説明

バンパーセンサ

【課題】バンパーの形状変化を2次元または3次元で捉えられ、接触物体の大きさなどを検知でき、簡単なシステム構成とすることができるバンパーセンサを提供する。
【解決手段】自動車車両用のバンパー本体10の表層部分または表面にセンサ部SPを有する光ファイバ(20a,20b)が複数本配置されて、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部がバンパー本体の表面を構成する面において2次元的に複数箇所配置され、光ファイバの入射端に対する入射光を出射する光源11と、センサ部を介して光ファイバの出射端から出射される光を検出する受光部13を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバンパーセンサに関し、特に、自動車車両に対する衝撃で生じるバンパーの変形などを検知するバンパーに備えられたセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバセンサは、例えば埋め込み可能という特徴を有しており、この特徴を活かして、複合材料の構造健全性をモニタリングするのに光ファイバセンサを用いた測定方法が開発されている。
上記のような光ファイバセンサを用いて、自動車車両のバンパーに対する衝撃でバンパーに生じる変形などを検出する方法が開発されている。
【0003】
特許文献1には、車両の全部に光漏洩性ファイバを設け、この漏洩性ファイバの一端に入射する投光ユニットを設け、もう一端に受光ユニットを設けて、車両の衝突を検知するバンパーセンサが開示されている。
車両の衝突が発生すると、ファイバ伝送路が破断し、あるいは圧縮または変形するため、ファイバの漏洩量が変化し、それを受光ユニットで検知できる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載のバンパーセンサでは、ファイバ伝送路の破断や漏洩量の増大により衝突を検知するのみであり、バンパーの2次元または3次元の形状変化を検知することができない。
【0005】
また、特許文献2には、車両のバンパーに光ファイバを取り付け、入射光としてレーザダイオード(LD)から所定の周波数の変調光を光ファイバに送り、光ファイバを通過してフォトダイオード(PD)で受光される出射光との位相差をベクトル電圧信号としてベクトル電圧計で検出して、衝突物の種類を検知できる衝突物識別装置が開示されている。
車両と衝突物との衝突によるバンパーの変形に伴い、光ファイバに生じる伸びまたは縮みの量に応じてベクトル電圧信号がトリガレベルからスレッショルドにまで達する所要時間を計測し、この所要時間に適合する対象物を予め対応付けられた対象識別テーブルから抽出して対象物を識別する。
【0006】
しかし、特許文献2に記載の衝突物識別装置では、対象物を識別するために、硬さの異なるものが車両に衝突したときに変形速度が異なる点に着目して、光ファイバを用いてバンパーの変形速度を算出するが、このために、衝突時の走行速度や所要時間を測るために光ファイバの入射光/出射光の位相差を検出する必要があり、受光部、ベクトル電圧計とデータ処理部や速度計などが必要となってシステムが煩雑になってしまうという問題がある。
【0007】
また、上記の光ファイバセンサに関して、いわゆるヘテロコア部をセンサとして用いる構成が特許文献3および特許文献4に記載されている。
しかし、特許文献3および特許文献4に記載の構成では、3次元物体の形状などを計測することはできない。
【特許文献1】特開平7−190732号公報
【特許文献2】特開2004−322760号公報
【特許文献3】国際公開97/48994号パンフレット
【特許文献4】特開2003−214906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、バンパーの2次元または3次元の形状変化を検知することや、バンパーへの衝突物を簡単な構成で識別することが困難であるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバンパーセンサは、自動車車両用のバンパー本体と、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部を有し、当該センサ部が前記バンパー本体の表面を構成する面及び/または前記バンパー本体内部において、複数箇所配置されるように、前記バンパー本体の表層部分に埋め込まれ、あるいは当該表面上に、及び/または前記バンパー本体内部に埋め込まれて、設けられた複数本の光ファイバと、前記光ファイバの入射端に対する入射光を出射する光源と、前記センサ部を介して前記光ファイバの出射端から出射される光を検出する受光部とを有する。
【0010】
上記の本発明のバンパーセンサは、自動車車両用のバンパー本体の表層部分または表面及び/または内部に、センサ部を有する光ファイバが複数本配置されて、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部がバンパー本体の表面を構成する面及び/またはバンパー本体内部において複数箇所配置されている。
さらに、光ファイバの入射端に対する入射光を出射する光源と、センサ部を介して光ファイバの出射端から出射される光を検出する受光部を備える。
【0011】
上記の本発明のバンパーセンサは、好適には、前記センサ部は、前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部であり、前記光ファイバの中途部に接合されてなる構成である。
あるいは好適には、前記センサ部は、前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材が前記光ファイバの中途部に接合されてなる構成である。
【0012】
上記の本発明のバンパーセンサは、好適には、前記センサ部は、前記バンパー本体の表面を構成する複数の曲面あるいは平面において2次元または3次元的に複数箇所配置されている。
【0013】
上記の本発明のバンパーセンサは、好適には、前記光ファイバは、前記バンパー本体の表面を構成する面において第1の方向に沿って配置された第1系統と、前記第1の方向と異なる第2の方向に沿って配置された第2系統を有する。
また、好適には、前記光ファイバは、前記バンパー本体の表面を構成する面において異なる3以上の方向に沿って配置されている。
【0014】
上記の本発明のバンパーセンサは、好適には、前記センサ部は、前記バンパー本体の表面を構成する面において第1の密度で配置された第1領域と、前記第1の密度と異なる第2の密度で配置された第2領域を有する。
【0015】
上記の本発明のバンパーセンサは、好適には、前記光源からの光を複数に分岐して前記複数本の光ファイバの一本毎に切り替えて入射する光切替え器あるいは前記複数本の光ファイバのそれぞれに入射する光分岐器をさらに有する。
また、好適には、前記受光部が前記複数本の光ファイバの出射端から出射される光を順次あるいは同時に測定する受光素子列である。
またさらに好適には、前記センサ部が、前記バンパー本体の形状変化を検知する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバンパーセンサは、光ファイバに設けられたヘテロコア構造のセンサ部によりバンパーへの物体の接触を素早く検知し、光ファイバを重ねて多点にセンサ部を敷設することでバンパーの形状及びその変化を2次元または3次元で捉えることができ、接触物体の大きさなどを検知することができ、また、光強度のみで処理を行うので、発光素子と受光素子の組み合わせで入出力部を構成でき、簡単なシステム構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明のバンパーセンサの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1(a)は本実施形態に係るバンパーセンサを備えた自動車車両の模式図であり、自動車車両本体Aのフロント部及びリア部にバンパーBが備えられている。
【0019】
図1(b)は上記のバンパーセンサの構成を示す模式図である。
本実施形態に係るバンパーセンサは、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備えた複数本の光ファイバ(20a,20b)がバンパー本体10の表層部分に埋め込まれ、あるいは表面上に、及び/又はバンパー本体内部に埋め込まれて、設けられている。光ファイバ(20a,20b)は、例えばコア径9μmのシングルモードファイバである。
光ファイバ20aと光ファイバ20bの間には、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部SPが設けられており、このセンサ部SPが、ウレタンフォームなどの柔軟な素材からなり、バンパー形状に成形されたバンパー本体10の表面を構成する面及び/またはバンパー本体10の内部において、例えば1次元、2次元的、または3次元的に複数箇所配置されている。
【0020】
また、光ファイバの入射端に対する入射光を出射する発光ダイオード(LED)あるいはレーザダイオード(LD)などの光源11を有する。1つの光源11と複数本の光ファイバの光結合は、例えば光切替え器(光スイッチ)あるいは光分岐器(光カプラ)12により行う。光切替え器は光源11からの光を複数に分岐して複数本の光ファイバ20aの一本毎に切り替えて入射し、光分岐器は光源11からの光を複数に分岐して複数本の光ファイバのそれぞれに入射する。
また、センサ部SPを介して光ファイバ20bの出射端から出射される光を検出する受光部13を有する。受光部13は、例えばフォトダイオードからなり、複数本の光ファイバ20bの出射端から出射される光を順次あるいは同時に測定するラインセンサなどの受光素子列であることが好ましい。
【0021】
さらに、本実施形態に係るバンパーセンサは信号処理部14を有する。
信号処理部14は、受光部13から出力される光信号に対して電流−電圧変換などの信号処理を行い、画像データなどの所定のデータを生成し、得られたデータに必要な信号処理を行うことで、バンパーの表面の変形や外界からの圧力などを検知することができる。また、これらのデータを不図示の出力ポートから画像表示部などに出力する。
【0022】
光ファイバ(20a,20b)は、その中途部、即ち、光入射側の光ファイバ20aと光出射側の光ファイバ20bの間にセンサ部SP有する。
図2(a)は、センサ部SPの構成の一例を示すための、光ファイバ(20a,20b)のセンサ部SP近傍での斜視図であり、図2(b)はセンサ部SP近傍での長手方向の断面図である。
光ファイバ(20a,20b)は、コア21と、その外周部に設けられたクラッド22とを有する。光切替え器または光分岐器12からの光は、光入射端側からコア21に入射され、センサ部SPを介して光出射端側のコア21から受光部へと出射される。
【0023】
図2(a)および(b)に示すセンサ部SPは、光ファイバ(20a,20b)のコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部3であり、コア31と、その外周部に設けられたクラッド32とを有する。
ヘテロコア部3におけるコア31の径blは、光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alより小さく、例えばal=9μm、bl=5μmである。また、ヘテロコア部3の長さclは数mm〜数cmであり、例えば1mm程度である。
光ファイバ(20a,20b)とセンサ部SPを構成するヘテロコア部3は、長手方向に直交する界面4でコア同士が接合するようにほぼ同軸に、例えば汎用化されている放電による融着などにより、接合されている。
【0024】
図2(a)および(b)に示すように、光ファイバ(20a,20b)の中途部にセンサ部SPが接合されてなる構成において、ヘテロコア部3におけるコア31の径blと光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alとが界面4で異なっており、このコア径の差に起因して光の一部がヘテロコア部3のクラッド32にリークWする。リークWを小さくするように、コア21とコア31の径の組み合わせをすると大部分の光は再び光ファイバ21に入射し、伝送される。このとき、センサの挿入損失は小さく、また、リークWの程度は屈曲などの外界の変化により、鋭敏に変化する。また、コア21とコア31の径の組み合わせによっては、リークWを極度に大きくすることもできる。この場合、多くのリークWの光がクラッド32と外界との境界面においてエバネッセント波を発生させ、外界に作用させ変化を感受することができる。
【0025】
上記のようにリークした光は、センサ部SPにおける光ファイバの屈曲の度合いに応じて変化するので、外界と相互作用した結果生じた変化を検知することで、センサ部SPを複数箇所配置することにより、バンパー本体10の外界からの圧力分布、形状およびそれらの変化を検知することができる。即ち、ヘテロコア部などのセンサ部SPに歪みなどの変動が与えられると、ヘテロコア部に入った光がクラッドに漏れ出て、受光部で受光される光の量に損失(変化)が生じ、これを検出することでバンパー本体10の歪みなどを検出できる。例えば図2(a)に示すように、光ファイバ(20a,20b)の延伸方向DRに沿ったバンパー本体10の外界からの圧力分布、形状およびそれらの変化を検知する。
【0026】
センサ部SPとしては、他の構成を採用することも可能である。
図3(a)及び(b)は、センサ部SPの構成の一例を示すための、光ファイバ(20a,20b)のセンサ部SP近傍での長手方向の断面図である。
図3(a)では、センサ部SPを構成するヘテロコア部3のコア31の径blが、光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alよりも大きな構成となっている。
図3(b)に示すように、ヘテロコア部の代わりに、センサ部SPは、光ファイバ(20a,20b)のコア21の屈折率あるいはクラッド22の屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材30が光ファイバ(20a,20b)の中途部に接合されてなる構成とすることもできる。
【0027】
本実施形態におけるバンパーセンサにおいて、外界からの衝突物によって圧力が印加され、バンパー本体の表面が変形すると、複数箇所配置されたセンサ部を有する光ファイバも変形する。
ここで、上記のように光源11からの光を各光ファイバ20aに入射させ、センサ部SPで外界と相互作用した光を各光ファイバ20bから出射させて、これを受光部13で受光し、受光部13から出力される光信号を信号処理部14において処理して画像データなどのデータを形成し、得られたデータに必要な信号処理を行うことで、バンパーの表面の変形や外界からの圧力などを検知することができる。また、これらのデータを不図示の出力ポートから画像表示部などに出力してもよい。
【0028】
本実施形態に係るバンパーセンサにおいて、センサ部SPは、バンパー本体10の表面を構成する複数の曲面あるいは平面において、2次元または3次元的に複数箇所配置されていることが好ましい。
例えば、所定の立体形状を有するバンパーの表面は、様々な平面及び曲面から構成され、これらの複数の面における変形や外界からの圧力などを解析することで、より詳細にバンパー全体の形状及びその変化を2次元または3次元で捉えることができ、接触物体の大きさなどを検知することが可能となる。
【0029】
また、上記のように中途部にセンサ部SPを設けた光ファイバ(20a,20b)は、光ファイバ(20a,20b)の延伸方向DRに沿ったバンパー本体10の外界からの圧力分布、形状およびそれらの変化を検出できるが、これと異なる方向に沿った圧力分布や形状変化などは検出できない場合がある。
そこで、光ファイバは、バンパー本体の表面を構成する面において第1の方向に沿って配置された第1系統と、第1の方向と異なる第2の方向に沿って配置された第2系統を有することが好ましい。
【0030】
図4(a)および(b)は上記の複数の系統を有する場合の光ファイバとセンサ部の配置構成を示す模式図である。
図4(a)は、第1の方向DRXに延伸する第1系統(x1,x2,・・・)と、第1の方向DRXと略直交する第2の方向DRyに延伸する第2系統(y1,y2,・・・)とを有し、これらの各系統の交差する位置(A11,A12,A21,A22・・)のそれぞれに、第1系統および第2系統の両者ともにセンサ部SPが設けられている構成である。
また、図4(b)は、略直交する第1系統(x1,x2,・・・)と第2系統(y1,y2,・・・)とを有し、これらの各系統の交差する位置(A11,A12,A21,A22・・)において、第1系統および第2系統とで交互にセンサ部SPが設けられている構成である。即ち、例えば位置(A11,A22・・)には第1系統の光ファイバにセンサ部が設けられ、位置(A12,A21・・)には第2系統の光ファイバにセンサ部が設けられている。
さらに、上記のパターン以外のパターンに沿ってセンサ部が設けられていてもよい。
なお、図1(b)においても第1系統とこれに略直交する第2系統とを有する構成について示しているが、光ファイバ(20a,20b)などの図示は一方の系統についてのみ示し、他方の系統については省略している。
【0031】
上記のように、光ファイバが第1の方向に沿って配置された第1系統と、第1の方向と異なる第2の方向に沿って配置された第2系統を有することで、複数の方向に沿った圧力分布や形状変化などを検出でき、より精密にバンパーの形状及びその変化を2次元または3次元で捉えることができ、接触物体の大きさなどを検知することができる。
【0032】
また、前記光ファイバは、前記バンパー本体の表面を構成する面において、異なる3以上の方向に沿って配置されていることが好ましい。
【0033】
図5は上記のように異なる3以上の方向(図面上は4の方向)に沿って配置されている場合の光ファイバとセンサ部の配置構成を示す模式図である。
図5は、第1の方向DRXに延伸する第1系統(x・・・)と、第1の方向DRXと略直交する第2の方向DRyに延伸する第2系統(y・・・)と、第1の方向DRX及び第2の方向DRyと45°の角度で交差する第3の方向DRαに延伸する第3系統(α・・・)と、第1の方向DRXと略直交する第2の方向DRyと45°の角度で交差し、第3の方向DRαと直行する第4の方向DRβに延伸する第4系統(β・・・)とを有し、これらの各系統の交差する位置(A・・)に、第1系統、第2系統、第3系統及び第4系統の全てにおいてセンサ部SPが設けられている構成である。この構成では、第1系統、第2系統、第3系統及び第4系統の信号をそれぞれ解析することで、センサが設けられた位置における第1〜第4の方向のそれぞれに対するバンパーの変形を捉えることが可能である。
好ましくは、例えば上記のような構成のセンサ部がバンパー本体の表面全体に設けられている。
あるいはまた、上記の第1系統、第2系統、第3系統及び第4系統の各系統センサが重ならないようにして、バンパー本体の表面上に配置されていてもよい。
【0034】
上記のように、光ファイバが異なる3以上の方向に沿って配置されていることで、光ファイバが配置された3以上のそれぞれの方向に沿った圧力分布や形状変化などを検出でき、より精密にバンパーの形状及びその変化を2次元または3次元で捉えることができ、接触物体の大きさなどを検知することができる。
【0035】
また、センサ部は、バンパー本体の表面を構成する面において第1の密度で配置された第1領域と、第1の密度と異なる第2の密度で配置された第2領域を有することが好ましい。
図6(a)および(b)は上記のセンサ部の配置の密度が異なる第1領域および第2領域の配置構成を示す模式図である。
図6(a)は、第1領域において、第1の方向DRXに延伸する第1系統(x1,x2,・・・)と、第1の方向DRXと略直交する第2の方向DRyに延伸する第2系統(y1,y2,・・・)とを有し、これらの各系統の交差する位置(A11,A12,A21,A22・・)に第1の密度でセンサ部SPが設けられている構成であり、図6(b)は、第1の方向DRXに延伸する第1系統(X1,X2,・・・)と、第1の方向DRXと略直交する第2の方向DRyに延伸する第2系統(Y1,Y2,・・・)とを有する第2領域において、第1の密度よりも低い第2の密度でセンサ部SPが設けられている構成である。
さらに、密度が連続的に変化するパターンに沿ってセンサ部が設けられていてもよい。
【0036】
上記のように、センサ部が第1の密度で配置された第1領域と、第1の密度と異なる第2の密度で配置された第2領域とを有することで、バンパーの構造変化をしやすい領域や重要性の高い領域に高密度にセンサ部を設け、構造変化をしにくい領域や重要性の低い領域を低密度にセンサ部を配置することで、より効率よく必要なデータを取得することができる。
【0037】
本実施形態のバンパーセンサによれば、複数箇所分布したセンサ部において各センサ部での光の損失量(変化量)の分布を実時間で計測できることから、バンパーの形状とその変形、並びに損傷状態などをリアルタイムにモニターすることができる。
また、光ファイバセンサをバンパーの表面または内側に2次元的に角度を持たせて複数配置することにより、バンパーに接触した物体の大きさやその後にバンパーに与えられた変形方向、変形量を同時に検知できる。
【0038】
また、上記のようにしてバンパーに接触した物体の大きさや、その後にバンパーに与えられた変形方向や変形量を検知し、衝撃が所定値以上であった場合などに、当該自動車車両の乗員の安全を確保するような動作を組み込むことができる。例えば、エアバッグを膨張させることができる。
【0039】
上記の本実施形態のバンパーセンサによれば、計測するための発光素子と受光素子との組み合わせで、波長依存性や偏光性などを扱わずに光強度のみで計測できるため、計測システムが簡易で安価になる。
また、光源としては安価なレーザダイオードや発光ダイオードなどの発光素子を用いることができ、受光部としても安価なフォトダイオードなどを用いることができ、さらにセンサ部も融着などにより簡単に形成することができるので、簡便かつ安価なシステムを構築することができる。
【0040】
また、ヘテロコア型光ファイバセンサはシングルモードファイバを使用したセンサであるので、リファレンス光を取らずに安定した計測が可能である。このため、2次元または3次元的に配置するとしても、光ファイバ線路はセンサの数だけとなり、受光素子の煩雑さの負担も軽減できる。
また、しなやかな特性を有する光ファイバを用いているので、様々な平面及び曲面を有するバンパーの表面にも適切に敷設することができる。
【0041】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、上記の実施形態において、センサ部としては、図面上バンパーの表面に敷設されているが、この他、バンパー本体の内部に埋め込まれて設けられている構成とすることもできる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のバンパーセンサは、衝撃を与える対象物を識別可能な自動車車両のバンパーとして適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1(a)は本発明の実施形態に係るバンパーセンサを備えた自動車車両の模式図であり、図1(b)は本発明の実施形態に係るバンパーセンサの構成を示す模式図である。
【図2】図2(a)は、センサ部の構成の一例を示すための、光ファイバのセンサ部SP近傍での斜視図であり、図2(b)はセンサ部近傍での長手方向の断面図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、センサ部の構成の一例を示すための、光ファイバのセンサ部近傍での長手方向の断面図である。
【図4】図4(a)および(b)は本発明の実施形態に係る複数の系統を有する場合の光ファイバとセンサ部の配置構成を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の実施形態に係る3以上の方向に延伸する系統を有する場合の光ファイバとセンサ部の配置構成を示す模式図である。
【図6】図6(a)および(b)は本発明の実施形態に係るセンサ部の配置の密度が異なる第1領域および第2領域の配置構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
3…ヘテロコア部
4…界面
10…バンパー本体
11…光源
12…光切替え器あるいは光分岐器
13…受光部
14…信号処理部
20a,20b…光ファイバ
21,31…コア
22,32…クラッド
30…光透過部材
A…自動車車両本体
B…バンパー
SP…センサ部
DR…延伸方向
DRx…第1の方向
DRy…第2の方向
DRα…第3の方向
DRβ…第4の方向
W…リーク光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車車両用のバンパー本体と、
コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部を有し、当該センサ部が前記バンパー本体の表面を構成する面及び/または前記バンパー本体の内部において複数箇所配置されるように、前記バンパー本体の表層部分に埋め込まれ、あるいは当該表面上に、及び/または前記バンパー本体内部に埋め込まれて、設けられた複数本の光ファイバと、
前記光ファイバの入射端に対する入射光を出射する光源と、
前記センサ部を介して前記光ファイバの出射端から出射される光を検出する受光部と
を有するバンパーセンサ。
【請求項2】
前記センサ部は、前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部であり、前記光ファイバの中途部に接合されてなる構成である
請求項1に記載のバンパーセンサ。
【請求項3】
前記センサ部は、前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材が前記光ファイバの中途部に接合されてなる構成である
請求項1に記載のバンパーセンサ。
【請求項4】
前記センサ部は、前記バンパー本体の表面を構成する複数の曲面あるいは平面において2次元または3次元的に複数箇所配置されている
請求項1〜3のいずれかに記載のバンパーセンサ。
【請求項5】
前記光ファイバは、前記バンパー本体の表面を構成する面において第1の方向に沿って配置された第1系統と、前記第1の方向と異なる第2の方向に沿って配置された第2系統を有する
請求項1〜4のいずれかに記載のバンパーセンサ。
【請求項6】
前記光ファイバは、前記バンパー本体の表面を構成する面において、異なる3以上の方向に沿って配置されている
請求項1〜4のいずれかに記載のバンパーセンサ。
【請求項7】
前記センサ部は、前記バンパー本体の表面を構成する面において第1の密度で配置された第1領域と、前記第1の密度と異なる第2の密度で配置された第2領域を有する
請求項1〜6のいずれかに記載のバンパーセンサ。
【請求項8】
前記光源からの光を複数に分岐して前記複数本の光ファイバの一本毎に切り替えて入射する光切替え器あるいは前記複数本の光ファイバのそれぞれに入射する光分岐器をさらに有する
請求項1〜7のいずれかに記載のバンパーセンサ。
【請求項9】
前記受光部が前記複数本の光ファイバの出射端から出射される光を順次あるいは同時に測定する受光素子列である
請求項1〜8のいずれかに記載のバンパーセンサ。
【請求項10】
前記センサ部が、前記バンパー本体の形状変化を検知する
請求項1〜9のいずれかに記載のバンパーセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−40737(P2007−40737A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222795(P2005−222795)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【Fターム(参考)】