説明

バリア性フィルム基板の製造方法、バリア性フィルム基板およびこれを用いた素子

【課題】よりバリア性の高いバリア性フィルム基板を提供する。
【解決手段】支持体上に有機領域と無機領域とを有するバリア性フィルム基板を、支持体を搬送しながら製造する方法であって、有機領域を設ける工程と、無機領域を設ける工程と、支持体上の一部または全部に磁性層を設ける工程とを含み、かつ、支持体を搬送する工程の全部または一部を、前記磁性層と反対の磁極を示す磁性部分31を有する搬送体を用いて、磁性層の磁力と磁性部分の磁力とが引き合うようにしながら行うことを特徴とする、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性フィルム基板の製造方法、ならびに、バリア性フィルム基板およびこれを用いた素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バリア性フィルム基板のバリア性を高めるため、バリア性フィルム基板の製造方法が種々検討されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、バリア性フィルム基板のバリア性の更なる向上が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−204853号公報
【特許文献2】特開2004−160836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、バリア性の高いバリア性フィルム基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、発明者が鋭意検討を行った結果、バリア性フィルム基板に磁性層を設け、かつ、バリア性フィルム基板の製造の際に用いる搬送体にも、磁性部分を設け、磁性層の磁力と磁性部分の磁力とが引き合うようにしながら搬送することにより、支持体や、該支持体上に設けられた有機層および無機層等の応力が均一化され、応力不均一によるクラック、欠損等が解消され、結果としてバリア能が向上することを見出し、上記課題を解決するに至った。具体的には、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
【0006】
(1)支持体上に有機領域と無機領域とを有するバリア性フィルム基板を、支持体を搬送しながら製造する方法であって、有機領域を設ける工程と、無機領域を設ける工程と、支持体上の一部または全部に磁性層を設ける工程とを含み、かつ、支持体を搬送する工程の全部または一部を、前記磁性層と反対の磁極を示す磁性部分を有する搬送体を用いて、磁性層の磁力と磁性部分の磁力とが引き合うようにしながら行うことを特徴とする、製造方法。
(2)支持体の搬送方向の両端に磁性層を設けることを特徴とする、(1)に記載の製造方法。
(3)磁性層を山ぎり状に設けることを特徴とする、(2)に記載の製造方法。
(4)支持体上の搬送方向の中央に、さらに、搬送体の磁性部分と同じ磁極を示す磁性層を設けることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)搬送体は、ローラー状の搬送体であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
(6)搬送体は、シート状の搬送体であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
(7)ローラー状の搬送体の両端またはシート状の搬送体の四方端に磁性部分が設けられていることを特徴とする、(5)または(6)に記載の製造方法。
(8)磁性層を剥離可能に設けることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の製造方法。
(9)少なくとも、前記有機領域を設ける工程において、磁性部分を有する搬送体を用いて搬送することを特徴とする、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法。
(10)少なくとも、前記無機領域を設ける工程において、磁性部分を有する搬送体を用いて搬送することを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法。
(11)真空下で製造することを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の製造方法。
(12)少なくとも、有機領域および/または無機領域を真空下で設けることを特徴とする、(11)に記載の製造方法。
(13)無機領域の主成分が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物および金属炭化物から選ばれることを特徴とする、(1)〜(12)のいずれか1項に記載の製造方法。
(14)有機領域は有機層であり、無機領域は無機層であり、かつ、有機層と無機層が互層構造になっていることを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか1項に記載の製造方法。
(15)支持体の厚さが、4〜500μmであることを特徴とする、(1)〜(14)のいずれか1項に記載の製造方法。
(16)支持体上に、有機領域と、無機領域と、磁性層とを有することを特徴とする、バリア性フィルム基板。
(17)支持体の長手方向の両端に磁性層を有することを特徴とする、(16)に記載のバリア性フィルム基板。
(18)磁性層が山ぎり状に設けられていることを特徴とする、(17)に記載のバリア性フィルム基板。
(19)支持体の長手方向の中央に、さらに、前記磁性層と反対の磁極を示す磁性層が設けられていることを特徴とする、(17)または(18)に記載のバリア性フィルム基板。
(20)磁性層は剥離可能に設けられていることを特徴とする、(16)〜(19)のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板。
(21)無機領域の主成分が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物および金属炭化物から選ばれることを特徴とする、(16)〜(20)のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板。
(22)有機領域は有機層であり、無機領域は無機層であり、かつ、有機層と無機層が互層構造になっていることを特徴とする、(16)〜(21)のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板。
(23)支持体の厚さが、4〜500μmである、(16)〜(22)のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板。
(24)(16)〜(23)のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板を有する素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高いバリア性を有するバリア性フィルム基板を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
【0009】
本発明のバリア性フィルム基板の製造方法は、有機領域を設ける工程と、無機領域を設ける工程と、支持体上の一部または全部に磁性層を設ける工程とを含み、かつ、支持体を搬送する工程の全部または一部を磁性層と反対の磁極を示す磁性部分を有する搬送体を用いて、磁性層の磁力と磁性部分の磁力とが引き合うようにしながら行うことを特徴とする。バリア性フィルム基板は、通常、支持体を搬送しながら、該支持体の上に、有機領域および無機領域、必要に応じて機能層が設けられて製造されるが、本発明では、この際の搬送を行う搬送体に磁性部分を設け、さらに、支持体上にも磁性層を設けている。そして、磁性部分と、磁性層とに、互いに反対の磁極を示す磁性材料を採用することにより、両者の磁力が互いに引き合う。そのため、搬送工程において、支持体および該支持上に設けられた無機領域や有機領域、機能層等にかかる応力を均一にすることができる。このような応力均一性の向上は、得られるバリア性フィルム基板の欠陥、特に、無機領域のクラックや欠陥を防止する。さらに、バリア性フィルム基板のバリア性を向上させる。加えて、応力均一性が向上することにより、外部からの応力を分散させやすくなる。また、チャック等をせずに搬送することも可能になる。さらに、磁性層を設けることにより、除電ができ、静電気などの発生に伴うゴミ等の異物付着を防止し、それにより生じるバリア性フィルム基板の欠陥を防ぎ、生産性を向上させることが可能になる。
尚、本明細書における「支持体の搬送の全部または一部」には、支持体上に、有機領域等が設けられたものを搬送する場合を含むものである。
【0010】
本発明では、磁性層は、支持体上の一部または全部に設けられる。
支持体の一部に磁性層を設ける場合、本発明の趣旨を逸脱しない限り、その位置や形状は特に定めるものではないが、通常は、支持体の搬送方向の両端に設ける。磁性層の形状は、帯状や山ぎり状等が例示されるが、これに限られるものではない。帯状の場合、例えば、支持体の幅を10〜500cmとし、磁性層の幅を0.2〜5cmとすることができる。また、山ぎり状とは、例えば、図1に示すような構成である。具体的には、支持体の搬送方向(図1の矢印方向)に向かって、磁性部がなだらかに広がり一定の幅(図1のa)まで広がった後、急激に狭まる(図1のb)という形状を繰り返すことをいう。ここで、山ぎり状の最も広い部分(図1のa)は、0.5〜10cmとし、最も狭い部分(図1のb)は、0.1〜1cmとすることが好ましい。また、山ぎりの間隔(図1のc)は、0.5〜5cmであることが好ましい。
このように、支持体の搬送方向の両端に磁性層を設けることにより、支持体が外側へ引っ張られ、結果として、支持体やその上に設けられた有機層等の欠陥等が著しく減少し、結果としてバリア性をより向上させることができる。
支持体の全部に磁性層を設ける態様の一例として、磁性層の両端と中央(両端以外の部分)とで、反対の磁極を示す磁性層を設けることが挙げられる。この場合、支持体の中央に設けた磁性層は、搬送体の磁性部分と同じ磁極を示し、搬送体の磁性部分に反発する。このため、支持体が搬送方向に垂直な方向に、外側へ向かって引っ張られることになり、より均一なバリア性フィルム基板が得られる。また、例えば、図2に示すように、中央の磁性層の幅を細くし、支持体の両端と、支持体の中心部にのみ磁性層を設ける構成としてもよい。このような構成を採用することにより、支持体の全部に磁性層を設ける場合よりもさらに微細に支持体にかかる応力を調節することが可能になる。ここで、図2中、21は搬送体を、22は支持体を、23は製造中のバリア性フィルム基板を示している。また、SおよびNは磁極を示している。
磁性層の位置や形状は、搬送体の磁性部分の形状や磁力によって、適宜調節できることはいうまでもない。特に、両端の幅や形状を違えることによって、支持体等への応力のかかり方を調整することもできる。
尚、支持体の搬送方向の両端は、通常、最終的に製造されたバリア性フィルム基板の長手方向の両端となる。
【0011】
磁性層を設ける工程は、バリア性フィルム基板の製造工程のなかで任意に選択することができる。すなわち、支持体を設けた直後に、支持体の表面に設けても良いし、支持体上に有機領域等を設けた後、設けても良い。また、磁性層を、有機領域等を設ける面と反対側の面に設けても良い。
磁性層は、得られるバリア性フィルム基板の用途等に応じて、剥離可能に設けても良い。例えば、光学用途や透明用途に用いる場合には、剥離可能な磁性層を設けることが好ましい。磁性層を剥離可能にするための手段としては、例えば、磁性層に、剥離しやすい物質、例えば、特開2002−162771記載のシリコーン系化合物、フッ素化合物及びワックスからなる離型剤を任意に使用することができる。離型剤としては、例えば、高級アルキル硫酸ナトリウム、高級脂肪酸高級アルコールエステル、カーボワックス、高級アルキルリン酸エステル、シリコーン化合物、変性シリコーン、硬化性シリコーン等が含まれる。また、ポリオレフィンワックス、弗素系オイル、弗素系ワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、シラン化合物も好ましく用いられる。用いることができる離型剤については、米国特許2882157号、同3121060号、同3850640号、フランス特許2180465号、英国特許955061号、同1143118号、同1263722号、同1270578号、同1320564号、同1320757号、同2588765号、同2739891号、同3018178号、同3042522号、同3080317号、同3082087号、同3121060号、同3222178号、同3295979号、同3489567号、同3516832号、同3658573号、同3679411号、同3870521号の各明細書、特開昭49−5017号、同51−141623号、同54−159221号、同56−81841号の各公報、及びリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure) 13969号に記載されている。ワックス系の離型剤は、有機溶剤に溶解しにくいため、水分散物を調製し、熱可塑性樹脂溶液との分散液を調製して、塗布するのが好ましい。この場合、ワックス系の離型剤は、熱可塑性樹脂中に微粒子の形で存在する。また、離型剤として、例えば、シリコーン系化合物や、フッ素化合物、ワックス等が挙げられる。離型剤としては、一般的には幸書房「改訂 ワックスの性質と応用」や、日刊工業新聞社発行のシリコーンハンドブック記載の化合物を用いることができる。また、特公昭59−38581号、特公平4−32380号、特登第2838498号、同2949558号、特開昭50−117433号、同52−52640号、同57−148755号、同61−62056号、同61−62057号、同61−118760号、特開平2−42451号、同3−41465号、同4−212175号、同4−214570号、同4−263267号、同5−34966号、同5−119514号、同6−59502号、同6−161150号、同6−175396号、同6−219040号、同6−230600号、同6−295093号、同7−36210号、同7−43940号、同7−56387号、同7−56390号、同7−64335号、同7−199681号、同7−223362号、同7−287413号、同8−184992号、同8−227180号、同8−248671号、同8−248799号、同8−248801号、同8−278663号、同9−152739号、同9−160278号、同9−185181号、同9−319139号、同9−319143号、同10−20549号、同10−48889号、同10−198069号、同10−207116号、同11−2917号、同11−44969号、同11−65156号、同11−73049号、同11−194542号各公報に用いられている任意の化合物を選択することができる。 本発明では、シリコーン系化合物や、フッ素化合物、ワックス等が好適に使用される。また、これら化合物を複数組合わせて使用することもできる。また、剥離可能な層、例えば、特開2002−162771記載のシリコーン系化合物、フッ素化合物及びワックスからなる離型剤を含有する層を介して磁性層を設けても良い。
その時、剥離する材料同士は、180度剥離強さが、0.1N/25mm以下、より好ましくは0.041N/25mm以下であることが適当である。180度剥離強さは、製造部材の表面素材を用い、JIS K6887に記載の方法に準拠して測定することができる。また、磁性層を、支持体上であって、有機領域等を設ける面と反対側の面に設けると、物理的な力をかけて剥離することも容易にでき好ましい場合がある。
磁性層の剥離は、バリア性フィルム基板の製造工程の任意の段階で行うことができる。例えば、無機領域や機能層を設けるときに、プラズマやスパッタのような磁性層の磁界が問題となる可能性のある操作を行う場合、無機領域等を設ける前に磁性層を剥がす、切り落とす等の磁性層を除去する工程を設けることが好ましい。
また、磁性層は、使用時に切り落として用いることもできる。特に、磁性層を支持体の両端に設けた場合や磁性層の剥離が難しい場合には、この態様が好ましく採用される。
【0012】
磁性層の組成は、磁気を帯びやすい材料であれば公知の材料を用いることができ、強磁性材料、常磁性材料、反磁性材料が挙げられる。このうち強磁性材料を好ましい例として挙げることができる。
強磁性材料としては、Fe、Co、Ni等の遷移金属ならびにこれらの合金、希土類金属ならびにこれらの合金、Xa X’ b-a MnSb(XおよびX’は、それぞれ、Pt、Ni、Co、Fe、Ir、Rh、Osであり、aは0または1であり、bは2である。)、PtMnSn、Mn2 Sb、VPd3 等の半金属(ハーフメタリック)強磁性体、あるいはX2 YZ(Xは遷移金属、YはMn、Zは非磁性金属)のホイスラー合金が挙げられる。
特に、Co単体やCo系磁性合金のようなCoを含む強磁性体、Coドープト(Co−doped)磁気酸化鉄、またはNiFe合金のような強磁性体等、γ−Fe23 等の酸化鉄、フェライト等の磁性体微粒子等が好ましい。
Co系磁性合金としては、CoにFe、Ni、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Ir、Rh、Ru、Os、Hf等の1種または2種以上を添加した合金が挙げられ、NiFe合金としては、NiFe合金、NiFeCo合金、これらのようなfcc結晶構造の合金にTi、V、Cr、Mn、Zn、Nb、Mo、Tc、Hf、Ta、W、Re等の添加元素を添加して高抵抗化した合金等が例示される。
MO・Fe23(Mは二価金属元素)で表されるスピネル型フェライトとしては、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Li−Zn系フェライト、Ni−Cu−Co系フェライトなどの複合フェライト、Mnフェライト、Coフェライト、Niフェライトなどの単元系フェライトが挙げられる。
3M23・5Fe23(Mはイットリウムまたは三価希土類元素)で表されるガーネット型フェライトとしては、イットリウム鉄ガーネット(YIG系材料)、Ho置換ガーネット系フェライト、Gd置換ガーネット系フェライトなどが挙げられる。
MO・6Fe23で表されるマグネトプランバイト型フェライトとしては、ストロンチウム・フェライト、バリウム・フェライトが挙げられる。
また、磁性材料としては、アモルファス状態から加熱することにより内部に微結晶が析出する微結晶析出型のものを使用してもよい。微結晶析出型の材料としては、例えば、Fe−Al−Si−Hf−C系が挙げられる。
具体的には、Fe、Co、γ−Fe23、Fe34、CrO2、Fe、Fe−Cr、Fe−Co、MnAl、マンガン・亜鉛フェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、コバルト被着フェライト、ゲーサイト、マグネタイト、ヘマタイトなどフェライト系材料、鉄、珪素鋼、パーマロイ、センダスト、ニッケル、ニッケル硼素、ニッケルリン、ニッケルコバルト合金、コバルトクロム合金、けい素鋼、マルテンサイト系やフェライト系に代表される磁性ステンレス鋼、パーマロイ、パーメンダー、SS41やSS400等の炭素鋼、高マンガン鋼等の公知の強磁性粉末、希土類鉄合金、希土類コバルト合金、などの金属合金系材料や、MO・Fe23(Mは二価金属元素)で表されるスピネル型フェライト、3M23・5Fe23(Mはイットリウムまたは三価希土類元素)で表されるガーネット型フェライト、MO・6Fe23(Mは二価金属元素)で表されるマグネトプランバイト型フェライト等のフェライト系磁性微粒子等が挙げられる。
【0013】
本発明の磁性層は、上記のような材料を、分散体薄膜または連続体薄膜とすることにより作製できる。例えば、磁性層の組成からなる塗布液を従来公知の塗布方法によって形成したり、金属あるいは合金を、真空蒸着法、スパッタ法、メッキ法などの方法によって支持体上に形成することができる。塗布方法によって形成する場合の磁性層の膜厚は0.1〜100μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましい。また、真空蒸着法、スパッタ法、メッキ法などの方法によって形成する場合には、磁性層の膜厚は100Å〜1μmが好ましく、500Å〜2000Åがより好ましい。
分散する際には、塗布する成分に不溶かつ反応しない材料をバインダーとして用い、それに本発明の磁性層を構成する材料を分散する。バインダーとしては特に制限されることはなく、例えば、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または反応型樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂など)を用いることができる。バインダーとしては、例えば、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、スチレン/マレイン酸共重合体樹脂などが用いられ、必要に応じて、ニトリルゴムなどのゴム系樹脂あるいはウレタンエラストマーなどを添加することができる。酸化物磁性体との接触によっても分解することがなく、耐熱性に優れるポリフェニレンスルフィド樹脂は、酸化物磁性体を粉砕後の未だ高い温度である間に、混合することが可能であり、しかもペレット化後に磁性体粉末を水や二酸化炭素から遮断するに優れており、好適である。
【0014】
また、本発明の磁性層には、必要に応じて、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル、カーボン、酸化チタン系、酸化スズ系、酸化インジウム系などの金属酸化物、金、銀、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属からなる無機顔料、その他の添加剤を使用することができる。添加量としては、通常、0.1〜20重量%程度である。
【0015】
さらに、本発明の磁性層として、市販の磁性流体シール(ferrofluidic seals)を用いることができる。
また、磁性層の材料を支持体に練りこんだ構成としてもよい。
【0016】
本発明の製造に用いる製造装置としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り、公知の装置の搬送体を、磁性部分を有するものに置き換えたものを採用することができる。ここで、磁性部分は、通常は、支持体上の磁性層と対応するように設けられる。ここで、対応するとは、必ずしも、支持体の磁性層と搬送体の磁性部分とが、その形状や磁力において完全に一致することを必要とする趣旨ではなく、むしろ、通常は異なっている。例えば、磁性部分の磁力を磁性層の磁力より強くすることにより、また、磁性部分を設ける位置を、磁性層を設ける位置より搬送方向の外側に設けることにより、支持体をより均一に引っ張ることが可能になる。
本発明で用いる搬送体としては、従来から公知のローラー状の搬送体やシート状の搬送体に、磁石や永久磁石を用いたものを採用できる。もちろん、磁性を示す材料を塗布等したものであってもよい。
図3は、稼動式ローラーの例を示したものであって、31は磁性部分を示している。図3では、ローラーの両端に帯状の磁性部分が設けられているが、支持体上の磁性層の位置等を考慮して適宜調整することが好ましい。搬送体の磁性部分の幅を外側に広めに設けることも好ましい。この結果、支持体の搬送方向に垂直な方向(図3の矢印の方向)に、磁力が働きやすく、支持体をより均一に張ることが可能になる。
図4は、非可動式ローラーの例を示したものであって、ロール状の搬送体41が固定され、その上をウエブ状の支持体42が搬送する構成となっている。ここで、搬送体41の斜線部分が磁性部分に相当する。
図5および図6は、それぞれ、ローラー状の搬送体を側面から見た例である。図5では、公知のローラーの表面に、粒子状の磁性部分51が粘着剤52を介して設けられている。一方、図6では、公知の非可動式ローラーの表面に、磁性部分61が一定の間隔毎に、粘着剤62を介して設けられている。ローラー状の搬送体の場合、隣接する箇所での磁気的に不要な結合またはクロストークに配慮して設計することが必要になる。クロストークは、弱い磁石を用いたり、磁石の数が少なかったりすると減少する。設置する箇所は、適宜、設計することができる。もちろん、図5および図6以外の構成のものを採用してもよい。
図7は、シート状の搬送体の例を示したものであって、磁性部分71が四方端に設けられている。このようなシート状の搬送体の場合、磁性部分71は搬送を邪魔しない程度に固着し、中央部分、すなわち、磁性部分を設けていない部分は、磁性部分の磁力で浮く構造にすると、搬送中に生じる皺やキズなどの故障を回避することが可能となるのでより好ましい。
【0017】
支持体の製造装置への吸着は、静電吸着であっても良いし、機械的に吸着させてもよい。除電が必要な用途や静電気の発生に伴うゴミ等の異物の付着が問題となる用途に用いる場合は、機械的な吸着が好ましい。
【0018】
磁性部分を有する搬送体は、バリア性フィルム基板の製造工程で用いる全ての搬送体について採用してもよいし、有機領域を設ける工程や無機領域を設ける工程等一部の搬送体に限って用いてもよい。特に、有機領域、無機領域および機能層のいずれかの領域または層を設ける工程において、磁性部分を有する搬送体を用いる場合、該工程を真空下で行うことが好ましい。真空下においては大気下に比べて湿度など磁性を低下させる要因が少なく、磁性を効率よく発揮させることが可能になる。すなわち、磁性を帯びた材料を少量用いれば十分な効果を発揮させることができるので、支持体の磁性層に用いる磁性材料が着色していても、着色しにくく透明な用途にも用いることができる。さらに、本発明の製造方法は、真空下での取り扱いやすさを向上させるものであるため、結果的に、生産性を向上させることができる。
【0019】
支持体
本発明におけるバリア性フィルム基板は、通常、支持体として、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、有機領域(例えば、有機層)および無機領域(例えば、無機層)のバリア性フィルム基板を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、金属支持体(アルミニウム、銅、ステンレス等)ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0020】
本発明のバリア性フィルム基板を後述する有機EL素子等のデバイスの基板として使用する場合は、プラスチックフィルムは耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば、日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば、三菱ガス化学(株)製、ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0021】
本発明のバリア性フィルム基板を偏光板と組み合わせて使用する場合、バリア性フィルム基板のバリア層面(有機領域や無機領域を積層した面)がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき偏光板よりセルの内側にバリア性フィルム基板が配置されることになるため、バリア性フィルム基板のレターデーション値が重要になる。このような態様でのバリア性フィルム基板の使用形態は、レターデーション値が10nm以下の支持体を用いたバリア性フィルム基板と円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの支持体を用いたバリア性フィルム基板に直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0022】
レターデーションが10nm以下の支持体としてはセルローストリアセテート(富士フイルム(株):富士タック)、ポリカーボネート(帝人化成(株):ピュアエース、(株)カネカ:エルメック)、シクロオレフィンポリマー(JSR(株):アートン、日本ゼオン(株):ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマー(三井化学(株):アペル(ペレット)、ポリプラスチック(株):トパス(ペレット))ポリアリレート(ユニチカ(株):U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学(株):ネオプリム)等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
【0023】
本発明のバリア性フィルム基板を有機EL素子等のデバイスとして利用する場合には、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。このような透明性が求められる用途に用いる場合は、光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
本発明のバリア性フィルム基板をディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
支持体は、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。
本発明のバリア性フィルム基板に用いられる支持体の厚みは、用途によって適宜選択することができ、特に定めるものではないが、本発明の改良効果は、4〜500μmでより発揮されやすく、4〜200μmでさらに発揮されやすい。
【0024】
有機領域
本発明における有機領域は、通常、ポリマーからなり、層状(有機層)である。具体的には、ポリエステル、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂の層である。
【0025】
本発明の有機層は、重合することによりポリマーを形成するポリマー前駆体(例えば、モノマー)を塗布することにより形成することが好ましい。本発明に用いることができる好ましいモノマーとしては、アクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。アクリレートおよびメタクリレートの好ましい例としては、例えば、米国特許第6,083,628号明細書および米国特許第6,214,422号明細書に記載の化合物が挙げられる。
以下に本発明に好ましく用いられるアクリレート、メタクリレートの具体例を示すが、本発明で用いることができるモノマーはこれらに限定されない。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
有機層の形成方法としては、通常の溶液塗布法を挙げることができる。溶液塗布法としては、例えばディップコ−ト法、エアーナイフコ−ト法、カーテンコ−ト法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法により塗布することができる。
【0032】
モノマー重合法としては特に限定は無いが、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせが好ましく用いられる。これらのうち、光重合が特に好ましい。光重合を行う場合は、光重合開始剤を併用する。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えばダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、サートマー(Sartomer)社から市販されているエザキュア(Esacure)シリーズ(例えばエザキュアTZM、エザキュアTZT)、同じくオリゴマー型のエザキュアKIPシリーズ等が挙げられる。
【0033】
照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.5J/cm2以上が好ましく、2J/cm2以上がより好ましい。アクリレート、メタクリレートは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。このような方法としては不活性ガス置換法(窒素置換法、アルゴン置換法など)、減圧法が挙げられる。このうち、減圧硬化法はモノマー中の溶存酸素濃度を低下させる効果を有するため、より好ましい。
窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。フラッシュ蒸着法で形成したモノマー皮膜を、減圧条件下、2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが最も好ましい。このような方法を取ることで、重合率を高めることができ、硬度の高い有機層を得ることができる。モノマーの重合は、モノマー混合物を塗布または蒸着等により目的の場所に配置した後に行うことが好ましい。また、有機層のモノマーの重合を行う際には、有機カップリング剤に存在する重合性基(例えばエチレン性二重結合)も一緒に重合させることが好ましい。
【0034】
モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0035】
有機層の膜厚については特に限定はないが、50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。50nm以上であれば欠陥数は少なくなりバリア性は向上する傾向があり好ましく、1500nm以下であれば外力によりクラックが発生せずバリア性は低下しないため好ましい。
【0036】
有機層は2層以上積層してもよい。この場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、2層以上積層する場合は、各々の有機層が上記の好ましい範囲内にあるように設計することが望ましい。また、本発明のバリア性フィルム基板には、米国公開特許2004−46497号明細書に開示されるような無機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層が存在していてもよい。
【0037】
無機領域
無機領域は、通常、金属化合物(金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物および金属炭化物等)からなり、層状(無機層)である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。この中では、無機層形成時の基材フィルム等への熱の影響を回避することができ、生産速度が速く、均一な薄膜層を得やすい点で、物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)を用いることが好ましい。
【0038】
本発明のバリア性フィルム基板の無機層を形成する方法において、有機層を硬化により形成させる場合には、有機層を硬化させた直後に、その硬化させた有機層の上に無機層を形成することが好ましい。ここでいう直後とは、有機層の硬化工程に続けて直ちに無機層を形成する工程を行うことを意味する。すなわち、硬化させた有機層の表面に何かを接触させる操作を行うことなく、有機層の表面に無機層を形成することが好ましい。
【0039】
無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
【0040】
本発明により形成される無機層の平滑性は、10μm角の平均粗さ(Ra値)として2nm未満であることが好ましく、1nm以下がより好ましい。
【0041】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜300nmの範囲内である。無機層の厚みは、好ましくは20〜200nmであり、より好ましくは30〜90nmである。
本発明では、無機層の上に有機層を形成した後、さらに有機層の上に無機層を形成してもよい。また、さらに有機層と無機層の交互積層を繰り返して、複数の無機層を形成してもよい。これらの場合、各無機層は同じ組成であっても異なる組成であってもよい。なお、本発明のバリア性フィルム基板には、米国公開特許2004−46497号明細書に開示されるような有機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層が存在していてもよい。
【0042】
<素子>
本発明のバリア性フィルム基板は空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化する素子に好ましく用いることができる。前記素子の例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池等)等の電子素子を挙げることができ有機EL素子に好ましく用いられる。
【0043】
本発明のバリア性フィルム基板は、素子の基板に用いることができる。
【0044】
本発明のバリア性フィルム基板は、固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とは素子の上に保護層を形成した後、接着剤層、バリア性フィルム基板を重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
【0045】
(有機EL素子)
バリア性フィルム基板用いた有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
【0046】
(液晶表示素子)
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明のバリア性フィルム基板は、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の基板は、前記上透明電極および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertically Alignment)型、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)型、IPS(In−Plane Switching)型であることが好ましい。
【0047】
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2000−98326号公報に記載の電子ペーパー、特願平7−160334号公報に記載の太陽電池等が挙げられる。
【0048】
<光学部材>
本発明のバリア性フィルム基板を用いる光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。
(円偏光板)
本発明におけるバリア性フィルム基板を基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1
製膜装置として、製膜装置XおよびYのいずれかを採用した。
(製膜装置X)
製膜装置Xの模式図を図8に示した。成膜装置810は、長尺な支持体Z(ウェブ状の支持体Z)を供給する供給室812と、長尺な支持体Zに膜を形成する成膜室(チャンバ)814と、膜が形成された長尺な支持体Zを巻き取る巻取り室816と、真空排気部832と、制御部836とを有する。この制御部836により、成膜装置810における各要素の動作が制御される。
また、成膜装置810においては、供給室812と成膜室814とを区画する壁815a、および成膜室814と巻取り室816とを区画する壁815bには、支持体Zが通過するスリット状の開口815cが形成されている。
成膜装置810においては、供給室812、成膜室814および巻取り室816には、真空排気部832が配管834を介して接続されている。この真空排気部832により、供給室812、成膜室814および巻取り室816の内部の真空度を調整する。
真空排気部832は、供給室812、成膜室814および巻取り室816を排気して所定の真空度に保つものであり、真空ポンプを有する。また、供給室812、成膜室814および巻取り室816には、それぞれ内部の圧力を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられている。真空排気部832は、制御部836により制御される。
供給室812は、長尺な支持体Zを供給する部位であり、支持体ロール820、および搬送装置850が設けられている。支持体ロール820は、長尺な支持体Zを連続的に送り出すものであり、反時計回りに支持体Zが巻回されている。
支持体ロール820は、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータによって支持体ロール820が時計回りに回転されて、支持体Zが連続的に送り出される。搬送装置850は、支持体Zを所定の搬送経路で成膜室814に案内する。巻取り室816は、後述するように、成膜室814で、表面Zfに膜が形成された支持体Zを巻き取る部位であり、巻取りロール830、およびガイドローラー831が設けられている。
巻取りロール830は、成膜された支持体Zをロール状に、時計回りに巻き取る。この巻取りロール830には、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータにより巻取りロール930が回転されて、成膜済の支持体Zが巻き取られる。巻取りロール830においては、モータによって支持体Zを巻き取る方向Rに回転され、時計回りに回転されて、成膜済の支持体Zを連続的に時計回りに巻き取る。
ガイドローラー831は、成膜室814から搬送された支持体Zを、所定の搬送経路で巻取りロール830に案内するものである。
成膜室814は、真空チャンバとして機能するものであり、支持体Zを搬送しつつ連続的に、支持体Zの表面Zfに、各種の層を形成する。成膜室814には、2つのガイドローラー824、828と、ドラム826と、成膜部840とが設けられている。ガイドローラー824と、ガイドローラー828とが、間隔を設けて対向して、平行に配置されており、また、ガイドローラー824、およびガイドローラー828は、支持体Zの搬送方向Dに対して、その長手方向を直交させて配置されている。ガイドローラー824は、供給室812に設けられた搬送装置850から搬送された支持体Zをドラム826に搬送するものである。このガイドローラー824は、支持体Zの搬送方向Dと直交する方向に回転軸を有し回転可能であり、かつガイドローラー824は、軸方向の長さが支持体Zの長さ(以下、支持体Zの幅という)よりも長い。
ガイドローラー828は、ドラム826に巻き掛けられた支持体Zを巻取り室816に設けられたガイドローラー831に搬送するものである。このガイドローラー828は、軸方向に回転軸を有し回転可能であり、かつガイドローラー828は、軸方向の長さが支持体Zの幅よりも長い。ドラム826は、ガイドローラー824と、ガイドローラー828との間の空間Hの下方に設けられている。ドラム826は、その長手方向を、ガイドローラー824およびガイドローラー828の長手方向に対して平行にして配置されている。さらには、ドラム826は接地されている。このドラム826は、円筒状を呈し、軸方向に回転軸を有し、回転可能なものである。かつドラム826は、軸方向における長さが支持体Zの幅よりも長い。ドラム826においては、支持体Zの幅方向における中心と、ドラム826の軸方向の中心とを合わせて、支持体Zを、その表面(周面)に巻き掛けた場合、その両側の端部は、支持体Zが掛からない領域となる。
ドラム826は、その表面(周面)に支持体Zが巻き掛けられて、回転することにより、支持体Zを成膜位置に保持しつつ、搬送方向Dに支持体Zを搬送するものである。
成膜部840は、ドラム826の下方に設けられており、支持体Zがドラム826に巻き掛けられた状態で、ドラム826が回転して、支持体Zが搬送方向Dに搬送されつつ、支持体Zの表面Zfに膜を形成する。
成膜部840は、成膜電極842、高周波電源844、原料ガス供給部846および仕切部848を有する。制御部836により、成膜部40の高周波電源44、および原料ガス供給部46が制御される。成膜部840においては、成膜室814の下方に、ドラム826において支持体Zが巻き掛けられる領域に対向して、所定の隙間Sを設けて成膜電極842が設けられている。成膜電極842は、広い面に複数の穴(図示せず)が等間隔で形成されている。成膜電極842は、この広い面をドラム826に向けて配置されている。また、成膜電極842は、高周波電源844が接続されており、この高周波電源844により、成膜電極842に高周波電圧が印加される。
原料ガス供給部846は、配管847を介して、成膜電極842の複数の穴を通して隙間Sに、膜を形成する原料ガスを供給する。ドラム826と成膜電極842との隙間Sがプラズマの発生空間になる。
仕切部848(区画部)は、成膜電極842を成膜室814内において区画するものである。
この仕切部848は、一対の仕切板848aにより構成されており、一対の仕切板848aで、成膜電極842を挟むようにして配置されている。
各仕切板848aは、それぞれドラム826の長さ方向に伸びた板状部材であり、ドラム826側の端部が、成膜電極842とは反対側に折曲している。この仕切部848により、隙間S、すなわち、プラズマ発生空間が、成膜室814内において区画されている。
【0051】
図9(a)は、図8に示す成膜装置の搬送装置を示す模式的正面図であり、(b)は、図8に示す成膜装置の搬送装置を示す模式的側面図である。図9(a)に示すように、搬送装置は、段付ローラー960と、補助ローラー966(搬送補助手段)とを有する。段付ローラー960は、支持体Zの幅方向Wにおける端部Zeの両側を支持して搬送するものであり、ローラー部962および回転軸部964を備える。さらに、支持体Zの表面Zfがローラー部962の表面962a側に配置されて搬送される。段付ローラー960において、回転軸部964は、その回転軸Aが支持体Zの搬送方向Dの直交する方向に配置されている。この回転軸部964の両端に、円柱状のローラー部962が設けられている。このローラー部962の表面962aに、支持体Zの端部Zeが巻き掛けられる。
また、段付ローラー960は、駆動手段(図示せず)により回転される。この駆動手段は、制御部に接続されており、制御部により段付ローラー960の回転が制御されて、駆動手段による支持体Zの搬送速度などが調節される。
補助ローラー966は、段付ローラー960による支持体Zの搬送開始時に、一時的に支持体Zの搬送を補助するものであり、支持体Zの表面Zfに対して接離可能に設けられている。この補助ローラー966は、直径が一定の円筒ローラーであり、その回転軸(図示せず)を回転軸部964の回転軸Aと平行にして配置されており、各ローラー部962と回転軸部964とにより構成される凹部αで、かつ回転軸部964の上方に設けられている。
この補助ローラー966は、支持体Zの幅方向Wにおける中央部Zcを支持する。補助ローラー966は、自身を垂直方向Vに移動させるための移動機構(図示せず)が設けられており、この移動機構は、制御部に接続されている。
制御部により移動機構を介して補助ローラー966の垂直方向Vにおける位置が制御される。このように、移動機構により、補助ローラー966は、支持体Zの表面Zfに対して接離可能となり、補助ローラー966を上方向に移動させて、周面966aを支持体Zの表面Zfに接触させることができる。これにより、搬送装置950は、段付ローラー960とともに補助ローラー966を用いて、支持体Zを搬送することができる。
搬送装置は、供給室812内に設けられており、真空環境下で使用される。支持体Zを成膜室814に搬送するとき、ローラー部862の表面862aと補助ローラー866の表面866aとが同一平面上に配置されるように補助ローラー866を垂直方向Vに移動させる。そして、支持体ロール820から送り出された支持体Zがロール部862の表面862aに巻き掛けられ、これにより、支持体Zの両側の端部Zeをローラー部862で支持するとともに、支持体Zの中央部Zcも補助ローラー866で支持されて搬送される。
このように、支持体Zを幅方向Wの全域に亘って支持した状態で、支持体Zを搬送する。補助ローラー866は、搬送開始直後、一時的に支持体Zの中央部Zcを保持するものであり、搬送時には支持体Zから離間している。
【0052】
成膜装置の動作について説明する。成膜装置810においては、供給室812から成膜室814を経て巻取り室816に至る所定の経路で長尺な支持体Zを通した後、供給室812、成膜室814および巻取り室816の内部を真空排気部832により、所定の真空度に保ち、この状態で、供給室812から巻取り室816まで長尺な支持体Zを通して搬送しつつ、成膜室814において、支持体Zに各層を形成する。成膜装置810においては、成膜室814および巻取り室816の内部を真空排気部832により、所定の真空度にする。
次に、長尺な支持体Zが、反時計回り巻回された支持体ロール820から搬送装置850を経て、成膜室814に搬送させる。成膜室814においては、ガイドローラー824、ドラム826、ガイドローラー828を経て、巻取り室816に搬送される。巻取り室816においては、ガイドローラー831を経て、巻取りロール830に、長尺な支持体Zが巻き取られる。
搬送装置においては、支持体Zの両端の端部Zeをそれぞれロール部862で支持するとともに、支持体Zの中央部Zcを補助ローラー866で支持した状態で、支持体Zを搬送する。次に、成膜部840において、成膜電極842に、高周波電源844から高周波電圧を印加するとともに、原料ガス供給部846から配管847を介して隙間Sに、膜を形成するための原料ガスを供給する。
成膜電極842の周囲に電磁波を放射させると、隙間Sで、成膜電極842の近傍に局在化したプラズマが生成され、原料ガスが励起・解離される。これにより、支持体Zの表面Zfに、所定の膜が形成される。
順次、長尺な支持体Zが反時計回り巻回された支持体ロール820をモータにより時計回りに回転させて、長尺な支持体Zを連続的に送り出し、搬送装置850およびガイドローラー824によりドラム826で支持体Zをプラズマが生成される位置に保持しつつ、ドラム826を所定の速度で回転させて、成膜部840により長尺な支持体Zの表面Zfに連続的に膜を形成する。そして、ガイドローラー828、およびガイドローラー831を経て、巻取りロール830に、成膜された長尺な支持体Zが巻き取られる。
【0053】
(製膜装置Y)
製膜装置Xにおいて、有機層を製膜する装置の乾燥部分および硬化部分、無機層を製膜する装置のスパッタ部分、ならびに、その他の搬送ローラーの端部分に永久磁石を設けたものを用いた。
【0054】
表1に示すとおり、上記製膜装置Xおよび製膜装置Yのいずれかを用い、以下のバリア性フィルム基板を製造した。
(バリア性フィルム基板A)
易接着層付ポリエチレンナフタレート支持体(PEN)(帝人デュポンフイルム社製、テオネックスQ65FA、巾30cm、厚100μm)の易接着面上に、下記組成からなる磁性層を支持体の全面に乾燥膜厚が3μmとなるように製膜した。
〔磁性層組成〕
バリウムフェライト 36重量部
ウレタン樹脂 12重量部
カーボン 2重量部
トルエン 20重量部
メチルエチルケトン 15重量部
メチルイソブチルケトン 15重量部
イソシアネート系硬化剤 2重量部
【0055】
次いで、下記組成からなる有機層をポリエチレンナフタレート支持体上であって磁性層を設けた面と反対面に、乾燥膜厚が1000nmとなるように製膜し、窒素200ppm雰囲気下で紫外線照射量0.5J/cm2で照射して硬化させた。その有機層表面に、膜厚が50nmとなるように無機層としてAlO3を真空スパッタで製膜してバリア性フィルム基板を作製した。
〔有機層組成〕
ダイセルサイテック社製、脂肪族変性エポキシアクリレート2官能、EBECRYL3702 20重量部
Sartomer社製、Esacure KTO46 1.5重量部
メチルエチルケトン 60重量部
【0056】
(バリア性フィルム基板B)
磁性層を支持体の幅方向の両端にそれぞれ2cmの幅で設けた以外は、バリア性フィルム基板Aと同様にしてバリア性フィルム基板Bを作製した。
【0057】
(バリア性フィルム基板C)
支持体として、ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製、ルミラーT−60、厚100μm)を用いた以外はバリア性フィルム基板Aと同様にしてバリア性フィルム基板Cを作製した。
【0058】
(バリア性フィルム基板D)
支持体として、ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製、ルミラーT−60、厚100μm)を用いた以外はバリア性フィルム基板Bと同様にしてバリア性フィルム基板Dを作製した。
【0059】
(バリア性フィルム基板E)
支持体として、ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製、ルミラーT−60、厚25μm)を用いた以外はバリア性フィルム基板Aと同様にして、バリア性フィルム基板Eを作製した。
【0060】
(バリア性フィルム基板F)
支持体として、ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製、ルミラーT−60、厚25μm)を用いた以外はバリア性フィルム基板Bと同様にして、バリア性フィルム基板Fを作製した。
【0061】
(バリア性フィルム基板BB)
磁性層を設けなかった以外はバリア性フィルム基板Bと同様にしてバリア性フィルム基板BBを作製した。
【0062】
(バリア性フィルム基板DD)
磁性層を設けなかった以外はバリア性フィルム基板Dと同様にしてバリア性フィルム基板DDを作製した。
【0063】
(バリア性フィルム基板FF)
磁性層を設けなかった以外はバリア性フィルム基板Fと同様にしてバリア性フィルム基板FFを作製した。
【0064】
(バリア性フィルム基板GBB)
ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製、ルミラーT−60、厚25μm)上に、バリア性フィルム基板Aに記載の磁性層を設けた。また、バリア性フィルム基板BBと同様の支持体に上に、バリア性フィルム基板Aに記載の有機層を設けた。これらを互いの塗布面が外向きになるようにして重ね、剥離可能な接着力の接着剤(信越シリコーン製、X−40−3229)で貼り合わせ、バリア性フィルム基板Aに記載と同じように有機層の上に無機層をバリア性フィルム基板Aと同様に製膜してバリア性フィルム基板GBBを作製した。
【0065】
(バリア性フィルム基板GDD)
ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製、ルミラーT−60、厚25μm)上に、バリア性フィルム基板Aに記載の磁性層を設けた。また、バリア性フィルム基板DDと同様の支持体に上に、バリア性フィルム基板Aに記載の有機層を設けた。これらを互いの塗布面が外向きになるようにして重ね、剥離可能な接着力の接着剤(信越シリコーン製、X−40−3229)で貼り合わせ、バリア性フィルム基板Aに記載と同じように有機層の上に無機層をバリア性フィルム基板Aと同様に製膜してバリア性フィルム基板GDDを作製した。
【0066】
(バリア性フィルム基板GFF)
ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製、ルミラーT−60、厚25μm)上に、バリア性フィルム基板Aに記載の磁性層を設けた。また、バリア性フィルム基板FFと同様の支持体に上に、バリア性フィルム基板Aに記載の有機層を設けた。これらを互いの塗布面が外向きになるようにして重ね、剥離可能な接着力の接着剤(信越シリコーン製、X−40−3229)で貼り合わせ、バリア性フィルム基板Aに記載と同じように有機層の上に無機層をバリア性フィルム基板Aと同様に製膜してバリア性フィルム基板GFFを作製した。
【0067】
[水蒸気透過率(g/m2/day)]
MOCON社製、「PERMATRAN−W3/31」(条件:40℃・相対湿度90%)を用いて測定した。また、前記MOCON装置の測定限界である0.01g/m2/day以下の値は、次の方法を用いて補完した。まず、バリア性フィルム基板上に直に金属Caを蒸着し、蒸着Caが内側になるよう該バリア性フィルム基板とガラス基板を市販の有機EL用封止材で封止して測定試料を作成した。次に該測定試料を前記の温湿度条件に保持し、バリア性フィルム基板上の金属Caの光学濃度変化(水酸化あるいは酸化により金属光沢が減少)から水蒸気透過率を求めた。
【0068】
[欠陥]
水蒸気透過率測定後のフィルム片を顕微鏡100倍に拡大して観察した。観察エリアはサンプル片25mm角のうち5mm間隔で4×4=16箇所を行い、観察されたゴミの個数をカウントした。◎は1個以下/16箇所、○は2〜10個/16箇所、△は11〜20個/16箇所、それ以上観察された場合は×とした。
【表1】

【0069】
バリア性フィルム基板1とバリア性フィルム基板10、バリア性フィルム基板2とバリア性フィルム基板12、バリア性フィルム基板5とバリア性フィルム基板14から、製造装置の搬送体に磁性部分を設けることにより、バリア性を向上させることが確認された。
また、バリア性フィルム基板6はバリア性フィルム基板15に比して著しく水蒸気透過率が向上していることから、支持体の厚さが25μmのものは、支持体の暑さが100μmのものよりも、改良効果が高いことが認められた。
さらに、バリア性フィルム基板7とバリア性フィルム基板11、バリア性フィルム基板9とバリア性フィルム基板15から、支持体のバリア層と反対側の全面に磁性層を設けることも同等の改良効果があることが確認された。
一方、バリア性フィルム基板1とバリア性フィルム基板2、バリア性フィルム基板3とバリア性フィルム基板4、バリア性フィルム基板5とバリア性フィルム基板6などから、磁性部は、全面に設けても一部に設けてもバリア性が等しく向上することが分かった。
また、バリア性フィルム基板1とバリア性フィルム基板3、バリア性フィルム基板2とバリア性フィルム基板4などから、支持体として、PENを用いた場合でも、PETを用いた場合でも、バリア性が向上することが確認された。
また、バリア性フィルム基板1とバリア性フィルム基板10、バリア性フィルム基板2とバリア性フィルム基板12、バリア性フィルム基板5とバリア性フィルム基板14から、本発明の製造方法を採用することにより、欠陥にも改良効果があることが認められた。
【0070】
実施例2
上記実施例1において、有機層をフラッシュ蒸着法にて製膜し、他は同様に行ったところ、実施例1と同様の効果が得られた。
【0071】
実施例3
実施例1のバリア性フィルム基板2において、磁性層を最表面に設け、他は同様に行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。すなわち、磁性層を最表面の両端に設けた場合も、同様の効果が得られることが確認された。
【0072】
実施例4
実施例1の製造装置Xの搬送体として、特開2001−117063号公報に記載のシート状のもの四方端に永久磁石を設けたものを採用し、これに対応する位置に実施例1と同様の組成の磁性層を設けた場合も、同等の効果が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、支持体上に山ぎり状の磁性層を設けた場合の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、支持体上の両端と中央とに反対の磁極を示す磁性層を設けた場合の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、稼動式ローラーの一例を示す概略図である。
【図4】図4は、非稼動式ローラーの一例を示す概略図である。
【図5】図5は、ローラー状の搬送体の一例を示す側面概略図である。
【図6】図6は、ローラー状の搬送体の他の一例を示す側面概略図である。
【図7】図7は、シート状の搬送体の一例を示す概略図である。
【図8】図8は、本願実施例で用いた製膜装置Xの模式図を示す。
【図9】図9は、図8に示す成膜装置の搬送装置を示す模式的正面図および模式的側面図である。
【符号の説明】
【0074】
21 搬送体
22 支持体
23 製造中のバリア性フィルム基板
31 磁性部分
41 搬送体
42 支持体
51 磁性部分
52 粘着剤
61 磁性部分
62 粘着剤
71 磁性部分
810 成膜装置
812 供給室
814 成膜室
815a 壁
815b 壁
815c 壁
816 巻取り室
820 支持体ロール
824 ガイドローラー
826 ドラム
828 ガイドローラー
831 ガイドローラー
830 巻取りロール
832 真空排気部
834 配管
836 制御部
840 成膜部
842 成膜電極
844 高周波電源
846 原料ガス供給部
847 配管
848 仕切部
850 搬送装置
960
980 段付ローラー
962 ローラー部
964 回転軸部
966 補助ローラー
D 搬送方向
Z 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に有機領域と無機領域とを有するバリア性フィルム基板を、支持体を搬送しながら製造する方法であって、有機領域を設ける工程と、無機領域を設ける工程と、支持体上の一部または全部に磁性層を設ける工程とを含み、かつ、支持体を搬送する工程の全部または一部を、前記磁性層と反対の磁極を示す磁性部分を有する搬送体を用いて、磁性層の磁力と磁性部分の磁力とが引き合うようにしながら行うことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
支持体の搬送方向の両端に磁性層を設けることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
磁性層を山ぎり状に設けることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
支持体上の搬送方向の中央に、さらに、搬送体の磁性部分と同じ磁極を示す磁性層を設けることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
搬送体は、ローラー状の搬送体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
搬送体は、シート状の搬送体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
ローラー状の搬送体の両端またはシート状の搬送体の四方端に磁性部分が設けられていることを特徴とする、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
磁性層を剥離可能に設けることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
少なくとも、前記有機領域を設ける工程において、磁性部分を有する搬送体を用いて搬送することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
少なくとも、前記無機領域を設ける工程において、磁性部分を有する搬送体を用いて搬送することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
真空下で製造することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
少なくとも、有機領域および/または無機領域を真空下で設けることを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
無機領域の主成分が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物および金属炭化物から選ばれることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
有機領域は有機層であり、無機領域は無機層であり、かつ、有機層と無機層が互層構造になっていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
支持体の厚さが、4〜500μmであることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
支持体上に、有機領域と、無機領域と、磁性層とを有することを特徴とする、バリア性フィルム基板。
【請求項17】
支持体の長手方向の両端に磁性層を有することを特徴とする、請求項16に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項18】
磁性層が山ぎり状に設けられていることを特徴とする、請求項17に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項19】
支持体の長手方向の中央に、さらに、前記磁性層と反対の磁極を示す磁性層が設けられていることを特徴とする、請求項17または18に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項20】
磁性層は剥離可能に設けられていることを特徴とする、請求項16〜19のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項21】
無機領域の主成分が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物および金属炭化物から選ばれることを特徴とする、請求項16〜20のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項22】
有機領域は有機層であり、無機領域は無機層であり、かつ、有機層と無機層が互層構造になっていることを特徴とする、請求項16〜21のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項23】
支持体の厚さが、4〜500μmである、請求項16〜22のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項24】
請求項16〜23のいずれか1項に記載のバリア性フィルム基板を有する素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−221515(P2009−221515A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65896(P2008−65896)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】