説明

プラスチック燃料タンクの製造方法

2つのキャビティーとコアを含む型を用いてパリソンを成形することによる内部ライン(2)を備えたプラスチック燃料タンクの製造方法。本方法は、1.パリソン(4)を型キャビティー内に導入する工程、2.コアをパリソン内に導入する工程(コアは最初にラインを備えている)、3.キャビティーがコアに耐漏洩接触するよう型を閉じる工程、4.コアを介してブローしかつ/またはキャビティー背後から真空を適用することでパリソンをキャビティーに押圧する工程、5.コアに装着されたデバイス(5)を用いてラインを2箇所でパリソンに固定する工程、6.型を開けてコアを抜き取る工程、7.ブロー成形および/または熱成形によりパリソンの最終成形を行う工程を含み、ラインは、その固定箇所間に、型を閉じる時にパリソンおよび/またはその表面上に存在する付属品に接触可能な自由長を含み、それによりコアに装着されたデバイスを用いて工程(5)の間に中間固定箇所が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック燃料タンク(FT)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いろいろな種類の乗物に搭載される燃料タンクは、一般には、設計の対象となる使用形態に関連する耐漏洩性基準および透過性基準ならびに遵守しなければならない環境要件を満たさなければならない。現在、欧州においても全世界においても、大気中および一般環境中への汚染物質の排出規制に関する要件が実質的に強化されている。
【0003】
こうした排出を抑えるために、特に、タンク内および/または充填パイプ内に構成要素(ベンチレーションライン、バルブ、バッフル、スティフナーなど)を定置することに注意が払われている(特に、本出願人名義の特許文献1参照)。しかしながら、これらの構成要素を成形後のタンクに固定する場合、一般には、当該構成要素をタンク内に導入してそれに固定できるようにするためにタンクに少なくとも1つの開口を設けることが必要である。そのため、この開口の近傍で漏出の問題を生じる可能性がある。
【0004】
したがって、数年前、本出願人は、タンクの実際の成形時に構成要素をパリソン内に導入してそれに固定することにより開口の穿設を回避できるようにすべく、カットされたパリソン(2つのセクションにカットされたもの)を最初に成形するプロセスを開発した(本出願人名義の特許文献2参照)。
【0005】
このプロセスは、それ以来、これらの構成要素を固定するための特定の手段を目指したいくつかの改良の対象になってきた。特に、特許文献3(リベットパンチングによる構成要素の固定)、特許文献4(パリソンへのラインの装着時に延伸される湾曲部の存在に起因して変形する可能性のある部分を有するベンチレーションラインの固定)、および特許文献5(特にベンチレーションラインに関してサイフォンの形成を回避した理想的なレイアウトに基づく構成要素の固定)を参照されたい。
【0006】
これらの改良は、パリソンの縁を溶接せずに(なぜなら、パリソンのセクションの溶接が行われる工程であるタンクの最終成形の前にコアを取り出さなければならないからである)成形型のキャビティー内にパリソンを配置してタンク内の構成要素をそれに固定する時にコア(すなわち、成形型のキャビティー間に挿入できる好適なサイズおよび形状の部品)を使用することにより実施可能である。そのような部品(コア)は、たとえば、特許文献6(その内容は、この目的で参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0007】
しかしながら、これらの種々の改良の実現時、本出願人は、特定の場合、成形および冷却されたタンク内においてコアによりパリソン上に配置された位置に構成要素が存在しないことに気付いた。本出願人はまた、特定の場合(たとえば、一方のポケットから他方のポケットに通じているという制約のあるサドルタンクの場合)、外側からは見えないが、不透過性に関するFT性能の劣化を引き起こす可能性のあるタンクの壁の内部表面の局所的劣化を観測した。
【0008】
観測された種々の事例の分析後、本出願人は、最終的に問題の原因を見出した。すなわち、一般には、ライン(ベンチレーションライン、燃料または電気の供給ラインなど)は、それらの端によりおよび/またはそれらの作動箇所により(たとえば、ベンチレーションラインの場合、ベンチレーションバルブにより)FTに固定されるにすぎないので、タンクの最終的成形のために成形型を閉じる時(パリソンへの構成要素の固定に用いられたコアを取り出した後)、それらの反対側および/または近傍のパリソンの部分を押圧することになる。
【0009】
使用時のタンクの熱膨張を補償できるように、これらのラインは、一般的には緩く固定されるので、それらの固定箇所間にループを生成するかまたは自由長を有する可能性があることに特に注目されたい。成形および冷却されたタンクにラインが固定される従来のFT製造プロセスでは、そのようなループの存在は、よく見受けられ、障害にはならない。反対に、パリソンの溶融時にラインが固定される上記したようなプロセスでは、こうしたループは、パリソンの摩擦(およびその脆弱化)ならびに/またはその中に存在する他の付属品の摩擦(およびその理想位置に対する後者の移動)を生じる可能性があるので、実際上、上述の問題の原因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2004/024487号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第1 110 697号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/008308号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/095024号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2007/000454号パンフレット
【特許文献6】英国特許第1 410 215号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、内部壁に損傷を与えたり他の内部構成要素の位置を変化させたりすることなく成形による製造時にラインをプラスチック燃料タンク内に一体化できるようにする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明は、2つのキャビティーとコアとを含む成形型を用いたパリソンの成形による内部ラインを備えたプラスチック燃料タンクの製造方法に関する。当該方法は、以下の工程、
1.パリソンを成形型キャビティー内に導入する工程、
2.コアをパリソン内に導入する工程(ただし当該コアは最初にラインを備えている)、
3.キャビティーがコアに耐漏洩接触するように成形型を閉じる工程、
4.コアを介してブローすることによりおよび/またはキャビティーの背後から真空を適用することによりパリソンをキャビティーに押圧する工程、
5.コアに装着されたデバイスを用いてラインを少なくとも2箇所でパリソンに固定する工程、
6.成形型を開けてコアを抜き取る工程、ならびに
7.ブロー成形により(パリソン内に加圧流体を射出することにより)および/または熱成形により(キャビティーの背後から真空を適用することにより)パリソンの最終成形を行う工程、を含み、
ラインは、その固定箇所間に、成形型を閉じる時にパリソンおよび/またはその表面上に存在する付属品に接触可能な自由長を含み、それにより、コアに装着されたデバイスを用いて工程(5)の間に少なくとも1つの中間固定箇所が形成される。
【0013】
この方法では工程1および2を同時に行い得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ベンチレーションライン(2)および電気ライン(3)が挿入されて、これらのラインを溶融されたHDPEパリソンに固定するように意図されたHDPEクリップ(1)の断面を示している。
【図2】コア(これは図示されてない)に装着されたジャッキにより作動される可動デバイス(5)を用いたパリソン(4)へのベンチレーションライン(2)の固定を示している。
【図3】類似の固定方法を示しているが、ここでは、成形型キャビティーは、グルーブ(6)と同じレベルのパリソン(4)によるライン(2)の適正な被覆に付与する(矢印方向への変位を介して)2つの傾斜ジャッキ(7)を備えている。
【図4】電気ライン(3)、燃料供給ライン(4)、および燃料帰還ライン(4’)が挿入された10〜20mmの指定の高さを有する単一の広い開口(12)を備えた同様にHDPEから製造されたクリップ(1)の拡大図である。
【図5】電気ライン(3)、燃料供給ライン(4)、および燃料帰還ライン(4’)が挿入された10〜20mmの指定の高さを有する単一の広い開口(12)を備えた同様にHDPEから製造されたクリップ(1)の拡大図である。
【図6】クリップ(1)だけの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「燃料タンク」という表現は、さまざまな変化に富んだ使用条件下および環境条件下で燃料を貯蔵しうる不透過性タンクを意味するものとする。このタンクの例は、自動車に取り付けられるタンクである。
【0016】
本発明に係る燃料タンクは、プラスチックから製造される。
【0017】
「プラスチック」という用語は、少なくとも1種の合成樹脂ポリマーを含む任意の材料を意味する。
【0018】
任意のタイプのプラスチックが好適であり得る。特に好適なプラスチックは、熱可塑性材料の部類に属する。
【0019】
「熱可塑性材料」という用語は、熱可塑性エラストマー、またそのブレンドをはじめとする任意の熱可塑性ポリマーを意味するものとする。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーおよびコポリマー(特定的には二元コポリマーまたは三元コポリマー)の両方を意味するものとする。そのようなコポリマーの例は、ランダムコポリマー、線状ブロックコポリマーおよび他のブロックコポリマー、ならびにグラフトコポリマーであるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
融点が分解温度未満である任意のタイプの熱可塑性のポリマーまたはコポリマーが好適である。少なくとも摂氏10度にわたる融解範囲を有する合成熱可塑性材料が特に好適である。そのような材料の例としては、分子量が多分散を呈するものが挙げられる。
【0021】
特定的には、ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、ポリケトン、ポリアミド、およびそのコポリマーを使用することが可能である。ポリマーまたはコポリマーのブレンドを使用することも可能であり、同様に、高分子材料と、無機、有機、および/または天然の充填剤、たとえば、カーボン、塩、および他の無機誘導体、天然繊維、または高分子繊維など(ただし、これらに限定されるものではない)と、のブレンドを使用することも可能である。以上に記載のポリマーまたはコポリマーのうちの少なくとも1つを含む積重接合層で構成された多層構造体を使用することも可能である。
【0022】
使用されることの多いポリマーの1つは、ポリエチレンである。高密度ポリエチレン(HDPE)を用いて優れた結果が得られている。
【0023】
タンクの壁は、単一層もしくは2層の熱可塑性層で構成可能である。1層以上の他の存在可能な追加の層は、有利には、液体および/または気体に対する障壁材料で形成された層で構成可能である。好ましくは、障壁層の特性および厚さは、タンクの内表面に接触する液体および気体の透過率を最小限に抑えるように選択される。好ましくは、この層は、障壁樹脂、すなわち、燃料に対して不透過性である樹脂、たとえば、EVOH(部分加水分解エチレン/ビニルアセテートコポリマー)などを基材とする。他の選択肢として、燃料に対して不透過性になるようにタンクを表面処理(フッ素化またはスルホン化)に付すことが可能である。
【0024】
本発明に係るタンクは、好ましくは、HDPEを基材とする外層間に位置するEVOHを基材とする障壁層を含む。
【0025】
本発明によれば、タンクは、パリソンを成形することにより製造される。「パリソン」という用語は、所要の形状および寸法に成形した後にタンクの壁を形成するように意図された一般的には押し出されたプリフォームを意味するものとする。このプリフォームは、必ずしもワンピースプリフォームでなければならないというわけではない。
【0026】
したがって、有利には、パリソンは、実際上、たとえば2枚のシートであり得る2つの個別部片から製造される。しかしながら、これらの部片は、好ましくは、上述の特許文献2(その内容は、この目的で参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるように同じ1つの押し出された管状パリソンをカットすることにより得られる。この変形形態によれば、単一パリソンが押し出されてから、このパリソンは、2つの個別部分(シート)が得られるように直径方向に対向した2本の線に沿ってその全長にわたりカットされる。
【0027】
独立して押し出された一定の厚さの2枚のシートを成形する場合と比較して、この手段によれば、好適な押出し装置(一般的には、ダイと位置調整可能なパンチとを備えた押出し機)を用いて得られる、さまざまな厚さのパリソン(すなわち、その長さにわたって厚さが一定でない)を使用することが可能である。そのようなパリソンでは、成形型内における材料の変形率が一定でない結果としてパリソン上の特定点で成形時に起こる厚さの減少が考慮される。
【0028】
パリソンを2つの部片で成形した後、これらの部片は、一般的には、それぞれ燃料タンクの下壁および上壁を形成し、いずれも内表面(タンクを内側方向を向く)および外表面(タンクの外側方向を向く)を有する。
【0029】
本発明に係る方法で使用される成形型は、先に定義したコアとパリソンの外表面に接触するように意図された2つのキャビティーとを含み、パリソンは、ブロー成形(パリソン内に射出される加圧ガスを用いて、これらのキャビティーにパリソンを押圧する)および/または熱成形(真空になるように成形型キャビティーの背後から吸引する)により成形される。
【0030】
好ましくは、それはブロー成形により行われるが、好ましくは、そのほかに、成形型の型締めおよび加圧が行われていない時にパリソンを成形型内に保持するためにキャビティーの背後から吸引を行う(真空になるように吸引する)。そのため、それは、好ましくは、工程(6)の前に脱ガス工程を含む。一般的には、これを行うために、最初に、パリソンを穿孔し(たとえば、ニードルを用いてそれに穴を開けることにより)、次に、流体を成形型から排出させる(たとえば、バルブを用いて)。
【0031】
本発明に係る方法では、ラインは、一般的にはジャッキを含むコアに装着されたデバイスによりパリソンの内表面に固定される。好ましくは、コアにより、いくつかの付属品をタンクの内側に固定する。これらの付属品は、好ましくは、コアを成形型内に挿入する前に、パリソン上のそれらの対応する位置でコア上にプレアセンブルされる(上述の特許文献6参照)。
【0032】
本発明の特に有利な一変形形態によれば、ラインおよびタンク内の少なくとも1つの他の構成要素は、最初に、コアの装填に使用される共通の支持体(フレーム)に取り付けられる。したがって、コア内に装填する前でさえも、このフレーム上に構成要素を定置およびアセンブルすることが可能であるので、構成要素のX、Y、Z方向の定置の優れた繰返し精度が得られ、ときには複雑であるために、あまり人間工学的でないアセンブリー(たとえばベンチレーション系)の取扱いが容易になる。フレームは、対象の部品の重量に依存して、作業者またはロボットにより取扱い可能である。コアの装填に関しては、それは、実際上、パリソンへの構成要素の固定に用いられかつコアに装着されたデバイス(たとえば、ジャッキにより作動されるクランプ)に対向させて構成要素を配置した状態でフレームをコアに直接固定することにより行われる。この手法を用いれば、支持体への種々の構成要素のアセンブルを成形プロセスとは独立に行うことが可能であるので、サイクル時間の節約が可能になる。
【0033】
コアを装填するためのフレームの使用はまた、本発明の関連外でもコアを利用して内部構成要素を固定することを含むFTの任意の成形方法に有利であることに留意されたい。
【0034】
パリソンのブロー成形に必要とされる加圧ガスをブローするために、本発明に係る方法で用いられるコアを使用することも可能であり、ブロー成形されるパリソンが2つのセクションの形態をとる場合、方法の少なくとも工程(3)〜(5)の時にこれらの2つのセクションの縁を加熱状態に保持するために、コアを使用することも可能である。
【0035】
最後に、方法制御のためにコアを少なくとも部分的に使用することも可能である。この目的のために、たとえば、カメラをコア中に組み込むことにより、表示を行って画像解析によりパイプ(およびタンクの他の存在可能な構成要素)の固定の品質を検査できるようにすることも可能である。力、移動、圧力、および温度のような1つもしくは複数の量を測定するための1つ以上のセンサーをコア上に取り付けることにより、パリソンへのパイプの固定をより良好に制御できるようにすることも可能である。
【0036】
本発明は、同一のパリソン部分の2箇所に、特定的にはタンクの上側(壁)部分の内表面(タンクが2つの個別部片の形態でパリソンから成形されるか否かを問わず)に内部ラインを固定するのに特に好適である。これらの箇所は、一般的には数cmさらには10センチメートル超離間する。
【0037】
「ライン」という用語は、本発明に関連する範囲内では、細長形状のパイプすなわちダクト、好ましくはその端が開放されかつ実質的に管状の断面のもの意味するものとする。本発明に係るラインは、ベンチレーションライン、燃料をポンプ移送したり、燃料をエンジンからタンクに戻したり(ディーゼルエンジンの場合)、または充填したりするためのライン、電気ライン(この場合、パイプは、一般的には電気ケーブルのシースである)などでありうる。このラインは、好ましくは、何か(流体、電気など)を移送するために使用される。本発明によれば、それは、少なくとも2箇所でタンクに固定され(より詳細には、パリソンに固定され、ここで、「タンク」という語は、完成した成形品を意味する)、一般には、その端および/または作動箇所を介して固定される。
【0038】
「固定される」という用語は、ラインがタンクの壁に直接接触した状態にあるかまたは中間固定手段(それ自体はタンク壁に直接接触した状態にある)に装着されるかのいずれかを意味するものとする。「接触」という用語は、機械的固定(取外しが可能である)または溶接(もしくは分子相互侵入)のいずれかを意味するものとする。後者は、透過性の観点から見て良好な結果を与え、パリソンが成形時に溶融/軟化されるので本発明に関連する範囲内で実用可能である。したがって、リベットパンチングなどのような他の技術(好ましくは、パリソンが溶融/軟化されることの利点をも生かして)を使用することも可能である。これは、本出願人名義のFR04/08196号(その内容は参照により本出願に組み入れられるものとする)に記載の技術である。
【0039】
好ましくは、ラインは、中間固定手段により装着され、なかでも特に好ましくは、後者は、ラインが容易に(すなわち、ほとんど摩擦を生じることなく)その中に摺動できるような形状を有し、したがって、特に成形後(前記タンクの冷却時)に起こるタンクの収縮の主軸の方向に拘束を受けることなく移動できることが保証されるような相対的可動性を有する。この目的のために、クリップ(すなわち、リングまたは直径未満の長さを有する円筒の一部分(スライス))を用いると良好な結果が得られ、特定的には、クリップは、ラインが挿入されて重力により垂下した時にその内表面の一部分にのみラインが接触した状態になるような直径を有する。これを達成する一方法は、実際上、ライン(または適切であれば複数のライン)がクリップの内部空間の多くとも3/4、好ましくは多くとも2/3、なかでも特に好ましくは利用可能な内部空間の多くとも半分を占めることを保証することに依拠する。
【0040】
「作動箇所」という表現は、タンクで作動的役割を果たすラインの一部分または付属品、すなわち、たとえば、ベンチレーションバルブ、タンク外の付属品への接続部(継ぎ手)(たとえば、電圧源との電気的接続部、エンジンへの液圧接続部など)を意味するものとする。本発明の特に有利な一変形形態によれば、ラインの少なくとも1つの固定ポイントは、パリソンに固定されるという事実に基づいてかつラインに装着される方法に基づいてこのラインの回転防止を可能にする付属品から形成される。これは、場合により、回転(ラインの回転により駆動される)によりパリソンに損傷を与える可能性もある「自由な」付属品(ラインに装着されているがタンク内に固定されていない)を当該ラインが含んでいることもあるからである。これを達成する一方法は、実際上、クイックカップリングにより嵌合一体化されかつこうした構成要素の相対的回転を防止する相補的レリーフをラインおよび付属品に設けることに依拠する。回転停止を行う「ファーツリー」嵌合は、この目的に特に好適である。
【0041】
ラインをFT内に固定するという問題である場合、回転防止固定の使用は、本発明の範囲外でも有利であることに留意されたい。
【0042】
本発明に係るラインは、その機能に好適な任意の材料から製造可能である。周囲温度の近傍の温度の流体を移送するパイプの場合(たとえば、タンク用のベンチレーションパイプ(その目的は、一般的には、燃料蒸気を吸着するためのデバイスまたはキャニスターにタンクの頂部を接続することである)、蒸気ベントライン(タンクに充填する時に蒸気の一部を充填パイプの頂部に送る)、最大燃料レベルを固定するためのライン(燃料のレベルによりその閉塞が起こるとノズルが作動する)など)、このパイプは、一般的にはプラスチック、特定的にはHDPEを基材とする。
【0043】
好ましくは、上述の特許文献4に記載されるように、ラインは、少なくとも1つの湾曲の存在に起因して、それをタンクに固定する箇所間で変形可能である。「変形可能」という表現は、パイプの2つの固定箇所間の距離が可変であることを意味するものとする。「湾曲」という用語は、実際上、延伸時にパイプを長くする任意の変形(たとえば、コイル(渦巻き)または1つ以上のコルゲーション(蛇腹、波形)など)を意味するものとする。実用上非常に好適な一変形形態(パイプの単純変形(好ましくは熱変形)による適用が容易であるため)は、「S」、ウェーブ、または「V」(湾曲の両端端を含めた場合、より厳密には「W」)のような形状の少なくとも1つの湾曲を所要の領域に生成することに依拠する。したがって、一方法では、成形されたタンクの冷却時に好ましくは静止状態(またはほとんど静止状態)になるようにパリソン上へのパイプの取付け時に伸長されるバネが形成される。
【0044】
好ましくは、本発明に係る方法のラインは、少なくとも1つのバルブを含むベンチレーションパイプである。好ましくは、それは、その両端の少なくとも一方にバルブが存在することにより特徴付けられ、特に有利には、それは、その両端のそれぞれにバルブを含み、そしてタンクへのパイプの固定は、これらのバルブを介して、さらには、ループ(自由長)を排除する以外の役割は有していない中間固定箇所により行われる。
【0045】
これは、いくつか(少なくとも2つ)のポケットを含むタンク(サドルタンク)では、一般的には、それらの少なくとも1つ(一部分)をベンチレートすることが推奨されるからである。実用上好適であるこれを達成する一手段は、ベンチレートすることが望まれる1つもしくは複数のポケットにベンチレーションバルブを装備し、このバルブを、先に記載のパイプを介して、さらにはパイプとキャニスターとの間に装着されたバルブにより、キャニスターに接続することに依拠する。そのようなバルブは、いくつかの機能、すなわち、揺動した場合または乗物が横転した場合に液体燃料がキャニスターに進入するのを防止する機能(ROV機能すなわちロールオーバーバルブ機能)、過剰充填を防止する機能(ISR機能)、蒸気により連行される可能性のある液体燃料の液滴をトラップする機能(液体蒸気分離機能)などを果たし得る。本発明は、燃料タンク上の種々のバルブに連結一体化するベンチレーションパイプを固定する上で特に好適である。
【0046】
先に記載のサドルタンクの場合、以上で既に述べた重要な位置は、ポケットを連結一体化しかつ一般的には低減された高さを有するタンクの中央部分で構成される。本発明によれば、特定的には、寸法が低減されたとしても1つもしくは複数のベンチレーションラインを通さなければならない場合、この領域またはその近傍に追加の固定箇所を設けることにより、この位置におけるタンクの壁の損傷を回避することが可能である。
【0047】
より一般的には、本発明によれば、内部ライン中のループ(自由長)の存在に起因するパリソンの損傷および/またはその内部付属品の変位は、こうしたループの両端間に中間固定箇所(この箇所は、一般的には、ループを除去する以外の機能を有していない)を設けて前記ループを排除することにより、克服可能である。
【0048】
ラインがFTの内表面と同一の材料(一般的にはHDPE)を基材とする場合、この中間固定は、コアに装着されたデバイス(一般的には、この目的に合ったジャッキたとえば液圧ジャッキを含む)を用いて自由ループを前記表面に単に押圧して溶接することにより形成可能である。しかしながら、特にベンチレーションラインが対象の場合、当該ラインは、パリソンが高温であることを考えると潰れる(平坦化する)可能性がある。
【0049】
したがって、既に以上で述べたように、本発明の有利な一変形形態によれば、中間固定箇所は、タンク内に固定する前にラインを収容した固定用部品を用いて形成される。この固定用部品は、コアに装着されたデバイスを用いて加圧することにより中間固定箇所でパリソンに効果的に溶接される。好ましくは、これは、FTの壁に押圧することによりFTに溶接できるようにHDPEから形成された部品である。所要の位置でラインを収容する単純なHDPEクリップは、この目的に特に好適である。
【0050】
他の有利な変形形態によれば、ラインは、少なくとも中間固定箇所の領域では、タンクの耐熱性よりも大きい耐熱性を有する材料を部分的に基材とし(たとえば、タンクがHDPEから製造される場合、PA(ポリアミド)またはPOM(ポリオキシメチレン)を基材とし)、かつ成形型キャビティーは、好適なレリーフを固定箇所の位置に含み、その結果として、コアに装着されたデバイスの圧力下で、ラインは、この位置でレリーフ内に収容され、次に、パリソンの1つのセクションは、レリーフとラインとの間にクランプされることが保証される。その場合、このレリーフは、タンクが離型される時にパイプがクランプされたセクションにより固定されるような形状を有していなければならない。キャビティー内のレリーフは、一般的には、グルーブの形状である。有利には、このグルーブは、中間固定位置でパリソンがラインと合体するように外側から(すなわちキャビティーからコアの方向に)局所的にパリソンを押す少なくとも2つの傾斜ジャッキにより包囲される。
【0051】
この変形形態では、全ラインが、PAやPOMのような改良された耐熱性を有する材料を基材とすることが可能であるか、または好ましくは、ラインはHDPEから製造されるがその中間固定箇所の位置ではそのような材料を基材とするシースを備えるか、のいずれかである。
【0052】
本発明の2つの好ましい変形形態(それぞれクリップまたは成形型キャビティー内のレリーフを有する)は、それぞれ、図1および図2〜3により模式的に例示される。本発明のいくつかの他の好ましい変形形態が組み込まれたクリップを図4〜6に示す。
【0053】
これらの図では、同一の数字は、同一もしくは類似の構成要素を表す。
【0054】
図1は、ベンチレーションライン(2)および電気ライン(3)が挿入されて、これらのラインを溶融されたHDPEパリソンに固定するように意図されたHDPEクリップ(1)の断面を示している。このクリップは、これらのラインの「自由」ループに緩く固定され(このループを収容し)、かつそれは、パリソンにクリップを溶接すべくパリソン上/パリソン内にクリップを押すコア上に存在するジャッキを用いてパリソンに溶接されるので、これはすべて、ラインを変形させることなく行われる。このクリップは、特に成形後のタンクの収縮時に拘束されることなくラインが移動できるように保証すべく非常に緩くラインが挿入される2つの広い開口を備える。それはまた、その表面上に、タンクの壁(下側表面)に溶接するように意図された溶接プラットフォーム(溶接脚)または突出部をも含む。
【0055】
図2は、コアに装着されたジャッキ(これらは図示されてない)により作動される可動デバイス(5)を用いたパリソン(4)へのベンチレーションライン(2)の固定を示している。この可動デバイスを用いて、変位(矢印により示される)およびラインへの加圧により、成形型キャビティー(グルーブに隣接する一方の部分だけが示されている)内に存在するグルーブ(6)中にこのラインを収容することが可能である。この図では、溶融状態にある時のパリソン(4)がどのようにライン(2)を包囲するかがわかる。固化後、それは、グルーブ(6)のレリーフに対応するレリーフ内の所定の位置にライン(2)を保持する。
【0056】
図3は、類似の固定方法を示しているが、ここでは、成形型キャビティーは、グルーブ(6)と同じレベルのパリソン(4)によるライン(2)の適正な被覆に(矢印方向への変位を介して)付与する2つの傾斜ジャッキ(7)を備えている。
【0057】
図2および図3では、寸法は、例として与えられている。
【0058】
図4〜図6は、電気ライン(3)、燃料供給ライン(4)、および燃料帰還ライン(4’)が挿入された10〜20mmの指定の高さを有する単一の広い開口(12)を備えた同様にHDPEから製造されたクリップ(1)の拡大図である(図4および図5、ただし図6はクリップだけを示している)。
【0059】
これらのラインは、クリップ(1)との一体物として成形されたタング(9)中に形成された開口に挿入されたクランピングカラー(10)により保持される。
【0060】
このカラーを用いれば、特にコアの装填時の取扱いがより容易になるように、ケーブルおよびラインを互いに保持することが可能である。また、ブロー成形時における上述のクリップ中でのケーブルおよびラインのランダム配置を介したクリップ中でのジャミング(これによりその目的が無効になるであろう)の危険性を回避することも可能である。
【0061】
これらの図に示されるクリップは、HDPEタンクの壁に溶接可能なベース(11)と、さらには、成形プロセス時に部品(たとえば電気コネクター)を収容するために使用可能でありかつ次にタンク内の固定されるべき場所に固定するために離型後に取り外し可能であるケーシング(8)とを含む。
【0062】
この電気コネクターは、このコネクターを有する構成要素を最終(手動)アセンブル操作時に取り付けられる電気部品に接続するために使用可能である。このケーシング(8)を用いない場合、作業者は、タンク内のコネクターを探さなければならないであろう。
【0063】
金属リング(12)は、タンクを成形する時に外側からクリップを容易に配置できるように溶接ベース(11)に一体化される。注目に値することとして、プラスチック部品に金属インサートを装備するという考えはまた、本発明の範囲外でも、すなわち、プラスチックFT内の内部プラスチック付属品の位置を制御するためのプロセスの枠内で、上述の利点を与える。すなわち、この金属インサート(任意の形状たとえば金属ディスクであり得る)により、金属検出器、X線走査などを用いてより容易に部品を配置できるようになる場合が該当する。したがって、プラスチックベントバルブ(たとえば、ROVすなわちロールオーバーバルブ、FLVVすなわちフィルリミットベントバルブなど)の場合、タンク内にバルブを取り付ける前に、カバーとバルブ本体との間(2つの部分よりなるバルブの場合)、カバー上の陥凹部内などに金属ディスクを挿入することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 HDPEクリップ
2 ベンチレーションライン
3 電気ライン
4 パリソン
4’ 燃料帰還ライン
5 可動デバイス
6 グルーブ
7 傾斜ジャッキ
8 ケーシング
9 タング
10 クランピングカラー
11 ベース
12 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのキャビティーとコアとを含む成形型を用いてパリソンを成形することによる内部ラインを備えたプラスチック燃料タンクの製造方法であって、以下の工程、
1.前記パリソンを前記成形型キャビティー内に導入する工程、
2.前記コアを前記パリソン内に導入する工程であって、前記コアは最初にラインを備えている工程、
3.前記キャビティーが前記コアに耐漏洩接触するように前記成形型を閉じる工程、
4.前記コアを介してブローすることによりおよび/または前記キャビティーの背後から真空を適用することにより前記パリソンを前記キャビティーに押圧する工程、
5.前記コアに装着されたデバイスを用いて前記ラインを少なくとも2箇所で前記パリソンに固定する工程、
6.前記成形型を開けて前記コアを抜き取る工程、ならびに
7.ブロー成形により(前記パリソン内に加圧流体を射出することにより)および/または熱成形により(前記キャビティーの背後から真空を適用することにより)前記パリソンの最終成形を行う工程、を含み、
前記ラインが、その固定箇所間に、前記成形型を閉じる時に前記パリソンおよび/またはその表面上に存在する付属品に接触可能な自由長を含む方法において、前記コアに装着されたデバイスを用いて工程(5)の間に少なくとも1つの中間固定箇所が形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記パリソンが、同じ1つの押し出された管状パリソンを直径方向に対向した2本の線に沿ってその全長にわたりカットすることにより得られた2つの個別部片で形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラインおよび前記タンク内の少なくとも1つの他の構成要素が、最初に、前記コアの装填に使用される共通の支持体に取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラインの少なくとも1つの固定箇所が、前記パリソンに固定されるという事実に基づいてかつ前記ラインに装着される方法に基づいて、このラインの回転防止を可能にする付属品から形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ラインが、両端のそれぞれにバルブを有するベンチレーションパイプであり、かつ前記パイプが、これらのバルブを介しておよび中間固定箇所によりタンクに固定されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンクがサドルタンクであり、それが、前記バルブの1つをそれぞれ含む少なくとも2つのポケットを連結一体化する低減された高さの中央部分を含み、かつ前記中間固定箇所が、この中央部分またはその近傍に存在することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中間固定箇所が、前記タンク内に固定される前に前記ラインを収容する固定用部品を用いて形成され、かつ前記固定用部品が、前記コア上の好適なデバイスを用いて加圧することにより前記中間固定箇所で前記パリソンに溶接されることを特徴とする請求項1なしい請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記固定用部品がHDPEクリップであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ラインが、少なくとも前記中間固定箇所の近傍では、前記タンクの耐熱性よりも大きい耐熱性を有する材料を部分的に基材とし、かつ前記成形型キャビティーが、好適なレリーフを前記固定箇所の位置に含み、その結果として、前記コアに装着されたデバイスの圧力下で、前記ラインが、この位置で前記レリーフに収容され、次に、前記パリソンの1つのセクションが、前記レリーフと前記ラインとの間にクランプされることが保証されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記キャビティー内のレリーフが、永久的グルーブ形レリーフであるか、または前記中間固定位置で前記パリソンが前記ラインと合体するように外側から局所的に前記パリソンを押す2つの傾斜ジャッキを含むリトラクタブルレリーフであることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−540290(P2010−540290A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527382(P2010−527382)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061510
【国際公開番号】WO2009/043660
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(507383057)イナジー・オートモーティブ・システムズ・リサーチ・(ソシエテ・アノニム) (65)
【Fターム(参考)】