説明

プラズマアドレスマイクロ−ミラーディスプレイ

光学特性を有する複数の電極マイクロメカニカルアクチュエータを備えた画素のマトリクスを有するガス放電アドレスディスプレイである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ディスプレイパネルに係り、双安定(bistable)光変調器を備えたディスプレイのマトリクスアドレッシングに関する。特に、本発明は、低圧ガス放電を利用した静電力作動マイクロ−ミラーディスプレイのマトリクスアドレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、フラットパネルディスプレイは、画像を提供するために光を生成し変調する画素アレイを備える。個々の画素にデータを供給するために、通常、各画素のための電子スイッチ、並びに行及び列電極を備えたアドレッシング構造が利用される。現在、液晶フラットパネルディスプレイにおける電子スイッチとして、薄膜トランジスタが使用されており、プラズマディスプレイではガス放電が、アドレッシングのために利用されている。ガス放電アドレッシングが、液晶及びエレクトロルミネセントディスプレイにも提案されている。
【0003】
Buzakらにより公表された特許文献1には、第二基板上の多数のチャンネル及び第一基板上の多数の列電極の領域を覆うように画定されたデータ記憶素子にアドレスするために、イオン化ガス媒体を使用するアドレッシング構造が記載されている。誘電材料層が、第一及び第二基板を分離する。Buzakらの構造の各チャンネルが、参照電極及び行電極を含む。参照電極が、接地電位に設定され、行電極が、負の(negative−going)DCパルス信号を受け、チャンネル内に含まれるガスのイオン化を選択的に生じさせる。
【0004】
Stollerにより公表された特許文献2には、マトリクス型フラットパネルディスプレイが記載されており、ACプラズマガス放電システムが、空間変調を使用し、液晶層のグレー・スケールを制御する。液晶媒体は、オン−オフ(二層)モードで操作可能なものであり、全領域のサチュレーションが、それに接触又は隣接しているガス放電によってチャージされた空間領域によって直接的に決定される。透明電極アレイ、LC媒体、及びガス媒体の間の誘電体層のような電荷貯蔵表面が、選択されたマトリクスクロス−ポイントでの結合電圧(conjoint voltage)の大きさに比例して拡散するように生じた電荷を貯蔵する。液晶材料が、これによって、選択されたマトリクスクロス−ポイントでの光透過の空間的なグレーレベルを提供する状態を変化させるスポットの空間又は面積サイズを、電荷拡散領域が定める。
【0005】
以下の段落においてさらに詳細に議論されるように、本発明は、従来技術と明確に区別され、独自に、光を変調する光学特性を備えたマイクロメカニカルアクチュエータをベースとしたディスプレイ用のマトリクスアドレッシングを対象とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4896149号明細書
【特許文献2】米国特許第5519520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、双安定光変調器により構成された画素を備えたガス放電アドレスディスプレイパネルを提供することである。本発明の一形態として、この目的が、基板上に複数の画素並びに複数の第一及び第二アドレッシング電極を提供することにより達成される。各画素が、光学特性を有するマイクロメカニカルアクチュエータ及び作動電極を含む。各作動電極が、第一アドレッシング電極の選択された1つとともにコンデンサーを形成し、第二アドレッシング電極の選択された1つとともに低圧放電ガス内で作動するアークギャップ(arc gap)を形成する。
【0008】
本発明の他の目的は、双安定画素を備えたディスプレイパネル用のアドレッシング構造を提供することである。この目的は、基板上に複数の画素電極並びに複数の第一及び第二アドレッシング電極を提供することにより達成される。ここで、各画素電極が、第一アドレッシング電極の選択された1つとともにコンデンサーを形成し、第二アドレッシング電極の選択された1つとともに低圧放電ガス内で作動するアークギャップを形成し、双安定画素の選択された1つに電位を提供する。
【0009】
本発明の他の目的は、双安定画素のアドレッシングのための電子回路を提供することである。この目的は、第一アドレッシング電極、コンデンサー、低圧放電ガス内で作動するアークギャップ及び第二アドレッシング電極により構成された直列接続電子回路を提供することにより達成される。ここで、等価回路が、電圧制御された自己終端(self terminating)電流スイッチとして機能し、双安定画素に電位を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記及び他の目的が、以下の明細書に記載され添付された図面において図示された新規なディスプレイアドレッシング構造及び方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のディスプレイパネルの一形態の概略的な斜視図である。
【図2】図1の線2−2に沿った拡大断面図である。
【図3】図2の3−3と示された領域の拡大された、部分的な、断面図である。
【図4】本発明のアドレッシング構造の一形態を実現し、本発明のアドレッシング方法の一形態を実施するディスプレイパネルの内部構造を示す概略的な部分切り欠き斜視図である。
【図5】ディスプレイパネル及び関連するパネルドライブエレクトロニクスを含む本発明のフラットパネルディスプレイの概略図である。
【図6】ディスプレイパネルのアドレッシングのための本発明の行及び列電極に印加された様々な電圧波形を図示する概略図である。
【図7】本発明のディスプレイパネルの代替形態の内部構造を示す概略的な部分切り欠き斜視図である。
【図8】ディスプレイパネル及びディスプレイのパネルドライブエレクトロニクスを含む本発明のフラットパネルディスプレイの代替形態の概略図である。
【図9】図7に図示されたディスプレイパネルのアドレッシングのための行及び列電極に印加された電圧波形を図示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特に、図1〜3の図面を参照すると、これらの図面では、以下の段落に記載される本発明の実施形態においてみられる特徴である光導波路及び角度可変のマイクロ−ミラーを有するディスプレイパネルの構造及び光学的機能性が図示されている。図1に特に見られるように、通常、符号20と指定されたディスプレイパネルが、通常、断面がくさび型である長方形の光導波路21を備える。導波路21が、好ましくは、アクリル又はガラスのような光学的に透明な材料により構成され、平行な側面28及び29によって結合された通常平行な第一及び第二エッジ面26及び27を備える(図1参照)。また、導波路21が、特別に構成された主上面30及び上方に傾いた下面31を含む(図2も参照)。図1に示されるように、複数の等間隔の溝32が、上面30上に形成され、側面28と29との間に広がる。細長い光源24が、導波路21の広いエッジ26に近接して取り付けられ、角度可変のマイクロ−ミラー33のマトリクスが、導波路の上面30上に構成される。図2において、角度可変のマイクロ−ミラーの1つの列が、33a、33b、33c、33d、33e及び33fとして示されている。
【0013】
次に、図3の図を参照すると、導波路21の上面30上に形成された全ての溝を代表する溝32が、3つの、通常、平坦面34、35及び36を備える。図2及び3に図示されているように、面34が、上面30に対して80から90°の急角度で下向きに傾いている。第二の面35が、上面30から凹んでおり、通常、上面30と平行であり、面36が、上面30に対して約45から約60°の角度で上向きに傾斜している。
【0014】
さらに、図3に図示されているように、多層膜コーティングが、面35及び36に設けられている。第一層37が、面36上にのみ堆積された光−吸収ブラックポリマー膜である。アルミニウム合金のような材料から形成されることが可能な第二層38が、光−吸収層37上及び面35上に堆積された導電性鏡面反射ミラー膜を備える。第三層39が、導電性ミラー膜層38の平坦な横断面上にのみ堆積された透明電気絶縁体を備える。
【0015】
また、図3には、角度可変のマイクロ−ミラー33の群の角度可変のマイクロ−ミラー33eの1つが図示されている。各角度可変のマイクロ−ミラーが、導波路21の上面30に設置されたアルミニウム合金弾性薄膜を備える。傾斜軸42においてマイクロ−ミラーを曲げるために(図3参照)、各マイクロ−ミラーの厚さが、導波路21の上面30との下向きの傾斜面34の接合部で減少する。外部光を吸収するように、ブラックポリマー薄膜41が、各マイクロ−ミラーの上面上に堆積される。
【0016】
本形態のディスプレイパネルにおいて、角度可変のマイクロ−ミラー33が、弾性膜によって生成されたカウンター(counter)スプリング力及び静電気引力によって動作する。電気的に、各角度可変のマイクロ−ミラー33が、導電性ミラー膜38とともに可変コンデンサーを形成するコンデンサープレートに相当する。適当な電圧“V”が、固定された導電性ミラー膜38とマイクロ−ミラー33との間に印加された場合、マイクロ−ミラーが、静電気引力によって傾斜し、電圧が印加されない場合、マイクロ−ミラーが、弾性膜のカウンタースプリング力によって、平坦な位置に戻る。溝の代わりとして、適当に構成されたキャビティが、導波路の上面30上に形成されることが可能であり、角度可変のマイクロ−ミラーが、溝内よりもむしろキャビティ内に収容されることが可能である。
【0017】
特に図2の図面において見られるように、導波路21の広いエッジ26から入射する光線43が、全反射によってX軸の光伝播方向に均一に分散され、下向きの傾斜面34を介して導波路21から抜け出る。角度可変のマイクロ−ミラーの位置に応じて、光線が吸収され、又は、その代わりに、視聴者に向かう。
【0018】
マイクロ−ミラー33c及び33d(図2)のように、角度可変のマイクロ−ミラーが、平坦な位置にある場合、光線が、ミラーコーティング38及びマイクロ−ミラーの下部光反射表面から反射し、視聴者に向かう。マイクロ−ミラー33a及び33bのように、選択されたマイクロ−ミラーが下向きに傾斜している場合、光線が、ミラーコーティング38及びマイクロ−ミラーの下部光反射表面から反射し、法線に向かって角度を変える。多数の反射の後、光線が、それらのエネルギーを失い、光が吸収される。いくつかの光線が、マイクロ−ミラー及びミラーコーティング38からの反射により、それらの反射角度を変え、このような光線が、下向きの傾斜面34から光路に再入射し、光源の方向に後進しうる(図2及び3に示されるマイクロ−ミラー33e及び33f参照)。光吸収層37が、後進する光線を吸収する。
【0019】
ディスプレイサイズ及び解像度に応じ、各画素が、いくつもの角度可変のマイクロ−ミラーを含んでよい。個々のマイクロ−ミラーのサイズを小さくすることは、必要とされる静電アクチュエーション電圧の減少に役立つ。また、各画素に対するマイクロ−ミラーが、グループ分けされてよく、固定電極38とマイクロ−ミラーの選択された群との間に適当な電圧が印加された場合、異なるレベルの光が調節される。これが、ディスプレイのアドレッシングの制約を軽減する。図1に示されるディスプレイパネルが、分離基板上に構成されてよく、バックライトアセンブリと結合される。本発明は、マトリクスアドレッシング構造及びこのタイプのディスプレイパネルシステムのための方法を提供する。
【0020】
図4が、本発明のアドレッシング構造の一形態を実現し、本発明のアドレッシング方法を実施するディスプレイパネル50を示す。通常、本発明のディスプレイパネルが、極めて多数の画素、及び関連するアドレッシング電極を有する。しかしながら、説明のみを目的として、4つの画素、並びに、ディスプレイパネル50用の第一及び第二アドレッシング電極として2組の行及び列電極が、図4に示されている。
【0021】
図4に図示されているように、ディスプレイパネル50が、2つの、通常、平行な、第一及び第二基板51及び52を含み、この第一及び第二基板51及び52は、アクリル又はガラスのような、光学的に透明な材料により構成され、スペーサ53によって分離される。本発明のこの形態では、基板51と52との間の間隙が、約30torrから約500torrの間の圧力において、実質的に、ネオン、アルゴン、ヘリウム及びキセノン又はこれらのいずれの混合物のような放電ガスで充填される。
【0022】
図4の図面に示されるように、基板51が、通常、長方形であり、平行な側面56及び57によって結合された通常平行な第一及び第二端面54及び55を有する。基板51が、特別に構成された主上面58及び離隔した下面59も有する。等間隔の溝60が、上面58上に形成され、側面56と57との間に広がる。溝60内に配置される凹面上に、第一アドレッシング又は行電極R1及びR2が設けられる。行電極R1及びR2が、好ましくは、ニッケル又はアルミニウムから堆積され、誘電体膜61の薄層で絶縁される。
【0023】
アルミニウム合金弾性薄膜により構成された第二アドレッシング又は列電極C1及びC2、並びに4つの角度可変のマイクロ−ミラーM1,M2,M3及びM4が、基板51の上面58に取り付けられる。本発明のディスプレイパネルのこの形態において、角度可変のマイクロ−ミラーM1,M2,M3及びM4が、第一及び第二位置の間を移動可能であり、角度可変のマイクロ−ミラーと各行電極R1及びR2の間の静電気引力によって、並びに弾性膜によって生成されたカウンタースプリング力によって作動する。電気的に、各角度可変のマイクロ−ミラーが、コンデンサープレートに相当し、行電極とともに、可変コンデンサーを形成する。4つのアークギャップG1,G2,G3及びG4が、列電極とマイクロ−ミラーとの間に形成される。クロストークを防止するために、マイクロ−ミラーと列電極との間で、最小の浮遊容量(stray capacitance)を有することが望ましい。従って、列電極の一部のみが、マイクロ−ミラー近くに広がる。上記のように、本発明は、マイクロ−ミラーのアドレッシングのために、低圧ガス放電を使用する。
【0024】
作動中、列電極とマイクロ−ミラーとの間においてスパークが開始されるように、最小のブレークダウン電圧Vbが要求される。要求される最小のブレークダウン電圧Vbが、通常、ギャップの最小ブレークダウン電圧が、ギャップ長とギャップ圧力との積であるとするパッシェンの法則に従う。これは、非線形関数であり、通常、Vb=f(p*d)で記載され、ここで、pは、圧力であり、dは、ギャップ距離である。作動中、列電極C1とマイクロ−ミラーM2又はM4との間のアークを防止するために、列電極C1とマイクロ−ミラーM2及びM4との間の距離d1が、アークギャップの長さよりも極めて大きなものとされる。
【0025】
図5は、ディスプレイパネル50及びパネルドライブエレクトロニクスを含むフラットパネルディスプレイ65の概略図を図示する。図5に描かれているように、データ処理及び表示スキャンニングエレクトロニクスブロック62が、ディスプレイパネル50の行電極を連続して選択するために、行ドライバ64にスキャン信号を提供し、同期化データ信号を列ドライバ63に提供する。また、ブロック62が、同期制御信号を光源65に提供する。ディスプレイパネル50の電極を駆動させるために、行ドライバ64及び列ドライバ63が、シフトレジスタ及び緩衝増幅器を備える。通常、緩衝増幅器が、相補型(complimentary)トランジスタを備え、バイアス保護ダイオードを逆転させる。
【0026】
図5において、行電極の各部分とともにコンデンサを形成するディスプレイパネル50の角度可変のマイクロ−ミラーが、コンデンサープレートM1,M2,M3及びM4として図示されている。また、図5には、4つのアークギャップG1,G2,G3及びG4が示されており、各々が、各列電極C1及びC2と接続された第一端子、並びに、各コンデンサープレートM1,M2,M3及びM4と接続された第二端子を有する。
【0027】
図6では、ディスプレイパネル50のアドレッシングのために、行及び列電極に印加される様々な電圧波形が図示されている。さらに、図6では、列及び行電極に印加された電圧の結果として生成されたマイクロ−ミラーM1及びM2に対する電圧波形が図示されている。図6において、リセット、アドレッシング及び表示周期を含むひとつのビデオフィールド時間間隔が示されている。最初は、列電極が、0V電位に設定され、行電極が、−40V電位に設定される。最初に、マイクロ−ミラー及び行電極により形成されるコンデンサーが、放電され、マイクロ−ミラーM1及びM2が、行電極と同じ−40V電位を有する。
【0028】
上記のように、アークを開始するために、アークギャップにわたって、特定の最小のガスブレークダウン電圧Vbが、要求される。また、各ガス放電が、ブレークダウン電圧Vbの約70%である特定の消弧(extinguishing)電圧Veを有する。このアプリケーションに対し、ブレークダウン電圧Vb=100Vであり、消弧電圧Ve=70Vであることが想定される。
【0029】
1マイクロ秒又はそれ未満である時間間隔T1の間に、40Vパルスが、列電極C1及びC2に印加され、−80Vが、行電極R1に印加される。これにより、アークギャップG1及びG2にわたって120V電位が形成され、各アークギャップにおいてアークが開始される。開始されたアークが、マイクロ−ミラーM1,M2と行電極R1の各部分によって形成されたコンデンサーを帯電させる。マイクロ−ミラーM1及びM2に印加された電荷が、マイクロ−ミラーの電位を最大50Vまで上昇させる。結果として、アークギャップにわたって、電位が、消弧電圧Ve=70Vよりも下がり、アークが、消滅する。等価回路が、電圧制御された自己終端電流スイッチとして機能する。
【0030】
時間間隔T2の間に、列電極C1及びC2上の電圧が、0Vに設定され、行電極R1が、70V電位まで上げられる。これが、時間間隔T1の間にマイクロ−ミラーM1及びM2に印加された50Vの電荷を増やし、アークギャップG1及びG2にわたって、120V電位を形成し、各アークギャップにおいてアークを開始させる。開始されたアークが、マイクロ−ミラーM1,M2と行電極R1の各部分とによって形成されたコンデンサーを放電させる。これにより、アークギャップにわたって、電位が、120Vから70Vまで減少し、アークが消滅する。
【0031】
図6において、最後の2つの波形が、マイクロ−ミラーM1,M2と行電極R1との間の静電気引力を生成する電位差を示している。時間間隔T2の間に、先に作動されたマイクロ−ミラーが、弾性膜によって生成されたカウンタースプリング力によって上部の平坦な位置にリセットされる。このため、時間間隔T2が、十分な長さの間(>20マイクロ秒)保持される。時間間隔T1及びT2の間の上記操作が、ディスプレイの全てのマイクロ−ミラー及び行電極に行われる。
【0032】
図6に示されているように、アドレッシング周期及び時間間隔T3の間、列電極C1に40Vが印加され、列電極C2に0Vが印加され、行電極R1に−80Vが印加される。これにより、アークギャップG1にわたって、120V電位が形成され、アークギャップG2にわたって、80V電位が形成される。要求されるブレークダウン電圧が、Vb=100Vであるため、アークが、アークギャップG1においてのみ開始され、開始されたアークが、マイクロ−ミラーM1を50Vだけ変化させる。50Vの帯電を受けるマイクロ−ミラーと行電極の間に生じた静電力により、マイクロ−ミラーが作動する。時間間隔T3に続いて、−80Vパルスを行電極R2に印加し、対応するデータを列電極に与えることにより、マイクロ−ミラーM3及びM4のアドレッシングが行われる。
【0033】
図7を参照すると、通常、符号70で示されている、本発明の代替形態のディスプレイパネルが示されている。アドレッシング構造を実現し、本発明のアドレッシング方法を実行する、この代替実施形態が、いくつかの点で、図4の図面に示された実施形態と似ており、同等の構成部品を特定するために、図7において同様な符号が使用される。
【0034】
ここで、ディスプレイパネル70が、2つの離隔した、通常平行な基板51及び52を備え、この基板51及び52は、アクリル又はガラスのような、光学的に透明な材料により構成される。ディスプレイパネル70において、アドレッシング構造が、前面カバー基板52上に形成され、マイクロ−ミラー及び下部静電アクチュエーション電極が、基板51上に形成される。基板51が、通常、長方形であり、平行な側面56及び57によって結合された平行な第一及び第二端面54及び55を備える。また、基板51が、特別に構成された主上面58及び離隔した下面59を備える。
【0035】
等間隔の溝60が、上面58上に形成され、側面56と57との間に広がる。下部電極L1及びL2が、溝60内に配置された凹面上に設けられ、アルミニウムから堆積され、透明な誘電体薄膜61で絶縁される。アルミニウム薄膜により構成された第一及び第二マイクロ−ミラー駆動電極E1及びE2並びに4つの角度可変のマイクロ−ミラーM1,M2,M3及びM4が、基板51の上面58に取り付けられる。電極E1が、マイクロ−ミラーM1及びM2と電気的に接続され、電極E2が、マイクロ−ミラーM3及びM4と電気的に接続される。長方形のコンデンサープレートP1,P2,P3及びP4を有する第一アドレッシング又は行電極R1及びR2が、基板52の下面73上に設けられ、アルミニウムから堆積される。図7に示されるように、コンデンサープレートP1,P2,P3及びP4が、各マイクロ−ミラー上に配置される。
【0036】
行電極R1が、コンデンサープレートP1及びP2と電気的に接続され、一方、行電極R2が、コンデンサープレートP3及びP4と電気的に接続される。薄い透明絶縁体71が、行アドレッシング電極並びにコンデンサープレートP1,P2,P3及びP4上に、スピンコーティングされる。アルミニウム膜から構成される、2つの第二アドレッシング又は列電極C1及びC2、並びに、4つの通常長方形である画素電極A1,A2,A3及びA4が、絶縁体71の下面に取り付けられる。列電極の部分が、アークギャップG1,G2,G3及びG4を形成する画素電極の近くに広がる。透明な絶縁薄膜72が、画素電極の下面上に配置され、低圧下で、絶縁膜71及び72の間の隙間が、放電ガスにより充填される。真空成形と同様なこのプロセスが、絶縁膜72を変形させ、画素電極と列電極との間の各アークギャップにおいて、放電ガスのためのポケットを形成する。
【0037】
ディスプレイパネル70において、画素が、3つの電極静電気アクチュエータに相当する。マイクロ−ミラーM1,M2,M3及びM4が、各上部画素電極A1,A2,A3及びA4と下部電極L1及びL2との間に配置される移動電極である。画素電極とマイクロ−ミラーとの間の静電気引力が、マイクロ−ミラーを第一の上部平坦位置に移動させ、マイクロ−ミラーと下部電極との間の静電気引力が、第二位置に向かって下方向にマイクロ−ミラーを傾斜させる。
【0038】
図8は、本発明のパネルドライブエレクトロニクスとディスプレイパネル70とを含むフラットパネルディスプレイ80の概略図を含む。ここで、パネルドライブエレクトロニクスが、ディスプレイパネル70の行電極R1及びR2を連続して駆動させるためのブロック74、同期化データを列電極C1及びC2に提供するためのブロック75、電圧を下部電極L1及びL2に供給するためのブロック76、及びディスプレイパネル70の電極E1及びE2を駆動させるためのブロック77を含む。ディスプレイパネル70において、各画素が、直列に接続された3つのコンデンサーに相当する。第一コンデンサーが、各行電極R1及びR2に接続されたコンデンサープレートP1,P2,P3及びP4並びに画素電極A1,A2,A3及びA4によって形成される。第二コンデンサーが、各駆動電極E1及びE2に接続されたマイクロ−ミラーM1,M2,M3及びM4並びに画素電極A1,A2,A3及びA4によって形成される。マイクロ−ミラーM1,M2,M3及びM4、並びに下部電極L1及びL2の各部分が、第三コンデンサーを形成する。4つのアークギャップG1,G2,G3及びG4が、ディスプレイパネル70内に設けられ、各々が、各列電極C1及びC2と接続された第一端子、並びに各画素電極A1,A2,A3及びA4に接続された第二端子を備える。
【0039】
図9には、ディスプレイパネル70のアドレッシングのために、行及び列電極に印加された電圧波形が図示されている。また、図9には、行電極R1並びに列電極C1及びC2に印加された電圧の結果として形成されたA1及びA2画素電極に対する電圧波形が図示されている。図9に図示された最後の2つの波形が、電極L1,L2,E1及びE2に供給された静電アクチュエーション電圧を示す。
【0040】
上記のように、画素電極が、行電極及びマイクロ−ミラーとともにコンデンサーを形成する。このアプリケーションに対し、画素電極A1,A2と行電極R1とで形成されたコンデンサーが、画素電極A1,A2とマイクロ−ミラーM1,M2とで形成されたコンデンサーの10倍大きな値を有することが想定される。図9に示された電圧値が、これらの10から1の容量分割器(capacitive divider)を説明する。
【0041】
図9に図示されているように、2つのビデオフィールド時間間隔が示されており、ディスプレイパネル70が、同時にアドレッシング及び表示操作をすることが出来ることが分かる。ビデオフィールド0の表示周期が、ビデオフィールド1のアドレッシング周期と重なり、一方、ビデオフィールド1の表示周期が、ビデオフィールド2のアドレッシング周期と重なる。
【0042】
ビデオフィールドアドレッシング周期の前に、全ての画素電極が、ほぼ行電極の電位にリセットされる。同様に、各作動周期の間であり、ビデオフィールド表示周期の前に、全てのマイクロ−ミラーが、それらの新しい位置にリセットされる。さらに、作動周期の間、光源が、オフにされ、表示周期の間、光源が、オンにされる。
【0043】
最初に、列電極が、0V電位に設定され、行電極が、−85V電位に設定される。このアプリケーションに対し、前と同じように、放電ガスのブレークダウン電圧が、Vb=100Vであり、消弧電圧が、Ve=70Vであることが想定される。
【0044】
1マイクロ秒又はそれ未満である時間間隔T1の間、列電極C1及びC2に0Vが印加され、行電極R1に約−140Vが印加される。これにより、アークギャップG1及びG2にわたって、ブレークダウン電圧Vb=100Vよりも大きな電位が生じ、これによって、各アークギャップにおいてアークが開始される。開始されたアークが、画素電極A1及びA2を帯電させ、画素電極の電位を約70Vまで上げる。
【0045】
結果として、電位が、アークギャップにわたって消弧電圧Ve=70Vよりも下がり、アークが消滅する。時間間隔T2の間、行電極R1上の電圧が、約87V電位まで上がる。これにより、時間間隔T1の間に画素電極に印加された電荷を70Vまで上昇、増大させ、アークギャップG1及びG2においてアークを開始させる。開始されたアークが、画素電極A1及びA2を放電させる。結果として、アークギャップにわたって、電圧が、約70Vまで下がり、アークが消滅する。
【0046】
時間間隔T3の間、行電極R1に印加された電圧が、約−85Vであり、画素電極A1及びA2上の電位が約−85Vに設定される。時間間隔T1及びT2の間における上記の操作が、ディスプレイパネル70の全ての行及び画素電極に対して行われることが理解される。
【0047】
ビデオフィールド1のアドレッシング周期及び時間間隔T4の間、列電極C1に約10Vが印加され、列電極C2に0Vが印加され、行電極R1に−95Vが印加される。これにより、アークギャップG1にわたって、105V電位が生じ、アークギャップG2にわたって、95V電位が生じる。要求されるブレークダウン電圧が、Vb=100Vであるため、アークが、アークギャップG1においてのみ開始される。アークギャップG1において開始されたアークが、画素電極A1を、約35Vだけ、充電させる。時間間隔T3の後に、−95Vのパルスが、行電極R2に印加され、対応するデータが、列電極に与えられる。
【0048】
リセット及びアドレッシング周期の間、電極E1及びE2に0Vが印加され、電極L1及びL2に約50Vが印加される。各角度可変のマイクロ−ミラーと下部電極との間の50V電位が、傾斜位置にマイクロ−ミラーを保持するバイアス力(bias force)を与える。同様に、上部平坦位置におけるマイクロ−ミラーに対し、各マイクロ−ミラーと各画素電極との間の50V又は85V電位が、上部平坦位置にマイクロ−ミラーを保持するバイアス力を与える。
【0049】
マイクロ−ミラーをそれらの新たな位置にリセットすることは、2段階プロセスである。第一に、傾斜したマイクロ−ミラーが、上部平坦位置に移動し、次に、マイクロ−ミラーが、新たなアドレッシングに従い、選択的に、傾斜する。
【0050】
作動周期及び時間間隔T5の間、電極E1,E2,L1及びL2に約50Vが印加される。これらにより、各マイクロ−ミラーと各画素電極との間に静電気引力が生じる。生じた力が、先に傾斜したマイクロ−ミラーを上部平坦位置に移動させる。ここで、全てのマイクロ−ミラーが、上部平坦位置にあり、画素電極に近い。時間間隔T6の間、電極E1及びE2の電位が、約−55Vに低減される。これにより、下部電極L1とマイクロ−ミラーM1,M2との間に約105V電位が生じ、画素電極A1とマイクロ−ミラーM1との間に0Vが生じる。マイクロ−ミラーM1と下部電極L1との間の静電力により、マイクロ−ミラーM1が傾斜する。マイクロ−ミラーM2と画素電極A2との間の約35V電位が、マイクロ−ミラーM2と画素電極A2との間にバイアス力を与え、マイクロ−ミラーM2を上部平坦位置に保持する。
【0051】
本発明の実施形態では、傾斜したマイクロ−ミラーについて説明しているが、本発明の教示が適用可能ないくつかの他の双安定光変調器が存在すると理解される。
【0052】
特許法の要件に従い、本願明細書において詳細に本発明を説明したが、当業者は、特定の要求又は条件を満たすように、個々の部分又はそれらの関連するアセンブリを容易に変更及び修正するだろう。添付の特許請求の範囲において示されるような本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、このような変更及び修正がなされうる。
【符号の説明】
【0053】
20 ディスプレイパネル
21 光導波路
24 光源
26 第一エッジ面
27 第二エッジ面
28,29 側面
30 上面
31 下面
32 溝
33 マイクロ−ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイの双安定画素用のアドレッシング構造であって、
(a)基板、
(b)前記基板上に配置された複数の第一及び第二アドレッシング電極、
(c)複数の画素電極であって、各前記画素電極が、前記第一アドレッシング電極の選択された1つとともにコンデンサーを形成する画素電極、及び
(d)各前記画素電極と前記第二アドレッシング電極の選択された1つとの間に形成された低圧放電ガス中で作動する複数のアークギャップ、
を備え、
前記画素電極が、前記ディスプレイの前記双安定画素の選択された1つに電位を与えることを特徴とするアドレッシング構造。
【請求項2】
各前記双安定画素が、光学特性を備えたマイクロメカニカルアクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載のアドレッシング構造。
【請求項3】
各前記双安定画素が、光学特性を備えかつ静電気引力で作動するマイクロメカニカルアクチュエータを含むことを特徴とする請求項1に記載のアドレッシング構造。
【請求項4】
前記低圧放電ガスの圧力が、約30torrから約500torrであることを特徴とする請求項1に記載のアドレッシング構造。
【請求項5】
前記低圧放電ガスが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンにより構成された群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のアドレッシング構造。
【請求項6】
ガス放電アドレスディスプレイパネルであって、
(a)離隔した第一及び第二基板であって、前記第一基板と第二基板の間に隙間を画定する第一及び第二基板、
(b)実質的に前記隙間を充填する低圧放電ガス、
(c)前記隙間内において、前記第一基板上に配置された複数の第一及び第二アドレッシング電極、及び
(d)複数の画素であって、各前記画素が、前記第一基板と接続された光学特性を備えた少なくとも1つのマイクロメカニカルアクチュエータを含む画素、
を備え、
各前記画素が、前記第一アドレッシング電極の選択された1つとともにコンデンサーを形成しかつ前記第二アドレッシング電極の選択された1つとともにアークギャップを形成する作動電極を有することを特徴とするガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項7】
光学特性を備えた前記マイクロメカニカルアクチュエータが、傾斜したマイクロ−ミラーを備えることを特徴とする請求項6に記載のガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項8】
前記第一基板が、実質的に等間隔の溝を備え、
光学特性を備えた前記マイクロメカニカルアクチュエータが、前記溝内に収容されていることを特徴とする請求項6に記載のガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項9】
前記第一基板が、実質的に等間隔のキャビティを備え、
光学特性を備えた前記マイクロメカニカルアクチュエータが、前記キャビティ内に収容されていることを特徴とする請求項6に記載のガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項10】
前記低圧放電ガスの圧力が、約30torrから約500torrであることを特徴とする請求項6に記載のガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項11】
前記低圧放電ガスが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンにより構成された群から選択されることを特徴とする請求項6に記載のガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項12】
前記第一及び第二アドレッシング電極に接続されたディスプレイパネルドライブエレクトロニクスをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項13】
ガス放電アドレスディスプレイパネルであって、
(a)離隔した第一及び第二基板、
(b)前記第一基板上に構成されたアドレッシング構造、及び
(c)前記第二基板上に構成された複数の双安定画素、
を備え、
前記アドレッシング構造が、
(i)複数の第一及び第二アドレッシング電極、及び
(ii)複数の画素電極、
を備え、
前記画素電極が、前記第一アドレッシング電極の選択された1つとともにコンデンサーを形成し、前記第二アドレッシング電極の選択された1つとともに、低圧放電ガス中で作動するアークギャップを形成し、
前記画素電極が、前記双安定画素の選択された1つに電位を与えることを特徴とするガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項14】
前記第一及び第二アドレッシング電極に接続されたディスプレイパネルドライブエレクトロニクスをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項15】
前記第二基板上に配置された複数の画素作動電極をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のガス放電アドレスディスプレイパネル。
【請求項16】
ディスプレイの双安定画素のアドレッシングのための電子回路であって、
(a)第一及び第二アドレッシング電極、
(b)第一及び第二コンデンサープレートを有するコンデンサー、及び
(c)低圧放電ガス中で作動するアークギャップ、
を備え、
前記アークギャップが、第一及び第二端子を備え、
前記コンデンサーの前記第一コンデンサープレートが、前記第一アドレッシング電極と接続されており、
前記コンデンサーの前記第二コンデンサープレートが、前記アークギャップの前記第一端子に接続されており、
前記アークギャップの前記第二端子が、前記第二アドレッシング電極と接続されており、
前記コンデンサーの前記第二コンデンサープレートが、前記ディスプレイの前記双安定画素に電位を与えることを特徴とする電子回路。
【請求項17】
前記電子回路が、電圧制御された自己終端電流スイッチであることを特徴とする請求項16に記載の電子回路。
【請求項18】
前記双安定画素が、光学特性を備えたマイクロメカニカルアクチュエータを含むことを特徴とする請求項16に記載の電子回路。
【請求項19】
各前記双安定画素が、光学特性を備えかつ静電気引力で作動するマイクロメカニカルアクチュエータを含むことを特徴とする請求項16に記載の電子回路。
【請求項20】
前記低圧放電ガスが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンにより構成された群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の電子回路。
【請求項21】
前記低圧放電ガスの圧力が、約30torrから約500torrであることを特徴とする請求項16に記載の電子回路。
【請求項22】
前記第一及び第二コンデンサープレートが、光反射導体により構成されたことを特徴とする請求項16に記載の電子回路。
【請求項23】
前記第二コンデンサープレートが、光学特性を備えたマイクロメカニカルアクチュエータ用の固定電極を含むことを特徴とする請求項16に記載の電子回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−520213(P2011−520213A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501783(P2011−501783)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/087981
【国際公開番号】WO2009/120245
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510220574)
【出願人】(510255277)
【出願人】(510255288)
【Fターム(参考)】