説明

フルオロエーテル化合物及びフルオロエーテルカルボン酸

【課題】 本発明は、界面活性剤として好適に使用することができ、生体蓄積性の低いフルオロエーテルカルボン酸の中間体として有用なフルオロエーテル化合物の新規製造方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、下記一般式(I)
RfCFOCFXCFXJ (I)
(式中、Rfはフッ素原子、部分または全部フッ素置換されたエーテル酸素原子を含んでも良いアルキル基、JはCl、Br又はI、X及びXはお互いに異なってRf´O又はF、Rf´は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロエーテル化合物の製造方法であって、
下記一般式(II)
RfCOF (II)
で表されるフルオロカルボン酸フルオライドをフッ化アルカリ金属塩の存在下にフルオロビニルエーテル、及び、ハロゲン化合物と接触せしめる工程
を含むことを特徴とするフルオロエーテル化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロエーテル化合物及びフルオロエーテルカルボン酸に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、パーフルオロカルボン酸フルオライド、パーフルオロケトンにフッ素化金属、オレフィン、ハロゲンを使用した反応が開示されている。しかし、オレフィンとして、フッ素化ビニルエーテルを使用する例は開示されておらず、さらにビニルエーテルの付加後、酸、アルカリの存在下に加水分解を行い、カルボン酸が得られる記載はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0133】
次に本発明を、合成例、実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はかかる合成例及び実施例のみに限定されるものではない。
各実施例で行った測定の方法を、以下に示す。
【0134】
固形分濃度:得られた水性分散液を150℃で1時間乾燥した時の質量減少より求めた。
【0135】
標準比重(SSG):ASTM D1457−69に従い測定した。
【0136】
平均一次粒子径(PTFE):固形分濃度を約0.02質量%に希釈し、単位長さに対する550nmの投射光の透過率と電子顕微鏡写真によって決定された平均粒子径との検量線を基にして、上記透過率から間接的に求めた。
上記透過率の測定は、動的光散乱測定装置マイクロトラック9340UPA(Honeywell社製)を用いて測定した。
【0137】
合成例1
CFCFOCHCFCFOCFCOONHの合成方法
攪拌を備えた100mlのガラス製三口フラスコに、テトラグライム30ml、フッ化セシウム18g(0.12モル)を窒素気流下に仕込み、攪拌下10℃に内温を保ちCFCFOCHCFCOF 25g(0.1モル)を15分かけて滴下した。さらに、I 30g(0.12モル)を入れ、内温を30℃にした後、COCF=CF 27g(0.1モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに30℃に内温を保ち、6時間反応を継続した。反応物を100mlの氷水中に攪拌下に入れ、さらに1Nの亜硫酸ナトリウム水溶液をIの褐色が淡黄色になるまで添加した。下層の油層を回収してさらに水で洗浄し、57gの有機相を回収した。GC−MSによるマススペクトルより、この化合物は、CFCFOCHCFCFOCFCF(OC)Iと同定された。この有機相を60gの20%KOH水溶液に入れ、20℃で1時間攪拌した。引き続き1N硫酸を加え攪拌すると油層が析出するので、この油層を単蒸留して沸点92℃(20mmHg)のCFCFOCHCFCFOCFCOOHを28g回収した。このカルボン酸をアンモニア水で中和、凍結乾燥を行い、28gのCFCFOCHCFCFOCFCOONHを得た。
【0138】
実施例1
PTFEラテックスの調製
内容量3Lの攪拌翼付きステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水1.5L、パラフィンワックス60g(融点60℃)、及び、CFCFOCHCFCFOCFCOONH 1.5gを仕込み、系内をテトラフルオロエチレン〔TFE〕で置換した。内温を70℃にし、内圧が0.78MPaになるようにTFEを圧入し、1質量%の過硫酸アンモニウム[APS]水溶液3.75gを仕込み、反応を開始した。重合の進行に伴って重合系内の圧力が低下するので、連続的にTFEを追加して、内圧を0.78MPaに保ち、反応を継続した。重合開始6.5時間後にTFEをパージして重合を停止した。
【0139】
この水性分散液の固形分濃度は、32.5質量%、標準比重は2.182、フルオロポリマーの平均一次粒子径は、262nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の製造方法は、フルオロエーテルカルボン酸を製造する中間体を製造する方法として利用できる。本発明の製造方法は、また、フルオロエーテルカルボン酸を製造する方法として利用でき、得られるフルオロエーテルカルボン酸は、含フッ素重合体の製造における界面活性剤として、また、含フッ素重合体の水性分散体の分散剤として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
RfCFOCFXCFXJ (I)
(式中、Rfはフッ素原子、部分または全部フッ素置換されたエーテル酸素原子を含んでも良いアルキル基、JはCl、Br又はI、X及びXはお互いに異なってRf´O又はF、Rf´は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロエーテル化合物の製造方法であって、
下記一般式(II)
RfCOF (II)
(式中、Rfは上記と同じ。)で表されるフルオロカルボン酸フルオライドをフッ化アルカリ金属塩の存在下に下記一般式(III)
Rf´OCF=CF (III)
(式中、Rf´は上記と同じ。)で表されるフルオロビニルエーテル、及び、下記一般式(IV)
(IV)
(式中、J及びJは同じでも異なってもよくCl、Br又はIを表す。)で表されるハロゲン化合物と接触せしめる工程
を含むことを特徴とするフルオロエーテル化合物の製造方法。
【請求項2】
Rfは、RfO(CHCFCFO)n−1CHCF(式中、Rfはフッ素原子、部分または全部フッ素置換されたエーテル酸素原子を含んでも良いアルキル基、nは1又は2を表す。)で表される請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
Rfは、RfO(CHCFCFO)n−1CF(CF)(式中、Rfはフッ素原子、部分または全部フッ素置換されたエーテル酸素原子を含んでも良いアルキル基、nは1又は2を表す。)で表される請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
Rfは、RfO〔CF(CF)CFO〕(式中、Rfはフッ素原子、部分または全部フッ素置換されたエーテル酸素原子を含んでも良いアルキル基、nは1又は2を表す。)で表される請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
Rfは、RfOCF(CF)CFOCHCF(式中、Rfはフッ素原子、部分または全部フッ素置換されたエーテル酸素原子を含んでも良いアルキル基を表す。)で表される請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
ハロゲン化合物は、下記一般式(IV−I)
(IV−I)
(式中、J及びJは同じでも異なってもよくBr又はIを表す。)で表される請求項1、2、3、4又は5記載の製造方法。
【請求項7】
フッ化アルカリ金属塩は、下記一般式
F・(HF)
(式中、MはNa,K又はCsであり、mは0又は1を表す。)で表される請求項1、2、3、4、5又は6記載の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(V)
RfCFOCFXCOOM (V)
(式中、Rf及びXは上記と同じ、Mは1価のアルカリ金属、NH又はHを表す。)で表されるフルオロエーテルカルボン酸を製造する方法であって、
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の製造方法により得られたフルオロエーテル化合物を酸又はアルカリの存在下に加水分解を行う工程
を含むことを特徴とするフルオロエーテルカルボン酸の製造方法。
【請求項9】
酸は、塩酸、硫酸、又は、硝酸である請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
アルカリは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は、それらの水酸化物である請求項8記載の製造方法。
【請求項11】
下記一般式(VI)
RfCFO(CHCFCFO)CFCOOM (VI)
(式中、Rfはフッ素原子、部分または全部フッ素置換されたエーテル酸素原子を含んでも良いアルキル基、nは1又は2、Mは1価のアルカリ金属、NH又はHを表す。)で表されることを特徴とするフルオロエーテルカルボン酸。
【請求項12】
下記一般式(VII)
RfCFO〔CF(CF)CFO〕CFCOOM (VII)
(式中、Rfはフッ素原子、部分または全部フッ素置換されたエーテル酸素原子を含んでも良いアルキル基、nは1又は2、Mは1価のアルカリ金属、NH又はHを表す。)で表されることを特徴とするフルオロエーテルカルボン酸。
【請求項13】
請求項8、9又は10記載の製造方法により得られたフルオロエーテルカルボン酸、又は、請求項11又は12記載のフルオロエーテルカルボン酸を含む水性媒体中で、含フッ素モノマーの重合を行う工程を含む
ことを特徴とする含フッ素ポリマーの製造方法。
【請求項14】
フルオロエーテルカルボン酸又はフルオロエーテルカルボン酸塩の含有量は、水性媒体100質量%に対して0.0001〜10質量%である請求項13記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
【請求項15】
含フッ素ポリマーを含有する水性分散体であって、
請求項8、9又は10記載の製造方法により得られたフルオロエーテルカルボン酸、又は、請求項11又は12記載のフルオロエーテルカルボン酸を含有し、
前記含フッ素ポリマーの平均粒子径が、50〜500nmである
ことを特徴とする水性分散体。
【請求項16】
請求項15記載の水性分散体を、ノニオン界面活性剤の存在下に、陰イオン交換樹脂と接触させる工程(I)と、工程(I)で得られた水性分散体を、水性分散体中の固形分濃度が水性分散体100質量%に対して30〜70質量%となるように濃縮する工程(II)を含む
ことを特徴とする精製水性分散体の製造方法。
【請求項17】
請求項15記載の水性分散体を凝析することにより製造されるファインパウダー。
【請求項18】
請求項15記載の水性分散体の凝析により発生した排水、洗浄により発生した排水、及び、乾燥工程で発生するオフガスから選択される少なくとも一の成分から、下記一般式(V)
RfCFOCFXCOOM (V)
(式中、Rf及びXは上記と同じ、Mは1価のアルカリ金属、NH又はHを表す。)で表されるフルオロエーテルカルボン酸を回収し、精製する工程を含むことを特徴とする再生フルオロエーテルカルボン酸の製造方法。

【公開番号】特開2009−215297(P2009−215297A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55489(P2009−55489)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】