説明

ブッシュタイプ防振ゴムの取付方法および防振ブッシュならびに、防振ブッシュを用いたトルクロッド

【課題】ブッシュタイプの防振ゴムの縮径変形工程および縮径変形させた防振ゴムの、剛性外筒への入れ込み工程を不要として、作業工数等の増加のおそれを取り除くとともに、防振ゴムの、現場施工による取付けを十分簡易なものとした、ブッシュタイプ防振ゴムの取付方法を提供する。
【解決手段】中央貫通孔1を有するブッシュタイプ防振ゴム2の、前記中央貫通孔1を隔てて一対の押込み部材5を配設するとともに、両押込み部材5の、相互に対向して位置するテーパ面もしくは球状面を前記中央貫通孔1内へ押込むことで、ブッシュタイプ防振ゴム2を拡径変形させて、ブッシュダイプ防振ゴム2の外周面を、該防振ゴムの周りに配設した囲繞ブラケット4の内周面に密着させるにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒状をなすブッシュタイプ防振ゴムの取付方法、この方法によって構成してなる防振ブッシュおよび、その防振ブッシュを用いたトルクロッドに関するものであり、とくには、ブッシュタイプ防振ゴムの組付け工程数ないしは組付け工数を大きく低減できる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のブッシュタイプ防振ゴムの取付方法としては、たとえば、特許文献1,2等に開示されたものがあり、これらの方法は、剛性内筒を予め配設した、または、剛性内筒が事後的に挿入配置されるブッシュタイプ防振ゴムを縮径変形させるとともに、その防振ゴムを、剛性外筒内へ、縮径状態で入れ込むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−193004号公報
【特許文献2】特開2007−308016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、これらの従来技術にあっては、ブッシュタイプ防振ゴムの取付けに当って、その防振ゴムの縮径変形工程および、縮径変形させた防振ゴムの、剛性外筒への入れ込み工程が必須となるため、作業工程数ないしは作業工数の増加が否めず、その上、ブッシュタイプの防振ゴムを、部品点数の低減等を企図して、たとえば、自動車車体の組立て現場等にて、所定の剛性外筒に直接的に取付けることは実質的に不可能であった。
【0005】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決すことを課題とするものであり、それの目的とするところは、ブッシュタイプの防振ゴムの縮径変形工程および縮径変形させた防振ゴムの、剛性外筒への入れ込み工程を不要として、作業工数等の増加のおそれを取り除くとともに、防振ゴムの、現場施工による取付けを十分簡易なものとした、ブッシュタイプ防振ゴムの取付方法、および、その方法によって構成した防振ブッシュ、ならびに、該防振ブッシュを適用したトルクロッドを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、中央貫通孔を有するブッシュタイプの防振ゴムは、それに所要の防振機能を発揮させるに当っては、多くは、中央貫通孔内に挿通したボルトの締め込み等によって防振対象物に取付けられる点に着目してなされたものであり、これがため、この発明の、ブッシュタイプ防振ゴムの取付方法は、中央貫通孔を有するブッシュタイプ防振ゴムの前記中央貫通孔を隔てて一対の押込み部材を配設するとともに、両押込み部材の、相互に対向して位置するテーパ面もしくは球状面を、ボルトの締め込み等によって、前記中央貫通孔内へ押込むことで、ブッシュタイプ防振ゴムの軸線方向の圧縮変形に併って、その防振ゴムを拡径変形させ、これにより、ブッシュタイプ防振ゴムの外周面の、少なくとも、周方向の複数個所を、該防振ゴムの周りに配設した剛性の囲繞ブラケット、たとえば剛性外筒の内周面に、前記中央貫通孔の中心軸線側への圧縮変形状態で密着させるにある。
【0007】
この場合、両押込み部材の押込み変位は、たとえば、前記中央貫通孔に挿通させて、もしくは、ブッシュタイプ防振ゴムの外側に配置して、該中央貫通孔の中心軸線方向に延在させたボルトの締め込みによって行わせることが、防振ゴムに所要の防振機能を発揮させるための、その防振ゴムの最終取付け工程と、押込み部材の押込み変位工程とをともに同時に行わせる上で好ましい。
【0008】
また、一対の押込み部材のそれぞれの、前記中央貫通孔内への押込み量は、対向する両押込み部材の相互の当接によって、または、前記中央貫通孔内に予め配置した内筒と、各押込部材との当接によって特定することが、防振ゴムの拡径変形量を、簡易に所定のものとする上で好ましい。
【0009】
また、この発明の防振ブッシュは、中央貫通孔を有する一以上のブッシュタイプ防振ゴムを、該中央貫通孔を隔てて配置した一対の押込み部材の、相互に対向するテーパ面もしくは球状面の、前記中央貫通孔への押込み変位によって拡径変形させて、ブッシュ防振ゴムの外周面の、周方向の複数個所を、該防振ゴムの周りに設けた、剛性部材からなる囲繞ブラケットの内周面に、前記中央貫通孔の中心軸線側への圧縮変形状態で密着させてなるものである。
【0010】
かかる防振ブッシュにおいて好ましくは、囲繞ブラケットの中心軸線方向の両端に、囲繞ブラケットの内周面側へ突出してブッシュタイプ防振ゴムの端面に掛合する抜け止め部を設ける。
【0011】
ところで、ブッシュタイプ防振ゴムは、一の囲繞ブラケットに対し、二個もしくは三個以上を、同一軸線上に整列させて配置することができ、三個以上の防振ゴムを配置する後者の場合は、隣接するそれぞれのブッシュタイプ防振ゴム間に、ブッシュタイプ防振ゴムの各中央貫通孔内へ入り込む、一もしくは二個のテーパ状部材もしくは球状面部材を配設して、各個の防振ゴムの所要の拡径変形を担保する。
【0012】
なおここで、一対の押込み部材の押込量は、両押込み部材およびブッシュタイプ防振ゴムに貫通させた、または、一方の押込み部材に貫通させる一方、他方の押込み部材に先端ねじ部で螺合させたボルトの締み込み量によって特定することが、該ボルトを、防振ブッシュの所定の組付けにも利用できる利点がある。
【0013】
さらに、この発明のトルクロッドは、振動発生側部材および、振動伝達側部材に、それぞれの弾性部材を介して連結されるものであって、少なくとも一方の弾性部材を、先に述べたいずれかの防振ブッシュとしたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の、ブッシュタイプ防振ゴムの取付方法では、中央貫通孔を有するブッシュタイプ防振ゴムを、その中央貫通孔内へ入り込む一対の押込部材で軸線方向に圧縮変形させることで、ゴムの非圧縮性の下で拡径変形させ、この結果として、防振ゴムの外周面を、それの周りに配設した囲繞ブラケットの内周面に、少なくとも、周方向の複数個所で密着させることで、該防振ゴムを、現場施工で剛性の囲繞ブラケットに簡易に取付けできることはもちろん、たとえば、中央貫通孔内へ剛性内筒を挿入等したブッシュタイプ防振ゴムを縮径変形させる工程および、縮径状態の防振ゴムを剛性外筒内へ入れ込む工程等を不要として囲繞ブラケットに取付けることで、作業工程数および作業工数を有効に低減させることができ、剛性の囲繞ブラケットは、ブッシュタイプ防振ゴムを、それの中央貫通孔の中心軸線側への圧縮変形状態で、十分強固に保持することができる。
【0015】
ところで、この方法において、両押込み部材の押込み変位を、たとえば、両押込み部材および、防振ゴムの中央貫通孔に貫通させて、該中央貫通孔の中心軸線方向に延在させたボルトの締め込みによって行う場合は、押込み部材の押込み変位と、防振ゴムの、振動発生側もしくは振動伝達側の部材へのボルトによる取付けとを同時に行うことができ、作業工数等の一層の低減を図ることができる。
【0016】
なお、一対の押込み部材のそれぞれの、前記中央貫通孔内への押込み量を、対向する両押込み部材の相互の当接によって、または、前記中央貫通孔内の所定位置に予め配設した内筒と、各押込部材との当接によって特定するときは、防振ゴムの拡径変形量、ひいては、防振ゴムによってもたらされる弾性特性を一定のものとして、構成される防振ブッシュの性能を常に均質なものとすることができる。
【0017】
この発明の防振ブッシュでは、一対の押込み部材のテーパ面もしくは球状面をブッシュタイプ防振ゴムの中央貫通孔内へ押込んで該防振ゴムを拡径変形させ、これにより、該防振ゴムを剛性の囲繞ブラケットで保持することで、ブッシュタイプ防振ゴムの取付方法について前述したところと同様の効果をもたらすことができる。
なおここで、ブッシュタイプ防振ゴムの所要の拡径変形量をもたらすための、該防振ゴムの、中心軸線方向の圧縮率は、たとえば、元の軸線方向長さに対して3〜50%程度とすることができ、とりわけ、3〜10%が好適である。
すなわち、3%以上であれば、すぐれた耐引抜け力を得ることができ、一方、50%以下であれば、特性、耐久性の悪化をまねくおそれがない。なかでも10%以下が特に好適である。
いいかえれば、3%未満では、十分な耐引抜け力を確保することが難しく、一方、50%を超えると、特性および耐久性等の大きな低下が否めない。
【0018】
このような防振ブッシュにおいて、囲繞ブラケットの中心軸線方向の両端に、それの内周面側へ突出して、拡径姿勢のブッシュタイプ防振ゴムの端面に掛合する抜け止め部を、全周にわたって、または、周方向に間隔をおいた複数個所に設けたときは、それほど大きな入力はないものの、防振ゴムの、囲繞ブラケットの軸線方向への意図しない抜け出しを有効に防止することができる。
【0019】
ここにおいて、ブッシュタイプ防振ゴムは、一個だけを配設できることはもちろんであるが、二個のブッシュタイプ防振ゴムを同一の軸線上に整列させて配設することもでき、これらのいずれの場合にあっても、一対の押込み部材を中央貫通孔内へ押込むことで、各個の防振ゴムを、所期した通りに確実に拡径変形させることができる。
【0020】
これに対し、三個以上のブッシュタイプ防振ゴムを同一の軸線上に整列させて配設する場合は、各個の防振ゴムを所期した通りに拡径変形させるため、隣接するそれぞれの防振ゴム間に、それらの各中央貫通孔内へ入り込むテーパ状部材もしくは球面状部材を配設することが好ましい。
なおここで、テーパ状部材等は、一個で、隣接するそれぞれの防振ゴムの各中央貫通孔内へ入り込む形態を有するものとすることができる他、二個の背中合わせ配置で、隣接するそれぞれの防振ゴムの各中央貫通孔内へ入り込む形態を有するものとすることもできる。
そしてこの場合にあっても、たとえば上下に対をなす押込み部材の、前記中央貫通孔への所定の押込み変位に基き、各個のブッシュタイプ防振ゴムを、前記テーパ状部材等の作用と相俟って、所期した通りに拡径変形させることができる。
【0021】
そしてまた、一対の押込み部材の押込量を、両押込部材に貫通させて先端部にナットを螺させたボルト、または、一方の押込み部材に貫通させる一方、他方の押込み部材に先端ねじ部で螺合させたボルトの締め込み量によって特定してなるものとしたときは、前記ボルトを、防振ブッシュの、振動発生側部材および振動伝達部材の少なくとも一方への組付けにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の方法および防振ブッシュの実施形態を示す縦断面図である。
【図2】他の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】さらに他の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】トルクロッドの実施形態を示す要部分解斜視図である。
【図5】トルクロッド他の実施形態を示す要部分解斜視図である。
【図6】トルクロッドの、車体側部材への連結側を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すブッシュタイプ防振ゴムの取付方法および防振ブッシュは、中央貫通孔1を有するブッシュタイプ防振ゴム2の二個を同一の軸線上に整列させて配設した場合を示すものであり、図に示すところでは、二個の防振ゴム2のそれぞれは、たとえば、各個の中央貫通孔1内に配置したフランジ付きの剛性内筒3に、加硫接着、接着剤接着その他によって固着等されて位置決め保持されている。
【0024】
このような二個の防振ゴム2のそれぞれは、剛性部材からなる囲繞ブラケット4の内側で、各個の中央貫通孔1を隔てて配置した一対の押込み部材5の、相互に対向して位置する両テーパ面もしくは球状面、図ではテーパ面を、たとえば、両押込み部材5および剛性内筒3のそれぞれに貫通させて配置したボルト6の締め込みによって前記中央貫通孔1内へ押し込み、これによって、両防振ゴム2を、軸線方向へともに等量ずつ圧縮変形させるとともに拡径変形させて、両ブッシュタイプ防振ゴム2の外周面の、少なくとも、周方向の複数個所、たとえば全周を、囲繞ブラケット4の内周面に、前記中央貫通孔1の中心軸線側への圧縮変形状態で密着させる。
【0025】
これによれば、両防振ゴム2は、囲繞ブラケット4に所定の力で摩擦係合して有効に抜け止めされることになるとともに、初期圧縮力の作用下での所要の弾性力の発揮に基き、内筒3と囲繞ブラケット4とが接近および離隔する方向の入力に対して、所期した通りの防振機能を発揮することができる。
【0026】
両防振ゴム2を、図1(b)に示すように囲繞ブラケット4に密着させてなる防振ブッシュ7において、好ましくは、囲繞ブラケット4の中心軸線方向の両端に、内周面側へ突出して、各ブッシュタイプ防振ゴム2の一方の端面に掛合する抜け止め部8を、周方向に間欠的に、もしくは全周にわたって設けて、防振ゴム2の軸線方向の入力に対する、その防振ゴム2の、意図しない抜け出しを十分に防止する。
【0027】
ところで、両防振ゴム2の、上述したような圧縮変形に伴う拡径変形量は、図示のように、内筒3に貫通させたボルト6、または、囲繞ブラケット4の外側で、前記中央貫通孔1の中心軸線方向に延在させた他のボルトの締め込み量を調整することによってコントロールできることはもちろんであるが、上記拡径変形量のばらつき等を取り除くためには、一対の押込み部材5の各々を、図1(b)に示すように、中央貫通孔1内に予め配設した剛性内筒3の各端面に当接する位置まで、中央貫通孔1内へ押込み変位させることが好ましく、これによれば、一定品質の防振ブッシュを常に確実に製造することができる。
【0028】
なおここで、剛性内筒3を配設することに代えて、図では、上下に対をなす一対の押込み部材5の少なくとも一方に、対向する押込み部材5側へ突出する筒状部材を一体的に形成し、防振ゴム2の中央貫通孔1内への押込み変位に当って、一方の押込み部材5の、筒状突部への当接、または、両筒状突部どうしの当接によって押込み変位量を特定する場合にもまた、上述したと同様の効果をもたらすことができる。
【0029】
図2に示す実施形態は、ブッシュタイプの防振ゴム2を一個だけとするとともに、その防振ゴム2の中央貫通孔1の延在方向の中間部に、所定の軸線方向長さを有する剛性内筒3を、たとえば、加硫接着その他によって固着させ、または、所要の摩擦力の作用下で押込み配置したものである。
【0030】
これは、剛性部材からなる囲繞ブラケット4の内側で、中央貫通孔1を隔てて配置した一対の押込み部材5の、相互に対向するテーパ面を、たとえば、押込み部材5の中央部に貫通する、図示しないボルト等の作用下で、中央貫通孔1内へ押込むことによって防振ゴム2を拡径変形させて、その防振ゴム2の外周面を、たとえば周方向の複数個所で囲繞ブラケット4の内周面密着させるものであり、これらのことによって、図2(b)に示すような防振ブッシュ9が構成されることになる。
なおこの防振ブッシュ9でもまた、囲繞ブラケット4の軸線方向の両端に、内周面側へ突出して、ブッシュタイプの防振ゴム2のそれぞれの端面に掛合する抜け止め部8を設けることで、防振ゴム2の、該ブラケット4からの不測の抜け出しを防止している。
そしてこの図に示すところでもまた、押込み部材5の押込み変位量を内筒3への当接によって規制している。
【0031】
図3は四個のブッシュタイプ防振ゴム2を同一の軸線上に整列させて配設した場合を示すものであり、これは、対をなす押込み部材5の中央貫通孔1内への押込み変位に当って、各個の防振ゴム2を十分均等に拡径変形させるため、対をなす押込み部材のそれぞれにテーパ面を設けることに加え、相互に隣接するブッシュタイプ防振ゴム2間に、ブッシュタイプ防振ゴム2の各中央貫通孔1内へ入り込む一個もしくは二個、図では一個の、たとえば、算盤玉状のテーパ状部材10を配設したものである。
なおここで、各個のテーパ状部材10は、それらの各々を図の上下方向に二分割した二個のテーパ状部材とすることもでき、また、図示の各テーパ状部材10は、一個もしくは二個の球面状部材とすることもできる。
ところで、図3に示すところでは、防振ゴムの中央貫通孔1内へ入り込む一対の押込み部材5および各個のテーパ状部材10のそれぞれは、各ブッシュタイプ防振ゴム2が所定量拡径変形された状態で相互に当接することになるそれぞれの筒状突部5a,10aを有する。
【0032】
そして、ここにおける各個のブッシュタイプ防振ゴム2もまた、たとえば、対をなす押込み部材5およびテーパ状部材10のそれぞれの、中央部に貫通させたボルト等の締め込みに基く、中央貫通孔1内への押込み変位によって、所要に応じて拡径変形させることができる。
【0033】
なお、以上に述べた実施形態において、ボルト等の締め込みに基いて各個の防振ゴム2を拡径変形させるときは、そのボルト等を、ブッシュタイプ防振ゴム2の外側で、その防振ゴム2の中央貫通孔1の中心軸線方向に延在させる場合は別として、該中央貫通孔1内で、それの中心軸線方向に延在させる場合は、一方の押込み部材5に貫通させたボルトの先端部分の雄ねじ部を、他方の押込み部材5に形成した雌ねじ部に螺合させることもでき、これによれば、ボルトの雄ねじ部に螺合させるナットの準備を不要としてなお、各個の防振ゴム2を、所期した通りに拡径変形させることができる。
【0034】
ところで、図3に示す実施形態においてもまた、各個の防振ゴム2の外周面を囲繞ブラケット4の内周面に密着させてなる防振ブッシュにおいて、囲繞ブラケット4の軸線方向の両端に、防振ゴム2の端面に、部分的にまたは全周にわたって掛合する抜け止め部8を設けることが好ましい。
【0035】
このような防振ブッシュは、ブッシュタイプ防振ゴム2の拡径変形をもたらすボルト等による締め込みに際して、そのボルト等で、振動発生側部材もしくは、振動伝達側部材に取付けることで、防振ブッシュの現場組付け等を少ない作業工数の下で簡易に行うことができる。
【0036】
図4および5は、それぞれの弾性部材を介して、振動発生側部材および振動伝達側部材のそれぞれに連結されるトルクロッドの一方の端部分に、ブッシュタイプ防振ゴムを上述したようにして取付けて一方の弾性部材とする場合を、多くは、トルクロッドの一方の端部分に固定ないしは固着されることになる囲繞ブラケットを省いて示す要部分解斜視図である。
【0037】
ここで図4に示すものは、トルクロッド21の連結部材22の一方の端部分の板状部22aに貫通させて、所定の長さの剛性内筒3を固定ないしは固着等するとともに、この内筒3の周りに二個のブッシュタイプ防振ゴム2のそれぞれを、接着剤の介在下で、または、接着剤を介在させることなく、中央貫通孔1をもって嵌め合わせ、そして、各個の中央貫通孔1を隔てて配置した一対の押込み部材5の、相互に対向するテーパ面を各中央貫通孔1内へ押込み変位させることで、それぞれの防振ゴム2を十分均等に拡径変形させて囲繞ブラケット4に緊密に内接させることで、トルクロッド21の一方の弾性部材を構成するものであり、このトルクロッド21では、一対の押込み部材5の押込み変位をもたらすボルト等によって、トルクロッド21を振動発生側もしくは振動伝達側の部材に連結することで、そのボルト等を、防振ゴム2の取付け部材と、トルクロッド21の連結部材とに兼用することができる。
なお、図示のトルクロッド21の他方の端部分には他の防振ブッシュ等を圧入その他によって組付けることで、他方の弾性部材とすることができる。
【0038】
そして、図5に示すものは、トルクロッド31の連結部材32を、一枚の金属板の塑性加工品になる、ゴミ掴みトング様のU字状成形品にて形成し、連結部材22の一方の端部分となる両遊端分に、対をなすそれぞれの押込み部材5を、相互の対向姿勢で固定ないしは固着等し、そして、連結部材32の両遊端部間に、図2に示すように、防振ゴム2の中央貫通孔1内に剛性の内筒3を予め配設した一個のブッシュタイプ防振ゴム2を、両押込み部材5と同心に配設し、その後、一方の遊端部側から、それぞれの押込み部材5および防振ゴム2に貫通させたボルト等の締め込みによって、両押込み部材5の対向するテーパ面を中央貫通孔1内へ押込み変位させて防振ゴム2の外周面を、囲繞ブラケット4の内周面に密着させることでトルクロッド31の一方の弾性部材を構成するものであり、このトルクロッド31では、連結部材32がU字状成形品にて形成されていて他方の端部分には筒状成形部が設けられていることから、たとえば、トルクロッド31の一方の端部分に防振ゴム2を上述したように取付けるに際して、連結部材32の他方の端部分の筒状成形部内に所要の防振ブッシュ等を配置したときは、上述防振ゴム2の取付けと同時に、該防振ブッシュ等の他方の弾性部材を筒状成形部内に締付け固定することができる。
そしてこのトルクロッド31でもまた、一対の押込み部材5の押込み変位をもたらすボルト等によって、トルクロッド31を振動発生側もしくは振動伝達側の部材に連結することで、そのボルト等を、他方の弾性部材の締付け固定のみならず、防振ゴム2の取付部材および、トルクロッド31の連結部材にも兼用することができる。
【0039】
図6は、振動伝達側部材の一例としてのサスペンションメンバーへのトルクロッドの連結側を示す斜視図である。
図に外輪郭を仮想線で示すサスペンションメンバー41に対し、たとえば、車体組立ラインの現場施工で、図4に例示するような防振ゴム2の取付けと、トルクロッド21の一端部分の連結とを同時に行う場合は、はじめに、トルクロッド21の連結部材22に設けた剛性内筒3を、サスペンションメンバー41に形成した開口41aおよび、サスペンションメンバー41に一体的に設けた囲繞ブラケット4の開口4a内へ順次に差し込んだ状態で、連結部材22の、図では上下の両側から、各個の防振ゴム2を内筒3に嵌め合わせ配置し、次いで、それぞれの防振ゴム2の中央貫通孔1を隔てて、一対の押込み部材5を、テーパ面の相互の対向姿勢で配置する。
この場合、拡径変形前の両防振ゴム2は、囲繞ブラケット4の軸線方向長さより長い中心軸線方向のトータル長さを有することになるので、サスペンションメンバー41の、図の厚み方向の寸法との関連の下で、各個の防振ゴム2が、サスペンションメンバー41の頂壁または底壁から、図6(a)に示すように突出して位置することもあり得る。
この一方で、サスペンションメンバー41の厚み寸法が大きく、頂壁と底壁とが十分大きく離隔するときは、連結部材22の一端部分の、それぞれの開口41a,4aへの差し込みに先だって、剛性内筒3に各個の防振ゴム2を予め嵌め合わせることも可能であり、この場合、対をなす押込み部材5のそれぞれをもまた予め配設可能としたときは、サスペンションメンバー41の頂壁および底壁には、後述するボルト等の挿通のための小径の孔を穿設するだけで足りることになる、
【0040】
そしてその後は、ボルト42を、座金43を介して、それぞれの押込み部材5および、それぞれの防振ゴム2の中央貫通孔1内へ挿入して、そのボルト42を、図示しない座金を介してボルト42の雄ねじ部に螺合させた、これも図示しないナットに対して締め込んで、それぞれの防振ゴム2を、押込み部材5の所要の押込み変位に基いて、十分均等に拡径変形させて、図6(b)に示すように、両防振ゴム2の外周面を、サスペンションメンバー41に一体的に設けた囲繞ブラケット4の内周面に十分緊密に密着させることで、連結部材22の一端部分への防振ゴム2の取付けと、トルクロッド21の一端部分の、サスペンションメンバー41への連結とを同時に行うことができる。
以上この発明を図示の実施形態に基いて説明したが、対をなす押込み部材の相互に対向するテーパ面は、球状面に置換することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 中央貫通孔
2 ブッシュタイプ防振ゴム
3 剛性内筒
4a,41a 開口
4 囲繞ブラケット
5 押込み部材
5a,10a 筒状突部
6 ボルト
7,9 防振ブッシュ
8 抜け止め部
10 テーパ状部材
21,31 トルクロッド
22,32 連結部材
22a 板状部
41 サスペンションメンバー
42 ボルト
43 座金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央貫通孔を有するブッシュタイプ防振ゴムの、前記中央貫通孔を隔てて一対の押込み部材を配設するとともに、両押込み部材の、相互に対向して位置するテーパ面もしくは球状面を前記中央貫通孔内へ押込むことで、ブッシュタイプ防振ゴムを拡径変形させて、ブッシュダイプ防振ゴムの外周面の、少なくとも、周方向の複数個所を、該防振ゴムの周りに配設した囲繞ブラケットの内周面に密着させるブッシュタイプ防振ゴムの取付け方法。
【請求項2】
両押込み部材の押込み変位を、中央貫通孔の中心軸線方向に延在させたボルトの締め込みによって行わせる請求項1に記載のブッシュタイプ防振ゴムの取付け方法。
【請求項3】
一対の押込み部材のそれぞれの、前記中央貫通孔内への押込み量を、対向する両押込み部材の相互の当接によって、または、前記中央貫通孔内に予め配設した内筒と、各押込み部材との当接によって特定する請求項1もしくは2に記載のブッシュタイプ防振ゴムの取付け方法。
【請求項4】
中央貫通孔を有する一以上のブッシュタイプ防振ゴムを、該中央貫通孔を隔てて配置した一対の押込み部材の、相互に対向するテーパ面もしくは球状面の、前記中央貫通孔への押込み変位によって拡径変形させて、ブッシュタイプ防振ゴムの外周面の、周方向の複数個所を、該防振ゴムの周りに設けた、剛性部材からなる囲繞ブラケットの内周面に密着させてなる防振ブッシュ。
【請求項5】
前記囲繞ブラケットの中心軸線方向の両端に、内周面側へ突出してブッシュタイプ防振ゴムに掛合する抜け止め部を設けてなる請求項4に記載の防振ブッシュ。
【請求項6】
二個のブッシュタイプ防振ゴムを同一の軸線上に配設してなる請求項4もしくは5に記載の防振ブッシュ。
【請求項7】
三個以上のブッシュタイプ防振ゴムを同一軸線上に配設するとともに、それぞれのブッシュタイプ防振ゴム間に、ブッシュタイプ防振ゴムの各中央貫通孔内へ入り込むテーパ状部材もしくは球面状部材を配設してなる請求項4もしくは5に記載の防振ブッシュ。
【請求項8】
一対の押込み部材の押込量を、両押込部材に貫通させた、または、一方の押込部材に貫通させる一方、他方の押込み部材に先端ねじ部で螺合させたボルトの締め込み量によって特定してなる請求項4〜7のいずれかに記載の防振ブッシュ。
【請求項9】
振動発生側部材および振動伝達側部材に、それぞれの弾性部材を介して連結されるトルクロッドであって、
少なくとも一方の弾性部材を請求項4〜8のいずれかに記載の防振ブッシュとしてなるトルクロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−92854(P2012−92854A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237900(P2010−237900)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】