説明

フレキシブルキャリア上に堆積された金属膜から彫刻欠陥を除去する方法

【課題】彫刻欠陥、特にキャップの効果的な除去方法であって、彫刻エッジを損傷しない方法を提案する。
【解決手段】本発明は、フレキシブルキャリア上に堆積された金属膜からマスク投影レーザーアブレーション彫刻欠陥を除去する方法に関する。本発明によると、前記方法は、約1500PSIから約3000PSIの間で加圧された液体を前記欠陥上に噴霧することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルキャリア上に堆積された金属膜からレーザーアブレーション彫刻によって引き起こされる欠陥の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプラスチック膜等のフレキシブルキャリアの表面上に金属パターンを形成するための周知の方法として、例えば蒸着によって約十から数百ナノメートルの間の厚さの金属膜をそこに堆積させ、紫外線波長157から408ナノメートルの間のエキシマーレーザービームを使用して堆積された金属膜をエッチングする方法があり、前記パルスビームはエッチングされるパターンを画定するガラス及びアルミニウムマスクを介して投影される。
【0003】
しかしながら、この種の彫刻、より一般的には“マスク投影レーザーアブレーション彫刻”とのフレーズで言及される彫刻は、エッチングされたパターンのエッジに最終構成部品の品質に悪影響をもたらす欠陥を生成することが指摘される。実際に、彫刻エッジは通常、レーザーの影響下で金属膜が融解することによって生じる金属玉、または突出部を形成する剥離金属を備え、前記突出する剥離金属は通常“キャップ”として知られており、前記突出部は約200ナノメートルから10マイクロメートルの間の大きさとなり得る。
【0004】
これらの欠陥の出現は、エキシマーレーザー彫刻特有のものであり、レーザーによって生成される紫外線からの熱が、金属膜が堆積されるキャリアを揮発させ、局部的に破裂する事実によって説明され、この現象は金属膜の金属材料にかかわらず発生する。
【0005】
エッチングされる部品は一般的に、後にマイクロエレクトロニクス部品に使用され、例えば30から70ナノメートルの間の厚さの半導体膜等、100ナノメートル以下の薄膜等の他の種類の機能層で被覆され得る。
【0006】
しかしながら、玉またはキャップ型の彫刻欠陥を有する表面に層を堆積させると、例えば電荷漏洩、使用中の移動問題(operational transfer problem)、ファセットの損失、早期老朽などの多くの問題が生じる。
【0007】
これらの欠点を克服するために、非特許文献1では、部品のエッチングされた表面に固体炭酸を噴霧することが提案されている。
【0008】
しかしながら、キャップを取るこの従来技術の方法は、前述の文献の101頁の図10に見られるように乱暴であり、制御されていない。最終的には金属膜が剥がれ、彫刻エッジが損傷する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Osman A. Ghandour等、「Excimer ablation of ITO on flexible substrate for large format display applications」Photon Processing Microelectronics Photonics、SPIE、4637巻、90−101頁、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、彫刻欠陥、特にキャップの効果的な除去方法であって、彫刻エッジを損傷しない方法を提案することによって前述の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するための発明の目的は、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリイミド等のプラスチック材料で有利に成るフレキシブルキャリア上に堆積された金属膜からのマスク投影レーザーアブレーション彫刻欠陥の除去方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
フレキシブル基板またはキャリアとは、様々な形状をとり原形に戻ることができるあらゆる基板を意味すると見なされる。これは特に、プラスチック材料の場合であり、プラスチック材料は炭素鎖によって構成され、押出後に絶縁膜を形成する。
【0013】
本発明による方法は、約1500PSIから約3000PSIの間で加圧された液体を前記欠陥に噴射することを含む。
【0014】
言い換えると、発明者は、正確に選択された圧力で液体を噴射する効果が、金属膜が剥離してはがれ、彫刻エッジが損傷する現象を防ぐと同時に実質的に全てのキャップを除去するものであることに気付いた。
【0015】
エッチングされる表面の質の再現性を向上させる効果的且つ損傷のない除去は、エッチングされる金属膜の下部及び/または上部に犠牲層を使用することを避けることができ、さらにアブレーションに関連する電力を低減させることができ、キャリアを損傷しないため、彫刻表面の質が保証される。
【0016】
ある特定の実施形態によると、噴射は表面に対して30°以上の角度、及びそこに実質的に垂直にさえ適用される。これらの条件の下では、その方向がいかなるものであっても、全てのキャップを除去することができる。
【0017】
ある特定の実施形態によると、液体は、脱イオン水である。
【0018】
言い換えると、脱イオン水の噴出は、金属膜に対して化学的に無毒であるため、その表面、特にその粗さを損傷しない。さらに、その生成方法に起因して、脱イオン水は残留物を含まないため、その構成部品を汚染しない。最後にその表面上に電荷が形成されない。
【0019】
さらに、調製する表面が電気回路を備えたとしても、回路を損傷し得る回路上の帯電現象を防ぐために、前記脱イオン水を再イオン化すると好都合である。従って、再イオン化水は、電気的特性と関連してイオン化水の利点を有する。
【0020】
その他の種類の液体も使用することができる。構成部品表面の洗浄がさらに必要な場合は、アルコールまたはアセトンを使用すると好都合である。
【0021】
ある特定の実施形態によると、液体は金属膜に対して回転及び往復運動して噴射される。
【0022】
従って、エッチングされた表面は液体噴出によって効果的に被覆され、残留物はそこから流される。実際に、選択された角度を伴う回転によって、キャップをあらゆる角度から攻撃することが可能となり、その結果キャップを除去することができる。
【0023】
特定の独創的な実施形態によると、金属膜が蒸着によってフレキシブルキャリア上に堆積されている場合、液体の圧力は約1800PSI未満である。
【0024】
言い換えると、いわゆる“ジュール効果”技術を使用した、または例えば電子銃による金属蒸着は、フレキシブルキャリアへの金属膜の接着力の低減を引き起こす。1500PSIより大きく1800PSI未満の圧力を使用することによって、高程度のキャップ除去を維持しながらエッチングされたパターンのエッジが剥がれることが防止される。
【0025】
例えばカソードスパッタリングによって堆積された金属膜等のフレキシブルキャリアにより強く接着する金属膜には、キャップ除去効率を向上させるためにより高い圧力を使用することができる。さらに、エッチングされたパターンを損傷するリスクを伴わずに高圧液体を噴射する回数を増加させることができる。例えば、低接着強度を有する金属膜と比較して噴射回数を3倍にすることができる。
【0026】
堆積された金属膜(Cu、NiPd、Pt、Au、または同様のもの)における材料の厚さ及び性質は、除去効率に実質的に影響を与えず、影響する主因子は接着強度であることがわかるだろう。
【0027】
この独創的な方法は、例えばマイクロエレクトロニクスの分野で使用されるように、標準の粒子洗浄装置を使用して実施される。前記装置は共通に、洗浄のための成分を受けるための回転ホルダーと、往復運動が可能であり直径約30マイクロメートルのノズルが装着された多関節アームとを備える。前記装置はさらに、ノズルに供給する加圧液体サーキットを備え、後者は洗浄される部品に実質的に垂直に向けられている。このような装置を標準的に、すなわち洗浄に使用する間、液体の圧力はほぼ1200から1500PSIの間である。
【0028】
本発明によると、前記従来技術の装置は別の圧力範囲で使用され、すなわち液体圧力約1500PSIから約3000PSIの間で、欠陥が除去されなければならない部品の表面から数十ミリメートルの距離に配置されたノズルを備えて作動される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルキャリア上に堆積された金属膜からマスク投影レーザーアブレーション彫刻欠陥を除去する方法であって、約1500PSIから約3000PSIの間で加圧された液体を前記欠陥に噴霧することを含む方法。
【請求項2】
前記液体が前記金属膜に対して30°以上の角度で噴霧されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体が前記金属膜に対して実質的に垂直に噴霧されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
噴霧される前記液体が脱イオン水であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脱イオン水が使用される前に再イオン化されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体が、前記金属膜に対して回転及び往復運動して噴霧されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属膜が蒸着によって前記フレキシブルキャリア上に堆積された場合に、前記液体の圧力が約1800PSI未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フレキシブルキャリアがプラスチック材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フレキシブルキャリアがPEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)及びポリイミドを含む群から選択される材料から成ることを特徴とする、請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2010−500(P2010−500A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−128145(P2009−128145)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】