説明

ブレーキエアガイド構造

【課題】 製造コストの上昇を抑制しつつ、車体を軽量化出来、良好な空冷却性能を発揮出来るブレーキエアガイド構造を提供する。
【解決手段】 走行風を、車輪3の制動を行うディスクブレーキ装置5方向へ導いて、走行風により、ディスクブレーキ装置5の空冷却を行うブレーキエアガイド部材11を有している。
このブレーキエアガイド部材11は、車輪3に追従して動作するサスペンション装置6のうち、、左,右両端部近傍に曲部10b,10bを有して構成されるスタビライザ部材10に沿わせて、装着されている。
このブレーキエアガイド部材11の凹部11cは、スタビライザ部材10の一部を食い込ませて、装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のブレーキ装置近傍に設けられて、走行風を導くことにより、ブレーキ装置を空冷却するために用いられるブレーキエアガイド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキエアガイド構造としては、車両の車輪を転舵する際に用いられるステアリング装置に連動するように設けられたステアリング連動片及び、サスペンションの動作に追従するサスペンション連動片とに固定されるディスクブレーキ用エアガイドが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平5−92757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のブレーキエアガイド構造においては、走行風による風圧をブレーキエアガイド部材自身が受ける為に、ブレーキエアガイド部材を比較的、高剛性を有する材料で構成しなければならない。
【0004】
また、走行風による風圧で、ブレーキエアガイド部材が、回転しないように、車体側部品に固定する取付点を多く設定しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、走行風を、車輪の制動を行うブレーキ装置方向へ導いて、該走行風により、前記ブレーキ装置の空冷却を行うブレーキエアガイド部材を有するブレーキエアガイド構造であって、前記ブレーキエアガイド部材は、前記車輪の動きに追従して動作し、少なくとも一部に曲部を有するサスペンション部材の該曲部に沿わせて、装着されるブレーキエアガイド構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記ブレーキエアガイド部材が、前記サスペンション部材の曲部に沿わせて、装着されている。
【0007】
このため、走行風の流れ方向が、該ブレーキエアガイド部材に導かれて、前記ブレーキ装置方向へ向かうように変更される。
【0008】
従って、該走行風により、前記ブレーキ装置の空冷却が、効率よく行われる。
【0009】
この際、前記ブレーキエアガイド部材に加わる風圧が、該ブレーキエアガイド部材から、直接、前記サスペンション部材に伝えられて支持される。
【0010】
よって、該ブレーキエアガイド部材の剛性を低下させることが出来る。
【0011】
しかも、前記サスペンション部材の曲部に沿わせて、前記ブレーキエアガイド部材が、固定されているので、固定点の数量を増大させることなく、転び方向の回転を抑制出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の実施の形態のブレーキエアガイド構造を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1乃至図3は、この発明の実施の形態のブレーキエアガイド構造を示すものである。
【0014】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態のブレーキエアガイド構造では、図3に示すように、自動車1の車体2の後部2aには、車軸部材4の車幅方向両端に、車輪3,3が設けられると共に、これらの車輪3,3の内側には、これらの車輪3,3の制動を行うブレーキ装置としてのディスクブレーキ装置5,5が、各々設けられている。
【0015】
また、前記車体2の後部2aには、これらの車輪3の動きに追従して動作するサスペンション部材としてのサスペンション装置6が設けられている。
【0016】
この実施の形態のサスペンション装置6は、前記車軸部材4を挿通すると共に、前記ディスクブレーキ装置5,5が、各々設けられてなるハブ側部材7,7を、略車両上下方向へ回動可能に軸支する左,右一対のロアアーム部材8,8と、左,右のロアアーム部材8,8間を、図1及び図2に示すスタビライザコンロッド部材9,9を各々介して連結するスタビライザ部材10と、図示省略のスプリング部材及びショックアブソーバ装置等とを有して主に、構成されている。
【0017】
このうち、前記スタビライザ部材10には、走行風を、車輪3,3の制動を行う前記ディスクブレーキ装置5,5方向へ導いて、この走行風により、前記ディスクブレーキ装置5,5のうち、主に、ブレーキローターの空冷却を行うブレーキエアガイド部材11,11が、車幅方向左,右一対設けられている。
【0018】
すなわち、この実施の形態のスタビライザ部材10は、図3に示すように、車幅方向に軸方向を延設する断面略円形で、略丸棒材状のスタビライザ本体10aと、このスタビライザ本体10aの車幅方向両端部に一体に延設されて、車両前方方向へ凹状の開放部分を向けるように、前記ロアアーム部材8,8方向へ屈曲形成される曲部10b,10bと、前記スタビライザコンロッド部材9,9の一端部9a,9aが、ナット部材12,12による螺着で、固定される取付座面部10c,10とを、一体に有している。
【0019】
このスタビライザコンロッド部材9,9の一端部9a,9aと、他端部9b,9bとは、図1,図2に示す様に、軸L1,L2方向を、略直角の捻れの位置として構成されていて、各一端部9a,9aと、他端部9b,9bとには、雄ネジ部が形成されている。
【0020】
また、前記左,右のロアアーム部材8,8には、車両前後方向に沿って、車幅方向へ長径方向を向ける長孔部8a,8aが開口形成されていて、前記スタビライザコンロッド部材9,9の他端部9b,9bが、挿通されて、ナット部材13,13による螺合により、抜出不能に遊嵌されている。
【0021】
この実施の形態のスタビライザ部材10は、図1に示す様に、前記曲部10bの前後で、軸延設方向L1,L2を相違させている。
【0022】
これらの前記曲部10bの前後位置には、側面視略Ω状の固着具としての第1ガイドクランプ部材14及び第2ガイドクランプ部材15が用いられて、前記ブレーキエアガイド部材11のうち、前記曲部10bに沿って湾曲形成されたガイド曲面11aの裏面側11bが、各々ボルト部材16,16若しくはリベット部材17,17によって、締結固定されるように構成されている。
【0023】
また、この実施の形態のブレーキエアガイド部材11には、前記湾曲形成されたガイド曲面11aの略中央部に、前記スタビライザ部材10の曲部10b内側の外側面形状の一部と適合する凹部11cが、図1に示す様に、車両前方へ向けて凸となるように、形成されている。
【0024】
そして、この凹部11cの車両後方側側面から、前記スタビライザ部材10の曲部の一部が、食い込むように埋設されて、前記スタビライザ部材10の延設方向に沿って、前記ブレーキエアガイド部材11に湾曲形成されたガイド曲面11aが、車両後方側から所定の面積を有して、支持されることにより、適合するように構成されている。
【0025】
更に、この実施の形態では、前記丸棒材を湾曲形成して曲部10bが形成されたスタビライザ部材10の両端部10d,10dには、前記取付座面部10c,10cの裏面側に、外側面形状の一部を平坦面状として、前記ブレーキエアガイド部材11の凹部11cから連設される装着面部11dに、当接される平坦面部10eが形成されている。
【0026】
そして、このスタビライザ部材10の前記取付座面部10cには、前記ブレーキエアガイド部材11の端部11eに接合される固着具としてのブラケット部材18が、添着されて、前記左,右各端部10d,10dと共に、前記スタビライザコンロッド部材9の一端部9aに、前記ナット部材12によって、共締めされている。
【0027】
次に、この実施の形態のブレーキエアガイド構造の作用効果について説明する。
【0028】
この実施の形態では、図3に示すような自動車1の車体2の後部2aに、設けられるサスペンション装置6のスタビライザ部材10に、前記ブレーキエアガイド部材11が、このスタビライザ部材10の曲部10bに沿わせて、湾曲するガイド曲面11aを有して、装着されている。
【0029】
このため、自動車1の走行風の流れ方向が、図1中矢印で示す様に、このブレーキエアガイド部材11に導かれて、曲がり、前記ディスクブレーキ装置5方向へ向かうように変更される。
【0030】
従って、この走行風により、前記ディスクブレーキ装置5の空冷却が、効率よく行われる。
【0031】
この際、前記ブレーキエアガイド部材11に加わる風圧が、ブレーキエアガイド部材11の前記ガイド曲面11aの裏面側の凹部11c及び平坦状の装着面部11d等が、スタビライザ部材10の外表面に、一定の面積を有して、面当たりする。
【0032】
このため、風圧による荷重は、分散されながら、直接、前記スタビライザ部材10に、伝えられて支持される。
【0033】
よって、ブレーキエアガイド部材11の変形を考慮する必要が、従来に比して、減少して、従来の様に、剛性の高い材料で構成する必要が無く、製造コストの上昇を抑制出来る。
【0034】
また、このブレーキエアガイド部材11自体の厚さ方向寸法も薄く、設定出来、この点においても、車体2を軽量化することが出来る。
【0035】
しかも、前記軸延設方向L1,L2が、所定の角度を有して異なるスタビライザ部材10の曲部10bに沿わせて、前記ブレーキエアガイド部材11が、固定されているので、前記第1ガイドクランプ部材14及び第2ガイドクランプ部材15による取付点を、曲部10bの前,後で異なる位置に設けることにより、固定される部分では、前記ブレーキエアガイド部材11のガイド曲面11aの面内,外方向の角度が相違して、相互に所定の角度が設けられた入隅形状の部分に、固定される。
【0036】
このため、一方の軸延設方向L1の周囲を、前記ブレーキエアガイド部材11が、図1に示す転び方向Kに回転しようとすると、他方の固定点の第二ガイドクランプ部材15が、この回転を阻害し、他方の軸延設方向L2の周囲を前記ブレーキエアガイド部材11が回転しようとすると、一方の固定点の第一ガイドクランプ部材14が、回転を阻害する。
【0037】
従って、図1中白抜き矢印で示すような前記スタビライザ部材10の周囲を回転する方向である転び方向Kへの取付強度を大きく設定することが出来、従来の様に、固定点の数量を増大させることなく、少なくとも二点の取付固定点を有していれば、転び方向Kの回転を抑制出来る。
【0038】
よって、前記ブレーキエアガイド部材11の固定に用いる固定部品の部品点数の増大も抑制出来て、この点においても、製造コストの上昇を抑制出来て、車体を軽量化することが出来る。
【0039】
また、この実施の形態では、前記スタビライザ部材10の曲部10bの一部が、前記ブレーキエアガイド部材11に設けられた凹部11c内に埋設されているので、前記ブレーキエアガイド部材11を、前記第1ガイドクランプ部材14及び第2ガイドクランプ部材15によって、前記スタビライザ部材10に食い込ませる様に固定して、スタビライザ部材10からのブレーキエアガイド部材11の突設量を減少させることが出来る。
【0040】
このため、ブレーキエアガイド部材11と、車体2に装着される他の部品とのクリアランスを容易に確保出来るので、形状の設定の自由度が増大することにより、例えば、このブレーキエアガイド部材11を大型化して、更に、前記ディスクブレーキ装置5の空冷却効率を向上させることができる。
【0041】
更に、前記ブレーキエアガイド部材11の装着面部11dに、当接されている前記スタビライザ部材10の外側面形状の一部が、平坦面状を呈する平坦面部10eを形成しているので、更に、転び方向Kへ前記ブレーキエアガイド部材11が、回転しにくく、取付安定性が良好である。
【0042】
また、前記スタビライザ部材10が、丸棒材を湾曲形成して、軸延設方向L1,L2を異ならせる曲部10bを、構成するので、取付剛性を向上させたり、或いは、転び方向Kへの回転を防止する為の別部品を設けることなく、前記ブレーキエアガイド部材11を、スタビライザ部材10の車両前後方向前側に位置させて、前記ディスクブレーキ装置5方向へ、前記自動車1の走行風を容易に導ける位置に、前記Ω状の第1ガイドクランプ部材14及び第2ガイドクランプ部材15を用いて容易に固定出来る。
【0043】
そして、前記ブレーキエアガイド部材11が、前記第1ガイドクランプ部材14及び第2ガイドクランプ部材15による取付点によって、少なくとも二箇所で、また、この実施の形態では、更に、前記ブラケット部材18が用いられて、合計3箇所で、前記スタビライザ部材10に固定されている。
【0044】
このため、転び方向Kへ、前記ブレーキエアガイド部材11が、更に、回転しにくく、取付安定性が良好である。
【0045】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態のブレーキエアガイド構造を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0046】
即ち、前記実施の形態では、車両右後輪のに適用される本発明を、要部の構成を示して説明してきたが、前,後及び左,右の何れの車輪であっても良く、駆動輪や、転舵を行う車輪でなくてもよいことは当然である。
【0047】
また、この実施の形態では、前記サスペンション部材として、前記スタビライザ部材10を用いたものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、マルチリンク部材の一部や、アッパアーム部材、或いは、トレーディングアーム部材等、車輪に追従して動作すると共に、一部に曲部が、形成されているものであれば、どのようなサスペンション部材に沿わせて、装着されてもよいことは当然で、形状、数量及び材質が、特に限定されるものではない。
【0048】
更に、曲部10bの曲がり角度も、前記実施の形態のスタビライザ部材10の有する曲がり角度に限らず、装着されるブレーキエアガイド部材11の裏面側11bを支持する少なくとも一部に曲部を有するものであれば、どのような角度で有っても良く、同一若しくは相違する角度の複数の曲部を組み合わせたもの等、どのような曲部であってもよいことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態のブレーキエアガイド構造で、車両右後輪のに適用される要部の構成を、車体パネルを取り除いて、車両上側から見た平面図である。
【図2】実施の形態のブレーキエアガイド構造で、車両右後輪に適用される要部の構成を、車両下側から見た平面図である。
【図3】実施の形態のブレーキエアガイド構造で、全体の構成を説明する車両の一部断面斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
3 車輪
5 ディスクブレーキ装置(ブレーキ装置)
6 サスペンション装置(サスペンション部材)
8 ロアアーム部材
10 スタビライザ部材
10a スタビライザ本体
10b 曲部
10e 平坦面部
11 ブレーキエアガイド部材
11c 凹部
11d 装着面部
14 第一ガイドクランプ部材(固着具の一つ)
15 第二ガイドクランプ部材(固着具の一つ)
18 ブラケット部材(第三の固着具)
L1,L2 軸延設方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行風を、車輪の制動を行うブレーキ装置方向へ導いて、該走行風により、前記ブレーキ装置の空冷却を行うブレーキエアガイド部材を有するブレーキエアガイド構造であって、
前記ブレーキエアガイド部材は、前記車輪の動きに追従して動作し、少なくとも一部に曲部を有するサスペンション部材の該曲部に沿わせて、装着されることを特徴とするブレーキエアガイド構造。
【請求項2】
前記サスペンション部材の外側面形状の一部と適合する凹部を、前記ブレーキエアガイド部材に設けて、該サスペンション部材の一部を、前記凹部内に埋設したことを特徴とする請求項1記載のブレーキエアガイド構造。
【請求項3】
前記サスペンション部材の外側面形状の一部を平坦面状として、前記ブレーキエアガイド部材の装着面部に、当接させる平坦面部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のブレーキエアガイド構造。
【請求項4】
前記サスペンション部材は、丸棒材を湾曲形成して曲部を構成するスタビライザ部材であることを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載のブレーキエアガイド構造。
【請求項5】
前記サスペンション部材は、固着具によって、少なくとも二箇所で、前記サスペンション部材に固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載のブレーキエアガイド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−132208(P2010−132208A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311817(P2008−311817)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】