説明

フルオロポリマーシーラント

テトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体のヒートシール可能なテープ。該共重合体は372℃で約1000Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下の施工温度を有する。本発明はさらに、各シートが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有する、シート材料、特に布の2つのセクションから形成されるシームを提供する。各セクションの一つのフルオロポリマー表面上へのヒートシール可能な組成物の施工によってセクションは互いにシールされる。ヒートシール可能な組成物は、372℃で約1000Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下の施工温度を有する、テトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体を含む。好ましい実施形態では、建造物および製造装置は、各シートが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有するシート材料の2つのセクションからシームを形成されたシート材料から製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマー被覆シート材料におけるシーム用のフルオロポリマーシーラント、該シーラントを用いるシームおよびシームのシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築布は、空港および競技場のような公共施設用の屋根板および側板で、ならびに天幕、テントおよび天蓋のような機能性装飾要素で増加する使用を見いだしつつある。これらの布は、近代的な外観、建設の容易さ、迅速な製造およびより低いコストのために、伝統的な材料に比べて利点を提供する。建築布は典型的には強度のための強化クロスとクロスを耐候性にするためのポリマーコーティングとを含む。クロスは、綿、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンもしくはガラス、またはかかる繊維のブレンドのような様々な材料から製造されてもよい。クロスは、綿、ナイロンもしくはガラスで一般に行われるように織布であってもよいし、またはそれは商標ティベック(TYVEK)(登録商標)、ティパール(TYPAR)(登録商標)およびリーメイ(REEMAY)(登録商標)で販売されている布でのように不織布であってもよい。ティベック(登録商標)商標は、フラッシュ紡糸ポリエチレン布に対して本願特許出願人によって用いられており、ティパール(登録商標)およびリーメイ(登録商標)商標は、それぞれ、スパンボンドポリプロピレンおよびポリエステル布に対してリーメイ社(Reemay,Inc.)によって用いられている。ポリマーコーティングは、フルオロポリマー、ビニル、ポリアクリレート、天然または合成ゴムをはじめとする風化条件に耐える任意の樹脂を含んでもよい。これらのうち、フルオロポリマーは、広範囲の風化条件に対するそれらの最高の耐性のために特に好ましい。ビニル被覆ポリエステルクロスは、その低コストのために天幕およびテントで広範囲にわたる使用を見いだしている。それは雨に対する優れた耐性を提供するが、太陽光に暴露すると、ビニルは最終的に劣化し、布の変色および破損をもたらす。
【0003】
ビニル被覆布の実用寿命は、ポリフッ化ビニルのようなフルオロポリマーの薄いオーバー層をビニル被覆布の風化側面に積層することによって著しく延ばすことができる。フルオロポリマーが顔料入りであるまたは紫外光を高度に吸収する添加剤を含有する場合、太陽光は効果的に下にあるビニルから遮断され、その寿命は大きく延ばされる。これは布の実用性を広げるけれども、競技場のような幾つかの場合には、布の寿命がビニル樹脂を含有する典型的な布によって提供され得るよりさらに長いことが望まれる。これらの用途では、ガラスクロス、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはテトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)もしくはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)との共重合体のような過フッ素化樹脂のような極めて耐久性の材料が選ばれてもよい。これらの布のすべてで、布の外側暴露面はフルオロポリマーコーティングを有する。
【0004】
建築布の使用では、布のセクションを継ぎ合わせて開口部を包み込むのに十分に大きい、または幾つかの場合には、全体構造物をカバーするのに十分に大きい覆いを提供することがしばしば必要である。バットシームは、2つの被覆布片の縁をくっつけ、シームの下側に強化テープを施工することによって形成される。強化テープは布片にヒートシールされてシームを完成してもよい。バットシームを形成する縁の間には常に狭いギャップが存在し、それは埃およびデブリを集めて美的に汚された構造物をもたらす。ラップシームは、被覆布の2片をオーバーラップさせ、それらを一緒にヒートシールすることによって形成される。この場合、布縁は埃およびデブリを集める。容易に施工されてバットシーム中のギャップを満たすまたはラップシームの縁を平滑にするシームシーラントは、これらの区域が埃を集めて、見苦しくなるのを防ぐために必要とされる。フルオロポリマー表面の優れた剥離性は被覆布への公知の入手可能なシーラントの十分な接着を妨げるので、フルオロポリマー表面付き建築布のために有効なシーム−シーラントは現在入手可能ではない。それらの表面にフルオロポリマーコーティングがある材料に好適なシームシーラントは、特に食品工業またはデブリなしの環境が重要である電子部品の精密製造でのコンベアベルトまたは剥離シート用のフルオロポリマーシート材料のような、他の用途で同様に有用であろう。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,380,618号明細書
【特許文献2】米国特許第3,635,926号明細書
【特許文献3】米国特許第5,266,639号明細書
【特許文献4】米国特許第5,328,946号明細書
【特許文献5】米国特許第5,397,829号明細書
【特許文献6】米国特許第4,729,296号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、テトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体のヒートシール可能なテープを提供する。共重合体は、372℃で約1000Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下の施工温度を有する。
【0007】
本発明はさらに、各シートが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有するシート材料の2つのセクションから形成されたシームを提供する。セクションは、各セクションの一つのフルオロポリマー表面上へのヒートシール可能な組成物の施工によって互いにシールされる。ヒートシール可能な組成物は、テトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体であって、372℃で約1000Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下の施工温度を有する共重合体を含む。好ましい実施形態では、建造物および製造装置は、各シートが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有するシート材料の2つのセクションからシームを形成されたシート材料から製造される。
【0008】
本発明はまた、各セクションが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有するシート材料の2つのセクション間のシームをシールする方法を提供する。本方法は、テトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体のヒートシール可能な組成物のバンドを形成する工程であって、前記共重合体は372℃で約1000Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下の施工温度を有する工程を含む。バンドは、ヒートシール可能な組成物が各セクションの一つのフルオロポリマー表面に接触するようにシート材料の2つのセクション間のシーム上に置かれる。バンドはシームをシールするのに十分な250℃未満の温度に加熱され、ヒートシール可能な組成物は放冷される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一形態に従ったヒートシール可能なテープは、継ぎ合わせられたフルオロポリマー被覆シートまたは布にヒートシールされてもよい低溶融のヒートシール可能なフルオロポリマー組成物を提供する。本発明の方法に従って、ヒートシール可能な組成物は、ヒートシールされたシームを変形するまたは弱めるのを避けるのに十分に低いがフルオロポリマー表面に十分に接合する温度で施工される。後に続く実施例で例示されるように、ヒートシール可能な組成物がフルオロポリマー表面を有するシート材料に好適に接着し、シールするであろう最低温度、すなわち施工温度は約250℃以下である。フルオロポリマー組成物は、部分的に結晶質であってもまたは非晶質であってもよい。それは布を色合わせするために顔料入りであってもよい。さらに、フルオロポリマー材料の化学的性質および耐性は、デブリ耐性であり、かつ、気候への暴露の数年後でさえ魅力的な外観を維持することができる本発明に従ったシームを提供する。
【0010】
(フルオロポリマーシーラント)
本発明のヒートシール可能なテープは、テトラフルオロエチレン(TFE)と少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体のヒートシール可能な組成物を含む。共重合体は372℃で約1000Pa・S以下、好ましくは約500Pa・S以下、最も好ましくは約200Pa・秒以下の溶融粘度、および約250℃以下、好ましくは約200℃以下の施工温度を有する。
【0011】
本発明の目的のためには、「高度にフッ素化された」は、OまたはSのような連結原子を除いて炭素に結合した原子の50%またはそれ以上がフッ素であることを意味する。本発明に有用な好ましい高度にフッ素化されたモノマーには、2〜10個の炭素原子を有するもののようなフルオロオレフィンが含まれる。好ましいモノマーにはまた、式CY=CYORまたはCY=CYOR’OR(式中、YはHまたはFであり、−Rおよび−R’は独立して1〜8個の炭素原子を含有する完全フッ素化または部分フッ素化アルキルまたはアルキレン基であり、好ましくは過フッ素化されている)を有するもののようなフッ素化ビニルエーテルも含まれる。好ましい−R基は1〜4個の炭素原子を含有し、好ましくは過フッ素化されている。好ましい−R’基は2〜4個の炭素原子を含有し、好ましくは過フッ素化されている。本発明での使用に最も好ましいフッ素化モノマーには、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、モノクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、特にパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)が含まれる。
【0012】
本発明での使用に特に好ましい組成物は、TFE/PEVEダイポリマーおよびTFE/PEVE/PMVEターポリマーである。
【0013】
共重合体中の高度にフッ素化されたコモノマーの量は少なくとも約15重量%である。施工温度が約250℃以下であるために十分な高度にフッ素化されたコモノマーが使用されなければならず、コモノマーの量は使用される特定のコモノマーと共に変わるであろう。好ましくは、共重合体は少なくとも約20重量%の高度にフッ素化されたコモノマーを含有するであろう。
【0014】
本発明で使用されるTFE共重合体、特にTFE/PEVE共重合体は水性分散重合によって、好ましくは非水溶媒の不存在下に行うことができる。一般に均質の組成を有する共重合体をもたらす他の方法を用いることができる。
【0015】
水性分散重合には、広範囲の温度を用いることができる。伝熱の考察および熱活性化開始剤の使用のために、約50℃〜100℃の範囲の温度のような、より高い温度が有利である。範囲70℃〜90℃の温度が共重合体を製造するために好ましい。
【0016】
TFE共重合体の分散重合での使用に一般に好適な界面活性剤を使用することができる。かかる界面活性剤には、例えば、パーフルオロオクタン酸アンモニウム(C−8)、パーフルオロノナン酸アンモニウム(C−9)、ならびに米国特許公報(特許文献1)に開示されているパーフルオロアルキルエタンスルホン酸およびその塩が含まれる。
【0017】
TFE共重合体の乳化重合で一般に使用される開始剤は、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、もしくは二コハク酸ペルオキシドのような水溶性フリーラジカル開始剤、または過マンガン酸カリウムをベースとするもののようなレドックス系である。かかる開始剤は水性法で用いて本発明のTFE共重合体を製造することができる。APSおよび/またはKPSが好ましい。
【0018】
本発明で使用されるTFE共重合体の水性重合で連鎖移動剤(CTA)を使用することができる。広範囲の化合物をCTAとして使用することができる。かかる化合物には、例えば、分子状水素のような水素含有化合物、低級アルカン、およびハロゲン原子で置換された低級アルカンが含まれる。TFE/PEVE重合で使用される場合にかかる化合物の連鎖移動活性は、比較的安定である−CFH末端基を有する共重合体をもたらすことができる。CTAは、CTAの個性に依存して、他の比較的安定な末端基を与えることができる。好ましいCTAには、メタン、エタン、ならびに塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、および四塩化炭素のような置換炭化水素が含まれる。所望の分子量を達成するために使用されるCTAの量は、与えられた重合条件に対して、使用された開始剤の量に、および選ばれたCTAの連鎖移動効率に依存するであろう。連鎖移動効率は、化合物毎に実質的に変わり得るし、温度で変わる。
【0019】
−COOH末端基の形成は、米国特許公報(特許文献2)でグレスハム(Gresham)およびフォーゲルポール(Vogelpohl)によって開示されているように、炭酸アンモニウムまたはアンモニア(水酸化アンモニウム)のようなアルカリ性緩衝剤で重合をバッファリングしてもっと安定な末端基を提供することによって相殺することができる。
【0020】
反応器が水、界面活性剤、CTA(使用される場合)およびモノマーを装入され、選ばれた温度に加熱され、撹拌が開始された後、開始剤の溶液が所定の速度で加えられて重合を開始する。こうして重合媒体は重合反応が始まった時に形成される。圧力低下は、重合が始ったことの通常の指標である。次に、TFE添加が開始され、重合を規制するために選ばれたスキームに従って制御される。第1開始剤溶液と同じものまたはそれとは異なるものであり得る開始剤溶液が通常反応の間中加えられる。
【0021】
当業者は、高度にフッ素化されていないものを含めて、1つまたは複数の追加の共重合可能なモノマーを重合へ導入できることを理解するであろう。共重合体が所望の耐化学性および耐候性を提供するために、高度にフッ素化されていないコモノマーの量は適切に制限される。好ましくは、TFEおよび高度にフッ素化されたモノマーは共重合体の少なくとも約90重量%、より好ましくは共重合体の少なくとも約95重量%を占める。最も好ましくは、共重合体の耐化学性および耐候性がTFEおよび高度にフッ素化されたモノマーによって本質的に決定されるように、共重合体は本質的にTFEおよび高度にフッ素化されたモノマーより、すなわち、十分な量のかかるモノマーよりなる。
【0022】
本発明で使用される好ましいTFE/PEVE共重合体の重合速度を規制するための幾つかの代替案がある。先ず、PEVEモノマーの少なくとも一部をプレチャージし、次にTFEを所望の全圧まで加えることはほとんどの代替案で共通である。次に、開始剤注入および反応開始後に追加のTFEが加えられて選ばれた圧力を維持し、追加のPEVEもまた加えられてもよい。実際の重合速度を上げまたは下げ、こうして一定の全圧を維持するために必要に応じて撹拌機速度を変えて、TFEは一定速度で加えられてもよい。本代替案の変形では、一定のTFE供給速度および一定の撹拌機速度で一定の反応速度を維持するために圧力が変えられてもよい。あるいはまた、一定圧力を維持するために必要に応じてTFEを加えて、全圧および撹拌機速度が両方とも一定に保持されてもよい。第3の代替案は、可変の撹拌機速度で、しかし着実に増加するTFE供給速度で段階的に重合を実施することである。
【0023】
PEVEが反応中に加えられる場合、それを固定速度で注入することが便利である。好ましくは、PEVE添加の速度は重合の所定の段階の間ずって一様である。しかしながら、当業者は、多種多様なPEVEモノマー添加プログラムが用いられ得ることを認識するであろう。従って、例えば、PEVEをTFEとの混合物として加えることができるし、または一連の別個のPEVE添加を用いることができる。かかる別個の添加は、等しいまたは様々な量で、等しいまたは様々な間隔であることができる。他の一様でないPEVE添加プログラムを用いることができる。
【0024】
TFEおよびPEVE以外の高度にフッ素化されたモノマーが使用される場合、それぞれの他のモノマーは、他のモノマーの反応性、共重合体中へ組み込まれるべき量、および所望の結果に依存して、PEVEについて記載されたように独立して導入することができる。従って、それぞれの他のモノマーは、PEVEおよび/またはTFEとの混合物での添加をはじめとして、プレチャージするおよび/または重合中に加えることができる。
【0025】
本発明で使用されるTFE共重合体を製造するために任意の実用的な圧力を水性方法で用いることができる。高圧は反応速度の増加の点で低圧より有利である。しかしながら、TFEの重合は非常に発熱であるので、高い反応速度は、温度が高くなるので除去または調節しなければならない熱を増やす。使用できる圧力はまた、装置デザインによっておよびTFEの取扱いにおける安全上の懸念によって決定される。一般に、約0.3〜7MPaの範囲の圧力がTFE共重合体の分散重合について知られており、0.7〜3.5MPaの範囲の圧力が一般的である。反応器で一定圧力を維持することが一般的であるが、圧力は変えることができる。
【0026】
分散重合が完了し、未精製の(重合したままの)分散系が反応器から排出された後、当該技術で公知の伝統的技術(例えば、米国特許公報(特許文献3)を参照されたい)を用いて水性重合媒体からTFE共重合体固形分を回収することができる。例えば、場合により電解質を添加して激しい撹拌による凝固、または凍結および解凍による凝固、引き続いて液体から湿った固形分の分離、および次に乾燥によるのような方法を用いることができる。
【0027】
水性分散重合によって製造された場合、本発明で使用されるTFE/PEVE共重合体は分散形で使用することができる。重合したままの(未精製の)分散系は、それが意図される目的のために十分な安定性および/または湿潤特性を有するならば、反応器から排出されたまま使用されてもよい。あるいはまた、未精製の分散系は、界面活性剤の添加によって調節する、または当該技術で周知の技術によって濃縮し、安定化することができる。他の材料を分散形での使用のためにTFE/PEVE共重合体分散系へブレンドすることができ、またはかかるブレンドをドライブレンドまたは充填剤入り樹脂への一歩として共凝固させることができる。典型的に得られる小さな未精製分散粒度(RDPS)、例えば、50〜250nmは、沈降に対する安定性に寄与し、密着フィルムの形成のような、ある種の用途に特に望ましい分散系を作るかもしれない。
【0028】
分散濃度は、ポリマー固形分および水性媒体の総重量を基準にして、重合から得られるような約10〜40重量%固形分から濃縮された場合の約70重量%固形分までのように広範囲にわたって変わることができる。
【0029】
本発明で使用される非晶質TFE/PEVE共重合体は、フッ素化溶媒に溶解して存在することができる。例示的な溶媒は、例えば、米国特許公報(特許文献4)でツミネロ(Tuminello)およびキャバノー(Cavanaugh)によって、ならびに米国特許公報(特許文献5)でモーガン(Morgan)らによって開示されている。使用できる他の溶媒には、パーフルオロ(ジブチルメチル)アミンおよびパーフルオロ(トリアミル)アミンのようなフッ素化トリアルキルアミンが含まれる。過フッ素化化合物が溶媒として好ましいが、炭素原子に結合した総原子を基準にして、約12.5原子パーセント(at%)以下の水素および/または約37.5原子%の塩素を有するフッ素化化合物は使用することができる。一般に、炭素原子に結合した総原子の少なくとも50%がフッ素原子であろう。本発明の溶液中のポリマーの濃度は、ポリマーおよび溶媒に依存して、ポリマーおよび溶媒の総重量を基準にして、少なくとも0.1重量%、10重量%以上、20重量%および30重量%ほどに多いことができる。溶液粘度はポリマー濃度と共に増加するので、0.5〜5重量%のようなより低い濃度が多くの目的のためには好ましい。
【0030】
上に記載されたTFE共重合体ヒートシール可能組成物の分散系および溶液は、キャスティング、浸漬、塗装および吹き付けをはじめとする従来技術によって塗布することができる。通常、分散系または溶液は、湿った状態で所定の場所に溶着され、溶着物は乾燥され、乾燥樹脂は熱的に融合されるまたは強固にされる。便利な貯蔵および本明細書で以下に述べられる押出法でのその後の使用のために、乾燥樹脂はしばしば融解され、押し出され、ペレットまたはビーズへカットされる。
【0031】
ヒートシール可能なテープは、一実施形態では、乾燥した融合樹脂から形成される自立性フィルムである。自立性とは、ポリマーフィルムまたはシートが自己完全性を有し、支持体の使用なしで形成されるか、自立性フィルムとして支持体から取り外すことができるかのどちらかであることを意味する。好ましい実施形態では、ヒートシール可能なテープはヒートシール可能なTFE共重合体組成物とキャリアシートとを含む。ヒートシール可能なテープを製造するために、溶液または分散系から支持体上へキャスティングすることによってヒートシール可能なTFE共重合体組成物を塗布することができ、乾燥および/または融合するとフィルムが生成する。テープがキャリアシートをさらに含む好ましい実施形態では、ポリエステルフィルム、シリコーン紙、またはポリイミドフィルムであってもよいキャリアシート上へフィルムを直接キャスティングすることができる。キャスティングによって製造されるテープは、広い幅にキャスティングし、フィルム(および使用された場合にはキャリアシート)を狭い幅へ細長く切ってテープを形成することによって有利に製造される。
【0032】
あるいはまた、ペレットまたはビーズ形の共重合体樹脂から出発して、フルオロポリマーを溶融物として押し出してテープを形成することができる。キャリアフィルムが使用される場合、好ましくは共重合体はキャリアフィルム上へ直接溶融押出される。キャリアシートありまたはなしで、広い幅のフィルムを押し出し、フィルム(および存在する場合にはキャリアシート)を所望のより狭い幅のテープへ細長く切ることが望ましいかもしれない。
【0033】
特に好ましい実施形態では、ヒートシール可能なテープは、ヒートシール可能なTFE共重合体組成物とキャリアシートとの連続ロールの形にある。その時ヒートシール可能なテープは、建築布を用いて建設現場でシームをシールするための容易な現場施工に好適な形にある。ヒートシール可能なテープは好ましくは約25μm〜約500μmの厚さおよび約6mm〜約30cmの幅を有する。
【0034】
(施工)
本発明はさらに、各シートが上に記載されたヒートシール可能なTFE共重合体組成物を用いた少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有するシート材料の2つのセクションから形成されたシームおよびシームのシール方法を提供する。
【0035】
本発明のシームは、各シートが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有する、シート材料の2つのセクションから形成される。セクションは、各セクションの一つのフルオロポリマー表面上へのヒートシール可能な組成物の施工によって互いにシールされる。ヒートシール可能な組成物は、上に記載されたようにテトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体を含む。共重合体は372℃で約1000Pa・S以下、好ましくは372℃で約500Pa・S以下、最も好ましくは372℃で約200Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下、好ましくは約200℃以下の施工温度を有する。好ましい実施形態では、シートの少なくとも1つは自立性フルオロポリマーフィルムである。より好ましい実施形態では、シートの少なくとも1つは、少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有する布である。布上の表面は、自立性フルオロポリマーフィルムを布に施工することによって、または布をフルオロポリマー組成物でコーティングするまたは含浸することによって形成することができる。シームがフルオロポリマー表面を有する布から構築されている好ましい実施形態では、布は織布または不織布であることができる。本発明で形成されるシームは、バットシームまたはラップシームへ成形されたシート材料の2つのセクションであって、本発明で使用されるヒートシール可能な組成物の施工によって互いにシールされているセクションのような多数の一般的なシーム構築物の任意のものであってもよい。
【0036】
バットシームは、シート材料の2つのフルオロポリマー被覆セクションの縁をくっつけ、シームの下側に強化テープを施工することによって形成される。強化テープの反対側に形成される狭いギャップを排除するために、上に記載されたようなヒートシール可能なTFE共重合体組成物を使用してギャップをシールする。フルオロポリマーシーラントは、バットシームを形成する縁の間の埃およびデブリの集まりを防ぐ。ラップシームは、フルオロポリマー被覆シート材料、特に布の2片をオーバーラップさせ、埃およびデブリを集め得る縁を残してそれらを一緒にヒートシールすることによって形成される。縁が埃を集めて見苦しくなるのを防ぐために、ヒートシール可能なTFE共重合体組成物がラップシームの縁一面に施工される。本発明に従って使用されるヒートシール可能な組成物はフルオロポリマー表面に十分に接着するが、それは、典型的には、構造強度を建築布のシームに与えるための接着剤としては使用されない。
【0037】
本発明の方法は、各セクションが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有するシート材料の2つのセクション間のシームをシールする方法である。本方法は、テトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%の上に記載されたような高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体のヒートシール可能な組成物のバンドを形成する工程を含む。共重合体は372℃で、約1000Pa・S以下、好ましくは約500Pa・S以下、最も好ましくは372℃で約200Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下、好ましくは約200℃以下の施工温度を有する。バンドは、ヒートシール可能な組成物が各セクションの一つのフルオロポリマー表面に接触するようにシート材料の2つのセクション間のシーム上に置かれる。バンドはシームをシールするのに十分な250℃未満の温度に加熱され、ヒートシール可能な組成物は放冷される。本発明は、記載されたようなテープとしての、または溶融状態で押し出された材料のバンドとしてのヒートシール可能な組成物のバンドの施工を含む。
【0038】
好ましい実施形態では、バンドは、ヒートシール可能な組成物をキャリアシート上へ塗布してヒートシール可能なテープを形成することによって形成される。バンドは、ヒートシール可能な組成物の分散系または溶液からの溶着、その後の乾燥および熱強固化によってまたはヒートシール可能な組成物のキャリア上への押出によってキャリア上に形成することができる。施工については、ヒートシール可能な組成物がシートの各セクションの一つのフルオロポリマー表面に接触して、バンドはシーム上に施工される。より好ましい実施形態では、シール方法は、キャリアシートを有するテープの側面を加熱することによって所定の場所でキャリアフィルム付きテープを加熱する工程を含む。施工が建設現場で容易に起こり得るように、加熱は加熱素子、好ましくは携帯可能なもので行われてもよい。特に好ましい実施形態では、圧力および熱が加えられる。好ましくは5psi以下の圧力がシーリングをもたらすのに十分である。最も好ましい実施形態では、キャリアシートはヒートシール可能な組成物を放冷した後に取り除かれる。
【0039】
(用途)
本発明のテープおよびシームは、大きい建築物用に、シート、特に布のセクションを繋ぎ合わせるのに特に有用である。本発明は、強度のための強化布と耐候性および耐埃性のためのフルオロポリマー表面とよりなる建築シート材料を使用する、かかる建造物に適用できる。かかる建造物には、側板、屋根、テント、天幕、天蓋、ドームなどが含まれる。構造物は、当該技術で公知であるように空気支持または張力支持されてもよい。本発明のシーム付き布は、百貨店、競技場、学校、オフィスビル、空港ターミナル、動物展示区域および宗教集会のために用いられる広い地域のような多くの大きい公共施設で用途を有する。
【0040】
強化布は、綿、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンもしくはガラス、またはかかる繊維のブレンドのような様々な材料から製造されてもよい。布は、綿、ナイロンもしくはガラスで一般に行われるように織布であってもよいし、またはそれは商標ティベック(登録商標)、ティパール(登録商標)およびリーメイ(登録商標)で販売されている布でのように不織布であってもよい。
【0041】
好ましいフルオロポリマー表面は、ポリフッ化ビニル、およびポリテトラフルオロエチレンまたはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンもしくはパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体のような過フッ素化樹脂を含む。フルオロポリマー表面は半透明であっても顔料入りであってもよい。フルオロポリマーは、建築物へ組み立てられた時に、太陽への暴露によって引き起こされる損傷を減らすことによって構造物を保護する1つまたは複数の光安定剤を添加剤として好ましくは含有する。光安定剤には、ヒドロキシベンゾフェノンおよびヒドロキシベンゾトリアゾールのような紫外線を吸収する化合物が含まれる。他の可能な光安定剤には、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)および酸化防止剤が含まれる。
【0042】
本発明のヒートシール可能なテープおよびシームで形成された建造物は、埃およびデブリの蓄積に耐性があり、改善された美感およびより長い寿命を構造物に与える。かかる建造物は本発明の好ましい実施形態である。
【0043】
本発明のテープおよびシームはまた、製造装置で使用される、フルオロポリマー被覆シート、特に布を繋ぎ合わせるのにも有用である。電子部品の精密製造において、一緒に継ぎ合わされ、かつ、本発明で使用されるヒートシール可能なTFE共重合体組成物でシールされているコンベアベルトは、製造される部品の精密さおよび再現性を妨げる異物の堆積に抵抗する能力を有する。本発明のシームおよびテープの剥離能力はまた、食品工業で使用される大きい剥離シートのシーム形成に用途を見いだす。一般例は、両面グリルでのハンバーガー・パティの商業調理で使用される剥離シートである。完成品を引き裂くことなく調理パティの容易な剥離を保証するために、グリルの上部金属プラテンは非粘着表面層を備えている。ポリテトラフルオロエチレン含浸ガラス繊維クロスのかかる交換可能な非粘着表面層は、米国特許公報(特許文献6)に記載されている。かかる装置が食品の調製、デブリなし環境が望まれる電子部品または他の製品の製造で使用されるにせよ、本発明の具体的な実施形態には、本発明のテープおよびシームから製造された製造装置が含まれる。
【0044】
(試験方法)
(組成)
フルオロポリマー組成は、350℃でプレスした厚さ0.095〜0.105mmフィルムについて高温19F NMR分光法を用いるか、フーリエ(Fourier)変換赤外(FTIR)分光法を用いるかのどちらかで測定する。FTIRを用いる場合、一連のポリマーフィルムを用いて19F NMRによって測定された組成に対して、4.25μmでの厚さバンド(thickness band)の強度で割ったコモノマーに特有なバンドの強度をプロットすることによってFTIR法を較正する。データは直線にぴったり合い、その直線を用いてコモノマーバンドおよび厚さバンドについて強度比を測定することによって未知サンプルの組成を計算する。以下に続く実施例での分析に用いるコモノマーバンドは、PEVE9.17μm、PMVE11.2μmおよびHFP10.2μmである。
【0045】
(溶融粘度)
フルオロポリマーの溶融粘度は、米国特許公報(特許文献1)に記載されているように修正した米国材料試験協会(ASTM)方法D1238−52Tによって測定する。
【0046】
(熱特性)
テトラフルオロエチレン共重合体樹脂の熱特性は、ASTM D−4591−87の方法による示差走査熱量測定法(DSC)によって測定する。溶融吸熱のピーク温度は第1溶融で測定する。
【0047】
(施工温度)
テトラフルオロエチレン共重合体樹脂の施工温度(ヒートシール可能な組成物がフルオロポリマー表面を有するシート材料に好適に接着し、シールするであろう最低温度)は、第1溶融での溶融吸熱のピーク温度より50℃上より僅か下の様々な温度で共重合体のストリップをPTFEフィルム間のシーム上に施工することによって測定することができる。上に記載した様々な温度を水圧プレスに用いることを除いて下の比較例Bに記載する手順を用いる。サンプルを水中で3日間煮沸した後でシームが無傷のままである最低温度が施工温度である。
【実施例】
【0048】
(比較例A)
本比較例は、少量のPEVEとのTFE共重合体の重合が高融点のポリマーをもたらすことを例示する。11.4L(3米国ガロン)容量の撹拌ジャケット付きステンレススチール水平オートクレーブを、2翼かご型撹拌機を65rpmで作動させて用いる。オートクレーブに、温度および圧力を測定するための計器を、ならびに所望の圧力でオーとクレーブにモノマーを供給することができるコンプレッサーを備え付ける。オートクレーブに12gのパーフルオロオクタン酸アンモニウム(ミネソタ州セントポールの3M社(3M Co.,St.Paul,MN))を含有する6.2Lの脱イオン水を満たす。次にオートクレーブを窒素で2.8MPa(400psig)に加圧し、同様な加圧とTFEでのガス抜きとがそれに続いて3回ガス抜きする。オートクレーブ内容物を90℃に加熱し、406.6gTFEおよび306.8gパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)を加えて容器を2.8MPa(400psig)のその作動圧力にする。5g過硫酸アンモニウムを1Lの脱イオン水に溶解することによって開始剤溶液を調製する。開始剤溶液を25mL/分の速度で5分間反応器に供給し、次に速度を下げ、実験の継続の間1mL/分に維持する。反応が起こった時に一定圧力を維持するべく重量比85/15TFE/PEVEのモノマー混合物を反応器に加える半回分式で、オートクレーブを運転する。合計1700.8gTFEおよび300.0gPEVEを運転中に加える。約1〜1/2時間後に、供給を停止し、オートクレーブの内容物を冷却し、過剰のモノマーをガス抜きする。ポリマー分散系を、23.1重量%固形分を含有する混濁した均質混合物として受器に排出する。分散系を凍結させ、次に生成物を吸引フィルター上に集めてポリマーを単離する。フィルターケーキを水で洗浄し、対流オーブン中90〜100℃で乾燥して88.0重量%TFEおよび12重量%PEVEを含有する1973g共重合体をもたらす。ポリマーのDSCは、277℃のピーク温度の溶融吸熱を示す。372℃で測定した時の溶融粘度は410Pa・秒である。
【0049】
(実施例1)
本実施例は、十分に低い溶融温度のTFE/PEVE共重合体ヒートシール組成物の製造を例示する。モノマー前装入が302.1gTFEおよび628.5gPEVEであることを除いて比較例Aの手順を繰り返す。25.2%固形分の共重合体分散系が得られ、それは乾燥後に71.1重量%TFEおよび28.9重量%PEVEを含有する2261gのポリマーをもたらす。ポリマーのDSCは、198℃のピーク温度の溶融吸熱を示す。372℃で測定した時の溶融粘度は86Pa・秒である。
【0050】
(比較例B)
本比較例は、シーラントが安定な接合を達成するためにTFE/PEVEの高溶融共重合体が高い施工温度を必要とすることを例示する。12インチ長さマイアー(Meyer)ロッド(No.12)を用いる耐熱性ガラスプレート(8インチ×12インチ)上への分散系のドローダウンによってPTFEフィルムを製造する。少量の分散系(本願特許出願人によって60重量%固形分でPTFE水性分散系(PTFE Aqueous Dispersion)30Bとして販売されている)を、使い捨てピペットを用いてガラスプレート上に配置する。マイアーロッドを分散系と接触してプレート上方で水平位置に保持し、プレートを一様な安定した動きによって引っ張って全ガラスプレートをコーティングする。プレートを換気された対流オーブン中に100℃で30分間、引き続いて第2対流オーブン中に380℃で10分間入れる。次に、プレートを室温に冷却した後かみそりナイフを用いてフィルムを剥離する。フィルムは厚さ15μm(0.6ミル)である。約2.5cm×5cm(1インチ×2インチ)の2片をフィルムからカットし、各片の5cm縁がぴったり触れているように、より大きな平方形のカプトン(KAPTON)(登録商標)ポリイミドフィルム上に並べて配置する。これがバットシームを形成する。厚さ約50μm(2ミル)フィルムを、比較例Aで製造したTFE/PEVE共重合体からプレスする。TFE/PEVEフィルムの約0.6cm×5cm(1/4インチ×2インチ)ストリップをカットし、バットシーム上に配置して、アセンブリをカプトン(登録商標)ポリイミドフィルムの別の平方形でカバーした。次にこれを2つの厚さ0.3cm(1/8インチ)スチールプレートの間に配置して、270℃に加熱した水力プレス中へ挿入する。プレスのジョーを、それらがスチールプレートにちょうど触れるように閉める。サンプルを2分間加熱するに任せ、もう少し熱間プレス中に留める。熱いアセンブリをプレスから取り出す。カプトン(登録商標)フィルムおよびフルオロポリマーサンドイッチをプレートから取り外し、石造りのベンチ最上部で周囲温度に冷却する。カプトン(登録商標)フィルムを取り除いて互いにしっかりと接合したPTFEフィルム片をもたらす。シームは、サンプルを水中で3日間煮沸した後で無傷のままであった。
【0051】
プレスを250℃に加熱したことを除いて上記手順を繰り返す。この場合、PTFEフィルムがTFE/PEVEヒートシール可能な組成物から引裂きなしで剥離できたので、接合はあまりしっかりしていない。結果は、シーラント組成物をその施工温度より上に加熱して強い接合を生み出すことが重要であることを示す。しかしながら、組成物を余りにも高い温度で、すなわち250℃より上に加熱すると、特にフルオロポリマー以外の樹脂を用いた構築物では、ヒートシールされたシームを変形または弱くする可能性がある。従って、約250℃以下の施工温度のヒートシール可能な組成物を本発明の実施では使用する。
【0052】
(実施例2)
本実施例は、TFE/PEVE共重合体ヒートシール可能組成物の低溶融共重合体が低い施工温度、すなわち、250℃以下の温度を用いてフルオロポリマー表面と強い接合を形成することを例示する。実施例1で製造したTFE/PEVE共重合体からプレスしたフィルムを使用し、プレスを250℃に加熱することを除いて比較例Bの手順に従う。カプトン(登録商標)フィルムの除去後に、ヒートシール可能な組成物によるPTFEへのしっかりした接合が見いだされ、接合は何の明らかな影響もなく3日間の沸騰水への暴露を切り抜ける。
【0053】
接合を達成するためにブレスを230℃に加熱することを除いて本実施例を繰り返す。接合が250℃で形成された時と実質的に同じ結果が得られる。
【0054】
(実施例3)
本実施例は、PTFE含浸ガラス布よりなるシート材料のセクションでのヒートシール可能なTFE/PEVE共重合体の使用を例示する。ガラス織布スタイル1080を両面上にワンパスで60重量%固形分のPTFE水性分散系30B(本願特許出願人)でコーティングする。この布はJPSガラス・アンド・インダストリアル・ファブリックス(JPS Glass and Industrial Fabrics)(サウスカロライナ州グリーンヴィル(Greenville,South Carolina))から入手可能であり、1.4オンス/ヤードの重さがある。それは下記によって特徴づけられる。
【0055】
【表1】

【0056】
巻出しステーション、浸漬タンク、ガイドローラー、平滑なワイパー棒、2ゾーンオーブンおよび巻取機を備えたコーティングラインを用いてガラス布上へPTFE分散系のワンパスを付ける。第1オーブンゾーンは250°Fに、第2ソーンは750°Fに設定する。ライン速度は4フィート/分である。被覆クロスは約100μm(4ミル)厚さである。
【0057】
約2.5cm×5cm(1インチ×2インチ)PTFE被覆布の2片を被覆クロスからカットし、各片の5cm縁がぴったり触れているように、カプトン(登録商標)テープのストリップ上に並べて配置する。これがバットシームを形成した。テープを用いて個々のガラスクロス片が、それらの取扱い中に、実験が進行中に移動するのを防ぐ。(共重合体のシームシール性をより良く評価できるように、バットシームを形成するのに通常用いられる強化布は使用しない。)
【0058】
厚さ約100μm(4ミル)フィルムを、実施例1で製造したTFE/PEVE共重合体からプレスする。TFE/PEVEフィルムの約0.6cm×5cm(1/4インチ×2インチ)ストリップをカットし、バットシーム上に配置する。アセンブリを、メイン州ブルーアーのイースタン・ペーパー(Eastern Paper,Brewer,ME)から入手可能な、正方形のシリコーン被覆剥離紙、グレード50S2L11でカバーする。次にこれを2つの厚さ0.3cm(1/8インチ)スチールプレートの間に配置して、250℃に加熱した水圧プレス中へ挿入する。プレスのジョーを、それらがスチールプレートにちょうど触れるように閉める。サンプルを2分間加熱するに任せ、もう少し熱間プレス中に留める。熱いアセンブリをプレスから取り出す。カプトン(登録商標)フィルム、フルオロポリマーサンプルおよび剥離紙をプレートから取り外し、石造りのベンチ最上部で周囲温度に冷却する。カプトン(登録商標)フィルムおよび剥離紙を取り除いて互いにしっかりと接合したPTFE被覆ガラスクロス片をもたらす。ヒートシール可能な組成物が2片のガラスクロス間の狭いギャップを満たして埃またはデブリを捕捉できない平滑な表面をもたらす。シームは、サンプルを水中で3日間煮沸した後またはサンプルをドライアイスで凍結された後でさえ無傷のままであった。
【0059】
プレスを230℃に加熱したことを除いて上記手順を繰り返す。実質的に同じ結果が得られる。(本実施例で、他の樹脂を含有する布は損傷され得るが、PTFEガラス布はこの温度まで加熱することによって損傷を受ける傾向がない。)
【0060】
(実施例4)
本実施例は、PTFE含浸ガラス布よりなるシート材料のセクションでのヒートシール可能なTFE/HFP共重合体の使用を例示する。75.7重量%TFEおよび24.3重量%HFPを含有する、本願特許出願人によって製造されるTE−5038Aと特定されるTFE/HFP共重合体は、175℃のピーク温度の溶融吸熱および372℃で82Pa・秒(mfr650)の溶融粘度を示す。共重合体を厚さ約200mm(8ミル)フィルムへプレスし、200℃でプレスして室温に冷却する。幅0.64cm(1/4インチ)ストリップをフィルムからカットし、実施例3に記載したように被覆ガラス布に接合する。(再び、共重合体のシームシール性をより良く評価できるように、バットシームを形成するのに通常用いられる強化布は使用しない。)接合したサンプルを次に水中で3日間煮沸し、次にドライアイスで数時間凍結させる。サンプルを室温にし、検査する。ヒートシール可能な組成物は、折り曲げ後に被覆クロスに接合したままであり、層間剥離せず、ヒートシール可能な組成物が被覆クロスに十分に接合していることを示す。
【0061】
(実施例5)
本実施例は、PTFE含浸ガラス布よりなるシート材料のセクションでの非晶質のヒートシール可能なTFEターポリマーの使用を例示する。(再び、共重合体のシームシール性をより良く評価できるように、バットシームを形成するのに通常用いられる強化布は使用しない。)デラウェア州ウィルミントンの本願特許出願人によって製造される、TE−5154Aとして知られる372℃で350Pa・秒(mfr150)の溶融粘度を有する62.1重量%TFE、24.8重量%PMVE、および13.1重量%PEVEを含有する、PEVEおよびPMVEを含有する非晶質のTFE/パーフルオロアルキルエーテルターポリマーをTFE/HFP共重合体の代わりに用いることを除いて実施例4の手順に従う。ヒートシール可能な組成物は、実施例4でのような煮沸および凍結処理を切り抜け、室温での折り曲げ後に被覆ガラスクロスに接合したままである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体を含むヒートシール可能なテープであって、前記共重合体が372℃で約1000Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下の施工温度を有することを特徴とするヒートシール可能なテープ。
【請求項2】
前記溶融粘度が約500Pa・S以下であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール可能なテープ。
【請求項3】
前記溶融粘度が約200Pa・S以下であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール可能なテープ。
【請求項4】
前記高度にフッ素化されたモノマーが前記共重合体の少なくとも約20重量%を占めることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール可能なテープ。
【請求項5】
前記高度にフッ素化されたモノマーがトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、モノクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロブチルエチレン、およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール可能なテープ。
【請求項6】
前記高度にフッ素化されたモノマーがパーフルオロ(エチルビニルエーテル)であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール可能なテープ。
【請求項7】
キャリアシートをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のヒートシール可能なテープ。
【請求項8】
請求項6に記載の前記ヒートシール可能なテープの連続ロール。
【請求項9】
約25μm〜約500μmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のヒートシール可能なテープ。
【請求項10】
約6mm〜約30cmの幅を有することを特徴とする請求項1に記載のヒートシール可能なテープ。
【請求項11】
シート材料の2つのセクションから形成されたシームであって、各シートが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を含み、かつ、前記セクションが各セクションの一つのフルオロポリマー表面上へのヒートシール可能な組成物の施工によって互いにシールされ、前記ヒートシール可能な組成物がテトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体を含み、前記共重合体が372℃で約1000Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下の施工温度を有することを特徴とするシーム。
【請求項12】
前記シートの少なくとも1つがフルオロポリマーの自立性フィルムであることを特徴とする請求項11に記載のシーム。
【請求項13】
前記シートの少なくとも1つが前記少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有する布であることを特徴とする請求項11に記載のシーム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのフルオロポリマー表面を持った前記布が前記布へのフルオロポリマーコーティングの施工によって形成されることを特徴とする請求項13に記載のシーム。
【請求項15】
前記フルオロポリマー表面が前記布への自立性フルオロポリマーフィルムの施工によって形成されることを特徴とする請求項13に記載のシーム。
【請求項16】
前記布が織布であることを特徴とする請求項13に記載のシーム。
【請求項17】
前記布が不織布であることを特徴とする請求項13に記載のシーム。
【請求項18】
前記セクションがバットシームにシールされることを特徴とする請求項11に記載のシーム。
【請求項19】
前記セクションがラップシームにシールされることを特徴とする請求項11に記載のシーム。
【請求項20】
請求項11に記載のシームを含むシート材料から製造された建造物。
【請求項21】
請求項11に記載のシームを含むシート材料から製造された製造装置。
【請求項22】
各セクションが少なくとも1つのフルオロポリマー表面を有するシート材料の2つのセクション間のシームをシールする方法であって、
テトラフルオロエチレンと少なくとも約15重量%の高度にフッ素化されたモノマーとの共重合体を含むヒートシール可能な組成物のバンドを形成する工程であって、前記共重合体は372℃で約1000Pa・S以下の溶融粘度および約250℃以下の施工温度を有する工程と、
前記ヒートシール可能な組成物が各セクションの一つのフルオロポリマー表面に接触するようにシート材料の前記2つのセクション間の前記シーム上に前記バンドを配置する工程と、
前記シームをシールするのに十分な250℃以下の温度に前記バンドを加熱する工程と、
前記ヒートシール可能な組成物を放冷する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記バンドが前記ヒートシール可能な組成物をキャリアシート上へ施工してヒートシール可能なテープを形成することによって形成されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒートシール可能な組成物の前記バンドの前記加熱が、前記テープを前記シーム上に配置して、そして前記テープを加熱することによって行われることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記テープの前記加熱が前記テープのキャリアシートを加熱素子と接触させることによって行われることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記テープの前記加熱中に前記加熱素子で前記キャリアシートに圧力を加える工程をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記圧力が5psi以下であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記キャリアシートが前記ヒートシール可能な組成物を放冷した後に取り除かれることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
シート材料の前記2つのセクションから形成された前記シームがラップシームであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記シート材料の2つのセクションから形成された前記シームがバットシームであることを特徴とする請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2006−520404(P2006−520404A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500848(P2006−500848)
【出願日】平成16年1月6日(2004.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/000388
【国際公開番号】WO2004/062888
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】