説明

バウンス駆動アクチュエータおよび微小モータ

【課題】長い寿命を獲得でき、消費電力が低減でき、一定の回転方向を確保できる新規な微小回転モータの開発に寄与するバウンス駆動アクチュエータ(BDA)を提供する。
【解決手段】BDA板8のブッシング部のアスペクト比(高さ/幅)を1より小さい値に設定し、BDA板8の長さを75mmより短い値に設定する。微小回転モータは、起動電圧を超える追加静電気を印加してもBDA板8の自由端をそれ以上撓ませることができず、ブッシングを圧縮し内向し、印加電圧が解除されると、短尺かつ幅広のブッシングの摩擦力は自由端より大きくなり、蓄積された歪みエネルギーはアクチュエータを後方に跳ね返すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィによるパターニングによって製造し一般に微小電気機械システム(MEMS)に適用可能な微小回転モータに関する。本発明はまた新規なBDAアクチュエート機構と、従来の駆動微小回転モータの性能の向上に関する。本発明が採用する主要な技術はMEMS技術におけるポリシリコン系の表面微細加工プロセスであり、同プロセスはバッチ製造、低コストおよび集積回路技術との高い適合性という利点を有する。
【背景技術】
【0002】
小型化技術の開発と応用は、近代科学の主要トレンドである。特に、集積回路(IC)と微小電気機械システム(MEMS)技術は、近年、ミクロの世界の基礎となる方法である。
【0003】
付属書1は精密かつ階段的線状動作機構を有する従来のスクラッチ動作アクチュエータ(SDA)を示す。
【0004】
BrightとLinderman[1-2]の記述によれば、窒化誘電層に接触するようスナップしたSDA板の自由端に静電的に電圧が印加されると、スナップ動作が段階的に行われ、板の先端が下方にスナップして窒化誘電体層に接触する。電力が起動電圧まで上昇すると、SDA板の先端は十分に曲がり、その自由端において勾配が0になり平坦になる。最後に、印加した電力を解除すると、支持ビーム、SDA板およびブッシングに蓄えられた歪エネルギーがSDA板を前方に引っ張り、ステップを完了する。
【0005】
先行文献(R.J. Lindermanと V.M. Bright)は、付属書2に示すように、微小SDA板の基本的な最適寸法を、シミュレーションソフトウェアと実験的測定に基づいて、長さ78μmとし、幅65μmとしている。
【0006】
実施されたSDA型微小回転モータを付属書3に示す。2mm×2mmの寸法(付属書4に示すように)の世界最小のSDA型微小ファン装置は、自己組織化微小羽根と微小スクラッチ駆動アクチュエータ (SDA) により構成されている。このようなSDA駆動微小ファンは、付属書5に示すように、ポリシリコン系の表面微細加工技術(マルチユーザーMEMSプロセス、MUMPs) により製作される。
【非特許文献1】R. J. Linderman、 P. E. Kladitis およびV. M. Bright、 「微小回転ファンの開発」、 センサーとアクチュエータ A、 95巻、2002、135〜142ページ。
【非特許文献2】R. J. LindermanおよびV. M. Bright、「最適スクラッチ駆動アクチュエータを用いたナノメータ精度の位置決めロボット」、センサとアクチュエータ A、第91巻、2001年、292〜300ページ
【非特許文献3】R.J. LindermanおよびV.M. Bright、「チップサイズ部品の限界ナノメータ位置決め用最適スクラッチ駆動アクチュエータ」、半導体センサとアクチュエータ作業部会の技術ダイジェスト、ヒルトンヘッド島、サウスカロライナ州、米国、2000年、214〜217ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のSDA型微小モータや微小ファン装置は、寿命が短く、消費電力が大きく、さらに突然逆回転することに鑑み、商業的使用は限られていた。本発明はこのような課題を解決するためなされたものであり、新規なリブとフランジ構造設計を具備し、寿命を延ばし、速度を上げ、消費電力を低減でき、確実な回転を得ることができる革新的なBDA型微小ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバウンス駆動アクチュエータ(BDA)は、請求項1に記載するように、BDA板のブッシング部をアスペクト比(高さ/幅)を1より小さい値に設定し、BDA板の長さを75mmより短い寸法に設定したことを特徴とする。
【0009】
本発明の微小回転モータの設計及びレイアウトは、請求項1記載の寸法基準に基づいた微小回転モータの設計及びレイアウトであって、微小回転モータはバウンス駆動微小回転モータであり、BDA板は短い長さによって高い曲げ剛性を有し、曲げ板と窒化絶縁体の接触面積は、同一の起動電圧がSDA板に印加された際に実質的に低減でき、起動電圧を超えるいかなる追加静電気を印加してもBDA板の自由端をそれ以上撓ませることができず、ブッシングを圧縮し内向し、印加電圧が解除されると、短尺でかつ幅広のブッシングの摩擦力は自由端より大きくなり、蓄積された歪エネルギーはアクチュエータを後方に跳ね返すようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明のBDA型微小モータの新規な構造設計は、請求項2記載のBDA型微小モータの新規な構造設計であって、前記リブとフランジの構造設計をBDA型微小モータの設計と製造に採用し、寿命(>100時間)と回転速度(>30rpm)とを向上するようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明のBDA型微小回転モータを形成する方法は、以下の工程からなる。
a.引張り応力が小さく摩擦係数が低い窒化シリコン絶縁材料からなる第1の層をシリコン基板上に蒸着する工程と、
b.低応力窒化シリコン絶縁材料の層をフォトリソグラフィによりパターニングし、少なくとも一つのシリコン基板の電気コンタクト窓を形成する工程と、
c.極低応力の適所ドープドポリシリコンからなる第2の層を、シリコン基板上に蒸着する工程と、
d.第1の低応力適所ドープドポリシリコン構造層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小回転モータの少なくとも一つの結合路と一つのアンカーパッドを形成する工程と、
e.低応力を有し、BDA型微小回転モータの構造層の捨て層として機能する蛍光ケイ酸(PSG)材からなる第3の層をシリコン基板上に蒸着する工程と、
f.第1の低応力PSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小回転モータの少なくとも一つのブッシング窓と一つのディンプル窓を形成する工程と、
g. 極低応力を有する、適所ドープドポリシリコンからなる第4の層を、第1のPSG捨て層上に蒸着する工程と、
h. 第2の低応力適所ドープドポリシリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小回転モータの少なくとも一つのリブ微小構造部を形成する工程と、
i. 低応力を有し、BDA型微小回転モータの構造層の第2の捨て層として機能する蛍光ケイ酸(PSG)材からなる第5層を、リブおよび第1のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
j. 第2のPSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、少なくとも一つのディンプル窓と一つのブッシング窓を形成する工程と、
k. 第1と第2のPSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小モータの少なくとも一つのカバー窓を形成する工程と、
l. 低応力を有し、BDA型微小回転モータの主構造層として機能する適所ドープドポリシリコン材からなる第6層を、リブ部および第2のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
m. 第3の低応力ポリシリコン構造層をフォトリソグラフィによりパターニングし、微小回転モータのカバー部および少なくとも一つのBDAロータ部を形成する工程と、
n. クロムと金からなる金属層によって形成される第7層を、第3の低応力ポリシリコン層および第2のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
o. クロムと金からなる金属層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小回転モータのバイアスおよび接地パッドを形成する工程と、
p. BDA型微小回転モータのカバーと結合路部は基板に固定した状態で、第1および第2のPSG捨て層にアンダーカットエッチングを行い、基板からBDA型微小回転モータのBDAロータ部を解除(release)し、解除プロセスの後、窒化シリコン絶縁層上で、適切な静電駆動により自立した状態のBDAロータを回転可能とする工程。
【0012】
本発明のBDA型微小回転モータを形成する方法において、前記絶縁層の蒸着工程は、低圧化学蒸着(LPCVD)法による蒸着工程とポストアニールプロセスとを含み、前記低応力窒化絶縁体の応力が250MPa未満に調整されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のBDA型微小回転モータを形成する方法において、シリコン基板の電気的コンタクト窓は、金属層とシリコン基板の電気的コンタクトを図るため形成され、BDA微小モータの駆動に際し、前記シリコン基板が、接地電極および機械的支持部として機能することを特徴とする。
【0014】
本発明のBDA型微小回転モータを形成する方法において、低応力適所ドープドポリシリコン層を蒸着する工程は、低圧化学蒸着(LPCVD)法において、蒸着工程と、適所(in situ) ドーピングプロセスとポストアニールプロセスを含み、本工程の各サブプロセスは、異なった圧力、ガス流および温度の下で行われ、前記低応力ポリシリコン薄膜構造の応力は200MPa未満に調整されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のBDA型微小回転モータを形成する方法において、低応力PSG捨て層の蒸着工程は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)法を用いた蒸着工程とポストアニールプロセスとを含み、前記低応力PSG捨て層の応力は300MPa未満に調整されることを特徴とする。
【0016】
本発明のBDA型微小回転モータを形成する方法において、前記捨て層の蒸着工程は、低応力蛍光ケイ酸(PSG)を蒸着する工程を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のBDA型微小ファンの形成方法は、
a. 最終の解除プロセスを除いた請求項1に記載のプロセスによるBDA型微小モータの製造工程と、
b. 前記BDA型微小ファンの第3低応力ポリシリコン構造層上にポリイミド薄膜をスピンコーティングする工程と、
c. 前記ポリイミド薄膜上に、弾性ジョイントを、フォトリソグラフィによりパターニングしエッチングする工程と、
d. 第1および第2PSG捨て層をアンダーカットエッチングして基板からBDAロータ部および微小羽根部を解除し、BDA微小モータのカバー部および結合路部は基板に固定した状態に保持する工程と、
e. リフロープロセスを実施して前記ポリイミド弾性ジョイントを収縮させ、予め形成した微小羽根部を回転させて持ち上げ、微小羽根部の持ち上げ角度は、ポリイミド層のリフロー温度を調整することにより調整可能とする工程と、を含み、
構造解除およびポリイミド硬化プロセス後に、自立するBDA微小ファンを適切な静電駆動によりシリコン基板上で回転可能とすることを特徴とする。
【0018】
本発明のBDA型微小ファンの形成方法において、持ち上げて微小羽根の形成することによって、ポリイミド自己組織化微細構造を形成し、ポリイミド自己組織化の基本的な駆動機構として、構造層を持ち上げるための高温リフロープロセス中に発生したポリイミド弾性ジョイントの表面張力を利用することを特徴とする。
【0019】
本発明のBDA型微小ファンの形成方法において、エッチング工程は、アンダーカットエッチングプロセスであることを特徴とする。
【0020】
本発明のBDA型微小ファンの形成方法において、エッチング工程は、選択的エッチングプロセスであり、ポリシリコン構造層よりも速くPSG捨て層をエッチング可能な希釈HF酸性溶液を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、長い寿命を獲得でき、消費電力が低減でき、一定の回転方向を確保できる新規な微小回転モータまたは微小ファンの開発に寄与する新規なバウンス駆動アクチュエータ(BDA)の設計と製作を提供する。すなわち、本発明は、寿命を延ばし、速度を上げ、消費電力を低減でき、確実な回転を得ることができる新規なリブとフランジ構造設計を具備する革新的なバウンス駆動アクチュエータを提供する。かかる目的を達成するため、バウンス駆動アクチュエータ(BDA)の主要な寸法仕様として、BDA板のブッシング部のアスペクト比(高さ/幅)が1より小さく設定し、かつ、BDA板の長さを75mmより短い寸法に設定している。
【0022】
従来のSDA装置と比較すると、本発明はBDA板の設計において、短く広いブッシング構造を提供することによって、板の曲げ剛性を増大でき、かつ、SDA板の起動電圧同じ電圧を印加しても曲げ板と絶縁基板との接触(摩擦)面積は低減することができる。起動電圧を超えるいかなる追加静電気負荷もBDA板の自由端をそれ以上撓ませることができず、ブッシングを圧縮しかつ内向する。印加電圧が解除されると、ブッシングの摩擦力はBDA板の自由端より大きくなるので、蓄積された歪エネルギーはアクチュエータを後方に跳ね返すことになる。
【0023】
さらに、新規なリブとフランジの構造設計によって、BDA型微小モータの寿命(>100時間)と回転速度(>30rpm)とを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
従来のSDA微小モータは、その短寿命と高駆動電力と突然の逆回転に起因して商業的使用は限られていた。図1は、L-editソフトウェアのシミュレーション結果による従来のSDAおよび新規なBDA微小モータの主構造を示す。支持ビーム(09)の破壊抵抗性(捩り力によって生じる)を向上させるために、本発明は、BDA板(08)、支持ビーム(09)、リング(10)およびカバー(12)を同時に形成するため、ポリシリコン3(05)層を利用する。ここに、これらの部材はリング(10)部に隣接する厚肉の「リブ(11)」構造(ポリシリコン2(04)層およびポリシリコン3(05)層の積層からなる)を形成し、BDA微小モータの曲げ剛性と寿命を改善することができる。
【0025】
図2は、本発明において提案された新規な「フランジ(13)」レイアウトを示す。このフランジ設計によって、支持ビームの構造堅牢性をさらに向上することができ、かつ、BDA微小モータの歩留りを改善し、動作時の亀裂破損を減少させることができる。付属書6は、装着したBDA微小モータが有するフランジレイアウト設計のSEM電子顕微鏡写真である。本発明は、BDA微小モータの寿命(>75時間)と回転速度(>30rpm)を改善するための新規なリブおよびフランジ構造設計を提供する。
【0026】
図3は、SDA装置とBDA装置の断面構造と寸法を示す図である。図から明らかなように、BDA板(08)はSDA板(06)より長さが短く、BDAブッシング(15)はSDAブッシング(14)よりも短くかつ広くなっている。 図4は、SDA板(06)とBDA板(08)の作動機構をそれぞれ示す。図1と図3に戻って、BrightとLindermanの記述によれば、窒化誘電層に接触するようスナップしたSDA板(06)の自由端に静電的に電圧が印加されると、スナップ動作が段階的に行われ、板の先端が下方にスナップして窒化誘電体層(02)に接触する。電力が起動電圧まで上昇すると、SDA板(06)の先端は十分に曲がり、その自由端において勾配が0になり平坦になる。最後に、印加した電力を解除すると、支持ビーム(07)、SDA板(06)およびブッシング(14)に蓄えられた歪エネルギーがSDA板(06)を前方に引っ張り、ステップを完了する。 一方、BDA板(08)は、その短い長さによって高い曲げ剛性を有する。従って、曲げ板と窒化誘電体層(02)の接触面積は、SDA板(06)の起動値と同じ電圧の下で低減することになる。起動電圧を超えるいかなる追加静電気が印加されてもBDA板(08)の自由端をそれ以上撓ませることができず、ブッシング(15)を圧縮しかつ内向する。印加電圧が解除されると、短尺でかつ幅広のブッシング(15)の摩擦力はBDA板(08)の自由端より大きくなるので、蓄積された歪エネルギーはアクチュエータを後方に跳ね返すことになる。
【0027】
図5は、本発明に係るBDA微小モータのレイアウトと断面構造の設計を示す。リブ(11)とフランジ(13)とからなる構造によって、支持ビームの堅牢性を向上することができ、その結果、BDA微小モータの歩留りを高め、さらに、動作時の亀裂破損を減少させることができる。
【0028】
図6は、本発明に係るBDA微小モータの製造フローを示す。全プロセスは、少なくとも8つのフォトリソグラフィ工程と、7つの薄膜蒸着工程を必要とする。本発明の主な製造技術は、ポリシリコン型表面微細加工技術である。主な処理工程の詳細は以下の通りである。
(a) LPCVD法により超低抵抗シリコン基板(20)上に蒸着した600nm厚みの低応力窒化シリコンからなる絶縁層(21)を、フォトリソグラフィによりパターニングする。図6(a)に示すように、まず、基板(22)に少なくとも一つの電気的コンタクト窓をフォトリソグラフィおよびエッチングプロセスにおいて形成することができる。
(b) LPCVD法を用いて、1.5μm厚の低応力適所(in situ) ドープドリシリコン(23)をシリコン基板上(on or above)に蒸着する。図6(b)に示すように、本発明は、第2のフォトリソグラフィカルパターニングプロセスにおいて、結合路(24)およびアンカーのパッド(25)の領域を正確に形成するため、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング法を用いる。
(c) プラズマ助長化学蒸着(PECVD)により、2μm厚の低応力PSG捨て層(26)を基板上に形成する。重要寸法を正確に管理し、エッチングの異方性を向上させるため、本発明はICPドライエッチング法を採用し、第3のフォトリソグラフィプロセス(図6(c))によって、BDA微小モータの少なくとも一つの750nm深さのディンプル窓(27)とブッシング窓(28)をパターニングする。
(d) 2μm厚の低応力適所ドープドリシリコン(29)層を、LPCVD法を用いて基板上に蒸着し、フォトリソグラフィおよびドライエッチングプロセス(図6(d))を用いたパターニングによって、BDA微小モータの少なくとも一つのリブ(30)微細構造を形成する。
(e) 1.5μm厚の低応力PSG捨て層(31)を、PECVD法を用いて、基板上に蒸着する。図6(e)に示すように、5番目のフォトマスクを用いて、BDA微小モータのディンプル窓(32)、カバー窓(33)およびブッシング窓(34)の領域をパターニングする。
(f) 第6のフォトリソグラフィおよびドライエッチングプロセスにより、本発明は、さらに、図6(f)に示すように、BDA微小モータのアンカー窓(35)の領域を形成する。
(g) 3番目の2μm厚の低応力適所ドープドリシリコン(36)層を、LPCVD法を用いて、基板上に蒸着し、第7のフォトリソグラフィおよびドライエッチングプロセス(図6(g))を用いたパターニングにより、BDA微小モータの少なくとも一つのディンプル(37)、支持ビーム(38)、リング(39)、カバー(40)、ブッシング(41)、およびBDAロータ(42)を形成する。
(h) 200nm厚のクロムと250nm厚の金からなる金属膜(43)を、電子ビームエバポレータ蒸着システムを用いて、基板上に蒸着する。第8のフォトリソグラフィプロセスにおいて、本発明は、リフトオフ法を用いてクロムおよび金の金属層をパターニングし、BDA微小モータ(図6(h))の少なくとも一つのバイアスパッド(44)および接地パッド(45)を形成する。
(i) 第1および第2のPSG捨て層(26と31)に、49%のHF酸性溶液を用いてアンダーカットエッチングを施し、基板(20)からBDA微小モータのBDAロータ(42)部を解除(release)する。解除プロセスの後、適切な静電駆動を行うことにより(図6(i))、自由起立状態のBDAロータ(42)を窒化シリコン絶縁体(21)上で、回転させることができる。
【0029】
付属書7は、異なった板長さを有する1つのSDA微小モータと3つのBDA微小モータのSEM電子顕微鏡写真を示す。動的測定によって、板長さが75mmより長くなると(例えば,78〜88mm)、モータはSDA機能を有し、周波数900Hzの正弦90Vo-p ac約1rpmの”前方“回転(及び突然の逆回転)を示す。板長さが75mmより短くなると(例えば,68,58,33mm)、モータはBDA機能を有し、同じ出力と周波数で約>30rpmの安定した”逆“回転を示す。図7は、SDA微小モータ及びBDA微小モータの4つの異なる長さ設計から測定した対応する回転速度を示す。明らかに、板長さが短くなると、同じ出力条件では回転速度が高くなる。図8は、同じ板長さと同じ半円形状を有する2つの駆動BDA微小モータの動的回転を示す電子顕微鏡写真である。図9はBDA微小モータの周波数応答を示し、駆動周波数の変化に伴うBDA微小モータの回転数の予定される略直線状の増加を示す。
【0030】
図10は、BDA微小モータ(50)と、BDA微小モータ(50)を用いて製造したBDA微小ファンに適用可能な新規な設計の応用例を示し、BDA微小モータ(50)と8枚のポリイミド自己組織化微小羽根(51)により構成されている。ポリイミド自己組織化の基本的な駆動機構は、構造層を持ち上げるための高温リフロープロセス中に発生するポリイミド弾性ジョイント(52)の表面張力を利用している。
【0031】
(付属書の説明)
付属書 1: 従来のSDA装置

付属書 2: SDA板長の最適化のシミュレーション結果

付属書 3: 実施されたSDA型微小回転モータ

付属書 4: MEMS技術を使って製造された微小SDA型の微小ファン

付属書 5: MEMSCAPのマルチユーザMEMS工程(MUMPs)

付属書 6: BDAの曲げ剛性と寿命の向上を目的としたフランジ構造設計のSEM電子顕微鏡写真

付属書 7: SDA微小モータとBDA微小モータの回転方向と板長さ

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】L-edit (商標)ソフトウェアのシミュレーション結果に基づく従来のSDA微小モータと新規なBDA微小モータの主要な構造を示す図である。
【図2】BDA微小モータの構造性と寿命をさらに向上させるための革新的な「フランジ」設計を示す図である。
【図3】SDA装置とBDA装置の断面構造と寸法を示す図である。
【図4】SDA装置とBDA装置の異なる駆動機構を示す図である。
【図5】本発明に係るBDA微小モータのレイアウトと断面構造の設計を示す図である。
【図6】SDA微小モータの主要なプロセスの工程の断面図である。
【図7】BDA微小モータとSDA微小モータの回転速度対板長さの説明図である。
【図8】二つの異なった駆動振動数におけるBDA微小モータの動的電子顕微鏡写真である。
【図9】BDA微小モータの回転速度と駆動振動数の説明図である。
【図10】BDA微小モータによって駆動される微小ファンの新規な設計を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
(1) シリコンウェーハ
(2) 窒化物
(3) ポリシリコン−1
(4) ポリシリコンー2
(5) ポリシリコンー3
(6) SDA板
(7) SDAの支持ビーム
(8) BDA板
(9) BDAの支持ビーム
(10) リング
(11) リブ
(12) カバー
(13) フランジ
(14) SDAブッシング
(15) BDAブッシング
(16) バイアスパッド
(17) 接地パッド
(20) シリコン基板
(21) 低応力 Si3N4
(22) 基板の接触窓
(23) 低応力適所ドープドポリシリコンー1
(24) 結合路
(25) アンカーのパッド
(26) 低応力PSG−1
(27) ディンプル窓
(28) ブッシング窓
(29) 低応力適所ドープドポリシリコンー2
(30) リブ
(31) 低応力PSG−2
(32) ディンプル窓
(33) カバー窓
(34) ブッシング窓
(35) アンカー窓
(36) 低応力適所ドープドポリシリコンー3
(37) ディンプル
(38) 支持ビーム
(39) リング
(40) カバー
(41) ブッシング
(42) BDAロータ
(43) Cr/Au金属
(44) バイアスパッド
(45) 接地パッド
(50) BDA微小モータ
(51) 微小羽根
(52) ポリイミドジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BDA板のブッシング部をアスペクト比(高さ/幅)を1より小さい値に設定し、BDA板の長さを75mmより短い寸法に設定したことを特徴とするバウンス駆動アクチュエータ(BDA)。
【請求項2】
請求項1記載の寸法基準に基づいた微小回転モータの設計及びレイアウトであって、微小回転モータはバウンス駆動微小回転モータであり、BDA板は短い長さによって高い曲げ剛性を有し、曲げ板と窒化絶縁体の接触面積は、同一の起動電圧がSDA板に印加された際に実質的に低減でき、起動電圧を超えるいかなる追加静電気を印加してもBDA板の自由端をそれ以上撓ませることができず、ブッシングを圧縮し内向し、印加電圧が解除されると、短尺でかつ幅広のブッシングの摩擦力は自由端より大きくなり、蓄積された歪エネルギーはアクチュエータを後方に跳ね返すようにしたことを特徴とする微小回転モータの設計及びレイアウト。
【請求項3】
請求項2記載のBDA型微小モータの新規な構造設計であって、前記リブとフランジの構造設計をBDA型微小モータの設計と製造に採用し、寿命(>100時間)と回転速度(>30rpm)とを向上するようにしたことを特徴とするBDA型微小モータの新規な構造設計。
【請求項4】
以下の工程からなるBDA型微小回転モータを形成する方法。
a.引張り応力が小さく摩擦係数が低い窒化シリコン絶縁材料からなる第1の層をシリコン基板上に蒸着する工程と、
b.低応力窒化シリコン絶縁材料の層をフォトリソグラフィによりパターニングし、少なくとも一つのシリコン基板の電気コンタクト窓を形成する工程と、
c.極低応力の適所ドープドポリシリコンからなる第2の層を、シリコン基板上に蒸着する工程と、
d.第1の低応力適所ドープドポリシリコン構造層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小回転モータの少なくとも一つの結合路と一つのアンカーパッドを形成する工程と、
e.低応力を有し、BDA型微小回転モータの構造層の捨て層として機能する蛍光ケイ酸(PSG)材からなる第3の層をシリコン基板上に蒸着する工程と、
f.第1の低応力PSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小回転モータの少なくとも一つのブッシング窓と一つのディンプル窓を形成する工程と、
g. 極低応力を有する、適所ドープドポリシリコンからなる第4の層を、第1のPSG捨て層上に蒸着する工程と、
h. 第2の低応力適所ドープドポリシリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小回転モータの少なくとも一つのリブ微小構造部を形成する工程と、
i. 低応力を有し、BDA型微小回転モータの構造層の第2の捨て層として機能する蛍光ケイ酸(PSG)材からなる第5層を、リブおよび第1のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
j. 第2のPSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、少なくとも一つのディンプル窓と一つのブッシング窓を形成する工程と、
k. 第1と第2のPSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小モータの少なくとも一つのカバー窓を形成する工程と、
l. 低応力を有し、BDA型微小回転モータの主構造層として機能する適所ドープドポリシリコン材からなる第6層を、リブ部および第2のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
m. 第3の低応力ポリシリコン構造層をフォトリソグラフィによりパターニングし、微小回転モータのカバー部および少なくとも一つのBDAロータ部を形成する工程と、
n. クロムと金からなる金属層によって形成される第7層を、第3の低応力ポリシリコン層および第2のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
o. クロムと金からなる金属層をフォトリソグラフィによりパターニングし、BDA型微小回転モータのバイアスおよび接地パッドを形成する工程と、
p. BDA型微小回転モータのカバーと結合路部は基板に固定した状態で、第1および第2のPSG捨て層にアンダーカットエッチングを行い、基板からBDA型微小回転モータのBDAロータ部を解除(release)し、解除プロセスの後、窒化シリコン絶縁層上で、適切な静電駆動により自立した状態のBDAロータを回転可能とする工程。
【請求項5】
絶縁層の蒸着工程は、低圧化学蒸着(LPCVD)法による蒸着工程とポストアニールプロセスとを含み、前記低応力窒化絶縁体の応力が250MPa未満に調整されていることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
シリコン基板の電気的コンタクト窓は、金属層とシリコン基板の電気的コンタクトを図るため形成され、BDA微小モータの駆動に際し、前記シリコン基板が、接地電極および機械的支持部として機能することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
低応力適所ドープドポリシリコン層を蒸着する工程は、低圧化学蒸着(LPCVD)法において、蒸着工程と、適所(in situ) ドーピングプロセスとポストアニールプロセスを含み、本工程の各サブプロセスは、異なった圧力、ガス流および温度の下で行われ、前記低応力ポリシリコン薄膜構造の応力は200MPa未満に調整されていることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
低応力PSG捨て層の蒸着工程は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)法を用いた蒸着工程とポストアニールプロセスとを含み、前記低応力PSG捨て層の応力は300MPa未満に調整されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記捨て層の蒸着工程は、低応力蛍光ケイ酸(PSG)を蒸着する工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
以下の工程からなるBDA型微小ファンの形成方法。
a. 最終の解除プロセスを除いた請求項1に記載のプロセスによるBDA型微小モータの製造工程と、
b. 前記BDA型微小ファンの第3低応力ポリシリコン構造層上にポリイミド薄膜をスピンコーティングする工程と、
c. 前記ポリイミド薄膜上に、弾性ジョイントを、フォトリソグラフィによりパターニングしエッチングする工程と、
d. 第1および第2PSG捨て層をアンダーカットエッチングして基板からBDAロータ部および微小羽根部を解除し、BDA微小モータのカバー部および結合路部は基板に固定した状態に保持する工程と、
e. リフロープロセスを実施して前記ポリイミド弾性ジョイントを収縮させ、予め形成した微小羽根部を回転させて持ち上げ、微小羽根部の持ち上げ角度は、ポリイミド層のリフロー温度を調整することにより調整可能とする工程と、を含み、
構造解除およびポリイミド硬化プロセス後に、自立するBDA微小ファンを適切な静電駆動によりシリコン基板上で回転可能とすることを特徴とする微小ファンの形成方法。
【請求項11】
持ち上げて微小羽根の形成することによって、ポリイミド自己組織化微細構造を形成し、ポリイミド自己組織化の基本的な駆動機構として、構造層を持ち上げるための高温リフロープロセス中に発生したポリイミド弾性ジョイントの表面張力を利用することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エッチング工程は、アンダーカットエッチングプロセスであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
エッチング工程は、選択的エッチングプロセスであり、ポリシリコン構造層よりも速くPSG捨て層をエッチング可能な希釈HF酸性溶液を用いることを特徴とする、請求項10に記載の方法。

【図7】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−283844(P2008−283844A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168244(P2007−168244)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(505381910)サノンウェルス エレクトリック マシーン インダストリー カンパニー リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】Sunonwealth Electric Machine Industry Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】12th Froor, 120 Chung Cheng 1st Road, Ling Ya Dt., Kaohsiung City, TAIWAN
【Fターム(参考)】