説明

ビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システム

【課題】本発明は、ジンバル制御システムにビルトインテスト回路を設け、このビルトインテスト回路によって励磁信号の有無を検出し、異常時のジンバルの損傷を防止することを目的とする。
【解決手段】本発明によるビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システムは、ジンバル制御システム(2)にビルトインテスト回路(18)が内蔵され、このビルトインテスト回路(18)により、レゾルバリファレンス出力回路(13)からの励磁信号(14)の有無を検出し、この励磁信号(14)が停止した状態で三相ブラシレスモータ(7)への駆動信号(6)を停止し、ジンバルのストッパへの可動子の衝突を防止し、ジンバルの損傷防止を行う構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システムに関し、特に、ジンバルの駆動を制御するジンバル制御システムにレゾルバの動作が正常か否かの判定を行う回路をビルトインテスト回路として内蔵させ、三相ブラシレスDCモータへの三相切替信号を生成する場合、レゾルバリファレンス出力回路からの励磁信号の異常を検出して三相ブラシレスモータの暴走を防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のジンバル制御システムとしては、社内製作のみで特許出願等を行っていないため、これを示すための特許文献等を示していないが、従来構成としては、図2に示される通りである。
【0003】
図2において符号1で示されるものは、図示しないジンバルの制御を行うためのジンバル制御システム2のCPUであり、このCPU1からの駆動指令4はモータドライブ回路5に入力され、このモータドライブ回路5からの三相モータ駆動信号6は三相ブラシレスモータ7に入力され、三相ブラシレスモータ7の駆動が行われるように構成されている。
【0004】
前記三相ブラシレスモータ7に設けられたレゾルバ8からの角度信号9はR/D変換回路10に入力され、このR/D変換回路10からのデジタル化された角度情報11は前記CPU1に入力され、このR/D変換回路10からのU・V・W切替信号12は前記モータドライブ回路5に入力されている。
さらに、レゾルバリファレンス出力回路13からの励磁信号14は、前記レゾルバ8及びR/D変換回路10に入力されている。
【0005】
従って、前述の構成によるジンバル制御システム2は、図示しないジンバルに搭載され、ここでは1個の三相ブラシレスモータ7しか示されていないが、実際には、検出軸数に応じた三相ブラシレスモータ7が採用されている。
前記レゾルバ8により検出された角度信号9に基づいて角度情報11がCPU1に送られ、CPU1からの駆動指令4に基づいて三相モータ駆動信号6が三相ブラシレスモータ7に供給されて三相駆動され、ジンバルの第1軸又は第2軸等の駆動が行われ、ジンバルによる空間安定動作等を得ることができる。尚、前記レゾルバ8は、三相ブラシレスモータ7と一体状に設けられ前記ジンバル(図示せず)の回転角度を検出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のジンバル制御システムは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図2のジンバル制御システムにおいては、レゾルバの励磁信号を監視していないため、この励磁信号を発生するレゾルバリファレンス出力回路に異常(例えば、停止状態)が発生すると、三相のU,V,W切替信号が全く異なる角度の信号に変化してしまうため、モータ駆動制御系(図2の点線四角部分A)が暴走して三相ブラシレスモータを大きく回転させ、ジンバルの回転軸が大きい力で回転し、機械的なストッパに激しく衝突してジンバルを破損させるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システムは、CPUからの駆動指令に基づきモータドライブ回路から出力される三相モータ駆動信号により駆動される三相ブラシレスモータと、前記三相ブラシレスモータにより駆動されるジンバルに設けられ前記ジンバルの回転角度を検出するレゾルバと、前記レゾルバからの角度信号をR/D変換して角度情報を前記CPUに供給するR/D変換回路と、前記レゾルバ及びR/D変換回路に励磁信号を供給するためのレゾルバリファレンス出力回路と、よりなり、前記角度情報に基づいて前記三相ブラシレスモータに前記三相モータ駆動信号が供給されるようにしたジンバル制御システムにおいて、前記励磁信号が入力される波形生成器と、前記波形生成器からの矩形波信号が入力されるサンプルホールド回路と、からなるビルトインテスト回路を有し、前記サンプルホールド回路から前記CPUに入力されるステータス情報が、正常時は前記CPUからの駆動指令が通常出力で前記三相ブラシレスモータが駆動され、前記ステータス情報が、異常時は前記CPUからの駆動指令が出力停止となり、前記三相ブラシレスモータが停止する構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システムは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、CPUからの駆動指令に基づきモータドライブ回路から出力される三相モータ駆動信号により駆動される三相ブラシレスモータと、前記三相ブラシレスモータにより駆動されるジンバルに設けられ前記ジンバルの回転角度を検出するレゾルバと、前記レゾルバからの角度信号をR/D変換して角度情報を前記CPUに供給するR/D変換回路と、前記レゾルバ及びR/D変換回路に励磁信号を供給するためのレゾルバリファレンス出力回路と、よりなり、前記角度情報に基づいて前記三相ブラシレスモータに前記三相モータ駆動信号が供給されるようにしたジンバル制御システムにおいて、前記励磁信号が入力される波形生成器と、前記波形生成器からの矩形波信号が入力されるサンプルホールド回路と、からなるビルトインテスト回路を有し、前記サンプルホールド回路から前記CPUに入力されるステータス情報が、正常時は前記CPUからの駆動指令が通常出力で前記三相ブラシレスモータが駆動され、前記ステータス情報が、異常時は前記CPUからの駆動指令が出力停止となり、前記三相ブラシレスモータが停止する構成としたことにより、励磁信号が停止した場合には、ビルトインテスト回路の作用により、直ちに三相ブラシレスモータの駆動が停止され、ジンバルの暴走を未然に防ぐことができ、ジンバル機構の損傷を防止することができる。
また、異常発生時も、故障部位の特定を迅速に行うことができ、復旧作業の時間を大幅に短縮することができる。
また、このビルトインテスト回路の構成も極めて単純であり、部品実装時の負担が小さく、小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システムを示すブロック図である。
【図2】従来構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ジンバルの駆動を制御するジンバル制御システムにレゾルバの動作が正常か否かの判定を行う回路をビルトインテスト回路として内蔵させ、三相ブラシレスDCモータへの三相切替信号を生成する場合、レゾルバリファレンス出力回路からの励磁信号の異常を検出して三相ブラシレスモータの暴走を防止するようにしたビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システムを提供することを目的とする。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明によるビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システムの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは、図示しないジンバルの制御を行うためのジンバル制御システム2のCPUであり、このCPU1からの駆動指令4はモータドライブ回路5に入力され、このモータドライブ回路5からの三相モータ駆動信号6は三相ブラシレスモータ7に入力され、三相ブラシレスモータ7の駆動により、図示しないジンバル機構のジンバルの有限角内の駆動が行われるように構成されている。
【0012】
前記三相ブラシレスモータ7に一体状又は別体に設けられ前記ジンバルの回転角を検出するレゾルバ8からの角度信号9はR/D変換回路10に入力され、このR/D変換回路10からのデジタル化された角度情報11は前記CPU1に入力され、このR/D変換回路10からのU・V・W切替信号12は前記モータドライブ回路5に入力されている。
さらに、レゾルバリファレンス出力回路13からの励磁信号14は、前記レゾルバ8及びR/D変換回路10に入力されている。
【0013】
以上の構成は、前述の図2の構成と同一であるが、本発明においては、前述の図2の構成に対して図1の点線で示されるビルトインテスト回路18を付加した構成である。
前記レゾルバリファレンス出力回路13からの前記励磁信号14は、フォトカプラからなる波形生成器20で矩形波信号21に変換され、この矩形波信号21は周知のPLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)からなりクロック回路24のクロック信号25が入力されるサンプルホールド回路22に入力され、このサンプルホールド回路22からの正常H1又は異常L0からなるステータス情報23が前記CPU1に入力されるように構成されている。
【0014】
従って、前記波形生成器20、サンプルホールド回路22及びクロック回路24によりビルトインテスト回路18が構成されている。
前述の構成において、前記ジンバル制御システム2を作動させ、三相ブラシレスモータ7が駆動され、図示しないジンバル機構のジンバルの駆動を行い、前記レゾルバ8によって得られた角度信号9に基づく角度情報11がCPU1に送られ、補正された駆動指令4により前記三相ブラシレスモータ7が駆動されて安定した前記ジンバル機構の駆動が行われる。
【0015】
前述の状態で、前記レゾルバリファレンス出力回路13からの正弦波信号からなる励磁信号14は、波形生成器20によりTTLレベルの矩形波信号21に変換された後、前記サンプルホールド回路22ではこの矩形波信号21が入力し続けている限り、正常のH1レベルを維持し、前記CPU1は角度情報11に基づいた駆動指令4で三相ブラシレスモータ7の駆動を行う。
【0016】
次に、前述のジンバル機構の駆動状態において、前記レゾルバリファレンス出力回路13に異常が発生して励磁信号14が停止した場合、前記矩形波信号21が停止状態となり、前記サンプルホールド回路22からのステータス情報23が、それまでの正常H1レベルから異常L0レベルに切換わり、前記CPU1の処理が行われ、異常時として駆動指令4の発生が停止し、三相ブラシレスモータ7の駆動が停止し、その暴走が停止されて前述の従来のジンバル機構の損傷発生が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によるビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システムは、ジンバル制御システムに限ることなく、例えば、工作機やロボット等の制御システムに適用できる。
【符号の説明】
【0018】
1 CPU
2 ジンバル制御システム
4 駆動指令
5 モータドライブ回路
6 三相モータ駆動信号
7 三相ブラシレスモータ
8 レゾルバ
9 角度信号
10 R/D変換回路
11 角度情報
12 U・V・W切替信号
13 レゾルバリファレンス出力回路
14 励磁信号
18 ビルトインテスト回路
20 波形生成器
21 矩形波信号
22 サンプルホールド回路
23 ステータス情報
24 クロック回路
25 クロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPU(1)からの駆動指令(4)に基づきモータドライブ回路(5)から出力される三相モータ駆動信号(6)により駆動される三相ブラシレスモータ(7)と、前記三相ブラシレスモータ(7)により駆動されるジンバルに設けられ前記ジンバルの回転角度を検出するレゾルバ(8)と、前記レゾルバ(8)からの角度信号(9)をR/D変換して角度情報(11)を前記CPU(1)に供給するR/D変換回路(10)と、前記レゾルバ(8)及びR/D変換回路(10)に励磁信号(14)を供給するためのレゾルバリファレンス出力回路(13)と、よりなり、前記角度情報(11)に基づいて前記三相ブラシレスモータ(7)に前記三相モータ駆動信号(6)が供給されるようにしたジンバル制御システムにおいて、
前記励磁信号(14)が入力される波形生成器(20)と、前記波形生成器(20)からの矩形波信号(21)が入力されるサンプルホールド回路(22)と、からなるビルトインテスト回路(18)を有し、前記サンプルホールド回路(22)から前記CPU(1)に入力されるステータス情報(23)が、正常時は前記CPU(1)からの駆動指令(4)が通常出力で前記三相ブラシレスモータが駆動され、前記ステータス情報(23)が、異常時は前記CPU(1)からの駆動指令(4)が出力停止となり、前記三相ブラシレスモータ(7)が停止する構成としたことを特徴とするビルトインテスト回路を内蔵したジンバル制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−211691(P2010−211691A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59347(P2009−59347)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】