説明

パルス蒸着の監視及び制御を行うためのセンサ

パルスガス送出装置によるガスの送出をセンサを使用して検出する。センサは、送出されるガスの振動数を吸収する所定のスペクトル範囲の放射線を発生する源を含む。放射線は、送出されたガスを受け取るレセプタクルを通して伝達される。検出器は、レセプタクル内のガスを通って伝達した後、源から検出器に到達した放射線の強さを検出する。制御装置が、レセプタクル内のガスによって吸収された放射線の量を、検出された強さから決定することによって、ガス送出装置が送出したガスの正確な量を計測する。制御装置は、送出されたガスの量を所望の量に合わせて適応調節することによって、ガスの送出を実時間で監視する。センサ及び制御装置は、更に、ガス送出装置の故障又は仕様外挙動を監視できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月12日に出願された現在継続中の米国特許出願第10/822,358号(以下、’358出願と呼ぶ)(代理人事件番号第MKS−143号)、2004年12月17日に出願された現在継続中の米国特許出願第11/015,465号(以下、’465出願と呼ぶ)(代理人事件番号第MKS−147号)、及び2005年3月18日に出願された現在継続中の米国特許出願第11/083,586号(以下、’586出願と呼ぶ)(代理人事件番号第MKS−156号)と関連する。これらの特許出願は全て、本願の譲受人に譲渡されており、これらの特許出願に触れたことにより、これらの特許出願に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造には、処理チャンバへの反応体ガスの送出を注意深く同期し、正確に計測することが必要とされる。ALD(原子層蒸着)方法では、例えば、一度に一枚の原子層を蒸着することにより薄膜層を形成する。次いで、真空状態に維持した処理チャンバに二つ又はそれ以上の先駆物質ガスのパルスを送出する。各先駆物質ガスは、基板表面を流れ、表面上に吸着単分子層を形成する。次いで、第2先駆物質ガスをチャンバに導入し(第1先駆物質ガスをチャンバから一掃した後)、第1先駆物質と反応させ、自己制限表面反応により所望の薄膜の単分子層を形成する。蒸着サイクルを必要なだけ繰り返すことにより、所望の膜厚を得ることができる。膜厚は、蒸着サイクルの数を数えることによって、原子層の精度で制御できる。同様に、ALD方法以外のパルス蒸着システムは、処理チャンバへのガスのパルスの送出を正確に計測することを必要とする。
【0003】
ALD方法で、又は他のパルス蒸着方法で高いレベルの性能を得るためには、半導体加工チャンバ内への先駆物質ガスのパルス状の質量流れの送出を、信頼性が高く且つ正確な方法で計測し、監視しなければならない。流れ及び圧力の制御に基づくALD制御技術は、関連した時間単位(即ちミリ秒)での様々な時間的不正確さのため、不正確になりがちである。更に、これらの技術は、全体としての用量を制御せず、むしろ流れ及び圧力を制御し、そのため、温度及びタイミングの効果により用量が大きく変化してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ALD方法及び他の半導体製造方法で使用するため、再現性が高く且つ正確な量のガスを送出するのが望ましい。処理チャンバに流入するガスの量を実際に計測するための方法及びシステム、及び各パルス中の所望の数の先駆物質の原子を正確に送出するための方法及びシステムが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本装置は、ガスを一つ又はそれ以上のパルスをなして送出するように形成されたパルスガス送出装置と、パルスガス送出装置に連結されたセンサと、制御装置とを含む。センサは、ガス送出装置によるガスの送出の有無に応答するように形成されている。制御装置は、パルスガス送出装置が送出するガスの量をセンサの応答から決定するように形成されている。
【0006】
ガス送出装置によるガスの送出をセンサで監視する方法は、ガスの吸収周波数を含むスペクトル範囲の光放射線を発生する工程と、ガス送出装置が送出したガスを受け入れるレセプタクルすなわち試料チューブを通して光放射線を透過する工程とを含む。この方法は、更に、光放射線がレセプタクル内のガスを透過した後の光放射線の強さを検出する工程を含む。方法は、更に、検出された強さから、レセプタクル内のガスによる光放射線の吸収量を決定することによって、ガス送出装置が送出したガスの量を計測する工程を含む。
【0007】
パルスガス送出装置によるガスの送出を監視する方法は、ガス送出装置によるガスの送出の有無に応答するように形成されたセンサを、パルスガス送出装置に連結する工程を含む。この方法は、更に、パルスガス送出装置が送出したガスの量をセンサの応答から決定する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
パルスガス送出システムによってガスの送出を正確に監視するためのシステム及び方法を説明する。概略に述べると、システムは、ガスを一つ又はそれ以上のパルスで送出するように形成されたパルスガス送出装置と、パルスガス送出装置に連結されたセンサと、制御装置とを含んでいてもよい。センサは、ガス送出装置によるガスの送出の有無に応答するように形成されていてもよい。制御装置は、パルスガス送出装置が送出するガスの量をセンサの応答から決定するように形成されていてもよい。
【0009】
図1Aに示す実施例では、センサは光学式センサであってもよく、パルスガス送出装置はALD(原子層蒸着)システムの部分であってもよい。図1Aは、原子層を蒸着するためのパルスガス送出システム100の概略ブロックダイヤグラムであり、光学式センサ200を使用してALDシステム100のガスの送出を監視する。図1Aに示す実施例はALDシステムを示すけれども、本開示に記載した技術は、ALDシステム以外のパルス蒸着システムに適用でき、様々な実施例に様々なパルス蒸着システムが含まれていてもよいということは理解されるべきである。
【0010】
概略に述べると、ALDシステム100は、液体先駆物質源110と、ALDガス送出装置120と、処理チャンバ130とを含む。液体先駆物質源110は、ALDガス送出装置120に液体先駆物質を供給する。ALDガス送出装置120は、先駆物質のガスを処理チャンバ130に一連のパルスで送出する。処理チャンバ130は少なくとも一つの半導体基板132を収容しており、この半導体基板が先駆物質のガスに露呈される。例示のALDシステムは、’358出願、’465出願、及び’586出願に記載されている。これらの特許出願に触れたことにより、これらの特許出願に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。
【0011】
ALDガス送出装置120は、液体先駆物質源110が供給した液体先駆物質を蒸発して先駆物質のガスを発生する蒸発器(図示せず)を備えていてもよい。例示の実施例では、ALDガス送出装置120は、一体のヒーター/蒸発器モジュールに収容されていてもよいが、幾つかの他の実施例では、ヒーター及び蒸発器が別のモジュールに収容されていてもよい。先ず最初に、液体質量流量制御装置(図示せず)によって、液体先駆物質源110からの液体を計量する。液体質量流量制御装置は、別体の装置であってもよいし、蒸発器と組み合わせて一体のユニットにしてもよい。次いで、計量した液体を蒸発器によって蒸発することによって、ALD処理用の先駆物質のガスを形成する。
【0012】
ALD反応は、代表的には、約200℃乃至約400℃の温度範囲で行ってもよい。原子層蒸着処理は、高度に反応性の先駆物質のガスのパルスに基板132を交互に露呈する工程に基づいて行われる。これらのガスのパルスを使用し、一度に一層の原子層で薄膜を蒸着し、これにより厚さを極めて高度に均等に且つ正確に制御できる。各パルス中、自己制限ガス−固体表面反応(self−limiting gas−solid surface reaction)が生じる。代表的なALD過程の蒸着サイクルでは、先駆物質又は反応体の二つ又はそれ以上のガスの各々を、ガス相の相互混合が起らないように処理チャンバ130に順次導入する。第1反応体ガスの単分子層を基板表面に吸着する。余分の第1反応体を、代表的には不活性の除去ガス(パージガス)の補助により外部に圧送する。第2反応体を処理チャンバ130に導入し、第1反応体と反応され、自己制限(self−limiting)表面反応により所望の薄膜の単分子層を形成する。この自己制限反応は、第1反応体が第2反応体と反応した後に終了する。余分の第2反応体を、代表的には不活性パージガスの補助により外部に圧送する。所望の膜厚は、蒸着サイクルを必要なだけ繰り返すことによって得られる。
【0013】
ALD先駆物質ガスは、用途に応じて大きく変化させてもよい。新たな先駆物質が開発され続けており、様々な基板及び薄膜蒸着必要条件について試験されている。Al(CH3)3(Al2O3 の薄膜を蒸着する)、HfCl4 (HfO2の薄膜を蒸着する)、及びZrCl4 (ZrO2の薄膜を蒸着する)が、三つの一般的な先駆物質である。これらのガスの各々についての酸素先駆物質は、代表的には、H2O 、又はO2、又はO3である。ALD技術又はCVD技術によって付着できるこの他の種類の薄膜には、Ni、W、SiO2、Ta2O5 、TaN 、TiO2、WN、ZnO、ZrO2、WCN 、Ru、Ir、Pt、RuTiN 、Ti、Mo、ZnS 、WNxCy 、HfSiO 、LaxCayMnO3 、CuLnS2、In2S3、HfN 、TiN 、Cu、V2O5、及びSiN が含まれる。
【0014】
処理チャンバ130は、代表的には、真空状態に維持される。処理チャンバ130内に収容された基板132は、代表的には、支持体即ちチャック133に載っている。チャック133及び基板132を加熱するため、ヒーター134がチャック133に連結されていてもよい。チャンバ環境を所望のパラメータに合わせてもよい。例えば、原子層蒸着を行うため、基板の温度を上昇してもよい。
【0015】
図1Bは、ALDガス送出装置120の断面図を示す。例示の実施例では、ALDガス送出装置120は、ガスのパルスを図1Aに示す処理チャンバ130に送出するパルス送出装置である。概略に述べると、ALDガス送出装置120の例示の実施例は、ガス送出オン/オフバルブ122と、パージバルブ124と、一つ又はそれ以上のヒーター126と、圧力変換器128とを含む。
【0016】
冒頭に説明したように、源110からの液体先駆物質を、保持容器に送出する前に蒸発器によって蒸発させてもよい。保持容器は、ヒーター126によって適当な温度に加熱してもよい。例示の実施例では、ヒーターは、6ゾーン(6−zone)ヒーターであってもよいが、本開示は6ゾーンヒーターに限定されない。
【0017】
圧力変換器128は、処理チャンバ130内の圧力の計測値を提供するような形体を備えていてもよい。ALDガス送出装置120で使用するための適当な圧力変換器128の一例は、本開示の譲受人であるマサチューセッツ州アンドーバーのMKSインスツルメンツ社から入手できる、バラトロン商標の圧力変換器である。
【0018】
所望量の先駆物質ガスを、加熱した保持容器から処理チャンバ130内に送出するのにオン/オフ型ガスバルブ122を使用してもよい。換言すると、処理チャンバ130内に送出される先駆物質ガスのパルスを、ガス送出オン/オフバルブ122及びパージバルブ124を使用して制御してもよい。所望量の先駆物質ガス及び除去用ガス(すなわち、パージガス)の夫々を処理チャンバ130内に送出するため、バルブ122及び124を所定期間開放してもよい。バルブ122及び124は、現場で交換可能なバルブである。
【0019】
ALD蒸着過程では、非常に正確に計測し且つ制御された量の先駆物質ガスを処理チャンバ130に送出することが必要である。かくして、先駆物質ガスの送出を、高度に正確に且つ再現性を以て監視し且つ制御しなければならない。同様に、他の種類のパルス蒸着過程では、同様に、ガスの送出を正確に監視し且つ制御することが必要である。圧力及びバルブのオン/オフ期間を監視することによってガスの質量流量を概算する流れ−圧力モード技術は、関連した時間単位(即ちミリ秒)での様々な時間的不正確さのため、不正確でありがちである。こうした技術は、全用量を制御できず、即ち処理チャンバ130に流入するガスの実際の質量を計測できず、その代わり、流れ又は圧力を制御する。これにより、温度及びタイミングの効果により用量が大幅に変化する。
【0020】
図1Aを再び参照すると、ALDガス送出装置120からのガスの送出量を実時間で監視するのにセンサ200を使用してもよい。センサ200は、ALDガス送出装置120と処理チャンバ130との間に配置してもよい。センサ200は、ガス送出装置120によって送出された各パルスのガスの濃度を、送出されたガスによって光放射線が吸収されることによる光放射線の減少を検出することによって計測できる光学式センサであってもよい。光学式センサは、例えば、赤外線を検出し、赤外線がガスによって吸収されることによる赤外線の減少を検出することによって、各パルス中のガスの濃度を計測するように形成されたIR(赤外線)センサであってもよい。別の態様では、光学式センサは、赤外線範囲の外側の光放射線を検出するように形成された、UV(紫外線)センサ、又は可視光を検出するように形成されたセンサを含むがこれに限定されないセンサであってもよい。
【0021】
センサ200により、各パルス毎に、先駆物質ガスの所望の数の原子を正確に送出できる。センサ200により、制御を精密に行うことができる。これは、温度及び圧力の変化を完全に考慮できるためである。
【0022】
図2は、ALD過程中にガスの送出を監視し且つ制御するためにALDシステム(図1A参照)で使用される光学式センサ200の概念図である。図2は光学式センサを示すけれども、他の実施例では、ガス送出装置120が送出した各パルスのガスの濃度を、送出されたガスの濃度又は分圧に対する信号を検出することによって計測できる、種類が異なるセンサを使用してもよい。これらのセンサには、音響センサ、光音響センサ、質量分析計、蛍光分析計、電解センサが含まれるが、これに限定されない。
【0023】
赤外線を発生し検出するように形成されたIR(赤外線)光センサを図2に示すが、他の実施例は、可視光スペクトル範囲又は紫外線スペクトル範囲を含むがこれらの範囲に限定されない、赤外線以外のスペクトル範囲の光を吸収するガス用に設計された光学式センサを使用してもよい。
【0024】
概略に述べると、光学式センサ200は、ALDガス送出装置120(図1A及び図1B参照)が送出する先駆物質ガスの吸収スペクトルを含むスペクトル範囲の光放射線を発生するように形成された放射線源210と、放射線源210により放射された光放射線を検出することができる検出器230と、検出されるべき先駆物質ガスに対して開放した、検出器230と放射線源210との間の光路を提供するレセプタクル即ち試料チューブ220と、を含む。先駆物質ガスは、ガス送出装置120から試料チューブ220に流入する。
【0025】
検出器230は、放射線源210が発生し、そして試料チューブ220内の先駆物質ガスを透過した後、検出器230に到達したIR放射線の特定の周波数及び/又はスペクトル範囲を検出し、かつ検出された強さを表す一つ又はそれ以上の検出器信号を発生するように形成される。
【0026】
制御装置240が検出器230に接続されている。制御装置240は、検出器信号を演算処理することによって、送出されたガスの量を計測するように形成された信号演算処理回路を含む。制御装置240は、IR放射線の検出された強さから、試料チューブ220内のガスによって吸収されたIR放射線の量を決定する。試料チューブ220内のガスが、放射線源210が発生した光放射線からエネルギを吸収する場合には、検出器230は、放射線が放射線源210から検出器230に全強さで達した場合に有するであろう強度よりも弱い強さを検出する。この放射線の減少により、送出されたガスの濃度を計測できる。一実施例では、放射線の減少は、吸光度と正比例する。他の実施例では、放射線の減少を論理的に導くため、様々な代数的方法を使用してもよい。
【0027】
図2に示す光学式センサの実施例では、放射線源210は、ガス送出装置120が送出する先駆物質ガスの吸収スペクトルを含むスペクトル範囲の赤外光を発生する。正確に適合する吸収周波数を持つ赤外光だけが検出器に当たる場合、先駆物質ガスによる吸収が検出される。多くの放射線源は、広いスペクトル範囲に亘る放射線を発生し、多くの検出器は、広いスペクトル範囲に亘る放射線を検出するから、放射線源210からのエネルギは、検出器230が、主として、試料チューブ220内の先駆物質ガスによって吸収される光子を見るように、制限されなければならない。
【0028】
光学式センサ200は、従って、代表的には、波長選択装置225を含む。例えば、波長選択装置225は、適当な所望の周波数の光を検出器上に選択的に透過するように形成された、適当な周波数の赤外線挟帯域フィルタ225であってもよい。波長選択装置225は、更に、適当な周波数で作動する一つ以上の赤外線挟帯域フィルタ225を含んでいてもよい。波長選択装置225は、更に、適当な周波数を含む一つ又はそれ以上のIR帯域で作動する。別の態様では、波長選択装置225は、格子、プリズム、干渉計、レーザー、特定周波数ダイオード、及び音響−光フィルタのうちの一つ又はそれ以上であってもよい。
【0029】
送出装置120が送出した先駆物質ガス用の試料チューブ220は、放射線透過性ウィンドウ222を備えていてもよい。このウィンドウにより、IR光を放射線源210から試料チューブ220に、及び試料チューブ220から検出器230に通すことができる。一実施例では、試料チューブ220は、ALD処理チャンバ130(図1A参照)の部分であってもよい。放射線源210が発生した光を試料チューブ220に焦合する焦合鏡又はレンズ215を設けてもよい。
【0030】
放射線源210が発生したIR光は、IR光が試料チューブ220を透過するときに試料チューブ220内のガス分子と衝突し、光子のエネルギがガス分子の特性エネルギ状態(振動や回転等)と正確に一致した場合、IR光の一つ又はそれ以上の光子から、ガス分子によってエネルギが吸収される。各ガス分子は、非常に特定の吸収波長の組を示す。これは、ガス分子を形成する原子間の化学的結合の強さで決まる。
【0031】
センサのドリフト及び較正ドリフトを減少するため、ドリフトがない信号を監視できるように、IR光源210を時間で変調してもよい。IR光源210は、約10Hz又はそれ以上の速度で変調してもよい。幾つかの実施例では、IR光源210は、最大100Hz又はそれ以上の速度で変調してもよい。ALDパルスの持続時間は約1秒であってもよい。これらのパラメータは、必要な計測を行う上で必要とされる感度及び検出器の種類を決定する。10Hz又はそれ以上で十分である場合には、検出器230は、例えば、LiTaO3検出器として形成されていてもよい。高速の検出器が必要とされる場合には、検出器230は、DTGS検出器、PbS検出器、PbSe検出器、又はMCT検出器のうちの一つ又はそれ以上を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0032】
制御装置240は、蒸着工程の前又は後に、又は蒸着ガスが流れていないときに蒸着パルス間で、センサ200を自動的にゼロにできる回路を備えていてもよい。制御装置は、ガス送出装置120によるガス送出がゼロであるかどうかを確認するように形成されていてもよく、ガス送出がゼロである場合には、センサをリセットし、ゼロを報告する。制御装置は、更に、光学式センサ200をガス又は基準材料の周知の量で較正した後、周知のガスの量又は基準材料を使用することによってセンサ200の較正をリセットするように形成された較正回路を備えていてもよい。
【0033】
冒頭に言及したように、ALDガス送出装置を説明したが、本開示に記載した技術は、任意のパルスガス送出システムに適用でき、ALDシステムに限定されない。
【0034】
制御装置240は、送出されるガスの量を、検出器信号が示す検出された強さに応じて、所望の量に合わせて適応調節する一つ又はそれ以上の制御信号を発生し伝達することによって、ガスの送出を実時間で監視するように形成されていてもよい。制御装置240は、各ALDパルス中に送出されるガスの量を決定でき且つ監視でき、即ちALDガス送出装置からチャンバ130に送出されるALD先駆物質の量を計測でき且つ監視できる。
【0035】
制御装置240は、更に、複数のALDパルスを含む期間中に送出されたガスの総量を決定でき且つ監視できる。例えば、制御装置240は、ALDサイクル毎のALD先駆物質の総量を計測でき且つ監視できる。ALDシステム100(図1A参照)は、かくして、絶対集中法(absolute concentration)で監視してもよい。ALDシステム100は、最適の最終製品を提供するため、更に、信号(帯域)の強さ又は領域の代数的組み合わせで監視し、絶対集中又はイベントすなわち事象間の弁別のいずれかを提供してもよい。制御装置240は、約1%の計測精度で、及び10Hz又はそれ以上の分析速度で、ALD送出システムに実時間フィードバックを提供してもよい。
【0036】
別の態様では、ガスの送出を所望の量に合わせて適応調節する一つ又はそれ以上の制御信号を発生し伝達することによって、ガスの送出を実時間で監視するように形成された別の監視装置(図示せず)を設けてもよい。
【0037】
制御装置240は、ALDシステムが送出したガスのドリフトを監視するように形成されていてもよい。制御装置240は、ALDガス送出装置の上昇時間及び低下時間を監視するように形成されていてもよい。制御装置240は、更に、ALDガス送出装置120の絶対ゼロを監視するように形成されていてもよい。制御装置240は、更に、バルブを何時交換する必要があるかどうかを、及びガス送出装置120が保守を必要としているかどうかを確認するように、バルブ122及び/又は124の何らかの故障を監視するように形成されていてもよい。制御装置240は、ALD過程への多数の寄与を監視し及び/又は制御する統計的プロセス制御システムとして形成されていてもよい。
【0038】
上文中に説明した方法により、適合制御を行うことができる。換言すると、制御装置240は、送出されたパルスに含まれるガスの量を計測する検出器信号に応じて、送出しなければならない所望の量を示す適当な制御信号を発生することによって、ガスの送出を所望量に合わせて適応制御する。
【0039】
この方法により、更に、制御装置240は、例えばバルブがガスを漏洩している場合や、バルブが開放状態及び閉鎖状態での許容差から外れている場合にバルブ122及び/又は124が正しく機能しているかどうかを確認できる。センサの感度が極めて高く、各パルス毎に所望数の先駆物質原子を正確に送出できるため、制御装置240は、少なくとも一方のバルブが閉鎖状態即ち「オフ」状態でガスを漏洩している場合にはいつでも検出するように形成できる。
【0040】
このようにして、上文中に説明した方法は、先駆物質を一定に且つ正確に送出することが、蒸着した薄膜層の品質及び性能にとって重要である場合には、重要な反応体をALDチャンバ内に送出するための閉ループ制御を提供する。上文中に説明した方法及びシステムにより、各パルス毎に所望数の先駆物質原子を正確に送出できる。上文中に説明したセンサ及び制御装置により、温度及び圧力の変化を完全に考慮して、ALD工程を厳密に制御できる。例えば、バルブ毎の変化、バルブの経時的劣化、及び/又は送出条件の変化によるALD工程の変化を小さくすることができる。
【0041】
結論として、以上説明した方法及び装置は、ALDシステムを絶対集中法で監視でき且つ制御できる。上文中に説明した光学式センサにより、監視されるべきALDガスの送出を、読みの数%内で、即ち100ppm±2ppmで監視できる。上文中に説明したセンサは、更に、パルス送出を用いるALDシステム以外の任意のガス送出システムで使用してもよい。センサは、最新の装置と関連して使用してもよい。これは、これらのプロセスの持続時間が、通常は非常に短いためである。
【0042】
パルス蒸着の監視及び制御を行うための装置及び方法の特定の実施例を説明したけれども、これらの実施例に内在する概念は、他の実施例でも使用できるということは理解されよう。本願の保護は、専ら特許請求の範囲によって限定される。
【0043】
特許請求の範囲では、単数で表したエレメントは、特段の記載のない限り、「一つ及び唯一」を意味しようとするものではなく「一つ又はそれ以上」である。本開示に亘って記載した様々な実施例のエレメントの、当業者に周知の、又は後に当業者に知られる構造的及び機能的等価物は、明らかに、本明細書中に含まれ、これは特許請求の範囲に含まれる。更に、本明細書中に開示されていない事項は、こうした開示が特許請求の範囲に明快に記載されているかどうかに関わらず、公共に供されるものである。特許請求の範囲に記載されていないエレメントは、「ための手段」というフレーズを使用して明白に記載されていない限り、又は方法の特許請求の範囲の場合、エレメントが「ための工程」というフレーズを使用して記載されていない限り、米国特許法第112条第6項の規定に従って解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】図1Aは、パルスガス送出システムの一実施例の概略ブロックダイヤグラムである。
【図1B】図1Bは、図1Aに示すパルスガス送出装置のガス送出装置を示す図である。
【図2】図2は、ガスの送出を監視するための光学式センサの概念を示す概略図である。
【符号の説明】
【0045】
100 パルスガス送出システム
200 光学式センサ
110 液体先駆物質源
120 ALDガス送出装置
130 処理チャンバ
132 半導体基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置において、
ガスを一つ又はそれ以上のパルスをなして送出するように形成されたパルスガス送出装置と、
前記パルスガス送出装置に連結された、前記ガス送出装置によるガスの送出の有無に応答するように形成されたセンサと、
前記センサの応答から、前記パルスガス送出装置によって送出されたガスの量を決定するように形成された制御装置とを含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記センサは光学式センサを含み、
前記光学式センサは、
前記ガスの吸収周波数を含むスペクトル範囲の光放射線を発生するように形成された光源と、
前記光放射線の強さを検出するように形成されたレセプタクルであって、前記光放射線は、前記レセプタクル内のガスを通って透過した後、前記光源から検出器に到達する、レセプタクルと、
前記レセプタクル内のガスを透過した後、前記光源から検出器に到達した前記光放射線の強さを検出するように形成された検出器とを含み、
前記制御装置は、前記ガス送出装置によって送出されたガスの量を、前記検出器が検出した強さ、即ち前記レセプタクル内の前記ガスによる前記光放射線の吸収量から決定するように形成されている、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記検出器は、更に、前記光放射線の検出された強さを表す一つ又はそれ以上の検出器信号を発生するように形成されており、前記制御装置は、更に、検出器信号を演算処理することによって、前記送出されたガスの量を計測するように形成されている、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記制御装置は、所望の量に合わせて送出された前記ガスの量を、前記検出器信号に応じて適応調節する制御信号を発生し伝達することによって、前記ガスの送出を実時間で監視するように形成されている、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、更に、
前記ガスの送出を所望の量に合わせて適応調節する制御信号を発生し伝達することによって、前記ガスの送出を実時間で監視するように形成された監視装置を含む、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、
前記制御装置は、前記ガス送出装置によるガスの送出がゼロであるかどうかを確認し、ゼロである場合に前記センサをリセットし、ゼロを報告するように形成されている、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、
前記制御装置は、前記パルスの各々中に送出された前記ガスの量を決定し監視するように形成されており、
前記制御装置は、更に、複数のパルスを含む期間中に送出されたガスの総量を決定し監視するように形成されている、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、
前記ガス送出装置は、少なくとも一つのALD(原子層蒸着)先駆物質ガスをALD処理チャンバに送出するように形成されたALDガス送出装置を含む、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、
前記制御装置は、更に、各パルス中にALDガス送出装置からALD処理チャンバに送出されるALD先駆物質ガスの濃度を決定し監視するように形成されており、
前記制御装置は、更に、ALDガス送出装置、ALD処理チャンバ、及びALDガス送出装置用の液体先駆物質源を含むALDシステムの1サイクル中に送出されるALD先駆物質ガスの総量を決定し監視するように形成されている、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、
前記制御装置は、更に、ALDシステムのガスの送出の変化を監視するように形成されている、装置。
【請求項11】
請求項5に記載の装置において、
前記制御装置は、更に、前記パルスガス送出装置の上昇時間及び低下時間の少なくとも一方を監視するように形成されている、装置。
【請求項12】
請求項5に記載の装置において、
前記制御装置は、更に、前記パルスガス送出装置の絶対ゼロを監視するように形成されている、装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置において、
前記放射線源は、変調放射線源を含む、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、
前記源を、約10Hzよりも大きい速度で変調する、装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置において、
前記光学式センサは、更に、前記レセプタクル内で前記光放射線の所望の帯域幅を、前記レセプタクルから前記検出器まで選択的に伝達するように形成された波長選択装置を含み、
前記波長選択装置は、
フィルタ、
格子、
プリズム、
レーザー、
特定周波数ダイオード、
干渉計、及び
音響光フィルタのうちの少なくとも一つを含む、装置。
【請求項16】
請求項1に記載の装置において、
前記検出器は、感光検出器を含む、装置。
【請求項17】
請求項1に記載の装置において、
前記レセプタクルは、
前記光放射線を前記源から前記レセプタクル内に透過できる放射線透過性ウィンドウ、及び
前記光放射線を前記レセプタクルから前記検出器上に透過できる放射線透過性ウィンドウのうちの少なくとも一つを含む、装置。
【請求項18】
ガス送出装置によるガスの送出をセンサで監視する方法において、
前記ガスの吸収周波数を含むスペクトル範囲の光放射線を発生する工程と、
前記光放射線を、前記ガス送出装置によって送出されたガスが入ったレセプタクルを通して伝達する工程と、
前記光放射線が前記レセプタクル内のガスを透過した後の前記光放射線の強さを検出する工程と、
前記ガス送出装置によって送出されたガスの量を、前記検出された強さ、即ち前記レセプタクル内の前記ガスによる前記光放射線の吸収量を決定することにより計測する工程とを含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、更に、
前記ガス送出装置によって送出された前記ガスの量を所望の量に合わせて適応調節する工程を含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記ガス送出装置によって送出された前記ガスの量を計測する工程は、
パルスガス送出装置が発生した個々のパルスの各々によって送出されたガスの量を計測する工程と、
前記パルスガス送出装置によって送出されたガスの総量を、複数のパルスを含むパルスサイクル中に計測する工程とを含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、更に、
最初に、複数のパルスの送出前にセンサを再ゼロ化する工程と、
前記複数のパルスの各々の間にセンサを再ゼロ化する工程とを含む、方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、更に、
前記パルスガス送出装置のドリフトを監視する工程と、
前記パルスガス送出装置の上昇時間及び低下時間の少なくとも一方を監視する工程とを含む、方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法において、
前記光放射線を発生する工程は、前記センサのドリフトを実質的になくすように前記光放射線を変調する工程を含む、方法。
【請求項24】
請求項2に記載の方法において、
前記光学式センサは、IR(赤外線)センサを含み、前記源はIR源を含み、前記光放射線はIR放射線を含み、前記吸収振動数はIR吸収周波数を含み、前記検出器はIR検出器を含む、方法。
【請求項25】
請求項2に記載の方法において、
前記光学式センサは、
UV放射線源及びUV検出器を含むUV(紫外線)センサ、及び
可視光源及び可視光を検出するように形成された検出器を含む可視光センサのうちの少なくとも一つを含む、方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法において、
前記制御装置は、更に、前記ガス送出装置が保守を必要とするかどうかを決定するように形成されている、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、
前記ガス送出装置は一つ又はそれ以上のバルブを含み、各バルブは、オン状態にあるとき、前記送出装置から処理チャンバにガスを流すことができるように形成されており、各バルブは、更に、オフ状態にあるとき、前記送出装置から前記処理チャンバ上へのガスの流れを妨げるように形成されており、
前記制御装置は、更に、一つ又はそれ以上のバルブが故障しているかどうかを決定するように形成されている、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記ガス送出装置は、前記ガスをチャンバに送出するように形成されており、前記装置は、更に、前記チャンバ内の圧力を計測するように形成された圧力変換器を含み、前記保守は、
前記圧力変換器、
一つ又はそれ以上のバルブ、及び
前記制御装置のソフトウェアのうちの少なくとも一つの保守を含む、方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法において、
前記制御装置は、更に、少なくとも一方のバルブがオフ状態にあるとき、前記ガス送出装置を通るガスの漏出を監視するように形成されている、方法。
【請求項30】
請求項6に記載の方法において、
前記制御装置は、更に、前記パルスの各々の間で前記センサをリセットしゼロを報告するように形成されている、方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法において、前記センサは、
音響センサと、
光音響センサと、
質量分析計と、
蛍光分析計と、
電解センサとのうちの少なくとも一つを含む、方法。
【請求項32】
パルスガス送出装置によるガスの送出を監視する方法において、
前記ガス送出装置によるガスの送出の有無に応答するように形成されたセンサを前記パルスガス送出装置に連結する工程と、
前記パルスガス送出装置によって送出されたガスの量を、前記センサの応答から決定する工程とを含む、方法。
【請求項33】
請求項16に記載の装置において、
前記感光検出器は、
LiTaO3検出器、
PbS 検出器、
PbSe検出器、
DTGS検出器、及び
MCT検出器のうちの少なくとも一つを含む、装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−500852(P2009−500852A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520285(P2008−520285)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025338
【国際公開番号】WO2007/008438
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】