説明

ブラシレス回転電機

【課題】励磁コア、励磁コイルの冷却性が向上した車両用ブラシレス交流発電機を得る。
【解決手段】この発明に係る車両用ブラシレス交流発電機は、回転子8は、シャフト7に固定された磁極鉄心12,13と、リヤブラケット2に固定されているとともに磁極鉄心13に挿入された円筒形状の励磁コア17と、この励磁コア17の小径部に導線が巻回された励磁コイル18とを有する車両用ブラシレス交流発電機であって、リヤブラケット2は、リヤ軸受6を収納した軸受収納部28の周囲に形成され冷却用ファン22の回転により生じた冷却風が通過する回転子用通気孔、及び回転子用通気孔を通過した冷却風を励磁コア17に向けて案内する通風路21を形成した案内部20を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばブラシレス交流発電機として車両に搭載されるブラシレス回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向した一対の第1及び第2のブラケットを有するケースと、このケースに固定された固定子と、それぞれのブラケットに軸受を介して両端部が回転自在に支持されたシャフトと、このシャフトに設けられた回転子と、前記シャフトに固定された冷却用ファンとを備え、前記回転子は、シャフトに固定された磁極鉄心と、前記第1のブラケットに固定されているとともに前記磁極鉄心に挿入された円筒形状の励磁コアと、この励磁コアの小径部に導線が巻回された励磁コイルとを有する自動車用交流発電機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-16559号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記自動車用交流発電機では、リヤブラケットにはダイオード、レギュレータにそれぞれ対面した部位に通気孔が形成されており、ファンの回転により生じた冷却風は、ダイオード、レギュレータを通過した後、通気孔を通じて励磁コア、励磁コイルに及んでおり、次のような問題点があった。
イ.冷却風は、ダイオード、レギュレータを冷却した後、励磁コア、励磁コイルを冷却しており、励磁コア、励磁コイルは、暖められた冷却風により、冷却されることになり、励磁コア、励磁コイルの冷却性が悪い。
ロ.冷却風は、通気孔を通過した後の内部空間に構造物がないため、内部空間で拡散してしまい、励磁コア、励磁コイルは、その冷却風で冷却されるので、励磁コア、励磁コイルの冷却性が悪い。
【0005】
この発明は、かかる問題点を解決することを課題とするものであって、励磁コア、励磁コイルの冷却性が向上したブラシレス回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るブラシレス回転電機は、対向した一対の第1及び第2のブラケットを有するケースと、このケースに固定された固定子と、それぞれのブラケットに軸受を介して両端部が回転自在に支持されたシャフトと、このシャフトに設けられた回転子と、前記シャフトに固定された冷却用ファンとを備え、前記回転子は、シャフトに固定された磁極鉄心と、前記第1のブラケットに固定されているとともに前記磁極鉄心に挿入された円筒形状の励磁コアと、この励磁コアの小径部に導線が巻回された励磁コイルとを有するブラシレス回転電機であって、前記第1のブラケットは、前記軸受を収納した軸受収納部の周囲に形成され前記冷却用ファンの回転により生じた冷却風が通過する回転子用通気孔、及び回転子用通気孔を通過した冷却風を励磁コアに向けて案内する通風路を形成した案内部を有している。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るブラシレス回転電機によれば、第1のブラケットは、軸受を収納した軸受収納部の周囲に形成され冷却用ファンの回転により生じた冷却風が通過する回転子用通気孔、及び回転子用通気孔を通過した冷却風を励磁コアに向けて案内する通風路を形成した案内部を有しているので、回転子用通気孔から第1のブラケット内に流入した外気からの冷却風は、励磁コアに向かって流れ、励磁コアを冷却するので、励磁コア及びこの励磁コアと一体の励磁コイルの冷却性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車両用ブラシレス交流発電機を示す側断面図である。
【図2】図1の車両用ブラシレス交流発電機をリヤブラケット側から視たときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1の車両用ブラシレス交流発電機(以下、交流発電機と略称する。)を図に基づいて説明する。
図1はブラシレス回転電機である交流発電機を示す側断面図、図2は図1の交流発電機をリヤブラケット2側から視た正面図である。
この交流発電機は、フロントブラケット1とリヤブラケット2とが通しボルト3により一体化されて構成されたケースと、このケースの内周壁に固定された固定子4と、フロントブラケット1に取付けられたフロント軸受5とリヤブラケット2に取付けられたリヤ軸受6とにより両端部がそれぞれ回転自在に支持されたシャフト7と、このシャフト7に設けられた回転子8と、リヤブラケット2に固定され固定子4と電気的に接続され交流出力を直流に変換する整流器9と、リヤブラケット2に固定され固定子4で生じる交流電圧を所定範囲内に制御するレギュレータ(図示せず)とを備えている。
シャフト7は、フロントブラケット1側が外部に延出しており、この延出部にプーリ11が固定されている。このプーリ11とエンジン(図示せず)との間にはベルト(図示せず)が巻き掛けされており、エンジンの駆動によりベルトを介してシャフト7が回転するようになっている。プーリ11とフロントブラケット1との間には、シャフト7に固定された冷却用ファン22が設けられている。
【0010】
上記回転子8は、シャフト7に固定され周方向に等分間隔で形成された複数のフロント爪状磁極部14を有するフロント磁極鉄心12と、フロント爪状磁極部14と歯合する複数のリヤ爪状磁極部15を有するとともにフロント磁極鉄心12と互いに基端面で面接触したリヤ磁極鉄心13とを備えている。
また、回転子8は、リヤブラケット2に固定されているとともにリヤ磁極鉄心13に挿入された円筒形状の励磁コア17と、この励磁コア17の小径部に導線が巻回された励磁コイル18と、フロント爪状磁極部14の内周面及びリヤ爪状磁極部15の内周面に溶接やロウ付け等により全周にわたって接合された円環状のリング16とを備えている。
フロント磁極鉄心12、リヤ磁極鉄心13及びリング16は非磁性金属で構成されている。
上記固定子4は、薄板鋼板を積層した円筒形状の固定子コア25と、この固定子コア25に巻装され整流器9と電気的に接続された固定子コイル26を備えている。
【0011】
アルミダイカストで形成されたリヤブラケット2は、リヤ軸受6を収納する軸受収納部28を有している。この軸受収納部28の周囲には、対向して回転子用通気孔が形成されている。各回転子用通気孔は、複数の冷却用フィン23により複数の回転子用通気孔部19に区画されている。各冷却用フィン23は、軸線方向の内側に向かって励磁コア17の端面まで延設している。
また、リヤブラケット2は、回転子用通気孔部19から軸線内側方向に沿って径寸法が拡大した案内部20を有している、この案内部20により、回転子用通気孔部19を通過した冷却風を励磁コア17に向けて案内する通風路21が形成されている。
また、リヤブラケット2には、整流器9の前面に形成された整流器用通気孔27、及びレギュレータの前面に形成されたレギュレータ用通気孔29が形成されている。
また、リヤブラケット2と励磁コア17とは、間に熱伝導性のシリコ−ンコンパウンド24が介在して密接している。
アルミダイカストで形成されたフロントブラケット1には、複数の排気孔30が形成されている。
【0012】
上記のように構成された交流発電機では、電流がバッテリ(図示せず)から、リヤブラケット2に励磁コア17を介して固定された励磁コイル18に供給され、磁束が発生する。この磁束により、フロント爪状磁極部14がN極に着磁され、リヤ爪状磁極部15がS極に着磁される。
一方、プーリ11がエンジンによって駆動され、シャフト7が回転する。これにより、回転子8のフロント磁極鉄心12及びリヤ磁極鉄心13が回転し、回転磁界が固定子コア25に与えられ、起電力が固定子コイル26に発生する。この交流の起電力が整流器9によって直流に整流され、バッテリに充電される。
【0013】
一方、シャフト7の回転とともに冷却用ファン22が回転し、この結果整流器用通気孔27から入って冷却風は、矢印イに示すように、主に整流器9、固定子4と回転子8との間の隙間を通って排気孔30から外部に排出される。
また、レギュレータ用通気孔29から入って冷却風は、主にレギュレータ29、固定子4と回転子8との間の隙間を通って排気孔30から外部に排出される。
また、回転子用通気孔部19から入って冷却風は、矢印ロに示すように、案内部20に沿ってケース内に流入し、固定子4と回転子8との間の隙間を通って排気孔30から外部に排出される。
【0014】
この実施の形態による交流発電機によれば、リヤブラケット2は、リヤ軸受6を収納した軸受収納部28の周囲に形成され冷却用ファン22の回転により生じた冷却風が通過する回転子用通気孔、及び回転子用通気孔を通過した冷却風を励磁コア17に向けて案内する通風路21を形成した案内部20を有しているので、回転子用通気孔からリヤブラケット2内に流入した外気からの冷却風は、励磁コア17に向かって流れ、励磁コア17を冷却するので、励磁コア17及びこの励磁コア17と一体の励磁コイル18の冷却性が向上する。
また、軸受収納部28の周囲に回転子用通気孔が形成されているので、軸受6の冷却性も向上するという効果もある。
【0015】
また、リヤブラケット2は、整流器9及びレギュレータに対面した部位を除いた全周にわたって、軸線内側方向に沿って径寸法が拡大した案内部20を有しているので、回転子用通気孔を通過した冷却風は、円筒形状の励磁コア17の端面のより多くの領域に衝突し、励磁コア17は効率よく冷却される。
【0016】
また、ブラケット2は、回転子用通気孔を複数に区画して回転子用通気孔部19を形成した冷却用フィン23を有しているので、リヤブラケット2の放熱面積が増大し、それだけリヤブラケット2の放熱性が向上する。
また、冷却用フィン23は、案内部20とともに冷却風を励磁コア17及び励磁コイル18側に導く作用も兼ねており、励磁コア17及び励磁コイル18の冷却性がさらに向上する。
また、冷却用フィン23を設けたことにより、回転子用通気孔部19の寸法が小さくなり、それだけ、ボルト、ネジ等の部品が回転子用通気孔部19を通じてケース内に入り込んでしまうという不都合を防止することができる。
【0017】
また、各冷却用フィン23は、軸線方向の内側に向かって励磁コア17の端面まで延設しているので、励磁コア17の熱は冷却用フィン23を通じて熱伝導により外部に放出されるので、励磁コア17及び励磁コイル18の冷却性がさらに向上する。
【0018】
また、リヤブラケット2と励磁コア17とは、間に熱伝導性のシリコ−ンコンパウンド24が介在して密接しているので、リヤブラケット2と励磁コア17との間の熱抵抗が小さくなり、励磁コア17からリヤブラケット2への熱伝導性が向上する。
また、リヤブラケット2と励磁コア17との間に塩水等が浸入するのを防止することができ、アルミニウム製のリヤブラケット2と鉄製の励磁コア17との間で金属イオン化傾向差による励磁コア17の錆の発生を防止できるので、励磁コア17の所定の磁路面積及び熱伝導性が確保される。
【0019】
なお、上記実施の形態では、ブラシレス回転電機として、車両用ブラシレス交流発電機の場合について説明したが、この発明は、勿論車両用に限定されるものではなく、例えば船外機用ブラシレス交流発電機でも適用でき、またブラシレス電動機にも適用できる。
また、シリコ−ンコンパウンド24は一例であり、熱伝導性のコンパウンドであればよい。
【符号の説明】
【0020】
1 フロントブラケット、(第1のブラケット)、2 リヤブラケット(第2のブラケット)、4 固定子、5 フロント軸受、6 リヤ軸受、7 シャフト、8 回転子、9 整流器、11 プーリ、12 フロント磁極鉄心、13 リヤ磁極鉄心、14 フロント爪状磁極部、15 リヤ爪状磁極部、16 リング、17 励磁コア、18 励磁コイル、19 回転子用通気孔部、20 案内部、21 通風路、22 冷却用ファン、23 冷却用フィン、24 コンパウンド、25 固定子コア、26 固定子コイル、27 整流器用通気孔、28 軸受収納部、29 レギュレータ用通気孔、30 排気孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向した一対の第1及び第2のブラケットを有するケースと、このケースに固定された固定子と、それぞれのブラケットに軸受を介して両端部が回転自在に支持されたシャフトと、このシャフトに設けられた回転子と、前記シャフトに固定された冷却用ファンとを備え、
前記回転子は、シャフトに固定された磁極鉄心と、前記第1のブラケットに固定されているとともに前記磁極鉄心に挿入された円筒形状の励磁コアと、この励磁コアの小径部に導線が巻回された励磁コイルとを有するブラシレス回転電機であって、
前記第1のブラケットは、前記軸受を収納した軸受収納部の周囲に形成され前記冷却用ファンの回転により生じた冷却風が通過する回転子用通気孔、及び回転子用通気孔を通過した冷却風を励磁コアに向けて案内する通風路を形成した案内部を有していることを特徴とするブラシレス回転電機。
【請求項2】
前記案内部は、軸線内側方向に沿って径寸法が拡大していることを特徴とする請求項1に記載のブラシレス回転電機。
【請求項3】
前記第1のブラケットは、前記回転子用通気孔を複数に区画して回転子用通気孔部を形成した冷却用フィンを有していることを特徴とする請求項1または2に記載のブラシレス回転電機。
【請求項4】
各前記冷却用フィンは、軸線方向の内側に向かって前記励磁コアの端面まで延設していることを特徴とする請求項3に記載のブラシレス回転電機。
【請求項5】
前記第1のブラケットと前記励磁コアとは、間に熱伝導性コンパウンドが介在して密接していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のブラシレス回転電機。
【請求項6】
前記ブラシレス回転電機は、車両用ブラシレス交流発電機であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のブラシレス回転電機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−97777(P2011−97777A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250887(P2009−250887)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】