説明

ヒーターユニット及び熱処理装置

【課題】発熱体の給電端子との接続部における熱ロスを低減することができるヒーターユニット及び熱処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係るヒーターユニットHUaは、発熱体Haと、給電端子20と、中間体40とを具備する。給電端子20は、金属材料でなり、発熱体Haへ電力を供給する。中間体40は、炭素系材料でなり、発熱体Haと給電端子20との間に接続されている。中間体40は、発熱体Haと給電端子20との間を断熱する機能を有する。このため、給電端子20が冷却操作されているような場合においても、発熱体Haの熱ロスを抑制することが可能となる。したがって、上記ヒーターユニットHUaによれば、発熱体Haの給電端子20との接続部における温度低下を防止して、均熱性の向上を図ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均熱性に優れたヒーターユニット及び熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属やセラミックスの焼結処理や表面処理に際しては、大気中または所定の減圧雰囲気中で被処理物を加熱処理するための熱処理装置が広く用いられている。被処理物は、所定温度に加熱された加熱室内に 装填されて熱処理される。熱処理装置としては、バッチ処理炉のほか、インライン式の熱処理炉が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
この種の熱処理装置は、加熱室と、この加熱室を加熱するヒーターとを備えている。ヒーターは、抵抗発熱体と、この抵抗発熱体へ電力を供給するための給電端子とを有する通電加熱方式または電熱方式のヒーターが広く用いられている。また、加熱室の均熱性を高める目的で、ヒーターは加熱室内の複数箇所に設置され、各ヒーターは個別に温度制御される。
【0004】
【特許文献1】特開平9−184685号公報(段落[0011]、[0013]、図2)
【特許文献2】特開2001−12861号公報(段落[0006]、[0008]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の熱処理装置においては、加熱室内における温度の均一性の向上が要求されている。しかしながら、従来のヒーターにあっては、給電端子の接続領域における発熱体の熱ロスが多いため、給電端子の接続領域とそれ以外の領域との間で発熱体に温度分布が生じ易いという問題がある。
【0006】
その理由として、給電端子の多くは、比較的融点の低い金属銅などの電極材料で構成され、水冷構造を有するものが採用されていることが挙げられる。この場合、給電端子は発熱体へ電力を投入すると同時に冷却もなされているため、発熱体の給電端子との接続部における熱ロスが多くなる。したがって、加熱室の均熱性を高めるためには、発熱体の給電端子との接続部における熱ロスをできるだけ少なくすることが必要とされる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、発熱体の給電端子との接続部における熱ロスを低減することができるヒーターユニット及び熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係るヒーターユニットは、発熱体と、給電端子と、中間体とを具備する。
上記給電端子は、金属材料でなり、上記発熱体へ電力を供給する。上記中間体は、炭素系材料でなり、上記発熱体と上記給電端子との間に接続されている。
【0009】
本発明の他の形態に係る熱処理装置は、本体と、加熱室と、ケーシングと、ヒーターユニットとを具備する。
上記本体は、真空排気可能に構成されている。上記加熱室は、被処理物を加熱するためのものである。上記ケーシングは、断熱性であり、上記本体の内部に配置され、上記加熱室を区画する。上記ヒーターユニットは、発熱体と、給電端子と、中間体とを具備する。上記給電端子は、金属材料でなり、上記発熱体へ電力を供給する。上記中間体は、炭素系材料でなり、上記発熱体と上記給電端子との間に接続されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係るヒーターユニットは、発熱体と、給電端子と、中間体とを具備する。
上記給電端子は、金属材料でなり、上記発熱体へ電力を供給する。上記中間体は、炭素系材料でなり、上記発熱体と上記給電端子との間に接続されている。
【0011】
発熱体と給電端子との間に配置された炭素系材料でなる中間体は、発熱体と給電端子との間を断熱する機能を有する。このため、給電端子が冷却操作されているような場合においても、発熱体の熱ロスを抑制することが可能となる。したがって、上記ヒーターユニットによれば、発熱体の給電端子との接続部における温度低下を防止して、均熱性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
上記中間体は、上記発熱体に接続される第1の端部と、上記給電端子に接続される第2の端部とを有する軸状部材を含んでいてもよい。また、上記発熱体は、上記軸状部材の上記第1の端部が貫通する貫通孔を有する板状部材を含んでいてもよい。
これにより、発熱体が板状部材に給電端子との接続部が形成される場合においても、その発熱体の発熱面全体を均一な温度に維持することが可能となる。
【0013】
この場合、上記第1の端部の断面積を上記板状部材の断面積よりも小さくすることにより、発熱体の給電端子との接続部の発熱効率が高まり、均熱性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0014】
上記ヒーターユニットは、上記軸状部材を収容する電気絶縁性の筒状部材をさらに具備していてもよい。
これにより、軸状部材の表面への異物の付着を防止できるとともに、軸状部材に作用する外部応力の低減を図ることができる。その結果、軸状部材の耐久性を向上させることが可能となる。
【0015】
上記中間体は、上記筒状部材を支持する支持部材を有していてもよい。上記筒状部材は酸化物系セラミックス材料で構成することができる。また、上記ヒーターユニットは、上記筒状部材と上記支持部材の間に配置された高融点金属でなる中継部材をさらに具備していてもよい。
これにより、筒状部材は、支持部材によって中間体の周囲に安定に設置することができる。また、筒状部材と支持部材の間に上記中継部材を介在させることで、酸化物系セラミックス材料でなる筒状部材と炭素系材料でなる支持部材との間の熱反応を阻止でき、ヒーターユニットの耐久性を向上させることが可能となる。
【0016】
上記給電端子は、冷却構造を有する第1の端子部と、上記第1の端子部と上記中間体の間に配置された第2の端子部とを有する構成とすることができる。
これにより、給電端子を高温から保護することができる。また、第2の端子部は、第1の端子部と中間体との間を接続し又は分離する中継電極として機能させることができる。これにより、第1の端子部に対する中間体の脱着作業が容易となる。
【0017】
一方、本発明の他の実施の形態に係る熱処理装置は、本体と、加熱室と、ケーシングと、ヒーターユニットとを具備する。
上記本体は、真空排気可能に構成されている。上記加熱室は、被処理物を加熱するためのものである。上記ケーシングは、断熱性であり、上記本体の内部に配置され、上記加熱室を区画する。上記ヒーターユニットは、発熱体と、給電端子と、中間体とを具備する。上記給電端子は、金属材料でなり、上記発熱体へ電力を供給する。上記中間体は、炭素系材料でなり、上記発熱体と上記給電端子との間に接続されている。
【0018】
発熱体と給電端子との間に炭素系材料でなる中間体は、発熱体と給電端子との間を断熱する機能を有する。このため、給電端子が冷却操作されているような場合においても、発熱体の熱ロスを抑制することが可能となる。したがって、上記熱処理装置によれば、発熱体の給電端子との接続部における熱ロスを低減して、加熱室の均熱性を向上させることが可能となる。
【0019】
上記ヒーターユニットは、上記ケーシングの複数箇所に設置されていてもよい。
この場合、個々のヒーターユニットをそれぞれ独立に温度制御することができる。これにより、加熱室の均熱性の更なる向上を図ることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0021】
図1〜図4は、本発明の一実施の形態による熱処理装置の構成を示す各部の断面図である。ここで、図1は本実施の形態の熱処理装置1を正面方向から見たときの要部断面図、図2は図1における[2]−[2]線方向断面図、図3は図1における[3]−[3]線方向断面図、図4は図1における[4]−[4]線方向断面図である。
【0022】
熱処理装置1は、インライン式の熱処理炉における加熱室を構成している。上記熱処理炉は、永久磁石材料製造用の焼結炉、半導体装置製造用の熱処理炉などが該当する。また、この熱処理装置1に隣接して、図示せずとも予備加熱室や冷却室等が設置されている。
【0023】
熱処理装置1は、炉本体10と、炉本体10の内部に配置されたケーシング11とを備えている。ケーシング11は、炉本体の内部に被処理物Wを加熱する加熱室12を区画する。被処理物Wとしては、例えば、焼結すべき永久磁石材料の成形体、セラミックス材料の成形体などが該当する。
【0024】
炉本体10は、ステンレス鋼などの金属材料で形成されている。炉本体10は水冷構造を有していてもよい。図示する炉本体10は、底部と両側壁部を有する上面が開口した形状を有している。炉本体10の上面には天板13が取り付けられており、これら炉本体10と天板13によって炉内に密閉空間を形成する。なお、炉壁は断面矩形状に形成されているが、略円形状であってもよい。
【0025】
炉本体10は、図示しない真空ポンプに接続される排気ポート14と、炉内に搬送される被処理物Wを検知するための検知ポート15をそれぞれ有している。
【0026】
ケーシング11は、例えば、炭素系材料のような断熱材料で構成されている。ケーシング11は、複数枚の断熱板を組み合わせて角筒形状に形成されている。ケーシング11は図示しない支持機構によって炉内に固定されている。
【0027】
加熱室12の内部には、被処理物Wを支持するトレーTを搬送させるための搬送系(図示略)が設置されている。上記搬送系としては、例えば、トレーTの裏面に接触する搬送ローラ等によって構成することができる。被処理物Wは、加熱室12内を図1において紙面垂直方向、図2及び図3において紙面上下方向に搬送される。
【0028】
加熱室12の内部には、加熱室12を加熱するための上側ヒーター組立体Haと下側ヒーター組立体Hbとがそれぞれ設置されている。上側ヒーター組立体Ha及び下側ヒーター組立体Hbは、被処理物Wの搬送方向に沿って複数組設置されている。
【0029】
上側ヒーター組立体Ha及び下側ヒーター組立体Hbは、その構成部品のすべてが抵抗発熱体で構成されている。図では簡素化のため、上記各構成部品は一体的に示されている。本実施の形態では、抵抗発熱体として炭素系材料(カーボン又はカーボン複合材料)からなる複数のヒーター板が用いられ、これらを格子状に組み合わせて各ヒーター組立体を構成している。
【0030】
上側ヒーター組立体Haは、被処理物Wの上面を主に加熱する複数本のヒーター板H1を含む第1の発熱面と、被処理物Wの各側面を主に加熱する複数本のヒーター板H2及びH3を含む第2及び第3の発熱面とを有している。また、下側ヒーター組立体Hbは、被処理物Wの下面を主に加熱する複数本のヒーター板H4を含む第4の発熱面を有している。
【0031】
第1の発熱面は、図2に示すように、複数本のヒーター板H1の主面で構成されている。上側ヒーター組立体Haの所定箇所には、後述するヒーター端子Htと接続される貫通孔Hcを備えた連結板Hr1が取り付けられている。
【0032】
第2の発熱面は、図4に示すように、複数本のヒーター板H2の主面で構成されている。ヒーター板H2の上端は、ヒーター板H1の一方の端部に連結されている。第3の発熱面も、第2の発熱面と同様に構成されており、複数本のヒーター板H3の主面で構成されている。ヒーター板H3の上端は、ヒーター板H1の他方の端部に連結されている。
【0033】
第4の発熱面は、図3に示すように、複数本のヒーター板H4の主面で構成されている。下側ヒーター組立体Hbの所定箇所には、後述するヒーター端子Htと接続される貫通孔Hcを備えた連結板Hr4が取り付けられている。
【0034】
上側ヒーター組立体Ha及び下側ヒーター組立体Hbには、正極用ヒーター端子及び負極用ヒーター端子(これらの構成は同一であるので、以下、単にヒーター端子Htという。)がそれぞれ接続されている。これにより、上側ヒーターユニットHUa及び下側ヒーターユニットHUbがそれぞれ構成される。なお、以降の説明では、単にヒーターユニットHUというときには、上側ヒーターユニットHUa及び下側ヒーターユニットHUbの両方を含むものとする。
【0035】
上側ヒーターユニットHUaを構成するヒーター端子Htは、天板13及びケーシング11を貫通して、上側ヒーター組立体Haに接続されている。当該ヒーター端子Htは、天板13に対して気密に固定されている。
【0036】
一方、下側ヒーターユニットHUbを構成するヒーター端子Htは、炉本体10の底部及びケーシング11を貫通して、下側ヒーター組立体Hbに接続されている。当該ヒーター端子Htは、炉本体10に対して気密に固定されている。
【0037】
ヒーター端子Htは、ヒーター組立体Ha、Hbへ電力を供給し、ヒーター組立体Ha、Hbを発熱させるためのものである。以下、このヒーター端子Htの詳細について説明する。
【0038】
図5は、上側ヒーターユニット(以下、単に「ヒーターユニット」ともいう。)HUaにおけるヒーター端子Htの構成を示している。
【0039】
ヒーター端子Htは、上側ヒーター組立体(以下、単に「ヒーター組立体」ともいう。)Haへ電力を供給するための給電端子20と、ヒーター組立体Haと給電端子20との間に接続された炭素系材料(カーボン又はカーボン複合材料)でなる中間体41とを備えている。
【0040】
給電端子20は、図示しない電源と接続される銅製の第1の端子部21と、第1の端子部21と中間体40との間に配置された高融点金属からなる第2の端子部22とで構成されている。なお、第1の端子部21と第2の端子部22とを共通の単一の端子部で構成することも勿論可能である。
【0041】
第1の端子部21の内部には、冷却水が供給されるジャケット部25が形成されている。第1の端子部21には、ジャケット部25へ冷却水を導入する導入管26と、ジャケット部から外部へ冷却水を導出する導出管27とがそれぞれ接続されている。第1の端子部21は、固定板23、シールリング、複数本のボルト、ナット等を介して、炉本体10の天板13に気密に固定されている。
【0042】
第2の端子部22は、本実施の形態ではモリブデンで構成されているが、タンタルやタングステン等の他の高融点金属で構成されていてもよい。第2の端子部22の周面にはねじ溝が形成されており、その一端は第1の端子部21に固定され、他端は、中間体40を構成する軸状部材41に固定されている。第2の端子部22の周囲には、当該第2の端子部22を第1の端子部21及び軸状部材41へ固定するための金属製のナット28、29がそれぞれ係合されている。
【0043】
軸状部材41はカーボン製であり、その一端(第1の端部)にはヒーター組立体Ha(連結板Hr1)の貫通孔Hcに挿通されるネジ部41aが形成され、その他端(第2の端部)には第2の端子部22に接続されるネジ孔が形成されている。ネジ部41aには、軸状部材41を連結板Hr1に固定するためのワッシャ42、ナット43及び44が係合されている。これらワッシャ42、ナット43及び44はいずれもカーボン製であり、中間体40の一部を構成している。
【0044】
本実施の形態において、軸状部材41のネジ部41aの断面積は、連結板Hr1の断面積よりも小さくなるように、そのネジ径(谷径)が規定されている。すなわち、本実施の形態のヒーターユニットHUaは、給電端子20からヒーター組立体Haへの電力供給時、連結板Hr1よりもネジ部41aの発熱温度が高くなるように構成されている。
【0045】
ヒーターユニットHUaは、中間体40の軸状部材41を収容する電気絶縁性の筒状部材50をさらに備えている。筒状部材50は、アルミナ等の酸化物系セラミックス材料で構成されており、給電端子20とヒーター組立体Haとの間に配置されている。軸状部材41のネジ部41aには、軸状部材41に対する筒状部材50の相対位置を規制する支持部材45とこの支持部材45をネジ部41aに固定するためのナット46が配置されている。これら支持部材45とナット46はいずれもカーボン製であり、中間体40の一部を構成している。
【0046】
支持部材45は、フランジ付の環状部品からなり、その環状部の上端で軸状部材41を支持し、フランジ部上面で筒状部材50を支持している。本実施の形態のヒーターユニットHUaにおいては、支持部材45と筒状部材50の間の熱反応を阻止するために、これらの間に高融点金属材料でなる環状の中継部材51を配置している。これにより、ヒーター端子Htの耐久性を向上させることができる。中継部材51は、例えば、タンタルで構成されるが、これ以外にも、モリブデンやタングステン等を用いることが可能である。
【0047】
軸状部材41は、加熱室12を区画するケーシング11を貫通している。ケーシング11は、軸状部材41を挿通させる挿通孔11aを有している。挿通孔11aは、軸状部材41の周囲を覆う筒状部材50を挿通可能な大きさに形成されている。筒状部材50は、軸状部材41への異物の付着を阻止する防塵機能のほか、軸状部材41とケーシング11との間における電気的接続を阻止する絶縁部材としての機能をも有する。
【0048】
上側ヒーターユニットHUaにおけるヒーター端子Htは、以上のように構成される。ヒーター端子Htは、すべての上側ヒーター組立体Haについて同様に構成されている。なお、下側ヒーターユニットHUbにおけるヒーター端子Htも上述と同様に構成されるので、その説明は省略する。
【0049】
また、本実施の形態の熱処理装置1は、各ヒーターユニットHUの発熱温度を独立して制御する温度コントローラ(図示略)を備えている。上記温度コントローラは、加熱室12内の温度が所定の設定温度に維持されるように、各ヒーターユニットHUをそれぞれ個別に制御する。
【0050】
次に、以上のように構成される熱処理装置1の動作について説明する。
【0051】
まず、炉内が排気ポート14を介して所定の減圧雰囲気(例えば、10Pa〜10−5Pa)に排気される。また、熱処理装置1は、不活性ガス雰囲気あるいは水素や酸素などの反応性雰囲気で被処理物Wを加熱処理するように構成されてもよい。この場合、炉内は減圧された後、所定圧のガス雰囲気に置換される。熱処理装置1がインライン式熱処理炉で構成される場合、隣接する他の処理室も同様な雰囲気に設定される。
【0052】
加熱室12は上側ヒーターユニットHUa及び下側ヒーターユニットHUbによって所定温度に加熱される。加熱室12の設定温度は特に限定されず、被処理物Wの種類や熱処理の態様に応じて適宜設定され、例えば、1100℃〜1600℃である。加熱室12は、断熱性のケーシング11によって区画されているので、ヒーターユニットHU(HUa、HUb)によって効率よく加熱される。
【0053】
被処理物Wは、トレーTの上に載置されて、所定温度に加熱された加熱室12内へ搬入される。被処理物Wの熱処理は、加熱室12内で被処理物Wが搬送される途上で実施されてもよいし、加熱室12内で被処理物Wが搬送を停止された状態で実施されてもよい。
【0054】
次に、ヒーターユニットHUの動作について説明する。なお、以下の説明は、図5を参照して説明した上側ヒーターユニット(HUa)を中心に説明するが、下側ヒーターユニットHUbについても同様である。
【0055】
ヒーター組立体Haは、給電端子20から中間体40を介して電力が供給される。これにより、ヒーター組立体Haは発熱し、加熱室12を加熱する。その一方で、給電端子20は、冷却水の循環作用を受けて所定温度に冷却される。本実施の形態のヒーターユニットHUにおいては、給電端子20とヒーター組立体Haとの間に配置された中間体40が、後述するように、給電端子20の冷却操作に伴うヒーター組立体Haの発熱ロスを抑制し、ヒーター組立体Haの均一加熱を実現する。
【0056】
すなわち、中間体40は、断熱性を有する炭素系材料で構成されているため、給電端子20とヒーター組立体Haとの間を熱的に絶縁する断熱層として機能する。これにより、給電端子20の冷却操作に伴って発生し得る、ヒーター組立体Haの給電端子20との接続部における発熱ロスを低減し、ヒーター組立体Haの均一加熱を実現することが可能となる。
【0057】
また、中間体40は、給電端子20からの電力供給により、ヒーター組立体Haと同様な発熱層としての機能をも有する。これにより、ヒーター組立体Haの給電端子Htとの接続部の温度低下を効果的に防止することができる。
【0058】
特に本実施の形態では、中間体40を構成する軸状部材41のネジ部41aの断面積が、当該ネジ部41aに結合されるヒーター組立体Haの連結板Hr1の断面積よりも小さく形成されているため、連結板Hr1に比べてネジ部41aの電流密度が高い。したがって、ネジ部41aを連結板Hr1に比べて発熱効率が高く、かつ、発熱温度を高温に維持可能である。これにより、給電端子20の接続部分を中心とするヒーター組立体Haの局所的な温度低下を防止することが可能となる。
【0059】
以上のように、本実施の形態のヒーターユニットHUによれば、給電端子20が冷却操作されているような場合においても、給電端子20との接続部におけるヒーター組立体Haの温度低下を効果的に低減できる。したがって、被処理物Wの上面を加熱する第1の発熱面の均熱性を向上させることができ、他の発熱面(第2〜第4の発熱面)との間に温度分布を生じさせることもない。その結果、被処理物Wの各面を均一に加熱することが可能となる。
【0060】
ここで、ヒーター組立体Haの各発熱面を構成するヒーター板H1〜H4がそれぞれ同等の断面積で形成されることによって、各発熱面を均一な温度で加熱することが可能となる。
【0061】
また、本実施の形態においては、中間体40を構成する軸状部材41の本体部分の断面積が、図5に示すようにネジ部41aの断面積よりも大きく形成されている。このため、軸状部材41の本体部の発熱温度はネジ部41aの発熱温度よりも低くでき、給電端子20を高温から保護することが可能となる。
【0062】
一方、本実施の形態のヒーターユニットHUにおいては、軸状部材41を収容する電気絶縁性の筒状部材50を備えている。これにより、軸状部材41の表面への異物の付着を防止できるとともに、軸状部材41に作用する外部応力の低減を図ることができる。その結果、軸状部材41の耐久性を向上させることが可能となる。
【0063】
本実施の形態において、中間体40は、筒状部材50を支持する支持部材45を含む。筒状部材50は酸化物系セラミックス材料で構成されている。また、ヒーターユニットHUは、筒状部材50と支持部材45の間に配置された高融点金属でなる中継部材51を備えている。これにより、筒状部材50は、支持部材45によって中間体40の周囲に安定に設置することができる。また、筒状部材50と支持部材45の間に中継部材51を介在させることで、酸化物系セラミックス材料でなる筒状部材50と炭素系材料でなる支持部材45との間の熱反応を阻止でき、ヒーターユニットHUの耐久性を向上させることが可能となる。
【0064】
本実施の形態において、給電端子20は、冷却構造を有する第1の端子部21と、第1の端子部21と中間体40の間に配置された第2の端子部22とを有している。これにより、給電端子20を高温から保護することができる。また、第2の端子部22は、第1の端子部21と中間体40との間を接続し又は分離する中継電極として機能させることができる。これにより、第1の端子部21に対する中間体40の脱着作業が容易となる。
【0065】
本実施の形態の熱処理装置1において、ヒーターユニットHUは、ケーシング11の複数箇所に設置されており、個々のヒーターユニットは温度コントローラ(図示略)によってそれぞれ独立に温度制御される。本実施の形態によれば、個々のヒーターユニットHUがそれぞれ高い均熱性を有しているため、加熱室12内の均熱制御が容易となり、被処理物Wを均一に加熱することが可能となる。
【0066】
図6は、本実施の形態の比較例として示すヒーターユニットHUxの構成を示す断面図である。図において、100は、内部循環式の水冷構造を有する銅製の第1の端子部101とモリブデン製の第2の端子部102とからなる給電端子、103は炉壁、104は、炉内に加熱室を区画する断熱性のケーシング、Hxは、給電端子100に接続された発熱体である。
【0067】
図示する比較例に係るヒーターユニットHUxにおいては、金属製の給電端子100の一端部が直接、発熱体Hxに接続された構成を有している。このため、発熱体Hxは、給電端子100からの電力投入により発熱すると同時に、給電端子100の冷却処理による影響を受けて給電端子Hxとの接続部分における局所的な温度低下を生じ易い。つまり、上記構成のヒーターユニットHUxにおいては発熱体Hxの熱ロスが大きく、発熱体Hxを高い均熱性をもって発熱させることができない。
【0068】
これに対して、本実施の形態のヒーターユニットHUにおいては、上述のように、発熱体Haと給電端子20との間に炭素系材料でなる中間体40を配置しているので、給電端子20が冷却操作されているような場合においても、発熱体Haの熱ロスを抑制することが可能となる。すなわち、給電端子20との接続部における発熱体Haの温度低下を防止して、均熱性の向上を図ることが可能となる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0070】
例えば以上の実施の形態では、発熱体として、炭素系材料でなる板状ヒーターを用いたが、これに限られない。具体的に、発熱体としてSiCなどのセラミックヒーターを用いてもよいし、棒状ヒーターなどの他の形状のヒーターを用いてもよい。
【0071】
また、以上の実施の形態では、複数のヒーター組立体を有する熱処理装置を例に挙げて説明したが、ヒーター組立体の設置位置や設置個数は上記の例に限定されない。また、熱処理装置はインライン式熱処理炉に限られず、バッチ処理炉にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態による熱処理装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1における[2]−[2]線方向断面図である。
【図3】図1における[3]−[3]線方向断面図である。
【図4】図1における[4]−[4]線方向断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるヒーターユニットの構成を示す断面図である。
【図6】比較例に係るヒーターユニットの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1…熱処理装置
10…炉本体
11…ケーシング
12…加熱室
13…天板
14…排気ポート
20…給電端子
21…第1の端子部
22…第2の端子部
40…中間体
41…軸状部材
41a…ネジ部
45…支持部材
50…筒状部材
51…中継部材
H1〜H4…ヒーター板
Ha…上側ヒーター組立体
Hb…下側ヒーター組立体
Hc…貫通孔
Ht…ヒーター端子
HU(HUa、HUb)…ヒーターユニット
T…トレー
W…被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
前記発熱体へ電力を供給するための金属材料でなる給電端子と、
前記発熱体と前記給電端子との間に接続された炭素系材料でなる中間体と
を具備するヒーターユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のヒーターユニットであって、
前記中間体は、前記発熱体に接続される第1の端部と、前記給電端子に接続される第2の端部とを有する軸状部材を含み、
前記発熱体は、前記軸状部材の前記第1の端部が貫通する貫通孔を有する板状部材を含む
ヒーターユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のヒーターユニットであって、
前記第1の端部の断面積は、前記板状部材の断面積よりも小さい
ヒーターユニット。
【請求項4】
請求項2に記載のヒーターユニットであって、
前記軸状部材を収容する電気絶縁性の筒状部材をさらに具備する
ヒーターユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のヒーターユニットであって、
前記中間体は、前記筒状部材を支持する支持部材をさらに有し、
前記筒状部材は酸化物系セラミックス材料でなり、
前記ヒーターユニットは、前記筒状部材と前記支持部材の間に配置された高融点金属でなる中継部材をさらに具備する
ヒーターユニット。
【請求項6】
請求項1に記載のヒーターユニットであって、
前記給電端子は、
冷却構造を有する第1の端子部と、
前記第1の端子部と前記中間体の間に配置された第2の端子部とを有する
ヒーターユニット。
【請求項7】
真空排気可能な本体と、
被処理物を加熱するための加熱室と、
前記本体の内部に配置され前記加熱室を区画する断熱性のケーシングと、
前記加熱室に設置された発熱体と、前記発熱体へ電力を供給するための金属材料でなる給電端子と、前記発熱体と前記給電端子との間に接続され前記ケーシングを貫通する炭素系材料でなる中間体とを有するヒーターユニットと
を具備する熱処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の熱処理装置であって、
前記中間体は、前記発熱体に接続される第1の端部と、前記給電端子に接続される第2の端部とを有する軸状部材を含み、
前記発熱体は、前記軸状部材の前記第1の端部が貫通する貫通孔を有する板状部材を含む
熱処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の熱処理装置であって、
前記第1の端部の断面積は、前記板状部材の断面積よりも小さい
熱処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の熱処理装置であって、
前記ヒーターユニットは、前記ケーシングの複数箇所に設置されている
熱処理装置。
【請求項11】
請求項8に記載の熱処理装置であって、
前記ケーシングを貫通し前記軸状部材を収容する電気絶縁性の筒状部材をさらに具備する
熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−108811(P2010−108811A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280991(P2008−280991)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】