プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
【課題】プラズマ処理プロセスの種類に応じて適切なマルチポール磁場を設定することができ、良好な半導体処理を簡単且つ容易に行うことを可能にしたプラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構を内側と外側のリング状磁場形成手段で構成し、夫々のリング状磁場形成手段を互いに独立して回転可能としている。
【解決手段】被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構を内側と外側のリング状磁場形成手段で構成し、夫々のリング状磁場形成手段を互いに独立して回転可能としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理基板にエッチング等のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造分野においては、処理室内にプラズマを発生させ、このプラズマを処理室内に配置した被処理基板例えば半導体ウエハ等に作用させて、所定の処理、例えば、エッチング、成膜等を行うプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置において、良好な処理を行うためには、プラズマの状態を、プラズマ処理に適した良好な状態に維持する必要があり、このため、従来からプラズマを制御するための磁場を形成する磁場形成機構を具備したプラズマ処理装置が用いられている。
【0004】
磁場形成機構としては、被処理面を上方に向けて水平に配置した半導体ウエハ等の被処理基板に対し、その周囲を囲むようにN及びSの磁極が交互に隣り合うように配列し、半導体ウエハの上方には磁場を形成せず、ウエハの周囲を囲むようにマルチポール磁場を形成するマルチポール型のものが知られている(特許文献1参照)。マルチポールの極数は、4以上の偶数であり好ましくは8から40の間で、ウエハ周囲の磁場強度が処理条件に合うように選ばれる。
【特許文献1】特開2000−306845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、処理室内の半導体ウエハ等の被処理基板の周囲に、所定のマルチポール磁場を形成し、このマルチポール磁場によってプラズマの状態を制御しつつ、エッチング処理等のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置は公知である。しかしながら、本発明者等の研究によれば、プラズマ処理、例えば、プラズマエッチング等においては、マルチポール磁場を形成した状態でプラズマエッチング処理を行った方がエッチング速度の面内均一性が向上する場合と、これとは逆に、マルチポール磁場がない状態でプラズマエッチング処理を行った方がエッチング速度の面内均一性が向上する場合とがあることが判明した。
【0006】
例えば、シリコン酸化膜等のエッチングを行う場合は、マルチポール磁場を形成してエッチングを行った方が半導体ウエハの面内のエッチングレート(エッチング速度)の均一性を向上させることができる。すなわち、マルチポール磁場を形成せずにエッチングを行った場合には、半導体ウエハの中央部でエッチングレートが高くなると共に半導体ウエハの周縁部でエッチングレートが低くなるという不具合(エッチングレートの不均一性)が生じる。
【0007】
これとは逆に、有機系の低誘電率膜(いわゆるLow−K)等のエッチングを行う場合には、マルチポール磁場を形成せずにエッチングを行った方が半導体ウエハ面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。すなわち、この場合、マルチポール磁場を形成してエッチングを行った場合には、半導体ウエハの中央部でエッチングレートが低くなると共に半導体ウエハの周縁部でエッチングレートが高くなるという不具合(エッチングレートの不均一性)が生じる。
【0008】
ここで、上述した磁場形成機構が、電磁石から構成されたものであれば、磁場の形成及び消滅等の制御は容易である。しかし、電磁石の使用では消費電力が増大するという問題が生じるため、多くの装置では永久磁石を用いるのが一般的である。しかし、永久磁石を用いる場合、磁場を“形成する”或いは“形成しない”等の制御は、磁場形成手段自体を装置に取付けたり或いは装置から取外したりする必要があった。このため、磁場形成手段の着脱に大掛かりな装置を必要とするため作業に長時間を要するという問題があり、従って、半導体処理全体の作業効率を低下させるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、プラズマ処理プロセスの種類に応じて適切なマルチポール磁場の状態に制御、設定することができ、良好な半導体処理を簡単且つ容易に行うことを可能にしたプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構は内側と外側のリング状磁場形成手段で構成され、それぞれのリング状磁場形成手段は互いに独立して回転可能であることを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0011】
更に、本発明は、上述のプラズマ処理装置において、前記内側の磁場形成手段は前記処理室の中心に対し周方向の磁化をもつ磁石セグメントを有し、前記外側の磁場形成手段は前記処理室の中心に対し径方向の磁化をもつ磁石セグメントを有することを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0012】
更にまた、本発明は、上述のプラズマ処理装置において、前記磁場形成機構が、上下に分離して設けられた上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有していることを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0013】
更にまた、本発明は、上述のプラズマ処理装置において、前記内側と外側のリング状磁場形成手段の夫々は上下に分離している上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有し、該上側及び下側磁場形成部の夫々は磁場形成機構の中心軸に平行する方向に磁化をもつ磁石セグメントを有し、該上側及び下側磁場形成部夫々の上下方向に対向する磁石セグメントの対向面の磁極は同極であることを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0014】
更にまた、本発明は、上述のプラズマ処理装置において、前記内側及び外側の磁場形成手段の周方向の相対位置を変えることにより、前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する状態と、前記処理室内の前記被処理基板の周囲にマルチポール磁場が形成されない状態とに設定可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0015】
更にまた、本発明は、上述のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理基板にプラズマを作用させてエッチング処理を施すことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プラズマ処理プロセスの種類に応じて適切なマルチポール磁場の状態を容易に制御、設定することができ、良好なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る実施の形態を、半導体ウエハのエッチングを行うプラズマエッチング装置に適用した場合の構成を模式的に示したものである。同図において、符号1は材質が例えばアルミニウム等からなる円筒状の真空チャンバであり、プラズマ処理室を構成する。この真空チャンバ1は小径の上部1aと大径の下部1bからなる段付きの円筒形状となっており電気的に接地されている。また、真空チャンバ1の内部には、被処理基板としての半導体ウエハWを、その被処理面を上側に向けて略水平に支持する支持テーブル(サセプタ)2が設けられている。
【0019】
この支持テーブル2は例えばアルミニウム等の材質で構成されており、セラミックなどの絶縁板3を介して導体の支持台4で支持されている。また支持テーブル2の上方の外周には導電性材料または絶縁性材料で形成されたフォーカスリング5が設けられている。
【0020】
支持テーブル2の半導体ウエハWの載置面には半導体ウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aを配置して構成されており、電極6aには直流電源13が接続されている。電極6aに電源13から電圧を印加することにより、半導体ウエハWを静電チャック6にクーロン力によって吸着させる。
【0021】
さらに、支持テーブル2には冷媒を循環させるための冷媒流路(図示せず)と、冷媒からの冷熱を効率よく半導体ウエハWに伝達するために、半導体ウエハWの裏面にHeガスを供給するガス導入機構(図示せず)とが設けられ、半導体ウエハWを所望の温度に制御できるようになっている。
【0022】
上記支持テーブル2と支持台4はボールねじ7を含むボールねじ機構により昇降可能となっており、支持台4の下方の駆動部分はステンレス鋼(SUS)製のベローズ8で覆われ、ベローズ8の外側にはベローズカバー9が設けられている。
【0023】
支持テーブル2のほぼ中央には高周波電力を供給するための給電線12が接続している。この給電線12にはマッチングボックス11及び高周波電源10が接続されている。高周波電源10からは13.56〜150MHz(好ましくは13.56〜100MHz)の範囲の高周波電力、例えば100MHzの高周波電力、が支持テーブル2に供給される。
【0024】
また、エッチングレートを高くするためには、プラズマ生成用の高周波とプラズマ中のイオンを引き込むための高周波とを重畳させることが好ましい。イオン引き込み(バイアス電圧制御)用の高周波電源(図示せず)の周波数は例えば500KHz〜13.56MHzの範囲である。なお、この周波数はエッチング対象がシリコン酸化膜の場合は3.2MHz、ポリシリコン膜や有機材料膜の場合は13.56MHzが好ましい。
【0025】
さらに、フォーカスリング5の外側にはバッフル板14が設けられている。バッフル板14は、支持台4及びベローズ8を介して、真空チャンバ1と電気的に導通している。一方、支持テーブル2の上方の真空チャンバ1の天壁部分には、シャワーヘッド16が、支持テーブル2と平行に対向するように設けられており、このシャワーヘッド16は接地されている。したがって、これらの支持テーブル2およびシャワーヘッド16は、一対の電極として機能する。
【0026】
シャワーヘッド16には多数のガス吐出孔18が設けられており、シャワーヘッド16の上部にガス導入部16aが設けられている。シャワーヘッド16と真空チャンバ1の天壁のあいだにはガス拡散用空隙17が形成されている。ガス導入部16aにはガス供給配管15aが接続しており、このガス供給配管15aの他端には、エッチング用の反応ガス及び希釈ガス等からなる処理ガスを供給する処理ガス供給系15が接続している。
【0027】
反応ガスとしては、例えば、ハロゲン系のガス(フッ素系、塩素系)、水素ガス等を用いることができ、希釈ガスとしては、Arガス、Heガス等の通常この分野で用いられるガスを用いることができる。このような処理ガスが、処理ガス供給系15からガス供給配管15a、ガス導入部16aを介してシャワーヘッド16上部のガス拡散用空隙17に至り、ガス吐出孔18から吐出され、半導体ウエハWに形成された膜のエッチング用として供給される。
【0028】
真空チャンバ1の下部1bの側壁には、排気ポート19が形成されており、この排気ポート19には排気系20が接続している。この排気系20に設けられた真空ポンプを作動させることにより真空チャンバ1内を所定の真空度にまで減圧することができる。さらに、真空チャンバ1の下部1bの側壁上側には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ24が設けられている。
【0029】
一方、真空チャンバ1の上部1aの外側周囲には、環状の磁場形成機構21が真空チャンバ1の中心軸を中心として配置されており、支持テーブル2とシャワーヘッド16との間の処理空間の周囲に磁場を形成するようになっている。
【0030】
図2は図1の切断面A−Aから見た断面図であり、図2では図面を簡単にするため図1のフォーカスリング5の図示を省略してある。
【0031】
図1及び図2に示すように、磁場形成機構21は内側のリング状磁場形成手段22と外側のリング状磁場形成手段23からなっており、磁場形成手段22及び23の夫々は、別個の回転機構25a及び25bにより、真空チャンバ1の周囲を互いに独立して回転可能になっている。なお、磁場形成機構21を構成する個々の磁石、回転機構25a、25bなどは公知の機構を使用すればよいので詳細な図示は省略してある。磁場形成手段22と23によって真空チャンバ1内に、例えば図2に示すような磁力線が形成され、処理空間の周辺部、即ち真空チャンバ1の内壁近傍では例えば0.01〜0.2T(100〜2000G)(好ましくは0.03〜0.045T(300〜450G))の磁場が形成され、半導体ウエハWの中心部は実質的に無磁場状態(磁場が弱められている状態を含む)となるようにマルチポール磁場が形成される。
【0032】
なお、このように磁場の強度範囲が規定されるのは、磁場強度が強すぎると磁束洩れの原因となり、弱すぎるとプラズマ閉じ込め効果が得られなくなるためである。従って、このような数値は、装置の構造(材料)によって決まる一例であって、必ずしも上述の数値範囲に限定されるものではない。
【0033】
また、半導体ウエハWの中心部における実質的な無磁場とは、本来ゼロT(テスラ)であることが望ましいが、半導体ウエハWの配置部分にエッチング処理に影響を与える磁場が形成されず、実質的にウエハ処理に影響を及ぼさない値であればよい。図2に示す状態では、ウエハ周辺部に例えば磁束密度420μT(4.2G)以下の磁場が印加されており、これによりプラズマを閉じ込める機能が発揮される。
【0034】
図3を参照して本発明に係る実施の形態1を説明する。実施の形態1では、内側の磁場形成手段22に処理室1の中心に対し周方向の磁化をもつ磁石セグメント31を設けると共に、外側の磁場形成手段23には処理室1の中心に対し径方向の磁化をもつ磁石セグメント33を設けている。
【0035】
すなわち、図3(a)に示すように、内側の磁場形成手段22の磁石セグメント31は周方向に磁化されて磁極が交互に変わるように配置され、磁石間には磁性体片32がある。一方、外側の磁場形成手段23の磁石セグメント33は径方向に磁化されて磁極が交互に変わるように配置され、磁石セグメント33の外周は磁性体円筒(磁性体リング)34の内壁に固定されている。磁性体片32と磁性体円筒34とを設けることは必須ではないが磁場効率を高めるためには好ましい。磁性体としては純鉄、炭素鋼、鉄−コバルト鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0036】
内側の磁場形成手段22と外側の磁場形成手段23との周方向の相対位置を変えたときのチャンバ1内部の磁場変化を説明する。内側と外側の磁場形成手段22,23の位置を図3(a)のようにすると(以下この位置を基準位置とする)、チャンバ1内に形成されるマルチポール磁場を最大にできる。図3(a)に示すように磁極ピッチをτとすると、図3(b)は、図3(a)に比べてτ/2ずれた状態であり、チャンバ1内に形成されるマルチポール磁場は図3(a)の状態より小さくなる。図3(c)は、図3(a)に比べて磁極ピッチτずれた状態を示し、内側の磁石31から出た磁束は磁性体片32を通って外側の磁石33に流れるので、チャンバ1の内部の磁束はほとんど無くなる。このように、外側の磁場形成手段23と内側の磁場形成手段22との周方向の相対位置を基準位置(図3(a)の場合)から磁極ピッチτまで変化させれば、チャンバ1内のマルチポール磁場の強度を最大から略ゼロまで制御できる。
【0037】
なお、図3では外側の磁場形成手段23のみを回転させているが、内側及び外側の磁場形成手段22,23は独立して回転させることができるので、内側の磁場形成手段22のみを回転させてもよく、或いは、両方の磁場形成手段を互いに逆方向に回転させてもよい。
【0038】
図4を参照して本発明に係る実施の形態2を説明する。実施の形態2の磁場形成機構(図1の21に相当)は、実施の形態1と同様、内側と外側の磁場形成手段22と23とから構成されている。しかし、実施の形態2では、内側と外側の磁場形成手段22と23のそれぞれは、上下に分離して設けられた上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有する点で実施の形態1と相違している。
【0039】
図4(a)に示すように、内側の磁場形成手段22の上側の磁石セグメント41aと外側の磁場形成手段23の上側の磁石セグメント42aは、夫々、チャンバ1(図1参照)の周囲に所定の間隔を置いて交互に磁極が逆となるように配置され、磁化の方向は磁場形成機構の中心軸に平行である。
【0040】
図4(b)は図4(a)のB−B断面図であり、上下に分離して設けられた上側磁場形成部と下側磁場形成部の一部を示している。即ち、図4(b)は、内側の磁場形成手段22の下側の磁石セグメント41bと外側の磁場形成手段23の下側の磁石セグメント42bとを示すと共に、上側と下側の磁石セグメントの磁極は同極で対向していることを示している。
【0041】
内側の磁場形成手段22と外側の磁場形成手段23との周方向の相対位置を変化させたときのチャンバ1の内部の磁場変化を説明する。図4(a)に示す場合は、チャンバ1の内部のマルチポール磁場は最大となる。図4(c)は、内側と外側の磁場形成手段を、図4(a)に対して磁極ピッチτ分ずらした状態を示し、内側の磁石41a及び41bから出た磁束は夫々外側磁石42a及び42bに短絡されるので、チャンバ側への磁束はほとんど無くなる。このように、内側の磁場形成手段22と外側の磁場形成手段23との周方向の相対位置を基準位置(図4(a)の位置)から磁極ピッチτまで変化させることによって、チャンバ1の内部に形成されるマルチポール磁場の強度を最大から略ゼロにまで変化させることができる。
【0042】
図5は、縦軸を磁場強度とし、横軸を真空チャンバ1内に配置された半導体ウエハWの中心からの距離として、内外の磁場形成手段22及び23が図3(a)や図4(a)に示す位置(基準位置)の場合(曲線A)、図3(b)に示すように内外の磁場形成手段の相対位置が基準位置からτ/2ずれた場合(曲線B)、図3(c)や図4(b)に示すように内外の磁場形成手段の相対位置が基準位置からτずれた場合(曲線C)、における半導体ウエハWの中心からの距離と磁場強度との関係を示している。なお、同図に示すD/S内径とは真空チャンバ1の内壁に設けられた内壁保護用のデポシールド内径のことを示しており、実質的に真空チャンバ1(処理室)の内径を示している。
【0043】
図5の曲線Aで示すように、内外の磁場形成手段が基準位置にある状態では、マルチポール磁場は実質的に半導体ウエハWの周縁部まで形成されており、一方、曲線Cで示すように、内外の磁場形成手段の相対位置が基準からτだけずれた状態では、真空チャンバ1内の磁場強度は実質的にゼロ(磁場が弱められている状態)となる。更に、曲線Bで示すように、内外の磁場形成手段の相対位置が基準からτ/2ずれた場合には上記2つの状態の中間的な状態となる。
【0044】
上述したように、本実施の形態1及び2においては、磁場形成機構21を構成する内外の磁場形成手段22と23は夫々独立して回転可能となっている。そして、内外の磁場形成手段の周方向の相対位置を変えることによって、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場を形成する状態と、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲に実質的にマルチポール磁場が形成されない状態とに設定できるようになっている。
【0045】
したがって、例えば、上述したシリコン酸化膜等のエッチングを行う場合は、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場を形成することによって、半導体ウエハWの面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。一方、上述した有機系の低誘電率膜(Low−K)等のエッチングを行う場合は、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場を形成しないようにすれば、半導体ウエハWの面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。
【0046】
図6〜図8は、縦軸をエッチングレート(エッチング速度)とし、横軸を半導体ウエハの中心からの距離として、半導体ウエハW面内のエッチングレートの均一性を調べた結果を示す。図6〜図8の各図において、曲線Aは真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成しない場合、曲線Bは真空チャンバ1内に0.03T(300G)のマルチポール磁場を形成した場合、曲線Cは真空チャンバ1内に0.08T(800G)のマルチポール磁場を形成した場合を示している。
【0047】
図6〜図8の曲線Aは、内側と外側の磁場形成手段22及び23の作る磁場の極性が逆の状態、即ち、内側と外側の磁場形成手段22及び23の周方向の相対位置が基準位置から1磁極ピッチ分(τ)ずれた状態での“ウエハ中心からの距離に対するエッチング速度”を示す。これは、図3(c)及び図4(b)の場合に相当する。曲線Cは、内側と外側の磁場形成手段22及び23の作る磁場の極性が同方向の場合、即ち、内側と外側の磁場形成手段が基準位置にある場合の“ウエハ中心からの距離に対するエッチング速度”を示す。これは、図3(a)及び図4(a)の場合に相当する。曲線Bは、内側と外側の磁場形成手段22及び23の周方向の相対位置が、曲線Aと曲線Cで説明した内外の磁場形成手段22及び23の周方向の相対位置の中間位置にある場合の“ウエハ中心からの距離に対するエッチング速度”を示しており、図3(b)の場合に相当する。
【0048】
図6はC4F8ガスでシリコン酸化膜をエッチングした場合、図7はCF4ガスでシリコン酸化膜をエッチングした場合、図8はN2とH2を含む混合ガスで有機系低誘電率膜(Low−K)をエッチングした場合を示している。図6及び図7に示すように、C4F8やCF4ガス等のCとFを含むガスでシリコン酸化膜をエッチングする場合は、真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成した状態でエッチングを行った方が、エッチングレートの面内均一性を向上させることができることが判る。また、図8に示すように、N2とH2を含む混合ガスで有機系低誘電率膜(Low−K)をエッチングした場合は、真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成しない状態でエッチングを行った方が、エッチングレートの面内均一性を向上させることができることが判る。
【0049】
以上説明したように、本発明の本実施の形態によれば、内外のリング状の磁場形成手段の磁極の相対位置を周方向に変化させることによって、真空チャンバ1内に形成されるマルチポール磁場強度を容易に制御することができるので、処理プロセスに応じて最適なマルチポール磁場とすることができる。
【0050】
なお、磁石セグメントの数は、所望の磁場強度分布に合わせて決められるものであり、2の倍数である以外に限定されるものでないことは勿論である。また、磁石セグメントの断面形状は、正方形、多角形、円柱形の何れであってもよいが、磁石形状加工の容易さから長方形とすることが望ましい。
【0051】
さらに、磁石セグメントの材料も特に限定されるものではなく、例えば、希土類磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等の公知の磁石材料を使用することが可能である。また、内外の磁場形成手段22及び23の夫々を構成する磁石の数は同数である。
【0052】
図9を参照して、実施の形態2(図4)の変形例を説明する。図9(a)及び図9(b)は夫々図4(a)及び図4(b)に対応する。図9に示す変形例は、内側及び外側の磁場形成手段22及び23の夫々の上面及び下面に、磁性体リング45a,46a,45b,46bを設けたものであり、これ以外は図4の実施の形態2と実質上異なる点はない。磁性体リング45aなどを設けることにより、図4の実施の形態2の場合に比べ、例えば、磁場強度を約50%増すことができる。つまり、少ない磁石量で図4の実施の形態2の場合と同等の磁場強度を得ることができる。磁性体としては純鉄、炭素鋼、鉄−コバルト鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0053】
次に、上述のように構成された装置におけるプラズマエッチング処理について図1を参照して説明する。
【0054】
先ず、ゲートバルブ24を開放し、このゲートバルブ24に隣接して配置したロードロック室を介して搬送機構(共に図示せず)により半導体ウエハWを真空チャンバ1内に搬入し、予め所定の位置に下降されている支持テーブル2上に載置する。次いで、直流電源13から静電チャック6の電極6aに所定の電圧を印加すると、半導体ウエハWはクーロン力により静電チャック6に吸着される。
【0055】
その後、搬送機構を真空チャンバ1の外部に退避させた後、ゲートバルブ24を閉じて支持テーブル2を図1に示す位置まで上昇させると共に、排気系20の真空ポンプにより排気ポート19を介して真空チャンバ1の内部を排気する。
【0056】
真空チャンバ1の内部が所定の真空度になった後、真空チャンバ1内に処理ガス供給系15から所定の処理ガスを、例えば100〜1000sccmの流量で導入し、真空チャンバ1内を所定の圧力、例えば1.33〜133 Pa(10〜1000 mTorr)、好ましくは2.67〜26.7 Pa(20〜200 mTorr)程度に保持する。
【0057】
この状態で高周波電源10から、支持テーブル2に、周波数が13.56〜150MHz(例えば100MHz)で且つ100〜3000Wの高周波電力を供給すると、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である支持テーブル2との間の処理空間には高周波電界が形成され、これにより処理空間に供給された処理ガスがプラズマ化されて、そのプラズマにより半導体ウエハW上の所定の膜がエッチングされる。
【0058】
この時、上述したように、実施するプラズマ処理プロセスの種類等により、予め内側磁場形成手段22と外側磁場形成手段23との位置関係を変えることにより、真空チャンバ1内に所定の強度のマルチポール磁場を形成させる場合と、若しくは、実質的に真空チャンバ1内にマルチポール磁場が形成されない状態とを選択することができる。
【0059】
なお、マルチポール磁場を形成すると、真空チャンバ1の側壁部(デポシールド)の磁極に対応する部分が局部的に削られる現象が生じるおそれがある。これを防ぐためには、モータ等の駆動源を備えた回転機構25により、内側磁場形成手段22と外側磁場形成手段23とを同期して回転させる(つまり磁場形成機構21全体を真空チャンバ1の周囲で回転させる)。即ち、真空チャンバ1の壁部に対して磁極が移動するため、真空チャンバ1の壁部が局部的に削られることを防止することができる。
【0060】
所定のエッチング処理を実行すると、高周波電源10から高周波電力の供給を停止して、エッチング処理を停止した後、上述した手順とは逆の手順で半導体ウエハWを真空チャンバ1から外部に搬出する。
【0061】
図10を参照して、実施の形態2(図4)の他の変形例を説明する。図10に示す変形例は、実施の形態2と同様に、磁場形成機構が内側及び外側の磁場形成手段22と23とを有し、更に、これらの磁場形成手段22と23は夫々上側及び下側の磁場形成部とに分離されている。図10の変形例が図4の実施の形態2と異なる点は、上側と下側の磁場形成部の間隔を変えることができることであり、これ以外は、図10の変形例と図4の実施の形態2は実施的に同一である。
【0062】
図10(a)に示すように、上側と下側の磁場形成部を近接させた場合、図10(a)の横方向の矢印で示すように、真空チャンバ1の内部の磁場強度は大きくなり、一方、図10(b)に示すように、上側と下側の磁場形成部の間隔を広くすると、真空チャンバ1の内部の磁場強度は小さくなる。図10の変形例の特徴は、図4で説明した真空チャンバ1内部のマルチポール磁場強度の制御の他に、上側と下側の磁場形成部の間隔を変えることによっても真空チャンバ1内部のマルチポール磁場強度を制御できるという点である。従って、例えば、内側及び外側の磁場形成手段22と23の周方向の基準位置からの“ずらし”を小さくしても(磁石ピッチτまでずらさなくとも)チャンバ内の磁場強度を実質的に略ゼロにすることも可能である。
【0063】
図3で説明した実施の形態1では、外側の磁場形成手段23の磁石セグメント33は磁性体リング34の内壁に設けられている。しかし、この磁性体リング34は必ずしも必須のものでなく省略は可能である。更に、図3では、内側の磁場形成手段22の磁石セグメント31の間に磁性体片32が設けられているが、この磁性体片32は省略可能である。
【0064】
更に、図11(a)に示すように、図3で説明した実施の形態1において、内側の磁場形成手段22の磁石セグメント31の間に設けた磁性体片32の代わりに、磁場形成機構21の中心に対して径方向に磁化されたセグメント磁石50を設けてもよい。また、図11(b)に示すように、リング状に配置した磁石セグメント31,50の外側に磁性体リング52を設けるようにすることもできる。更にまた、図11には図示していないが、図3の外側磁場形成手段23についても同様に変更・変形が可能である。
【0065】
図9では、図4で説明した内側及び外側の磁場形成手段22及び23の夫々の上面及び下面に、磁性体リング45a,46a,45b,46bを設けているが、これに限らず、内側及び外側の磁場形成手段22及び23のいずれか一方の上面及び下面に図9で示したような磁性体リングを設けるようにしてもよい。
【0066】
上述の説明では、磁場形成機構21を構成する磁石セグメントの支持部材は公知のものを使用すればよいので、支持部材の図示及び説明を省略した。
【0067】
なお、上述の実施の形態においては、本発明を半導体ウエハのエッチングを行うエッチング装置に適用した場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されるものではない。例えば、本発明は、半導体ウエハ以外の基板を処理する装置に応用可能であり、更に、エッチング以外のプラズマ処理、例えばCVD等の成膜処理装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態の一つを適用したプラズマ処理装置の一例の概略を示す図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明に係る実施の形態1を説明するための図。
【図4】本発明に係る実施の形態2を説明するための図。
【図5】図1に示す装置を構成する真空チャンバ内の磁場強度の状態を示す図。
【図6】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図7】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図8】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図9】図4に示した実施の形態2の変形例を説明するための図。
【図10】図4に示した実施の形態2の他の変形例を説明するための図。
【図11】図3に示した実施の形態1の変形例を説明するための図。
【符号の説明】
【0069】
1:真空チャンバ、2:支持テーブル、3:絶縁板、4:支持台、5:フォーカスリング、6:静電チャック、7:ボールねじ、8:ベローズ、9:ベローズカバー、10:高周波電源、11:マッチングボックス、12:給電線、13:直流電源、14:バッフル板、15:処理ガス供給系、16:シャワーヘッド、17:ガス拡散用空隙、18:ガス吐出孔、19:排気ポート、20:排気系、21:磁場形成機構、22:内側の磁場形成手段、23:外側の磁場形成手段、31,33:磁石セグメント、34:磁性体リング、41,42:磁石セグメント、45,46:磁性体リング
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理基板にエッチング等のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造分野においては、処理室内にプラズマを発生させ、このプラズマを処理室内に配置した被処理基板例えば半導体ウエハ等に作用させて、所定の処理、例えば、エッチング、成膜等を行うプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置において、良好な処理を行うためには、プラズマの状態を、プラズマ処理に適した良好な状態に維持する必要があり、このため、従来からプラズマを制御するための磁場を形成する磁場形成機構を具備したプラズマ処理装置が用いられている。
【0004】
磁場形成機構としては、被処理面を上方に向けて水平に配置した半導体ウエハ等の被処理基板に対し、その周囲を囲むようにN及びSの磁極が交互に隣り合うように配列し、半導体ウエハの上方には磁場を形成せず、ウエハの周囲を囲むようにマルチポール磁場を形成するマルチポール型のものが知られている(特許文献1参照)。マルチポールの極数は、4以上の偶数であり好ましくは8から40の間で、ウエハ周囲の磁場強度が処理条件に合うように選ばれる。
【特許文献1】特開2000−306845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、処理室内の半導体ウエハ等の被処理基板の周囲に、所定のマルチポール磁場を形成し、このマルチポール磁場によってプラズマの状態を制御しつつ、エッチング処理等のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置は公知である。しかしながら、本発明者等の研究によれば、プラズマ処理、例えば、プラズマエッチング等においては、マルチポール磁場を形成した状態でプラズマエッチング処理を行った方がエッチング速度の面内均一性が向上する場合と、これとは逆に、マルチポール磁場がない状態でプラズマエッチング処理を行った方がエッチング速度の面内均一性が向上する場合とがあることが判明した。
【0006】
例えば、シリコン酸化膜等のエッチングを行う場合は、マルチポール磁場を形成してエッチングを行った方が半導体ウエハの面内のエッチングレート(エッチング速度)の均一性を向上させることができる。すなわち、マルチポール磁場を形成せずにエッチングを行った場合には、半導体ウエハの中央部でエッチングレートが高くなると共に半導体ウエハの周縁部でエッチングレートが低くなるという不具合(エッチングレートの不均一性)が生じる。
【0007】
これとは逆に、有機系の低誘電率膜(いわゆるLow−K)等のエッチングを行う場合には、マルチポール磁場を形成せずにエッチングを行った方が半導体ウエハ面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。すなわち、この場合、マルチポール磁場を形成してエッチングを行った場合には、半導体ウエハの中央部でエッチングレートが低くなると共に半導体ウエハの周縁部でエッチングレートが高くなるという不具合(エッチングレートの不均一性)が生じる。
【0008】
ここで、上述した磁場形成機構が、電磁石から構成されたものであれば、磁場の形成及び消滅等の制御は容易である。しかし、電磁石の使用では消費電力が増大するという問題が生じるため、多くの装置では永久磁石を用いるのが一般的である。しかし、永久磁石を用いる場合、磁場を“形成する”或いは“形成しない”等の制御は、磁場形成手段自体を装置に取付けたり或いは装置から取外したりする必要があった。このため、磁場形成手段の着脱に大掛かりな装置を必要とするため作業に長時間を要するという問題があり、従って、半導体処理全体の作業効率を低下させるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、プラズマ処理プロセスの種類に応じて適切なマルチポール磁場の状態に制御、設定することができ、良好な半導体処理を簡単且つ容易に行うことを可能にしたプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構は内側と外側のリング状磁場形成手段で構成され、それぞれのリング状磁場形成手段は互いに独立して回転可能であることを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0011】
更に、本発明は、上述のプラズマ処理装置において、前記内側の磁場形成手段は前記処理室の中心に対し周方向の磁化をもつ磁石セグメントを有し、前記外側の磁場形成手段は前記処理室の中心に対し径方向の磁化をもつ磁石セグメントを有することを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0012】
更にまた、本発明は、上述のプラズマ処理装置において、前記磁場形成機構が、上下に分離して設けられた上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有していることを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0013】
更にまた、本発明は、上述のプラズマ処理装置において、前記内側と外側のリング状磁場形成手段の夫々は上下に分離している上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有し、該上側及び下側磁場形成部の夫々は磁場形成機構の中心軸に平行する方向に磁化をもつ磁石セグメントを有し、該上側及び下側磁場形成部夫々の上下方向に対向する磁石セグメントの対向面の磁極は同極であることを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0014】
更にまた、本発明は、上述のプラズマ処理装置において、前記内側及び外側の磁場形成手段の周方向の相対位置を変えることにより、前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する状態と、前記処理室内の前記被処理基板の周囲にマルチポール磁場が形成されない状態とに設定可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0015】
更にまた、本発明は、上述のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理基板にプラズマを作用させてエッチング処理を施すことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プラズマ処理プロセスの種類に応じて適切なマルチポール磁場の状態を容易に制御、設定することができ、良好なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る実施の形態を、半導体ウエハのエッチングを行うプラズマエッチング装置に適用した場合の構成を模式的に示したものである。同図において、符号1は材質が例えばアルミニウム等からなる円筒状の真空チャンバであり、プラズマ処理室を構成する。この真空チャンバ1は小径の上部1aと大径の下部1bからなる段付きの円筒形状となっており電気的に接地されている。また、真空チャンバ1の内部には、被処理基板としての半導体ウエハWを、その被処理面を上側に向けて略水平に支持する支持テーブル(サセプタ)2が設けられている。
【0019】
この支持テーブル2は例えばアルミニウム等の材質で構成されており、セラミックなどの絶縁板3を介して導体の支持台4で支持されている。また支持テーブル2の上方の外周には導電性材料または絶縁性材料で形成されたフォーカスリング5が設けられている。
【0020】
支持テーブル2の半導体ウエハWの載置面には半導体ウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aを配置して構成されており、電極6aには直流電源13が接続されている。電極6aに電源13から電圧を印加することにより、半導体ウエハWを静電チャック6にクーロン力によって吸着させる。
【0021】
さらに、支持テーブル2には冷媒を循環させるための冷媒流路(図示せず)と、冷媒からの冷熱を効率よく半導体ウエハWに伝達するために、半導体ウエハWの裏面にHeガスを供給するガス導入機構(図示せず)とが設けられ、半導体ウエハWを所望の温度に制御できるようになっている。
【0022】
上記支持テーブル2と支持台4はボールねじ7を含むボールねじ機構により昇降可能となっており、支持台4の下方の駆動部分はステンレス鋼(SUS)製のベローズ8で覆われ、ベローズ8の外側にはベローズカバー9が設けられている。
【0023】
支持テーブル2のほぼ中央には高周波電力を供給するための給電線12が接続している。この給電線12にはマッチングボックス11及び高周波電源10が接続されている。高周波電源10からは13.56〜150MHz(好ましくは13.56〜100MHz)の範囲の高周波電力、例えば100MHzの高周波電力、が支持テーブル2に供給される。
【0024】
また、エッチングレートを高くするためには、プラズマ生成用の高周波とプラズマ中のイオンを引き込むための高周波とを重畳させることが好ましい。イオン引き込み(バイアス電圧制御)用の高周波電源(図示せず)の周波数は例えば500KHz〜13.56MHzの範囲である。なお、この周波数はエッチング対象がシリコン酸化膜の場合は3.2MHz、ポリシリコン膜や有機材料膜の場合は13.56MHzが好ましい。
【0025】
さらに、フォーカスリング5の外側にはバッフル板14が設けられている。バッフル板14は、支持台4及びベローズ8を介して、真空チャンバ1と電気的に導通している。一方、支持テーブル2の上方の真空チャンバ1の天壁部分には、シャワーヘッド16が、支持テーブル2と平行に対向するように設けられており、このシャワーヘッド16は接地されている。したがって、これらの支持テーブル2およびシャワーヘッド16は、一対の電極として機能する。
【0026】
シャワーヘッド16には多数のガス吐出孔18が設けられており、シャワーヘッド16の上部にガス導入部16aが設けられている。シャワーヘッド16と真空チャンバ1の天壁のあいだにはガス拡散用空隙17が形成されている。ガス導入部16aにはガス供給配管15aが接続しており、このガス供給配管15aの他端には、エッチング用の反応ガス及び希釈ガス等からなる処理ガスを供給する処理ガス供給系15が接続している。
【0027】
反応ガスとしては、例えば、ハロゲン系のガス(フッ素系、塩素系)、水素ガス等を用いることができ、希釈ガスとしては、Arガス、Heガス等の通常この分野で用いられるガスを用いることができる。このような処理ガスが、処理ガス供給系15からガス供給配管15a、ガス導入部16aを介してシャワーヘッド16上部のガス拡散用空隙17に至り、ガス吐出孔18から吐出され、半導体ウエハWに形成された膜のエッチング用として供給される。
【0028】
真空チャンバ1の下部1bの側壁には、排気ポート19が形成されており、この排気ポート19には排気系20が接続している。この排気系20に設けられた真空ポンプを作動させることにより真空チャンバ1内を所定の真空度にまで減圧することができる。さらに、真空チャンバ1の下部1bの側壁上側には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ24が設けられている。
【0029】
一方、真空チャンバ1の上部1aの外側周囲には、環状の磁場形成機構21が真空チャンバ1の中心軸を中心として配置されており、支持テーブル2とシャワーヘッド16との間の処理空間の周囲に磁場を形成するようになっている。
【0030】
図2は図1の切断面A−Aから見た断面図であり、図2では図面を簡単にするため図1のフォーカスリング5の図示を省略してある。
【0031】
図1及び図2に示すように、磁場形成機構21は内側のリング状磁場形成手段22と外側のリング状磁場形成手段23からなっており、磁場形成手段22及び23の夫々は、別個の回転機構25a及び25bにより、真空チャンバ1の周囲を互いに独立して回転可能になっている。なお、磁場形成機構21を構成する個々の磁石、回転機構25a、25bなどは公知の機構を使用すればよいので詳細な図示は省略してある。磁場形成手段22と23によって真空チャンバ1内に、例えば図2に示すような磁力線が形成され、処理空間の周辺部、即ち真空チャンバ1の内壁近傍では例えば0.01〜0.2T(100〜2000G)(好ましくは0.03〜0.045T(300〜450G))の磁場が形成され、半導体ウエハWの中心部は実質的に無磁場状態(磁場が弱められている状態を含む)となるようにマルチポール磁場が形成される。
【0032】
なお、このように磁場の強度範囲が規定されるのは、磁場強度が強すぎると磁束洩れの原因となり、弱すぎるとプラズマ閉じ込め効果が得られなくなるためである。従って、このような数値は、装置の構造(材料)によって決まる一例であって、必ずしも上述の数値範囲に限定されるものではない。
【0033】
また、半導体ウエハWの中心部における実質的な無磁場とは、本来ゼロT(テスラ)であることが望ましいが、半導体ウエハWの配置部分にエッチング処理に影響を与える磁場が形成されず、実質的にウエハ処理に影響を及ぼさない値であればよい。図2に示す状態では、ウエハ周辺部に例えば磁束密度420μT(4.2G)以下の磁場が印加されており、これによりプラズマを閉じ込める機能が発揮される。
【0034】
図3を参照して本発明に係る実施の形態1を説明する。実施の形態1では、内側の磁場形成手段22に処理室1の中心に対し周方向の磁化をもつ磁石セグメント31を設けると共に、外側の磁場形成手段23には処理室1の中心に対し径方向の磁化をもつ磁石セグメント33を設けている。
【0035】
すなわち、図3(a)に示すように、内側の磁場形成手段22の磁石セグメント31は周方向に磁化されて磁極が交互に変わるように配置され、磁石間には磁性体片32がある。一方、外側の磁場形成手段23の磁石セグメント33は径方向に磁化されて磁極が交互に変わるように配置され、磁石セグメント33の外周は磁性体円筒(磁性体リング)34の内壁に固定されている。磁性体片32と磁性体円筒34とを設けることは必須ではないが磁場効率を高めるためには好ましい。磁性体としては純鉄、炭素鋼、鉄−コバルト鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0036】
内側の磁場形成手段22と外側の磁場形成手段23との周方向の相対位置を変えたときのチャンバ1内部の磁場変化を説明する。内側と外側の磁場形成手段22,23の位置を図3(a)のようにすると(以下この位置を基準位置とする)、チャンバ1内に形成されるマルチポール磁場を最大にできる。図3(a)に示すように磁極ピッチをτとすると、図3(b)は、図3(a)に比べてτ/2ずれた状態であり、チャンバ1内に形成されるマルチポール磁場は図3(a)の状態より小さくなる。図3(c)は、図3(a)に比べて磁極ピッチτずれた状態を示し、内側の磁石31から出た磁束は磁性体片32を通って外側の磁石33に流れるので、チャンバ1の内部の磁束はほとんど無くなる。このように、外側の磁場形成手段23と内側の磁場形成手段22との周方向の相対位置を基準位置(図3(a)の場合)から磁極ピッチτまで変化させれば、チャンバ1内のマルチポール磁場の強度を最大から略ゼロまで制御できる。
【0037】
なお、図3では外側の磁場形成手段23のみを回転させているが、内側及び外側の磁場形成手段22,23は独立して回転させることができるので、内側の磁場形成手段22のみを回転させてもよく、或いは、両方の磁場形成手段を互いに逆方向に回転させてもよい。
【0038】
図4を参照して本発明に係る実施の形態2を説明する。実施の形態2の磁場形成機構(図1の21に相当)は、実施の形態1と同様、内側と外側の磁場形成手段22と23とから構成されている。しかし、実施の形態2では、内側と外側の磁場形成手段22と23のそれぞれは、上下に分離して設けられた上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有する点で実施の形態1と相違している。
【0039】
図4(a)に示すように、内側の磁場形成手段22の上側の磁石セグメント41aと外側の磁場形成手段23の上側の磁石セグメント42aは、夫々、チャンバ1(図1参照)の周囲に所定の間隔を置いて交互に磁極が逆となるように配置され、磁化の方向は磁場形成機構の中心軸に平行である。
【0040】
図4(b)は図4(a)のB−B断面図であり、上下に分離して設けられた上側磁場形成部と下側磁場形成部の一部を示している。即ち、図4(b)は、内側の磁場形成手段22の下側の磁石セグメント41bと外側の磁場形成手段23の下側の磁石セグメント42bとを示すと共に、上側と下側の磁石セグメントの磁極は同極で対向していることを示している。
【0041】
内側の磁場形成手段22と外側の磁場形成手段23との周方向の相対位置を変化させたときのチャンバ1の内部の磁場変化を説明する。図4(a)に示す場合は、チャンバ1の内部のマルチポール磁場は最大となる。図4(c)は、内側と外側の磁場形成手段を、図4(a)に対して磁極ピッチτ分ずらした状態を示し、内側の磁石41a及び41bから出た磁束は夫々外側磁石42a及び42bに短絡されるので、チャンバ側への磁束はほとんど無くなる。このように、内側の磁場形成手段22と外側の磁場形成手段23との周方向の相対位置を基準位置(図4(a)の位置)から磁極ピッチτまで変化させることによって、チャンバ1の内部に形成されるマルチポール磁場の強度を最大から略ゼロにまで変化させることができる。
【0042】
図5は、縦軸を磁場強度とし、横軸を真空チャンバ1内に配置された半導体ウエハWの中心からの距離として、内外の磁場形成手段22及び23が図3(a)や図4(a)に示す位置(基準位置)の場合(曲線A)、図3(b)に示すように内外の磁場形成手段の相対位置が基準位置からτ/2ずれた場合(曲線B)、図3(c)や図4(b)に示すように内外の磁場形成手段の相対位置が基準位置からτずれた場合(曲線C)、における半導体ウエハWの中心からの距離と磁場強度との関係を示している。なお、同図に示すD/S内径とは真空チャンバ1の内壁に設けられた内壁保護用のデポシールド内径のことを示しており、実質的に真空チャンバ1(処理室)の内径を示している。
【0043】
図5の曲線Aで示すように、内外の磁場形成手段が基準位置にある状態では、マルチポール磁場は実質的に半導体ウエハWの周縁部まで形成されており、一方、曲線Cで示すように、内外の磁場形成手段の相対位置が基準からτだけずれた状態では、真空チャンバ1内の磁場強度は実質的にゼロ(磁場が弱められている状態)となる。更に、曲線Bで示すように、内外の磁場形成手段の相対位置が基準からτ/2ずれた場合には上記2つの状態の中間的な状態となる。
【0044】
上述したように、本実施の形態1及び2においては、磁場形成機構21を構成する内外の磁場形成手段22と23は夫々独立して回転可能となっている。そして、内外の磁場形成手段の周方向の相対位置を変えることによって、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場を形成する状態と、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲に実質的にマルチポール磁場が形成されない状態とに設定できるようになっている。
【0045】
したがって、例えば、上述したシリコン酸化膜等のエッチングを行う場合は、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場を形成することによって、半導体ウエハWの面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。一方、上述した有機系の低誘電率膜(Low−K)等のエッチングを行う場合は、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場を形成しないようにすれば、半導体ウエハWの面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。
【0046】
図6〜図8は、縦軸をエッチングレート(エッチング速度)とし、横軸を半導体ウエハの中心からの距離として、半導体ウエハW面内のエッチングレートの均一性を調べた結果を示す。図6〜図8の各図において、曲線Aは真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成しない場合、曲線Bは真空チャンバ1内に0.03T(300G)のマルチポール磁場を形成した場合、曲線Cは真空チャンバ1内に0.08T(800G)のマルチポール磁場を形成した場合を示している。
【0047】
図6〜図8の曲線Aは、内側と外側の磁場形成手段22及び23の作る磁場の極性が逆の状態、即ち、内側と外側の磁場形成手段22及び23の周方向の相対位置が基準位置から1磁極ピッチ分(τ)ずれた状態での“ウエハ中心からの距離に対するエッチング速度”を示す。これは、図3(c)及び図4(b)の場合に相当する。曲線Cは、内側と外側の磁場形成手段22及び23の作る磁場の極性が同方向の場合、即ち、内側と外側の磁場形成手段が基準位置にある場合の“ウエハ中心からの距離に対するエッチング速度”を示す。これは、図3(a)及び図4(a)の場合に相当する。曲線Bは、内側と外側の磁場形成手段22及び23の周方向の相対位置が、曲線Aと曲線Cで説明した内外の磁場形成手段22及び23の周方向の相対位置の中間位置にある場合の“ウエハ中心からの距離に対するエッチング速度”を示しており、図3(b)の場合に相当する。
【0048】
図6はC4F8ガスでシリコン酸化膜をエッチングした場合、図7はCF4ガスでシリコン酸化膜をエッチングした場合、図8はN2とH2を含む混合ガスで有機系低誘電率膜(Low−K)をエッチングした場合を示している。図6及び図7に示すように、C4F8やCF4ガス等のCとFを含むガスでシリコン酸化膜をエッチングする場合は、真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成した状態でエッチングを行った方が、エッチングレートの面内均一性を向上させることができることが判る。また、図8に示すように、N2とH2を含む混合ガスで有機系低誘電率膜(Low−K)をエッチングした場合は、真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成しない状態でエッチングを行った方が、エッチングレートの面内均一性を向上させることができることが判る。
【0049】
以上説明したように、本発明の本実施の形態によれば、内外のリング状の磁場形成手段の磁極の相対位置を周方向に変化させることによって、真空チャンバ1内に形成されるマルチポール磁場強度を容易に制御することができるので、処理プロセスに応じて最適なマルチポール磁場とすることができる。
【0050】
なお、磁石セグメントの数は、所望の磁場強度分布に合わせて決められるものであり、2の倍数である以外に限定されるものでないことは勿論である。また、磁石セグメントの断面形状は、正方形、多角形、円柱形の何れであってもよいが、磁石形状加工の容易さから長方形とすることが望ましい。
【0051】
さらに、磁石セグメントの材料も特に限定されるものではなく、例えば、希土類磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等の公知の磁石材料を使用することが可能である。また、内外の磁場形成手段22及び23の夫々を構成する磁石の数は同数である。
【0052】
図9を参照して、実施の形態2(図4)の変形例を説明する。図9(a)及び図9(b)は夫々図4(a)及び図4(b)に対応する。図9に示す変形例は、内側及び外側の磁場形成手段22及び23の夫々の上面及び下面に、磁性体リング45a,46a,45b,46bを設けたものであり、これ以外は図4の実施の形態2と実質上異なる点はない。磁性体リング45aなどを設けることにより、図4の実施の形態2の場合に比べ、例えば、磁場強度を約50%増すことができる。つまり、少ない磁石量で図4の実施の形態2の場合と同等の磁場強度を得ることができる。磁性体としては純鉄、炭素鋼、鉄−コバルト鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0053】
次に、上述のように構成された装置におけるプラズマエッチング処理について図1を参照して説明する。
【0054】
先ず、ゲートバルブ24を開放し、このゲートバルブ24に隣接して配置したロードロック室を介して搬送機構(共に図示せず)により半導体ウエハWを真空チャンバ1内に搬入し、予め所定の位置に下降されている支持テーブル2上に載置する。次いで、直流電源13から静電チャック6の電極6aに所定の電圧を印加すると、半導体ウエハWはクーロン力により静電チャック6に吸着される。
【0055】
その後、搬送機構を真空チャンバ1の外部に退避させた後、ゲートバルブ24を閉じて支持テーブル2を図1に示す位置まで上昇させると共に、排気系20の真空ポンプにより排気ポート19を介して真空チャンバ1の内部を排気する。
【0056】
真空チャンバ1の内部が所定の真空度になった後、真空チャンバ1内に処理ガス供給系15から所定の処理ガスを、例えば100〜1000sccmの流量で導入し、真空チャンバ1内を所定の圧力、例えば1.33〜133 Pa(10〜1000 mTorr)、好ましくは2.67〜26.7 Pa(20〜200 mTorr)程度に保持する。
【0057】
この状態で高周波電源10から、支持テーブル2に、周波数が13.56〜150MHz(例えば100MHz)で且つ100〜3000Wの高周波電力を供給すると、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である支持テーブル2との間の処理空間には高周波電界が形成され、これにより処理空間に供給された処理ガスがプラズマ化されて、そのプラズマにより半導体ウエハW上の所定の膜がエッチングされる。
【0058】
この時、上述したように、実施するプラズマ処理プロセスの種類等により、予め内側磁場形成手段22と外側磁場形成手段23との位置関係を変えることにより、真空チャンバ1内に所定の強度のマルチポール磁場を形成させる場合と、若しくは、実質的に真空チャンバ1内にマルチポール磁場が形成されない状態とを選択することができる。
【0059】
なお、マルチポール磁場を形成すると、真空チャンバ1の側壁部(デポシールド)の磁極に対応する部分が局部的に削られる現象が生じるおそれがある。これを防ぐためには、モータ等の駆動源を備えた回転機構25により、内側磁場形成手段22と外側磁場形成手段23とを同期して回転させる(つまり磁場形成機構21全体を真空チャンバ1の周囲で回転させる)。即ち、真空チャンバ1の壁部に対して磁極が移動するため、真空チャンバ1の壁部が局部的に削られることを防止することができる。
【0060】
所定のエッチング処理を実行すると、高周波電源10から高周波電力の供給を停止して、エッチング処理を停止した後、上述した手順とは逆の手順で半導体ウエハWを真空チャンバ1から外部に搬出する。
【0061】
図10を参照して、実施の形態2(図4)の他の変形例を説明する。図10に示す変形例は、実施の形態2と同様に、磁場形成機構が内側及び外側の磁場形成手段22と23とを有し、更に、これらの磁場形成手段22と23は夫々上側及び下側の磁場形成部とに分離されている。図10の変形例が図4の実施の形態2と異なる点は、上側と下側の磁場形成部の間隔を変えることができることであり、これ以外は、図10の変形例と図4の実施の形態2は実施的に同一である。
【0062】
図10(a)に示すように、上側と下側の磁場形成部を近接させた場合、図10(a)の横方向の矢印で示すように、真空チャンバ1の内部の磁場強度は大きくなり、一方、図10(b)に示すように、上側と下側の磁場形成部の間隔を広くすると、真空チャンバ1の内部の磁場強度は小さくなる。図10の変形例の特徴は、図4で説明した真空チャンバ1内部のマルチポール磁場強度の制御の他に、上側と下側の磁場形成部の間隔を変えることによっても真空チャンバ1内部のマルチポール磁場強度を制御できるという点である。従って、例えば、内側及び外側の磁場形成手段22と23の周方向の基準位置からの“ずらし”を小さくしても(磁石ピッチτまでずらさなくとも)チャンバ内の磁場強度を実質的に略ゼロにすることも可能である。
【0063】
図3で説明した実施の形態1では、外側の磁場形成手段23の磁石セグメント33は磁性体リング34の内壁に設けられている。しかし、この磁性体リング34は必ずしも必須のものでなく省略は可能である。更に、図3では、内側の磁場形成手段22の磁石セグメント31の間に磁性体片32が設けられているが、この磁性体片32は省略可能である。
【0064】
更に、図11(a)に示すように、図3で説明した実施の形態1において、内側の磁場形成手段22の磁石セグメント31の間に設けた磁性体片32の代わりに、磁場形成機構21の中心に対して径方向に磁化されたセグメント磁石50を設けてもよい。また、図11(b)に示すように、リング状に配置した磁石セグメント31,50の外側に磁性体リング52を設けるようにすることもできる。更にまた、図11には図示していないが、図3の外側磁場形成手段23についても同様に変更・変形が可能である。
【0065】
図9では、図4で説明した内側及び外側の磁場形成手段22及び23の夫々の上面及び下面に、磁性体リング45a,46a,45b,46bを設けているが、これに限らず、内側及び外側の磁場形成手段22及び23のいずれか一方の上面及び下面に図9で示したような磁性体リングを設けるようにしてもよい。
【0066】
上述の説明では、磁場形成機構21を構成する磁石セグメントの支持部材は公知のものを使用すればよいので、支持部材の図示及び説明を省略した。
【0067】
なお、上述の実施の形態においては、本発明を半導体ウエハのエッチングを行うエッチング装置に適用した場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されるものではない。例えば、本発明は、半導体ウエハ以外の基板を処理する装置に応用可能であり、更に、エッチング以外のプラズマ処理、例えばCVD等の成膜処理装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態の一つを適用したプラズマ処理装置の一例の概略を示す図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明に係る実施の形態1を説明するための図。
【図4】本発明に係る実施の形態2を説明するための図。
【図5】図1に示す装置を構成する真空チャンバ内の磁場強度の状態を示す図。
【図6】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図7】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図8】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図9】図4に示した実施の形態2の変形例を説明するための図。
【図10】図4に示した実施の形態2の他の変形例を説明するための図。
【図11】図3に示した実施の形態1の変形例を説明するための図。
【符号の説明】
【0069】
1:真空チャンバ、2:支持テーブル、3:絶縁板、4:支持台、5:フォーカスリング、6:静電チャック、7:ボールねじ、8:ベローズ、9:ベローズカバー、10:高周波電源、11:マッチングボックス、12:給電線、13:直流電源、14:バッフル板、15:処理ガス供給系、16:シャワーヘッド、17:ガス拡散用空隙、18:ガス吐出孔、19:排気ポート、20:排気系、21:磁場形成機構、22:内側の磁場形成手段、23:外側の磁場形成手段、31,33:磁石セグメント、34:磁性体リング、41,42:磁石セグメント、45,46:磁性体リング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構は内側と外側のリング状磁場形成手段で構成され、夫々のリング状磁場形成手段は互いに独立して回転可能であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記内側の磁場形成手段は前記処理室の中心に対し周方向の磁化をもつ磁石セグメントを有し、前記外側の磁場形成手段は前記処理室の中心に対し径方向の磁化をもつ磁石セグメントを有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記磁場形成機構が、上下に分離して設けられた上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有していることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記内側と外側のリング状磁場形成手段の夫々は上下に分離している上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有し、該上側及び下側磁場形成部の夫々は磁場形成機構の中心軸に平行する方向に磁化をもつ磁石セグメントを有し、該上側及び下側磁場形成部夫々の上下方向で対向する磁石セグメントの対向面の磁極は同極であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記内側及び外側の磁場形成手段の周方向の相対位置を変えることにより、前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する状態と、前記処理室内の前記被処理基板の周囲にマルチポール磁場を形成しない状態とに設定可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理基板にプラズマを作用させてエッチング処理を施すことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項1】
被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構は内側と外側のリング状磁場形成手段で構成され、夫々のリング状磁場形成手段は互いに独立して回転可能であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記内側の磁場形成手段は前記処理室の中心に対し周方向の磁化をもつ磁石セグメントを有し、前記外側の磁場形成手段は前記処理室の中心に対し径方向の磁化をもつ磁石セグメントを有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記磁場形成機構が、上下に分離して設けられた上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有していることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記内側と外側のリング状磁場形成手段の夫々は上下に分離している上側磁場形成部と下側磁場形成部とを有し、該上側及び下側磁場形成部の夫々は磁場形成機構の中心軸に平行する方向に磁化をもつ磁石セグメントを有し、該上側及び下側磁場形成部夫々の上下方向で対向する磁石セグメントの対向面の磁極は同極であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記内側及び外側の磁場形成手段の周方向の相対位置を変えることにより、前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する状態と、前記処理室内の前記被処理基板の周囲にマルチポール磁場を形成しない状態とに設定可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理基板にプラズマを作用させてエッチング処理を施すことを特徴とするプラズマ処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−114767(P2006−114767A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301781(P2004−301781)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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