説明

ブラシレスモータ

【課題】駆動コイルを回路基板に直接位置決めできるブラシレスモータの提供。
【解決手段】扁平形振動モータは、支軸12を植設したステータ板11上で駆動空心コイルC〜Cを搭載した給電用フレキシブル基板13を持つステータ10と、駆動空心コイルC〜Cに面対向する環状マグネットを持ち支軸12にメタル軸受を介して回転自在に支持されたロータを備え、支軸12が通り、給電用フレキシブル基板13の回り止め穴13aに嵌め込んで位置決めした樹脂製のコイル位置決め用環状板19を有し、このコイル位置決め用環状板19の上面レベルが給電用フレキシブル基板19の上面と駆動空心コイルC〜Cの上端面との間に位置し、コイル位置決め用環状板13はその外周側において駆動空心コイルC〜Cの軸側凸面X〜Xが当接して当該駆動空心コイルC〜Cを位置決めする当り止め部W〜Wを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動モータなどに適用可能なブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平2003−111374においては、ベース部材上に珪素鋼板(磁性板),フレキシブル配線基板,複数個の駆動コイルを積層固定したステータと、駆動コイルに面対向するマグネットを持ちベース部材に回転自在に支持されたシャフトと一体的に回転するロータとを有するブラシレスモータが示されている。
【特許文献1】特開平2003−111374(図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、上記の駆動コイルをフレキシブル配線基板上に固定する組み付け作業は、駆動コイルの外径が数ミリ程度であるため、複数個の駆動コイルを治具の位置決め部に一旦セットして駆動コイルの端面に接着材を塗布した後、治具を天地反転させてフレキシブル配線基板に駆動コイルを位置決め固定するものであり、治具を用いた組み付け作業であるため、作業効率に遜色がある。
【0004】
そこで上記問題点に鑑み、本発明の課題は、駆動コイルを回路基板に直接位置決めできるステータを持つブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、支軸を植設したステータ板上で複数個の駆動コイルを搭載した回路基板を持つステータと、駆動コイルに面対向するマグネットを持ち支軸に軸受を介して回転自在に支持されたロータとを備えたブラシレスモータにおいて、回路基板の回り止め穴に嵌め込んで位置決めした樹脂製の環状部材を有し、この環状部材の上面レベルが回路基板の上面と駆動コイルの上端面との間に位置し、環状部材はその外周側において駆動コイルの外周面が当接して当該駆動コイルを位置決めする当り止め部を有して成る。
【0006】
ステータの組立においては、ステータ板上に回路基板を配置してその回り止め穴に環状部材を嵌め込んで位置決めした後、環状部材の当り止め部に駆動コイルの外周面を当接させることにより駆動コイルを位置決めできるため、作業効率の向上を図ることができる。また、この環状部材自身の位置決めが回路基板の回り止め穴で実現されているので、駆動コイルの位置決めがそれらを搭載する回路基板基準で達成でき、しかも部品点数の増加を招かずに済む。そして、環状部材の上面レベルが回路基板の上面と駆動コイルの上端面との間に位置しているため、ステータの厚みが従前のままで済む。
【0007】
位置決め機能を果たす当り止め部としては、例えば駆動コイル毎に複数本の突起などを環状部材の外周側に一体的に設けても構わないが、駆動コイルの中心の位置決めのみならず仮の回り止めをも図るには、駆動コイルの外周面のうち支軸に臨む軸側凸面に係合する凹面壁とするのが望ましい。凹面壁に軸側凸面が正しく合うよう駆動コイルの位置を微調節すれば、自ずと中心に対する位置決めも実現できるからである。
【0008】
この凹面壁はスペースの余裕があれば回路基板上の隣接する駆動コイル間へはみ出ていても構わないが、凹面壁を長く確保しつつ位置決め精度を高めるには、回り止め穴の範囲内にあるのが望ましい。ところが、逆に、駆動コイルの凸面部分が回路基板上から回り止め穴上にはみ出すことになるので、凸面部分の電気絶縁信頼性に問題が残る。
【0009】
そこで、環状部材は凹面壁では回路基板の上面と等しい面レベルで駆動コイルの下端面を受ける張出台部を有することが望ましい。駆動コイルの凸面部分の下面が回路基板に代わって環状部材の張出台部で覆われるので電気絶縁性を確保できる。
【0010】
環状部材は支軸を通したワッシャーが遊嵌するワッシャー収容穴を有しても良い。このワッシャー収容穴は貫通穴である場合は例えば底上げ用ワッシャーと供回りワッシャーを遊嵌する。環状部材の上面側で支軸が通る軸穴よりも大径に形成した段付き穴である場合は、供回りワッシャーだけを遊嵌すれば良く、支軸は軸穴に圧入すれば良いので、その段付き穴は供回りワッシャーに給油できる潤滑油溜まりを形成できる。
【0011】
駆動コイルは空心コイルであってその空心部分に接着材を注入して空心コイルを回路基板に固着して成ることが望ましい。
【0012】
回路基板がフレキシブル配線基板の場合は基板厚を薄くできる。そして、このブラシレスモータはロータに偏心錘を持つ振動モータに適用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動コイルを回路基板に直接位置決めできるブラシレスモータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1に係る扁平形振動モータを示す縦断面図、図2は同扁平形振動モータのステータを示す斜視図、図3は同ステータの組み付け斜視図、図4は同ステータに用いる給電用フレキシブル配線基板を示す平面図、図5(A)は同ステータに用いるコイル位置決め用環状板を示す平面図、図5(B)は図5(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図である。
【0016】
本例の扁平形(コイン形)振動モータは、図1に示す如く、ステータ10とロータ20とから成るブラシレスモータである。ステータ10は、円形の磁性材(珪素鋼鈑)のステータ板(ベースプレートないし底板)11と、このステータ板11の中央穴11aに一端が圧入して溶接固定した支軸12と、ステータ板11の上面に位置決めして融着等で貼り合せた給電用フレキシブル配線基板13と、支軸12に遊嵌した樹脂ワッシャー14,15と、支軸12の他端を圧入して下開口がステータ板11で塞がれたカップ状のハウジング16とを有する。
【0017】
ステータ板11はロータ20のデットポイントを回避するための3つのコギング発生用丸穴11bを有する。給電用フレキシブル配線基板13は、図2〜図4に示す如く、中心に支軸12が通るD形状の回り止め穴13aを有し、この回り止め穴13aの周りで45°の等間隔に配置した4つの駆動空心コイルC,C,C,Cと、回り止め穴13aの穴縁の直線縁S近傍に配置されて磁気を検知するホール素子を内蔵し駆動コイルC〜Cに対する励磁電流を切換えて回転磁界を形成するための駆動制御IC17と、この駆動制御IC17の外側に配置されたコンデンサ18とを搭載している。
【0018】
回り止め穴13aには、図5に示す如く、ワッシャー収容穴19aを持つ非円形のコイル位置決め用環状板19が嵌め込んで位置決めされている。この位置決め用環状板19は樹脂製で、その外周側において、直線縁Sと接合する平坦壁Fと、駆動空心コイルC〜Cの各外周面が対応して当接し駆動空心コイルC〜Cを位置決めする当り止め部W〜Wとを有する。当り止め部W〜Wは回り止め穴13aの穴縁に合致する円弧を切り欠いたものに相当し、駆動空心コイルC〜Cの外周面のうち支軸12に臨む軸側凸面X〜Xが浅く嵌め合う凹面壁となっている。当り止め部W〜Wの上端面は給電用フレキシブル配線基板13の上面より上方へ突出しているが、駆動空心コイルC〜Cの上端面より上方へは突出していない。駆動空心コイルC〜Cの空心部分に接着材(図示せず)が注入しており、駆動空心コイルC〜Cは給電用フレキシブル配線基板13に固着している。
【0019】
ロータ20は、軸受ホルダー部23aのメタル軸受21を介して支軸12に回転自在に支持され、駆動コイルC,C,C,Cと面対向する環状マグネット22を下側に持つロータ板(ヨーク)23と、このロータ板23の外周側に設けられた弧状の偏心錘24とを有する。
【0020】
ステータ10の組立作業においては、ステータ板11上に給電用フレキシブル配線基板13を配置してその回り止め穴13aにコイル位置決め用環状板19を嵌め込んで位置決めした後、コイル位置決め用環状板19の当り止め部W〜Wに駆動空心コイルC〜Cの軸側凸面X〜Xを寄せて当接させることにより駆動空心コイルC〜Cを位置決めできるため、作業効率の向上を図ることができる。また、このコイル位置決め用環状板19自身の位置決めが給電用フレキシブル配線基板13の回り止め穴13aで実現されているので、駆動空心コイルC〜Cの位置決めがそれらを搭載する給電用フレキシブル配線基板13基準で達成できる。そして、コイル位置決め用環状板19の上面レベルが駆動空心コイルC〜Cの上端面より上方へは突出していないため、ステータ10の厚みが従前のままで済む。
【0021】
特に本例の当て止め部W〜Wは凹面壁であるため、凹面壁に軸側凸面X〜Xが正しく合うよう駆動コイルの位置を微調節すれば、自ずと中心に対する位置決めも実現できる。
【実施例2】
【0022】
図6(A)は本発明の実施例2に係る扁平形振動モータのステータを示す平面図、図6(B)は図6(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図、図7は同ステータの組み付け斜視図、図8(A)は同ステータに用いるコイル位置決め用環状板を示す平面図、図8(B)は図8(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図である。なお、図6〜図8において図1〜図5に示す部分と同一部分には同一参照符号を付し、その説明は省略する。
【0023】
本例において実施例1と異なる点は、スタータ10′のうちコイル位置決め用環状板39の構成にある。実施例1のワッシャー収容穴19aは底上げ用の樹脂ワッシャー14と供回り用の樹脂ワッシャー15とを収容する貫通穴となっているが、本例のワッシャー収容穴39aは、支軸12が圧入する軸穴hとこの上側部分で大径の段付き穴Hとなっている。このため、底上げ用の樹脂ワッシャー14を用いずに済み、供回りの樹脂ワッシャー15だけを段付き穴Hに嵌め込めば良い。この段付き穴Hは供回りの樹脂ワッシャー15に給油する潤滑油溜まりとして利用することができ、摺動損失を低減できる。
【実施例3】
【0024】
図9(A)は本発明の実施例3に係る扁平形振動モータのステータを示す平面図、図9(B)は図9(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図、図10(A)は同ステータに用いるコイル位置決め用環状板を示す平面図、図10(B)は図10(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図である。なお、図9及び図10において図6〜図8に示す部分と同一部分には同一参照符号を付し、その説明は省略する。
【0025】
本例において実施例1,2と異なる点はステータ10″のうちコイル位置決め用環状板49の構成にあり、実施例2のコイル位置決め用環状板39を改良したものである。実施例2のコイル位置決め用環状板39においては、駆動空心コイルC〜Cの軸側凸面X〜Xが給電用フレキシブル基板13から回り止め穴13aへはみ出ているため、そのはみ出し部分の電気絶縁の信頼性が問題となる。
【0026】
そこで、本例のコイル位置決め用環状板49は、当て止め部W〜Wにおいて給電用フレキシブル基板13の上面と等しい面レベルで駆動空心コイルC〜Cの下端面を受ける張出台部M〜Mを一体的に有している。軸側凸面X〜Xの近傍部分が張出台部M〜Mで覆われるので電気絶縁性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1に係る扁平形振動モータを示す縦断面図である。
【図2】同扁平形振動モータのステータを示す斜視図である。
【図3】同ステータの組み付け斜視図である。
【図4】同ステータに用いる給電用フレキシブル配線基板を示す平面図である。
【図5】(A)は同ステータに用いるコイル位置決め用環状板を示す平面図、(B)は(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図である。
【図6】(A)は本発明の実施例2に係る扁平形振動モータのステータを示す平面図、(B)は(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図である。
【図7】同ステータの組み付け斜視図である。
【図8】(A)は同ステータに用いるコイル位置決め用環状板を示す平面図、(B)は(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図である。
【図9】(A)は本発明の実施例3に係る扁平形振動モータのステータを示す平面図、(B)は(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図である。
【図10】(A)は同ステータに用いるコイル位置決め用環状板を示す平面図、(B)は(A)中のb−b′線に沿って切断した断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10,10′,10″…ステータ
11…ステータ板
11a…中央穴
11b…コギング発生用丸穴
12…支軸
13…給電用フレキシブル配線基板
13a…回り止め穴
14,15…樹脂ワッシャー
16…ハウジング
17…駆動制御IC
18…コンデンサ
19,39,49…コイル位置決め用環状板
19a,39a…ワッシャー収容穴
20…ロータ
21…メタル軸受
22…環状マグネット
23…ロータ板
23a…軸受ホルダー部
24…偏心錘
,C,C,C…駆動空心コイル
F…平坦壁
H…段付き穴
h…軸穴
〜M…張出台部
S…直線縁
〜W…当り止め部
〜X…軸側凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸を植設したステータ板上で複数個の駆動コイルを搭載した回路基板を持つステータと、前記駆動コイルに面対向するマグネットを持ち前記支軸に軸受を介して回転自在に支持されたロータとを備え、
前記支軸が通り、前記回路基板の回り止め穴に嵌め込んで位置決めした樹脂製の環状部材を有し、この環状部材の上面レベルが前記回路基板の上面と前記駆動コイルの上端面との間に位置し、前記環状部材はその外周側において前記駆動コイルの外周面が当接して当該駆動コイルを位置決めする当り止め部を有して成ることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、前記当り止め部は、前記駆動コイルの前記外周面のうち軸側凸面と係合する凹面壁であることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のブラシレスモータにおいて、前記凹面壁は前記回り止め穴の範囲内に位置して成ることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のブラシレスモータにおいて、前記環状部材は前記凹面壁では前記回路基板の上面と等しい面レベルで前記駆動コイルの下端面を受ける張出台部を有することを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のブラシレスモータにおいて、前記環状部材は前記支軸を通したワッシャーが遊嵌するワッシャー収容穴を有することを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項6】
請求項5に記載のブラシレスモータにおいて、前記ワッシャー収容穴は前記上面側で前記支軸が通る軸穴よりも大径に形成した段付き穴であることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のブラシレスモータにおいて、前記駆動コイルは空心コイルであってその空心部分に接着材を注入して前記空心コイルを前記回路基板に固着して成ることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のブラシレスモータにおいて、前記回路基板はフレキシブル配線基板であることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のブラシレスモータにおいて、前記ロータは偏心錘を有することを特徴とする振動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−268196(P2009−268196A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112562(P2008−112562)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000177151)三洋精密株式会社 (143)
【Fターム(参考)】