説明

フェノール樹脂発泡体

【課題】 難燃・防火性に優れ、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有する耐食フェノール樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤および無機フィラーを含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなる発泡体であって、前記発泡剤が、炭素数2〜5の塩素化脂肪族炭化水素化合物を含み、発泡体のpHが3.0以上のフェノール樹脂発泡体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェノール樹脂発泡体、さらに詳しくは、難燃・防火性に優れ、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有する耐食フェノール樹脂発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フェノール樹脂発泡体は、断熱性、難燃・防火性などに優れることから、断熱材として建築その他の産業分野において使用されている。
独立セル構造を有するフェノール樹脂発泡体は、経時安定性の良好な断熱性能を有することが知られており、この独立セル構造を有するフェノール樹脂発泡体を製造する方法として、クロロプロパンを含む物理的発泡手段を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、フェノール樹脂発泡体の製造においては、一般にフェノール樹脂、発泡剤及び硬化剤を少なくとも含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させる方法が用いられ、そして、前記硬化剤として、酸硬化剤、例えば硫酸や、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸が使用されている。したがって、得られるフェノール樹脂発泡体は、前記酸硬化剤を含むため、例えば雨などで濡れた場合、該酸硬化剤が水で抽出される。その結果、前記フェノール樹脂発泡体に金属部材が接触している場合、あるいは該発泡体の近傍に金属部材が存在する場合、その金属部材は腐食を受けやすいという問題が生じる。
【0004】
【特許文献1】特公平5−87093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで、難燃・防火性に優れ、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有する耐食フェノール樹脂発泡体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有するフェノール樹脂発泡体を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、発泡剤として、炭素数が特定の範囲にある塩素化脂肪族炭化水素化合物、好ましくはクロロプロパン類を含むものを用いると共に、硬化剤の使用量を制御し、炭酸カルシウムなどの無機フィラーを加えることにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤および無機フィラーを含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなる発泡体であって、前記発泡剤が、炭素数2〜5の塩素化脂肪族炭化水素化合物を含み、発泡体のpHが3.0以上であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体、
(2) 炭素数2〜5の塩素化脂肪族炭化水素化合物がクロロプロパン類である上記(1)項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(3) 発泡性フェノール樹脂成形材料が、フェノール樹脂100重量部当たり、発泡剤1〜20重量部を含む上記(1)または(2)項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(4) 硬化剤が、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ナフトールスルホン酸及びフェノールスルホン酸の中から選ばれる少なくとも1種である上記(1)ないし(3)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(5) 発泡性フェノール樹脂成形材料が、フェノール樹脂100重量部当たり、硬化剤5〜25重量部を含む上記(4)項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(6) 無機フィラーが、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、および金属粉末の中から選ばれる少なくとも1種である上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(7) 熱伝導率が0.022W/m・K以下であり、かつ透湿係数が60ng/m・s・Pa以下である上記(1)ないし(6)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(8) 独立気泡率が85%以上であり、酸素指数が29以上である上記(1)ないし(7)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(9) 少なくとも一方の表面に、面材を設けてなる上記(1)ないし(8)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体、および
(10) 面材が、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、ケイ酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種である上記(9)項に記載のフェノール樹脂発泡体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発泡剤として炭素数2〜5の塩素化脂肪族炭化水素化合物を含むものを用い、かつ硬化剤の使用量を制御し、炭酸カルシウムなどの無機フィラーを加えることにより、難燃・防火性に優れ、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有する耐食フェノール樹脂発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、硬化剤、無機フィラー並びに所望により、可塑剤および尿素を含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなるものである。
【0010】
前記フェノール樹脂は、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類及びその変性物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルカリを触媒量添加し、反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂が好ましいが、これに限定されるものではない。フェノール類とアルデヒド類の使用割合については特に限定はないが、通常モル比で1:1.5〜1:3.0程度、好ましくは1:1.8〜1:2.5である。
【0011】
本発明においては、前記発泡剤として、炭素数2〜5の塩素化脂肪族炭化水素化合物を含むものが用いられる。この炭素数2〜5の塩素化脂肪族炭化水素化合物は、炭素数2〜5の直鎖状、分岐状の脂肪族炭化水素の塩素化物であり、塩素原子の結合数については特に制限はないが、1〜4個程度が好ましい。このような塩素化脂肪族炭化水素化合物の例としては、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリドなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよいが、これらの中では、プロピルクロリドやイソプロピルクロリドなどのクロロプロパン類が好ましく、特にイソプロピルクロリドが好適である。
発泡剤として、このような塩素化脂肪族炭化水素化合物を用いることにより、得られる発泡体は、初期熱伝導率が低く、断熱性能が良好となる。
【0012】
本発明で使用される発泡剤は、塩素化脂肪族炭化水素化合物を含むことを特徴とするが、本発明のフェノール樹脂発泡体の性能や物理的性質を損なわない範囲で、例えば1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン等の弗素化炭化水素化合物(代替フロン)、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等の塩弗素化炭化水素化合物、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系化合物、イソプロピルエーテル等のエーテル化合物、窒素、アルゴン、炭酸ガス等の気体、空気等を適宣・適量加えることが出来る。その量は、塩素化脂肪族炭化水素化合物に対して、好ましくは、0.1〜20%、より好ましくは0.5〜15%である。
【0013】
本発明においては、前記発泡剤の使用量は、前述のフェノール樹脂100重量部に対して、通常1〜20重量部、好ましくは5〜10重量部である。
本発明においては、前記硬化剤として、酸硬化剤、例えば硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸が用いられる。これらの中でベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸及びフェノールスルホン酸が好ましく、特にパラトルエンスルホン酸およびキシレンスルホン酸が好適である。
【0014】
本発明においては、これらの硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その使用量は、硬化剤の種類にもよるが、前記フェノール樹脂100重量部当たり、通常5〜25重量部、好ましくは7〜20重量部の範囲である。該硬化剤の使用量が、上記の範囲にあれば、硬化剤としての機能を良好に発揮し得ると共に、発泡体のpHを3.0以上に制御することができる。より好ましい硬化剤の使用量は、10〜20重量部である。
【0015】
本発明において用いられる無機フィラーは、熱伝導率および酸性度が低く、かつ防火性の向上したフェノール樹脂発泡体を与えることができる。この無機フィラーの使用量は、前述のフェノール樹脂100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜10重量部である。
【0016】
この無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛などの金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛などの金属の炭酸塩を含有させることができる。これらの無機フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において用いられる整泡剤としては、例えばポリシロキサン系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油のエチレンオキシド付加物などの非イオン性界面活性剤が好ましく挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明においては、以下に示す理由により、所望により可塑剤が用いられる。
フェノール樹脂発泡体を始め、プラスチック系断熱材の断熱性能は、その熱伝導率が、製造時から経時的に変化することが確認されている。これは、気泡内ガスの系外への拡散によるもので、発泡剤が気泡膜を透過して徐々に大気中の空気と置換されていく現象である。したがって、フェノール樹脂発泡体においても、その熱伝導率が経時的に増大して、断熱性能が経時的に劣化するという現象が生じる。
【0019】
このフェノール樹脂発泡体の経時劣化の原因の一つとして、該フェノール樹脂発泡体の気泡壁の柔軟性が時間と共に劣化する現象が考えられる。したがって、フェノール樹脂発泡体の劣化を抑制するための手段の一つとして、該気泡壁に柔軟性を付与することを挙げることができる。可塑剤の添加は、発泡体の気泡壁に柔軟性を付与し、断熱性能の経時的な劣化を抑制するために行われるものである。
【0020】
該可塑剤としては、特に制限はなく、従来フェノール樹脂発泡体において使用されている公知の可塑剤、例えばリン酸トリフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチルなどを用いることができる。さらに、ポリエステルポリオールを用いることもできる。
【0021】
特に、ポリエステルポリオールは、親水性かつ界面活性に優れるエステル結合およびヒドロキシル基を含む構造を有しているので、親水性のフェノール樹脂液と相溶性がよく、フェノール樹脂と均一に混合することができる。また、該ポリエステルポリオールを用いることにより、気泡の偏在を回避し、発泡体全体に気泡を均一に分布させ、品質的にも均質なフェノール樹脂発泡体が生成しやすくなり、好ましい可塑剤である。
【0022】
本発明においては、前記可塑剤は、前述のフェノール樹脂100重量部に対して、通常0.1〜20重量部の範囲で用いられる。該可塑剤の使用量が上記の範囲にあると、得られるフェノール樹脂発泡体の他の性能を損なうことなく、気泡壁に柔軟性を付与する効果が良好に発揮される。該可塑剤の好ましい使用量は0.5〜15重量部であり、より好ましくは1〜12重量部である。
【0023】
本発明において、所望により用いられる尿素は、初期熱伝導率が低く、さらに強度、特に低脆性のフェノール樹脂発泡体を与えることができる。この尿素の使用量は、前述のフェノール樹脂100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは3〜7重量部である。
【0024】
当該発泡性フェノール樹脂成形材料は、例えば、前述のフェノール樹脂に、前記の無機フィラー、整泡剤、さらには可塑剤及び尿素を加えて混合し、この混合物に、前記の塩素化脂肪族炭化水素化合物を含む発泡剤および硬化剤を添加したのち、これをミキサーに供給して攪拌することにより調製することができる。
【0025】
このようにして調製した発泡性フェノール樹脂成形材料を用いて、フェノール樹脂発泡体を形成させる方法としては、例えば(1)エンドレスコンベア上に流出させる成形方法、(2)スポット的に流出させて部分的に発泡させる方法、(3)モールド内で加圧発泡させる方法、(4)ある大きな空間中に投入して発泡ブロックを作る方法、(5)空洞中に圧入しながら充填発泡させる方法などが挙げられる。
【0026】
好ましい方法としては、前記発泡性フェノール樹脂成形材料を、連続的に移動するキャリア上に吐出し、この吐出物を加熱ゾーンを経由して発泡させると共に成形して、所望のフェノール樹脂発泡体を作製する。具体的には、前記発泡性フェノール樹脂成形材料を、コンベヤーベルト上の面材の上に吐出する。次いでコンベヤーベルト上の成形材料の上面に面材を載せ硬化炉に入る。硬化炉の中では上から他のコンベヤーベルトで押さえ、フェノール樹脂発泡体を所定の厚さに調整し、60〜100℃程度、2〜15分間程度の条件で発泡硬化する。硬化炉から出たフェノール樹脂発泡体は所定の長さに切断される。
【0027】
前記面材としては、特に制限されず、一般的には天然繊維、ポリエステル繊維やポリエチレン繊維などの合成繊維、ガラス繊維などの無機繊維等の不織布、紙類、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔などが用いられるが、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、構造用パネル、パーティクルボード、ハードボード、木質系セメント板、フレキシブル板、パーライト板、ケイ酸カルシウム板、炭酸マグネシウム板、パルプセメント板、シージングボード、ミディアムデンシティーファイバーボード、石膏ボード、ラスシート、火山性ガラス質複合板、天然石、煉瓦、タイル、ガラス成形体、軽量気泡コンクリート成形体、セメントモルタル成形体、ガラス繊維補強セメント成形体等の水硬化性セメント水和物をバインダー成分とする成形体が好適である。この面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。また、両面に設ける場合、面材は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、あとから接着剤を用いて面材を貼り合わせて設けてもよい。
【0028】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、pHが3.0以上である。pHが3.0以上であれば、雨に濡れても、該発泡体に接触する金属部材、あるいは発泡体の近傍に存在する金属部材に対する腐食を抑制することができる。好ましいpHは4.0以上であり、特に4.5以上が好ましい。なお、発泡体のpHの測定方法は、後で詳述する。
【0029】
本発明のフェノール樹脂発泡体においては、熱伝導率が0.022W/m・K以下であることが好ましく、より好ましくは熱伝導率が0.020W/m・K以下である。この熱伝導率が0.022W/m・Kを超えるとフェノール樹脂発泡体の断熱性能が不十分となる。
【0030】
また、密度は10〜100kg/m程度、平均気泡径は5〜400μm程度であり、発泡体の横断面積に占めるボイドの面積割合は5%以下であることが好ましい。さらに、気泡壁に実質的に孔が存在せず、独立気泡率が通常85%以上、好ましくは90%以上であり、熱分解生成物のトリメチルフェノール(A)のフェノール(B)に対する面積比(C)(ただし、C=A/B)が0.05〜4.0の範囲にあることが好ましい。酸素指数は29以上が好ましく、30以上がより好ましい。また、厚さ25mm当たりの透湿係数が、通常60ng/(m・s・Pa)以下、好ましくは55ng/(m・s・Pa)以下である。
なお、フェノール樹脂発泡体の前記性状の測定方法については後で詳述する。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られたフェノール樹脂発泡体の物性は、以下に示す方法に従って測定した。
【0032】
(1)密度
JIS A 9511:2003、5.6密度に従い測定した。
(2)熱伝導率
300mm角のフェノール樹脂発泡体サンプルを用い、低温板10℃、高温板30℃に設定し、JIS A 1412−2:1999の熱流計法に従い、熱伝導率測定装置HC−074 304(英弘精機株式会社製)を使用して測定した。初期熱伝導率はフェノール樹脂発泡体サンプルを70℃雰囲気に4日間放置後の熱伝導率である。
(3)腐食防止性
300mm角の亜鉛鉄板(厚さ1mmめっき付着量120g/m)の上に、同じ大きさのフェノール樹脂発泡体サンプルを載せ、ずれないようにして固定したものを試験体とし、40℃、100%RHの促進環境下に設置し、24週間放置後の亜鉛鉄板のサンプルとの接触面の腐食性を目視にて評価した。
(4)pH
乳鉢などで250μm(60メッシュ)以下に微粉化したフェノール樹脂発泡体サンプル0.5gを200ml共栓付き三角フラスコに量り取り、純水100mlを加え、密栓する。マグネチックスターラーを用い室温(23±5℃)で7日間攪拌後、pHメータで測定した。
(5)平均気泡径
フェノール樹脂発泡体サンプルの内部の50倍拡大写真上に9cmの長さの直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数を各直線で求め、それらの平均値(JIS K6402に準じて測定したセル数)で1800μmを割った値である。
(6)ボイド
フェノール樹脂発泡体サンプルの厚み方向のほぼ中央を表裏面に平行に切削し100mm×150mmの範囲を200%拡大カラーコピー(それぞれの長さが2倍、即ち面積は4倍になる)をとって、透明方眼紙により1mm×1mmマスが8マス以上のボイド面積を積算し面積分率を計算した。即ち、拡大コピーをとっているため、この8マスが実際のフォーム断面では2mmの面積に相当する。
【0033】
(7)トリメチルフェノールのフェノールに対する面積比
熱分解ガスクロマトグラフィーのパイログラムを、以下のようにして測定する。
フェノール樹脂発泡体サンプルは、コア部分よりカッターナイフなどで削りだした粉末を更に乳鉢で入念に粉砕し、一度の測定当たり0.3〜0.4mgを試料量とする。熱分解装置は、加熱炉型熱分解装置であるフロンティアラボ社製PY2010Dを用いる。熱分解温度は670℃で行う。ガスクロマトグラフィーの測定はヒューレットパッカード社 HP5890A型で、無極性液相のキャピラリーカラムであるデュラボンド(Durabondo) DB−1(内径0.25mm、膜厚0.25μm、長さ30m)を用いる。キャリアーガスはヘリウム(He)、全流量は100cm/min、ヘッドプレッシャー100kPa、オーブン温度は、50℃からスタートし毎分20℃のスピードで340℃まで昇温し15.5分間保持する。
各成分の検出は水素炎イオン化検出器(FID)で行い、各ピークの面積値を全検出成分で規格化し、それぞれの成分の比率とする。ただし、ピークの裾が重なる場合には、ピークの重なりの谷間から、ベースラインへ垂線を下ろし、ベースラインと垂線に囲まれた範囲をピーク面積とする。
各成分の構造は、ガスクロマトグラフィーにより分離した成分を質量分析機へ導入して得たマススペクトルにより確認する。マススペクトルは日本電子JMS AX−505Hにより、電子衝撃イオン化法(EI法)でイオン化電圧70eV、イオン化電流300mAで測定する。
前記パイログラムにより、トリメチルフェノール(A)のフェノール(B)に対する面積比(C)(C=A/B)を算出する。
【0034】
(8)厚さ25mm当たりの透湿係数
ISO 1663:1999硬質発泡プラスチック−水蒸気透過性の求め方に準拠して測定した。なお、吸湿剤の塩化カルシウムは、直径2.5〜3.5mm程度のものを使用した。
(9)酸素指数
JIS K7201−2 プラスチック−酸素指数による燃焼性の試験方法−第2部:室温における試験により測定した。
(10)独立気泡率
ASTM D2856により測定した。
【0035】
実施例1
フェノールとホルムアルデヒドをモル比1:2で反応させて得られたレゾール型フェノール樹脂[旭有機材工業(株)製、商品名「PF−329」]100重量部に、整泡剤としてひまし油エチレンオキサイド付加物3重量部を加えて混合した。
このフェノール樹脂混合物103重量部に対し、無機フィラーとして炭酸カルシウム5重量部を加え、発泡剤としてイソプロピルクロリド8重量部、硬化剤としてパラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸の重量比=2:1の混合物15重量部をピンミキサーに供給し、撹拌、混合して発泡性フェノール樹脂成形材料を調製した。続いて、この成形材料を、ガラス不織布を敷いた型枠に吐出し、80℃の乾燥機に入れ、10分間発泡させ成形し、フェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0036】
実施例2
実施例1における発泡剤を、イソプロピルクロリド:HFC-245fa(旭アライドシグナル社製ハイドロフルオロカーボン)の重量比=80:20の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0037】
実施例3
実施例1における発泡剤を、イソプロピルクロリド:窒素の重量比=98:2の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0038】
実施例4
実施例1における発泡剤を、イソプロピルクロリド:窒素:イソペンタンの重量比=98:1.5:0.5の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0039】
実施例5
実施例1における無機フィラーを、水酸化アルミニウム20重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0040】
比較例1
実施例1における発泡剤を、ジクロロメタン:HFC-245fa(旭アライドシグナル社製ハイドロフルオロカーボン)の重量比=80:20の混合物に、硬化剤量を27重量部に、かつ無機フィラーを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得た。この発泡体の物性を表1に示す。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、発泡剤として塩素化脂肪族炭化水素化合物を含むものを用い、かつ硬化剤の使用量を制御し、炭酸カルシウムなどの無機フィラーを加えることにより、難燃・防火性に優れ、断熱性能が良好で、かつ従来品に比べてpHが高く、接触部材に対して良好な腐食防止性を有している。本発明のフェノール樹脂発泡体は、断熱材などとして建築その他の産業分野において、好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤および無機フィラーを含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなる発泡体であって、前記発泡剤が、炭素数2〜5の塩素化脂肪族炭化水素化合物を含み、発泡体のpHが3.0以上であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
【請求項2】
炭素数2〜5の塩素化脂肪族炭化水素化合物がクロロプロパン類である請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項3】
発泡性フェノール樹脂成形材料が、フェノール樹脂100重量部当たり、発泡剤1〜20重量部を含む請求項1または2に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項4】
硬化剤が、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ナフトールスルホン酸及びフェノールスルホン酸の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項5】
発泡性フェノール樹脂成形材料が、フェノール樹脂100重量部当たり、硬化剤5〜25重量部を含む請求項4に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項6】
無機フィラーが、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、および金属粉末の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項7】
熱伝導率が0.022W/m・K以下であり、かつ透湿係数が60ng/m・s・Pa以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項8】
独立気泡率が85%以上であり、酸素指数が29以上である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項9】
少なくとも一方の表面に、面材を設けてなる請求項1ないし8のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項10】
面材が、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、ケイ酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のフェノール樹脂発泡体。

【公開番号】特開2007−70505(P2007−70505A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260260(P2005−260260)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】