説明

フレキシブル基板、フレキシブル基板接合方法、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】配線の接続部の剛性を確保できるフレキシブル基板と、このフレキシブル基板を相手側部材に対し接合するフレキシブル基板接合方法、フレキシブル基板を用いた液滴吐出ヘッド、及びこの液滴吐出ヘッドを用いた画像形成装置を得る。
【解決手段】フレキシブル基板本体90には配線110を部分的に露出させる開口部112が形成される。フレキシブル基板本体90の、挿入孔106の周囲を含む配線110の片面に、剥離可能な粘着材によって補強フイルム部材120が貼り付けられている。補強フイルム部材120によって配線110が補強されているので、電子部品94の挿入凸部104を配線110の挿入孔106に挿入するとき、配線110の変形が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板と、このフレキシブル基板を相手側部材に対し接合するフレキシブル基板接合方法、フレキシブル基板を用いた液滴吐出ヘッド、及びこの液滴吐出ヘッドを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板を電子部品(相手側部材)に接続する接続構造として、たとえば特許文献1には、フレキシブル基板の配線に形成した貫通孔に、電子部品の突起部を挿入して電気的に接続するようにした構造が記載されている。
【0003】
ところで、特許文献1の構造では、配線の貫通孔が形成された部分にはフレキシブル基板が存在していないため、接続時に配線の位置、特に貫通孔の位置がずれることが懸念され、この場合には、貫通孔に突起部を挿入できなくなる。
【0004】
このような不都合の発生を防止するためには、貫通孔を充分に大きく形成して、貫通孔と突起部との位置ズレを許容する構成が考えられる。しかし、貫通孔を大きくすると、貫通孔の内面と突起部との隙間も大きくなるため、電気的な接続面積も狭くなってしまう。
【0005】
特に、配線の高密度化等の要求等から配線幅を狭くすると配線の剛性も低下するため、貫通孔を大きくすることにも限界がある。
【特許文献1】特開2007−36009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、配線の接続部の剛性を確保できるフレキシブル基板と、このフレキシブル基板を相手側部材に対し接合するフレキシブル基板接合方法、フレキシブル基板を用いた液滴吐出ヘッド、及びこの液滴吐出ヘッドを用いた画像形成装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、可撓性を有するフレキシブル基板本体と、前記フレキシブル基板本体上に形成された配線と、前記配線の一部として構成され、フレキシブル基板本体からはみ出すことで相手側部材との接続用とされる接続部と、前記接続部どうし又は接続部と前記フレキシブル基板本体とを繋ぐように貼り付けられた補強部材と、前記接続部及び前記補強部材を貫通して形成され、前記相手側部材に設けられた挿入凸部が挿入される挿入孔と、を有する。
【0008】
このフレキシブル基板では、配線に接続部が設けられており、この接続部によって相手側部材と接続することができる。接続部はフレキシブル基板から配線を部分的にはみ出すようにすることで構成されているので、それ自体の剛性は低い場合もあるが、本発明では、補強部材によって接続部が補強されており、剛性が高くなっている。このため、相手側部材との接続時等においても接続部の剛性が確保できる。
【0009】
接続部及び補強部材には、相手側部材に設けられた挿入凸部が挿入される挿入孔が形成されている。すなわち、挿入孔に挿入凸部を挿入することで、フレキシブル基板を相手側部材と接続することができる。
【0010】
フレキシブル基板を相手側部材と接続する方法としては、たとえば、請求項5に記載のフレキシブル基板接合方法によって相手側部材に接合することができる。
【0011】
すなわち、まず、挿入工程において、挿入孔に挿入凸部を挿入する。このとき、接続部は補強部材によって補強されて剛性が高められており、不用意に変形したり位置ズレしたりしていないので、挿入凸部を正確且つ容易に挿入孔に挿入できる。
【0012】
挿入後に、除去工程において、補強部材を除去する。補強部材の除去により配線が露出するので、挿入凸部と接触可能な面積が広くなる。
【0013】
そして、接合工程において、挿入凸部と配線とを接合する。ここで、特に、請求項6に記載のように、挿入凸部が挿入孔から突出する高さを有している構成では、接合工程において、挿入凸部の前記挿入孔から突出した部分を、たとえば、かしめ等により拡径することで、突出した部分の断面積が広くなってより確実な接合が可能となり、挿入凸部と配線との接触面積も広く確保できる。
【0014】
また、接合工程において、請求項7に記載のように、配線と挿入凸部とをハンダ又はメッキにより接合してもよく、これによって、より確実な接合が可能となり、接触面積も広く確保できる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記補強部材が、紫外線の照射、活性エネルギー線の照射、加熱、冷却及び薬剤添加のすくなくとも1つにより収縮する収縮フイルム部材とされている。
【0016】
したがって、収縮フイルム部材を収縮させることで、容易に接続部から除去できる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記補強部材が、紫外線の照射、活性エネルギー線の照射、加熱、冷却及び薬剤添加のすくなくとも1つにより溶融する溶融フイルム部材とされている。
【0018】
したがって、溶融フイルム部材を溶融させることで、容易に接続部から除去できる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記補強部材を前記接続部又は前記フレキシブル基板本体に粘着させると共に、紫外線の照射、活性エネルギー線の照射、加熱、冷却及び薬剤添加のすくなくとも1つにより粘着性が低下する粘着剤を有する。
【0020】
したがって、粘着剤の粘着性を低下させることで、補強部材を容易に接続部から除去できる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、液滴を吐出するための液滴吐出ヘッド本体と、前記液滴吐出ヘッド本体に設けられた回路基板と、前記回路基板に接合された請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブル基板と、を有する。
【0022】
この液滴吐出ヘッドでは、フレキシブル基板が接続された回路基板を有しており、フレキシブル基板を回路基板(この回路基板又は回路基板上の部品が相手側部材となる)に対して確実に接合できる。フレキシブル基板を回路基板に接合した状態では、液滴吐出ヘッド本体を駆動あるいは制御して液滴を吐出することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明では、記録シートを搬送する搬送装置と、前記搬送装置で搬送される前記記録シート上に液滴を吐出する請求項8に記載の液滴吐出ヘッドと、を有する。
【0024】
したがって、搬送装置によりシート材を搬送しつつ、この記録シート上に液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上記構成としたので、配線の接続部の剛性を確保できるフレキシブル基板と、このフレキシブル基板を相手側部材に対し接合するフレキシブル基板接合方法、フレキシブル基板を用いた液滴吐出ヘッド、及びこの液滴吐出ヘッドを用いた画像形成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0027】
まず、画像形成装置10の全体構成について説明する。
【0028】
[画像形成装置]
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置10には、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という)の搬送方向上流側に、用紙を給紙搬送する給紙搬送部12が設けられている。この給紙搬送部12の下流側には、用紙の搬送方向に沿って、用紙の記録面に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙の記録面に画像を形成する画像形成部16、記録面に形成された画像のインクを乾燥させるインク乾燥部18、乾燥したインクを用紙に定着させる画像定着部20、画像が定着した用紙を排出する排出部21が設けられている。
【0029】
以下、各処理部について説明する。
【0030】
(給紙搬送部)
給紙搬送部12には、用紙が積載される積載部22が設けられており、積載部22の用紙搬送方向下流側には、積載部22に積載された用紙を一枚ずつ給紙する給紙部24が設けられている。給紙部24によって給紙された用紙は、複数のローラ対26で構成された搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。
【0031】
(処理液塗布部)
処理液塗布部14では、処理液塗布ドラム30が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙の先端部を挟持して用紙を保持する保持部材32が設けられており、保持部材32を介して、処理液塗布ドラム30の表面に用紙を保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって用紙を下流側へ搬送する。
【0032】
なお、後述する中間搬送ドラム34、画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38及び画像定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に保持部材32が設けられている。そして、この保持部材32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙の受け渡しが行われる。
【0033】
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42及び処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布装置42によって、用紙の記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、処理液が乾燥される。
【0034】
ここで、処理液はインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材(顔料)と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留された貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
【0035】
このグラビアローラ48にはゴムローラ50が圧接して配置されており、ゴムローラ50が用紙の記録面(表面)側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48にはスキージ(図示省略)が接触しており、用紙の記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0036】
処理液膜厚は後述するインクジェットラインヘッド64から打滴される液滴(以下「ヘッド打滴」という)の直径より十分小さいことが理想である。すなわち、インクは処理液膜内で浮遊してしまうため、処理液膜が厚いと、インクドットは処理液内で浮遊してしまい、用紙の記録面と接触しないことになる。例えば2plの打滴量の場合、ヘッド打滴の液滴の平均直径は15.6μmであるが、この程度の大きさ(体積)の液滴では、処理液膜厚が厚い場合には、インクドットは処理液内で浮遊してしまい、用紙の記録面と接触しない。2plの打滴量で着弾ドット径(用紙の記録面に接触した液滴の直径)を30μm以上得るには処理液膜厚を3μm以下にすることが好ましい。
【0037】
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル54及び赤外線ヒーター56(以下「IRヒーター56」という)が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル54及びIRヒーター56により、処理液中の水などの溶媒を蒸発させ、固体もしくは薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像形成部16でインク打滴したドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応し色材凝集して用紙表面に固定する作用が得られやすい。
【0038】
このようにして、処理液塗布部14で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙は、処理液塗布部14と画像形成部16の間に設けられた中間搬送部58へ搬送される。
【0039】
(中間搬送部)
中間搬送部58には、中間搬送ドラム34が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34に設けられた保持部材32を介して、中間搬送ドラム34の表面に用紙の先端を保持し、中間搬送ドラム34の回転によって用紙を下流側へ搬送する。
【0040】
(画像形成部)
画像形成部16には、画像形成ドラム36が回転可能に設けられており、画像形成ドラム36に設けられた保持部材32を介して、画像形成ドラム36の表面に用紙を保持し、画像形成ドラム36の回転によって用紙を下流側へ搬送する。
【0041】
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、シングルパス方式のインクジェットラインヘッド64で構成されたヘッドユニット66が配設されている。このヘッドユニット66では、少なくとも基本色であるYMCKのインクジェットラインヘッド64が画像形成ドラム36の周方向に沿って配列され、処理液塗布部14で用紙の記録面に形成された処理液層上に各色の画像を形成する。なお、ヘッドユニット66の構成については後述する。
【0042】
処理液はインク中に分散する色材(顔料)とラテックス粒子を処理液に凝集する効果を持たせ、用紙上で色材流れなど発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用いることで、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。
【0043】
インクジェットラインヘッド64は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム36の振れ、回転軸68の精度、ドラム表面速度に依存せず、打滴ムラを低減することが可能となる。
【0044】
なお、ヘッドユニット66は画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、インクジェットラインヘッド64のノズル面清掃や増粘インク排出などのメンテナンス動作は、このヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
【0045】
記録面に画像が形成された用紙は、画像形成ドラム36の回転によって、画像形成部16とインク乾燥部18の間に設けられた中間搬送部70へ搬送されるが、中間搬送部70については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0046】
(インク乾燥部)
インク乾燥部18には、インク乾燥ドラム38が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥部18の表面に近接して、熱風ノズル72及びIRヒーター74が複数配設されている。この熱風ノズル72及びIRヒーター74による温風によって、用紙の画像形成部では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
【0047】
温風は用紙の搬送速度によっても異なるが、通常は50℃〜70℃に設定されている。蒸発した溶媒はエアーと共に画像形成装置10の外部へ排出されるが、エアーは回収される。このエアーは、冷却器/ラジエータ等で冷却して液体として回収しても良い。
【0048】
記録面の画像が乾燥した用紙は、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20の間に設けられた中間搬送部76へ搬送されるが、中間搬送部76については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0049】
(画像定着部)
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられており、画像定着部20では、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱/加圧されて溶融し、用紙上に固着定着する機能を有する。
【0050】
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ78が配設されている。この加熱ローラ78は熱伝導率の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、加熱ローラ78によって、ラテックスのTg温度以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることを可能とする。
【0051】
加熱ローラ78の下流側には、定着ローラ80が設けられている、この定着ローラ80は画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配置され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ80又は画像定着ドラム40のうち、少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙に対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0052】
以上のような工程により、記録面の画像が定着した用紙は、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
【0053】
なお、本実施形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば良いため、この画像定着部20は必ずしも必要ではない。
【0054】
[ヘッドユニット]
図2に詳細に示すように、ヘッドユニット66は、ヘッド筐体82を有している。ヘッド筐体82内には、ドライバ基板84及びコントロール基板86が備えられており、ぞれぞれ、ヘッドユニット66の駆動や各種コントロールを行う。特に、ドライバ基板84の下部には複数のノズルが備えられており、たとえば、これらノズルに対応して設けられた圧電素子を駆動することで、ノズルから用紙に対して液滴を吐出可能とされている。そして、本実施形態では、ドライバ基板84に対し、フレキシブル基板88を接合している。
【0055】
図3〜図6に示すように、フレキシブル基板88は、ポリイミド等の可撓性を有する材料によって略板状に形成されたフレキシブル基板本体90を有している。以下、単に一端というときは、フレキシブル基板本体90の一端90Aをいうものとする。また、単に幅方向というときは、フレキシブル基板本体90の幅方向をいうものとする。なお、図3〜図6では、フレキシブル基板本体90の一端90A側のみを示し、他端側は図示を省略している。フレキシブル基板88は、この一端90A側に、電子部品94と接続される接続領域108が構成されている。
【0056】
フレキシブル基板本体90には、銅等の導電材材料により、所定のパターンで配線110が形成されている。本実施形態では特に、フレキシブル基板本体90の一端90Aの近傍部分では、平行な複数の配線110が形成されている。
【0057】
さらに、フレキシブル基板88の接続領域108には、フレキシブル基板本体90を厚み方向に貫通する開口部112が形成されている。開口部112は配線110を部分的に露出させてフレキシブル基板本体90からはみ出すようにしており、この露出部分が配線110における接続部110Cとなっている。なお、本実施形態では、1つの開口部112が複数の配線110に対応するように形成されている。
【0058】
配線110の接続部110Cには、配線110を厚み方向に貫通する挿入孔106が形成されている。後述するように、電子部品94から突設された挿入凸部104がこの挿入孔106に挿入されて、フレキシブル基板88が電子部品94に接続される。フレキシブル基板本体90に開口部112を形成したことで、配線110の挿入孔106に挿入凸部104を挿入しても、挿入凸部104はフレキシブル基板本体90には接触しないようになっている。
【0059】
これに対し、電子部品94には、挿入孔106のそれぞれに対応した位置に、導電材料であるAu、Ni、Cu、Sn、Ag又はこれらの合金によって挿入凸部104が形成されている。挿入凸部104は、本実施形態では挿入孔106の外形と略等しいか、もしくは挿入孔106の外形よりも一回り小さくなるように形成されており、挿入孔106に挿入可能となっている。
【0060】
挿入凸部104の高さは、配線110の厚みよりも高くなるように形成されている。したがって、挿入凸部104を挿入孔106に挿入し、配線110が電子部品94に接触した状態では、図4(B)及び図5(B)に示すように、挿入凸部104の上部が挿入孔106(配線110の上面)から突出して、突出部116を構成する。
【0061】
図6(A)及び(B)に示すように、フレキシブル基板88が電子部品94に接合された状態では、突出部116がかしめられて拡径されており、拡径部118が構成されている。拡径部118は、配線110の接続部110Cと部分的に重なっており、いわゆるアンカー効果によって電子部品94と拡径部118とにより配線110が挟まれることで、フレキシブル基板88が電子部品94に対し確実に固定されている。また、拡径部118が配線110の接続部110Cに接触することで、接続領域108において配線110と電子部品94との電気的な接続が確保されている。
【0062】
ここで、図3(A)及び(B)に示すように、電子部品94に接続する前段階におけるフレキシブル基板88には、フレキシブル基板本体90の、挿入孔106の周囲を含む配線110の片面(挿入孔106を電子部品94の挿入凸部104に挿入する際に、電子部品94と反対になる側の面)に、剥離可能な粘着材によって補強フイルム部材120が貼り付けられている。
【0063】
補強フイルム部材120は、配線110よりも高い剛性、強度を有しており、少なくとも、配線110どうしを繋ぐように貼り付けられている。特に本実施形態では、補強フイルム部材120が開口部112の両側においてフレキシブル基板本体90に貼り付けられている。すなわち、補強フイルム部材120は、配線110だけでなくフレキシブル基板本体90にも貼り付けられて配線110を補強している。
【0064】
さらに、補強フイルム部材120にも、配線110の挿入孔106と同位置に同形状の貫通孔122が形成されている。
【0065】
なお、補強フイルム部材120の材質は、配線110を補強できれば特に限定されない。ただし、フレキシブル基板88の検査時には、配線110の間の絶縁性を確認する場合があるため、この検査を可能とするためには、少なくとも補強フイルム部材120は絶縁性を有していることが好ましい。
【0066】
次に、本実施形態のフレキシブル基板88を電子部品94に接合する方法について説明する。
【0067】
図3(A)及び(B)に示すように、フレキシブル基板本体90には、開口部112における配線110どうしを繋ぎ、さらに、開口部112の両側部分のフレキシブル基板本体90の間に掛渡されるようにして、剥離可能な接着剤で補強フイルム部材120を貼り付ける。なお、このように補強フイルム部材120を貼り付けた時点では、配線110に挿入孔106は形成されておらず、補強フイルム部材120にも貫通孔122は形成されていない。
【0068】
そこで、補強フイルム部材120を貼り付けた後、配線110の挿入孔106と補強フイルム部材120の貫通孔122とを同時に形成する。このとき、補強フイルム部材120によって配線110が補強されているので、穿孔位置がすれたり、配線110が破断したりすることが防止される。
【0069】
次に、図4(A)及び(B)に示すように、電子部品94の挿入凸部104を配線110の挿入孔106に挿入する。このとき、本実施形態のフレキシブル基板88では、配線110の接続領域108部分(開口部112から露出した部分)が、剛性、強度の高い補強フイルム部材120を貼り付けることで補強されているので、挿入孔106の位置精度や寸法精度、挿入凸部104の位置精度や寸法精度、挿入孔106と挿入凸部104との位置あわせ精度の不足等によって挿入孔106と挿入凸部104とがずれて、配線110と挿入凸部104とが接触しても、配線110の変形が抑制される。配線110の破断や破壊を生じることもないので、挿入凸部104と配線110との電気接続の信頼性を損なうことなく、正確且つ確実に挿入凸部104を挿入孔106に挿入して、接続作業を行うことが可能になっている。
【0070】
なお、挿入凸部104の高さは配線110の厚みよりも高くされているので、挿入凸部104を挿入孔106に挿入すると、挿入凸部104の上部は挿入孔106(配線110上面)よりも上方に位置しており、突出部116を構成している。
【0071】
このようにして挿入凸部104を挿入孔106に挿入した後、図5(A)及び(B)に示すように、補強フイルム部材120のみを配線110及びフレキシブル基板本体90から除去する。補強フイルム部材120は剥離可能な接着剤で配線110及びフレキシブル基板本体90に貼り付けられているので、たとえば、単に補強フイルム部材120を引っ張るだけで、用意に除去できる。
【0072】
補強フイルム部材120を除去した後は、挿入凸部104の上部が挿入孔106(配線110の上面)から突出して突出部116となっている。図6(A)及び(B)に示すように、この突出部116をかしめ等の手段によって拡径して拡径部118を構成する。これにより、断面積が拡大された拡径部118と電子部品94とで配線110を挟むので、いわゆるアンカー効果により、さらに確実に接続される。また、挿入凸部104と配線110との電気的接触面積も増える。
【0073】
なお、上記では、補強フイルム部材120を剥離可能な接着剤で配線110及びフレキシブル基板本体90に貼り付けた構成を挙げているが、このような接着剤に代えて、紫外線の照射や、加熱や冷却、薬剤の添加などにより粘着性が低下する粘着剤を用いて補強フイルム部材120を貼り付けておき、挿入孔106に挿入凸部104を挿入した後に加熱や冷却、薬剤の添加などを行い、粘着力を低下させてフイルムを剥がしても良い。
【0074】
紫外線または活性エネルギー線の照射によって粘着力が低下する材料としてはアクリル系の紫外線硬化型樹脂がある。さらには、紫外線の照射、活性エネルギー線の照射、または加熱によって粘着力が低下する粘着材の材料としては、光重合性を有するプレポリマーおよびモノマーの少なくともいずれか一方に、必要に応じて他の単官能または多官能性モノマー、各種ポリマー、光重合開始剤(アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール類、チオキサントン類など)、増感剤(アミン類、ジエチルアミノエチルメタクリレートなど)などを配合した樹脂組成物が用いられる。ここで光重合性プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリエステルウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリオールアクリレートなどがあり、光重合性モノマーとしては、単官能アクリレート、2官能アクリレート、3官能以上のアクリレートなどがある。光重合性を有するプレポリマーまたはモノマーとしては、上記の他にホスファゼン系樹脂も用いることができるが、この場合には光重合開始剤や増感剤を添加する必要はない。
【0075】
また、このような剥離可能な接着剤を用いることなく、補強フイルム部材120の物性によって除去可能な構成としてもよい。たとえば、加熱や冷却、薬剤の添加などにより収縮する材料を補強フイルム部材120として用いることで、接続後に加熱や冷却、薬剤の添加などを行って補強フイルム部材120を収縮させ、配線110やフレキシブル基板本体90との粘着面が剥離するようにしても良い。
【0076】
加熱によって収縮する材料としては、ポリエステルフイルムや、OPS(登録商標)、PET、PVCフイルム、ヒシレックス(登録商標)、DXLフイルム(商品名)、ヒシペット(登録商標)、ポリ塩化ビニル材料、ヒシチューブ(登録商標)などが挙げられる。
【0077】
更には、加熱や溶剤の添加などにより溶融する材料を用いて補強フイルム部材120を構成し、除去時には、加熱や用材転化による溶融するようにしてもよい。
【0078】
また、上記では、挿入凸部104の、挿入孔106(配線110の上面)から突出した部分(突出部116)をかしめて拡径部118を構成することで、接続をより確実にすると共に、電気的接触面積を増大させた例を挙げたが、これに代えて、たとえば、突出部116と配線110とをハンダ付けあるいは無電解メッキで接続しても、同様に接続を確実にすると共に、接続部の電気的接触面積を増やすことができる。
【0079】
さらに上記では、挿入凸部104が挿入孔106の外形と略等しいか、もしくは挿入孔106の外形よりも一回り小さくなるように形成されて、挿入孔106に挿入可能となっている構成を例に挙げたが、たとえば、挿入凸部104の断面積を挿入孔106の開口断面積よりも僅かに大きくし、挿入孔106を押し広げるようにして挿入凸部104を挿入する構成にも適用可能である。この構成では、挿入凸部104を挿入孔106に挿入すると、挿入孔106の周囲で配線110が縮まるようにして挿入凸部104に密着するため、電気的な接続をより確実にすることが可能である。そして、このような構成では、挿入孔106に挿入凸部104を挿入するときに配線110に大きな力が作用すうことがあるが、補強フイルム部材120で補強しているため、挿入時の配線110の変形や破断をより効果的に抑制することができる。
【0080】
加えて、上記では、フレキシブル基板88をヘッドユニット66のドライバ基板84に接続した構成を例に挙げたが、フレキシブル基板88の接続対称としては、これに限定されず、たとえば、コントロール基板86であってもよい。さらに、ヘッドユニット66の内部の、たとえば圧電素子の個別配線へのフレキシブル基板88の接続や、ヘッドユニット66と外部の部材との間の電気的な接続にフレキシブル基板88を使用可能である。特に、ノズルピッチを狭くした構造では、これに対応して圧電素子の間隔も狭くなるため、このような圧電素子の個別配線へのフレキシブル基板の接続に、本発明を適用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態の画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の画像形成装置においてヘッドユニットを示す概略斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態のフレキシブル基板を電子部品に接合する工程を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のフレキシブル基板を電子部品に接合する工程を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のフレキシブル基板を電子部品に接合する工程を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態のフレキシブル基板を電子部品に接合した状態を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10 画像形成装置
12 給紙搬送部
14 処理液塗布部
16 画像形成部
18 インク乾燥部
20 画像定着部
21 排出部
22 積載部
24 給紙部
26 ローラ対
28 搬送部
30 処理液塗布ドラム
32 保持部材
34 中間搬送ドラム
36 画像形成ドラム
38 インク乾燥ドラム
40 画像定着ドラム
42 処理液塗布装置
44 処理液乾燥装置
46 貯留部
48 グラビアローラ
50 ゴムローラ
54 熱風ノズル
56 IRヒーター
58 中間搬送部
64 インクジェットラインヘッド
66 ヘッドユニット
68 回転軸
70 中間搬送部
72 熱風ノズル
74 IRヒーター
76 中間搬送部
78 加熱ローラ
80 定着ローラ
82 ヘッド筐体
84 ドライバ基板
86 コントロール基板
88 フレキシブル基板
90 フレキシブル基板本体
94 電子部品
104 挿入凸部
106 挿入孔
108 接続領域
110 配線
110C 接続部
112 開口部
116 突出部
118 拡径部
120 補強フイルム部材
122 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するフレキシブル基板本体と、
前記フレキシブル基板本体上に形成された配線と、
前記配線の一部として構成され、フレキシブル基板本体からはみ出すことで相手側部材との接続用とされる接続部と、
前記接続部どうし又は接続部と前記フレキシブル基板本体とを繋ぐように貼り付けられた補強部材と、
前記接続部及び前記補強部材を貫通して形成され、前記相手側部材に設けられた挿入凸部が挿入される挿入孔と、
を有するフレキシブル基板。
【請求項2】
前記補強部材が、紫外線の照射、活性エネルギー線の照射、加熱、冷却及び薬剤添加のすくなくとも1つにより収縮する収縮フイルム部材とされている請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記補強部材が、紫外線の照射、活性エネルギー線の照射、加熱、冷却及び薬剤添加のすくなくとも1つにより溶融する溶融フイルム部材とされている請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記補強部材を前記接続部又は前記フレキシブル基板本体に粘着させると共に、紫外線の照射、活性エネルギー線の照射、加熱、冷却及び薬剤添加のすくなくとも1つにより粘着性が低下する粘着剤を有する請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブル基板を前記相手側部材に接合するフレキシブル基板接合方法であって、
前記挿入孔に前記挿入凸部を挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に前記補強部材を除去する除去工程と、
前記除去工程の後に前記挿入凸部と前記配線とを接合する接合工程と、
を有するフレキシブル基板接合方法。
【請求項6】
請求項5に記載のフレキシブル基板接合方法であって、
前記挿入凸部が前記挿入孔から突出する高さを有し、
前記接合工程において、前記挿入凸部の前記挿入孔から突出した部分を拡径するフレキシブル基板接合方法。
【請求項7】
前記接合工程において、前記配線と前記挿入凸部とをハンダ又はメッキにより接合する請求項5に記載のフレキシブル基板接合方法。
【請求項8】
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッド本体と、
前記液滴吐出ヘッド本体に設けられた回路基板と、
前記回路基板に接合された請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブル基板と、
を有する液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
記録シートを搬送する搬送装置と、
前記搬送装置で搬送される前記記録シート上に液滴を吐出する請求項8に記載の液滴吐出ヘッドと、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−239209(P2009−239209A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86721(P2008−86721)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】