説明

ヒートシール装置

【課題】ヒートシールバー、とくに横ヒートシールバーのシールロール本体への着脱が容易なヒートシール装置を提案する。
【解決手段】平行に近接配置された一対のシールロール本体と、これらシールロール本体の周方向の複数個所に、搬送フィルムを横切る方向に延在させて設けられたヒートシールバーと、前記シールロール本体の、軸線方向へ離間する少なくとも二個所に、周面にて相互に接触する一対の位置規制用フランジとからなり、かつ前記ヒートシールバーを、シールロール本体に対して着脱可能に取付けてなるヒートシール装置において、前記ヒートシールバーが、シールロール本体に耐熱性磁石により取付けられているヒートシール装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製フィルムをヒートシールして、主として液状の飲食物や調味料等の充填物質(被包装物)を充填包装するための液体充填包装機等に設置されるヒートシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。図1は、その従来装置の1例を示すものである。図中の1は、スリッター処理を終えたフィルム材料の巻取ロールを示し、2、3はそれぞれ、巻取ロール1から繰り出されるフィルム材料のガイドロールを示す。ここで、巻取ロール1から繰り出されるフィルム材料、たとえば積層プラスチックフィルム4は、ガイドロール2、3を経た後、フィルム折り畳み機構5によって幅方向に二つ折りにされ、次いで、積層プラスチックフィルム4の引き出しロールとしても作用する縦シールロール6および横シールロール7に順次に送給される。
【0003】
ここで、縦シールロール6は、平行に近接配置されるとともに、相互に逆方向へ回転駆動される二本一対のシールロール本体6aと、該シールロール本体6aに内装したヒータと、該シールロール本体6aの周方向へ延在させて設けた、フランジ状のヒートシール部材6bとを具えてなり、かつその縦シールロール6は、これらのロール間を通過する積層プラスチックフィルム4の幅方向の遊端部を、図に斜線で示すように、縦方向にヒートシールすべく機能するものである。
【0004】
次に、横シールロール7は、シールロール本体6aと同様に配置されるとともに、回転駆動される二本一対のシールロール本体7aと、各シールロール本体7aに内蔵したヒータHと、そのシートロール本体7aの長さ方向へ延在して周方向へ弧状をなすヒートシールバー7bとを具えている。ここで、積層プラスチックフィルム4は、この横シールロール7によって、長さ方向の所定間隔毎に、図中に斜線で示すような、横方向のヒートシールを施される。
【0005】
このようにして縦方向および横方向のヒートシールが順次に施されるプラスチックフィルム4への、液体もしくは粘稠物質の充填は、ノズル8によって、縦シール終了後のプラスチックフィルム4の内側へそれを供給することにて行われ、そして、かかる充填および横シールを終了した後のプラスチックフィルム4は、横シールロール7の下方に配置したカッタロール9によって、横シール部分10の中間部から、多くは一袋づつ切断される。
【0006】
この特許文献1に開示された発明は、ヒートシール部材相互間に生成するクリアランス調整を不要にするために位置規制用フランジの採用と、シールロールにつきそのシールロール本体とは別体にかつ着脱可能に設けられるヒートシール部材とを採用したところに特徴を有するものである。
【0007】
このように、シールロール本体とヒートシール部材とを別体にすることで、シールロール成形加工の工数や材料歩留りの低減、該ヒートシール部材の一部だけが摩耗、その他の損傷を受けた場合に、その損傷部材のみを交換すれば足りる点で、この従来のヒートシール装置は画期的な効果が期待できる。
【0008】
ただし、特許文献2、特許文献3に開示され、また、図2に示すように、上記従来のヒートシール装置は、シールロール本体への前記ヒートシールバーの取付けを、ボルト11による締め付け固定を行うのが一般的である。
【特許文献1】特開平1−228826号公報
【特許文献2】特開平4−114841号公報
【特許文献3】特開平8−301237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来のヒートシール装置はいずれも、シールロール本体7aへのヒートシールバー7bの取付けを、ボルト11によって締め付け固定する方法で行っていた。この種の構造は、該ヒートシールバー7bの取付け、取外しの作業に時間がかかると共に、シールロール本体7bへのねじ孔の穿設およびヒートシールバー7bへのボルト挿通孔の形成に伴う製品のコストが上がること、装置の稼動効率の低下ひいては液体充填包装袋の生産性の低下を招くという課題を抱えていた。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ヒートシールバー、とくに横ヒートシールバーのシールロール本体への着脱が容易なヒートシール装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的の実現に向けた研究の中で、発明者らは、ヒートシールバー固定手段としてボルトなどの治具の使用に代え、ある種の磁石を利用することで、熱障害や腐食の問題を招くことなくシールロール本体へのヒートシールバーの着脱が容易になることを知見した。とくに、こうした磁石として第1に耐熱性に優れること、第2に高い磁気特性を有すること、そして、第3に耐食性に優れる磁石の採用こそが、例えば、液体充填包装袋のヒートシール装置として好適に用いられることがわかり、本発明を開発するに到った。
【0012】
即ち、本発明は、互いに逆方向に回転駆動される平行に近接配置された一対のシールロール本体と、これらシールロール本体内に内装されたヒータと、これらシールロール本体の周方向の複数個所に、搬送フィルムを横切る方向に延在させて設けられた横ヒートシールするためのヒートシールバーと、前記シールロール本体の、軸線方向へ離間する少なくとも二個所に、周面にて相互に接触する一対の位置規制用フランジとからなり、かつ前記ヒートシールバーを、シールロール本体に対して着脱可能に取付けてなるヒートシール装置において、前記ヒートシールバーが、シールロール本体に耐熱性磁石により取付けられていることを特徴とするヒートシール装置である。
【0013】
また、本発明においては、前記耐熱性磁石として、サマリウムコバルトを用いること、1または複数個がシートロール本体のヒートシールバー取付けテラス部に、直接もしくは非磁性材料を介して取付けられるようにすること、ヒートシールバー底面との間に若干の隙間を介して取付けられるようにすること、シールロール本体に耐熱性無機接着剤を介して固着されてることが、より効果的な解決手段となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、横ヒートシールバーのシールロール本体への取付け、取外しが短時間で簡単にできるので、該ヒートシールバーの交換作業が容易になる。
また、本発明によれば、ねじ孔の穿孔などが不要になる結果、シールロール本体やヒートシールバー自体の成形加工が容易になり、製作コストの低減を図ることができる。さらに、本発明によれば、ヒートシール装置を使う液体充填袋等のフィルム包装機の稼働率、生産性を向上させることによって、製品(液体充填包装袋等)を安価に製造することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図3は、本発明の一実施形態を示す横シールロール7であって、主として、シールロール本体7a、ヒートシールバー7b、該シールロール本体内に挿入されたヒータHとで構成されている他、ロール相互間の軸間距離を規制するための、相互に対向させる一対の位置規制用フランジ15、15’を取付けてなるものである。
【0016】
前記シールロール本体7aは、円柱状鋼製基材のロール周方向の複数個所、すなわちヒートシールバー7bを該ロール本体の周方向に等間隔に取付け数、例えば、図示例ではロール周方向の4ヶ所に、ロール周面の接線方向を長手方向(軸方向)に切断して得られるバー取付けテラス7cを欠設してなるものである。また、このシールロール本体7aの前記バー取付けテラス7cの回転方向の前方、即ち、フィルムFの送り方向側には、突当たり壁7dが形成されている。
【0017】
そして、前記シールロール本体7aの前記突当たり壁7dに隣接する前記バー取付けテラス7c部には、前記ヒートシールバー7bを着脱可能に取付けるために、本発明においてとくに採用した、耐熱性磁石12の1または複数個が、好ましくは埋設状態にて固定される。
【0018】
この耐熱性磁石12の前記取付けテラス7c部への固定は、磁石上面が取付けテラス平面と同一か、若干低く収まるようにして、このバー取付けテラス7c上に着脱可能に取付けられる前記ヒートシールバー7b底面との間に、若干のクリアランスCが生じるようにして行うことが好ましい。これは磁石の破損を防ぐ上で有効である。
【0019】
かかる耐熱性磁石12の前記バー取付けテラスへの配置形態は、図5(b)に示すように、複数個をロールの軸方向に等間隔に配置する場合の他、図6(a)〜(c)に示すように、ユニットタイプ磁石を用いるもの(a)、複合材料中に埋設したものを用いるもの(b)、複数個の短冊状のものを軸方向に配置したもの(c)などの例が有利に適合する。もちろん、これらの例だけに限定されるものではない。
【0020】
なお、上記の配置例において、磁石は一般に焼結金属であり、溶製材である基材金属(鋼材)に比べると熱伝導率が悪いので、好ましくは、図5(a)や図6(c)のようにヒートシールバー7bとシールロール本体7aとが直接接する個所が多く残るようにする。ただし、図4、図5に示すように、ヒートシールバー7bにヒートパイプ13を設置する場合はこの限りではなく、図6(a)に示すようなユニットタイプを用いてもよい。
【0021】
前記耐熱性磁石12のシールロール本体7aの固定に当たっては、接着剤、例えば、東亜化学株式会社製の「アロンセラミックD(登録商標)」のような耐熱性無機接着剤を用いることが好ましい。もちろん、螺子止めなどでもよいが、接着剤による固定が有利である。ただし、鋼製のシールロール本体7aとの間で磁着させるので、この接着剤は使用しなくてもよい。
【0022】
本発明において使用できる前記耐熱性磁石12としては、希土類磁石、なかでも、サマリウムコバルト磁石(Sm−Co)が好適であり、ネオジウム(Nd)磁石(Nd−Fe−B)についても、防錆用Niメッキを施せば使用が可能である。これらの磁石は温度特性に優れ、とくに前者は使用可能温度が高く、250〜350℃(キューリー点700〜800℃)であり、熱膨張率(垂直方向)=12.5μm/(m・k)で熱減磁も小さいという特徴がある。また、後者は磁力(BH)、保磁力(Hc)が共に高く比較的安価である。このような耐熱特性があれば、包装用プラスチックフィルムのヒートシール(180〜220℃)の使用温度域での使用に十分に耐え得るものである。しかも、これらの磁石は、上記の条件であれば、磁気特性はもちろんのこと、耐熱性だけでなく、耐食性もまた良好で、前記ヒートシールバー7bの磁着治具として極めて有効である。
【0023】
上述した耐熱性磁石12を介して、ヒートシールバー7bをシールロール本体7aに取り付けたり、取り外したりする場合、ドライバーなどの治具を使って取付け位置調整や取外しを容易にするために、該シールロール7aには、図3、図5(b)に示すように、治具の挿し込みピット14などを設けておくことは有効である。
【0024】
このようにシールロール本体7a上に磁石12を介して取付けたヒートシールバー7bは、ロール回転方向側、すなわちフィルムF送り側に設けらている突当たり壁7dおよび前記位置規制用フランジ15、15’によって限局されるため、余分な負荷による離脱を確実に防ぐことができる。
【0025】
なお、この位置規制用フランジ15、15’は、シールロール本体7aの各々の、軸線方向の少なくとも2個所、図では両端部に、好ましくはそれらのシールロール本体7aとは別体に構成されて、同一直径の円形輪郭を有するフランジであって、対向するロール周面を相互に当接可能ならしめると共に、各シールロール本体7aに、それぞれ位置規制用フランジ間で、それら長さ方向へ延在させた前記ヒートシールバー7bを取付けた場合に、該ヒートシールバー7bの周面を該フランジ外周縁よりも幾分(積層フィルム厚相当分)半径方向内方に位置させたものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のヒートシール装置は、液状や粘稠性の飲料や調味料、スープその他の流動性物質を充填したプラスチックフィルム製包装袋のヒートシール、とくに横ヒートシールを行うときに用いられるものとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】液体自動充填機の略線図である。
【図2】従来のヒートシール装置の断面図である。
【図3】ヒートシール装置の部分斜視図である。
【図4】本発明のヒートシール装置の断面図である。
【図5】本発明のヒートシール装置の部分断面図である。
【図6】磁石の配列例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 磁石ロール
2、3 ガイドロール
4 フィルム
5 折畳み機構
6 縦シールロール
7 横シールロール
7a シールロール本体
7b ヒートシールバー
7c バー取付けテラス
7d 突当たり壁
11 締付けボルト
12 耐熱性磁石
13 ヒートパイプ
14 挿し込みピット
15 位置規制用フランジ
H ヒーター
F フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆方向に回転駆動される平行に近接配置された一対のシールロール本体と、これらシールロール本体内に内装されたヒータと、これらシールロール本体の周方向の複数個所に、搬送フィルムを横切る方向に延在させて設けられた横ヒートシールするためのヒートシールバーと、前記シールロール本体の、軸線方向へ離間する少なくとも二個所に、周面にて相互に接触する一対の位置規制用フランジとからなり、かつ前記ヒートシールバーを、シールロール本体に対して着脱可能に取付けてなるヒートシール装置において、
前記ヒートシールバーが、シールロール本体に耐熱性磁石により取付けられていることを特徴とするヒートシール装置。
【請求項2】
前記耐熱性磁石が、サマリウムコバルトであることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール装置。
【請求項3】
前記耐熱性磁石は、1または複数個がシートロール本体のヒートシールバー取付けテラス部に、直接もしくは非磁性材料を介して取付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートシール装置。
【請求項4】
前記耐熱性磁石は、ヒートシールバー底面との間に若干の隙間を介して取付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒートシール装置。
【請求項5】
前記耐熱性磁石は、シールロール本体に耐熱性無機接着剤を介して固着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒートシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−265812(P2008−265812A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111357(P2007−111357)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(504406449)
【出願人】(504405246)
【出願人】(506332971)
【Fターム(参考)】