説明

バルブ開閉制御装置

【課題】 電動モータの駆動トルクをバタフライバルブ1に伝達する歯車減速機構を構成する3つの第1〜第3ギヤの歯面の異常摩耗を防止することを課題とする。
【解決手段】 バタフライバルブ1の全閉制御時に、バルブ全閉位置(O)の近傍または前後の所定のバルブ開度範囲において、バタフライバルブ1がバルブ全閉位置(O)を通り越して開閉作動を複数回繰り返すように電動モータへの電力の供給を継続することにより、歯車減速機構を構成する3つの第1〜第3ギヤに電動モータの駆動トルクとリターンスプリングまたはデフォルトスプリングの付勢力とが作用する。これにより、噛み合う2つのギヤのうちの一方のギヤの歯面が他方のギヤの歯面に押し付けられる。これによって、エンジン振動や車両振動による3つの第1〜第3ギヤのガタ付きを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動力を利用してバルブを開閉作動させることによって、内燃機関の燃焼室に連通する流体流路内を流れる流体を制御するバルブ開閉制御装置に関するもので、特にモータの駆動力をバルブに伝達する動力伝達機構を複数のギヤによって構成したバルブ開閉制御装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、モータ制御ユニット(バルブ位置制御ユニット)によって電動モータへの供給電力を可変制御することで、ハウジングに対して相対回転するバルブを開閉制御するバルブ開閉制御装置が知られている。
このようなバルブ開閉制御装置により開閉制御される流体制御弁(流量制御弁)の一例として、内燃機関(エンジン)の燃焼室内より流出する排気ガスの一部(EGRガス)をエンジンの吸気系統に再循環させる排気ガス再循環装置の排気ガス還流管の途中に組み込まれる排気ガス還流量制御弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、電動モータの駆動力を利用してバタフライバルブを開弁駆動して、全閉位置から全開位置に至るまでのバルブ制御範囲で回転動作させて、内燃機関の吸気系統(特に内燃機関の燃焼室に連通する吸気通路)に再循環されるEGRガスの還流量(EGR量)を調整する電動式のEGR制御弁である。
【0003】
ここで、バタフライバルブを開弁駆動するバルブ駆動装置は、動力源としての電動モータと、この電動モータのモータ軸の回転速度を所定の減速比となるように2段減速し、電動モータの駆動力(回転トルク)を増大させてバタフライバルブのバルブ軸を駆動する歯車減速機構とを備えている。そして、歯車減速機構は、3つの第1〜第3ギヤによって構成されている。先ず、第1ギヤは、電動モータのモータ軸に固定されたモータギヤであって、モータ軸の軸心を中心にして回転する。また、第2ギヤは、ハウジングに圧入固定されたギヤ軸の軸心を中心にして回転する中間減速ギヤである。さらに、第3ギヤは、バタフライバルブのバルブ軸に固定されたバルブギヤであって、バルブ軸の軸心を中心にして回転する。そして、中間減速ギヤには、モータギヤに噛み合う大径ギヤ、およびバルブギヤに噛み合う小径ギヤが一体的に設けられている。
【0004】
また、特許文献1に記載のEGR制御弁は、バルブギヤとハウジングとの間に、バルブギヤに対して、バタフライバルブを閉弁作動方向に付勢するリターンスプリングを配設している。これによって、電動モータへの電力の供給を停止した際に、リターンスプリングの付勢力(スプリング力)がバルブギヤに作用し、このバルブギヤが閉弁作動方向に回転する。これにより、バルブ軸を介して、バルブギヤに連結したバタフライバルブが全閉位置に戻される。
ここで、特許文献1に記載のEGR制御弁は、バタフライバルブの閉弁作動時におけるEGRガス洩れ量を低減するという目的で、バタフライバルブの外周端面全周に設けられた環状のシールリング溝内にC字状のシールリングを装着している。このため、バタフライバルブの閉弁作動時に、シールリング自身の拡径方向の張力によって、バタフライバルブの外周端面とハウジングの流路壁面との間の隙間がシールされる。
【0005】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1に記載のEGR制御弁において、バタフライバルブが全閉位置となるようにバタフライバルブを全閉作動させる全閉制御時には、電動モータへの電力の供給を停止している。これに伴って、リターンスプリングの付勢力によってバタフライバルブが全閉位置に戻される。ここで、一般的に、歯車減速機構の構造上、各ギヤの歯面間に、所定の隙間(バックラッシュ)がないと、各ギヤが円滑に作動しないようになっている。このため、バタフライバルブがリターンスプリングの付勢力によって全閉位置で保持されている状態では、モータギヤと中間減速ギヤとの歯面間の隙間(バックラッシュ)によりガタ付いたり、また、中間減速ギヤとバルブギヤとの歯面間の隙間(バックラッシュ)によりガタ付いたりする可能性がある。
【0006】
特に、車両振動やエンジン振動(例えば高速回転、高負荷のエンジン振動)がハウジングに伝わり、3つの第1〜第3ギヤ(モータギヤ、中間減速ギヤ、バルブギヤ)が激しくガタ付く可能性がある。ここで、モータギヤまたは中間減速ギヤがガタ付くと、モータギヤの歯面と中間減速ギヤの歯面とが衝突または摩擦を繰り返すため、モータギヤの歯面または中間減速ギヤの歯面が異常摩耗する可能性がある。また、中間減速ギヤまたはバルブギヤがガタ付くと、中間減速ギヤの歯面とバルブギヤの歯面とが衝突または摩擦を繰り返すため、中間減速ギヤの歯面またはバルブギヤの歯面が異常摩耗する可能性がある。
【0007】
この場合には、電動モータの駆動力を利用してバタフライバルブを開弁作動方向に回転動作させる際に、モータギヤと中間減速ギヤとの噛み合い不良によってモータギヤが中間減速ギヤに対して空回りしたり、モータギヤと中間減速ギヤとが噛み込んだりする。また、中間減速ギヤとバルブギヤとの噛み合い不良によって中間減速ギヤがバルブギヤに対して空回りしたり、中間減速ギヤとバルブギヤとが噛み込んだりする。
したがって、特許文献1に記載のEGR制御弁においては、歯車減速機構の動力伝達機能を失い、バルブ駆動装置としての性能が損なわれてしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−169614号公報(第1−10頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、振動による複数のギヤのガタ付きを抑制して、各ギヤの歯面の異常摩耗を防止することのできるバルブ開閉制御装置を提供することにある。また、複数のギヤにより構成される動力伝達機構としての性能の低下を防止することのできるバルブ開閉制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、モータへの電力の供給を停止した際にリターンスプリングまたはデフォルトスプリングの付勢力によってバルブが付勢される全閉位置の近傍または前後の所定範囲において、バルブが全閉位置を通り越して開閉作動を繰り返すようにモータへの電力の供給を継続することにより、モータの駆動力をバルブに伝達する複数のギヤ(全てのギヤ)にモータの駆動力とリターンスプリングまたはデフォルトスプリングの付勢力とが作用する。
これによって、複数のギヤのうちで噛み合う2つのギヤの歯面間に所定の隙間(バックラッシュ)が設けられている場合であっても、振動による複数のギヤのガタ付きを抑制することができるので、噛み合う2つのギヤ同士が衝突または摩擦を繰り返すことはない。したがって、各ギヤの歯面の異常摩耗を防止することが可能となる。
また、モータの駆動力を利用してバルブを開弁作動方向に開弁作動させるバルブ制御時に、噛み合う2つのギヤ同士の噛み合い不良が発生することはない。したがって、複数のギヤにより構成される動力伝達機構としての性能の低下を防止することが可能となる。
また、振動による複数のギヤのガタ付きを抑制することができるので、歯打ち音の発生を抑えることができる。したがって、騒音の発生を防止することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、全閉位置の近傍または前後の所定範囲内のバルブ位置から、バルブを全開する全開位置に至るまでの範囲を、モータへの供給電力を可変制御してバルブを開弁駆動または閉弁駆動させることが可能なバルブ制御範囲としたことにより、全てのバルブ制御範囲に渡って、モータの駆動力とリターンスプリングまたはデフォルトスプリングの付勢力とが常時作用する。したがって、全てのバルブ制御範囲に渡って、複数のギヤの各ギヤの歯面の異常摩耗を防止することが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、全閉位置の近傍または前後の所定範囲を、全閉位置から開弁作動方向にバルブが開弁した第1中間位置(状態)から、全閉位置を通り越して、全閉位置から閉弁作動方向にバルブが開弁した第2中間位置(状態)に至るまでの範囲としても良い。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、バルブ位置検出手段によって検出されるバルブ位置が第1中間位置、全閉位置を通り越して第2中間位置に到達した時点で、バルブの作動方向を反転させるようにモータへの供給電力を可変制御する。その後、バルブ位置検出手段によって検出されるバルブ位置が全閉位置を通り越して第1中間位置に到達した時点で、バルブの作動方向を反転させるようにモータへの供給電力を可変制御する。その後、バルブ位置検出手段によって検出されるバルブ位置が全閉位置を通り越して第2中間位置に到達した時点で、バルブの作動方向を反転させるようにモータへの供給電力を可変制御する。これによって、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、モータの駆動力をバルブに伝達する複数のギヤ(全てのギヤ)にモータの駆動力とリターンスプリングまたはデフォルトスプリングの付勢力とを常時作用させることが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、内燃機関の運転中に、バルブを全閉作動させる全閉制御を実行する。この場合には、内燃機関の運転停止時にモータへの電力の供給を停止することにより、リターンスプリングまたはデフォルトスプリングの付勢力によってバルブを全閉位置に戻すことが可能となる。
請求項6に記載の発明によれば、リターンスプリングとして、バルブと一体的に回転動作を行うバルブギヤまたはバルブに対して、バルブを全閉位置に戻す方向に荷重を与える第1バルブ付勢手段を採用している。また、デフォルトスプリングとして、バルブと一体的に回転動作を行うバルブギヤまたはバルブに対して、バルブを全閉位置に戻す方向に荷重を与える第2バルブ付勢手段を採用している。この場合には、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、モータの駆動力をバルブに伝達する動力伝達機構の構成要素を成す各ギヤにモータの駆動力とリターンスプリングまたはデフォルトスプリングの付勢力とが作用する。
【0014】
請求項7に記載の発明によれば、第1バルブ付勢手段として、少なくとも第1中間位置からバルブを全閉位置に戻す方向に荷重を与える第1スプリングを採用している。また、第2バルブ付勢手段として、少なくとも第2中間位置からバルブを全閉位置に戻す方向に荷重を与える第2スプリングを採用している。この場合には、モータへの電力の供給を停止すると、第1スプリングの付勢力と第2スプリングの付勢力とが釣り合った位置(全閉位置)にバルブが付勢される。すなわち、モータへの電力の供給を停止すると、2つの第1、第2スプリングの付勢力によってバルブが全閉位置に戻される。
【0015】
請求項8に記載の発明によれば、第1中間位置とは、モータの駆動力と第1スプリングの付勢力とが釣り合う第1中立位置である。そして、第1中立位置で第1スプリングの付勢力と釣り合う駆動力がモータのモータ軸に発生するようにモータへの供給電力を可変制御することにより、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、第1中立位置を越えてバルブが開弁作動方向に開弁することはなく、バルブを全閉作動させる全閉制御時における流体洩れ量を少なくすることができる。
また、第2中間位置とは、モータの駆動力と第2スプリングの付勢力とが釣り合う第2中立位置である。そして、第2中立位置で第2スプリングの付勢力と釣り合う駆動力がモータのモータ軸に発生するようにモータへの供給電力を可変制御することにより、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、第2中立位置を越えてバルブが閉弁作動方向に開弁することはなく、バルブを全閉作動させる全閉制御時における流体洩れ量を少なくすることができる。
【0016】
請求項9および請求項10に記載の発明によれば、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、全閉位置の近傍または前後で、ハウジングの流路壁面とバルブの外周端面との間の隙間をシールするシールリングを設けている。また、バルブの外周端面全周に、シールリングを装着する環状溝を設けている。これによって、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、全閉位置の近傍または前後の所定範囲において、バルブが全閉位置を通り越して開閉作動を繰り返すようにモータへの電力の供給を継続した場合であっても、全閉位置の近傍または前後の所定範囲が、全閉位置の近傍または前後に流体洩れ量が変化しない不感帯の範囲内に設けられているので、バルブを全閉作動させる全閉制御時における流体洩れ量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)はバルブ開閉制御装置を示したブロック図で、(b)は排気ガス再循環装置を示した断面図である(実施例1)。
【図2】モータアクチュエータを示した平面図である(実施例1)。
【図3】バタフライバルブの全閉制御時における制御上の全閉ポイントおよび電動モータによるバルブ制御範囲を示した説明図である(比較例1)。
【図4】(a)はバルブ全閉位置を示した説明図で、(b)はEGRガス洩れ量不感帯を示した説明図である(比較例1)。
【図5】バタフライバルブの全閉制御時における所定のバルブ開度範囲および電動モータによるバルブ制御範囲を示した説明図である(実施例1)。
【図6】(a)はバルブ全閉位置を示した説明図で、(b)はEGRガス洩れ量不感帯を示した説明図である(実施例1)。
【図7】バルブ開度に対するEGRガス洩れ量不感帯を示した説明図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明を実施するための最良の形態は、振動による複数のギヤのガタ付きを抑制して、歯打ち音の発生を防止し、且つ各ギヤの歯面の異常摩耗を防止するという目的を、バルブを全閉作動させる全閉制御時に、モータの駆動力をバルブに伝達する各ギヤにモータの駆動力とリターンスプリングまたはデフォルトスプリングの付勢力とを作用させることで実現した。
【実施例】
【0019】
[実施例1及び比較例1の構成]
図1、図2、図5乃至図7は本発明の実施例1を示したもので、図1(a)はバルブ開閉制御装置を示した図で、図1(b)は排気ガス再循環装置を示した図で、図2はモータアクチュエータを示した図で、図5はバタフライバルブの全閉制御時における所定のバルブ開度範囲および電動モータによるバルブ制御範囲を示した図で、図6(a)はバルブ全閉位置を示した図で、図6(b)はEGRガス洩れ量不感帯を示した図で、図7はバルブ開度に対するEGRガス洩れ量不感帯を示した図である。また、図3及び図4は本発明の実施例1に対する比較例1を示したもので、図3はバタフライバルブの全閉制御時における制御上の全閉ポイントおよび電動モータによるバルブ制御範囲を示した図で、図4(a)はバルブ全閉位置を示した図で、図4(b)はEGRガス洩れ量不感帯を示した図である。
【0020】
本実施例の排気ガス再循環装置は、例えば自動車等の車両のエンジンルームに搭載される内燃機関(以下エンジンと呼ぶ)に使用されるもので、排気ガス還流管内を流れる排気ガスの還流量を可変制御する排気ガス還流量制御弁(以下EGR制御弁と呼ぶ)と、このEGR制御弁の弁体(バルブ:以下バタフライバルブと呼ぶ)1の開閉制御を行うバルブ開閉制御装置とを備えている。
ここで、エンジンは、燃料が直接燃焼室内に噴射供給される直接噴射式のディーゼルエンジンが採用されている。なお、エンジンとして、ターボチャージャー付ディーゼルエンジン(ターボ過給機付エンジン)を採用しても良い。そして、エンジンは、各気筒毎の燃焼室内に新規吸入空気(吸気)を供給するための吸気管と、各気筒毎の燃焼室より流出した排気ガスを排気浄化装置を経由して外部に排出するための排気管とを備えている。
【0021】
排気ガス再循環装置の排気ガス還流管は、エンジンの各気筒毎の燃焼室より流出した排気ガスの一部である流体(排気再循環ガス:以下EGRガスと呼ぶ)を、吸気管に再循環(還流)させるものである。この排気ガス還流管内には、排気管内に形成される排気通路と吸気管内に形成される吸気通路とを連通する排気ガス還流路が形成されている。この排気ガス還流路は、エンジンの各気筒毎の燃焼室に連通する流体流路を構成している。
【0022】
排気ガス再循環装置のEGR制御弁は、本発明の流体制御弁に相当するもので、バルブ開度に応じて排気ガスの還流量を調整するバタフライバルブ(EGR制御バルブ)1と、このバタフライバルブ1の外周のシールリング溝(環状溝)2に嵌め込まれたシールリング3と、内部にバタフライバルブ1を開閉自在に収容するハウジング4とを備えている。なお、本実施例のEGR制御弁は、ハウジング4内に形成される排気ガス還流路(流体流路)6の排気ガス流通面積を変更し、EGRガスを吸入空気中に混入させる排気ガスの還流量(新規吸入空気量に対するEGR率:以下EGR量と言う)を可変制御する流体流量制御弁を構成している。
【0023】
また、EGR制御弁は、エンジン停止に伴いバタフライバルブ1をバルブ全閉位置(後述する)にて閉弁した状態の時、あるいはエンジン運転中におけるバタフライバルブ1を全閉作動させる全閉制御時(以下バタフライバルブ1の全閉制御時と言う)に、バタフライバルブ1のシールリング溝2に嵌め込まれたシールリング3の軸線方向に対して直交する半径方向(拡径方向)の張力を利用して、バタフライバルブ1とハウジング4との間の隙間を気密化(シール)するように構成されている。なお、ハウジング4は、内部にバタフライバルブ1を開閉自在に収容するノズル(円筒部)5を有している。
【0024】
排気ガス再循環装置のバルブ開閉制御装置は、バタフライバルブ1をバルブ全閉位置に戻す方向に付勢する1個のコイルスプリング(バルブ付勢手段)7、動力源としての電動モータ9を有し、バタフライバルブ1を閉弁作動方向および開弁作動方向に駆動するバルブ駆動装置(バルブ駆動手段)、およびこのバルブ駆動装置、特に電動モータ9への供給電力を可変してバタフライバルブ1のバルブ開度(バルブ位置)を制御するエンジン制御ユニット(モータ制御手段、モータ制御ユニット:以下ECUと呼ぶ)等によって構成されている。
【0025】
本実施例のEGR制御弁は、排気ガス再循環装置の排気ガス還流管の途中に配設されている。なお、EGR制御弁を、排気管から排気ガス還流管が分岐する分岐部に配設しても良く、また、排気ガス還流管から吸気管に合流する合流部に配設しても良い。
ここで、本実施例のハウジング4の外壁部には、電動モータ9のモータ軸であるモータシャフト11、軸線方向に延びる中間減速ギヤ軸である中間シャフト12、およびバタフライバルブ1のバルブ軸であるバルブシャフト13を並列して配置したギヤハウジング14が一体的に形成されている。
【0026】
本実施例のバタフライバルブ1は、高温に強い耐熱性材料、例えばステンレス鋼等により略円板形状に形成されて、ハウジング4の排気ガス還流路6内に開閉自在に収容されている。このバタフライバルブ1は、バタフライバルブ1の回転中心を成すバルブシャフト13を有し、ハウジング4に対して相対回転して排気ガス還流路6を開閉するバタフライ方式の回転型バルブ(バタフライ型バルブ)である。また、バタフライバルブ1は、電動モータ9の駆動力(以下駆動トルクと言う)を受けて回転動作を行うバルブシャフト13の中心軸線に対して所定の傾斜角度分だけ傾斜させた状態で、バルブシャフト13の中心軸線方向の一端側に保持固定される斜板状のバルブである。
【0027】
そして、バタフライバルブ1は、エンジン運転時に、ECUからの制御信号に基づいて、バルブ全閉位置よりも手前に設定された制御上の全閉ポイント(後述する)からバルブ全開位置(後述する)に至るまでのバルブ制御範囲(後述する)で回転動作(回転角度が変更)されることで、排気ガス還流路6の開口面積(排気ガス流通面積)を変更して、吸気通路内を流れる吸入空気中に混入させるEGRガスのEGR量を可変する。また、バタフライバルブ1は、ハウジング4の内部に嵌合保持された円筒状のノズル5の内径よりも小さい外径のバルブ外径部を有している。このバルブ外径部の外周面(バタフライバルブ1の外周端面)15には、円環状のシールリング溝2が周方向に連続して形成されている。すなわち、シールリング溝2は、バタフライバルブ1の外周端面15の全体(全周)に周設されている。このシールリング溝2の内部には、1個のシールリング3が嵌め込まれている。
【0028】
シールリング3は、C字形状に形成されており、ハウジング4およびシールリング3の熱膨張係数の差に伴うシールリング3の膨張、収縮に備えて周方向の両端面間(合い口)に所定の切欠隙間(図示せず)を有している。このシールリング3の外周端面は、バタフライバルブ1の閉弁作動時(全閉制御時も含む)に、バルブ全閉位置近傍に相当する所定の回転角度範囲内で、ハウジング4の流路壁面(ノズル5の内周面)に摺動接触するシールリング摺動面(以下摺動面と略す)16として利用される。なお、シールリング3の摺動面16の軸線方向の一対のエッジ部に、バタフライバルブ1が開閉動作し易いようにテーパ形状またはR形状の面取りを施しても良い。
【0029】
そして、シールリング3の半径方向の内径側には、バタフライバルブ1のシールリング溝2内に半径方向、軸線方向および周方向に移動自在に嵌め込まれる内径側端部が設けられ、また、シールリング3の半径方向の外径側には、バタフライバルブ1の外周端面15よりもバタフライバルブ1の半径方向の外径側に突出した外径側端部が設けられている。すなわち、シールリング3は、外径側端部がバタフライバルブ1の外周端面15より突出した状態で、内径側端部がシールリング溝2内を半径方向、軸線方向および周方向に移動できるようにシールリング溝2内に嵌め込まれて保持されている。
【0030】
本実施例のハウジング4は、アルミニウム合金のダイカストにより所定の形状に形成されており、排気ガス還流路6の内部にバタフライバルブ1をバルブ全閉位置からバルブ全開位置に至るまで回転方向に回転自在(開閉自在)に保持する装置(バルブハウジング)であり、排気ガス還流管(あるいは排気管または吸気管)にボルト等の締結具(図示せず)を用いて締め付け固定されている。また、ハウジング4には、ブッシング17、オイルシール18、およびボールベアリング19等の軸受け部品を介して、バルブシャフト13を回転方向に摺動自在に軸支するバルブ軸受け部20が設けられている。
【0031】
このバルブ軸受け部20の内部には、バルブシャフト13の軸線方向に延びるシャフト収容孔21が設けられている。このシャフト収容孔21のノズル側には、内部に侵入した排気ガス中に含まれる不純物(例えば燃焼残滓やカーボン等の微粒子)を、例えば吸気管負圧を利用してバタフライバルブ1よりもEGRガス流方向の下流側の排気ガス還流路内に戻すための連通穴22が形成されている。また、ハウジング4には、ノズル5を嵌合保持する円筒状のノズル嵌合部23が設けられている。そして、ハウジング4には、例えばバルブ全閉位置近傍またはバルブ軸受け部20またはノズル嵌合部23の周囲に形成される冷却水循環路24にエンジン冷却水を流入させるための冷却水配管25が接続されている。そして、ハウジング4は、センサカバー8とギヤハウジング14との間に、電動モータ9や歯車減速機構を収容するギヤ収容室(モータ収容室)26を形成している。
【0032】
ノズル5は、排気ガス還流管の一部を形成すると共に、バタフライバルブ1を開閉自在に収容する円筒部であって、高温に強い耐熱性材料、例えばステンレス鋼等により円管形状に形成されている。このノズル5は、ハウジング4のノズル嵌合部23の内周に圧入嵌合等によって嵌合保持されている。そして、ノズル5の内部には、排気ガス還流路6が形成されている。そして、ノズル5の内周面、特にノズル5のバルブ全閉位置近傍の内周面(ハウジング4の流路壁面)には、バタフライバルブ1の閉弁作動時に、シールリング3の摺動面16が密着可能なシールリングシート面(当接面:以下シート面と略す)27が設けられている。なお、ノズル5には、バルブシャフト13が貫通するシャフト貫通孔29が設けられている。
【0033】
コイルスプリング7は、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤのうちで最もバルブ側に配置される最終ギヤ(第3ギヤ:後述する)に対して、バタフライバルブ1を閉弁作動方向に付勢する付勢力(バネ荷重、スプリング力)を与えるリターンスプリング31、および第3ギヤに対して、バタフライバルブ1を開弁作動方向に付勢する付勢力(バネ荷重、スプリング力)を与えるデフォルトスプリング32を有している。このコイルスプリング7は、ハウジング4の外壁部(ギヤハウジング14)に設けられた円環状の第1凹部33と、第3ギヤの円環状部に設けられた円環状の第2凹部34との間に装着されている。そして、コイルスプリング7は、リターンスプリング31の一端部(図示左端部)とデフォルトスプリング32の他端部(図示右端部)とを異なる方向に巻き込み、リターンスプリング31の他端部(図示右端部)とデフォルトスプリング32の一端部(図示左端部)とを結合して一体化した1本のコイルスプリングである。
【0034】
そして、リターンスプリング31の他端部とデフォルトスプリング32の一端部とを結合する結合部には、エンジン停止時、あるいは電動モータ9への電力の供給を停止した時に、ハウジング4に捩じ込まれる全閉ストッパ部材(全閉開度調整用スクリュー)35に保持されるU字フック部36が設けられている。このU字フック部36は、リターンスプリング31とデフォルトスプリング32との結合部を逆U字状に折り曲げることで形成される。リターンスプリング31は、一端部がハウジング4の第1凹部33に係止されており、バタフライバルブ1を、バルブ全開位置からバルブ全閉位置まで戻す方向(閉弁作動方向)に付勢する第1スプリングである。また、デフォルトスプリング32は、他端部が第3ギヤの第2凹部34に係止されており、バタフライバルブ1を、バルブ全閉位置を通り越した位置からバルブ全閉位置まで戻す方向(開弁作動方向)に付勢する第2スプリングである。
【0035】
ここで、本実施例のバタフライバルブ1を開弁駆動または閉弁駆動するバルブ駆動装置は、電力の供給を受けて駆動トルクを発生する電動モータ9と、この電動モータ9のモータシャフト(出力軸)11の回転運動をバルブシャフト13に伝達するための動力伝達機構(本実施例では歯車減速機構)とを備えた電動式アクチュエータ(モータアクチュエータ)によって構成されている。
電動モータ9は、ハウジング4の外壁部に一体的に形成されたギヤハウジング14内に保持固定されている。この電動モータ9は、ブラシレスDCモータやブラシ付きのDCモータ等の直流(DC)モータが採用されている。なお、三相誘導電動機等の交流(AC)モータを用いても良い。
【0036】
歯車減速機構は、電動モータ9のモータシャフト11の回転速度を所定の減速比となるように2段減速する3つの第1〜第3ギヤ41〜43よりなり、バルブシャフト13を介して、電動モータ9のモータ出力軸トルク(駆動トルク)をバタフライバルブ1に伝達する動力伝達機構を構成する。これらの第1〜第3ギヤ41〜43は、ギヤハウジング14内に回転自在に収容されている。
この歯車減速機構の構成要素の1つである第1ギヤ41とは、モータシャフト11の外周に固定されたモータギヤ(第1回転体)のことである。この第1ギヤ41は、歯車減速機構の動力伝達経路上において最もモータ側(動力源側)に配設されて、金属材料または樹脂材料によって円筒状に形成されている。そして、第1ギヤ41は、モータシャフト11の外周を周方向に取り囲むように円筒部を有している。この円筒部は、モータシャフト11の外周に圧入嵌合によって固定されている。そして、第1ギヤ41の円筒部の外周には、第2ギヤ42に噛み合う複数の凸状歯44が周方向全体に形成されている。
【0037】
また、歯車減速機構の構成要素の1つである第2ギヤ42とは、第1ギヤ41の外周に形成される複数の凸状歯44と噛み合って回転する中間減速ギヤ(第2回転体)のことである。この第2ギヤ42は、歯車減速機構の動力伝達経路上において第1ギヤ41と第3ギヤ43との間に配設されて、樹脂材料によって円筒状に形成されている。そして、第2ギヤ42は、電動モータ9のモータシャフト11およびバルブシャフト13に対して並列して配置された中間シャフト12の外周を周方向に取り囲むように円筒部を有している。 この円筒部は、中間シャフト12に対して相対回転可能となるように、中間シャフト12の外周に回転自在に嵌合している。また、円筒部は、第2ギヤ42の最大外径部を構成する円環状部、およびこの円環状部よりも外径の小さい円筒状部を有している。第2ギヤ42の円環状部の外周には、第1ギヤ41の外周に形成される複数の凸状歯44に噛み合う複数の凸状歯(大径ギヤ)45が周方向全体に形成されている。また、第2ギヤ42の円筒状部の外周には、第3ギヤ43の外周に形成される複数の凸状歯に噛み合う複数の凸状歯(小径ギヤ)46が周方向全体に形成されている。
【0038】
また、歯車減速機構の構成要素の1つである第3ギヤ43とは、第2ギヤ42の外周に形成される小径ギヤ46と噛み合って回転するバルブギヤ(第3回転体)のことである。この第3ギヤ43は、歯車減速機構の動力伝達経路上において最もバルブ側(移動体側)に配設されて、樹脂材料によって円筒状に形成されている。そして、第3ギヤ43は、バルブシャフト13の外周を周方向に取り囲むように円筒部を有している。
この円筒部は、内周部にバルブギヤプレート47をインサート成形している。また、円筒部は、第3ギヤ43の最大外径部を構成する円環状部を有している。第3ギヤ43の円環状部の外周には、第2ギヤ42の円筒状部の外周に形成される小径ギヤ46に噛み合う複数の凸状歯49が周方向に部分的(円弧状、部分円環状)に形成されている。
また、第3ギヤ43には、コイルスプリング7に係止されるオープナレバー(図示せず)が設けられている。このオープナレバーには、デフォルトスプリング32の他端部を係止する係止部、およびコイルスプリング7のU字フック部36に係脱自在に係合する係合部等が設けられている。
【0039】
また、第3ギヤ43の外周部には、全閉側ストッパ部51が設けられている。この全閉側ストッパ部51は、バタフライバルブ1がバルブ全閉位置を越えて閉弁作動方向に回転動作した際に、ギヤハウジング14に一体的に形成されたブロック状の全閉側ストッパ53に捩じ込まれる全閉側ストッパ部材(最大全閉開度調整用スクリュー)54に機械的に係止される。全閉側ストッパ53および全閉側ストッパ部材54は、バタフライバルブ1、バルブシャフト13および第3ギヤ43の閉弁作動方向の回転動作範囲を規制する第1規制部として利用されている。これにより、第3ギヤ43の全閉側ストッパ部51が全閉側ストッパ53または全閉側ストッパ部材54に当接した際に、バタフライバルブ1等の可動部材のこれ以上の閉弁作動方向への回転動作が規制される。
【0040】
なお、本実施例では、全閉側ストッパ53または全閉側ストッパ部材54によって規制される最大全閉開度を、バルブ全閉位置(O)をθ=0°としたとき、バルブ全閉位置から微少開度(例えばθ=−17°程度)だけ閉弁作動方向に開弁した開度に設定している。なお、全閉側ストッパ53または全閉側ストッパ部材54のいずれか一方のみが設けられていれば良い。あるいは、全閉側ストッパ53および全閉側ストッパ部材54の両方とも設けなくても良い。
【0041】
また、第3ギヤ43の外周部には、全開側ストッパ部(図示せず)が設けられている。この全開側ストッパ部は、バタフライバルブ1がバルブ全開位置まで開弁作動方向に回転動作した際に、ギヤハウジング14に一体的に形成されたブロック状の全開側ストッパ(図示せず)に捩じ込まれる全開側ストッパ部材(最大全開開度調整用スクリュー:図示せず)に機械的に係止される。全開側ストッパおよび全開側ストッパ部材は、バタフライバルブ1、バルブシャフト13および第3ギヤ43の開弁作動方向の回転動作範囲を規制する第2規制部として利用されている。これにより、第3ギヤ43の全開側ストッパ部が全開側ストッパまたは全開側ストッパ部材に当接した際に、バタフライバルブ1等の可動部材のこれ以上の開弁作動方向への回転動作が規制される。
【0042】
なお、本実施例では、全開側ストッパまたは全開側ストッパ部材によって規制される最大全開開度(バルブ全開位置)を、バルブ全閉位置(O)をθ=0°としたとき、バルブ全閉位置から所定の開度(例えばθ=+60〜90°、望ましくはθ=+70°程度)だけ開弁作動方向に開弁した開度に設定している。なお、全開側ストッパまたは全開側ストッパ部材のいずれか一方のみが設けられていれば良い。あるいは、全開側ストッパおよび全開側ストッパ部材の両方とも設けなくても良い。
【0043】
ここで、モータシャフト11は、ギヤハウジング14内に回転自在に収容されている。このモータシャフト11は、軸線方向に真っ直ぐに延ばされている。また、中間シャフト12の軸線方向の一端部は、ギヤハウジング14に設けられた嵌合凹部内に圧入嵌合されている。この中間シャフト12は、軸線方向に真っ直ぐに延ばされている。そして、バルブシャフト13は、高温に強い耐熱性材料、例えばステンレス鋼等によって形成されており、ハウジング4のバルブ軸受け部20に設けられたシャフト収容孔21の内部に回転自在または摺動自在に収容されている。このバルブシャフト13は、円形状の断面を有し、一方側から他方側に向けて軸線方向に真っ直ぐに形成された円柱状の金属部材である。
【0044】
そして、バルブシャフト13の軸線方向の一端側は、ハウジング4のシャフト収容孔21およびノズル5のシャフト貫通孔29を貫通して排気ガス還流路6の内部に突出(露出)している。このバルブシャフト13の軸線方向の一端部(バルブ側の端部)には、バタフライバルブ1を溶接手段を用いて保持固定するバルブ装着部(シャフト側嵌合部)が設けられている。また、バルブシャフト13の軸線方向の他端部(バルブ側に対して反対側の端部)には、第3ギヤ43の内周部にインサート成形されたバルブギヤプレート47をかしめ等の固定手段によって固定するためのかしめ固定部が一体的に形成されている。
【0045】
ここで、バルブ駆動装置、特に電動モータ9は、ECUによって通電制御されるように構成されている。そして、ECUには、制御処理、演算処理を行うCPU、制御プログラムまたは制御ロジックや各種データを保存する記憶装置(ROMやRAM等のメモリ)、入力回路(入力部)、出力回路(出力部)等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。また、ECUは、図示しないイグニッションスイッチをオン(IG・ON)すると、メモリ内に格納された制御プログラムに基づいて、後述するバルブ開度センサ(EGR量センサ)によって検出されるバルブ開度(バルブ位置、実開度)が、エンジンの運転状態の変化に応じて設定される制御目標値(目標開度)に略一致するように電動モータ9の駆動トルク、つまり電動モータ9への供給電力をフィードバック制御するように構成されている。
【0046】
なお、ECUは、イグニッションスイッチがオフ(IG・OFF)されると、メモリ内に格納された制御プログラムまたは制御ロジックに基づく上記の制御が強制的に終了されるように構成されている。そして、ECUは、クランク角度センサ、アクセル開度センサ、エアフロメータおよび冷却水温度センサ等の各種センサからのセンサ信号が、A/D変換器でA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。なお、ECUは、クランク角度センサより出力されたNEパルス信号の間隔時間を計測することによってエンジン回転速度を検出するための回転速度検出手段として機能する。
【0047】
また、マイクロコンピュータには、EGR制御弁のバタフライバルブ1の開度(EGR制御弁のバルブ開度)を電気信号に変換し、ECUへどれだけEGRガスが吸気管内を流れる吸入空気に混入されているか、つまり吸気管内へのEGRガスのEGR量がどれくらいかを出力するEGR量センサが接続されている。このEGR量センサは、バタフライバルブ1の回転角度(現在位置、バルブ開度)を検出する非接触式の回転角度検出装置(バルブ位置検出手段、バルブ開度検出手段)であって、第3ギヤ43の内周側に固着された分割型の永久磁石(マグネット:図示せず)、このマグネットによって磁化される分割型のヨーク55、およびセンサカバー側に配置されたホールIC56等によって構成されている。そして、ホールIC56は、自身に鎖交する磁束密度に対応した電圧信号を出力する。なお、非接触式の磁気検出素子として、ホールIC56の代わりに、ホール素子単体または磁気抵抗素子を使用しても良い。
【0048】
ここで、本実施例の排気ガス再循環装置は、バタフライバルブ1のシールリング溝2内に、自身の拡径方向の張力を利用してノズル5のシート面27に対するシール機能を持つC字状のシールリング3を組み合わ(嵌め合わ)したEGR制御弁を使用している。
このようなEGR制御弁においては、シールリング自身の拡径方向の張力による伸びにより、バルブ全閉位置(O)の近傍(バルブ全閉位置の前後:例えば±2.5〜5.5°、あるいは±3.0〜5.0°、あるいは±3.5°程度)にEGRガス洩れ量(流体流量、流体洩れ量、EGR量:Q)の変化しない範囲(EGRガス洩れ量不感帯)がある。これは、シールリング3が、自身の張力により拡径方向に拡径するため、バタフライバルブ1のバルブ位置がバルブ全閉位置(O)より外れても、自身の張力による拡径方向への変位が限界となるまでは、ノズル5のシート面27に密着し続けることができるからである。
【0049】
ここで、ECUは、バタフライバルブ1を全閉した全閉開度の状態、すなわち、電動モータ9への電力の供給を停止した際にコイルスプリング7の付勢力によってバタフライバルブ1が付勢されるバルブ停止位置をバルブ全閉位置(O)としてマイクロコンピュータのメモリに格納している。なお、バルブ全閉位置(O)とは、図3に示したように、バタフライバルブ1の外周端面15とノズル5のシート面27との間の隙間(EGRガス洩れ量)が最小となるバルブ位置で、且つ排気ガス還流路6の内部を流れるEGRガスのEGR量が最小となるバルブ開度(θ=0°)のことである。
なお、本実施例では、リターンスプリング31の付勢力とデフォルトスプリング32の付勢力とが釣り合った中立位置が、電動モータ9への電力の供給を停止した際にバタフライバルブ1が付勢されるバルブ全閉位置となる。
【0050】
また、ECUは、バタフライバルブ1を全開した全開開度の状態をバルブ全開位置(C)としてメモリに格納している。なお、バルブ全開位置(C)とは、バタフライバルブ1の外周端面15とノズル5のシート面27との間の隙間が最大となるバルブ位置で、且つ排気ガス還流路6の内部を流れるEGRガスのEGR量が最大となるバルブ開度(θ=60〜90°)のことである。
また、ECUは、EGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)のうちで、バルブ全閉位置から開弁作動方向に開弁した開弁側最大開度(不感帯最大開度)を制御上の全閉ポイント(A)としてメモリに格納している。なお、制御上の全閉ポイント(A)とは、図3に示したように、バルブ全閉位置(O)をθ=0°としたとき、このバルブ全閉位置(O)から開弁作動方向に微少開度(θ=+2.5〜+5.5°、望ましくはθ=+3.0〜+5.0°、最も望ましくはθ=+3.5°)だけ僅かに開弁した中間位置(中間開度)のことであって、電動モータ9の駆動トルクとリターンスプリング31の付勢力とが釣り合った中立位置のことである。
そして、ECUは、制御上の全閉ポイント(A)を、EGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)内に設定している。本実施例では、制御上の全閉ポイント(A)を、不感帯最大開度に設定している。
【0051】
そして、ECUは、バタフライバルブ1を制御上の全閉ポイント(A)よりも開弁作動方向に開弁している時、つまり制御目標値が開弁位置(制御上の全閉ポイント(A)からバルブ全開位置(C)に至るまでの範囲)の時に、エンジンの運転状態が変化すると、バタフライバルブ1の開弁制御からエンジンの運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御に移行する。
すなわち、ECUは、エンジンの運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、EGR制御弁のバタフライバルブ1のバルブ開度(バルブ位置)が、バルブ全閉位置(O)よりも手前に設定された制御上の全閉ポイント(A)となるように電動モータ9への供給電力を可変制御するように構成されている。
そして、ECUは、エンジンの運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、バタフライバルブ1のバルブ位置が、制御上の全閉ポイント(A)となるように電動モータ9への電力の供給を継続する。すなわち、EGR量センサによって検出されるバルブ開度(バルブ位置)が、制御上の全閉ポイント(A)に到達した時点で、電動モータ9への供給電力を所定値に維持する。例えば電動モータ9に微少電流(開弁作動方向の電流小)を供給する。これにより、バタフライバルブ1に電動モータ9の駆動トルクとリターンスプリング31の付勢力とが作用するため、バタフライバルブ1が制御上の全閉ポイント(A)にてホールドされる。
【0052】
また、ECUは、エンジンの運転中におけるバタフライバルブ1を開閉作動させる開閉制御時に、制御上の全閉ポイント(A)からバルブ全開位置(C)に至るまでのバルブ制御範囲(A−C)内において、EGR制御弁のバタフライバルブ1を開閉作動させるように電動モータ9への供給電力を可変制御するように構成されている。また、ECUは、エンジン停止時(エンジンOFF時)に、電動モータ9への電力の供給を停止するように構成されている。なお、制御上の全閉ポイント(A)からバルブ全開位置(C)に至るまでの回転角度範囲をバルブ制御範囲(A−C)としてメモリに格納している。
【0053】
[実施例1及び比較例1の作用]
次に、本実施例の排気ガス再循環装置の作用を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。
【0054】
ECUは、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)されると、エンジン冷間始動時を除き、EGR量センサによって検出されたEGR量(実EGR開度)が、エンジンの運転状態に対応して設定される目標EGR開度と略一致するように、電動モータ9への供給電力を調整する。
そして、電動モータ9に電力が供給されると、電動モータ9のモータシャフト11が回転する。そして、モータシャフト11が回転することにより第1ギヤ41がモータシャフト11の軸心を中心にして回転して、第1ギヤ41から第2ギヤ42の大径ギヤ45に電動モータ9の駆動トルクが伝達される。そして、第2ギヤ42の回転に伴って小径ギヤ46が中間シャフト12の軸心を中心にして回転すると、小径ギヤ46に噛み合う第3ギヤ43がバルブシャフト13の軸心を中心にして回転する。この第3ギヤ43の回転に伴ってバルブシャフト13が所定の回転角度だけ回転し、EGR制御弁のバタフライバルブ1がバルブ全閉位置(または制御上の全閉ポイント)から開弁作動方向に開弁駆動される。
【0055】
ここで、バタフライバルブ1の開弁作動方向の回転に対しては、コイルスプリング7のU字フック部36が全閉ストッパ部材35から開弁作動方向に離れるため、第3ギヤ43に対してデフォルトスプリング32の付勢力は作用せず、リターンスプリング31の付勢力が作用する。したがって、バタフライバルブ1は、電動モータ9の駆動トルクによって、リターンスプリング31の付勢力に抗して、目標EGR開度となるバルブ開度(バルブ位置)に開弁制御される。
これにより、エンジンの各気筒毎の燃焼室より流出した排気ガスの一部(EGRガス等の高温流体)が、排気管内に形成される排気通路から、排気ガス還流管内に形成される排気ガス還流路(ハウジング4の排気ガス還流路6を含む)を経て吸気管内に形成される吸気通路に再循環される。
【0056】
また、ECUは、EGR制御弁のバタフライバルブ1が開弁している時に、自動車等の車両の走行状態が変更された場合、あるいはエンジンの運転状態が過度的に変更された場合(例えば運転者がアクセルペダルを大きく踏み込んでアクセル全開の時、エンジン負荷が高負荷領域で、ターボ過給機により吸入空気の過給動作を行っている時、定常走行からアクセルペダルが踏み込まれて加速走行に移行した時)、あるいは運転者がブレーキペダルを踏み込んだ場合、EGR制御弁のバタフライバルブ1のバルブ位置(バルブ開度)が、制御上の全閉ポイント(A)となるように、電動モータ9への供給電力を調整(制限)する。これにより、電動モータ9の駆動トルクとコイルスプリング7の付勢力とによって、バタフライバルブ1のバルブ位置が制御上の全閉ポイント(図3参照)に戻される。
【0057】
すなわち、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、電動モータ9への電力の供給を停止するのではなく、電動モータ9への電力の供給を継続して、バタフライバルブ1、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43、バルブシャフト13に対して、電動モータ9の駆動トルクとリターンスプリング31の付勢力とを作用させる。
なお、制御上の全閉ポイント(A)は、上述したように、バルブ全閉位置(O)よりも手前、すなわち、バルブ全閉位置(O)から開弁作動方向に微少開度だけ僅かに開弁した中間位置に設定されている。このとき、コイルスプリング7のU字フック部36は、全閉ストッパ部材35から開弁作動方向に微少開度だけ僅かに離れるため、第3ギヤ43に対してデフォルトスプリング32の付勢力は作用せず、電動モータ9の駆動トルクとリターンスプリング31の付勢力とが作用する。
【0058】
ここで、本実施例のEGR制御弁においては、図4に示したように、制御上の全閉ポイント(A)がEGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)内に設けられている。このため、バタフライバルブ1のバルブ位置が制御上の全閉ポイント(A)になると、バタフライバルブ1の外周に装着されたシールリング3の摺動面16が、シールリング自体の拡径方向の張力によってノズル5のシート面27に張り付くため、シールリング3の摺動面16がノズル5のシート面27に密着する。
したがって、バタフライバルブ1の外周端面15とノズル5のシート面27との間の隙間が完全にシールされる。これにより、制御上の全閉ポイント(A)でバタフライバルブ1が保持される時、すなわち、バタフライバルブ1の全閉時に、EGRガスの洩れが確実に抑止されるため、EGRガスが吸入空気に混入しなくなる。
【0059】
[比較例1の特徴]
以上のように、排気ガス再循環装置に採用されたバルブ開閉制御装置においては、電動モータ9への電力の供給を停止した際にリターンスプリング31の付勢力によってバタフライバルブ1が付勢されるバルブ全閉位置(O)よりも手前、つまりバルブ全閉位置(O)から微少開度だけ僅かに開弁したバルブ位置に制御上の全閉ポイント(A)を設定している。
そして、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、電動モータ9への電力の供給を停止するのではなく、バタフライバルブ1が制御上の全閉ポイント(A)で停止するように電動モータ9への電力の供給を継続することにより、電動モータ9の駆動トルクをバタフライバルブ1に伝達する歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43に、つまり全てのギヤに電動モータ9の駆動トルクとリターンスプリング31の付勢力とを作用させる。
【0060】
ここで、一般的に、歯車減速機構の構造上、各第1〜第3ギヤ41〜43の歯面間に、所定の隙間(バックラッシュ)がないと、各第1〜第3ギヤ41〜43が円滑に作動しないようになっている。
具体的には、第1ギヤ41の各凸状歯44と第2ギヤ42の大径ギヤ45との歯面間にバックラッシュが設けられている。また、第2ギヤ42の小径ギヤ46と第3ギヤ43の各凸状歯49との歯面間にバックラッシュが設けられている。
これらのように、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43のうちで噛み合う2つのギヤの歯面間(第1ギヤ41と第2ギヤ42との歯面間、第2ギヤ42と第3ギヤ43との歯面間)にバックラッシュが設けられている場合、エンジン振動や車両振動がハウジング4に伝達されて電動モータ9や中間シャフト12が振られても、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43に、つまり全てのギヤに電動モータ9の駆動トルクとリターンスプリング31の付勢力とが作用している。
【0061】
これにより、噛み合う2つのギヤのうちの一方のギヤの歯面が他方のギヤの歯面に押し付けられる。すなわち、噛み合う2つの第1、第2ギヤ41、42のうちの一方の第1ギヤ41の各凸状歯44の歯面(または第2ギヤ42の大径ギヤ45の歯面)が、噛み合う2つの第1、第2ギヤ41、42のうちの他方の第2ギヤ42の大径ギヤ45の歯面(または第1ギヤ41の各凸状歯44の歯面)に押し付けられる。また、噛み合う2つの第2、第3ギヤ42、43のうちの一方の第2ギヤ42の小径ギヤ46の歯面(または第3ギヤ43の各凸状歯49の歯面)が、噛み合う2つの第2、第3ギヤ42、43のうちの他方の第3ギヤ43の各凸状歯49の歯面(または第2ギヤ42の小径ギヤ46の歯面)に押し付けられる。
【0062】
これによって、エンジン振動や車両振動による3つの第1〜第3ギヤ41〜43のガタ付きを抑制することができるので、噛み合う2つのギヤ同士が衝突または摩擦を繰り返すことはない。すなわち、第1ギヤ41の各凸状歯44と第2ギヤ42の大径ギヤ45とが衝突または摩擦を繰り返すことはない。また、第2ギヤ42の小径ギヤ46と第3ギヤ43の各凸状歯49とが衝突または摩擦を繰り返すことはない。したがって、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43の歯面の異常摩耗を防止することができる。
また、エンジン振動や車両振動による3つの第1〜第3ギヤ41〜43のガタ付きを抑制することができるので、歯打ち音の発生を抑えることができる。したがって、騒音の発生を防止することが可能となる。
【0063】
また、制御上の全閉ポイント(A)から、バルブを全開するバルブ全開位置(C)に至るまでの範囲を、モータへの供給電力を可変制御してバルブを開弁駆動または閉弁駆動させることが可能なバルブ制御範囲(A−C)としたことにより、全てのバルブ制御範囲(A−C)に渡って、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43に、つまり全てのギヤに電動モータ9の駆動トルクとリターンスプリング31の付勢力とが常時作用している。したがって、全てのバルブ制御範囲(A−C)に渡って、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43の歯面の異常摩耗を防止することができる。
このように、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43の歯面の異常摩耗を防止することができるので、電動モータ9の駆動トルクを利用してバタフライバルブ1を開弁作動方向に開弁作動させるバルブ制御時に、噛み合う2つのギヤ同士の噛み合い不良が発生することはない。したがって、第1〜第3ギヤ41〜43により構成される歯車減速機構としての動力伝達機能(性能)の低下を防止することができる。
【0064】
また、本比較例のEGR制御弁は、バタフライバルブ1のシールリング溝2内に、C字状のシールリング3が嵌め込まれている。このようなシールリング3を備えたEGR制御弁においては、バルブ全閉位置(O)の近傍または前後にEGRガス洩れ量の変化しない範囲(EGRガス洩れ量不感帯)がある。このため、ECUは、制御上の全閉ポイント(A)を、EGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)内に設定している。
これによって、バタフライバルブ1の全閉制御時に、バタフライバルブ1の位置が、バルブ全閉位置(O)よりも手前、つまりバルブ全閉位置(O)から微少開度だけ僅かに開弁した制御上の全閉ポイント(A)となるように電動モータ9に駆動トルクを発生させた場合であっても、シールリング自体の拡径方向の張力によってバタフライバルブ1の外周端面15とノズル5のシート面27との間の隙間を完全にシールできる。したがって、バタフライバルブ1の全閉制御時におけるEGRガス洩れ量をゼロにまたは少なくすることができる。
【0065】
[実施例1の構成]
本実施例のEGR制御弁の弁体は、エンジンの燃焼室に供給されるEGRガス等の高温流体の流量(EGR量)を可変制御するバタフライバルブ1によって構成されている。このバタフライバルブ1は、バルブシャフト13の軸線方向の一端部に固定されている。また、バタフライバルブ1の外周端面15には、円環状のシールリング溝2がバタフライバルブ1の外周全体に周設されている。このバタフライバルブ1のシールリング溝2内には、自身の拡径方向の張力を利用してノズル5のシート面27に対するシール機能を持つC字状のシールリング3が嵌め込まれている。そして、EGR制御弁のハウジング4は、排気管と吸気管とを接続する排気ガス還流管の途中に配設されており、内部に排気ガス還流路6が形成された円筒状のノズル5を有している。
【0066】
そして、バルブ開閉制御装置は、バルブ駆動装置、ECUおよびコイルスプリング7等によって構成されている。バルブ駆動装置は、比較例1と同様に、バタフライバルブ1を開弁作動方向および閉弁作動方向に駆動する電動モータ9と、この電動モータ9のモータシャフト11の回転速度を所定の減速比となるように2段減速し、電動モータ9の駆動トルクを増大させてバルブシャフト13を駆動する歯車減速機構とを備えている(図1参照)。この歯車減速機構は、電動モータ9のモータシャフト11に固定された第1ギヤ(モータギヤ)41、この第1ギヤ41に噛み合う第2ギヤ(中間減速ギヤ)42、およびこの第2ギヤ42に噛み合う第3ギヤ(バルブギヤ)43等によって構成されている。その第3ギヤ43は、バルブシャフト13の軸線方向の他端部に固定されている。また、第3ギヤ43には、コイルスプリング7が組み付けられている。
【0067】
ECUは、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、図5ないし図7に示したように、電動モータ9への電力の供給を停止した際にコイルスプリング7の付勢力によってバタフライバルブ1が付勢されるバルブ全閉位置(O)の近傍または前後の所定のバルブ開度範囲内において、バタフライバルブ1がバルブ全閉位置(O)を通り越して開閉作動を複数回繰り返すように電動モータ9への電力の供給を継続するように構成されている。
ここで、バタフライバルブ1のバルブ全閉位置(O)とは、電動モータ9への電力の供給を停止した際に、リターンスプリング31の付勢力とデフォルトスプリング32の付勢力とが釣り合った中立位置のことである。
【0068】
そして、所定のバルブ開度範囲とは、図5に示したように、バルブ全閉位置(O)から開弁作動方向にバタフライバルブ1が開弁した状態を第1中間位置(A)とし、バルブ全閉位置(O)から閉弁作動方向にバタフライバルブ1が開弁した状態を第2中間位置(B)としたとき、第1中間位置(A)からバルブ全閉位置(O)を通り越して第2中間位置(B)に至るまでの、バルブ全閉位置(O)近傍に相当する回転角度範囲(バルブ全閉位置(O)を中心にして±2.5〜5.5°、望ましくは±3.0〜5.0°、最も望ましくは±3.5°)のことである。
【0069】
なお、第1中間位置(A)とは、図5に示したように、バルブ全閉位置(O)をθ=0°としたとき、このバルブ全閉位置(O)から開弁作動方向に微少開度(θ=+2.5〜+5.5°、望ましくはθ=+3.0〜+5.0°、最も望ましくはθ=+3.5°)だけ僅かに(少しだけ)開弁した中間位置(第1中間開度)の状態のことであって、電動モータ9の駆動トルクとリターンスプリング31の付勢力とが釣り合う第1中立位置のことである。また、第1中間位置(A)とは、バタフライバルブ1の作動方向を開弁作動方向から閉弁作動方向に反転させる第1反転位置のことである。
【0070】
そして、第2中間位置(B)とは、図5に示したように、バルブ全閉位置(O)をθ=0°としたとき、このバルブ全閉位置(O)から閉弁作動方向に微少開度(θ=−2.5〜−5.5°、望ましくはθ=−3.0〜−5.0°、最も望ましくはθ=−3.5°)だけ僅かに(少しだけ)開弁した中間位置(第2中間開度)の状態のことであって、電動モータ9の駆動トルクとデフォルトスプリング32の付勢力とが釣り合う第2中立位置のことである。また、第2中間位置(B)とは、バタフライバルブ1の作動方向を閉弁作動方向から開弁作動方向に反転させる第2反転位置のことである。
【0071】
ECUは、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、第1中間位置(A)、バルブ全閉位置(O)を通り越して第2中間位置(B)に到達した時点で、バタフライバルブ1の作動方向を反転させるように、電動モータ9への供給電力を可変制御する。具体的には、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、第2中間位置(B)に到達した時点で、電動モータ9の回転方向を反転させる。
【0072】
その後に、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、バルブ全閉位置(O)を通り越して第1中間位置(A)に到達した時点で、バタフライバルブ1の作動方向を反転させるように、電動モータ9への供給電力を可変制御する。具体的には、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、第1中間位置(A)に到達した時点で、電動モータ9の回転方向を反転させる。
【0073】
その後に、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、バルブ全閉位置(O)を通り越して第2中間位置(B)に到達した時点で、バタフライバルブ1の作動方向を反転させるように、電動モータ9への供給電力を可変制御する。具体的には、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、第2中間位置(B)に到達した時点で、電動モータ9の回転方向を反転させる。
以上のようなバルブ全閉位置(O)の近傍または前後の所定のバルブ開度範囲内におけるバルブ開閉制御を繰り返し実行する。
【0074】
ここで、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、第1中間位置(A)または第2中間位置(B)に到達する直前から、バタフライバルブ1の作動速度を第1中間位置(A)または第2中間位置(B)に向けて徐々に減速する減速制御を行っても良い。また、第1中間位置(A)からバルブ全閉位置(O)を経て第2中間位置(B)までバタフライバルブ1の作動速度を一定の速度に維持する定速制御を行っても良い。また、第2中間位置(B)からバルブ全閉位置(O)を経て第1中間位置(A)までバタフライバルブ1の作動速度を一定の速度に維持する定速制御を行っても良い。
【0075】
また、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、第1中間位置(A)(または第2中間位置(B))に到達した時点で、バタフライバルブ1の作動方向を開弁作動方向(または閉弁作動方向)から閉弁作動方向(または開弁作動方向)に反転させる間、電動モータ9の駆動トルクが一旦ゼロになるが、第1中間位置(A)(または第2中間位置(B))に到達する直前から、電動モータ9への供給電力(例えばモータ電流)を徐々に減少させて最終的に電動モータ9への供給電力(例えばモータ電流)をゼロにするようにすれば、EGR量センサによって検出されるバルブ位置(バルブ開度)が、第1中間位置(A)(または第2中間位置(B))に到達した直後に、電動モータ9への供給電力(例えばモータ電流)を再開して電動モータ9の回転方向を反転させることが可能となる。
【0076】
また、ECUは、エンジンの運転中におけるバタフライバルブ1を開閉作動させる開閉制御時に、所定のバルブ開度範囲内の第2中間位置(B)(バルブ位置)からバルブ全開位置(C)に至るまでの所定のバルブ制御範囲(B−O−A−C)内において、バタフライバルブ1を開閉作動させるように電動モータ9への供給電力を可変制御するように構成されている。また、ECUは、エンジン停止時(エンジンOFF時)に、電動モータ9への電力の供給を停止するように構成されている。
【0077】
本実施例のEGR制御弁においては、図6(b)および図7に示したように、シールリング自身の拡径方向の張力による伸びにより、バルブ全閉位置(O)の近傍(バルブ全閉位置の前後:例えば±2.5〜5.5°、あるいは±3.0〜5.0°、あるいは±3.5°程度)にEGRガス洩れ量(流体流量、流体洩れ量、EGR量:Q)の変化しない範囲(EGRガス洩れ量不感帯)がある。このため、ECUは、所定のバルブ開度範囲(A−O−B)を、EGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)内に設定している。本実施例では、EGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)自体が、所定のバルブ開度範囲(A−O−B)を成す。なお、所定のバルブ開度範囲(A−O−B)をEGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)よりも小さくしても良い。
【0078】
また、ECUは、バタフライバルブ1を全閉した全閉開度の状態をバルブ全閉位置(O)としてマイクロコンピュータのメモリに格納している。また、ECUは、EGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)のうちで、バルブ全閉位置(θ=0°)から開弁作動方向に僅かに(少しだけ)開弁した開弁側最大開度(不感帯最大開度)を第1中間位置(A)としてマイクロコンピュータのメモリに格納している。また、ECUは、EGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)のうちで、バルブ全閉位置(θ=0°)から閉弁作動方向に僅かに(少しだけ)開弁した閉弁側最大開度(不感帯最小開度)を第2中間位置(B)としてマイクロコンピュータのメモリに格納している。また、ECUは、バタフライバルブ1を全開した全開開度の状態をバルブ全開位置(C)としてメモリに格納している。なお、第2中間位置(B)からバルブ全開位置(C)に至るまでの回転角度範囲をバルブ制御範囲(B−O−A−C)としてメモリに格納している。また、第1中間位置(A)から第2中間位置(B)に至るまでの回転角度範囲を所定のバルブ開度範囲(A−O−B)としてメモリに格納している。
【0079】
コイルスプリング7は、ハウジング4の外壁部(ギヤハウジング14)と第3ギヤ43との間に装着されており、リターンスプリング31およびデフォルトスプリング32を有している。また、リターンスプリング31とデフォルトスプリング32とを結合する結合部には、エンジン停止時、あるいは電動モータ9への電力の供給を停止した時に、ハウジング4に捩じ込まれる全閉ストッパ部材35に保持されるU字フック部36が設けられている。リターンスプリング31は、第3ギヤ43に対して、バタフライバルブ1を、第1中間位置(A)からバルブ全閉位置(O)まで戻す方向に付勢すると共に、バルブ全開位置(C)からバルブ全閉位置(O)まで戻す方向(閉弁作動方向)に付勢する第1スプリングである。また、デフォルトスプリング32は、第3ギヤ43に対して、バタフライバルブ1を、バルブ全閉位置(O)を通り越した第2中間位置(B)からバルブ全閉位置(O)まで戻す方向(開弁作動方向)に付勢する第2スプリングである。
【0080】
[実施例1の特徴]
以上のように、排気ガス再循環装置に採用されたバルブ開閉制御装置においては、バタフライバルブ1の全閉制御時に、バルブ全閉位置(O)の近傍または前後の所定のバルブ開度範囲において、バタフライバルブ1がバルブ全閉位置(O)を通り越して開閉作動を複数回繰り返すように電動モータ9への電力の供給を継続することにより、電動モータ9の駆動トルクをバタフライバルブ1に伝達する歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43に電動モータ9の駆動トルクとコイルスプリング7の付勢力とが作用する。
【0081】
具体的には、バタフライバルブ1のバルブ位置がバルブ全閉位置(O)と第1中間位置(A)との間にある時は、3つの第1〜第3ギヤ41〜43に、電動モータ9のモータシャフト11に発生する(バタフライバルブ1を開弁作動方向に開弁駆動する)駆動トルクとリターンスプリング31の弾性変形に伴って発生する(バタフライバルブ1をバルブ全閉位置(O)に戻す方向に付勢する)付勢力とが作用する。また、バタフライバルブ1のバルブ位置がバルブ全閉位置(O)と第2中間位置(B)との間にある時は、3つの第1〜第3ギヤ41〜43に、電動モータ9のモータシャフト11に発生する(バタフライバルブ1を閉弁作動方向に閉弁駆動する)駆動トルクとデフォルトスプリング32の弾性変形に伴って発生する(バタフライバルブ1をバルブ全閉位置(O)に戻す方向に付勢する)付勢力とが作用する。
【0082】
これにより、比較例1と同様に、噛み合う2つのギヤのうちの一方のギヤの歯面が他方のギヤの歯面に押し付けられる。これによって、エンジン振動や車両振動による3つの第1〜第3ギヤ41〜43のガタ付きを抑制することができるので、歯車減速機構の構成要素を成す3つの第1〜第3ギヤ41〜43の歯面の異常摩耗を防止することができる。また、エンジン振動や車両振動による3つの第1〜第3ギヤ41〜43のガタ付きを抑制することができるので、歯打ち音の発生を抑えることができる。したがって、騒音の発生を防止することが可能となる。
【0083】
また、本実施例のEGR制御弁は、比較例1と同様に、バタフライバルブ1のシールリング溝2内に、C字状のシールリング3が嵌め込まれている。このようなシールリング3を備えたEGR制御弁においては、バルブ全閉位置(O)の近傍または前後にEGRガス洩れ量の変化しない範囲(EGRガス洩れ量不感帯)がある。このため、ECUは、所定のバルブ開度範囲を、EGRガス洩れ量不感帯の範囲(α°)内に設定している。
これによって、バタフライバルブ1の全閉制御時に、所定のバルブ開度範囲において、バタフライバルブ1がバルブ全閉位置(O)を通り越して開閉作動を複数回繰り返すように電動モータ9への電力の供給を継続した場合であっても、シールリング自体の拡径方向の張力によってバタフライバルブ1の外周端面15とノズル5のシート面27との間の隙間を完全にシールできる。したがって、バタフライバルブ1の全閉制御時におけるEGRガス洩れ量をゼロにまたは少なくすることができる。
【0084】
そして、第1中間位置(A)でリターンスプリング31の付勢力と釣り合う駆動トルクが電動モータ9のモータシャフト11に発生するように電動モータ9への供給電力を可変制御している。例えば電動モータ9に微少電流(開弁作動方向の電流小)を供給することにより、バタフライバルブ1の全閉制御時に、第1中間位置(A)を越えてバタフライバルブ1が開弁作動方向に開弁することはなく、バタフライバルブ1の全閉制御時におけるEGRガス洩れ量を少なくすることができる。
また、第2中間位置(B)でデフォルトスプリング32の付勢力と釣り合う駆動トルクが電動モータ9のモータシャフト11に発生するように電動モータ9への供給電力を可変制御している。例えば電動モータ9に微少電流(閉弁作動方向の電流小)を供給することにより、バタフライバルブ1の全閉制御時に、第2中間位置(B)を越えてバタフライバルブ1が閉弁作動方向に開弁することはなく、バタフライバルブ1の全閉制御時におけるEGRガス洩れ量をゼロにまたは少なくすることができる。
【0085】
また、バタフライバルブ1の全閉制御時に、所定のバルブ開度範囲(A−O−B)において、バタフライバルブ1がバルブ全閉位置(O)を通り越して開閉作動を複数回繰り返すことで、シールリング3の先端部で、ノズル5のシート面27に付着して堆積した排気ガス中の不純物(排気微粒子、以下デポジットと言う)を掻き落とすことができる。これにより、例えばエンジン停止後にデポジットがバタフライバルブ1やシールリング3に付着または堆積することによるシールリング3の固着または動作不良を防止することができる。したがって、エンジン始動時に、EGR制御弁のバタフライバルブ1を開閉作動させる際に、バタフライバルブ1を円滑に開閉作動させることができる。
【0086】
なお、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、バタフライバルブ1の制御目標値を先ず第2中間位置(B)に設定し、その後、EGR量センサによって検出されるバルブ開度が第2中間位置(B)に到達した時点で、バタフライバルブ1の制御目標値を第1中間位置(A)に更新し、その後、EGR量センサによって検出されるバルブ開度が第1中間位置(A)に到達した時点で、バタフライバルブ1の制御目標値を第2中間位置(B)に更新する。このような開閉制御を、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御期間中に実行しても良い。
この場合には、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、バタフライバルブ1が、所定のバルブ制御範囲(B−O−A−C)よりも大きい回転角度範囲内で開閉作動する。
【0087】
また、バタフライバルブ1を全閉した全閉開度の状態、すなわち、電動モータ9への電力の供給を停止した際にコイルスプリング7の付勢力によってバタフライバルブ1が付勢されるバルブ全閉位置(O)を制御上の全閉ポイント(θ=0°)としてマイクロコンピュータのメモリに格納しても良い。
この場合、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、バタフライバルブ1の制御目標値を先ず第2中間位置(B)に設定し、その後、EGR量センサによって検出されるバルブ開度が制御上の全閉ポイント(θ=0°)を通り越した時点で、バタフライバルブ1の制御目標値を第1中間位置(A)に更新し、その後、EGR量センサによって検出されるバルブ開度が制御上の全閉ポイント(θ=0°)を通り越した時点で、バタフライバルブ1の制御目標値を第2中間位置(B)に更新する。
この場合には、エンジン運転中におけるバタフライバルブ1の全閉制御時に、バタフライバルブ1が、所定のバルブ制御範囲(B−O−A−C)よりも小さい回転角度範囲内で開閉作動する。
【0088】
[変形例]
本実施例では、ハウジング4のノズル嵌合部23の内周に円筒状のノズル5を嵌合保持し、更にノズル5の内部にバタフライバルブ1を開閉自在に収容しているが、ハウジング4の内部に直接バタフライバルブ1を開閉自在に収容しても良い。この場合には、ノズル5は不要となり、部品点数や組付工数を削減できる。
なお、バタフライバルブ1の外周端面15にシールリング溝(環状溝)2を設けなくても良い。また、バタフライバルブ1の外周端面15にシールリング3を装着しなくても良い。この場合には、シールリング3は不要となり、部品点数や組付工数を削減できる。
【0089】
本実施例では、ハウジングを、排気ガス再循環装置の排気ガス還流管の途中に接続し、排気ガス還流管の一部を成すハウジング(バルブハウジング)4によって構成しているが、ハウジングを、吸気管の一部または排気管の一部を成すハウジングによって構成しても良い。
また、本実施例では、エンジンの運転状態に対応して排気ガス還流量(EGR量)を可変制御するEGR制御弁のバタフライバルブ1を、バルブシャフト13の軸線方向の一端側(先端側)に例えば溶接等の固定手段を用いて保持固定しているが、そのバタフライバルブ1を、バルブシャフト13の軸線方向の一端側(先端側)または中央部に締結用ネジや固定用ボルト等のスクリューを用いて締め付け固定しても良い。
【0090】
本実施例では、EGR制御弁のバタフライバルブ1を開弁駆動または閉弁駆動するバルブ駆動装置を、電動モータ9と例えば歯車減速機構等の動力伝達機構とを備えた電動式アクチュエータによって構成したが、バルブを開弁駆動または閉弁駆動するバルブ駆動装置を、電磁式または電動式負圧制御弁を備えた負圧作動式アクチュエータや、電磁式流体制御弁等の電磁式アクチュエータによって構成しても良い。
また、ハウジングとバルブとを備えた流体流量制御弁として、本実施例のEGR制御弁の代わりに、エンジンの燃焼室内に吸入される吸入空気量を制御するスロットルバルブ等の吸気制御弁、エンジンの燃焼室内より排出される排気ガス量を制御する排気制御弁、スロットルバルブをバイパスする吸入空気量を制御するアイドル回転速度制御弁等に適用しても良い。
【0091】
本実施例では、本発明のバルブ開閉制御装置を、EGRガス(高温流体)等の流体の流量を制御する内燃機関用流量制御装置(排気ガス再循環装置)に適用しているが、このような内燃機関用流量制御装置に限定する必要はない。すなわち、ハウジングとバルブとを備えた流体制御弁として、流体流路開閉弁、流体流路切替弁、流体圧力制御弁に適用しても良い。
また、本発明の流体制御弁を、タンブル流制御弁やスワール流制御弁等の吸気流制御弁、吸気通路の通路長や通路断面積を変更する吸気可変弁等に適用しても良い。また、内燃機関として、ターボ過給機付エンジンを採用しているが、内燃機関として、ターボチャージャーやスーパーチャージャー等の過給機を搭載しないタイプの内燃機関を用いても良い。また、内燃機関として、ガソリンエンジンを用いても良い。
【0092】
本実施例では、ハウジング4の流路壁面の一部に、シールリング3の摺動面16が摺動接触するシート面(当接面)27を設けているが、シールリング溝2およびシールリング3を廃止して、ハウジング4の流路壁面の一部に、バタフライバルブ1の外周端面15等の摺動面が摺動接触する当接面を設けても良い。また、本実施例では、バルブとして、バタフライバルブ1を用いているが、バルブとして、片開き式の回転型バルブ、ロータリー型のバルブ、ポペット型のバルブ、シャッター式のバルブ、一辺のみ支持されたドア型のバルブに適用しても良い。
【0093】
本実施例では、バルブを閉弁作動方向(特に少なくとも第1中間位置からバルブを全閉位置に戻す方向)に付勢するバルブ付勢手段(リターンスプリング)、及びバルブを開弁弁作動方向(特に少なくとも第2中間位置からバルブを全閉位置に戻す方向)に付勢するバルブ付勢手段(デフォルトスプリング)として、リターンスプリング31とデフォルトスプリング32とを一体化したコイルスプリング7を採用しているが、バルブ付勢手段(リターンスプリング及びデフォルトスプリング)として、トーションスプリング、二重コイルバネ、不等ピッチコイルバネ、ゴム系の弾性体を用いても良い。また、バルブを全閉した状態をバルブ全閉位置とし、バルブを全開した状態をバルブ全開位置とし、バルブを全閉位置から開弁作動方向に僅かに(少しだけ)開弁した、つまり半開きした中間開度の状態を中間位置(第1、第2中間位置)としても良い。
【0094】
本実施例では、コイルスプリング7のU字フック部36が、ハウジング4のギヤハウジング14に捩じ込まれる全閉ストッパ部材(全閉開度調整用スクリュー)35に保持される位置をバルブ全閉位置としているが、ハウジング4のギヤハウジング14からの全閉ストッパ部材35の突出量を微調整することでバルブ全閉位置を変更しても良い。
また、内燃機関の運転を停止した際に、バルブがバルブ付勢手段(リターンスプリング、デフォルトスプリング)により付勢される全閉位置にて全閉しているバルブ全閉時、排気ガス還流路(流体流路)6の軸線方向(流体流路内を流れる流体の平均的な流れの軸線方向)に垂直な垂線に対して開弁作動方向または閉弁作動方向に所定の回転角度(全閉角、傾斜角度分)だけ若干傾くようにバルブが配置されるようにバルブ付勢手段(2つの第1、第2スプリング等)の付勢力を調節しても良い。このとき、比較例1、実施例1のように、バルブの全閉位置を、流体洩れ量不感帯の範囲(α°)内に設定することで、バルブ全閉時における流体洩れ量をゼロにまたは少なくすることができる。
【0095】
本実施例では、3つの第1〜第3ギヤ41〜43を用いて電動モータ9のモータシャフト11の回転速度を所定の減速比となるように2段減速し、電動モータ9の回転トルクを増大させてバタフライバルブ1のバルブシャフト13を駆動する歯車減速機構を構成しているが、動力伝達機構として、モータのモータ軸に固定されたウォームギヤ、およびこのウォームギヤと噛み合って回転するヘリカルギヤ等によって歯車減速機構を構成しても良い。
また、歯車減速機構のうちの最終ギヤとしてピニオンギヤを使用し、バルブのバルブ軸にピニオンギヤと噛み合うラック歯を設けたラックアンドピニオン機構(回転運動から直線運動に変換する運動方向変換機構)を備えた動力伝達機構を使用しても良い。
また、中間シャフト12をハウジング4に対して相対回転可能となるようにハウジング4に中間シャフト12を回転自在に軸支しても良い。この場合には、第2ギヤ42を中間シャフト12に固定しても良い。
また、歯車減速機構等の動力伝達機構を2つの第1、第2ギヤ(第1、第2回転体)によって構成しても良く、また、歯車減速機構等の動力伝達機構を4つ以上のギヤによって構成しても良い。
【符号の説明】
【0096】
1 バタフライバルブ(EGR制御弁の弁体、バルブ)
2 シールリング溝(環状溝)
3 シールリング
4 ハウジング(EGR制御弁のバルブハウジング)
5 ノズル(円筒部)
6 排気ガス還流路(流体流路)
7 コイルスプリング(バルブ付勢手段)
9 電動モータ(動力源)
11 モータシャフト(電動モータのモータ軸)
12 中間シャフト(歯車減速機構の中間減速ギヤ軸)
13 バルブシャフト(バタフライバルブのバルブ軸)
14 ギヤハウジング
15 バタフライバルブの外周端面
31 リターンスプリング(第1バルブ付勢手段、第1スプリング)
32 デフォルトスプリング(第2バルブ付勢手段、第2スプリング)
41 動力伝達機構(歯車減速機構)の第1ギヤ(モータギヤ、ピニオンギヤ)
42 動力伝達機構(歯車減速機構)の第2ギヤ(中間減速ギヤ)
43 動力伝達機構(歯車減速機構)の第3ギヤ(バルブギヤ、最終ギヤ)
56 EGR量センサ(バルブ位置検出手段)のホールIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内燃機関の燃焼室に連通する流体流路を開閉するバルブと、
(b)このバルブを開弁作動方向または閉弁作動方向に駆動するモータと、
(c)このモータの駆動力を前記バルブに伝達する複数のギヤと、
(d)前記バルブを閉弁作動方向に付勢するリターンスプリングと、
(e)前記バルブを開弁作動方向に付勢するデフォルトスプリングと、
(f)前記バルブを全閉作動させる全閉制御時に、
前記モータへの電力の供給を停止した際に前記リターンスプリングまたは前記デフォルトスプリングの付勢力によって前記バルブが付勢される全閉位置の近傍または前後の所定範囲において、前記バルブが前記全閉位置を通り越して開閉作動を繰り返すように前記モータへの供給電力を可変制御するモータ制御手段と
を備えたバルブ開閉制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ開閉制御装置において、
前記モータ制御手段は、前記全閉位置の近傍または前後の所定範囲内のバルブ位置から、前記バルブを全開する全開位置に至るまでの範囲を、前記モータへの供給電力を可変制御して前記バルブを開弁駆動または閉弁駆動させることが可能なバルブ制御範囲としていることを特徴とするバルブ開閉制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバルブ開閉制御装置において、
前記全閉位置の近傍または前後の所定範囲とは、前記全閉位置から開弁作動方向に前記バルブが開弁した状態を第1中間位置とし、前記全閉位置から閉弁作動方向に前記バルブが開弁した状態を第2中間位置としたとき、前記第1中間位置から前記全閉位置を通り越して前記第2中間位置に至るまでの範囲であることを特徴とするバルブ開閉制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のバルブ開閉制御装置において、
前記バルブの現在位置を検出するバルブ位置検出手段を備え、
前記モータ制御手段は、前記バルブを全閉作動させる全閉制御時に、
前記バルブ位置検出手段によって検出されるバルブ位置が前記第1中間位置を通り越して前記第2中間位置に到達した時点で、前記バルブの作動方向を反転させるように前記モータへの供給電力を可変制御し、
その後、前記バルブ位置検出手段によって検出されるバルブ位置が前記第1中間位置および前記第2中間位置に到達する毎に、前記バルブの作動方向を反転させるように前記モータへの供給電力を可変制御することを特徴とするバルブ開閉制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載のバルブ開閉制御装置において、 前記モータ制御手段は、前記内燃機関の運転中に、前記バルブを全閉作動させる全閉制御を実行することを特徴とするバルブ開閉制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のバルブ開閉制御装置において、 前記複数のギヤは、前記バルブと一体的に回転動作を行うバルブギヤを有し、
前記リターンスプリングは、前記バルブギヤまたは前記バルブに対して、前記バルブを前記全閉位置に戻す方向に荷重を与える第1バルブ付勢手段を有し、
前記デフォルトスプリングは、前記バルブギヤまたは前記バルブに対して、前記バルブを前記全閉位置に戻す方向に荷重を与える第2バルブ付勢手段を有していることを特徴とするバルブ開閉制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のバルブ開閉制御装置において、
前記全閉位置から開弁作動方向に前記バルブが開弁した状態を第1中間位置とし、前記全閉位置から閉弁作動方向に前記バルブが開弁した状態を第2中間位置としたとき、
前記第1バルブ付勢手段は、少なくとも前記第1中間位置から前記バルブを前記全閉位置に戻す方向に荷重を与える第1スプリングであって、
前記第2バルブ付勢手段は、少なくとも前記第2中間位置から前記バルブを前記全閉位置に戻す方向に荷重を与える第2スプリングであることを特徴とするバルブ開閉制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のバルブ開閉制御装置において、
前記第1中間位置とは、前記モータの駆動力と前記第1スプリングの付勢力とが釣り合う第1中立位置であって、
前記第2中間位置とは、前記モータの駆動力と前記第2スプリングの付勢力とが釣り合う第2中立位置であって、
前記モータ制御手段は、前記第1中立位置で前記第1スプリングの付勢力と釣り合う駆動力が前記モータのモータ軸に発生するように前記モータへの供給電力を可変制御すると共に、前記第2中立位置で前記第2スプリングの付勢力と釣り合う駆動力が前記モータのモータ軸に発生するように前記モータへの供給電力を可変制御することを特徴とするバルブ開閉制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載のバルブ開閉制御装置において、 内部に前記流体流路を形成するハウジングと、
前記バルブを全閉作動させる全閉制御時に、前記全閉位置の近傍または前後で、前記ハウジングの流路壁面と前記バルブの外周端面との間の隙間をシールするシールリングと
を備え、
前記バルブは、この外周端面全周に、前記シールリングを装着する環状溝を有していることを特徴とするバルブ開閉制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載のバルブ開閉制御装置において、
前記バルブは、前記ハウジングおよび前記シールリングを伴って、前記内燃機関の燃焼室に供給する流体流量を制御する流体制御弁を構成し、
前記流体制御弁は、前記全閉位置の近傍または前後に流体洩れ量が変化しない不感帯を有し、
前記全閉位置の近傍または前後の所定範囲は、前記不感帯の範囲内に設けられることを特徴とするバルブ開閉制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−242972(P2010−242972A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135697(P2010−135697)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【分割の表示】特願2006−109715(P2006−109715)の分割
【原出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】