、220が設けられる。
【0037】
第1回転位置検出機構218は、図1に示す如く、発電用室46内に配設され、第1センサステータ222と第1センサロータ224とから構成される。
【0038】
即ち、モータケース16としてのエンド側プレート26には、段差部位でアダプタ取付部226が形成されている。このアダプタ取付部226には、発電用室46の内方から第1アダプタ228の上部位がアダプタ取付ネジ230により固定して設けられている。この第1アダプタ228には、図1、図4に示す如く、中央部位で第1センサステータ222がボルト孔232に挿通したセンサステータ取付ボルト234により固定して設けられている。
【0039】
また、第1ロータ端板150の第1他側端板154に連設した支持部158の外周面の固定部236には、第1センサステータ222に対峙し、第1センサロータ224が固定して設けられている。
【0040】
第1アダプタ228には、中央部位の段差部位により発電用室46の中央側に片寄って第1モータステータ134との間に配設される第1防磁部238が設けられている。この第1防磁部238は、第1モータ60から漏れ出た磁束や電波ノイズ等を遮断するものである。
【0041】
このような構造により、第1ロータ端板150の支持部158の内側のスペースには、動力分配機構56を潤滑するオイルポンプ116が配設される。
【0042】
第2回転位置検出機構220は、図2に示す如く、駆動用室44内に配設され、第2センサステータ240と第2センサロータ242とから構成される。
【0043】
即ち、モータケース16としてのエンジン側プレート22には、アダプタ取付部244が形成されている。このアダプタ取付部244には、駆動用室44の内方から第2アダプタ246の上部位がアダプタ取付ネジ248により固定して設けられている。この第2アダプタ246には、図2、図4に示す如く、中央部位で第2センサステータ2240がボルト孔250に挿通したセンサステータ取付ボルト252により固定して設けられている。
【0044】
第2アダプタ246には、中央部位の段差部位により駆動用室44の中央側に片寄って第2モータステータ186との間に配設される第2防磁部254が設けられている。この第2防磁部254は、第2モータ62から漏れ出た磁束や電波ノイズ等を遮断するものである。
【0045】
また、第2センサロータ242は、第2センサステータ240に対峙し、第2ロータ軸182のエンジン2側の端部の外周面の固定部256に固定して設けられている。更に、
第2隔壁34の内周面と第2ロータ軸182のエンジン2側の端部の外周面との間には、シール材258が設けられている。
【0046】
次に、この第1実施例の作用を説明する。
【0047】
図4、図6に示す如く、ハイブリッド駆動装置4は、燃料の燃焼により動力を発生させるエンジン2と共に、主として発電に用いられる第1モータ60と、主として駆動に用いられる第2モータ62と、第1、第2遊星歯車列64、66で構成される動力分配機構56と、駆動力を駆動輪に出力する出力ギヤ74とを組み合わせてハイブリッド電気自動車等の車両に搭載され、エンジン2と第2モータ62とのいずれか一方、あるいは、両方の組み合わせで走行するとともに、第1モータ60により電気を発生する。
【0048】
ところで、この実施例において、例えば、発電用室46における第1モータ60及び第1回転位置検出機構218について言及すると、第1センサステータ222をモータケース16に固定し、第1モータロータ132の端面に第1モータロータ132の抜け止め用の第1ロータ端板150を配設し、この第1ロータ端板150と第1モータロータ132とを第1ロータ軸130に固定するとともに、第1ロータ端板150には第1ロータ軸130の長手方向でモータケース16側へ延出させた支持部258を設け、この支持部258に第1センサロータ224を固定して設けたことから、第1ロータ軸130の軸受部138の外周面である軸受圧入面を加工する際に、作業性を妨げることなくなり、第1ロータ軸130の加工を容易とし、また、第1ロータ軸130に第1センサロータ224を直接固定しないので、第1ロータ軸130の長手方向の全長を短くし、もって、第1モータ60の全長を短くし、スペース的に有利とすることができる。
【0049】
また、第1ロータ端板150の支持部158の内側のスペースには、動力分配機構56を潤滑するオイルを供給するオイルポンプ116を配設したことから、支持部258とオイルポンプ116とが径方向で重なり合い、さらに、第1モータ62の全長を短くすることができる。
【0050】
更に、モータケース16に第1アダプタ228を固定し、この第1アダプタ228には、第1センサステータ222を取り付けるとともに第1モータステータ134との間に配設される第1防磁部238を設けたことから、第1アダプタ228を利用して第1防磁部238を形成することができ、防磁部材として別途に部品を不要とし、部品点数を削減することができる。
【0051】
更にまた、ロータ軸128を、発電用の第1モータ60が配設される第1ロータ軸130と駆動用の第2モータ62が配設される第2ロータ軸182とにより構成し、第1ロータ軸130と第2ロータ軸182とを、径方向で重なるように第1モータ60のモータ出力軸136に配設するとともに、第2ロータ軸182の内周には、少なくとも動力分配機構56の一部を配設したことから、第2ロータ軸182の内周に配設される動力分配機構56の分だけさらに、ハイブリット駆動装置4の全長を短くすることができる。
【0052】
なお、駆動用室44における第2モータ62及び第2回転位置検出機構220について も、上記の第1モータ60及び第1回転位置検出機構218と同様な作用効果を奏するので、ここでは、その説明を省略する。
【実施例2】
【0053】
図7、図8は、この発明の第2実施例を示すものである。
【0054】
以下の実施例においては、上述の第1実施例と同一機能を果たす箇所には同一符号を付して説明する。
【0055】
この第2実施例の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、第1モータ60側において、モータ出力軸136のエンジン2から離間した側の端部がエンド側プレート26の付近まで延設され、この端部の外周部位には連結部材302の一端側が嵌合して連結され、この連結部材302の他端側が第1ロータ軸130の内周部位に嵌合して連結されている。
【0056】
この第1ロータ軸130には、第1ロータ端板150としての端板304を介して第1モータロータ132の一端側を取り付ける取付部306の取付用突部306Aと、第1モータロータ132の他端側を保持する押え部308と、この押え部308から第1ロータ軸130の長手方向でエンド側プレート26側へ延出した支持部310とが設けられている。つまり、支持部310が形成される側のロータ端板として機能する押え部308と第1ロータ軸130の第1ロータ設置部144とは、一体的に形成されている。
【0057】
そして、第1回転位置検出機構218において、第1センサステータ222は、エンド側プレート26と第1アダプタ228とに保持され、ボルト孔312に挿通した取付ボルト(図示せず)によって第1アダプタ228と共にエンド側プレート26に取り付けられる。また、第1ロータ軸130の支持部310の外周面の固定部314には、第1センサステータ222に対峙し、第1センサロータ224が固定して設けられている。
【0058】
一方、第2モータ62側において、第2リングギヤ104がハブ316を介して第2ロータ軸182に取付ボルト318により取り外し可能に取り付けられている。ハブ316は、取付ボルト318を取り付ける大径部320と、モータ出力軸136の周りに位置する小径部322と、大径部320と小径部322とを連結する中間部324とからなる。
【0059】
第2ロータ軸182には、第2ロータ端板194を介して第2モータロータ184の一端側を取り付ける取付部326の取付用突部326Aと、第2モータロータ184の他端側を保持する押え部328と、この押え部328から第2ロータ軸182の長手方向で第3隔壁36側へ延出した支持部330とが設けられている。つまり、ロータ端板として機能する押え部332には、支持部330が一体的に形成されている。
【0060】
そして、第2回転位置検出機構220においては、第2センサステータ240が、第3隔壁36と第2アダプタ246とに保持され、ボルト孔332に挿通した取付ボルト(図示せず)によって第2アダプタ246と共に第3隔壁36に取り付けられる。また、第2ロータ軸182の支持部330の外周面の固定部334には、第2センサステータ240に対峙し、第2センサロータ242が固定して設けられる。
【0061】
また、第1ロータ軸130の内周面と第3隔壁36の一側保持部336の外周面との間には、エンジン2側から順次に、第1一側軸受338と第1他側軸受340とが並んで設けられている。また、第2モータ軸182の内周面と第3隔壁36の他側保持部342の外周面との間には、エンジン2側から順次に、第2一側軸受344と第2他側軸受346とが設けられている。
【0062】
この第2実施例の構成によれば、上述の第1実施例と同様な効果を奏するとともに、モータ出力軸136と第1ロータ軸130との間に連結部材302を配設したハイブリッド駆動装置4の構造により、第1ロータ軸130を加工し易い形状とし、第1センサロータ224を第1ロータ軸130に固定する場合でも、第1ロータ軸130の加工する際に、作業性を妨げることがない。
【0063】
なお、駆動用室44における第2モータ62及び第2回転位置検出機構220についても、上記の第1モータ60及び第1回転位置検出機構218と同様な作用効果を奏するので、ここでは、その説明を省略する。
【実施例3】
【0064】
図9は、この発明の特別構成であり、第3実施例を示すものである。
【0065】
この第3実施例の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、第1ロータ端板150の第1他側端板154には、第1ロータステータ134と第1センサステータ232との間に延長する防磁部352を一体的に形成した。この防磁部352は、第1モータ60から漏れ出た磁束や電波ノイズ等を遮断するものである。また、第1センサステータ222を、エンド側プレート26の取付部354に直接固定した。
【0066】
この第3実施例の構成によれば、第1センサステータ222をエンド側プレート26に直接固定するとともに、防磁部352を第1ロータ端板150と一体的に形成したことから、アダプタを別途に不要とし、部品点数を低減するとともに、組付工数を低減し、しかも、組付作業を容易にすることができる。
【実施例4】
【0067】
図10は、この発明の特別構成であり、第4実施例を示すものである。
【0068】
この第4実施例の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、第1センサステータ222を、エンド側プレート26の取付部362に直接固定した。また、第1ロータ端板150の第1他側端板154の固定部364には、第1センサロータ224を固定して設けた。
【0069】
この第4実施例の構成によれば、第1センサロータ224を第1他側端板154に取り付けたことから、第1センサロータ224を取り付けるために、第1ロータ軸130や第1ロータ端板150を軸方向に延長する必要がなくなり、第1モータ60の全長を短くするとともに、第1ロータ軸130の軸受部138の外周面である軸受圧入面を加工する際に、作業性を妨げることなくなり、第1ロータ軸130の加工を容易とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
回転位置検出機構のセンサロータをロータ端板に延出した支持部に固定する構造を、他の装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施例において図3のハイブリッド駆動装置の第1モータ側の一部拡大半断面図である。
【図2】第1実施例において図3のハイブリッド駆動装置の第2モータ側の一部拡大半断面図である。
【図3】第1実施例において図4のハイブリッド駆動装置の半断面図である。
【図4】第1実施例においてハイブリッド駆動装置の断面図である。
【図5】第1実施例においてハイブリッド駆動装置の動力分配機構を説明する図である。
【図6】第1実施例においてハイブリッド駆動装置の駆動力の流れを説明する図である。
【図7】第2実施例において図8のハイブリッド駆動装置の一部拡大半断面図である。
【図8】第2実施例においてハイブリッド駆動装置の断面図である。
【図9】第3実施例においてハイブリッド駆動装置の一部拡大断面図である。
【図10】第4実施例においてハイブリッド駆動装置の一部拡大断面図である。
【図11】従来においてハイブリッド駆動装置の一部拡大断面図である。
【図12】従来においてハイブリッド駆動装置の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0072】
2 エンジン
4 ハイブリッド駆動装置
6 変速部
8 モータ部
16 モータケース
44 駆動用室
46 発電用室
56 動力分配機構
60 第1モータ
62 第2モータ
64 第1遊星歯車列
66 第2遊星歯車列
74 出力ギヤ
88 第1リングギヤ
104 第2リングギヤ
116 オイルポンプ
128 ロータ軸
130 第1ロータ軸
132 第1モータロータ
134 第1モータステータ
136 モータ出力軸
150 第1ロータ端板
152 第1一側係合部
154 第1他側係合部
158 支持部
182 第2ロータ軸
184 第2モータロータ
186 第2モータステータ
194 第2ロータ端板
218 第1回転位置検出機構
220 第2回転位置検出機構
222 第1センサステータ
224 第1センサロータ
228 第1アダプタ
240 第2センサステータ
242 第2センサロータ
246 第2アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に駆動源としてエンジンとモータとを搭載するとともに、前記エンジンの出力軸と前記モータの出力軸との間に動力分配機構を設け、前記モータをモータロータとモータステータとで構成し、前記モータの出力軸に配設されるロータ軸に前記モータロータを配設するとともに、前記モータステータを前記モータが収容されるモータケースに固定し、前記モータの回転を検出する回転位置検出機構を設けたハイブリッド駆動装置において、前記回転位置検出機構をセンサステータとセンサロータとにより構成し、前記センサステータを前記モータケースに固定し、前記モータロータの端面に前記モータロータの抜け止め用のロータ端板を配設し、このロータ端板と前記モータロータとを前記ロータ軸に固定するとともに、前記ロータ端板には前記ロータ軸の長手方向で前記モータケース側へ延出させた支持部を設け、この支持部に前記センサロータを固定して設けたことを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記ロータ端板の前記支持部の内側には、前記動力分配機構を潤滑するオイルを供給するオイルポンプを配設したことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記モータケースにアダプタを固定し、このアダプタには、前記センサステータを取り付けるとともに前記モータステータとの間に配設される防磁部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記ロータ軸を、発電用の第1モータが配設される第1ロータ軸と駆動用の第2モータが配設される第2ロータ軸とにより構成し、前記第1ロータ軸と前記第2ロータ軸とを、径方向で重なるように前記モータの出力軸に配設するとともに、前記ロータ軸の内周には、少なくとも前記動力分配機構の一部を配設したことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記ロータ軸には、前記モータの出力軸に嵌合される軸受部と、前記モータロータが配設される取付部と、前記軸受部と前記取付部との間に設けられる連結部とを設け、前記ロータ端板には、前記ロータ軸の前記取付部の端面と嵌合する係合部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−254570(P2006−254570A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65750(P2005−65750)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】