説明

プラズマエッチング方法

【課題】基板の表面をエッチングして穴部を形成する際に、穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできるとともに、高速にシリコン層をエッチングできるプラズマエッチング方法を提供する。
【解決手段】シリコン層の上方にレジスト層が形成されてなる被処理基板が設置されている処理容器内に、酸素ガスとフッ化硫黄ガスとを含んだエッチングガスを所定の流量で供給し、供給したエッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、シリコン層をエッチングするプラズマエッチング方法において、フッ化硫黄ガスの流量に対する酸素ガスの流量の流量比を第1の流量比とした状態でエッチングする第1のステップS1と、流量比が第1の流量比から第1の流量比よりも小さい第2の流量比になるように、酸素ガスの流量を減少させながらエッチングする第2のステップS2と、流量比を第2の流量比とした状態でエッチングする第3のステップS3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマによりエッチングを行うプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野では、半導体装置の微細化により集積度を上げる試みが多く行われてきた。また、近年では三次元実装と呼ばれる半導体装置の積層によって単位面積あたりの集積度を上げる試みが盛んに行われている。
【0003】
積層された半導体装置は、例えばシリコン層よりなる基板を貫通して形成された電極を具備しており、この電極を介して電気的に接続されるようになっている。このような基板を貫通する電極を形成する際には、塗布装置を用いて基板にレジストを塗布し、露光装置を用いて露光を行った後、現像装置により現像を行ってレジストパターンを形成する。そして、形成したレジストパターンをマスクとして、例えばプラズマエッチング装置を用いて基板をエッチングすることによって、貫通孔又はビアホール等よりなる穴部を形成する。また、基板に穴部を形成した後は、基板に残存するレジストをアッシングして除去する。
【0004】
例えばシリコン層よりなる基板を、プラズマエッチング装置を用いてエッチングするときは、SFガス等のフッ素含有化合物ガスを含むエッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、シリコン層をエッチングする。
【0005】
前述した穴部として、通常100μm程度の深さ寸法を有するものを形成することが要求されている。しかし、エッチングガスがSFガス等のフッ素含有化合物ガスのみからなるときは、エッチングガスをプラズマ化したプラズマによりエッチングする際に、エッチングが等方性エッチングになりやすく、レジストパターンの側壁もエッチングされやすくなる。その結果、エッチング領域が横方向に広がるいわゆるアンダーカットが生じやすくなり、垂直な側壁形状を得ることが難しい。
【0006】
そこで、シリコン層をプラズマエッチングするステップを開始する前に、基板の表面に堆積物が堆積しやすいエッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、レジストパターンの上面及び側壁に保護膜を形成するステップを行っている(例えば、特許文献1参照。)。これにより、レジストパターンの側壁がエッチングされにくくなり、アンダーカットが発生しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−206401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、最近では、100μm以上の深さ寸法を有する穴部を形成することが要求されており、プラズマエッチングを長時間に亘って行うことが求められている。また、最近の半導体装置には更なる微細化が要求されているため、10〜20μm程度の比較的小さい直径寸法を有する穴部を形成することが要求されている。
【0009】
レジストパターンの上面及び側壁に保護膜を形成するステップと、その後、シリコン層をプラズマエッチングするステップとを含む従来のエッチングプロセスでは、保護膜がプラズマに対して長時間曝露されても耐えうるように、形成する保護膜を厚くせざるを得ない。すると、保護膜を形成するステップに要する時間が増加するため、プラズマエッチングに要する全体の時間も増加する。従って、高速にシリコン層をエッチングできず、半導体装置の生産性が低下する。
【0010】
また、形成される穴部の直径寸法の減少に伴って、穴部の直径寸法に対する穴部の側壁に形成された保護膜の厚さ寸法の割合が大きくなる。そのため、穴部の深さ方向に沿った保護膜の厚さ寸法のばらつき等により垂直な側壁形状を得ることが難しくなる。また、形成される穴部の直径寸法の減少に伴って、保護膜を堆積させるためのエッチングガスが穴部の側壁に到達しにくくなり、保護膜が形成しにくくなる。その結果、アンダーカットの発生を抑制することができず、穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできない。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、レジストパターンが形成された基板の表面をエッチングして穴部を形成する際に、穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできるとともに、高速にシリコン層をエッチングできるプラズマエッチング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる手段を講じたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の一実施例によれば、シリコン層よりなるとともに、前記シリコン層の上方に、所定のパターンにパターニングされたレジスト層が形成されてなる被処理基板が設置されている処理容器内に、酸素ガスとフッ化硫黄ガスとを含んだエッチングガスを所定の流量で供給し、供給した前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、前記レジスト層をマスクとして前記シリコン層をエッチングするプラズマエッチング方法において、フッ化硫黄ガスの流量に対する酸素ガスの流量の流量比を第1の流量比とした状態で、前記シリコン層をエッチングする第1のステップと、前記流量比が前記第1の流量比から前記第1の流量比よりも小さい第2の流量比になるように、酸素ガスの流量を減少させながら前記シリコン層をエッチングする第2のステップと、前記流量比を前記第2の流量比とした状態で、前記シリコン層をエッチングする第3のステップとを有する、プラズマエッチング方法が提供される。
【0014】
また、本発明の他の一実施例によれば、シリコン層よりなるとともに、前記シリコン層の上方に、所定のパターンにパターニングされたレジスト層が形成されてなる被処理基板が設置されている処理容器内に、酸素ガスとフッ化硫黄ガスとを含んだエッチングガスを所定の流量で供給し、供給した前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、前記レジスト層をマスクとして前記シリコン層をエッチングするプラズマエッチング方法において、エッチングを開始する際には、フッ化硫黄ガスの流量に対する酸素ガスの流量の流量比を第1の流量比としたときに、前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマを前記レジスト層と反応させることで前記被処理基板の表面に保護膜を堆積させる堆積速度と、前記保護膜をエッチングするエッチング速度とが等しくなるような所定磁界よりも大きな第1の磁界を、前記被処理基板に印加するとともに、前記流量比を前記第1の流量比とした状態で、前記被処理基板の表面に前記保護膜を堆積するものであって、エッチングの進行に伴って、前記被処理基板に前記第1の磁界を印加した状態で、酸素ガスの流量を減少させることによって、前記エッチング速度を前記堆積速度よりも相対的に大きくするものである、プラズマエッチング方法が提供される。
【0015】
また、本発明の他の一実施例によれば、シリコン層よりなるとともに、前記シリコン層の上方に、所定のパターンにパターニングされたレジスト層が形成されてなる被処理基板が設置されている処理容器内に、酸素ガスとフッ化硫黄ガスとを含んだエッチングガスを所定の流量で供給し、供給した前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、前記レジスト層をマスクとして前記シリコン層をエッチングして穴部を形成するプラズマエッチング方法において、エッチングを開始する際には、フッ化硫黄ガスの流量に対する酸素ガスの流量の流量比を第1の流量比としたときに、前記エッチングガスをプラズマ化して発生させた酸素ラジカルを前記レジスト層と反応させることで前記レジスト層の表面及び形成される前記穴部の側壁に保護膜を堆積させる堆積速度と、前記保護膜をエッチングするエッチング速度とが等しくなるような所定磁界よりも大きな第1の磁界を、前記被処理基板に印加するとともに、前記流量比を前記第1の流量比とした状態で、前記レジスト層の表面及び前記穴部の側壁に前記保護膜を堆積するものであって、前記穴部の深さ寸法の増加に伴って、前記被処理基板に前記第1の磁界を印加した状態で、酸素ガスの流量を減少させることによって、前記エッチング速度を前記堆積速度よりも相対的に大きくするものである、プラズマエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レジストパターンが形成された基板の表面をエッチングして穴部を形成する際に、穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできるとともに、高速にシリコン層をエッチングできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法に好適なプラズマエッチング装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1のプラズマエッチング装置に取り付けられるダイポールリング磁石の構成を模式的に示す横断面図である。
【図3】図1のプラズマエッチング装置のチャンバ内で形成される電界及び磁界を説明するための図である。
【図4】図1のエッチング装置におけるエッチングガス供給系の構成を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その1)である。
【図6】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その2)である。
【図7】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その3)である。
【図8】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その4)である。
【図9】シリコン層をエッチングする工程におけるSFガスの流量に対するOガスの流量の流量比の時間変化を模式的に示すグラフである。
【図10】比較例1に係るシリコン層をエッチングする工程におけるSFガスの流量に対するOガスの流量の流量比の時間変化を模式的に示すグラフである。
【図11】比較例2に係るシリコン層をエッチングする工程におけるSFガスの流量に対するOガスの流量の流量比の時間変化を模式的に示すグラフである。
【図12】比較例1に係るシリコン層をエッチングする工程における酸素ラジカルの発光強度をOESにより計測した結果を示すグラフである。
【図13】比較例2に係るシリコン層をエッチングする工程における酸素ラジカルの発光強度をOESにより計測した結果を示すグラフである。
【図14】比較例1に係るシリコン層をエッチングする工程におけるウェハの表面の状態を模式的に示す図である。
【図15】比較例2に係るシリコン層をエッチングする工程におけるウェハの表面の状態を模式的に示す図である。
【図16】SiFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を変えた場合における、保護膜の堆積速度を計測した結果を示すグラフである。
【図17】SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比と、保護膜の堆積速度及びエッチング速度との関係とを模式的に示すグラフである。
【図18】実施例1に係るシリコン層をエッチングする工程における酸素ラジカルの発光強度をOESにより計測した結果を示すグラフである。
【図19】第2の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を含む半導体装置の製造方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その1)である。
【図20】第2の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を含む半導体装置の製造方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
始めに、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法に好適なプラズマエッチング装置の構成を示す概略断面図である。図2は、ダイポールリング磁石24の構成を模式的に示す横断面図である。図3は、チャンバ1内で形成される電界及び磁界を説明するための図である。図4は、エッチングガス供給系23の構成を示す図である。
【0020】
プラズマエッチング装置は、マグネトロン反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)型のプラズマエッチング装置として構成されており、例えばアルミニウム又はステンレス鋼等の金属よりなるチャンバ(処理容器)1を有している。
【0021】
チャンバ1内には、被処理基板として例えばシリコンウェハ(以下、単に「ウェハ」という。)Wを載置するためのテーブル又はサセプタ2が設けられている。サセプタ2は、例えばアルミニウムからなり、絶縁部材3を介して導体よりなる支持部4に支持されている。サセプタ2の上面の周囲には、例えば石英よりなるフォーカスリング5が配置されている。サセプタ2の上面には、ウェハWを静電吸着力により保持するための静電チャック6が設けられている。サセプタ2と支持部4は、ボールネジ7を含む昇降機構により昇降可能となっており、支持部4の下方に設けられる昇降駆動部(図示せず)は、ステンレス鋼よりなるベローズ8で覆われている。ベローズ8の外側にはベローズカバー9が設けられている。フォーカスリング5の下面はバッフル板10に接続されており、フォーカスリング5は、バッフル板10、支持部4及びベローズ8を介してチャンバ1と導通している。チャンバ1は接地されている。
【0022】
なお、サセプタ2及び支持部4は、本発明における支持部に相当する。
【0023】
チャンバ1の一部であって相対的に大きな径を有する部分である下部1bの側壁には排気口11が形成され、排気口11に排気管を介して排気系12が接続されている。排気系12の真空ポンプを作動させることにより、チャンバ1内の処理空間を所定の真空度まで減圧できるようになっている。チャンバ1の下部1bの側壁には、ウェハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ13も取り付けられている。
【0024】
サセプタ2には、整合器14を介してプラズマ生成および反応性イオンエッチング(RIE)用の第1の高周波電源15が電気的に接続されている。第1の高周波電源15は、例えば40MHzの第1の周波数を有する第1の高周波電力を、下部電極すなわちサセプタ2に供給する。
【0025】
チャンバ1の天井部には、後述するシャワーヘッド20が接地電位に保持された上部電極として設けられている。従って、第1の高周波電源15からの第1の高周波電力は、サセプタ2とシャワーヘッド20との間に供給される。
【0026】
サセプタ2には、第1の高周波電源15と並列に、第2の高周波電源26も別個の整合器25を介して電気的に接続されている。第2の高周波電源26は、第1の高周波電源15が供給する第1の高周波電力の第1の周波数よりも低い、例えば3.6MHzの第2の周波数を有する第2の高周波電力を、サセプタ2に重畳的に供給する。第2の高周波電源26からの第2の高周波電力は、後述するように、穴部を形成する際に、穴部の側壁荒れが発生することを防止するためのものである。
【0027】
静電チャック6は、導電膜よりなる電極6aを一対の絶縁シート6bの間に挟み込んだものであり、電極6aには直流電源16が電気的に接続されている。直流電源16からの直流電圧により、静電引力によりウェハWを吸着保持することができる。
【0028】
サセプタ2の内部には、例えば円周方向に延在する冷媒室17が設けられている。この冷媒室17には、外付けのチラーユニット(図示せず)より配管17a、17bを介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によってサセプタ2上のウェハWの処理温度を制御できる。エッチングにより形成される穴部の側壁形状を垂直にするために、サセプタ2の温度は低いほど好ましく、たとえば−30℃程度の冷媒を用いてよい。
【0029】
更に、ガス導入機構18からの冷却ガスたとえばHeガスが、ガス供給ライン19を介して静電チャック6の上面とウェハWの裏面との間に供給される。ガス導入機構18は、エッチング加工のウェハ面内均一性を高めるため、ウェハ中心部とウェハ周縁部とでガス圧つまり背圧を独立的に制御できるようになっている。
【0030】
天井部のシャワーヘッド20は、サセプタ2の上面と平行に対向する下面に多数のガス吐出口22を設けている。ガス吐出面の内側にバッファ室21が設けられ、バッファ室21のガス導入口20aには、エッチングガス供給系23からのガス供給配管23aが接続されている。
【0031】
チャンバ1の一部であって相対的に小さな径を有する部分である上部1aの周囲には、環状または同心状に延在するダイポールリング磁石24が配置されている。ダイポールリング磁石24は、図2の横断面図に示すように、リング状の磁性体からなるケーシング32内に、複数個例えば16個の異方性セグメント柱状磁石31を周方向に一定間隔で配列してなる。図2において、各異方性セグメント柱状磁石31の中に示す矢印は磁化の方向を示しており、図示のように各異方性セグメント柱状磁石31の磁化の方向を周方向に沿って少しずつずらすことで、全体として一方向に向う一様な水平磁界Bを形成することができる。
【0032】
従って、サセプタ2とシャワーヘッド20との間の空間には、図3に模式的に示すように、第1の高周波電源15により鉛直方向のRF電界ELが形成されるとともに、ダイポールリング磁石24により水平磁界Bが形成される。これらの直交電磁界を用いるマグネトロン放電により、サセプタ2の表面近傍に高密度のプラズマを生成することができる。
【0033】
エッチングガスとして、フッ化硫黄又はフッ化炭素よりなるフッ素化合物ガスと、酸素(O)ガスとの混合ガスをエッチングガスに用いることができる。フッ素化合物ガスとして、1分子に存在するフッ素の数が多いガス、例えば六フッ化硫黄(SF)ガスや十フッ化硫黄(S10)ガスを用いることが好ましい。また、フッ素化合物ガスとして、フッ化ケイ素ガス例えば四フッ化ケイ素(SiF)ガスをエッチングガスに加えてもよい。従って、エッチングガス供給系23は、図4に模式的に示すように、例えばSFガス源35、Oガス源36及びSiFガス源37を有し、それぞれの流量を流量制御弁35a、36a、37aによって個別に制御可能に設けられている。
【0034】
上記構成のプラズマエッチング装置は、制御部40によって、その動作が統括的に制御される。この制御部40には、CPUを備えプラズマエッチング装置の各部を制御するプロセスコントローラ41と、ユーザインターフェース42と、記憶部43とが設けられている。
【0035】
ユーザインターフェース42は、工程管理者がプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0036】
記憶部43には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ41の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース42からの指示等にて任意のレシピを記憶部43から呼び出してプロセスコントローラ41に実行させることで、プロセスコントローラ41の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したりすることも可能である。或いは、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0037】
このように構成されたプラズマエッチング装置において、プラズマエッチングを行うには、先ずゲートバルブ13を開にして被処理基板であるシリコン層よりなるウェハWをチャンバ1内に搬入して、サセプタ2の上に載置する。次いで、ウェハWが載置されたサセプタ2を図示の高さ位置まで上昇させ、排気系12の真空ポンプにより排気口11を介してチャンバ1内を排気する。そして、エッチングガス供給系23よりエッチングガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。更に、第1の高周波電源15より所定のパワーで高周波電力をサセプタ2に印加する。また、直流電源16より直流電圧を静電チャック6の電極6aに印加し、ウェハWをサセプタ2に固定することによって支持する。シャワーヘッド20より吐出されたエッチングガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。そして、照射したプラズマに含まれるラジカルやイオンによりウェハWがエッチングされる。
【0038】
次に、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0039】
図5から図8は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図である。図9は、シリコン層をエッチングする工程におけるSFガスの流量に対するOガスの流量の流量比の時間変化を模式的に示すグラフである。なお、図5から図8では、ウェハW上における一つの開口部54aの付近の領域を拡大して示している。
【0040】
先ず、プラズマエッチング方法が適用されるウェハWの構成の一例について説明する。ウェハWは、図5に示すように、例えば単結晶シリコン(Si)層よりなる基体51上に、第1のハードマスク膜52、第2のハードマスク膜53及びマスク膜54が、下側からこの順番で積層されてなる。第1のハードマスク膜52として、例えば厚さ寸法t1を有する窒化シリコン(SiN)膜を用いることができ、厚さ寸法t1を例えば0.5μmとすることができる。第2のハードマスク膜53として、例えば厚さ寸法t2を有する酸化シリコン(SiOx)膜を用いることができ、厚さ寸法t2を例えば0.5μmとすることができる。マスク膜54として、例えば厚さ寸法t3を有するレジスト層とすることができ、厚さ寸法t3を例えば2.5μmとすることができる。また、マスク膜54には、予めフォトリソグラフィ工程を行うことで、開口径(直径寸法)D1が例えば8μmの円形の開口部54aが、複数箇所にパターニングされている。
【0041】
なお、第1のハードマスク膜52及び第2のハードマスク膜53は、第1のハードマスク膜52が酸化シリコン(SiOx)膜であり、第2のハードマスク膜53が窒化シリコン(SiN)膜であってもよい。
【0042】
このようなウェハWを、前述したようにチャンバ1内に搬入して、サセプタ2の上に載置する。
【0043】
図9に示すように、始めに、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を第1の流量比とした状態で、シリコン層をエッチングする(ステップS1)。なお、ステップS1は、本発明における第1のステップに相当する。
【0044】
第1の流量比として、0.9〜1.1であることが好ましい。これにより、SFガスの流量とOガスの流量とを略等しくすることができる。
【0045】
排気系12の真空ポンプによりチャンバ1内を排気した状態で、エッチングガス供給系23よりエッチングガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。エッチングガスとして、SFガス及びOガスを所定の流量でチャンバ1内に導入する。必要に応じて、フッ化シリコン(SiF)ガス及び臭化水素(HBr)ガスをエッチングガスに加えてもよい。また、直流電源16によりウェハWをサセプタ2に静電引力により固定することによって支持した状態で、第1の高周波電源15により第1の高周波電力をサセプタ2に供給する。すると、シャワーヘッド20より吐出されたエッチングガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。
【0046】
そして、プラズマをウェハWに照射することで、図6に示すように、マスク膜54の各々の開口部54aにおいて、下層側の第2のハードマスク膜53及び第1のハードマスク膜52にそれぞれ開口部53a、52aが形成され、基体51に穴部51aが形成される。
【0047】
なお、プラズマによってマスク膜54もエッチングされるが、マスク膜54のエッチング速度に対する第2のハードマスク膜53、第1のハードマスク膜52及びシリコン層51のエッチング速度の比である選択比がかなり大きい。そのため、図6では、マスク膜54の膜厚の変化の図示を省略している(図7においても同様。)。
【0048】
例えばSFガスをエッチングガスとして用いる場合、エッチングガスがプラズマ化する際にフッ素ラジカルFが生成する。生成したフッ素ラジカルFが穴部51aに到達すると、下記反応式(1)
4F+Si→SiF (1)
に示すように、フッ素ラジカルFがSiと反応することによってSiFが生成される。そして、生成されたSiFが穴部51aの外へ排出されることにより、シリコン層51がエッチングされる。
【0049】
一方、Oガスをエッチングガスとして用いる場合、エッチングガスがプラズマ化する際に酸素ラジカルOが生成される。また、上記反応式(1)により生成したSiFが何れかのプラズマと反応することによって、又は、フッ素ラジカルFとSiとが反応することによって、フッ化シリコンのラジカルSiFxが生成される。そして、一例として下記反応式(2)
+SiFx→SiOFx (2)
に示すように、酸素ラジカルOがフッ化シリコンのラジカルSiFxと反応することによって、SiO系の保護膜55(例えばSiOFx)が堆積する。
【0050】
図6に示すように、保護膜55は、マスク膜54の上面、マスク膜54の開口部54aの側壁、第2のハードマスク膜53の開口部53aの側壁、第1のハードマスク膜52の開口部52aの側壁、及びシリコン層51の穴部51aの側壁51b(図7参照。)に堆積する。一方、シリコン層51の穴部51aの底面51cは、ウェハW表面から最も遠いため、マスク膜54の上面からシリコン層51の穴部51aの側壁51bにかけての部分と比較して、保護膜55の堆積速度が小さい。従って、穴部51aを深さ方向にエッチングするエッチング速度が穴部51aを横方向にエッチングするエッチング速度に対して大きくなる異方性エッチングを行うことができ、穴部51aの側壁51bをウェハW表面に対して垂直にすることができる。
【0051】
なお、ステップS1の工程は、ステップS1−1と、ステップS1−2とに分かれていてもよい。ステップS1−1は、本発明における第4のステップに相当し、ステップS1−2は、本発明における第5のステップに相当する。
【0052】
ステップS1−1では、サセプタ2に、第1の周波数を有する第1の高周波電力を供給するとともに、第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2の高周波電力を供給した状態で、シリコン層51をエッチングする。これにより、Si表面にある、自然酸化膜、あるいはレジスト残渣物を効率よくエッチングできるため、それらが原因となり発生する穴部51aの側壁荒れが発生することを防止できる。
【0053】
ステップS1−1の後、ステップS1−2では、サセプタ2への第2の高周波電力の供給を停止するとともに、サセプタ2に第1の高周波電力を供給した状態で、シリコン層51をエッチングする。
【0054】
次いで、図9に示すように、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比が第1の流量比から第1の流量比よりも小さい第2の流量比になるように、Oガスの流量を減少させながらシリコン層51をエッチングする(ステップS2)。なお、ステップS2は、本発明における第2のステップに相当する。
【0055】
第2の流量比として、0.7〜0.9であることが好ましい。第2の流量比が0.7未満の場合、エッチング速度に対する堆積速度が相対的に小さくなることによって穴部51aの側壁51bが露出し、穴部51aの側壁51bがテーパ形状を有するおそれがあるからである。また、第2の流量比が0.9を超える場合、エッチング速度に対する堆積速度が相対的に大きくなることによって、高速にシリコン層51をエッチングすることができないおそれがあるからである。
【0056】
次いで、図9に示すように、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を第2の流量比とした状態で、シリコン層51をエッチングする(ステップS3)。なお、ステップS3は、本発明における第3のステップに相当する。
【0057】
また、ステップS2において、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比が第1の流量比から第1の流量比よりも小さい第2の流量比になるように、Oガスの流量を多段に亘って減少させながらシリコン層をエッチングしてもよい。このようなシリコン層をエッチングする工程の例を、実施例1として、表1に示す。
【0058】
【表1】

表1におけるステップS1−1、ステップS1−2は、前述したステップS1−1、ステップS1−2に相当する。また、表1におけるステップS2−1からステップS2−3は、前述したステップS2に相当する。
【0059】
以上、ステップS1からステップS3を行うことによって、シリコン層51のエッチングが終了し、図7に示すように、穴部51aが形成される。
【0060】
次いで、マスク膜54を、例えばOガスを含むエッチングガスをプラズマ化したプラズマによりアッシングし、マスク膜54がアッシングされたウェハWの表面の洗浄を行う。続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition)、電解めっき又は無電解めっき等により、穴部51a内に例えば銅(Cu)などの配線金属56を埋め込む。次いで、図8に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)加工により、ウェハWの表面に形成された余剰な配線金属56を除去する。第2のハードマスク膜53又は第1のハードマスク52が窒化シリコン膜よりなるときは、窒化シリコン膜をCMPのストッパ膜として作用させ、窒化シリコン膜の上端位置においてCMP加工の終点検出を行ってもよい。
【0061】
次に、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法によれば、穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできるとともに、高速にシリコン層をエッチングできることを、比較例1及び比較例2を参照しながら説明する。
【0062】
比較例1に係るシリコン層をエッチングする工程は、表1のステップS1−1に相当する工程のみとする。ただし、比較例1では、表1のステップS1−1に相当する工程の処理時間を約120秒とする。
【0063】
比較例2に係るシリコン層をエッチングする工程は、表1のステップS3に相当する工程のみとする。ただし、比較例2では、表1のステップS3に相当する工程の処理時間を約400秒とする。
【0064】
図10及び図11は、それぞれ比較例1及び比較例2に係るシリコン層をエッチングする工程におけるSFガスの流量に対するOガスの流量の流量比の時間変化を模式的に示すグラフである。図12及び図13は、それぞれ比較例1及び比較例2に係るシリコン層をエッチングする工程における酸素ラジカルの発光強度を発光分光分析(Optical Emission Spectroscopy;OES)により計測した結果を示すグラフである。図14及び図15は、それぞれ比較例1及び比較例2に係るシリコン層をエッチングする工程におけるウェハWの表面の状態を模式的に示す図である。
【0065】
図10に示すように、比較例1では、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を相対的に大きな第1の流量比とした状態で、エッチングガスをプラズマ化する。すると、図12に示すように、酸素ラジカルOの発光強度が相対的に高くなる。これは、保護膜55の堆積速度が保護膜55のエッチング速度よりも大きく、マスク膜54の表面に保護膜55が堆積しやすくなるためと考えられる。このとき、図14に示すように、マスク膜54の表面は保護膜55により被覆されているため、酸素ラジカルOとマスク膜54のレジスト層とが反応しない。その結果、ウェハWの表面にはレジスト層よりなるマスク膜54が残存するとともに、プラズマ中に未反応の酸素ラジカルOが多く存在する。
【0066】
図11に示すように、比較例2では、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を相対的に小さな第2の流量比とした状態で、エッチングガスをプラズマ化する。すると、図13に示すように、酸素ラジカルOの発光強度が相対的に低くなる。これは、保護膜55の堆積速度が保護膜55のエッチング速度よりも小さく、マスク膜54の表面に保護膜55が堆積しにくくなるためと考えられる。このとき、図15に示すように、マスク54の表面は保護膜55により被覆されていないため、酸素ラジカルOとマスク膜54のレジスト層とが反応する。その結果、ウェハWの表面にはレジスト層よりなるマスク膜54が残存せず、プラズマ中に未反応の酸素ラジカルOがあまり存在しない。
【0067】
また、SiFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を変えた場合における、保護膜の堆積速度を計測した。その結果を図16に示す。SiFガスの流量に対するSFガスの流量を一定としているため、図16の横軸は、SiFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を示すとともに、SFガスの流量に対するOガスの流量比の相対的な変化を示している。図16に示すように、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比の増加に伴って、保護膜の堆積速度はほぼ一様に増加する。
【0068】
図17は、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比と、保護膜の堆積速度及びエッチング速度との関係とを模式的に示すグラフである。図17に示すように、保護膜の堆積速度は、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比の増加に伴って略一様に増加する。一方、保護膜のエッチング速度は、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比にはあまり依存しないと考えられるため、図17では、略水平な破線により表される。その結果、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比が所定の流量比であるときに、保護膜の堆積速度とエッチング速度とが等しくなる。そして、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比が所定の流量比未満のときは、ウェハの表面には保護膜が堆積せずエッチングされる。一方、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比が所定の流量比を超えるときは、ウェハの表面には保護膜が堆積する。
【0069】
本実施の形態では、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を第1の流量比とした状態でエッチングし、次いで、この流量比を第1の流量比よりも小さい第2の流量比とした状態でエッチングする。これにより、エッチング開始時には、保護膜の堆積速度が保護膜のエッチング速度よりも大きく、正味の堆積速度が正の値を有するため、レジスト層の表面及び穴部の側壁に、保護膜を堆積させることができる。また、エッチングの進行に伴って、保護膜の堆積速度が保護膜のエッチング速度よりも小さくなり、正味の堆積速度が負の値を有するため、レジスト層の表面及び穴部の側壁に、保護膜が堆積することを抑制することができる。従って、穴部の深さ方向に沿って穴部の直径寸法が徐々に減少し、穴部が先細りの形状となることを防止でき、穴部の側壁をウェハの表面に対して容易に垂直にすることができる。
【0070】
図18は、前述した実施例1に係るシリコン層をエッチングする工程における酸素ラジカルの発光強度をOESにより計測した結果を示すグラフである。
【0071】
図18に示すように、エッチングを開始する際には、酸素ラジカルOの発光強度が相対的に大きく、次いで、酸素ラジカルOの発光強度が減少し、その後、酸素ラジカルOの発光強度が相対的に小さい状態が続く。これは、ステップS1ではSFガスの流量に対するOガスの流量の流量比が相対的に大きく、ステップS2ではこの流量比が減少し、ステップS3ではこの流量比が相対的に小さいことに対応している。従って、本実施の形態では、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を変化させることによって、未反応の酸素ラジカルOの量を制御している。
【0072】
更に、本実施の形態では、第1の磁界をウェハに印加する。第1の磁界は、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を第1の流量比としたときに、プラズマをレジスト層と反応させることで保護膜を堆積させる堆積速度と、保護膜をエッチングするエッチング速度とが等しくなるような所定磁界よりも大きい。
【0073】
ウェハ表面付近での磁界の大きさを増加させると、電子が磁力線の周りにらせん運動する際の回転半径(ラーマー半径)が小さくなる。すなわち、ウェハ表面付近に存在する電子が常にウェハ表面に近い領域に束縛されるため、ウェハ表面付近での電子密度が上がる。同様に、ウェハ表面付近でのプラズマ密度も増加し、自己バイアス電圧が低下する。
【0074】
ここで、ウェハ表面付近でのプラズマ密度が増加すると自己バイアス電圧が低下することは、以下のように説明することができる。
【0075】
サセプタ2に供給される高周波電力をP、プラズマ電流をI、自己バイアス電圧をVとすると、これらの関係は、下記式(3)
P=I・V (3)
に示される。また、プラズマ電流Iはプラズマ密度に略比例すると考えられる。すると、供給される高周波電力Pが一定のとき、プラズマ密度の増加に伴って、プラズマ電流Iが増加し、自己バイアス電圧Vが減少する。
【0076】
このようにして、プラズマ密度の増加に伴って自己バイアス電圧が減少すると、ウェハに照射されるイオンの運動エネルギーも減少する。従って、ウェハ表面付近での磁界の大きさを、第1の磁界よりも小さい第2の磁界から第1の磁界に増加させると、エッチング速度が減少する。そして、図17に示すように、保護膜の堆積速度とエッチング速度とが等しくなるときのSFガスの流量に対するOガスの流量の流量比が小さくなる。換言すれば、SFガスの流量を一定にした状態で、保護膜の堆積速度からエッチング速度を差し引いた正味の堆積速度を所定の速度にするためのOガスの流量は、ウェハ表面付近での磁界の大きさを例えば第2の磁界から第1の磁界へ増加させることによって減少する。第1の磁界を例えば215Gとすることができ、第2の磁界を例えば110Gとすることができる。
【0077】
本実施の形態では、エッチングを開始する際に、第1の磁界をウェハに印加するとともに、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を第1の流量比とした状態で、プラズマをレジスト層と反応させ、レジスト層の表面及び穴部の側壁に保護膜を堆積させる。第1の磁界は、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を第1の流量比としたときに、レジスト層の表面及び穴部の側壁に保護膜を堆積させる堆積速度と、保護膜をエッチングするエッチング速度が等しくなるような所定磁界よりも大きい。これにより、エッチング開始時には、保護膜の堆積速度が保護膜のエッチング速度よりも大きいため、レジスト層の表面及び形成される穴部の側壁に、保護膜を堆積させることができる。
【0078】
ただし、エッチングの進行に伴って、すなわち、穴部の深さ寸法の増加に伴って、Oガスの流量が一定のままであると、エッチングガスがプラズマ化されて発生した余剰の酸素ラジカルが穴部内に供給され、穴部の側壁に保護膜が堆積する。これにより、穴部の直径寸法が深さ方向に沿って徐々に減少し、穴部が先細りの形状となるため、穴部の側壁をウェハの表面に対して垂直にすることができない。
【0079】
そこで、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法では、エッチングの進行に伴って、すなわち、穴部の深さ寸法の増加に伴って、SFガスの流量を一定にした状態で、Oガスの流量を減少させる。すると、穴部内に供給される酸素ラジカルの量も減少するため、保護膜が堆積する堆積速度を減少させ、エッチング速度を堆積速度よりも相対的に大きくすることができる。これにより、穴部の側壁への保護膜の堆積を抑制することができる。従って、穴部の直径寸法が深さ方向に沿って徐々に減少し、穴部が先細りの形状となることを更に容易に防止でき、穴部の側壁をウェハの表面に対して更に容易に垂直にすることができる。
【0080】
また、本実施の形態では、ウェハに印加する磁界の大きさを増加させることによって、保護膜の正味の堆積速度を所望の速度にするためのOガスの流量を減らすことができる。そのため、保護膜の正味の堆積速度を所望の速度に調整しつつ、穴部内に供給されるフッ素ラジカルFの量を実質的に増加させ、穴部をエッチングするエッチング速度を増加させることができる。従って、更に高速にシリコン層をエッチングできる。
【0081】
表1を用いて説明した実施例1では、ウェハ表面の中心で10.95μm/分の正味のエッチング速度が得られた。一方、比較例1と同じプロセス条件で、かつ、ウェハに印加する磁界の大きさを110Gとした比較例3を行った場合、ウェハ表面の中心で8.77μm/分の正味のエッチング速度が得られた。すなわち、実施例1におけるエッチング速度は、比較例3におけるエッチング速度よりも大きいことが確認された。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0082】
本実施の形態に係るプラズマエッチング方法では、第1の実施の形態に係るプラズマエッチング装置と同一の装置を用いることができる。従って、本実施の形態に係るエッチング装置については、説明を省略する。
【0083】
また、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法は、三次元実装される半導体装置に貫通電極を形成するために、TSV(Through-Silicon Via)技術を用いてウェハに貫通孔を形成するものである。従って、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法は、貫通孔を形成するためのウェハ(以下、「デバイスウェハ」ともいう。)がサポートウェハに接着剤を介して貼り合わされた貼り合わせウェハをエッチングする点で、第1の実施の形態と相違する。
【0084】
図19及び図20は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法を含む半導体装置の製造方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図である。
【0085】
貼り合わせウェハは、図19(c)に示すように、デバイスウェハWと、サポートウェハSWを有する。デバイスウェハWは、表面Waにトランジスタ等の半導体装置が形成された基板である。サポートウェハSWは、デバイスウェハWを、裏面Wbを研削して薄化したときに、薄化されたデバイスウェハWを補強するための基板である。デバイスウェハWは、接着剤Gを介してサポートウェハSWに貼り合わされている。
【0086】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、始めに、シリコンウェハ等よりなるデバイスウェハWの表面にトランジスタ101を形成し、トランジスタ101が形成されたデバイスウェハW上に層間絶縁膜102を形成する(図19(a))。
【0087】
次いで、層間絶縁膜102上に、配線構造103を形成する。層間絶縁膜102上に、配線層104、絶縁膜105を交互に積層するとともに、絶縁膜105を貫通して上下の配線層104間を電気的に接続するビアホール106を形成する(図19(b))。
【0088】
次いで、デバイスウェハWを上下反転させ、デバイスウェハWの表面Waを、接着剤Gを介してサポートウェハSWと貼り合わせることによって、貼り合わせウェハを準備する。サポートウェハSWは、デバイスウェハWを、裏面Wbを研削して薄化したときに、薄化されたデバイスウェハWを補強し、反りを防ぐ支持体となる基板であり、例えばシリコンウェハ等よりなる。そして、貼り合わせウェハを、例えば研削装置に備えられた支持部に支持し、ウェハWの裏面Wb側を研削し、研削前の厚さT1が所定厚さT2になるように薄化する(図19(c))。所定厚さT2を、例えば50〜200μmとすることができる。
【0089】
なお、図19では、図示を容易にするために、層間絶縁膜102及び配線構造103の厚さが誇張して描かれているが、実際は、層間絶縁膜102及び配線構造103の厚さは、ウェハWの基体自体の厚さに比べ極めて小さい(図20においても同様)。
【0090】
次いで、ウェハWの裏面Wbにレジストを塗布し、露光し、現像することによって、図示しないレジストパターンを形成する。そして、第1の実施の形態と同様のプラズマエッチング工程を行い、ウェハWの裏面Wbをエッチングして貫通孔Vを形成する。そして、貫通孔Vが形成されたウェハWの裏面Wbに残存するレジストを、第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法と同様にアッシングして除去する(図20(a))。貫通孔Vの径を、例えば1〜10μmとすることができる。また、貫通孔Vの深さは、ウェハWの裏面Wbを研削して薄化した後のウェハWの基体自体の厚さに相当するものであり、例えば50〜200μmとすることができる。
【0091】
次いで、貫通孔Vの内周面を被覆するように、例えばポリイミド等の絶縁膜107を形成し、内周面が絶縁膜107で被覆された貫通孔V内に、電解めっき法等により貫通電極108を形成する(図20(b))。
【0092】
次いで、サポートウェハSWをウェハWから剥がすことによって、薄化され、貫通電極108が形成されたウェハWを得る。例えば紫外光(UV光)を照射することによって、光反応性の接着剤Gの接着力を低下させて剥がすことができる(図20(c))。
【0093】
本実施の形態でも、図20(a)に示したプラズマエッチング工程において、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を第1の流量比とした状態でエッチングし、次いで、この流量比を第1の流量比よりも小さい第2の流量比とした状態でエッチングする。これにより、エッチング開始時には、保護膜の堆積速度が保護膜のエッチング速度よりも大きいため、レジスト層の表面及び貫通孔の側壁に、保護膜を堆積させることができる。また、エッチングの進行に伴って、保護膜の堆積速度が保護膜のエッチング速度よりも小さくなるため、レジスト層の表面及び貫通孔の側壁に、保護膜が堆積することを抑制することができる。従って、貫通孔の深さ方向に沿って貫通孔の直径寸法が徐々に減少し、貫通孔が先細りの形状となることを防止でき、貫通孔の側壁をウェハの表面に対して容易に垂直にすることができる。
【0094】
また、本実施の形態でも、図20(a)に示したプラズマエッチング工程において、第1の磁界をウェハに印加する。第1の磁界は、SFガスの流量に対するOガスの流量の流量比を第1の流量比としたときに、プラズマをレジスト層と反応させることで保護膜を堆積させる堆積速度と、保護膜をエッチングするエッチング速度が等しくなるような所定磁界よりも大きい。これにより、保護膜の正味の堆積速度を所望の速度に調整しつつ、貫通孔内に供給されるフッ素ラジカルFの量を実質的に増加させ、貫通孔をエッチングするエッチング速度を増加させることができる。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0096】
なお、本実施の形態では、チャンバ内に磁界が印加された状態で、ステップS1〜ステップS3を行う例について説明した。しかし、エッチングを開始する際にフッ化硫黄ガスの流量に対する酸素ガスの流量の流量比を高くすることによって保護膜の堆積速度を相対的に大きくし、エッチングの進行に伴って、酸素ガスの流量比を減少させることによって保護膜の堆積速度を相対的に小さくしてもよい。従って、磁界を印加しない状態で、ステップS1〜ステップS3を行ってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 チャンバ(処理容器)
2 サセプタ
4 支持部
15 第1の高周波電源
20 シャワーヘッド
23 エッチングガス供給系
24 ダイポールリング磁石
26 第2の高周波電源
35 SFガス源
36 Oガス源
40 制御部
51 基体(シリコン層)
51a 穴部
51b 側壁
54 マスク膜(レジスト層)
55 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン層よりなるとともに、前記シリコン層の上方に、所定のパターンにパターニングされたレジスト層が形成されてなる被処理基板が設置されている処理容器内に、酸素ガスとフッ化硫黄ガスとを含んだエッチングガスを所定の流量で供給し、供給した前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、前記レジスト層をマスクとして前記シリコン層をエッチングするプラズマエッチング方法において、
フッ化硫黄ガスの流量に対する酸素ガスの流量の流量比を第1の流量比とした状態で、前記シリコン層をエッチングする第1のステップと、
前記流量比が前記第1の流量比から前記第1の流量比よりも小さい第2の流量比になるように、酸素ガスの流量を減少させながら前記シリコン層をエッチングする第2のステップと、
前記流量比を前記第2の流量比とした状態で、前記シリコン層をエッチングする第3のステップと
を有する、プラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記プラズマエッチング方法は、前記処理容器内で前記被処理基板を支持する支持部に第1の周波数を有する第1の高周波電力を供給した状態で、前記シリコン層をエッチングするものであり、
前記第1のステップは、
前記支持部に、前記第1の高周波電力を供給するとともに、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2の高周波電力を供給した状態で、前記シリコン層をエッチングする第4のステップと、
前記第4のステップの後、前記支持部への前記第2の高周波電力の供給を停止するとともに、前記支持部に前記第1の高周波電力を供給した状態で、前記シリコン層をエッチングする第5のステップと
を含む、請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記第1のステップから前記第3のステップのいずれも、前記流量比を前記第1の流量比としたときに、前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマを前記レジスト層と反応させることで前記被処理基板の表面に保護膜を堆積させる堆積速度と、前記保護膜をエッチングするエッチング速度とが等しくなるような所定磁界よりも大きな第1の磁界を、前記被処理基板に印加した状態で、前記シリコン層をエッチングするものである、請求項1又は請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記プラズマエッチング方法は、前記シリコン層をエッチングして穴部を形成するものであり、
前記第1のステップから前記第3のステップのいずれも、前記流量比を前記第1の流量比としたときに、前記エッチングガスをプラズマ化して発生させた酸素ラジカルを前記レジスト層と反応させることで前記レジスト層の表面及び形成される前記穴部の側壁に保護膜を堆積させる堆積速度と、前記保護膜をエッチングするエッチング速度とが等しくなるような所定磁界よりも大きな第1の磁界を、前記被処理基板に印加した状態で、前記シリコン層をエッチングするものである、請求項1又は請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
シリコン層よりなるとともに、前記シリコン層の上方に、所定のパターンにパターニングされたレジスト層が形成されてなる被処理基板が設置されている処理容器内に、酸素ガスとフッ化硫黄ガスとを含んだエッチングガスを所定の流量で供給し、供給した前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、前記レジスト層をマスクとして前記シリコン層をエッチングするプラズマエッチング方法において、
エッチングを開始する際には、フッ化硫黄ガスの流量に対する酸素ガスの流量の流量比を第1の流量比としたときに、前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマを前記レジスト層と反応させることで前記被処理基板の表面に保護膜を堆積させる堆積速度と、前記保護膜をエッチングするエッチング速度とが等しくなるような所定磁界よりも大きな第1の磁界を、前記被処理基板に印加するとともに、前記流量比を前記第1の流量比とした状態で、前記被処理基板の表面に前記保護膜を堆積するものであって、
エッチングの進行に伴って、前記被処理基板に前記第1の磁界を印加した状態で、酸素ガスの流量を減少させることによって、前記エッチング速度を前記堆積速度よりも相対的に大きくするものである、プラズマエッチング方法。
【請求項6】
シリコン層よりなるとともに、前記シリコン層の上方に、所定のパターンにパターニングされたレジスト層が形成されてなる被処理基板が設置されている処理容器内に、酸素ガスとフッ化硫黄ガスとを含んだエッチングガスを所定の流量で供給し、供給した前記エッチングガスをプラズマ化したプラズマにより、前記レジスト層をマスクとして前記シリコン層をエッチングして穴部を形成するプラズマエッチング方法において、
エッチングを開始する際には、フッ化硫黄ガスの流量に対する酸素ガスの流量の流量比を第1の流量比としたときに、前記エッチングガスをプラズマ化して発生させた酸素ラジカルを前記レジスト層と反応させることで前記レジスト層の表面及び形成される前記穴部の側壁に保護膜を堆積させる堆積速度と、前記保護膜をエッチングするエッチング速度とが等しくなるような所定磁界よりも大きな第1の磁界を、前記被処理基板に印加するとともに、前記流量比を前記第1の流量比とした状態で、前記レジスト層の表面及び前記穴部の側壁に前記保護膜を堆積するものであって、
前記穴部の深さ寸法の増加に伴って、前記被処理基板に前記第1の磁界を印加した状態で、酸素ガスの流量を減少させることによって、前記エッチング速度を前記堆積速度よりも相対的に大きくするものである、プラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−4679(P2013−4679A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133482(P2011−133482)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】