説明

フルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体とその製造方法及び用途

一般式(I)のコンブレタスタチン誘導体とその製造方法及び用途を開示する。ここで、Rf は1〜8 の炭素原子と1〜17 のフッ素原子を含有するアルキル基で、R はアミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、リン酸塩又はアミノ酸の側鎖。前記誘導体は、チューブリン重合を抑制する能力を持ち、抗腫瘍と抗新生血管の治療に有用である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物合成分野、特に抗癌薬物の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ガンは罹患率と死亡率が世界で一番の疾病である。ガンは深刻に人間の健康を脅かしており、ガンに勝つのは全世界が直面している難題である。1970 年代の初期、ガンの形成の原因について、何も知られなかったから、科学者たちは盲目的にガンを治療する薬物を探していた。1966年に、米国国立癌腫研究所がスポンサーになり始めた化学薬物スクリーニングプロジェクトでは、ガンを治療する可能性がある夥しい化学薬品が一つずつテストされた。そのスクリーニングの結果、さらに他の抗癌計画によって開発された薬物には、メトトレキサート、シクロホスファミド、シスプラチン、フルオロウラシル、パクリタキセルなどが含まれる。これらの薬物は腫瘍の病状を改善することができるけれども、持続的な投与は厳重な「多剤耐性」を引き起こすことによって、投与を継続しても治療効果があまり得られなくなる。もっとひどいのは、腫瘍は最終的に薬剤耐性が得られ、治療は不可能になることである。
【0003】
1971 年に、米国のFolkman 博士は初めに血管新生論を提案し、以下の大胆な仮説を出した。(1)腫瘍の生存は新生血管の形成に依存している。(2)腫瘍は主動的にこのような血管の形成を刺激することができる。(3)腫瘍はある物質を分泌することによって、自分に成長してくるように血管を誘導し、且つ分枝を出すことができる。固形腫瘍の成長は、腫瘍細胞と腫瘍血管内皮細胞の両者の数によって決められ、両者は互いに依存し、何れかの一方の細胞群が増減すると、もう一方の細胞群が必ず合わせて増減する。それゆえに、一方の細胞の成長を抑制する薬物は何れも腫瘍を治療する作用を有し、前者は細胞毒性薬物を主とする腫瘍の化学治療に、後者は最近注目されている抗腫瘍血管形成療法に役立つ。固形腫瘍の成長と転移は血管形成に依存するというのは20 世紀70 年代初期米国のFolkman 博士が提出した仮説で、腫瘍血管の形成を抑制すると、腫瘍細胞は血液と酸素の供給不足によって部分的に死亡することにより、腫瘍の成長を遅らせ、腫瘍の転移も抑制することができる。現在、腫瘤の成長は腫瘤血管の形成に依存することが証明された。体積が1−2 mm3 以下の腫瘍は浸透作用によって周囲組織から栄養を獲得し、自身の生存を維持することができる。このときは、腫瘍がさらに成長するには、新生血管によって充分な栄養供給を獲得することが必要となるので、腫瘤の成長が非常に緩慢である。腫瘤血管の形成は、毛細血管の基底膜の分解、血管内皮細胞の遷移と増殖、管状構造の形成、基底膜の形成、血流の貫通などのプロセスを含み、このプロセスは生体の神経内分泌の要素などの影響を受けるとともに、腫瘍細胞と腫瘍基質細胞の発現する生長因子によって調節される。
【0004】
腫瘍の抗血管形成療法は、作用対象が様々な腫瘍組織におけるほとんど同様な血管内皮細胞で、この腫瘍血管内皮細胞は、正常な内皮細胞と比べて、分裂増殖速度が速いこと以外、顕著な区別はない。正常な内皮細胞は、寿命が長く、遺伝子型が安定している。神経細胞を除いて、内皮細胞は生体内寿命が一番長い細胞の一種である。成熟の血管壁に存在する内皮細胞は、同じ時点では0.01%程だけが分裂状態で、腫瘍血管の内皮細胞の増殖速度は正常な組織における内皮細胞より約50 倍高い。そのため、血管抑制因子は腫瘍血管に対して比較的な特異性を持つが、正常な組織内の血管に対する顕著な影響がない。腫瘍細胞を直接に殺傷する化学治療法と比較すると、血管新生抑制剤は抗腫瘍に顕著な優越性がある。第一に、腫瘍が発生した時、血管新生はすでに始まったので、優れた特異性がある。治療効果が顕著で、薬物は、直接に血管内皮細胞に作用し、単一の血管を損傷すると、夥しい腫瘍細胞が酸素不足で死亡し、関連の研究によると、投薬2 時間後血液不足の箇所で99%の腫瘍細胞が大面積で死亡する。第二に、血管内皮細胞が血液の流れに暴露され、薬物の直接な作用が可能で、直接にガン細胞を殺傷することではなく、ただ細胞の形状や成長速度を変え、用量が少なく、最大耐用量(MTD)の数十分の一だけで、且つ少ない薬物量で高い治療効果が得られるため、放射線療法や化学療法などの治療法による不良反応がない。第三に、内皮細胞の遺伝子発現は比較的に安定なので、薬剤耐性は生じにくい。腫瘍血管内皮細胞の増殖速度は正常な組織より数十倍速く、血管新生抑制剤は速く増殖する腫瘍血管内皮に選択的に作用し、正常な組織には副作用が極めて低く、顕著な優越性がある。
【0005】
シクンシ科植物は、一種類の熱帯や亜熱帯に分布する潅木や喬木で、重要な医学応用価値がある。ヨツバネカズラ属の植物には、25 種類があること知られている。これらは、アフリカとインドでらい病とガン等の治療に使われている。1970 年代末期、米国国立癌腫研究所は、スクリーニングプロジェクトでは、この植物がマウスのP388 リンパ性白血病細胞に対する強い抑制作用を見出した。1980 年代初期から、この植物に対する研究は広く注目された。この期間中、米国アリゾナ大学癌腫研究所所長のG. Robert Pettit 博士と4人の同僚は、以前ズールー人に敵を退散させる護符として使われていた学名「Combretum caffrum」の南アフリカの樹種からコンブレタスタチンを抽出し、Journal of Canadian Chemistry では、G. Robert Pettit 博士は根の外皮が確かに抗腫効果があると述べた。その後、多くの高活性の化合物が分離して同定されただけではなく、その薬理作用機構と構造修飾に対しても深く研究されてきた。Pettit のグループは、この方面の研究が一番早かった。ヨツバネカズラ属の植物は深く研究され、一連の抗癌活性があるフェナントレン、スチルベンとビベンジルの誘導体が単離された。なかでも、コンブレタスタチンA-1 とA-4(略称:CA-1とCA-4、構造式:一般式(II)の通り)は今まで知られたこの種類の化合物のうち作用が一番強いチューブリン生長阻害剤である(US 5,561,122; WO 9935150)。
【0006】
【化1】

コンブレタスタチン系化合物の発見からまだ長くないに関わらず、その研究が広く注目されている。これは、コンブレタスタチンが高い抗腫瘍活性を持つだけでなく、構造が比較的に簡単なチューブリン重合を抑制し、腫瘍新生血管を阻害する小分子の天然産物であるためである。CA-4の作用機構の研究によって、A 環とB 環がそれぞれチューブリンのα鎖とβ 鎖における2 つの離れたサイトに結合することによって、腫瘍血管内皮細胞のアポトーシスを引き起こす。CA-4 はチューブリン重合を抑制することによって腫瘍の成長に必要な酸素と栄養物質を供給する新生血管を攻撃し、そして、腫瘍を消滅する。
【0007】
CA-4 はガン細胞の内皮細胞に入ることができる。腫瘍の内部には、内皮細胞は発育が未熟なので、他の正常な体細胞と比較すると、CA-4 に激励されやすい。一旦CA-4 は内皮細胞の中に進入すると、内皮細胞の構成がCA-4 に破壊され、その外部の形態も変わり、元々のフラット状から楕円状になることによって、腫瘍細胞に栄養を供給する新生毛細管を有効的に詰め、腫瘍の部位は大面積の乏血性壊死を引き起こし、最後にガン細胞のアポトーシスに導く。従来の実験と臨床の経験によると、このような部位には伝統の抗癌剤が入れない。以上の理論は、CA-4 の第1相臨床試験で証明された。異なるがん患者にそれぞれCA-4 の治療によって、4〜6 時間以内に、彼らの腫瘍付近における血流は明らかに減少した。そして、95%以上のガン細胞は壊死した。また、CA-4 は糖尿病型増殖性網膜症、乾癬、関節炎等の他の血管増殖性疾病を治療することができ、免疫功能を高める作用を持ち、エイズの治療にも優れた効果がある(WO 02058535; US 6,773,702)。
【0008】
近年で、CA-4 は腫瘍血管のターゲッティング薬剤として腫瘍血管を遮断する優れた特性を示した(Thorpe PE. Clin Cancer Res. 2004 Jan 15,10(2):415-27;West CM, Price P. Anticancer Drugs. 2004Mar,15(3):179-87;Young SL, Chaplin DJ. Expert Opin Investig Drugs. 2004 Sep,13(9):1171-82.)ため、CA-4 に類似する新しい誘導体の開発がこの分野で注目されている研究目標になっている。たとえば、Oxigene 社によって開発された機能性スチルベン誘導体であるCA-1 とCA-4 の類似物がある(US 6,919,324)。
【0009】
フッ素を生物活性分子に導入することによってこの分子の活性が影響を受けるが、その活性を増加させるか減少させるかは不確定であることは、本分野の技術者たちには理解されるはずである。
【0010】
たとえば、Sigma-Tau Industrie Farmaceutiche Riunite S.P.A 社はフッ素置換のコンブレタスタインを研究し、その二重結合にフッ素原子を導入した(WO 2005/007603 A2)が、その活性はCA-4とは略同じである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本分野では、より高い活性を持っているコンブレタスタイン系化合物の新規誘導体の発見は切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、構造が一般式(I)で示されるフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、一般式(I)の化合物の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の三つ目の目的は、一般式(I)の化合物を含有する医薬品組成物を提供することである。
本発明の四つ目の目的は、一般式(I)の化合物の医薬用途を提供することである。
【0014】
本発明の第一は、一般式(I)で示される化合物を提供する。
【0015】
【化2】

ここで、Rfは1〜8 の炭素原子と1〜17 のフッ素原子を含有するアルキル基で、R はアミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、リン酸塩又はアミノ酸の側鎖或はその薬学的に許容しうる塩である。好ましくは、Rf=CH2F,-CHF2、-CnF2n+1、-CH2CnF2n+1、-CHFCnF2n+1又は-CH2CHFCnF2n+1 で、nは1〜3の整数を表す。
【0016】
別の好ましい例において、前述のRf とR は以下の組合せから選ばれる。
(a)Rfがフルオロメチル基で、R がヒドロキシ基である。
(b)Rfがフルオロメチル基で、R がアミノ基又は置換アミノ基である。
【0017】
(c)Rfがフルオロメチル基で、R がリン酸二ナトリウム塩、リン酸アンモニウム塩又はホスホリルコリン内塩である。或は、
(d)Rfがフルオロメチル基で、R が-NH(COCHR′NH)m-H で、R′は水素原子、天然アミノ酸側鎖又はフェニル基で、mは1〜3の整数を表す。
【0018】
別の好ましい例において、前述のRf とR は以下の組合せから選ばれる。
(a)Rfがフルオロエチル基で、R がヒドロキシ基である。
(b)Rfがフルオロエチル基で、R がアミノ基又は置換アミノ基である。
【0019】
(c)Rfがフルオロエチル基で、R がリン酸二ナトリウム、リン酸アンモニウム又はホスホリルコリン内塩である。或は、
(d)Rfがフルオロエチル基で、R が-NH(COCHR′NH)m-H で、R′は水素原子、天然アミノ酸側鎖又はフェニルで、mは1〜3の整数を表す。
【0020】
別の好ましい例において、前述のRf とR は以下の組合せから選ばれる。
(a)Rf=-CH2F、-CHF2、-CHF3、-CH2CF3、-CH2CHF2又は -CF2CF3 で、R=-OH 又は-OPO3Na2 である。或は、
(b)Rf=-CH2F 、-CHF2 、-CF3、-CH2CF3 、-CH2CHF2又は-CF2CF3 で、R=-NH2 又は-NHCOCH(NH2)CH2OHである。
【0021】
別の好ましい例において、Rf =-CHF2 で、R=-OH である。
別の好ましい例において、Rf =-CHF2 で、R= -OPO3Na2である。
別の好ましい例において、Rf =-CHF2 で、R=-NH2 である。
【0022】
別の好ましい例において、Rf =-CHF2 で、R=-NHCOCH(NH2)CH2OHである。
別の好ましい例において、Rf =-CH2CF3で、R=-OH である。
別の好ましい例において、Rf =-CH2CF3で、R=-OPO3Na2である。
【0023】
別の好ましい例において、Rf =-CH2CF3で、R=-NH2である。
別の好ましい例において、Rf =-CH2CF3で、R=-NHCOCH(NH2)CH2OHである。
本発明の第二は、
(1) 相間移動触媒の存在下、m-メトキシ-p-ヒドロキシベンズアルデヒド(III)をフッ素含有試薬でフルオロアルコキシ化反応させて、m-メトキシ-p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(V)が合成される工程と、
【0024】
【化3】

(2) リチウムジフェニルホスフィドを使って、m-メトキシ-p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(V)のm-メトキシを脱離させてヒドロキシ基とし、m-ヒドロキシ基化したp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VI)が得られる工程と、
【0025】
【化4】

(3) m-ヒドロキシ基化したp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VI)のヒドロキシ基を保護してから、3,4,5-トリメトキシベンジルトリフェニルホスホニウムイリドとウィッティヒ反応させ、脱保護後、一般式(I)の化合物が得られる工程と、
を含む一般式(I)で示される化合物の製造方法を提供する。
【0026】
別の好ましい例において、
(a)相間移動触媒の存在下、p-ヒドロキシベンズアルデヒド(IV)をフッ素含有試薬でフルオロアルコキシル化反応させて、p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VII)が合成される工程と、
【0027】
【化5】

(b)p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VII)を硝酸及び無水酢酸でm-ニトロ化反応させ、m-ニトロ基置換のp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VIII)が得られる工程と、
【0028】
【化6】

(c) m-ニトロ基置換のp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VIII)を3,4,5-トリメトキシベンジルトリフェニルホスホニウムイリドとウィッティヒ反応させ、一般式(I)の化合物が得られる工程と、を含む。
【0029】
別の好ましい例において、前述のフッ素含有試薬はフルオロハロゲン化メタン又はスルホン酸フルオロアルキルである。
本発明の第三は、治療有効量の一般式(I)の化合物と薬学的に許容しうる担体を含有する医薬品組成物を提供する。
【0030】
別の好ましい例において、前述の医薬品組成物の剤形は、冷凍乾燥粉剤、粉剤、顆粒剤、タブレット剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、乳剤、チンキ剤、懸濁液、溶液の形態による静脈内注射又は経口投与から選ばれる。
【0031】
本発明の第四は、チューブリン重合阻害剤を製造するための一般式(I)の化合物の使用を提供する。
本発明の第五は、異常血管新生に起因する疾病の治療薬物を製造するための一般式(I)の化合物の使用を提供する。
【0032】
別の好ましい例において、一般式(I)の化合物は、主として、肺癌、非小細胞肺癌、肝癌、膵臓癌、胃癌、骨癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、睾丸癌、結腸癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮頸癌、黒色腫、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞性腺癌、嚢胞性癌、髄様癌、気管支癌、骨細胞癌、上皮癌、胆管癌、絨毛膜癌、胎生期癌、精原細胞癌、ウィルムス腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭管腫、上衣細胞腫、松果体腫、血球芽細胞腫、声帯神経腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、視神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経繊維腫、繊維肉腫、繊維芽細胞腫、繊維腫、繊維腺腫、繊維軟骨腫、繊維嚢腫、繊維粘液腫、繊維骨腫、繊維粘液肉腫、繊維乳頭腫、粘液肉腫、粘液嚢腫、粘液軟骨腫、粘液軟骨肉腫、粘液軟骨繊維肉腫、粘液腺腫、粘液芽細胞腫、脂肪肉腫、脂肪腫、脂肪腺腫、脂肪芽細胞腫、脂肪軟骨腫、脂肪繊維腫、脂肪血管腫、粘液脂肪腫、軟骨肉腫、軟骨腫、軟骨筋腫、脊索腫、絨毛腺腫、絨毛膜上皮腫、絨毛膜芽細胞腫、骨肉腫、骨芽細胞腫、骨軟骨繊維腫、骨軟骨肉腫、骨軟骨腫、骨嚢腫、骨象牙質腫、骨繊維腫、骨繊維肉腫、血管肉腫、血管腫、血管脂肪腫、血管軟骨腫、血管芽細胞腫、血管角化腫、血管神経膠腫、血管内皮腫、繊維性血管腫、血管筋腫、血管脂肪腫、血管リンパ管腫、血管脂肪平滑筋腫、血管筋脂肪腫、血管筋神経腫、血管粘液腫、血管細網腫、リンパ管肉腫、リンパ肉芽腫、リンパ管腫、リンパ腫、リンパ性粘液腫、リンパ肉腫、リンパ管繊維腫、リンパ細胞腫、リンパ上皮腫、リンパ芽球腫、内皮腫、内皮芽細胞腫、滑膜腫、滑膜肉腫、中皮腫、結合織腫、ユーイング腫瘍、平滑筋腫、平滑筋肉腫、平滑筋芽細胞腫、平滑筋繊維腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、横紋筋粘液腫、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性白血病、赤血球増加症、リンパ腫、多発性骨髄腫を含む異常血管新生に起因する様々の腫瘍の成長と転移の治療に使用することができる。
【0033】
別の好ましい例において、一般式(I)の化合物は、主として、リウマチ性関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞、乾癬、紅斑性狼瘡、カポジー肉腫、アトピー性角膜炎、流行性角結膜炎、血管新生緑内障、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染症、帯状疱疹感染症、原生動物感染症、マイコバクテリア感染症、多発動脈炎、類肉腫、強膜炎、潮紅、シェーグレン症候群、全身性紅斑狼瘡、エイズ病、梅毒を含む異常血管新生に起因する様々の関連疾病の治療に使用することができる。
【0034】
これによって、本発明はより高い生物活性を持っている新規コンブレタスタチン系化合物の新規誘導体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明者らは幅広く慎重に研究した結果、天然産物であるコンブレタスタチンの芳香族環 Bの4’位のアルコキシ基が活性作用点で、芳香族環 B の4’位にフルオロアルコキシ基を導入することにより、腫瘍血管に対するターゲティングの活性を改善することができることを意外に見出した。
【0036】
上述の化合物の合成は、リチウムジフェニルホスフィドの選択的な脱メチル化の要件反応を利用し、フルオロアルコキシ基をコンブレタスタチンの芳香族環B の4’位に導入することに成功した。
【0037】
これらの新規化合物は比較的に強いチュービュリン重合を抑制する機能を持ち、抗腫瘍と抗異常血管新生の治療には有用である。
本明細書で用いられるように、コンブレタスタチン誘導体は一般式(II)で示される化合物である。
(化合物)
本発明は、芳香族環B の4’位にフルオロアルコキシ基が導入された一般式(I)で示される構造を持つフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体を提供する。
【0038】
【化7】

式中、Rf は1〜8 の炭素原子と1〜17 の水素原子を含有するアルキル基で、R はアミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、リン酸塩又はアミノ酸の側鎖或はその薬学的に許容しうる塩である。
【0039】
好ましくは、Rf =-CH2F、-CHF2、-CnF2n+1、-CH2CnF2n+1、-CHFCnF2n+1又は-CH2CHFCnF2n+1で,nは1〜3の整数を表す。
フルオロメトキシコンブレタスタチン又はフルオロメトキシコンブレタスタチンのアミノ酸誘導体が望ましく、構造は一般式(I)で示され、その中で、Rfは-CH2F、-CHF2又は-CF3 で、R は-OH、-OPO3Na2、-NH2又は -NHCOCH(NH2)CH2OH であることが好ましく、Rfは-CH2Fで、R は-OH、-OPO3Na2、-NH2 又は -NHCOCH(NH2)CH2OH であることがより好ましい。
【0040】
本発明において、フルオロエトキシコンブレタスタチン又はフルオロエトキシコンブレタスタチンのアミノ酸誘導体も、望ましく、構造は一般式(I)で示され、その中で、Rfは-CH2CF3、-CH2CHF2又は-CF2CF3で、R は-OH、-OPO3Na2、-NH2 又は-NHCOCH(NH2)CH2OH であることが好ましい。
【0041】
本発明が提供するフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体は、水酸化カリウムと水酸化アンモニウムのような無機塩基、又は脂肪族アミン(例えばトリエチルアミン)、ヒドロキシアミン(例えばエタノールアミン)、アミノ酸(例えば、ヒスチジン)、アミノグリコシド(例えば、ネオミン)のような有機塩基と薬学的に許容しうる塩基付加塩を形成してもいい。
【0042】
本発明が提供するフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体は塩酸、硫酸とリン酸のような無機酸、又はシュウ酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸とグルタミン酸のような有機酸と薬学的に許容しうる酸付加塩を形成してもいい。
(化合物の合成)
本発明において、相間移動触媒の存在下、フルオロアルコキシ化反応を行い、さらにリチウムジフェニルホスフィドを使って選択的な脱メチル化反応を行うことにより、一連の新規フルオロアルコキシベンズアルデヒド誘導体が合成された。その後、これらの新規フルオロアルコキシベンズアルデヒド誘導体を原料として、ニトロ化、還元、ヒドロキシ基の保護、ウィッティヒ反応、脱保護、リン酸塩化、アミノ酸化などの合成プロセスを最適化し、一連のフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体を合成した。
【0043】
(1)フルオロアルコキシベンズアルデヒドの合成
無機塩基と相間移動触媒の作用下、フルオロアルキル化試薬を使って、4-フルオロアルコキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(V)又はp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VII)が4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(III)又はp-ヒドロキシベンズアルデヒド (IV)から合成される。
【0044】
【化8】

前述のフルオロアルキル化試薬はフルオロハロゲン化アルキル、スルホン酸フルオロアルキルから選ばれ、フレオン(F22)又はp-トルエンスルホン酸フルオロアルキルが好ましい。前述の無機塩基は水酸化物、炭酸塩から選ばれる一種又は多種で、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムが好ましい。前述の相間移動触媒は第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、クラウンエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)から選ばれ、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、重硫酸テトラブチルアンモニウム、18-クラウン-6、ジフェニル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6-エーテル又はPEG−400 が好ましい。
【0045】
グリコール系化合物を用いて、4-フルオロアルコキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(V)のアルデヒド基を保護し、さらにリチウムジフェニルホスフィドを3 位の選択的な脱メチル化試薬としてメトキシ基をヒドロキシ基とし、4-フルオロアルコキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒド(VI)が得られる。無水酢酸を溶媒とする条件で、p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VII)を濃硝酸でメタ位の硝化を行い、m-ニトロ置換のp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VIII)が得られる。
【0046】
【化9】

(2)フルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体の合成
有機塩基の触媒作用下、4-フルオロアルコキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒド(VI)は塩化トリフェニルメチルと反応して、3 位のヒドロキシ基が保護されたフルオロアルコキシベンズアルデヒド誘導体が得られる。臭化3,4,5-トリメトキシベンジルトリフェニルホスホニウムがn-ブチルリチウムの作用で対応するリンイリドに変換し、上述の3 位のヒドロキシ基が保護されたフルオロアルコキシベンズアルデヒドとウィッティヒ反応して、得られたフルオロアルコキシスチルベン誘導体が濃塩酸とトリフルオロ酢酸の共同作用でトリチル基を脱去し、3’位がヒドロキシ基であるフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体(IX)が得られる。
【0047】
【化10】

同様に、4-フルオロアルコキシ-3-ニトロベンズアルデヒド(VIII)は上記のリンイリドとウィッティヒ反応させて、3’位がニトロ基であるフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体(X)が合成される。
【0048】
【化11】

(3)フルオロアルコキシコンブレタスタチンのリン酸塩或いはアミノ酸誘導体の合成
図1 または2 で示すように、上記のフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体(IX)の3’位のヒドロキシ基が四塩化炭素、ジイソプロピルエチルアミン、亜リン酸ジベンジル、臭化トリメチルシラン、ナトリウムメトキシドの作用によってリン酸二ナトリウム塩に変換し、フルオロアルコキシコンブレタスタチンのリン酸塩(XI)が得られる。
【0049】
【化12】

或いは、図3 または4 で示すように、上記のフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体(X)の3’位のニトロ基を還元剤でアミノ基に還元させる。ここで、好ましい還元剤が塩化スズ(II)、亜鉛粉末/酢酸又はチオ硫酸ナトリウムである。その後、N-α-9-フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸誘導体(FmocAA)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と1-ヒドロキシベンゾトリアゾールによって、アミノ酸側鎖を3 位に導入し、さらに水酸化ナトリウムによって脱保護してアミノ酸アミドとし、フルオロアルコキシコンブレタスタチンのアミノ酸誘導体(XII)が得られる。
【0050】
【化13】

式中に、R’は水素、フェニル、又はアミノ酸側鎖で、mは1〜3の整数である。
(医薬品組成物)
治療有効量の一般式(I)の化合物を薬学的に許容しうる担体と混合して、組成物の形態に調製する。ここで、治療有効量の一般式(I)の化合物は組成物の0.1〜99%(w/w)である。本発明の組成物は多様な剤形とすることができる。前述の剤形は、冷凍乾燥粉剤、顆粒剤、粉剤、タブレット剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、乳剤、チンキ剤、懸濁液、溶液の形態による静脈内注射又は経口投与の剤形がある。
【0051】
静脈内注射投与の場合、冷凍乾燥粉剤を使い、生理食塩水又はグルコース溶液で溶液とし、静脈内投与を行うことができる。
経口投与の場合、タブレット剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、顆粒剤、泥膏剤、懸濁剤、乳剤又は溶液剤を採用することができる。
【0052】
用いられる活性成分の有効使用量は投与方法と治療しようとする疾病の重篤度によって異なるが、通常は、本発明の化合物をおよそ0.5-500mg/kg 動物体重/日の量で投与すると、満足できる効果が得られ、好ましくは毎日2〜4 回に分けて、又は緩慢放出の形式で投与する。大部分の大型哺乳類に対して、1日の総投薬量は約1〜100mg である。内服に適用する投与量の様態には、固体又は液体の薬学的に許容しうる担体と混合した約0.5〜500mg の活性化合物の様態が含まれる。この投与量の方案を調節することにより、最適な治療応答を提供することができる。例えば、治療状況の切望によって、毎日多回に分けた投与量、又は比率的に減少する投与量で投与することができる。通常、大人の1日の適当な経口投薬量は1〜1000mg、好ましくは10〜200mg の範囲に、大人の1日の非経口投薬量は0.1〜100mg、好ましくは1〜100mg の範囲にある。
【0053】
上記の方法によって合成された本発明のフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体は、血管ターゲティング薬物として使われるときに、経口或いは静脈内注射によって投与することができる。薬剤の投与量は疾病の発達程度によって異なるが、大人は通常1〜3000mg の範囲にある。好ましい例において、本発明の化合物は、経口或いは静脈内投与の形態で投与することができる。固体担体は、澱粉、ラクトース、リン酸水素カルシウム、微晶質セルロース、ショ糖とカオリンを含む。液体担体は、滅菌水、ポリエチレングリコール、マンニトール、ノニオン性界面活性剤と食用油(例えばトウモロコシ油、落花生油と胡麻油)を含む。活性成分の特性と所期の特定の投与形態に適すればよい。例えば、矯味剤、色素、防腐剤及びビタミンE、ビタミンC、BHTとBHA のような酸化防止剤などの医薬品組成物に通常用いられる佐剤も有利的に含まれる。
【0054】
本明細書で用いられるように、静脈内注射は腹膜内注射と点滴注射を含み、冷凍乾燥粉剤を使い、生理食塩水又はグルコース溶液で溶液とする。ここで、冷凍乾燥粉剤は本分野の通常の方法で調製される。
【0055】
本発明のフルオロアルコキシコンブレタスタチン誘導体は経口投与製剤に調製され、タブレット剤、カプセル剤が含まれる。このような剤型は、有効成分と賦形剤、バインダー、崩壊剤、潤滑剤、着色剤、矯味剤を含む少なくとも1 種の添加剤を混合して形成し、そして形成された混合物を粉剤、顆粒剤、タブレット剤、被覆タブレット剤、丸剤、カプセル剤などの剤型とする。賦形剤は、ラクトース、コーン澱粉、糖類、ブドウ糖、ソルビトールと結晶質セルロースの一種又は多種を含む。バインダーは、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカントゴム、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル澱粉とポリビニルピロリドンの一種又は多種を含む。崩壊剤は、澱粉、寒天、ゼラチン粉、結晶質セルロース、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、シクロデキストリンとペクチンの一種又は多種を含む。潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカと硬化植物油の一種又は多種を含む。着色剤は、薬への添加が許容された色素を含む。矯味剤は、カカオパウダー、メントール、薄荷油、精製ボルネオールとシナモンを含む。必要ならば、これらのタブレット剤と顆粒剤はショ糖、ゼラチンなどのコートを用いてもいい。通常、これらの剤型は、不活性希釈剤、パラオキシ安息香酸エステル類、ソルビン酸のような防腐剤、ビタミンC、α-ビタミンE とシステインのような酸化防止剤、分解剤、粘着剤、増粘剤、緩衝液、甘味剤、調味剤と香料を含む他の添加剤を含有してもいい。タブレット剤と丸剤は糖衣で覆われてもいい。経口投与の液体剤型は薬用が可能な乳剤、シロップ、チンキ剤、懸濁液と溶液を含み、水のような常用の不活性希釈剤を含有してもいい。
【0056】
本発明の主な利点は、天然産物であるコンブレタスタチンの芳香族環 B の4’位にフルオロアルコキシ基を導入し、その腫瘍血管に対するターゲティングの活性を向上させたことである。
【0057】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるもので、発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例に特に具体的な条件を説明しない実験方法は通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われる。特に説明しない限り、すべての%と部は重量基準である。
【実施例1】
【0058】
(p-ジフルオロメトキシベンザアルデヒドの合成:冷却)
温度計、撹拌機、還流冷却管、ガス導入管を装着した1L の四つ口フラスコにp-ヒドロキシベンズアルデヒド50g(0.41mol)、イソプロピルアルコール400mL を入れ、20 分間撹拌し、定圧滴下漏斗で18-クラウン-6 エーテル5g と水酸化ナトリウム106.3g(2.665mol)の120ml 水溶液をゆっくり滴下し、30 分間撹拌し、反応系を65℃に加熱し、この温度でクロロジフルオロメタン(F22)を5−6 時間流し、TLC でモニターした。反応完成後、反応系を冷却し(15℃)、水400ml を加えて反応を停止させ、ジエチルエーテル(3ラ300ml)で産物を抽出し、中性になるまで有機層が水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧蒸留でジエチルエーテルを除去し、減圧蒸留でp-ジフルオロメトキシベンザアルデヒドが得られた(85〜87℃/mmHg)。収率は95%であった。
【0059】
1H-NMR (ppm) δ: 9.87(1H, s;-CHO);7.70(2H,m;2,6-ArH);7.36(1H,t;J2H-F=68Hz;-CHF2);6.96(2H, m;3,5-ArH).
【実施例2】
【0060】
(p-ジフルオロメトキシ-3-メトキシベンズアルデヒドの合成)
実施例1と同様に、p-ヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドを使って、4-ジフルオロメトキシ-3-メトキシベンズアルデヒドが得られた(117〜120℃/mmHg)。収率は93%であった。
【0061】
1H-NMR(ppm) δ:9.85(1H,s;-CHO);7.38(1H,t;J2H-F=69Hz;-CHF2);7.27(1H,m;6-ArH);7.20(1H,m;2-ArH);6.83(1H,m;5-ArH);3.73(3H,s;-OCH3).
【実施例3】
【0062】
(4-ジフルオロメトキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒドの合成)
ステップ 1.アルゴンの保護下、4-ジフルオロメトキシ-3-メトキシベンズアルデヒド61g(0.3mol)を秤量して三つ口フラスコに入れ、さらにエチレングリコール130g(2.1mol)とオルトギ酸トリエチル133g(0.9mol)を加えて、約100℃で還流し、触媒として三フッ化ホウ素のジエチルエーテル溶液1mlを添加した。24 時間反応させ、この反応をTLC でモニターした。室温まで冷却し、濃度15%の水酸化ナトリウム水溶液200ml を加え、300ml のジエチルエーテルで抽出し、分液し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧蒸留で溶媒を除去し、黄色油状物が得られた。
【0063】
ステップ 2.1.28M のリチウムジフェニルホスフィドのテトラヒドロフラン溶液 200ml にバッチで上述のアセタール50g(0.2mol)を加えた。室温で3−4 時間撹拌し、この反応をTLC でモニターした。水を加えて反応を中止させ、濃度30%の水酸化ナトリウム溶液200ml を加えてから、300ml のジエチルエーテルで抽出した。冷却下水層をが塩酸によって酸化してpH 値を3−4程度に調節した。その後、500ml のジエチルエーテルで抽出し、ジエチルエーテル抽出液を合併し、水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧で溶媒を除去し、黄色固体が得られた。ベンゼンと石油エーテルで再結晶を行い、淡黄色の結晶が31.2g 得られ(m.p.104〜106℃)、収率は83%であった。
【0064】
1H-NMR(ppm)δ:9.86(1H,s;-CHO);7.37(1H,t;J2H-F=72Hz;-CHF2);7.26(1H,m;6-ArH);7.17(1H,m;2-ArH);6.79(1H,m;5-ArH);4.88(1H,s;-OH). 13C-NMR(ppm) δ:191.0(CHO), 163.9(t,CHF2), 157.2(4-ArC), 146.2(3-ArC), 130.6(1-ArC), 123.5(6-ArC), 116.7(2-ArC), 116.2(5-ArC).
【実施例4】
【0065】
(4-ジフルオロメトキシ-3-ニトロベンズアルデヒドの合成)
滴下漏斗と撹拌機を装着した1000 mlの三つ口フラスコに新制のp-ジフルオロメトキシベンズアルデヒド72g(0.42mol)と無水酢酸400ml を入れた。氷塩浴で冷却し、滴下温度を5℃以下に保持したまま、約3-4 時間をかけて50ml のジクロロメタンに濃硝酸36ml を入れた濃硝酸のジクロロメタン溶液をゆっくり滴下した。この反応をTLC でモニターした。その後、反応温度はゆっくり室温まで上がった。2 日間撹拌を継続した。
【0066】
反応フラスコを0-5℃まで冷却し、撹拌しながら沈殿物が形成されるまで20%の塩酸を加えた。さらに、完全に沈殿するまで冷却した。濾過して黄色の結晶が得られた。95%のエタノール溶液で再結晶を行い、淡黄色の結晶74g が得られ(m.p.88〜90℃)、収率は81%であった。
【0067】
1H-NMR(ppm) δ:9.92(1H,s;-CHO);7.87(1H,t;J2H-F=70Hz;-CHF2);7.68(1H,m;6-ArH);7.59(1H,m;2-ArH);7.22(1H,m;5-ArH). 13C-NMR(ppm) δ:194.0(CHO), 165.1(t,CHF2), 160.2(4-ArC), 157.4(3-ArC), 137.3(1-ArC), 130.2(6-ArC), 122.5(2-ArC), 120.2(5-ArC).
【実施例5】
【0068】
(p-トリフルオロエトキシベンズアルデヒドの合成)
温度計、撹拌機、還流冷却管を装着した1L の四つ口フラスコにp-ヒドロキシベンズアルデヒド50g(0.41mol)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)400ml、18−クラウンー6 エーテル5g を加えて、20 分間撹拌し、炭酸カリウム粉末168g(1.22mol)を少しずつ加えて、再び30 分撹拌し、反応系を110℃に加熱し、p-トルエンスルホン酸トリフルオロエチル115g(0.45mol)のDMF 溶液100ml を約1 時間をかけて滴下し、130℃に加熱し、反応を3-4 時間継続し、この反応がTLCでモニターした。完成後、反応系を0℃まで冷却した。冷却した3N 塩酸600ml に注いだ。撹拌後、ジエチルエーテル1000ml で抽出した。水層を取り、再び400ml のジエチルエーテルで三回抽出した。エーテル層を合併し、さらに順に3N 塩酸、蒸留水、飽和食塩水で400ml ずつ洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ジエチルエーテルを除去し、粗製物が残った。その後、減圧蒸留によって、p-トリフルオロエトキシベンズアルデヒドが得られた(95〜97℃/10mmHg)。収率は88%であった。
【0069】
1H-NMR(ppm)δ:9.80(1H,s;-CHO);7.65(2H,m;2,6-ArH);6.83(2H,m;3,5-ArH);4.56(2H,q;JH-F=7.2Hz;-CH2CF3).
【実施例6】
【0070】
(4-トリフルオロエトキシ-3-メトキシベンザアルデヒドの合成)
実施例5と同様に、p-ヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド62.5g(0.41mol)を使って、4-トリフルオロエトキシ-3-メトキシベンズアルデヒドが得られた(126〜129℃/10mmHg)。収率は83%であった。
【0071】
1H-NMR(ppm)δ:9.88(1H,s;-CHO);7.27(1H,m;6-ArH);7.20(1H,m;2-ArH);6.83(1H,m;5-ArH);4.48(2H,q;JH-F=7.2Hz;-CH2CF3);3.65(3H,s;-OCH3).
【実施例7】
【0072】
(4-トリフルオロエトキシ-3-ヒドロキシベンザアルデヒドの合成)
実施例3 と同様に、4-ジフルオロメトキシ-3-メトキシベンズアルデヒドの代わりに、4-トリフルオロエトキシ-3-メトキシベンズアルデヒド70g(0.3mol)を使って、4-トリフルオロエトキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒドが得られ(m.p.133〜135℃)、収率は81%であった。
【0073】
1H-NMR(ppm)δ:9.81(1H,s ; -CHO); 7.26(1H,m;6-ArH); 7.17(1H,m; 2-ArH); 6.79(1H,m; 5-ArH);4.88(1H,s; -OH); 4.45(2H,q; JH-F=7.2Hz; -CH2CF3). 13C-NMR(ppm)δ: 191.0(CHO), 157.2(4-ArC),146.2(3-ArC), 130.6(1-ArC),126(q,CF3), 123.5(6-ArC), 116.7(2-ArC), 116.2(5-ArC), 87(m,CH2).
【実施例8】
【0074】
(4-トリフルオロエトキシ-3-ニトロベンザルヒドの合成)
実施例4 と同様に、ジフルオロメトキシベンズアルデヒドの代わりに、p-トリフルオロエトキシベンズアルデヒド86g(0.42mol)を使って、4-トリフルオロエトキシ-3-ニトロベンズアルデヒドが得られ(m.p.126〜127℃)、収率は78%であった。
【0075】
1H-NMR(ppm)δ:9.91(1H,s;-CHO);7.28(1H,m;6-ArH);7.20(1H,m;2-ArH);6.77(1H,m;5-ArH);4.46(2H,q ; JH-F=7.2Hz ; -CH2CF3). 13C-NMR(ppm)δ:191.0(CHO), 157.2(4-ArC) , 146.2(3-ArC) ,130.6(1-ArC), 127(q,CF3), 123.5(6-ArC), 116.7(2-ArC), 116.2(5-ArC), 89(m,CH2).
【実施例9】
【0076】
((Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-ヒドロキシ-4’-ジフルオロメトキシフェニル)-エチレン(DD8011)の合成)
ステップ 1:アルゴン雰囲気下、4-ジフルオロメトキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒド12.5g(0.066mol)、塩化トリチル21.1g(0.076mol)、乾燥テトラヒドロフラン42mlを500ml の四つ口フラスコに入れ、室温で均一に撹拌した。その後、トリエチルアミン1.3ml をゆっくり加えた。滴下後、1 時間撹拌を継続し、この反応をTLC でモニターし、反応完成後、水50ml を加えて反応を中止させた。30 分間撹拌し、酢酸エチル100ml を添加して綿状の沈殿物を溶かした。n-ヘプタン250ml を加えて、顆粒状の浅黄色の粗製品が沈殿した。ろ過し、得られた固体を水で二回洗浄し、さらに酢酸エチル/石油エーテル(10ml/20ml)で洗浄し、浅白色の結晶が得られた。この結晶を酢酸エチル/石油エーテルで再結晶を行い、白色の大粒の結晶が25.8g 得られ、収率は91%であった。
【0077】
1H-NMR(ppm) δ:9.87(s,1H, CHO) ; 7.37(t,1H ; J2H-F=72Hz ; -CHF2) ; 7.26(m,2H,Ar-H) ;7.19(m,15H,Tr-H);6.85(s,1H,Ar-H).
ステップ 2:アルゴンの保護下、臭化トリメトキシベンジルトリフェニルホスホニウム15g(28.7mmol)をTHF 30ml に浮かせて、-15℃程度に冷却した。1.6mol/L のn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液22ml を滴下し、1 時間反応させた。上述で得られたアルデヒド12.5g(29mmol)をTHF24ml に溶解させ、ゆっくり反応系に添加した。この反応をTLC でモニターし、一夜撹拌し、反応温度が室温まで上がった。次の日、溶液の温度を-5 ℃に冷却して、飽和食塩水を加えて反応を中止させた。有機層を分離して、溶媒を除いた。快速カラムクロマトグラフィーによって、白色の結晶15gが得られ、収率は88%であった。
【0078】
1H-NMR (ppm)δ:7.19(m,15H,Tr-H);6.94(d,1H,2'-H);6.80(dd,1H,6'-H);6.74(d,1H,5'-H);6.55(s,2H,2,6-H );6.52(t,1H;J2H-F=72Hz;-CHF2) 6.47 (d,1H,1a-H );6.41(d,1H,1a'-H);3.88(s,3H,4,OCH3);3.71(s,6H,3,5-OCH3).
ステップ 3: 室温で、上述ウィッティヒ反応産物10g(16.8mmol)をトルエン20ml に溶かした。その後、37%のHCl4ml を滴下し、この反応をTLC でモニターし、反応完成後、水を添加して反応を中止させた。反応系を0-5℃に冷却した。撹拌しながら、再結晶を行った。ろ過して、白色の結晶が5.6g得られ、収率は95%であった。
【0079】
1H-NMR(ppm)δ:7.02(d,1H,2'-H);6.94(dd,1H,6'-H);6.80(d,1H,5'-H);6.62(s,2H,2,6-H );6.53(t,1H;J2H-F=72Hz;-CHF2) 6.46(d,1H,1a-H );6.40(d,1H,1a'-H);5.51(broad,1H;OH);3.86(s,3H,4-OCH3);3.70(s,6H,3,5-OCH3).
構造は式XIII の通りである。
【0080】
【化14】

【実施例10】
【0081】
((Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-アミノ-4’-ジフルオロメトキシフェニル)エチレンの合成(DD8021))
ステップ 1:アルゴンの保護下、臭化トリメトキシベンジルトリフェニルホスホニウム15g(28.7mmol)をTHF 30ml に浮かせて、-15℃程度に冷却した。1.6mol/L のn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液22ml を滴下し、1 時間反応させた。4-ジフルオロメトキシ-3-ニトロベンズアルデヒド6.3g(29mmol)をTHF 24ml に溶解させ、ゆっくり反応系に添加した。て、12 時間反応させたあと、反応温度が室温までゆっくり上がった。この反応をTLC でモニターし、一夜撹拌し、反応温度が室温まで上がった。次の日、溶液の温度を-5 ℃に冷却して、飽和食塩水を加えて反応を中止させた。有機層を分離して、溶媒を除いた。快速カラムクロマトグラフィーによって、浅黄色の結晶6.6gが得られ、収率は61%であった。
【0082】
1H-NMR(ppm)δ:7.32(d,1H,2'-H);7.16(dd,1H,6'-H );6.90(d,1H,5'-H);6.78(t,1H;J2H-F=72Hz;-CHF2);6.64(s,2H,2,6-H );6.49(d,1H,1a-H );6.43(d,1H,1a'-H );3.86(s,3H,4-OCH3);3.70(s,6H,3,5-OCH3).
ステップ 2: (Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-ニトロ-4’-ジフルオロメトキシフェニル)エチレン4.1g(10.8mmol)をアセトン/水(V/V,2:1)の混合溶媒に溶かし、50℃に加熱し、撹拌して溶解させた。その後、チオ硫酸ナトリウム18.8gを加えて、反応混合物を6 時間還流させ、この反応をTLC でモニターし、反応完成後、室温まで冷却し、有機層を分離して、酢酸エチル(50mlx4)で水層を抽出し、有機層を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムによって乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレータで部分の溶媒を除去して、冷却後石油エーテルで再結晶を行った。浅黄色の結晶2.6gが得られ、収率は68.6%であった。
【0083】
1H-NMR(ppm)δ:7.08(d,1H,2'-H);6.92(dd,1H,6'-H );6.76(d,1H,5'-H);6.62(s,2H,2,6-H );6.49(d,1H,1a-H);6.43(d,1H,1a'-H );6.28(t,1H;J2H-F=72Hz;-CHF2);5.13(broad,2H,NH2);3.86(s,3H,4-OCH3 );3.70(s,6H,3,5-OCH3 ).
構造は式XIV の通りである。
【0084】
【化15】

【実施例11】
【0085】
((Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-ヒドロキシ-4’-トリフルオロエトキシフェニル)エチレンの合成(DD8031))
実施例9と同様に、4-ジフルオロメトキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに、4-トリフルオロエトキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒド14.5g(66mmol)を使った。3 ステップの反応によって、(Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-ヒドロキシ-4’-トリフルオロエトキシフェニル)エチレンが得られ、合計収率は79.5%であった。
1H-NMR(ppm)δ:6.93(d,1H,2'-H);6.84(dd,1H,6'-H);6.72(d,1H,5'-H);6.60(s,2H,2,6-H);6.45(d,1H,1a-H );6.38(d,1H,1a'-H);5.51(broad,1H;OH);4.48(2H,q;JH-F=7.2Hz;-CH2CF3);3.86(s,3H,4-OCH3 );3.70(s,6H,3,5-OCH3 ).
構造は式XV の通りである。
【0086】
【化16】

【実施例12】
【0087】
((Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-アミノ-4’-トリフルオロエトキシフェニル)エチレンの合成(DD8041))
実施例10 と同様に、4-ジフルオロメトキシ-3-ニトロベンズアルデヒドの代わりに、4-トリフルオロエトキシ-3-ニトロベンズアルデヒド14.5g(66mmol)を使った。2 ステップの反応によって、(Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-アミノ-4’-トリフルオロエトキシフェニル)エチレンが得られ、合計収率は43.6%であった。
【0088】
1H-NMR(ppm)δ:7.08(d,1H,2'-H);6.92(dd,1H,6'-H);6.76(d,1H,5'-H);6.62(s,2H,2,6-H);6.49(d,1H,1a-H);6.43(d,1H,1a'-H);5.13(broad,2H,NH2);4.40(2H,q;JH-F=7.2Hz;-CH2CF3);3.86(s,3H,4-OCH3);3.70(s,6H,3,5-OCH3 ).
構造は式XVI の通りである。
【0089】
【化17】

【実施例13】
【0090】
((Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-ヒドロキシ-4’-ジフルオロメトキシフェニル)エチレン-3’-O-リン酸二ナトリウム塩(DD8011DP、構造は式XVII の通り)と(Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2- (3’-ヒドロキシ-4’-トリフルオロエトキシフェニル)エチレン-3’-O-リン酸二ナトリウム塩(DD8031DP、構造は式XVIII の通り)の合成)
コンブレタスタチンA-4 のフェノール性ヒドロキシ基がリン酸二ナトリウム塩である水溶性プロドラッグに変換され、その典型的な反応過程がPettit,G.R.et al.,Anti-Cancer Drug Design1998,13,183-191 に従って行われた。図1と図2 に示す。
【0091】
【化18】

【0092】
【化19】

【実施例14】
【0093】
((Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3’-アミノ-4’-ジフルオロメトキシフェニル)エチレン-3’-N-セリンアミド(DD8021AS、構造は式XIXの通り)と(Z)-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2- (3’-アミノ-4’-トリフルオロエトキシフェニル)エチレン-3’-N-セリンアミド(DD8041AS、構造は式XXの通り)の合成)
アミノ置換のスチルベン誘導体は、N-α-9-フルオレニルメトキシカルボニルセリン誘導体(FmocAA)とアミノ基のカップリング反応を経って、脱保護して、アミノ酸プロドラッグを形成した。その反応過程はPettit,G.R.et al.,J.Med.Chem.,2002,46,525-31 に報告された。図3 と図4 に示す。
【0094】
【化20】

【0095】
【化21】

【0096】
【表1】

【実施例15】
【0097】
(生体外抗腫瘍活性の評価)
生体外で培養された腫瘍細胞にフルオロアルコキシコンブレタスタチンで72 時間処理した後、MTT とSRB 方法で、腫瘍増殖に対する抑制効果を評価し、CA-4 と比較した。
【0098】
細胞株:H460:ヒト肺癌細胞、SGC7901:ヒト胃癌細胞、HT-29:ヒト結腸癌細胞、Bel-7402:ヒト肝臓癌細胞。
実験設計:細胞は異なる濃度の化合物(それぞれ100、10、1、0.1、0.01、0.001 オM)と72 時間インキュベートして、SRB 方法で、化合物の細胞増殖に対するの抑制効果を評価し、抑制率を算出して、IC50 を抑制率によってLogit 法を用いて算出し、化合物の生体外抗腫瘍活性を比較した。
【0099】
抑制率の計算方法:
抑制率(%) =[(対照群のOD 値−投与群のOD 値)/対照群のOD 値]×100%
【0100】
【表2】

結果は、フルオロメトキシコンブレタスタチンの生体外抗腫瘍活性は天然化合物であるコンブレタスタチンA-4 に匹敵することを示した。フルオロエトキシコンブレタスタチンはCA-4 の活性は3〜30 倍大きかった。
【実施例16】
【0101】
(生体外新生血管の抑制性能の評価)
実施例15 と同じ方法を使用して、フルオロアルコキシコンブレタスタチンの抗新生血管の性能をヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を作用対象として評価した。
【0102】
【表3】

結果は、フルオロアルコキシコンブレタスタチンが強いチューブリン重合の抑制性能を持つことを示し、フルオロアルコキシコンブレタスタチンが一種類の潜在的な腫瘍血管のターゲティング薬であることを示唆する。
【実施例17】
【0103】
(フルオロアルコキシコンブレタスタチンの冷凍乾燥粉剤の調製)
【0104】
【表4】

配合量に従って正確的に原料を秤量し、配合量のマンニトールを投入し、約配合合計量の80%の注射用水を加えて完全に溶解するまで撹拌し、清澄溶液が得られた。0.1%(g/ml)の注射用活性炭を添加し、均一に撹拌し、約10 分間安定させ、0.45μm のミリポー膜でろ過し、合計量まで注射用水を追加した。さらに、0.22μm のミリポー膜でろ過し、pH 値と含有量を測定し、合格になった後、所定量でビンに充填し、凍結乾燥し、窒素を導入して、押し込み、アルミニウムの蓋をつけ、ラベルを貼り、包装し、抽選で合格であれば、製品になった(全部のプロセスは暗室状態で)。
【0105】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図面で使用される略称の説明:PTC は相間移動触媒、Cat.は触媒、Wittig reaction はウィッティヒ反応、PH2PLi はリチウムジフェニルホスフィド、THF はテトラヒドロフラン、TFA はトリフルオロ酢酸、iPr2EtN はジイソプロピルエチルアミン、(PhCH2)2P(O)Hは亜リン酸ジベンジル、TMBS はトリメチルブロモシラン、Fmoc-Ser(Ac)はN-α-9-フルオレニルメトキシカルボニルセリン誘導体、DCC はジシクロヘキシルカルボジイミド、HOBt は1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、DMF はジメチルホルムアミド、aq.HCl は希塩酸、aq. NaOH は希水酸化ナトリウム水溶液、conc. HCl は濃塩酸、conc. HNO3は濃硝酸を表す。
【図1】図1はフルオロメトキシコンブレタスタチンの合成経路である。
【図2】図2はフルオロエトキシコンブレタスタチンの合成経路である。
【図3】図3はフルオロメトキシコンブレタスタチンのアミノ酸誘導体の合成経路である。
【図4】図4はフルオロエトキシコンブレタスタチンのアミノ酸誘導体の合成経路である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される化合物。
【化1】

(ここで、Rfは1〜8 の炭素原子と1〜17 のフッ素原子を含有するアルキル基で、R はアミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、リン酸塩又はアミノ酸の側鎖或はその薬学的に許容しうる塩である。)
【請求項2】
RfとR の組合せが
(a) Rf がフルオロメチル基で、R がヒドロキシ基であるもの、
(b) Rf がフルオロメチル基で、R がアミノ基又は置換アミノ基であるもの、
(c) Rf がフルオロメチル基で、R がリン酸二ナトリウム塩、リン酸アンモニウム塩又はホスホリルコリン内塩であるもの、或は
(d) Rf がフルオロメチル基で、R が-NH(COCHR′NH)m-H で、R′が水素原子、天然アミノ酸側鎖又はフェニル基で、mは1〜3 の整数であるもの、
から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
RfとR の組合せが
(a) Rf がフルオロエチル基で、R がヒドロキシ基であるもの、
(b) Rf がフルオロエチル基で、R がアミノ基又は置換アミノ基であるもの、
(c) Rf がフルオロエチル基で、リン酸二ナトリウム塩、リン酸アンモニウム塩又はホスホリルコリン内塩であるもの、或は
(d) Rf がフルオロエチル基で、R が-NH(COCHR′NH)m-H で、R′は水素原子、天然アミノ酸側鎖又はフェニル基で、mは1〜3 の整数であるもの、
から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
RfとR の組合せが
(a) Rf =-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2CF3、-CH2CHF2又は-CF2CF3 で、R=-OH 又は-OPO3Na2であるもの、
(b) Rf =-CH2F 、-CHF2 、-CF3、-CH2CF3 、-CH2CHF2又は-CF2CF3 で、R=-NH2 又は-NHCOCH(NH2)CH2OH であるもの、
から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
(1) 相間移動触媒の存在下、m-メトキシ-p-ヒドロキシベンズアルデヒド(III)をフッ素含有試薬でフルオロアルコキシル化反応させ、m-メトキシ-p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(V)が合成される工程と、
【化2】

(2) リチウムジフェニルホスフィドを使って、m-メトキシ-p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(V)のm-メトキシを脱離させてヒドロキシ基とし、m-ヒドロキシ基化したp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VI)が得られる工程と、
【化3】

(3) m-ヒドロキシ基化したp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VI)のヒドロキシ基を保護してから、3,4,5-トリメトキシベンジルトリフェニルホスホニウムイリドとウィッティヒ反応させ、脱保護後、請求項1に記載の一般式(I)の化合物が得られる工程、
【化4】

を含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物を製造する方法。
【請求項6】
(a) 相間移動触媒の存在下、p-ヒドロキシベンズアルデヒド(IV)をフッ素含有試薬でフルオロアルコキシル化反応させ、p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VII)が合成される工程と、
【化5】

(b) p-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VII)を硝酸及び無水酢酸でm-ニトロ化反応させ、m-ニトロ基置換のp-フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VIII)が得られる工程と、
【化6】

(c) m-ニトロ基置換のp -フルオロアルコキシベンズアルデヒド(VIII)を3,4,5-トリメトキシベンジルトリフェニルホスホニウムイリドとウィッティヒ反応させ、請求項1に記載の一般式(I)の化合物が得られる工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物を製造する方法。
【請求項7】
前記フッ素含有試薬はフルオロハロゲン化メタン又はスルホン酸フルオロアルキルであることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
治療有効量の請求項1に記載の化合物と薬学的に許容しうる担体を含有することを特徴とする医薬品組成物。
【請求項9】
チューブリン重合阻害剤を製造するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項10】
異常血管新生に起因する疾病の治療薬物を製造するための請求項1に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−539779(P2009−539779A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513532(P2009−513532)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【国際出願番号】PCT/CN2006/003149
【国際公開番号】WO2007/140662
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508359848)ジョーアジアーン ダードーア ファーマスーティカル グループ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】