説明

フォトマスクブランクス、及びフォトマスク

【課題】遮光材料を大量に含有する場合であっても露光により高感度で硬化し、且つ保存安定性及びセーフライト適性に優れたフォトマスクブランクス、及び、該フォトマスクブランクスを用いて作製された、高解像度で画像形成が可能であり、画像エッジ部の直線性の高いフォトマスクを提供する。
【解決手段】基板上に、(A)下記一般式(I)で表される増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。下記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は一価の置換基を表し、Rは一価の置換基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトマスクブランクス及びフォトマスクに関する。より詳細には、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いうるフォトマスクを作製しうるフォトマスクブランクス、及びそれにより得られたフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いられるフォトマスクとしては、金属クロム層(Cr層)を設けたCrマスク、ハロゲン化銀乳剤層を設けたEmマスク(エマルションマスク)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
Crマスクは、石英やガラス等の透明基板上にクロム層をスパッタリング法により形成後、この上にエッチングレジストを塗布などにより設け、HeCdレーザー(442nm)などによる露光、アルカリ水溶液などでの現像によるエッチングレジストのパターニング、クロムのエッチング、及びエッチングレジストの剥離を行って作製される。Crマスクは、ピンホール等の欠陥修正可能で、高解像度、高耐久性(耐傷性)、高洗浄性にも優れるというメリットを有する。その一方、Crマスクは、作製工程が煩雑なため高価であり、また、製造プロセスにおいてクロムエッチングが行われることに起因する廃液処理等の環境面の問題も有している。
【0004】
Emマスクは、ハロゲン化銀乳剤層(感光性層)を石英やガラス等の透明基板上に設け、YAGレーザーなどにより露光、現像、定着処理で作製されるものである。Emマスクの作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、光に対する感度が高いため、露光エネルギーが小さくてもよく(〜0.1mJ/cm)、また、環境にも優しく、安価なフォトマスクブランクスである。この反面、Emマスクは、感光性材料としてハロゲン化銀を用いるため、解像度が余り高くなく(3μm程度)、極微細なパターンを作製するには不向きであり、また感光性層がゼラチン膜であるため耐久性に乏しい。また、Emマスクは、欠陥修正が実質的に困難であるという欠点を有している。
【0005】
また、他のタイプのフォトマスクとして、黒色顔料等の黒色材料を含有し、かつ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性層を有するフォトマスクブランクスを用いて作製されるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。該フォトマスクブランクスが有する感光性層は、フォトマスク作製時に照射される近紫外ないし可視領域における吸光度が小さいため高感度であり、一方、フォトマスク使用時に照射される紫外領域の光の吸収特性が良好なため、感光性層を露光・現像することにより、解像度に優れたフォトマスクを得ることができる。また、このフォトマスクは、金属膜を必要とせず、レリーフ画像であるため欠陥修正を簡便に行うことができ、感度や解像度等のバランスがよく、安価で環境への負荷も小さいという特徴も有する。
【0006】
ところで、フォトマスクの作製に黒色材料を感光性層に含有するフォトマスクブランクスを用いる場合、露光により画像形成を行う際に黒色材料が露光光を吸収してしまうため、基板付近の硬化は行なわれにくいという問題があった。更に、通常、光ラジカル重合系は高感度であるが、空気中の酸素による重合阻害により大きく低感度化するため、感光性層の上に酸素遮断性の層を設ける手段が取られている。しかし、酸素遮断性を高くしすぎると、保存時暗重合反応によるカブリが発生しやすくなり長期保存適性が劣化する。また高濃度に黒色材料を含有した系においては露光光が感光層表面付近までしか到達しないため、酸素遮断性が高すぎると、感光層表面部のみ硬化が進みそれより深い領域はほとんど硬化しなくなるため現像時感光層の深い部分がえぐり取られ庇形状になり解像度、画像エッジ部の直線性が劣化するという問題があることがわかった。
【0007】
また、レーザーによる走査露光に供されるフォトマスクブランクスが有する課題としては、レーザー光照射部と未照射部において、形成される画像のオン−オフをいかに拡大できるかという課題、つまり高感度と保存安定性の両立という課題がある。
【0008】
レーザーに関しては、近年、例えばInGaN系の材料を用い、350nmから450nm域で連続発振可能な半導体レーザーが実用段階となっている。このような短波光源を用いた走査露光システムは、半導体レーザーが、構造上、安価に製造できるため、充分な出力を有しながらも、経済的なシステムを構築できるといった長所を有する。更に、短波光源を用いた走査露光システムは、従来のFD−YAGレーザー(532nm)やArレーザー(488nm)を使用するシステムに比較して、より明るいセーフライト下での作業が可能な、短波長領域に感光性を有する感光材料が使用できる。
【0009】
また、レーザーによる走査露光に供されるフォトマスクブランクスが有する課題としては、レーザー光照射部と未照射部において、形成される画像のオン−オフをいかに拡大できるかという課題、つまり高感度と保存安定性の両立という課題がある。
フォトマスクブランクスの高感度化に関しては、通常、光ラジカル重合系は高感度であるが、空気中の酸素による重合阻害により大きく低感度化するため、感光性層の上に酸素遮断性の層を設ける手段が取られている。しかし、酸素遮断性を高くしすぎると、保存時暗重合反応によるカブリが発生しやすくなり長期保存適性が劣化する。また高濃度に黒色材料を含有した系においては露光光が感光層表面付近までしか到達しないため、酸素遮断性が高すぎると、感光層表面部のみ硬化が進みそれより深い領域はほとんど硬化しなくなるため現像時感光層の深い部分がえぐり取られ庇形状になり解像度、画像エッジ部の直線性が劣化するという問題があることがわかった。
また、例えば、特許文献3には、光重合型ネガ型平版印刷版原版の分野で酸素遮断層の酸素透過性を制御してセーフライト適性などの取り扱い性等を向上させることが記載されている。
【0010】
一方、光重合性の感光性組成物において、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が、特に紫外領域において好適な光重合開始剤として古くから知られ、更に、例えば、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物と、ケトクマリン系化合物(例えば、特許文献4参照。)が公知であるが、このものは波長480nm程度に吸収を持つため、波長350nm〜450nmのバイオレットレーザーに対して感度が悪く、また黄灯下でのセーフライト性に劣る。
【0011】
このように、高感度と保存安定性と解像度と画像エッジ部の直線性を満たす感光性組成物よりなるフォトマスクブランクスは未だ提供されておらず、従来にはない新たな技術が求められているのが現状である。
【特許文献1】特開2005−283914号公報
【特許文献2】特開2001−343734号公報
【特許文献3】特開2004−117669号公報
【特許文献4】特公平5−88244号公報
【非特許文献1】教育文科会編、「フォトファブリケーション」、日本フォトファブリケーション協会発行、67〜80ページ、1992年6月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、遮光材料を大量に含有する場合であっても露光により高感度で硬化し、且つ保存安定性及びセーフライト適性に優れたフォトマスクブランクス、及び、該フォトマスクブランクスを用いて作製された、高解像度で画像形成が可能であり、画像エッジ部の直線性の高いフォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 基板上に、(A)下記一般式(I)で表される増感色素(以下、適宜、「特定増感色素」と称する。)と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を含む化合物(以下、適宜、「エチレン性不飽和化合物」と称する。)と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。
【0014】
【化1】

【0015】
上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は一価の置換基を表し、Rは一価の置換基を表す。
【0016】
<2> 前記感光性組成物層上に、25℃における酸素透過性が50ml/m・day・atm以上500ml/m・day・atm以下の酸素遮断性層を有する<1>に記載のフォトマスクブランクス。
<3> 前記基板が、厚み0.1mm以上20mm以下の透明なガラスである<1>又は<2>に記載のフォトマスクブランクス。
<4> 前記重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、及び有機硼素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載のフォトマスクブランクス。
<5> 前記遮光材料の含有量が、前記感光性組成物層に含まれる全固形分に対し10質量%以上60質量%以下である<1>〜<4>のいずれかに記載のフォトマスクブランクス。
【0017】
<6> <1>〜<5>のいずれかに記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
<7> 前記露光が、350nm以上450nm以下の光により行われる<6>に記載のフォトマスク。
<8> 前記遮光層の膜厚が1.0μm以上2.0μm以下であり、且つ365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上である<6>又は<7>に記載のフォトマスク。
<9> 前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、0.1μm以上10μm以下である<6>から<8>のいずれかに記載のフォトマスク。
【0018】
本発明のフォトマスクブランクスが発揮する高感度及び優れた保存安定性は、感光性組成物層が特定増感色素を必須成分として含有することに依拠するものである。その作用機構は明らかではないが、以下のように推測される。
まず、特定増感色素が高感度化に寄与する要因としては、特定増感色素は、高強度の発光(ケイ光及び/又はリン光)スペクトルを示すことから、一つの可能性として、特定増感色素は励起状態の寿命が比較的長いため、重合開始剤との反応の効率化に作用していることが推測される。その他の可能性としては、特定増感色素の分子構造が、増感反応初期過程(電子移動等)の効率化や、更に、重合開始剤分解にいたる後に引き続き進行する反応の効率化に寄与している可能性もある。
次に、特定増感色素が保存安定性の向上に寄与する要因としては、特定増感色素は、自然経時条件下における色素凝集、会合等が少ないことから、増感効率の低下が抑制されるものであることが影響しているものと推測される。増感色素は、光開始反応において重要な役割を果たしており、感光性組成物中での凝集又は会合は、露光によるラジカル発生量の減少(感度減少)、即ち保存安定性の減少に大きく影響することから、色素凝集、会合等が少ない特定増感色素は、感光性組成物層、即ちフォトマスクブランクスの保存安定性の向上に大きく寄与しているものと考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、遮光材料を大量に含有する場合であっても露光により高感度で硬化し、且つ保存安定性及びセーフライト適性に優れたフォトマスクブランクス、及び、該フォトマスクブランクスを用いて作製された、高解像度で画像形成が可能であり、画像エッジ部の直線性の高いフォトマスクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のフォトマスクブランクス、及びそれにより作製されたフォトマスクについて詳細に説明する。
【0021】
[フォトマスクブランクス]
本発明のフォトマスクブランクスは、基板上に、(A)下記一般式(I)で表される増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物層を有することを特徴とする。また、目的に応じて、該感光性組成物層上には、更に、酸素遮断性層等の他の層を有することもできる。
【0022】
【化2】

【0023】
上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は一価の置換基を表し、Rは一価の置換基を表す。
【0024】
(感光性組成物層)
本発明のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、少なくとも遮光材料を含有し且つ紫外光ないし可視光で画像形成が可能な層である。即ち、感光性組成物層は、近紫外光ないし可視光による像様の露光後、現像液を用いて現像処理することにより、画像形成が可能な層である。
感光性組成物層は、環境問題上アルカリ現像型が好ましく、本発明においては、露光部分が硬化してアルカリ現像液に不溶化するネガ型の層を用いている。
【0025】
ネガ型の感光性組成物層は、露光により硬化して、遮光層を形成する層であり、少なくとも、(A)特定増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物により形成される層である。
【0026】
以下、感光性組成物層の各構成要素について説明する。まず、本発明の特徴的成分である増感色素について述べる。
【0027】
<(A)一般式(I)で表される増感色素(特定増感色素)>
本発明のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、下記一般式(I)で表される増感色素(特定増感色素)を含有する。
【0028】
【化3】

【0029】
上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は一価の置換基を表し、Rは一価の置換基を表す。
【0030】
特定増感色素は、好ましくは320〜450nmの波長の光を吸収し、波長405nmでのモル吸光係数(ε)が100以上100000以下で、青紫色領域の波長の光を効率よく吸収すると共に、後述する(B)重合開始剤との相互作用により、該重合開始剤からラジカル、酸及び塩基のうちの少なくとも一種を発生させる機能を有する光吸収色素である。特定増感色素が示すモル吸光係数(ε)は、好ましくは1000以上であり、更に好ましくは10,000以上である。
即ち、更に、特定増感色素は、(B)成分として、感光性組成物層中に含有される種々の重合開始剤の分解を効率良く引き起こし、非常に高い感光性を示す。
【0031】
一般に、増感色素/重合開始剤からなる光開始系の増感機構は(a)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(b)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(c)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解、といった経路が知られるが、特定増感色素は、これら何れのタイプの増感反応をも優れた効率で引き起こすものである。
【0032】
一般式(I)において、R及びRで表される一価の置換基としては、以下に示すものが好ましい例として挙げられる。
即ち、R及びRで表される一価の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘプチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;1−フェニルビニル基、2−フェニルビニル基、2−フェニルプロペニル基、1−(α−ナフチル)ビニル基、2−(α−ナフチル)ビニル基、1−(β−ナフチル)ビニル基、2−(β−ナフチル)ビニル基等の炭素数8〜18のアリールアルケニル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、フリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、テトラヒドロチオフェンジオキサイド基等の飽和若しくは不飽和の複素環基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアシル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等の炭素数3〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基:メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;シアノ基;ヒドロキシ基;ホルミル基;スルホン酸基;カルボキシル基;−OCORで表されるアシルオキシ基;−NRで表されるアミノ基;−NHCORで表されるアシルアミノ基;−NHCOORで表されるカーバメート基;−NHSOORで表されるスルホンアミド基;−COOR10で表されるカルボン酸エステル基;−CONR1112で表されるカルバモイル基;−SOONR1314で表されるスルファモイル基;−SOOR15で表されるスルホン酸エステル基等が挙げられる。
【0033】
一般式(I)において、Rで表される一価の置換基としては、以下に示すものが好ましい例として挙げられる。
即ち、Rで表される一価の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘプチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;1−フェニルビニル基、2−フェニルビニル基、2−フェニルプロペニル基、1−(α−ナフチル)ビニル基、2−(α−ナフチル)ビニル基、1−(β−ナフチル)ビニル基、2−(β−ナフチル)ビニル基等の炭素数8〜18のアリールアルケニル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、フリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、テトラヒドロチオフェンジオキサイド基等の飽和若しくは不飽和の複素環基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアシル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等の炭素数3〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基:メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;シアノ基;ヒドロキシ基;ホルミル基;スルホン酸基;カルボキシル基;−OCOR16で表されるアシルオキシ基;−NR1718で表されるアミノ基;−NHCOR19で表されるアシルアミノ基;−NHCOOR20で表されるカーバメート基;−NHSOOR21で表されるスルホンアミド基;−COOR22で表されるカルボン酸エステル基;−CONR2324で表されるカルバモイル基;−SOONR2526で表されるスルファモイル基;−SOOR27で表されるスルホン酸エステル基;−N=CR2829で表されるイミノ基等が挙げられる。
【0034】
ここで、前記R〜R29は、それぞれ独立して、水素原子、又は一価の置換基を表すが、この一価の置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘプチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、フリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、テトラヒドロチオフェンジオキサイド基等の飽和若しくは不飽和の複素環基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。
【0035】
また、前記R〜R29で表される一価の置換基が、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、又は複素環基は、更に置換されていてもよい。
この場合の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、メトキシブトキシ基等の炭素数2〜12のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、エトキシエトキシメトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜12のアリール基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数2〜12のアルケニルオキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;テトラヒドロフリル基;アミノ基;チオール基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の炭素数1〜10のアルキルアミノ基;メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n−プロピルスルホニルアミノ基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニルアミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基;−NHCOOR(R=メチル基、エチル基など);−NHCOR’ (R’=メチル基、エチル基など);等が挙げられる。
これらの置換基は、更に別の置換基にて置換されていてもよい。
【0036】
前記R〜R29で表される一価の置換基が、アルキル基、シクロアルキル基、又はシクロアルケニル基の場合には、これに導入される好ましい置換基としては、アルコキシ基、又はアルコキシアルコキシ基が挙げられる。
また、前記R〜R29で表される一価の置換基が、アルケニル基、アリール基、又は複素環基の場合には、これに導入される好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、又はヒドロキシ基が挙げられる。
【0037】
一般式(I)において、好ましくは、前記R〜Rのうちのいずれか1つ、好ましくは2つが、それぞれ独立して、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;1−フェニルビニル基、2−フェニルビニル基、2−フェニルプロペニル基、1−(α−ナフチル)ビニル基、2−(α−ナフチル)ビニル基、1−(β−ナフチル)ビニル基、2−(β−ナフチル)ビニル基等の炭素数8〜18のアリールアルケニル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、フリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の不飽和の複素環基;或いは、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアリール基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアシル基;−N=CR2829で表されるイミノ基の場合である。
【0038】
一般式(I)において、より好ましくは、前記R〜Rのいずれか1つ、好ましくは2つが、それぞれ独立して、上述したような、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、又は−N=CR2829で表されるイミノ基の場合である。
中でも、前記R〜Rのいずれか1つ、好ましくは2つが、それぞれ独立して、置換されていてもよい不飽和の複素環基、又は置換されていてもよいアリール基である場合が好ましい。
最も好ましくは、Rが水素原子であり、R及びRが、それぞれ独立して、置換されていてもよい不飽和の複素環基、及び/又は、置換されていてもよいアリール基である。
【0039】
一般式(I)で表される化合物の分子量としては、好ましくは2,000以下、更に好ましくは1,000以下であり、通常200以上である。
【0040】
一般式(I)で表される化合物の具体的な例〔(1)〜(50)〕としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
特定増感色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、特定増感色素は、公知の増感色素と併用してもよい。その場合、本発明の効果を確実に得る上で、感光性組成物中に含有される増感色素の総量に対して、特定増感色素の含有量が1質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。
【0049】
感光性組成物層の感光性、解像度、露光膜の物性は、光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。例えば、吸光度が0.1以下の低い領域では感度が低下する。また、ハレーションの影響により低解像度となる。但し、例えば、5μm以上の厚い膜を硬化させる目的に対しては、このような低い吸光度の方がかえって硬化度を上げられる場合もある。
【0050】
例えば、本発明における感光性組成物層を比較的薄い膜厚とする場合には、特定増感色素の添加量は、感光性組成物層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。吸光度は、特定増感色素の添加量と感光性組成物層の厚みとにより決定されるため、所定の吸光度は両者の条件を制御することにより得られる。感光性組成物層の吸光度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量として必要な範囲において適宜決定された厚みの感光性組成物層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に感光性組成物層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0051】
(A)特定増感色素の添加量は、感光性組成物層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05質量部〜30質量部、好ましくは0.1質量部〜20質量部、更に好ましくは0.2質量部〜10質量部の範囲である。
【0052】
<(B)重合開始剤>
本発明における(B)重合開始剤としては、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、或いは2種以上の光重合開始剤の併用系(光重合開始系)を適宜選択して使用することができる。本発明においては、単独で用いる光重合開始剤、2種以上の光重合開始剤を併用した系を総括して単に光重合開始剤という。
【0053】
本発明における重合開始剤には特に制限はなく、露光波長に応じて適宜選択され、例えば400nm付近の光を光源として用いる場合には、光重合開始剤として、ベンジル、ベンゾイルエーテル、ミヒラーズケトン、アントラキノン、チオキサントン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物等の公知の光重合開始剤から広く選択して使用される。
【0054】
中でも、(B)重合開始剤としては、(A)特定増感色素との共存下で光照射されたときに、増感色素の光励起エネルギーを受け取って活性ラジカルを発生し、(C)エチレン性不飽和化合物を重合に到らしめるラジカル発生剤である、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、チタノセン系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体、ジアリールヨードニウム塩、有機硼素酸塩、及び有機過酸化物等が好ましく挙げられ、更に、露光感度、基板に対する感光性組成物層の密着性、及び保存安定性等の面から、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、及び有機硼素酸塩が好ましく、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が特に好ましい。
【0055】
本発明における好ましい光重合開始剤であるヘキサアリールビイミダゾール化合物について説明する。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、欧州特許第24629号、欧州特許第107792号、米国特許第4410621号、欧州特許第215453号及びドイツ特許公開3211312号等の各明細書に記載の種々の化合物を使用することが可能である。好ましいものとしては、例えば、2,4,5,2’,4’,5’−ヘキサフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3−メトキシフェニル)−ビスイミダゾール、2,5,2’,5’−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4’−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ジ−o−トリル−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、及び2,2’−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール等を挙げることができる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は2種以上併用してもよい。
【0056】
光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物を用いる場合、該ヘキサアリールビスイミダゾール化合物の使用量は、後述する(C)エチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、0.05〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜30質量部である。ヘキサアリールビイミダゾール化合物とともに、他の光重合開始剤を併用してもよい。
【0057】
光重合開始剤は、必要に応じ、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物と併用することにより更に光開始能力が高められることが知られている。
特に、光開始能力が高く本発明に好適な水素供与性化合物としては、メルカプト基含有化合物が上げられる。
【0058】
メルカプト基含有化合物の更に好適な例としては、下記一般式(A)又は一般式(B)で表される化合物(以下、適宜、「メルカプト基含有ヘテロ環化合物」と称する。)が挙げられる。なお、下記一般式(A)及び一般式(B)では、各々互変異性体の構造を示した。
【0059】
【化11】

【0060】
一般式(A)及び(B)中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは未置換の炭素数1から18の直鎖又は分岐アルキル基、置換若しくは未置換の炭素数5から20の脂環式アルキル基又は芳香族基を表す。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、チオール基、アセチル基、カルボキシル基などが挙げられる。)
【0061】
以下に、一般式(A)及び(B)で表される化合物の好ましい具体例(SH1)から(SH20)を示すが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。以下の構造は、上記互変異性体の−SH基含有構造で示す。
【0062】
一般式(A)で表される化合物の具体例
【0063】
【化12】

【0064】
一般式(B)で表される化合物の具体例
【0065】
【化13】

【0066】
メルカプト基含有ヘテロ環化合物は、ヘキサアリールビイミダゾール化合物等の光重合開始剤1molに対して、0.2〜10.0molの比率で使用するのが好ましく、より好ましくは、0.5〜6.0molの比率、更に好ましくは、0.5〜4.0molの比率である。
【0067】
感光性組成物層中における重合開始剤の含有量は、感光性組成物層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量部、更に好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0068】
<(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)>
感光性組成物層は、エチレン性不飽和結合を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)を含有する。
エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和結合を分子内に少なくとも一つ有する化合物であり、感光性組成物層が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化に寄与する。
【0069】
エチレン性不飽和化合物は、例えば、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0070】
エチレン性不飽和化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エ−テル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0071】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス[p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]ジメチルメタン等がある。
【0072】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,5−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0073】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。更に、前述のエステルモノマーの混合物も挙げることができる。
また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレシビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0074】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(m)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0075】
CH=C(R)COOCHCH(R’)OH (m)
(ただし、R及びR’は、それぞれ独立にH或いはCHを示す。)
【0076】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。更に日本接着協会誌Vo1.20,No.7, 300〜308ぺ−ジ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0077】
なお、これらエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物層の全質量に対し、5質量部〜80質量%が好ましく、より好ましくは30質量部〜70質量%の範囲である。
【0078】
<(D)バインダーポリマー>
感光性組成物層は、バインダーポリマーを含有する。
本発明におけるバインダーポリマーは、特に限定されることはないが、アルカリ水溶液への溶解性・現像性の観点から、酸基を有する有機重合体が好ましく、カルボキシル基を有する有機重合体が更に好ましい。
【0079】
バインダーポリマーの骨格としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子骨格が好ましく、これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂等のビニル共重合体、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
バインダーポリマーとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0080】
バインダーポリマーの好適な一例は、(a)カルボン酸基を含有する繰り返し単位及び(b)ラジカル架橋性を付与する繰り返し単位を有する共重合体である。
【0081】
(a)カルボン酸基を含有する繰り返し単位(以下、繰り返し単位(a)とも云う)の具体例としては、以下の(a−1)から(a−13)に示す構造が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
【化14】

【0083】
共重合体における繰り返し単位(a)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの5〜50、好ましくは5〜25、より好ましくは5〜15である。
【0084】
(b)ラジカル架橋性を付与する繰り返し単位(以下、繰り返し単位(b)とも云う)の具体例としては、以下の(b−1)から(b−11)に示す構造が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
【化15】

【0086】
共重合体における繰り返し単位(b)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの5〜90、好ましくは20〜85、より好ましくは40〜80である。
【0087】
本発明におけるバインダーポリマーは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(1)とも云う)を有してもよい。
【0088】
【化16】

【0089】
一般式(1)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−基を表し、Yは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、炭素数5から12の脂環式アルキル基、炭素数6から20の芳香環を有する基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−基を表し、Rは、炭素数1から18のアルキル基、炭素数5から20の脂環構造を有するアルキル基又は炭素数6から20の芳香環を有する基を表す。
【0090】
繰り返し単位(1)の具体例としては、以下の(1−1)〜(1−9)に示す構造が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化17】

【0092】
繰り返し単位(1)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの1〜40、好ましくは3〜25、より好ましくは、5〜15である。
【0093】
繰り返し単位(a)、(b)、(1)の好適な組み合わせの具体例としては、下記表1に示す(PP−1)〜(PP−10)が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0094】
【表1】

【0095】
本発明において、バインダーポリマーとして用いうるポリウレタン樹脂は、架橋性基を有することが好ましい。ここで架橋性基とは、フォトマスクブランクスを露光した際に、感光性組成物層中で起こるラジカル重合反応の過程でバインダーポリマーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としては、エチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(1A)〜一般式(3A)のいずれかで表される官能基が特に好ましい。
【0096】
【化18】

【0097】
一般式(1A)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rとしては、好ましくは、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
及びRとしては、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
【0098】
一般式(1A)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表し、R12は、水素原子又は1価の有機基を表す。R12の1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。中でも、R12としては水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
上記の各基に導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0099】
【化19】

【0100】
一般式(2A)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R〜Rとしては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
上記の各基に導入し得る置換基としては、一般式(1A)と同様のものが例示される。
【0101】
また、Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表す。R12は、一般式(1A)のR12と同義であり、好ましい例も同様である。
【0102】
【化20】

【0103】
一般式(3A)において、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基
を表す。Rとしては、好ましくは、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基がラジカル反応性の高いことから好ましい。R10、R11としては、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
【0104】
また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R12は、一般式(1A)のR12と同義であり、好ましい例も同様である。
上記の各基に導入し得る置換基としては、一般式(1A)と同様のものが例示される。
【0105】
感光性組成物層の現像性を維持する観点からは、バインダーポリマー分子量としては、重量平均分子量で、5000〜300000の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は20000〜150000である。
【0106】
バインダーポリマーは、感光性組成物層中に任意の量で含有させることができるが、画像強度等の観点からは、感光性組成物層の全固形分中、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
【0107】
<(E)遮光材料>
本発明のフォトマスクブランクスにおける感光性組成物層は遮光材料を含有する。
本発明における遮光材料とは、250nm〜400nmの光を吸収し、好ましくは塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上になる光吸収剤を指す。
本発明における遮光材料とは、フォトマスクが適用される活性光線の波長の光を反射、吸収することにより透過させない機能を有する材料であり、具体的には、マスクとして使用する際の露光光源(水銀灯、メタルハライド灯キセノン灯等)が発する波長域200〜450nm、好ましくは250〜400nm程度、の光を実質遮光できるものであり、塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上であることを要し、好ましくは、3.0以上であるものを指す。
【0108】
本発明における遮光材料は、フォトマスクブランクスにより作製されたフォトマスクの使用目的等に応じて適宜選択すればよい。
遮光材料として具体的には、金属粒子(金属化合物粒子、複合粒子、コア・シェル粒子などを含む)、顔料その他の粒子、フラーレンなどが好適に用いられる。
本発明に用いうる遮光材料としては、黒色材料であることが好ましく、該黒色材料としては、黒色顔料及び金属微粒子の少なくとも1種であることが好ましい。
以下、本発明に適用しうる遮光材料について詳細に説明する。
【0109】
−金属粒子−
遮光材料として金属粒子を用いる場合、該金属粒子は、1種の金属からなるものであっても、2種以上の金属を組み合わせたものであってもよく、合金であってもよい。また、金属粒子は、金属と金属化合物との複合微粒子であってもよい。遮蔽能力、耐光性、耐熱性の観点からは、遮光材料として、金属化合物を含む粒子を好適に用いることができる。
【0110】
金属粒子に含まれる好ましい金属の例としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、カルシウム、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。更に好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、カルシウム、イリジウム、及びこれらの合金、より好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、錫、カルシウム、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましい金属は、銅、銀、金、白金、錫、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種である。とりわけ銀が粒子が好ましく(銀としてはコロイド銀が好ましい)、銀錫合金部を有する粒子も好適である。銀錫合金部を有する粒子については後述する。
【0111】
金属化合物とは、前記金属と金属以外の他の元素との化合物である。金属と他の元素との化合物としては、金属の酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩などが挙げられ、金属化合物粒子としてはこれらの粒子が好適である。中でも、色調や微粒子形成のし易さからは、硫化物の粒子が好ましい。
金属化合物の例としては、酸化銅(II)、硫化鉄、硫化銀、硫化銅(II)、チタンブラックなどがあるが、色調、微粒子形成のしやすさや安定性の観点から、硫化銀が特に好ましい。
【0112】
複合粒子は、金属と金属化合物とが結合して1つの粒子になったものをいう。例えば、粒子の内部と表面で組成の異なるもの、2種の粒子が合一したもの等を挙げることができる。また、金属化合物と金属とはそれぞれ1種でも2種以上であってもよい。
金属化合物と金属との複合微粒子の具体例としては、銀と硫化銀の複合微粒子、銀と酸化銅(II)の複合微粒子などが好適に挙げられる。
【0113】
遮光材料として複合粒子が用いられる場合、該複合粒子としては、コア・シェル構造を有する複合粒子(コアシェル粒子)であってもよい。コア・シェル型の複合粒子(コアシェル粒子)とは、コア材料の表面をシェル材料でコートしたものである。
コア・シェル型の複合粒子を構成するシェル材料としては、例えば、Si、Ge、AlSb、InP、Ga、As、GaP、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、PbS、PbSe、PbTe、Se、Te、CuCl、CuBr、CuI、TlCl、TlBr、TlIや、これらの固溶体及びこれらを90mol%以上含む固溶体から選ばれる少なくとも1種の半導体、又は銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、カルシウム、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属が挙げられる。
シェル材料は、反射率を低下させる目的で屈折率の調整剤としても好適に用いられる。
好ましいコア材料としては、銅、銀、金、パラジウム、ニッケル、錫、ビスマス、アンモチン、鉛、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0114】
コア・シェル構造を有する複合粒子の作製方法には、特に制限はなく、代表的な方法としては、以下の(1)及び(2)が挙げられる。
(1)公知の方法で作製した金属微粒子の表面に、酸化、硫化などにより、金属化合物のシェルを形成する方法であり、例えば、金属微粒子を水などの分散媒に分散させて、硫化ナトリウムや硫化アンモニウムなどの硫化物を添加する方法である。この方法により粒子の表面が硫化されてコア・シェル粒子が形成できる。
この場合、用いる金属粒子は、気相法、液相法などの公知の方法で作製することができる。金属粒子の作製方法については、例えば、「超微粒子の技術と応用における最新動向II」(住ベテクノリサーチ(株)、2002年発行)に記載されている。
(2)金属粒子を作製する過程で連続的に表面に金属化合物のシェルを形成する方法であり、例えば、金属塩溶液に還元剤を添加して、金属イオンの一部を還元して金属微粒子を作製し、次いで硫化物を添加して、作製した金属微粒子の周囲に金属硫化物を形成する方法である。
【0115】
金属粒子は、市販のものを用いることができるほか、金属イオンの化学的還元法、無電解メッキ法、金属の蒸発法等により調製することが可能である。
【0116】
例えば、棒状の銀微粒子は、球形銀微粒子を種粒子としてその後、銀塩を更に添加し、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)等の界面活性剤の存在下でアスコルビン酸など比較的還元力の弱い還元剤を用いることにより、銀棒やワイヤーが得られる。これは、Advanced Materials 2002,14,80−82に記載がある。また、同様の記載が、Materials Chemistry and Physics 2004,84,197−204、Advanced Functional Materials 2004,14,183−189になされている。
また、電気分解を用いた方法として、Materials Letters 2001,49,91−95やマイクロ波を照射することにより銀棒を生成する方法がJournal of Materials Research 2004,19,469−473に記載されている。逆ミセルと超音波の併用した例として、Journal of Physical Chemistry B 2003,107,3679−3683が挙げられる。
金粒子に関しても同様に、Journal of Physical Chemistry B 1999,103、3073−3077及びLangmuir1999,15,701−709、Journal of American Chemical Society 2002,124,14316−14317に記載されている。
棒状の粒子の形成方法は、前記記載の方法を改良(添加量調整、pH制御)しても調製できる。
【0117】
銀錫合金部を有する粒子としては、銀錫合金からなるもの、銀錫合金部分とその他の金属部分からなるもの、及び銀錫合金部分と他の合金部分からなるものを含む。
銀錫合金部を有する粒子において、少なくとも一部が銀錫合金で構成されていることは、例えば、(株)日立製作所製のHD−2300とノーラン(Noran)社製のEDS(エネルギー分散型X線分析装置)とを用いて、加速電圧200kVによる各々の粒子の中心15nm□エリアのスペクトル測定により確認することができる。
銀錫合金部を有する粒子は、黒濃度が高く、少量で或いは薄膜で優れた遮光性能を発現し得ると共に、高い熱安定性を有するので、黒濃度を損なうことなく高温(例えば200度以上)での熱処理が可能であり、安定的に高度の遮光性を確保することができる。
【0118】
−顔料その他の粒子−
遮光材料としては、顔料その他の粒子を用いることができる。
顔料を用いたときには、より黒色に近い色相に構成することができる。遮光材料として顔料を用いる場合、顔料を単独で用いてもよいし、上記の金属粒子と共に用いてもよい。
【0119】
顔料その他の粒子としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、黒鉛などの黒色材料からなる粒子が挙げられる。
【0120】
黒色顔料としては、例えば、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)、及びカーボンブラック等が挙げられる。
カーボンブラックの例としては、Pigment Black(ピグメント・ブラック)7(カーボンブラック C.I.No.77266)が好ましい。市販品として、三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、三菱カーボンブラック #5(三菱化学(株)製)が挙げられる。
チタンブラックの例としては、TiO、TiO、TiNやこれらの混合物が好ましい。市販品として、三菱マテリアルズ(株)製の(商品名)12Sや13Mが挙げられる。
【0121】
本発明においては、上記以外の公知の顔料を遮光材料として用いることもできる。顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、有機顔料が好ましい。好適に使用される顔料の例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料を挙げることができる。そのような有機顔料の色相は、例えば、黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等が挙げられる。
【0122】
以下、本発明において使用可能な他の顔料等の粒子を以下に列挙する。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
具体的な例としては、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。
【0123】
また、「顔料便覧、日本顔料技術協会編、誠文堂新光社、1989」、「COLOUR
INDEX、THE SOCIETY OF DYES & COLOURIST、THIRD EDITION、1987」に記載の顔料を参照して、適宜用いることもできる。
【0124】
顔料を金属系粒子と共に用いる場合には、金属系粒子の色相と補色関係にあるものを用いることが望ましい。また、顔料は1種でも2種以上を組み合せて用いてもよい。好ましい顔料の組合せとしては、赤色系及び青色系の互いに補色関係にある顔料混合物と黄色系及び紫色系の互いに補色関係にある顔料混合物との組合せや、前記の混合物に更に黒色の顔料を加えた組み合わせや、青色系と紫色系と黒色系との顔料の組合せを挙げることができる。
【0125】
本発明における遮光材料として特に好ましくは、カーボンブラックである。
遮光材料としてカーボンブラックを用いる場合、感光性組成物層は、カーボンブラックのみを含有してもよいし、カーボンブラックと、他の色材(例えば、他の着色剤)を併用してもよい。カーボンブラックと他の色材を併用する場合には、感光性組成物層に含有される全着色剤中50質量%以上がカーボンブラックであると、感光性組成物層を色濃度を高濃度にする点で好ましい。
【0126】
顔料を遮光材料として用いる場合、100nm以下の平均粒径を有する顔料が好ましく、1nm以上60nm以下のものがより好ましい。なお、顔料は、感光性組成物層の形成に用いる感光性組成物中において、分散剤により分散されていることが好ましい。
【0127】
感光性組成物層固形分中の遮光材料の含有量は、フォトマスクブランクスにより作製されるフォトマスクの濃度や、フォトマスクを作製する際の感度、解像性等を考慮して決められ、その種類によっても異なるが、10質量%以上60質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上35質量以下である。
【0128】
<(F)その他の成分>
本発明における感光性組成物層には、前記(A)成分〜(E)成分の必須成分に加えて、目的に応じて種々の化合物を併用することができる。感光性組成物層に使用可能なその他の成分について説明する。
−UV吸収剤−
感光性組成物層には、更に、紫外領域の吸光度を高めたりする目的で、UV吸収剤なども同時に添加してもよい。UV吸収剤としては、特開平9−25360号公報に記載のような、加熱処理により紫外領域に強い吸収を発現する化合物も用いることができる。
【0129】
−熱重合禁止剤−
この他に添加剤として、感光性組成物層の形成する際或いはフォトマスクブランクスの保存中において、重合可能なエチレン性不飽和結合を含有する化合物(前述のエチレン性不飽和化合物など)の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合禁止剤を添加することが好ましい。更に熱重合防止剤を添加することが好ましい。その例としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、等が挙げられる。
【0130】
熱重合禁止剤の添加量は、感光性組成物層を構成する全固形分に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光性組成物層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体等の添加量は、感光性組成物層を構成する全固形分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0131】
−その他の添加剤−
更に、本発明で使用する感光性組成物には必要に応じて公知の添加剤、例えば可塑剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0132】
<感光性組成物層の形成>
感光性組成物層は、前述した各必須成分及び任意成分を含有する塗布液(感光性組成物層形成用塗布液)を、適切な基板上にスピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、或いはカーテンコーター等を用いて直接塗布により設けることが可能である。
【0133】
感光性組成物層の膜厚は、膜厚の均一性、解像度及び感度の観点から、0.3μm〜7μmの範囲が好ましい。特に好ましい膜厚は、0.5μm〜3μmである。
【0134】
(基板)
前記感光性組成物層を適切な基板上に形成することにより、本発明のフォトマスクブランクスとなる。基板は目的に応じて適宜選択されるが、基板ごとフォトマスクを形成し、そのまま繰り返し使用するという観点からは、フォトマスクが用いられる露光光源の波長に対して吸収のないもの、例えば、可視光に用いる場合には、透明な基板を用いることが好ましい。ここで、透明な基板とは、350〜750nmの波長領域に極大吸収を有さない基板を意味する。
【0135】
−透明基板−
本発明のフォトマスクブランクスにおける透明基板としては、ガラス板(例えば、石英ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなど)、透明プラスティックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)のごとき透明基板を適用することができる。
透明基板の厚さは、フォトマスクブランクスによって適宜設定することができるが、0.1mm以上20mm以下の範囲が好ましく、1mm以上7mm以下の範囲が好ましく、1mm以上5mm以下の範囲が好ましい。
【0136】
(酸素遮断性層)
本発明のフォトマスクブランクスは、感光性組成物層上に酸素の透過性を適切に制御するための酸素遮断性層を有することが好ましい。以下、酸素遮断性層について説明する。
酸素遮断性層は、25℃、1気圧下における酸素透過性が、1.0ml/m・day・atm以上500ml/m・day・atm以下であることが好ましい。
酸素遮断性層が有する酸素透過性が、上記範囲内であることで、フォトマスクブランクスの製造時及び生保存時に、不要な重合反応が生じることがなく、また、フォトマクスを作製する際の画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生ずるという問題もない。したがって、かかる特徴を有する本発明のフォトマスクブランクスにより、高い解像性と良好な画像エッジ部の直線性とを有するフォトマスクを得ることができる。
【0137】
酸素遮断性層の中でも、高い解像性と良好な画像エッジ部直線性が得られるといった観点からは、酸素透過性が、50ml/m・day・atm以上500ml/m・day・atm以下であることがより好ましく、80ml/m・day・atm以上480ml/m・day・atm以下が更に好ましく、100ml/m・day・atm以上470ml/m・day・atm以下が更に好ましく、150ml/m・day・atm以上460ml/m・day・atm以下が最も好ましい。
【0138】
本明細書において、酸素遮断性層が有する酸素透過性は、以下の測定方法(モコン法)により測定した酸素透過率である。
−酸素透過性の測定方法−
酸素透過性の高いポリエチレンフィルム(富士フイルム(株)製「エバービュティーペーパー」の表面ゼラチン層を溶解除去することで作製したポリエチレンラミネート紙)に、感光性層上に形成する酸素遮断性層と同様の組成の塗膜を塗布乾燥し、測定用のサンプルを作製する。JIS−K7126B及びASTM−D3985に記載の気体透過度試験方法に則り、モコン社製OX−TRAN2/21を用い、25℃60%RHの環境下で酸素透過率(ml/m・day・atm)を測定する。
【0139】
酸素遮断性層が有する酸素透過性の制御は、例えば、酸素遮断性層が含有する各成分の種類及び含有量の調整(具体的には、例えば、ポリビニルアルコールのケン化度の調整、可塑剤を添加、等)、酸素遮断性層の膜厚の調整、好ましい酸素透過性を示す樹脂の採用等の各手段、或いは、これらの各手段を適宜組み合わせることにより実施することができる。
【0140】
また、酸素遮断性層に望まれる特性としては、上記酸素透過性以外に、更に、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光性層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0141】
上述の酸素透過性を実現するために好ましい酸素遮断性層の構成について、以下に詳述する。
【0142】
<水溶性高分子化合物>
酸素遮断性層は、酸素遮断性及び現像性の観点から、水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。
水溶性高分子としては、比較的結晶性に優れた化合物を用いることが好ましく、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドポリエステル、ポリウレタンなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0143】
ポリビニルアルコールの具体例としては、ビニルアルコール単位の40〜100モル%が加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげることができる。
酸素遮断性層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。
また、本発明に用いるポリビニルアルコールには、酸変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体や、ビニルアルコール単位以外の重合単位を有する共重合体が含まれる。
【0144】
水溶性高分子化合物として好適に用いられるポリビニルアルコールの市販品は、例えば、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−505、PVA−613、L−8、KL−504、KL−506、KL−318、KL−118、KM−618、KM−118、C−506、R−2105、R−1130、R−2130、M−205、MP−203、LM15、LM20、LM25等が挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。
【0145】
酸素遮断性層に用いられるポリビニルアルコールに適用しうるビニルアルコール単位以外の重合単位を有する共重合体としては、例えば、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
【0146】
ポリビニルアルコール誘導体としては、酸変性ポリビニルアルコールを好ましく使用できる。ここで、酸変性ポリビニルアルコールとは、カルボキシル基等の酸基を有するポリニルアルコール誘導体を意味する。
酸変性ポリビニルアルコールは、酸基を有する構成単位を高分子中に有するものであればよく、該酸基は、酸基を有する共重合成分を用いて高分子中に導入されたものであってもよいし、ポリビニルアルコールの重合後にビニルアルコール単位の水酸基等と酸基を有する化合物とを反応させて導入されたものであってもよい。
【0147】
好ましい酸変性ポリビニルアルコールとしては、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、ビニルアルコール/イタコン酸共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ビニルアルコール/イタコン酸共重合体等が好ましい。
【0148】
酸変性ポリビニルアルコールは、ビニルアルコール共重合比が85%以上のものが好ましい。例えば、酸変性ポリビニルアルコールとして、ビニルアルコール/イタコン酸共重合体を用いる場合であれば、該共重合体としては、ビニルアルコール共重合比が90%以上のものが好ましく、95〜99.5%のものが特に好ましい。ビニルアルコール/イタコン酸共重合体の市販品としては、例えば、(株)クラレ製のKL−504、KL−506が挙げられる。
【0149】
ポリビニルアルコールは、酸素遮断性を調整する観点から、ケン化度が、40mol%以上88mol%以下であることが好ましい。特に、ケン化度60mol%以上88mol%以下のポリビニルアルコールがより好ましく、70mol%以上88mol%以下のものが最も好ましい。
ケン化度が上記の範囲のポリビニルアルコールの市販品としては、例えば、(株)クラレ製のPVA-205、PVA−405、PVA−420、PVA−505、KL−504、KL−506が挙げらる。このようなポリビニルアルコールは、酸素透過性が、50ml/m・day・atm以上500ml/m・day・atm以下の酸素遮断性層の形成に好適に用いられる。
【0150】
本発明において、酸素遮断性層に用いうるポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、アクリル系樹脂、セルロース等には、その誘導体も含まれる。
【0151】
ポリビニルピロリドンとしては、例えば、ポリビニルピロリドン単一ポリマーが挙げられる。また、ポリビニルピロリドンとしては、粘度平均分子量が、5000〜50000のものが好ましい。
ポリビニルピロリドンとしては、市販品を用いることもでき、具体的には、BASF社製のPVP−K15、PVP−K30が好ましい。
【0152】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、等が挙げられる。
【0153】
ポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量が、5000〜100000のポリエチレングリコールが好ましい。
ポリエチレングリコールとしては、市販品を用いることもでき、具体的には、(株)WAKO製のPEG#10000、PEG#5000が好ましい。
【0154】
エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体としては、共重合比が90:10〜70:30、分子量が2000〜20000のエチレングリコール/プロピレングリコール共重合体が好ましい。
エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体としては、市販品を用いることもでき、具体的には、ADEKA社製のプルロニックL44、プルロニックL62、プルロニックL64、プルロニックF68、プルロニックP84、プルロニックF9が挙げられる。
【0155】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸及びその誘導体が挙げられる
ポリアクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸の金属塩を構成単位として有するものが挙げられる。このようなポリアクリル酸誘導体としては、市販品を用いることもでき、具体的には、(株)東亞合成性のアロンA−93、アロンA−1015、アロンA−1017が挙げられる。
【0156】
水溶性高分子化合物は、酸素遮断性層中に1種のみ含有されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0157】
酸素遮断性層における水溶性高分子化合物の含有量としては、酸素遮断性層の全固形分中、80質量%〜99.5質量%が好ましく、85質量%〜99.5質量%がより好ましく、90質量%〜99.5質量%が更に好ましい。
【0158】
<界面活性剤>
酸素遮断性層には、界面活性剤を添加することができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能である。
【0159】
酸素遮断性層に用いうる特に好ましい界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル系界面活性剤が挙げられる。ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル系界面活性剤の主成分であるヒマシ油は、トウゴマの種子から圧搾法によって得られる植物性の不乾性油である。種子全体に対して35〜57%の油が含まれる。成分は不飽和カルボン酸のリシノール酸を約85%含有する。リシノール酸は末端のカルボキシル基と12位にヒドロキシル基、9位に不飽和2重結合を有するステアリン酸誘導体である。ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤は、このヒマシ油の主成分であるリシノール酸にエチレンオキシドを付加させて合成するノニオン系界面活性剤の総称である。付加反応過程で、条件によりリシノール酸のヒドロキシ基とカルボン酸基が反応し、ポリエステルとなり、分子量が1万から2万にもなる、高分子を含む界面活性剤も形成できる。
また、リシノール酸のグリセロールにエチレンオキシドを付加したタイプの界面活性剤も含まれる。
【0160】
ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤のHLBは、10.0〜16.0が好ましく、より好ましくは11.0〜15.0である。HLBが10.0より小さいと、水溶性が低く、ポリビニルアルコールの水溶液に添加した時、濁りを生じる場合がある。また、HLBが16より大きい場合は、親水性が高すぎて、酸素遮断性層の吸湿性が増す場合がある。また、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤の重量平均分子量は、摩擦係数及び溶解性の観点から、800〜5000、好ましくは1000〜3000である。
【0161】
このようなポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤の具体例としては、竹本油脂株式会社製のパイオニンD−225、パイオニンD−240−W、パイオニンD−230、パイオニンD−236、パイオニンD−225−K、花王株式会社製エマノーンCH−25、エマノーンCH−40、エマノーンCH−60等を挙げることができる。
【0162】
ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤を用いる場合、その添加量は、酸素遮断性層の全固形分中、1.0質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは2.0質量%〜6.0質量%である。添加量が少なくなると、摩擦係数低下の効果が小さくなる場合がある、一方、添加量が多過ぎると酸素遮断性層の塗布性が劣化し、塗布ムラを生じる場合がある。
【0163】
酸素遮断性層における界面活性剤の含有量としては、酸素遮断性層の全固形分中、0.1質量%〜2質量%であることが好ましい。
【0164】
<酸素遮断性層の形成>
酸素遮断性層は、酸素遮断性層を形成するための塗布液を調製し、該塗布液を前記感光性組成物層上に塗布することにより形成することができる。酸素遮断性層の塗布方法に関しては、逐次に塗設する方法と、一気に重層塗布する方法とを適用できるが、いずれであっても構わない。
【0165】
酸素遮断性層の膜厚は、0.05μm以上1.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。
【0166】
このようにして、基板上に、(A)〜(E)の各成分を含む感光性組成物層を形成し、好ましくは、その表面に酸素遮断性層を形成して、本発明のフォトマスクブランクスを得る。
【0167】
[フォトマスク及びフォトマスクの製造方法]
本発明のフォトマスクは、既述した本発明のフォトマスクブランクスを用い、フォトマスクブランクスが有する感光性組成物を、画像様に露光した後、現像することで形成した遮光層を有することを特徴とする。
具体的には、既述のフォトマスクブランクスを、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後(露光工程)、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液を用いて現像することにより感光性組成物層の未露光部を除去する(現像工程)により、画像様の遮光層(露光部)を有するフォトマスクを得ることができる。
【0168】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて作製されるフォトマスク(本発明のフォトマスク)としては、該フォトマスクブランクスを、350nm以上450nm以下の光を放射するレーザー(より好ましくは390nm以上450nm以下の光を放射するレーザー)を用いて画像様露光した後、現像することにより作製されたものが好適な態様である。
【0169】
〔露光工程〕
露光工程は、フォトマスクブランクスを、線画像、網点画像、等を有する透明原画を通して画像様に露光するか、デジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光することにより行うことが好ましい。本発明のフォトマスクブランクスの画像形成には、レーザーによる露光が好適に用いられる。
【0170】
露光光源としては、350nm以上450nm以下の範囲の光を放射するレーザーが好ましく、具体的にはInGaN系半導体レーザーが好適である。
【0171】
350n以上450nm以下の範囲の光を放射するレーザー、及びこれよりより短波長の光を放射するレーザーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0172】
<ガスレーザー>
Arイオンレーザー(364nm、351nm)、Krイオンレーザー(356nm、351nm)、He−Cdレーザー(441nm、325nm)などが挙げられる。
<固体レーザー>
Nd:YAG(YVO)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm)などが挙げられる。
<半導体レーザー系>
KNbOリング共振器(430nm)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)などが挙げられる。
<その他のレーザー>
パルスレーザーとして、Nレーザー(337nm)、XeF(351nm)などが挙げられる。。
【0173】
これらの中でも、特に、AlGaInN半導体レーザー(InGaN系半導体レーザー400nm〜410nm)が、波長特性、コストの面で好適である。
【0174】
〔現像工程〕
現像液としては、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミン又はジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ剤は、これを含有するアルカリ性水溶液の濃度が0.1質量〜10質量%、好ましくは0.5質量〜5質量%になるように添加される。
【0175】
また、現像液として用いられるアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号及び同第3615480号に記載されているものを挙げることができる。更に、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0176】
特に好ましい現像液としては、特開2002−202616公報に記載の非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3mS/cm〜30mS/cmの電導度を有する現像液が挙げられる。
【0177】
現像工程において、露光後のフォトマスクブランクスに、現像液を接触させる態様としては、手処理、浸漬処理、及び機械による処理などが挙げられる。
【0178】
手処理としては、例えば、スポンジや脱脂綿に充分現像液を含ませ、全体を擦りながら処理し、処理終了後は充分に水洗する態様が挙げられる。
【0179】
浸漬処理としては、例えば、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液の入ったバットや深タンクに浸して撹拌した後、脱脂綿やスポンジなどで擦りながら充分に水洗する方法が挙げられる。浸漬時間は、約60秒であることが好ましい。
【0180】
機械処理には、自動現像機を用いることができる。自動現像機を用いる場合としては、例えば、現像槽に仕込んだ現像液をポンプで汲み上げて、露光後のフォトマスクブランクスにスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって、露光後のフォトマスクブランクスを浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を、一枚毎の露光後のフォトマスクブランクスに必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。どの方式においても、高圧洗浄、ブラシやモルトンなどの機構があるものがより好ましい。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0181】
また、現像する際における現像液の温度としては、20℃〜35℃の範囲が好ましく、25℃〜30℃の範囲がより好ましい。
【0182】
〔その他の工程〕
また、フォトマスクブランクスに対しては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面に加熱処理を施してもよい。加熱処理を施すことにより、感光性層中の画像形成反応が促進され、感度の向上、感度の安定化といった利点が生じ得る。更に、画像強度の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うことも有効である。
【0183】
通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。一方、現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は150℃〜500℃の範囲加熱処理を行う。
【0184】
また、フォトマスクブランクスに対する画像形成後においては、画像上に熱硬化型のエポキシ樹脂等の保護膜を設けてもよい。画像上に保護膜を設けることにより、更に膜強度を向上させることもできる。
【0185】
以上のようにして、本発明のフォトマスクブランクスを用いてフォトマスク(本発明のフォトマスク)が得られる。
【0186】
本発明のフォトマスクにおける遮光層の膜厚は、0.8μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以上1.8μm以下がより好ましい。
また、本発明のフォトマスクにおける遮光層は、365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上であることが好ましく、4.0以上がより好ましい。
本発明のフォトマスクにおける遮光層の最も好適な態様は、遮光層の膜厚及び365nmにおけるO.D.の双方が、上記の範囲を満たす態様である。
【0187】
また、本発明のフォトマスクブランクスは高解像度の画像形成が可能であるために、微細な線幅の画像をエッジ直線性が良好な状態で形成することができる。このようなフォトマスクブランクスを用いて形成されるフォトマスクの好適な態様の一つは、遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、好ましくは0.1μm以上30μm以下である態様である。形成されるL/Sは、より好ましくは0.1μm以上25μm以下、更に好ましくは0.1μm以上20μm以下のものであり、前記本発明のフォトマスクブランクスにより、このような微細な線幅のL/Sを有する遮光層の形成が可能となった。
【0188】
なお、得られたフォトマスクに欠陥がある場合には、以下のようにして欠陥修正を行うことができる。
【0189】
ここで、フォトマスクの欠陥とは、黒部の場合には、主として黒部の白抜け部分、例えば、ピンホールのような光を透過する欠陥を意味する。また、白部の場合には、例えば、本来白部となるべき部分の透明基板上に異物や感光性層が付着して光透過率が低下する欠陥をいう。黒部の白抜け部分が発生した場合には、感光性層用塗布液(感光性組成物)を欠陥周辺部に塗布した後、例えば、HeCdレーザーで露光、現像を行い不要の感光性層を除去することにより欠陥を修正することができる。また、HeCdレーザーで露光、現像する替わりに、YAGレーザーで不要部分をアブレーションにより除去することも可能である。一方、白部の欠陥の場合には、YAGレーザーなどでアブレーションにより除去可能である。この場合、Emマスクとは異なり、白部には感光性層などの有機物成分は無いため、レーザーアブレーションに伴う、新たな欠陥の発生は一切生じない。
【0190】
本発明のフォトマスクブランクスを用いることで、解像度が高く、画像エッジ部の直線性に優れたフォトマスクを得ることができる。また、簡便な工程で、且つ高歩留まりにフォトマスクを得ることができる。更に、フォトマスクの欠陥修正も容易であり、安価にフォトマスクを作製できる。
【0191】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて得られたフォトマスクは、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において好適に用いることができる。
本発明で用いるフォトマスクを、紫外感光性のレジストのパターニング用に用いる際には、超高圧水銀灯などの紫外線露光機にバンドパスフィルターを組み入れて、露光波長を選択することも可能である。
【実施例】
【0192】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0193】
[実施例1〜5、比較例1〜2]
1.フォトマスクブランクスの作製
(感光性組成物層の形成)
ガラス基板(10cm×10cm)上に、下記組成の感光性組成物層用塗布液組成物(P−1)を乾燥塗布質量が1.4g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光性組成物層を形成した。
【0194】
<感光性組成物層用塗布液組成物(P−1)>
・カーボンラック分散液(下記組成の分散液) 16.0質量部
・エチレン性不飽和化合物(C−1)(下記構造の化合物) 4.2質量部
・バインダーポリマー(D−1)(下記構造の高分子バインダー) 3.6質量部
(MW:50,000)
・特定増感色素又は比較増感色素(下記表2に記載の化合物) 0.21質量部
・重合開始剤(表2に記載の化合物) 0.81質量部
・連鎖移動剤(F−1)(下記構造の化合物) 0.3質量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤 0.05質量部
(メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 58質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 53質量部
【0195】
【表2】

【0196】
感光性組成物層用塗布液組成物(P−1)の調製に用いたカーボンブラック分散液の組成は、以下の通りである。
【0197】
<カーボンラック分散液の組成>
・カーボンブラック 13.1質量部
(商品名:Nipex 35、エボニック・デグサ ジャパン(株)製)
・分散剤(下記構造の化合物) 0.65質量部
【化21】


・ポリマー 6.72質量部
(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53質量部
【0198】
また、実施例及び比較例の感光性組成物層用塗布液組成物の調製に用いた、特定増感色素(7)、(1)、(21)、及び(19)、重合開始剤(B−1)、エチレン性不飽和化合物(C−1)、バインダーポリマー(D−1)、並びに、連鎖移動剤(F−1)の構造を以下に示す。
また、表2中の重合開始剤:CGI7460は、チバ・ガイギー社製の市販の開始剤(有機硼素酸塩系光重合開始剤)である。
【0199】
【化22】

【0200】
【化23】

【0201】
(酸素遮断性層の形成)
この感光性組成物層上に、下記組成の酸素遮断性層塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥して酸素遮断性層を形成した。酸素遮断性層の膜厚(μm)を、「SURFCOM130A、東京精密(株)製」にて直接膜厚測定したところ0.2μmであった。また、前記の方法によりこの酸素遮断性層の酸素透過性を測定したところ、170ml/m・day・atmであった。
【0202】
<酸素遮断性層塗布液>
・水 87g
・PVA−405(クラレ(株)) 6g
・PVP−K30(BASF(株)) 6g
・EMALEX710(日本エマルジョン(株)製、界面活性剤) 1g
【0203】
以上のようにして、透明基板上に感光性組成物層と酸素遮断性層とを備えた実施例1〜5のフォトマクスブランクス(1)〜(5)、及び比較例1〜2のフォトマスクブランクス(C1)〜(C2)を得た。
【0204】
2.フォトマスクブランクスの評価
(1)感度評価
以上のようにして得られた実施例及び比較例の各フォトマスクブランクス(10×10cm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)により露光した。次いで、露光後の各フォトマスクブランクスを、下記組成のアルカリ現像液1Lに30℃、15秒間浸漬して現像、水洗した後、乾燥した。更に、180℃・30分加熱処理を行い、所望のフォトマスクを得た。露光感度は、露光量を変化させながら、このフォトマスクのライン/スペース=20μm/20μmを再現しうる露光量を最適露光量と定めて評価した。この数値が小さいほど高感度で画像形成しうると評価する。
結果を下記表3に示す。
なお、現像、加熱処理後のフォトマスクの365nmの吸光度は、約4.0であった。
また、東京精密(株)社製サーフコム480Aにより測定した遮光層の膜厚は、1.5μmであった。
【0205】
<アルカリ現像液組成>
下記組成からなるpH11.95の水溶液
・水酸化カリウム 0.2g
・1Kケイ酸カリウム 2.4g
(SiO/KO=1.9)
・下記化合物 5.0g
・エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩 0.1g
・水 91.3g
【0206】
【化24】

【0207】
(2)解像度測定、画像エッジ部直線性評価
実施例及び比較例の各フォトマスクブランクス(10×10cm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)により露光した。次いで、露光後の各フォトマスクブランクスを、前記組成のアルカリ現像液1Lに30℃、15秒間浸漬して現像、水洗した後、乾燥した。更に、180℃・30分加熱処理を行い、所望のフォトマスクを得た。露光量は、露光量を変化させながら画像形成し、フォトマスクのライン/スペース=20μm/20μmが再現する際の露光量を最適露光量と定め、その際併せて同条件で4,6,8、15、20、25、30μmのライン/スペースも描画し、再現できているうちで最も細い線を解像度とした。
加えて20μmのラインのエッジ部を(株)キーエンス社製マイクロスコープにて撮影し、エッジ部の直線性のバラツキを標準偏差σで表した。σ値が小さいほど直線性に優れていることを表す。
結果を下記表3に示す。
【0208】
(3)保存安定性評価
2−1)露光量変化率評価
実施例及び比較例の各フォトマスクブランクスを、高温条件下(60℃)で3日間保存した後に、前記(1)感度評価と同様にして、露光光量を振り、ライン/スペース=20μm/20μmが再現する際の露光量を求めた。前記(1)感度評価の結果として示される初期の最適露光量(X)と、3日間保存後の露光量(X)との差(X−X)の値が小さく、下記式で示す露光量変化率(%)が10%以内であれば保存安定性が良好であると評価する。
露光量変化率(%)=(X−X)/X×100
結果を下記表3に示す。
【0209】
(4)黄色灯下でのセーフライト適性
フォトマスクブランクスを黄色灯照明(約470nm以下の波長の光を遮断した条件)下に、1分間、2分間、5分間、10分間、20分間、30分間放置した後、前記(1)感度評価と同様にして、走査露光及び現像処理を行い、形成されたL/Sの画像を目視で評価し、前記(1)感度評価で形成された画像と比較して目視にて画像に変化が生じるまでの応答かでの放置時間を求め、以下の基準で評価した。
A:放置時間が20分以上で画像に変化が生じた
B:放置時間が10分以上20分未満で画像に変化が生じた
C:放置時間が1分以上10分未満で画像に変化が生じた
D:放置時間が1分未満で画像に変化が生じた
結果を下記表3に示す。
【0210】
【表3】

【0211】
表3から明らかなように、各実施例のフォトマスクブランクスは、高感度であり、且つ、セーフライト性、保存安定性にも優れており、これにより得られた各フォトマスクは、解像度が高く、画像エッジ部の直線性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、(A)下記一般式(I)で表される増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。
【化1】

[上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は一価の置換基を表し、Rは一価の置換基を表す。]
【請求項2】
前記感光性組成物層上に、更に、25℃における酸素透過性が50ml/m・day・atm以上500ml/m・day・atm以下の酸素遮断性層を有する請求項1に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項3】
前記基板が、厚み0.1mm以上20mm以下の透明なガラスである請求項1又は請求項2に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項4】
前記重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、及び有機硼素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項5】
前記遮光材料の含有量が、前記感光性組成物層に含まれる全固形分に対し10質量%以上60質量%以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のフォトマスクブランクス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
【請求項7】
前記露光が、350nm以上450nm以下の光により行われる請求項6に記載のフォトマスク。
【請求項8】
前記遮光層の膜厚が0.8μm以上2.0μm以下であり、且つ365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上である請求項6又は請求項7に記載のフォトマスク。
【請求項9】
前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、0.1μm以上20μm以下である請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載のフォトマスク。

【公開番号】特開2010−85467(P2010−85467A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251496(P2008−251496)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】