説明

ヒータ

【課題】 振動環境下においても、カーボンワイヤー発熱体と該カーボンワイヤー発熱体を収容したガラス管の内壁との衝突を抑制することにより、耐久性のあるヒータを提供する。
【解決手段】 ガラス管2内に封入されたカーボンワイヤー発熱体3と、前記カーボンワイヤー発熱体に電力を供給する接続線を有する二つの封止端子部4とを備え、前記カーボンワイヤー発熱体3と接続線5とを導電性部材7によって挟持し、かつ、導電性部材7と弾性体8が封止端子部4を構成するガラス管2,6の内部に収容され、前記導電性部材7を弾性体によってガラス管2,6の内壁に押し付けられることにより、ガラス管2,6の内壁に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒータに関し、より詳細にはカーボンワイヤー発熱体をガラス管、板状ガラス体等のガラス体に封入したヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からカーボンワイヤー発熱体を用いたヒータは、金属発熱体を用いたヒータに比べて熱容量が小さく昇降温特性に優れ、また、非酸化性雰囲気中では高温耐久性にも優れているため各種の加熱用機器として産業用に広く使用されている。
【0003】
このカーボンワイヤー発熱体を用いたヒータとしては、例えば、図12,13に示すヒータが知られている。以下、図12,13に基づいて、従来のヒータについて説明する。尚、図12は概略断面図、図13は図12に示したヒータの要部断面図である。
図12,13において、符号31は、カーボンワイヤー発熱体であって、その一端部には導電性のクランプ部材32が設けられ、このクランプ部材32に導電性のスプリング部材33の一端が取り付けられている。また、前記カーボンワイヤー発熱体31の他端部にも、クランプ部材32が設けられ、導電性のフック部材34が取り付けられている。
【0004】
前記スプリング33の他端、及びフック部材34の他端は、接続線35,35に接続されており、前記接続線35、35に供給された電力をスプリング部材33及びクランプ部材32と、フック部材34及びクランク部材32を介して、カーボンワイヤー発熱体31に供給されるように構成されている。
また、前記カーボンワイヤー発熱体31、クランプ部材32,32、スプリング部材33、フック部材34、接続線35の一部はガラス管36の内部に収容されている。そして、ガラス管36の端部で接続線35,35をピンチシールしている。更に、ガラス管36の内部は例えば窒素雰囲気の減圧状態になされている。
【0005】
このように、この種のヒータ30では、カーボンワイヤー発熱体31にスプリング部材33によって一定の引張力を作用させているため、カーボンワイヤー発熱体31は弛むことなく、接続線35,35の間に張設されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カーボンワイヤー発熱体は、前記したように一定の引張力をもって接続線間に張設されている。これは、ガラス管に封入されたカーボンワイヤーを一定の長さとし、出力を安定させると共に均熱性を確保するためである。
しかしながら、前記した従来のヒータにあっては、スプリング部材によってカーボンワイヤー発熱体に引張力を作用させているため、前記ヒータを振動する環境下では使用することができなかった。
【0007】
一例を挙げて説明すれば、前記ヒータを車両のような振動する物体に取り付けた場合、該振動によってヒータに用いられているスプリング部材も同様に振動する。この振動によって、カーボンワイヤー発熱体も振動し、カーボンワイヤー発熱体はガラス管の内壁に衝突(接触)する。このガラス管内壁との衝突が重ねられると、カーボンワイヤー発熱体は化学反応により、あるいは機械的ダメージの蓄積によりその寿命は短くなり、ついにカーボンワイヤー発熱体は切断される。
【0008】
本発明は、上記したヒータが有する技術的課題を解決するためになされたものであり、振動環境下においも、カーボンワイヤー発熱体と該カーボンワイヤー発熱体を収容したガラス管の内壁との衝突を抑制することにより、耐久性のあるヒータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかるヒータは、ガラス体内に封入されたカーボンワイヤー発熱体と、前記カーボンワイヤー発熱体に電力を供給する接続線を有する二つの封止端子部とを備えたヒータであって、前記封止端子部は、前記カーボンワイヤー発熱体と接続線とを導電性部材によって挟持し、かつ、前記導電性部材と弾性体とが封止端子部を構成するガラス管の内部に収容され、前記導電性部材が弾性体によってガラス管の内壁に押し付けられることにより、ガラス管の内壁に固定されるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
このように、カーボンワイヤー発熱体及び接続線とを挟持する導電性部材と、弾性体とを、封止端子部を構成するガラス管の内部に収容し、前記弾性体が導電性部材をガラス管の内壁に押し付けることにより、導電性部材を固定している。
そのため、カーボンワイヤー発熱体のより強固な挟持を実現せしめ、振動環境下において使用しても、カーボンワイヤー発熱体が振動することがなく、カーボンワイヤー発熱体のガラス管の内壁との接触を抑制でき、耐久性が向上する。
【0011】
ここで、前記弾性体が、前記導電性部材の少なくとも一側面及びガラス管の内壁に接して、前記ガラス管の内部に収容されていることが望ましい。より好ましくは、導電性部材の両側面に弾性体が接するように配置するのが良い。
【0012】
また、前記導電性部材は二つの部材から構成され、前記導電性部材の相対向する面には、前記カーボンワイヤー発熱体が収容される溝部と接続線が収容される溝部とが形成されていることが望ましい。このように溝部が形成されているため、カーボンワイヤー発熱体及び接続線を所定の位置に置くことができる。
【0013】
更に、封止端子部を構成するガラス管において、カーボンワイヤー発熱体の導出側の内壁を先細り形状としたことが望ましい。
このように封止端子部を構成するガラス管の内壁を先細り形状としたため、導電性部材を前記ガラス管内に収納することによって、前記導電性部材は前記接続線、カーボンワイヤー発熱体をより強固に挟持する。その結果、ヒータの耐振動性がより向上する。
【0014】
更に、前記弾性体が前記導電性部材の一側面にのみ存在し、前記二つの導電性部材のうち、弾性体が接する導電性部材の高さが他の導電性部材の高さよりも低いことが望ましい。
このように、二つの導電性部材において高さに差を設けたのは、導電性部材と弾性体をガラス管の内部に収容した際、カーボンワイヤー発熱体がガラス管の中心に配されるようにするためである。
より好ましくは、前記弾性体及び導電性部材を、封止端子部を構成するガラス管に収納した状態において、前記二つの導電性部材のうち弾性体が接する導電性部材の高さと弾性体の高さとの総和と、他の導電性部材の高さとを等しくするのが良い。
【0015】
また、前記カーボンワイヤー発熱体を収容する各導電性部材の溝部がV字状であり、二つの導電性部材を重ねた際に前記V字状の溝部の組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、カーボンワイヤー発熱体の直径以下の寸法で形成され、かつ前記接続線を収容する各導電性部材の溝部がV字状であり、二つの導電性部材を重ねた際に前記V字状の溝部の組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、接続線の直径以下の寸法で形成されていることが望ましい。
このように構成することにより、カーボンワイヤー発熱体及び接続線を所定の位置に置くことができると共に、導電性部材によってカーボンワイヤー発熱体及び接続線を確実に挟持することができる。
【0016】
さらに、前記カーボンワイヤー発熱体が、前記導電性部材の前記接続線を収容する溝部まで挿通されていることが望ましい。
このように構成することにより、導電性部材のカーボンワイヤー発熱体の挿入端部側で、導電性部材が圧接し、カーボンワイヤー発熱体をより強固に挟持することができる。
【0017】
前記接続線と溝部とによって形成される空隙に、前記カーボンワイヤー発熱体端部のカーボンワイヤーが配設されていることが望ましい。
このように接続線と溝部とによって形成される空隙にカーボンワイヤーが配設されているために、導電性部材の内側に配置された前記カーボンワイヤーの弾性力と、これより大きな、導電性部材の外側に配置された弾性体の弾性力のバランスによって、通電性をより高めることができ、かつ前記接続線及びカーボンワイヤー発熱体を前記導電性部材により強固に挟持することができ、またこれらを前記封止端子部のガラス管内壁により安定して固定することができる。
【0018】
また、前記導電性部材は、黒鉛化処理されたカーボン材であることが望ましい。このように、黒鉛化処理されたカーボン材である場合には摩擦抵抗が少なく、ガラス管内部に容易に挿入することができる。また、これを収容するガラス管の破損の危険性を低くすることができる。
【0019】
更に、前記弾性体は耐熱性フェルト状体から形成されていることが望ましい。
これによって、高温環境下においても、弾性力を保持することができる。特に、700℃を超える環境下(発熱温度)においては、カーボンフェルトを用いることが好ましく、これによって、この温度でも十分な弾性保持力が得られる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明にかかるヒータは、特に、振動環境下においも、カーボンワイヤー発熱体と該カーボンワイヤー発熱体を収容したガラス管の内壁との衝突を抑制することにより、耐久性のあるヒータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明にかかるヒータは、カーボンワイヤー発熱体の少なくとも発熱部が、ガラス管あるいは板状のガラス体等のガラス体内に配置され、前記発熱体の両端は前記ガラス体から導出され、前記両端の各々は、前記カーボンワイヤー発熱体に電力を供給する接続線と共に各々のガラス管内に配置された導電性部材によって挟持され、前記導電性部材は弾性体により、前記ガラス管の内壁に押し付けられ固定されている点に特徴があり、また前記ガラス体と前記ガラス管によって一つの密閉空間を形成することに、または前記ガラス体と前記二つのガラス管を覆う別のガラス管によって一つの密閉空間を形成することに特徴がある。
以下に、本発明にかかるヒータを実施形態に基づいて説明する。まず、第一の実施形態を図1乃至図4に基づいて説明する。なお、図1は、本発明にかかるヒータの第一の実施形態を示す斜視図であり、図2は、図1の封止端子部示す分解斜視図、図3は、カーボンワイヤー発熱体と接続線との接続構造を示す図、図4は封止端子部の断面図である。
また、この第一の実施形態の説明にあっては、カーボンワイヤー発熱体の発熱部が収納されるガラス体としてガラス管が用いられ、カーボンワイヤー発熱体の両端が配置されるガラス管と、発熱部が収容されたガラス管とによって一つの密閉空間が形成されている場合について説明する。
【0022】
図1に示したヒータ1は、ガラス管2内に封入されたカーボンワイヤー発熱体3と、前記カーボンワイヤー発熱体3に電力を供給する接続線5を有する二つの棒状(直線状)の封止端子部4とを備えている。このガラス管2は、小径部2aと、小径部2aに続いて形成された大径部2bとを備えている。前記小径部2aは発熱部であり、いわゆるヒータ部を形成する。また大径部2bは封止端子部4の一部を形成する。
【0023】
この封止端子部4は、図2,3、4に示すように、ガラス管6にピンチシールされた接続線5と、カーボンワイヤー発熱体3と接続線5とを接続する導電性部材(導電性部材としては種々あるが、以下、代表してカーボン材と記す)7と、前記カーボン材7を収容するガラス管6及びガラス管2の大径部2bと、前記カーボン材7をガラス管6及びガラス管2の大径部2bの内壁に対して、押し付ける耐熱性を有するフェルト状の弾性体8とを備えている。
【0024】
前記接続線5は、カーボンワイヤー発熱体3に電力を供給するものであって、Mo(モリブデン)、あるいはW(タングステン)棒からなり、その直径は1mm乃至3mmに形成されている。
前記接続線5の直径は、必要に応じて適宜選択することができるが、直径が小さすぎる場合には、大きな電気抵抗となるため好ましくない。また直径が大きすぎる場合には、端子自体が大きくなるため好ましくない。なお、接続線5は、カーボン材7に収容されているカーボンワイヤー発熱体3に容易に接続ができるように、その先端部は尖っている。
【0025】
また、ガラス管6は、従来の場合と同様に、石英ガラス部、グレイデッドシール部、タングステンガラス部によって構成されて、タングステンガラス部によって接続線5をピンチシールしている。(特開2000−228271号公報参照)
【0026】
前記カーボンワイヤー発熱体3としては、複数本のカーボンファイバーを束ねたファイバー束を複数束用いてワイヤー状に編み込んだもの等が用いられる。このカーボンワイヤー発熱体3はガラス管2の内部を挿通させ、カーボン材7まで延設される。
【0027】
前記カーボンワイヤー発熱体3の具体例としては、直径5乃至15μmのカーボンファイバー、例えば、直径7μmのカーボンファイバーを約3000乃至3500本程度束ねたファイバー束を9束程度用いて直径約2mmの編紐、あるいは組紐形状に編み込んだ等のカーボンワイヤーが用いられる。前記の場合において、ワイヤーの編み込みスパンは2乃至5mm程度であり、カーボンファイバーによる表面の毛羽立ちは0.5乃至2.5mm程度である。なお、前記毛羽立ちとは、カーボンファイバーが切断されたものの一部が、カーボンワイヤーの外周面から突出したものである。
【0028】
また、カーボン材7は、図3に示すように二つの直方体形状の部材7A,7Bから構成されている。この二つの部材7A,7Bの相対向面には、カーボンワイヤー発熱体3が収容される溝7a及び接続線5が収容される溝7bが形成されている。
前記溝7a,7bは、カーボンワイヤー発熱体3、接続線5の径よりも若干小さめに形成され、前記溝7a,7bによってカーボンワイヤー発熱体3と接続線と挟持し、両者の接続を確実にしている。このように、カーボン材7のように安価な材料でしかもシンプルな構造で高耐振動性の接合を行なうことができる。
【0029】
具体的に説明すると、前記カーボンワイヤー発熱体3を収容する各カーボン材7A,7Bの溝部7aがV字状であり、二つのカーボン材7A,7Bを重ねた際に前記V字状の溝部7aの組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、カーボンワイヤー発熱体3の直径以下の寸法で形成されている。また、前記接続線5を収容する各カーボン材7A,7Bの溝部7bがV字状であり、二つのカーボン材7A,7Bを重ねた際に前記V字状の溝部7bの組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、接続線の直径以下の寸法で形成されている。
【0030】
このように構成されているため、図2に示すように二つのカーボン材7A,7Bの間には隙間Sが形成されるが、カーボンワイヤー発熱体3及び接続線5を所定の位置に置くことができると共に、カーボン材7A,7Bによってカーボンワイヤー発熱体3及び接続線5を確実に挟持することができる。
なお、前記溝7a,7bの断面形状は、V字形状、半円形状等のいずれの形状であっても良いが、カーボン材7A,7Bによるカーボンワイヤー発熱体3および接続線5の固定をより強固にし、かつ電気的な接続をより安定なものとするためには、前記したV字状であることがより好ましい。
【0031】
さらに、前記カーボンワイヤー発熱体3が、図3(b)に示すように、前記カーボン材7A,7Bの前記接続線5を収容する溝部7bまで配設されることにより、接続線5とカーボンワイヤー発熱体3とを含めた径がより大きくなり、カーボン材7A,7Bのカーボンワイヤー発熱体3の挿入端部側で、カーボン材7A,7Bがカーボンワイヤー発熱体3に圧接し、カーボンワイヤー発熱体3をより強固に挟持することができる。
また、カーボンワイヤー発熱体3が、前記カーボン材7A,7Bの前記接続線5を収容する溝部7bまで配設されることにより、接続線5と電気的に直接接続される。
【0032】
また、弾性体8と接する側のカーボン部材7Bの高さL2は、カーボン材7Aの高さL1よりも低く形成されている。
これは、後述するように、前記カーボン材7及び弾性体8をガラス管2の大径部2b,ガラス管6の内部に収容した際、溝7a(カーボンワイヤー発熱体3)がガラス管2の小径部2aの中心に位置するようにするためである。
【0033】
また、カーボン材7は、上記特定結晶構造、即ち、面間隔d(002)が0.343nm以下、結晶子の大きさLc(002)が4.0nm以上、の結晶構造を有している。上記特定結晶構造のカーボン材7は、例えば、通常のカーボン材7を、不活性ガス雰囲気中、2000℃以上の高温で熱処理して黒鉛化を進行させることにより得られる。
このように黒鉛化したカーボン材7は、ヒータ使用時の温度域内(通常2000℃未満)では、結晶構造の変化を起こさず、即ち、黒鉛化がそれ以上進行しないので電気抵抗値(Ω/m)等の物性変化もほとんど起こさないため、好ましい。
また、カーボン材7が前記したように黒鉛化されているため、前記接続線5をカーボン材7A、7Bの間に挿入する際、摩擦が少なく(抵抗が少なく)、接続線5をカーボン材7A,7Bの間に容易に挿入することができる。また、これを収容するガラス管の破損の危険性を低くすることができる。
【0034】
更に、耐熱性を有する弾性体8はとしては、耐熱性フェルト状体から形成されていることが望ましい。
これによって、高温環境下においても、弾性力を保持することができる。特に、700℃を超える環境下(発熱温度)においては、カーボンフェルトを用いることが好ましく、これによって、この温度でも十分な弾性保持力が得られる。
なお、耐熱性フェルト状体の材質としては、カーボンフェルトのみならず、タングステンやモリブデンからなるフェルト状体でもよい。
【0035】
次に、図5乃至図7に基づいて第二の実施形態について説明する。なお、図1乃至図4に示した部材と同一、あるいは相当する部材については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この第二の実施形態の第一の特徴は、図5に示すように、封止端子部4を構成するガラス管2bの他の封止端子部に対向する側(カーボンワイヤー発熱体3の導出側)の内壁2cを先細り形状とした点にある。前記ガラス管2bの内壁2cを先細り形状としたため、カーボン材7A,7Bを前記ガラス管内2bに収納することにより、前記カーボン材7A,7Bの先端部分は前記内壁2cに沿って先細りになるため、前記カーボンワイヤー発熱体3、接続線5を強固に挟持する。
その結果、カーボンワイヤー発熱体3を十分な張力をもって保持することができると共に、耐振動性をより向上させることができる。
【0036】
また、この第二の実施形態の第二の特徴は、図6、図7に示すように、前記接続線5とカーボン材7A,7Bの溝部7bとによって形成される空隙に、カーボンワイヤー発熱体3端部のカーボンワイヤー10が配設されている点に特徴がある。このカーボンワイヤー10は、編紐あるいは組紐形状に編み込まないことによって形成される。
このように接続線5と溝部7bとによって形成される空隙に、前記カーボンワイヤー10が配設されているために、通電性をより高めることができる。即ち、接続線5とカーボン材7A,7Bとの当接により、相互間の安定した通電を行うと共に、接続線5と溝部7aとによって形成される空隙に前記カーボンワイヤー10を多数存在させることで、通電性をより高めることができる。更に、前記カーボンワイヤー10及び弾性体8の弾力性により、接続線5の挟持力も安定する。
【0037】
更に、この第二の実施形態の第三の特徴は、図6に示すように、弾性体8及びカーボン材7A,7Bとを封止端子部を構成するガラス管2bに収納した状態において、弾性体8が接するカーボン材7Bの高さと弾性体8の高さとの総和h1と、カーボン材7Aの高さh2とを等しくした点にある。このようになすことによって、カーボン材7A、7Bと弾性体8をガラス管2bの内部に収容した際、カーボンワイヤー発熱体3をガラス管2bの中心に位置させることができる。そして、接続線5はガラス管6の中心に位置するため、カーボンワイヤー発熱体3の中心と接続線5の中心を一致させることができる。
その結果、ガラス管2bとガラス管6との溶接が容易になり、前記ガラス管2b、6に無理な応力が生ずることなしに、カーボンワイヤー発熱体3と接続線5とをより安定して接合することができる。
【0038】
次に、前記第一、第二の実施形態にかかるヒータの製造方法について図1乃至図8に基づいて説明する。尚、必要に応じて、第二の実施形態にかかるヒータの製造方法に触れることとする。
まず、接続線5をガラス管6にピンチシールし、封止端子部4の一部を、予め形成する。続いて、ガラス管2内にカーボンワイヤー発熱体3を収容する。即ち、一端側の大径部2bからカーボンワイヤー発熱体3を挿入し、他端側の大径部2bから外部に引き出す。
【0039】
そして、最初に一方の封止端子部を形成するため、引き出されたカーボンワイヤー発熱体3の一端部を、カーボン材7A,7Bの溝7a,7bに入れ、カーボン部材7A,7Bで前記カーボンワイヤー発熱体3を挟む。
【0040】
なお、前記した第二の実施形態にあっては、図7に示すように、カーボンワイヤー発熱体3の端部は、編紐あるいは組紐形状に編み込まれていない状態になっている。そして、カーボンワイヤー発熱体3の編紐あるいは組紐形状に編み込まれている部分をカーボン材7A,7Bの溝7aに入れ、編紐あるいは組紐形状に編み込まれていない部分(カーボンワイヤー10)を溝7bに入れる。そして、カーボン部材7A,7Bで前記カーボンワイヤー発熱体3を挟む。
【0041】
この状態のカーボン材7Bの側面に弾性体8を付けて、前記ガラス管2の一方の大径部2bにカーボン材7の半分程度を収容する。このとき、前記カーボン材7は黒鉛化されているため、摩擦抵抗が少なく、比較的容易に収容することができる。
【0042】
このようにカーボン材7が大径部2bに収容され、カーボンワイヤー発熱体3はカーボン材により挟持されるため、カーボン材7の一端部は固定される。その後、前記カーボン材7の端部から突出したカーボンワイヤー発熱体3を切断する。
【0043】
続いて、前記大径部2bに収容されたカーボン材7の外部に突出した部分を、ガラス管6の内部に収容しながら、前記接続線5をカーボン材7の溝7bに挿入する。
このとき、前記溝7b内にはカーボンワイヤー発熱体3の端部のカーボンワイヤー10が存在するが、接続線5の先端は尖っているため、接続線5はカーボンワイヤー10内を貫通する。その結果、カーボンワイヤー発熱体3と接続線5とは、電気的に確実に接続される。特に、カーボン材7を介しても接続線5からカーボンワイヤー発熱体3へも通電されるため、異常な発熱が生じることがない。
【0044】
しかも、カーボンワイヤー発熱体3を収容する各カーボン材7A,7Bの溝部7aがV字状であり、二つのカーボン材7A,7Bを重ねた際に前記V字状の溝部7aの組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、カーボンワイヤー発熱体3の直径以下の寸法で形成されている。また、前記接続線5を収容する各カーボン材7A,7Bの溝部7bがV字状であり、二つのカーボン材7A,7Bを重ねた際に前記V字状の溝部7bの組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、接続線の直径以下の寸法で形成されている.さらに、前記カーボンワイヤー発熱体3が、前記カーボン材7A,7Bの前記接続線5を収容する溝部7bまで挿通されている。
そのため、前記溝7bに接続線5が挿入されると、図4、図8に示すようにカーボン材7Aとカーボン材7Bとの対向面は、接続線5の挿入側端部に一定の隙間Sが生じる。
言い換えれば、カーボン材7A,7Bのカーボンワイヤー発熱体3の挿入端部側で、カーボン材7A,7Bが圧接し、カーボンワイヤー発熱体3を強固に挟持する。
特に、第二の実施形態にあっては、接続線5がカーボンワイヤー10の中心に挿入されることにより、前記接続線と溝部とによって形成される空隙に、カーボンワイヤー10が配設される。
【0045】
そして、他方の封止端子部を形成するため、まず、他方の大径部2bから引き出されたカーボンワイヤー発熱体3端部を、カーボン材7A,7Bの溝7a,7bに入れ、カーボン部材7A,7Bでカーボンワイヤー発熱体3を挟む。
【0046】
なお、前記した第二の実施形態にあっては、カーボンワイヤー発熱体3の端部は、編紐あるいは組紐形状に編み込まれていない状態になっている。そして、カーボンワイヤー発熱体3の編紐あるいは組紐形状に編み込まれている部分をカーボン材7A,7Bの溝7aに入れ、編紐あるいは組紐形状に編み込まれていない部分(カーボンワイヤー10)を溝7bに入れる。そして、カーボン部材7A,7Bで前記カーボンワイヤー発熱体3を挟む。
【0047】
この状態でカーボン材7Bの側面に弾性体8を付けて、前記ガラス管2の大径部2bに、カーボン材7の半分程度を収容する。このとき、前記カーボン材7は黒鉛化されているため、摩擦抵抗が少なく、比較的容易に収容することができる。
【0048】
その後、カーボン材7の外部に突出したカーボンワイヤー発熱体を引っ張り、所定の張力を与える。このとき、一端側の封止端子部において、前記カーボンワイヤー発熱体3の一端部が強固に挟持されているため、前記カーボンワイヤー発熱体3に、所定の張力を与えることができる。そして、カーボン材7から突出したカーボンワイヤー発熱体を切断する。
【0049】
続いて、大径部2bから外部に突出したカーボン材7をガラス管6の内部に収容しながら、前記接続線5を溝7bに挿入する。
このとき、前記した一端部の封止端子部の場合と同様に、前記溝7b内にはカーボンワイヤー発熱体3が存在するが、接続線5の先端は尖っているため、接続線5はカーボンワイヤー発熱体3内を貫通する。その結果、カーボンワイヤー発熱体3と接続線5とは、電気的に確実に接続される。カーボン材7を介しても接続線5からカーボンワイヤー発熱体3へも通電されるため、異常な発熱が生じることがない。
【0050】
しかも、カーボンワイヤー発熱体3を収容する各カーボン材7A,7Bの溝部7aがV字状であり、二つのカーボン材7A,7Bを重ねた際に前記V字状の溝部7aの組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、カーボンワイヤー発熱体3の直径以下の寸法で形成されている。また、前記接続線5を収容する各カーボン材7A,7Bの溝部7bがV字状であり、二つのカーボン材7A,7Bを重ねた際に前記V字状の溝部7bの組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、接続線の直径以下の寸法で形成されている.さらに、前記カーボンワイヤー発熱体3が、前記カーボン材7A,7Bの前記接続線5を収容する溝部7bまで挿通されている。
そのため、前記溝7bに接続線5が挿入されると、図8に示すようにカーボン材7Aとカーボン材7Bとの対向面は、接続線5の挿入側端部に一定の隙間Sが生じる。
言い換えれば、カーボン材7A,7Bのカーボンワイヤー発熱体3の挿入端部側で、カーボン材7A,7Bが圧接し、カーボンワイヤー発熱体3を強固に挟持する。
特に、第二の実施形態にあっては、接続線5がカーボンワイヤー10の中心に挿入されることにより、前記接続線と溝部とによって形成される空隙に、カーボンワイヤー10が配設される。
【0051】
その後、両封止端子部4,4において、ガラス管6の開放端部と、ガラス管2の大径部2b開放端部とを合わせ、窒素ガス等を流しながら、酸水素バーナーで溶接する。最終的に、前記図示しない枝管から、ガラス管2及びガラス管6を1torrもしくは2torr以下で減圧した後に、この枝管の接続側端部を酸水素バーナーで加熱し封じると共に、枝管を除去する。
【0052】
このように構成されたヒータのカーボンワイヤー発熱体3は、カーボン材7によって挟持され、前記カーボン材7は弾性材8によってガラス管2の大径部2b、ガラス管6の内壁に押し付けられるため、振動環境下において使用した場合であっても、カーボンワイヤー発熱体3は振動することなく、カーボンワイヤー発熱体3と該カーボンワイヤー発熱体2を収容したガラス管2の小径部2aの内壁との接触を抑制することができる。
【0053】
なお、前記カーボン材7は、図9に示すように、その角部7cを面取りするのが良い。このように面取りされたカーボン部材の場合、前記大径部2b、ガラス管6への挿入を容易に行なうことができる。
また、上記実施形態にあっては、図10に示すように、弾性体8をカーボン材7の一方側に入れた場合を示したが、図10(a)に示すように弾性体8をコ字状に形成し、カーボン材7を挟持するように形成しても良い。また、図10(b)に示すように弾性体8をカーボン材7の両側に入れても良い。
【0054】
また、上記実施形態にあっては、カーボンワイヤー発熱体3の少なくとも発熱部が、ガラス管内に配置された場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図11に示すようにカーボンワイヤー発熱体3の発熱部が、板状のガラス体20に配置されていても良い。このヒータについて簡単に説明すると、カーボンワイヤー発熱体3の両端は前記ガラス体20から導出され、前記両端の各々は、前記カーボンワイヤー発熱体3に電力を供給する接続線5と共に各々のガラス管21,22内に配置された導電性部材7A,7Bによって挟持され、前記導電性部材7A,7Bは弾性体8により、前記ガラス管21,22の内壁に押し付けられ固定されている。そしてまた前記ガラス管21,22は、ガラス体20の下面に融着したガラス管23によって一つの密閉空間が形成されている。なお、二つのガラス管21,22を一つのガラス管23で覆っているが、別々のガラス管で覆うことにより、一つの密閉空間を形成しても良い。
【0055】
さらに、上記した実施形態にあっては、発熱部を収納するガラス体(ガラス管)と接続線が収納されるガラス管とを結合させることによって一つの密閉空間が形成される場合を示したが、本発明はこれに限定されることなく、発熱部を収納するガラス体と接続線が収納される二つのガラス管とを、更に別のガラス管で覆うことによって、一つの密閉空間を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかるヒータは、あらゆる産業の加熱手段として用いることができ、特に振動環境下において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明にかかるヒータの第一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の封止端子部示す分解斜視図である。
【図3】図3は、カーボンワイヤー発熱体と接続線との接続構造を示す図である。
【図4】図4は、封止端子部の断面図である。
【図5】図5は、本発明にかかるヒータの第二の実施形態を示す断面図である。
【図6】図6は、図5のI−I断面図である。
【図7】図7は、カーボンワイヤー発熱体と接続線との接続構造を示す図である。
【図8】図8は、カーボンワイヤー発熱体と接続線との接続状態を示す図である。
【図9】図9は、カーボン材の変形例を示す斜視図である。
【図10】図10は、弾性体の変形例を示す斜視図である。
【図11】図11は、他のヒータの形態を示す概略断面図である。
【図12】図11は、従来のヒータの概略断面図である。
【図13】図12は、図11に示したヒータの要部断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ヒータ
2 ガラス管
2a 小径部
2b 大径部
3 カーボンワイヤー発熱体
4 封止端子部
5 接続線
6 ガラス管
7 カーボン材(導電性部材)
7A カーボン材(導電性部材)
7B カーボン材(導電性部材)
10 カーボンワイヤー
21 板状ガラス体
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス体内に封入されたカーボンワイヤー発熱体と、前記カーボンワイヤー発熱体に電力を供給する接続線を有する二つの封止端子部とを備えたヒータであって、
前記封止端子部は、前記カーボンワイヤー発熱体と接続線とを導電性部材によって挟持し、かつ、前記導電性部材と弾性体とが封止端子部を構成するガラス管の内部に収容され、前記導電性部材が弾性体によってガラス管の内壁に押し付けられることにより、ガラス管の内壁に固定されるように構成されていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記弾性体が、前記導電性部材の少なくとも一側面及びガラス管の内壁に接して、前記ガラス管の内部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載されたヒータ。
【請求項3】
前記導電性部材は二つの部材から構成され、前記導電性部材の相対向する面には、前記カーボンワイヤー発熱体が収容される溝部と接続線が収容される溝部とが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたヒータ。
【請求項4】
封止端子部を構成するガラス管において、カーボンワイヤー発熱体の導出側の内壁を先細り形状としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたヒータ。
【請求項5】
前記弾性体が前記導電性部材の一側面にのみ存在し、前記二つの導電性部材のうち、弾性体が接する導電性部材の高さが他の導電性部材の高さよりも低いことを特徴とする請求項3に記載されたヒータ。
【請求項6】
前記弾性体及び導電性部材を、封止端子部を構成するガラス管に収納した状態において、前記二つの導電性部材のうち弾性体が接する導電性部材の高さと弾性体の高さとの総和と、他の導電性部材の高さが等しいことを特徴とする請求項5に記載されたヒータ。
【請求項7】
前記カーボンワイヤー発熱体を収容する各導電性部材の溝部がV字状であり、二つの導電性部材を重ねた際に前記V字状の溝部の組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、カーボンワイヤー発熱体の直径以下の寸法で形成され、かつ前記接続線を収容する各導電性部材の溝部がV字状であり、二つの導電性部材を重ねた際に前記V字状の溝部の組合せで生じる四角形の対向する辺の距離が、接続線の直径以下の寸法で形成されていることを特徴とする請求項3に記載されたヒータ。
【請求項8】
前記カーボンワイヤー発熱体が、前記導電性部材の前記接続線を収容する溝部まで挿通されていることを特徴とする請求項3または請求項7に記載されたヒータ。
【請求項9】
前記接続線と溝部とによって形成される空隙に、前記カーボンワイヤー発熱体端部のカーボンワイヤーが配設されていること特徴とする請求項3または請求項7に記載されたヒータ。
【請求項10】
前記導電性部材は、黒鉛化処理されたカーボン材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたヒータ。
【請求項11】
前記弾性体は耐熱性フェルト状体から形成されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項5、請求項6、請求項7のいずれかに記載されたヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−128058(P2006−128058A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22458(P2005−22458)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】