説明

パターン形成方法およびそれを用いた回路材料の製造方法

【課題】
下層に感光性絶縁ペーストの塗布膜を形成し、上層に感光性導電ペーストの塗布膜を形成した後、露光、現像、焼成を行う方法において、下層の感光性絶縁ペーストの塗布膜が厚くなっても剥がれが生じないパターン形成方法を提供する。
【解決手段】
基板上に無機粉末、感光性ポリマー、感光性モノマーおよび重合開始剤を含み、該無機粉末が絶縁性である感光性絶縁ペーストを塗布して感光性絶縁ペースト塗布膜を形成し、該該感光性絶縁ペースト塗布膜上に無機粉末、感光性ポリマー、感光性モノマーおよび重合開始剤を含み、該無機粉末が導電性である感光性導電ペーストを塗布して感光性導電ペースト塗布膜を形成した後、パターン化された透光部を有するフォトマスクを介して露光し、現像する工程を含むパターン形成方法であって、前記感光性絶縁ペースト中のポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が質量比で3/7〜6/4の範囲内、前記感光性導電ペースト中のポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が質量比で7/3〜9/1の範囲内であることを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡略な工程により絶縁パターンと導電パターンの積層パターンを一度に形成する方法に関する。本パターンの形成方法は、電子部品やディスプレイなどの回路材料の製造に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品やディスプレイにおいて、高精細化が進んでおり、それに伴って微細な無機物のパターンを形成する技術が望まれている。微細な無機物のパターンを形成する技術としては、無機粉末と感光性成分を含む有機成分からなる感光性ペーストを基板上に塗布した後、露光、現像によりパターンを形成し、焼成することによって感光性成分を含む有機成分を揮散し、無機粉末を焼結することによって微細な無機物のパターンを形成する方法が知られている。
【0003】
これら無機物のパターンは、同一のパターンを有する導電パターンおよび絶縁パターンを積層し、多層化して用いられることが多い。導電パターンと絶縁パターンを感光性ペースト法によりそれぞれ逐次形成する場合、塗布、乾燥、露光、現像、焼成の工程をそれぞれ2回以上要し、工程が複雑であり、また、導電パターンと絶縁パターンの極めて精緻な位置合わせが必要となり精度よく形成できないという問題がある。そこで、導電性無機粉末を含む感光性導電ペーストおよび絶縁性無機粉末を含む感光性絶縁ペーストの塗布膜を多層形成後、露光、現像を同時に行う方法が考えられる。
【0004】
導電性無機粉末を含む感光性導電ペーストおよび絶縁性無機粉末を含む感光性絶縁ペーストの塗布膜を多層形成後、露光、現像を同時に行う方法としては、特許文献1記載の方法が知られている。これは、導電パターンの残渣除去を目的として、下層に無機物を含まない感光性ペーストあるいは下層にガラスやセラミックを含む感光性絶縁ペーストの塗布膜を形成し、上層に感光性導電ペーストの塗布膜を形成した後、露光、現像、焼成を行う方法である。
【0005】
しかしながら、下層に用いるガラスやセラミックを含む感光性ペーストの塗布膜を厚く形成した場合、上層に感光性導電ペーストの塗布膜を形成した後、露光、現像を行うと現像時に下層のガラスやセラミックを含む感光性ペーストの塗布膜が剥がれて形成できないという問題があった。
【特許文献1】特開2003−057829号公報(第6、10頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術に鑑みて、下層に感光性絶縁ペーストの塗布膜を形成し、上層に感光性導電ペーストの塗布膜を形成した後、露光、現像、焼成を行う方法において、下層の感光性絶縁ペーストの塗布膜が厚くなっても剥がれが生じないパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、基板上に無機粉末、感光性ポリマー、感光性モノマーおよび重合開始剤を含み、該無機粉末が絶縁性である感光性絶縁ペーストを塗布して感光性絶縁ペースト塗布膜を形成し、該感光性絶縁ペースト塗布膜上に無機粉末、感光性ポリマー、感光性モノマーおよび重合開始剤を含み、該無機粉末が導電性である感光性導電ペーストを塗布して感光性導電ペースト塗布膜を形成した後、パターン化された透光部を有するフォトマスクを介して露光し、現像する工程を含むパターン形成方法であって、前記感光性絶縁ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が質量比で3/7〜6/4の範囲内であり、かつ前記感光性導電ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が質量比で7/3〜9/1の範囲内であることを特徴とするパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡略な工程により同一パターンを有する絶縁パターンと導電パターンの積層体を同時に精度良く形成する方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における基板としては、ソーダガラス、耐熱ガラスである旭硝子社製の“PD200”および日本電気硝子社製の“PP8”等のガラス基板、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の樹脂基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム基板、アルミナ等のセラミックス基板を用途に応じて用いることができる。
【0010】
本発明における絶縁パターンを形成するための感光性絶縁ペーストとしては、絶縁性の無機粉末と感光性成分を含む有機成分を3本ローラー等の公知の分散機等で分散・混練したものを用いることができる。
本発明において、無機粉末が絶縁性であるとは、感光性絶縁ペーストを塗布、乾燥後に焼成して得られる膜の体積抵抗率が1010Ω・cm以上となるような無機粉末を指し、単一種類の無機粉末からなるものであっても、二種類以上の無機粉末を混合して用いても良い。また、焼成後の体積抵抗率が1010Ω・cm以上となるのであれば、絶縁性の無機粉末に少量の導電性の無機粉末を加えたものであっても良い
本発明で用いる感光性絶縁ペーストに含まれる絶縁性の無機粉末は、目的によって適宜選択する。
例えば、電子部品の絶縁層やディスプレイの隔壁層等を形成するペーストでは、ガラス粉末、セラミックス粉末または、ガラス粉末とセラミックス粉末を混合したものを用いることができる。ディスプレイの隔壁層形成など、ガラス基板上に無機物のパターンを形成する場合は、軟化温度が900℃以下、好ましくは、350〜800℃の範囲内のガラス粉末を用いる。軟化温度350℃以下のガラスは化学的安定性が低く、また、軟化温度900℃以上になると、ガラス基板上で十分な軟化を行うことが困難になる。軟化温度が800℃以下、好ましくは、350〜800℃の範囲内のガラス粉末であれば、特に制限なく用いることができるが、アルカリ金属を含むガラス粉末を用いた場合には、焼成時に基板のガラスとのイオン交換反応により、基板の反りを生じることがあるため、アルカリ金属の含有量は10質量%以下とすることが好ましい。セラミック粉末としては、500〜1000℃程度の焼成温度で軟化しないものが広く使用でき、アルミナ、マグネシア、カルシア、コーディエライト、シリカ、ムライト、ジルコンおよびジルコニア等のセラミックス粉末が例示できる。また、多層化する際に絶縁層の識別のために無機顔料を含んでもよい。黒色にする場合は、Co−Cr−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Cu−Mn、Co−Ni−Mn、Co−Ni−Cr−Mn、Co−Ni−Cu−Mnなどの化合物からなる黒色顔料、青色にする場合はCo−Al、Co−Al−Cr、Co−Al−Si、Zr−Si−V、Co−Zn−Si、Co−Zn−Al、Co−Zr−V、Co−Si、緑色にする場合はCa−Si−Cr、Sn−Zr−V、Zr−Si−Pr−V、Zr−Si−Pr−Cr−Fe、Cr−Al、Zr−Si−Pr−Cr、Cr−Co−Al−Zn、Cr−Al−Si、朱色にする場合はAl−Mn、Al−Cr−Zn、Sn−Cr、Zr−Si−Fe等の顔料を用いることができる。顔料の添加量は、顔料の種類にもよるが、通常0.1〜40質量%の範囲である。これら絶縁性の無機粉末の粒子径としては、作製しようとする層の厚みや線幅を考慮して選ばれるが、体積基準分布の中心径が0.05〜5μm、最大粒子サイズが15μm以下であることが好ましい。
本発明で用いる感光性絶縁ペーストに含まれる感光性有機成分としては、感光性モノマーおよび感光性ポリマーを必須成分とし、必要に応じてさらに感光性オリゴマー等を含んでも良い。
【0011】
本発明で用いる感光性絶縁ペーストに含まれる感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素2重結合を有する化合物を用いることができる。官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用できる。アクリレートまたはメタクリレート官能基を有する多官能化合物には多様な種類の化合物が開発されているので、それらから反応性、屈折率などを考慮して選択することが可能である。具体的には、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、または上記化合物のアクリル基を1部または全てメタクリル基に代えた化合物等が挙げられる。
【0012】
本発明で用いる感光性絶縁ペーストに含まれる感光性ポリマーは、炭素−炭素2重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られたポリマーに光反応性基側鎖または分子末端に付加させたものを好ましく用いることができる。
【0013】
共重合するモノマーとしては、不飽和カルボン酸などの不飽和酸を共重合することによって、感光後にアルカリ水溶液での現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0014】
こうして得られた側鎖にカルボキシル基などの酸性基を有するポリマーの酸価(AV)は50〜180、さらには70〜140の範囲が好ましい。酸価が180を越えると、現像許容幅が狭くなる。また、酸価が50以下になると未露光部の現像液に対する溶解性が低下するようになるため現像液濃度を濃くすることになり露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られにくくなる。
【0015】
以上に示したポリマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性をもつ感光性ポリマーや感光性オリゴマーとして用いることができる。
【0016】
好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0017】
このような側鎖をオリゴマーやポリマーに付加させる方法は、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。
【0018】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどが挙げられる。イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル等量付加させることが好ましい。
【0019】
本発明に用いる感光性絶縁ペーストには、分子内にカルボキシル基と不飽和2重結合を含有する重量平均分子量500〜10万の感光性ポリマーを含有させることが好ましい。
【0020】
バインダー成分が必要な場合には、ポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸−メタクリル酸エステル重合体、ブチルメタクリレート樹脂等を用いることができる。
【0021】
本発明における感光性ペーストは、感光性モノマーおよび感光性ポリマーを含有するが、これらの成分はいずれも活性光線のエネルギー吸収能力はないため、光反応を開始するためには重合開始剤を用いる必要がある。本発明の感光性絶縁ペーストによるパターン形成は、露光された部分の感光性成分を重合および架橋させて現像液に不溶化することであり、上記のように感光性を示す官能基はラジカル重合性であるため、重合開始剤は露光光を受けてラジカル種を発生するものから選んで用いられるが、本発明においては、紫外光感光型の重合開始剤と可視光感光型の重合開始剤を併用することも、本発明の好ましい態様の一つである。
【0022】
紫外光感光型の重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。重合開始剤は、感光性モノマー、感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーの合計量100質量部に対し、0.05〜10質量部の範囲で添加され、より好ましくは、0.1〜10質量部である。重合開始剤の量が少なすぎると光感度が不良となり、重合開始剤の量が多すぎる場合には露光部の残存率が小さくなるおそれがある。
【0023】
可視光感光型の重合開始剤としては、近紫外に吸収を持つ陽イオン染料とボレート陰イオンとの錯体、近赤外増感色素で増感されたハロゲン化銀と還元剤を組み合わせたもの、チタノセン、鉄アレーン錯体、有機過酸化物、ヘキサアリール、ビイミダゾール、N−フェニルグリシン、ジアリールヨードニウム塩等のラジカル発生剤の少なくとも1種と更に必要に応じて、3−置換クマリン、シアニン色素、メロシアニン色素、チアゾール系色素、ピリリウム系色素等の増感色素等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、紫外光感光型の重合開始剤と可視光感光型の重合開始剤の比率が質量比で5/5〜1/9の範囲内であることが好ましく、より好ましくは4/6〜1/9の範囲内、更に好ましくは3/7〜1/9の範囲内である。紫外光感光型の重合開始剤と可視光感光型の重合開始剤の比率をこの範囲内とすることで、無機成分が異なる感光性ペースト塗布膜を多層で形成した場合にパターンの形成が容易となる。
【0025】
本発明の感光性絶縁ペーストでは、その他添加物成分として、分散剤、チキソトロピー性付与剤、可塑剤、染料等の紫外線吸収剤、増感剤等を目的に応じて適宜用いることができる。
【0026】
本発明における導電パターンを形成するための感光性導電ペーストとしては、導電性の無機粉末と感光性成分を含む有機成分を3本ローラー等の公知の分散機等で分散・混練したものを用いることができる。
【0027】
本発明において、無機粉末が導電性であるとは、感光性絶縁ペーストを塗布、乾燥後に焼成して得られる膜の体積抵抗率が10Ω・cm以下となるような無機粉末を指し、単一種類の無機粉末からなるものであっても、二種類以上の無機粉末を混合して用いても良い。また、焼成後の体積抵抗率が10Ω・cm以下となるのであれば、導電性の無機粉末に少量の絶縁性の無機粉末を加えたものであっても良い。一般に、導電性の無機粉末として後述のような金属や金属酸化物を用いる場合は、金属や金属酸化物の軟化点や融点は高いため、比較的低温での焼成で導電層を形成するために、比較的軟化温度の低いガラス粉末を加えたものを好ましく用いることができる。
【0028】
導電性の無機粉末としては、金属粉末を用いることができる。金属粉末としては、Ag、Au、Pd、Ni、Cu、AlおよびPtの群から選ばれるものが使用できる。これらは、単独、合金のいずれの状態であってもよい。
【0029】
これら導電性の無機粉末の粒子径としては、作製しようとする層の厚みや線幅を考慮して選ばれるが、体積基準分布の中心径が0.05〜5μm、最大粒子サイズが10μm以下であることが好ましい。
【0030】
本発明に用いる感光性導電ペースト中の無機粉末以外の成分、すなわち感光性ポリマー、感光性モノマー、重合開始剤およびその他の添加成分は、上述の感光性絶縁ペーストに用いられる成分と同様のものが使用できる。
【0031】
本発明に用いる感光性導電ペースト中の重合開始剤は、露光光を受けてラジカル種を発生するものから選んで用いられるが、上述の感光性絶縁ペーストと同様、紫外光感光型の重合開始剤と可視光感光型の重合開始剤を併用することが好ましく、紫外光感光型の重合開始剤と可視光感光型の重合開始剤の比率が質量比で5/5〜1/9の範囲内であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明においては、感光性絶縁ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマー含有量が質量比で3/7〜6/4の範囲内、感光性導電ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量が質量比で7/3〜9/1の範囲内であることが必要となる。ガラス等絶縁性無機粉末を含む感光性絶縁ペーストに比べ、導電性の無機粉末を含む感光性導電ペーストの場合、露光光の透過が不良となるため、感光性ペースト中の感光性ポリマー比を多くする必要がある。感光性導電ペースト中の感光性ポリマーの比率が低い場合、下層の感光性絶縁ペーストの塗布膜が剥がれるという問題が発生する。一方、感光性導電ペースト中の感光性ポリマーの比率が高い場合、感光性導電ペースト塗布膜のパターン形成ができなくなる。したがって、下層に感光性絶縁ペーストの塗布膜を形成し、上層に感光性導電ペーストの塗布膜を形成した後、露光、現像、焼成を行う方法において、下層の感光性絶縁ペーストの塗布膜が厚くなっても剥がれが生じず、パターンの形成が可能となる。好ましくは、前記感光性絶縁ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量が質量比で4/6〜6/4の範囲内、前記感光性導電ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量が質量比で7/3〜8/2の範囲内である。
【0033】
次に、本発明のパターン形成方法について説明する。
【0034】
まず、基板上に上述の感光性絶縁ペーストを全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度を選ぶことによって調整できる。
【0035】
ここでペーストを基板上に塗布する場合、基板と塗布膜との密着性を高めるために基板の表面処理を行うことができる。表面処理液としては、シランカップリング剤、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなど、あるいは有機金属例えば、有機チタン、有機アルミニウム、有機ジルコニウムなどである。シランカップリング剤あるいは有機金属を有機溶媒、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどで0.1〜5質量%の濃度に希釈したものを用いる。次にこの表面処理液をスピナーなどで基板上に均一に塗布した後に80〜140℃で10〜60分間乾燥することによって表面処理ができる。塗布された感光性絶縁ペーストが溶媒を含む場合、必要に応じ乾燥を行う。
【0036】
続いて、上述の感光性導電ペーストを全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度を選ぶことによって調整できる。塗布された感光性導電ペーストが溶媒を含む場合、必要に応じ乾燥を行う。
【0037】
塗布した後、露光装置を用いて露光を行う。露光装置としては、プロキシミティ露光機などを用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。
【0038】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法やスプレー法、ブラシ法で行う。現像液には、感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を用いる。また、該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム水溶液などが使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
【0039】
有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0040】
アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、パターン部を剥離させ、また非可溶部を腐食させるおそれがある。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0041】
次に必要に応じ焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。
【0042】
焼成温度は400〜1000℃で行う。アルミナ基板等の場合は、800〜1000℃で焼成可能であるが、ガラス基板を用いる場合は、520〜620℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0044】
(感光性絶縁ペーストの作製)
無機粉末としては、酸化リチウム10質量%、酸化珪素25質量%、酸化硼素30質量%、酸化亜鉛15質量%、酸化アルミニウム5質量%、酸化カルシウム15質量%からなる組成のガラスを粉砕した平均粒子径2μmのガラス粉末60質量%、有機溶剤(ベンジルアルコール)19.8質量%、重合禁止剤(フェノチアジン)0.1質量%、有機染料(ベーシックブルー26)0.1質量%、感光性アクリルポリマー(APX−716、東レ社製)と感光性モノマー(プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート)(第一工業製薬社製)の合計量が18質量%となるように表1に示す比率で加えたもの、および紫外光感光型重合開始剤(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノンと可視光感光型重合開始剤(N−フェニルグリシン)の合計量が2質量%となるように表1に示す比率で加えたものを3本ローラーで混練して作製した。
【0045】
(感光性導電ペーストの作製)
湿式還元法により製造された平均粒径1.19μm、比表面積1.12m/g、タップ密度4.8g/cmのAg粉末68質量%、酸化ビスマス26質量%、酸化珪素13質量%、酸化硼素18質量%、酸化バリウム14質量%、酸化アルミニウム4質量%、酸化亜鉛21質量%からなる組成のガラスを粉砕した平均粒子径1μmのガラス粉末2質量%、重合禁止剤(フェノチアジン)0.1質量%、有機溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)15.9質量%、感光性アクリルポリマー(APX−716、東レ社製)と感光性モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(第一工業製薬社製)の合計量が12質量%となるように表1に示す比率で加えたもの、および紫外光感光型重合開始剤(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノンと可視光感光型重合開始剤(N−フェニルグリシン)の合計量が2質量%となるように表1に示す比率で加えたものを3本ローラーで混練して作製した。
【0046】
(積層パターンの作製および積層パターン観察)
基板(旭硝子(株)製“PD−200”、125mm角、厚さ1.8mm)上に東レ(株)製ダイコーターを用いて感光性絶縁ペーストを全面塗布し、タバイ社製熱風乾燥機を用いて100℃で60分乾燥した。乾燥後の膜厚は50μmとした。続いて、当該塗布膜上に感光性導電ペーストをスクリーン印刷機を用いて全面塗布し、タバイ社製熱風乾燥機を用いて100℃で60分乾燥した。乾燥後の膜厚は15μmとした。次に、ラインが50μm、スペースが50μmのストライプパターンを形成したフォトマスクを介して露光を行った。露光機は、大日本スクリーン製露光機(光源:2kW超高圧水銀灯)を用いた。露光後、0.3%の2−アミノエタノール水溶液を用いて、90秒間シャワーで現像しパターンを得た(現像液温度は25℃とした)。その後、600℃で10分間光洋サーモテック社製ローラーハース焼成炉を用いて焼成した。焼成後、電子顕微鏡(キーエンス社製、VE−7800)を用いてパターン断面部を観察した。
【0047】
パターン形成状態を観察し、上層/下層ともにパターンが形成されている場合はパターンの頂部幅と底部幅を測定し、以下の基準で判定した。
頂部幅/底部幅が0.90.65〜1.01.1の範囲内、かつ底部幅が55μm以上80μm未満の範囲内である場合:優(矩形)、
頂部幅/底部幅が1.11.0より大きい場合:良(下層の細り)、
底部幅が80μm以上の場合:良(ライン幅の太り)、
上層パターンまたは下層パターンが形成できなかった場合、またはパターンの剥がれが発生した場合:不良
実施例1〜13、比較例1〜4
結果を表1に示す。
【0048】
感光性絶縁ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が3/7〜6/4の範囲内、感光性導電ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が7/3〜9/1の範囲内である実施例1〜10は、いずれも良好なパターン形状(上層/下層共に矩形パターン)が得られた。
【0049】
また、紫外光感光型の重合開始剤と可視光感光型の重合開始剤の含有量の比率が5/5〜1/9の範囲を外れた実施例11〜13では、ほぼ良好なパターン形状が得られたが、実施例1〜10に比較すると少し形状不良(下層の細り、ライン幅の太りが発生)であった。
【0050】
一方、感光性絶縁ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が3/7〜6/4の範囲外、感光性導電ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が7/3〜9/1の範囲外である比較例1〜4では、形成不可、形状不良となった。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に無機粉末、感光性ポリマー、感光性モノマーおよび重合開始剤を含み、該無機粉末が絶縁性である感光性絶縁ペーストを塗布して感光性絶縁ペースト塗布膜を形成し、該感光性絶縁ペースト塗布膜上に無機粉末、感光性ポリマー、感光性モノマーおよび重合開始剤を含み、該無機粉末が導電性である感光性導電ペーストを塗布して感光性導電ペースト塗布膜を形成した後、パターン化された透光部を有するフォトマスクを介して露光し、現像する工程を含むパターン形成方法であって、前記感光性絶縁ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が質量比で3/7〜6/4の範囲内であり、かつ前記感光性導電ペースト中の感光性ポリマーと感光性モノマーの含有量の比率が質量比で7/3〜9/1の範囲内であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記感光性絶縁ペーストが紫外光感光型の重合開始剤および可視光感光型の重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記感光性絶縁ペースト中の紫外光感光型の重合開始剤と可視光感光型の重合開始剤の含有量が質量比で5/5〜1/9の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記感光性絶縁ペースト塗布膜の厚さが20〜300μmの範囲内、前記感光性導電ペースト塗布膜の厚さが0.1〜15μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のパターン形成方法によりパターンを形成する工程を含むことを特徴とする回路材料の製造方法。

【公開番号】特開2009−76233(P2009−76233A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241987(P2007−241987)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】