説明

ブレーキ装置

【課題】車室内での作動流体の漏出による影響を小さくする。
【解決手段】ブレーキ制御装置10は、ブレーキ用作動流体の供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダ20と、車室内に配設され、ブレーキ用作動流体とは異なる車室用作動流体を収容し、車室用作動流体をブレーキペダルへの運転者の踏力に応じて加圧するマスタシリンダ14と、を備える。このとき、車室用作動流体のほうがブレーキ用作動流体よりも粘性が高くてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた車輪に制動力を付与するためのブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されたブレーキ制御装置においては、ブレーキペダルを踏み込むとブレーキバルブが作動して、ブレーキオイルタンクからの圧油は油圧管路を通ってブレーキピストンを作動させる。一方、通常のブレーキペダルによるブレーキ操作がなされず制御入力信号が油圧制御装置に入ると、該油圧制御装置から圧油が油圧管路を通ってスプリットシリンダに入り、スプリットシリンダ内のピストンが押される。これにより、圧油がブレーキピストンを作動させる。
【特許文献1】実開平5−49550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に、特に商用車などにおいては、車室内にマスタシリンダが設置される場合がある。長年の使用等によりマスタシリンダと配管との継目などからブレーキフルードが漏出してしまうこともあり得るが、仮に漏出が発生したとしても車室内部や乗員への影響が少ないことが望ましい。
【0004】
そこで、本発明は、車室内での作動流体の漏出による影響を小さくすることができるブレーキ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ装置は、ブレーキ用作動流体の供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、車室内に配設され、ブレーキ用作動流体とは異なる車室用作動流体を収容し、車室用作動流体をブレーキペダルへの運転者の踏力に応じて加圧する加圧シリンダと、を備える。
【0006】
この態様によれば、車室内における作動流体は、ブレーキ作動用の作動流体と異なるものが用いられる。これにより、ブレーキ用作動流体としてブレーキの作動に最適なものを使用しうるとともに、車室内では例えば仮に漏出したとしても影響の少ない作動流体を使用することが可能となる。
【0007】
また、車室用作動流体のほうがブレーキ用作動流体よりも粘性が高くてもよい。この態様によれば、高粘性の車室用作動流体が用いられるので、仮に車室内で作動流体が漏出したとしても比較的少量であれば漏出箇所に留まることとなり、車室内に噴出して飛散するのを抑えることができる。このため、車室内での作動流体の漏出によるドライバーの足元や車室内部の汚損を少なくすることができる。
【0008】
加圧シリンダとホイールシリンダとの間に設けられ、車室用作動流体とブレーキ用作動流体とを分離しつつ車室用作動流体に課された圧力をブレーキ用作動流体へと伝達する作動流体分離機構をさらに備えてもよい。この態様によれば、作動流体分離機構により車室用作動流体とブレーキ用作動流体とが分離されるので、車室内とエンジンルーム等の車室外とで異なる作動流体を使用することができる。
【0009】
作動流体分離機構は、分離用ピストンにより第1シリンダ室と第2シリンダ室とに内部を仕切られている分離用シリンダを含み、第1シリンダ室は加圧シリンダに接続され、第2シリンダ室はホイールシリンダへと接続されており、第1シリンダ室には車室用作動流体が収容され、第2シリンダ室にはブレーキ用作動流体が収容されていてもよい。このように分離用シリンダを用いることにより、車室用作動流体とブレーキ用作動流体とを分離することができるとともにマスタシリンダ圧をホイールシリンダへと伝達する機構を簡易に実現することができる。
【0010】
加圧シリンダにおける車室用作動流体の圧力に基づいてホイールシリンダにおけるブレーキ用作動流体の圧力を制御するホイールシリンダ圧制御系統をさらに備え、加圧シリンダは、ホイールシリンダ及びホイールシリンダ圧制御系統との間で作動流体の流通が生じないようホイールシリンダ及びホイールシリンダ圧制御系統から分離されて車室内に配設されていてもよい。
【0011】
この態様によれば、ホイールシリンダ圧制御系統が、加圧シリンダにおける車室用作動流体の圧力に基づいてホイールシリンダ圧を制御する。ホイールシリンダ圧は、いわゆるブレーキバイワイヤで制御される。加圧シリンダはホイールシリンダ及びホイールシリンダ圧制御系統との間で作動流体の流通が生じないよう分離されて配設されている。このため、加圧シリンダにおける車室用作動流体の圧力からブレーキペダルに入力された踏力をより高精度に測定することが可能となり、ブレーキ制御をより高精度に実行することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車室内外で異なる作動流体を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るブレーキ制御装置10を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置10は、車両用の電子制御式ブレーキシステムを構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12への操作に応じて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に設定するものである。また、本実施形態に係るブレーキ制御装置10が搭載された車両は、4つの車輪のうちの操舵輪を操舵する図示されない操舵装置や、これら4つの車輪のうちの駆動輪を駆動する図示されない内燃機関やモータ等の走行駆動源等を備えるものである。
【0015】
ブレーキペダル12は、ロッド等を介してマスタシリンダ14に接続されている。マスタシリンダ14には車室用作動流体が収容されており、運転者の踏込操作に応じて車室用作動流体は加圧される。ブレーキペダル12には、その踏込ストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。マスタシリンダ14とストロークシミュレータ24とを接続する流路の中途には、シミュレータカット弁23が設けられている。シミュレータカット弁23は、非通電時に閉状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に開状態に切り換えられる常閉型の電磁開閉弁である。また、マスタシリンダ14には、マスタシリンダに供給される車室用作動流体を貯留するための車室内リザーバタンク26が接続されている。
【0016】
本実施形態においては、マスタシリンダ14及び車室内リザーバタンク26はエンジンルームではなく車室内に設けられている。これに付随してストロークシミュレータ24及びシミュレータカット弁23も車室内に配設される。本実施形態では図1において一点鎖線に囲まれる構成要素であるブレーキペダル12、ストロークセンサ46、マスタシリンダ14、車室内リザーバタンク26、ストロークシミュレータ24、シミュレータカット弁23が車室内に設置される。なお、ストロークシミュレータ24及びシミュレータカット弁23は、マスタシリンダ14に配管を介して接続されてエンジンルーム内に設けられてもよい。
【0017】
マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、分離用ピストンを含んで構成される第1分離機構36を介して、右前輪用の右ブレーキ油圧制御管16が接続されている。右ブレーキ油圧制御管16は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、分離用ピストンを含んで構成される第2分離機構38を介して、左前輪用の左ブレーキ油圧制御管18が接続されている。左ブレーキ油圧制御管18は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。
【0018】
第1分離機構36及び第2分離機構38は、マスタシリンダ14とブレーキアクチュエータ80との間に互いに並列に設けられている。第1分離機構36及び第2分離機構38はともに同様の構成とされ、シリンダと分離用ピストンと戻しスプリングとを含んで構成されている。分離用ピストンは、シリンダの円筒状内壁に沿って摺動自在にシリンダ内部に配設されている。戻しスプリングは、分離用ピストンをシリンダに連結するとともに初期位置に付勢する。
【0019】
シリンダの内部空間は、分離用ピストンにより第1シリンダ室と第2シリンダ室の2つに区分けされ、第1シリンダ室及び第2シリンダ室のそれぞれに収容される作動流体は混合せずに分離される。第1シリンダ室が配管を介してマスタシリンダ14に接続され、第2シリンダ室が配管を介してブレーキアクチュエータ80に接続される。第2シリンダ室には、ブレーキフルードを貯留するためのエンジンルーム用リザーバタンク52が接続されている。このため、使用時においては第1分離機構36及び第2分離機構38の第1シリンダ室は車室用作動流体で満たされ、第2シリンダ室はブレーキフルードで満たされた状態となる。第1分離機構36及び第2分離機構38は、車室用作動流体とブレーキフルードとを分離しつつマスタシリンダ圧がホイールシリンダへと伝達されるようにマスタシリンダ14とホイールシリンダ20とを接続している。本実施形態においては、ブレーキアクチュエータ80、エンジンルーム用リザーバタンク52、第1分離機構36及び第2分離機構38は、エンジンルームに設置される。
【0020】
本実施形態においては、ブレーキフルードとしてはブレーキの作動に適した作動流体、例えば低粘性のブレーキオイルが用いられる。これに対して、車室用作動流体としてはブレーキフルードよりも粘性が高い作動流体が選択される。例えば一般にはショックアブソーバに用いられているアブソーバオイルを車室用作動流体として用いてもよい。
【0021】
右前輪用の右ブレーキ油圧制御管16の中途には、右マスタカット弁27FRが設けられており、左前輪用の左ブレーキ油圧制御管18の中途には、左マスタカット弁27FLが設けられている。これらの右マスタカット弁27FRおよび左マスタカット弁27FLは、何れも、非通電時に開状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に閉状態に切り換えられる常開型電磁弁である。
【0022】
また、右前輪用の右ブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧力センサ48FRが設けられており、左前輪用の左ブレーキ油圧制御管18の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタ圧力センサ48FLが設けられている。ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、これらの右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。なお、以下では適宜、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLを総称して、マスタシリンダ圧センサ48という。
【0023】
一方、エンジンルーム用リザーバタンク52には、油圧給排管28の一端が接続されており、この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施形態では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、ブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
【0024】
アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
【0025】
そして、高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。増圧弁40は、何れも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。
【0026】
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介して油圧給排管28に接続されている。
【0027】
右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近には、それぞれのホイールシリンダにおける作動流体圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「ホイールシリンダ圧センサ44」という。
【0028】
制動力付与機構としてのディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ20FR〜20RLを含む。そして、各ホイールシリンダ20FR〜20RLは、それぞれ異なる流体通路を介してブレーキアクチュエータ80に接続されている。ホイールシリンダ20は、各車輪の近傍に設けられており、収容されているブレーキフルードに課された圧力を摩擦部材の車輪への押圧力へと変換する。ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ20にブレーキアクチュエータ80からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。
【0029】
上述の右マスタカット弁27FRおよび左マスタカット弁27FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ制御装置10のブレーキアクチュエータ80を構成する。そして、かかるブレーキアクチュエータ80は、図示されない電子制御ユニット(以下適宜ECUと称する)によって制御される。ECUは、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース、メモリ等を備えるものである。
【0030】
このように構成されるブレーキ制御装置10では、ECUにより、ブレーキペダル12の踏み込みストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標減速度が算出され、算出された目標減速度に応じて各車輪の目標ホイールシリンダ圧が求められる。そして、ECUにより増圧弁40および減圧弁42が制御されて各ホイールシリンダ20にブレーキフルードが供給され、各車輪のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧になるよう制御される。その結果、ブレーキディスク22にブレーキパッドが押圧されて目標減速度に対応した制動力が各車輪に付与される。本実施形態においては、アキュムレータ50、増圧弁40及び減圧弁42等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成されている。ホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤによる制動力制御が行われる。
【0031】
なお、このとき右マスタカット弁27FRおよび左マスタカット弁27FLは閉状態とされ、シミュレータカット弁23は開状態とされる。このため、ドライバーによるブレーキペダル12の踏み込みによりマスタシリンダ14から送出された車室用作動流体は、シミュレータカット弁25を通ってストロークシミュレータ24に流入する。
【0032】
一方、異常時等においてはECUによる制御は中止され、ドライバーの踏込操作が直接ホイールシリンダ20に伝達される。このとき右マスタカット弁27FR、左マスタカット弁27FL、及びシミュレータカット弁23への通電は停止され、右マスタカット弁27FRおよび左マスタカット弁27FLは開状態とされ、シミュレータカット弁23は閉状態とされる。ブレーキペダル12への踏込操作がなされると、マスタシリンダ圧が高まるとともに第1シリンダ室の作動流体圧も高まる。これにより第1分離機構36及び第2分離機構38の分離用ピストンが第2シリンダ室の容積を拡大する方向に摺動する。このようにして第1シリンダ室の車室用作動流体と第2シリンダ室のブレーキフルードとが混合されることなく第1シリンダ室から第2シリンダ室へと圧力が伝達される。その結果、右前輪及び左前輪用のホイールシリンダ20FR及び20FLにおける液圧が上昇し、ドライバーの踏込操作に応じた制動力を発生させることができる。ブレーキペダル12の踏込が解除されると、戻しスプリングの作用により分離用ピストンは初期位置に戻される。
【0033】
以上のように、第1の実施形態によれば、車室に設けられたマスタシリンダ14とエンジンルームに設けられたブレーキアクチュエータ80との間に作動流体の分離機構を設けているので、車室内とエンジンルームとで異なる作動流体を使用することができる。エンジンルームではブレーキフルードとして適した低粘性の流体を使用することができるとともに、車室内ではブレーキフルードよりも高粘性の流体を作動流体として使用することができる。車室内で高粘性の流体を用いることにより、車室内でマスタシリンダ14と配管との継目などから仮に作動流体が漏出したとしても比較的少量であれば漏出箇所に留まることとなり、即時に車室内に噴出して飛散する可能性を小さくすることができる。このため、車室内での作動流体の漏出によりドライバーの足元や車室内部を汚損するのを抑えることができる。なお、漏出による影響をさらに小さくするために、車室用作動流体としてはブレーキフルードに比較して無色透明または無色透明に近い色の作動流体や無臭または臭いの少ない作動流体、車室内の素材との反応性が低い作動流体など、車室に漏出したときの車室内での影響がブレーキフルードよりも小さくなるような特性を有する作動流体を用いてもよい。
【0034】
次に図2を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係るブレーキ制御装置10を示す系統図である。第2の実施形態においては、上述の第1の実施形態における作動流体分離機構は設けられておらず、ブレーキペダル12に入力される踏力を測定するための踏力測定用シリンダ55が車室内に設けられている。なお、第2の実施形態に関する以下の説明において、第1の実施形態と同一の内容については説明を適宜省略する。
【0035】
第2の実施形態においては、マスタシリンダ14はエンジンルーム内に設けられており、作動流体分離機構を介することなく直接ブレーキアクチュエータ80に接続されている。マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、右前輪用の右ブレーキ油圧制御管16が接続されており、右ブレーキ油圧制御管16は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、左前輪用の左ブレーキ油圧制御管18が接続されており、左ブレーキ油圧制御管18は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。また、マスタシリンダ14には、ブレーキフルードを貯留するためのエンジンルーム用リザーバタンク52が接続されている。エンジンルーム用リザーバタンク52には、油圧給排管28の一端が接続されている。
【0036】
第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、ブレーキフルードとしてはブレーキの作動に適した作動流体、例えば低粘性のブレーキオイルが用いられる。これに対して、車室用作動流体としてはブレーキフルードよりも粘性が高い作動流体が選択される。例えば一般にはショックアブソーバに用いられているアブソーバオイルを車室用作動流体として用いてもよい。
【0037】
第2の実施形態では図2において一点鎖線に囲まれる構成要素であるブレーキペダル12、ストロークセンサ46、踏力測定用シリンダ55、踏力測定用圧力センサ57が車室内に設置される。他の構成要素であるマスタシリンダ14やブレーキアクチュエータ80、ホイールシリンダ20等はエンジンルーム内に設けられる。踏力測定用シリンダ55は、ブレーキペダル12にマスタシリンダ14と並列に連結されている。踏力測定用シリンダ55はブレーキペダル12とともに車室内部に配設されており、マスタシリンダ14よりもブレーキペダル12の近傍に配置される。踏力測定用シリンダ55は、ホイールシリンダ20、ブレーキアクチュエータ80、及びマスタシリンダ14等のブレーキフルードが収容された空間及び流路との間で作動流体の流通が生じないように車室内に分離されて配設されている。つまり踏力測定用シリンダ55はブレーキフルードの流通経路から分離されて配設されている。
【0038】
踏力測定用シリンダ55は、シリンダと踏力測定用ピストンと戻しスプリングとを含んで構成されている。踏力測定用ピストンは、シリンダの円筒状内壁に沿って摺動自在にシリンダ内部に配設されている。戻しスプリングは、踏力測定用ピストンをシリンダに連結するとともに初期位置に付勢する。シリンダ内壁と踏力測定用ピストンとにより車室用作動流体を収容するシリンダ室が形成され、このシリンダ室に車室用作動流体が外部に漏出しないようシールされた状態で収容されている。このため、車室内作動流体がマスタシリンダ14やホイールシリンダ20に流入することもなく、ブレーキフルードが踏力測定用シリンダ55に流入することもなく、車室用作動流体とブレーキフルードとは互いに混合されない。踏力測定用ピストンは連結ロッド等の踏力伝達機構を介してブレーキペダル12に連結されており、ブレーキペダル12への運転者の踏力に応じて踏力測定用ピストンがシリンダ室の車室用作動流体を加圧する。踏力測定用シリンダ55には踏力測定用圧力センサ57が接続されている。踏力測定用圧力センサ57は、踏力測定用シリンダ55のシリンダ室内の作動流体圧を検出し、ECU200に送信する。
【0039】
このように構成される第2の実施形態に係るブレーキ制御装置10では、ECU200は踏力測定用圧力センサ57の測定値から運転者の踏力を演算する。ECU200は、演算された踏力に基づいて車両の目標減速度を求め、各車輪の目標ホイールシリンダ圧を求める。そして、ECUにより増圧弁40および減圧弁42が制御されて各ホイールシリンダ20にブレーキフルードが供給され、各車輪のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧になるよう制御される。なお、このときマスタカット弁27FR及び27FLは閉状態とされ、シミュレータカット弁23は開状態とされる。よって、運転者によるブレーキペダル12の踏込によりマスタシリンダ14から送出されたブレーキフルードは、シミュレータカット弁23を通ってストロークシミュレータ24に流入する。
【0040】
以上のように、第2の実施形態によれば、踏力測定用シリンダ55がホイールシリンダ20等のブレーキフルードの流通経路から分離されてブレーキペダル12とともに車室内に設けられており、ブレーキペダル12に入力される踏力を直接測定することができる。このため、加圧シリンダにおける車室用作動流体の圧力からブレーキペダルに入力された踏力をより高精度に測定することが可能となり、ブレーキ制御をより高精度に実行することができる。
【0041】
なお、第2の実施形態においては、マスタシリンダ14をエンジンルーム内に設け、マスタシリンダ14にブレーキフルードを供給するようにしている。これに代えて、第1の実施形態と同様に、マスタシリンダ14を車室内に設けて車室用作動流体を収容し、マスタシリンダ14とブレーキアクチュエータ80との間に作動流体分離機構を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。
【符号の説明】
【0043】
10 ブレーキ制御装置、 14 マスタシリンダ、 20 ホイールシリンダ、 36 第1分離機構、 38 第2分離機構、 55 踏力測定用シリンダ、 57 踏力測定用圧力センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ用作動流体の供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、
車室内に配設され、前記ブレーキ用作動流体とは異なる車室用作動流体を収容し、前記車室用作動流体をブレーキペダルへの運転者の踏力に応じて加圧する加圧シリンダと、
を備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記車室用作動流体のほうが前記ブレーキ用作動流体よりも粘性が高いことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記加圧シリンダと前記ホイールシリンダとの間に設けられ、前記車室用作動流体と前記ブレーキ用作動流体とを分離しつつ前記車室用作動流体に課された圧力を前記ブレーキ用作動流体へと伝達する作動流体分離機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記作動流体分離機構は、分離用ピストンにより第1シリンダ室と第2シリンダ室とに内部を仕切られている分離用シリンダを含み、前記第1シリンダ室は前記加圧シリンダに接続され、前記第2シリンダ室は前記ホイールシリンダへと接続されており、前記第1シリンダ室には前記車室用作動流体が収容され、前記第2シリンダ室には前記ブレーキ用作動流体が収容されていることを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記加圧シリンダにおける前記車室用作動流体の圧力に基づいて前記ホイールシリンダにおける前記ブレーキ用作動流体の圧力を制御するホイールシリンダ圧制御系統をさらに備え、
前記加圧シリンダは、前記ホイールシリンダ及び前記ホイールシリンダ圧制御系統との間で作動流体の流通が生じないよう前記ホイールシリンダ及び前記ホイールシリンダ圧制御系統から分離されて車室内に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−30543(P2008−30543A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203721(P2006−203721)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】