説明

プラズマ処理装置

【課題】電極を処理対象物の上方に位置させてプラズマ処理を施す構成をとりつつメンテナンス性の向上を図ることができるようにしたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】ベース部4の上面に処理対象物Bを保持する保持部14を備え、ベース部4の上方には、ベース部4の上面に上方から当接してベース部4の上面との間に保持部14を覆う密閉空間SPを形成する蓋部材5を移動自在に設ける。電極31は、蓋部材5のベース部4と対向する面に電気絶縁部材30を介して取り付けられ、密閉空間SP内で保持部14の上方に位置する。ベース部4には、蓋部材5がベース部4の上面に当接したときに密閉空間SP内に露出した上端が電極31と接触する導電部40を設け、高周波電源部52からベース部4の下方に設けた整合器51及び導電部40を通じて電極31に高周波電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉空間内に保持した処理対象物にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
密閉空間内に保持した処理対象物にプラズマクリーニングやスパッタリング或いはプラズマエッチング等のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置として、一般にPE(Plasma Etching)タイプと称されるプラズマ処理装置が知られている。このPEタイプのプラズマ処理装置は、処理対象物を覆う密閉空間を形成するチャンバと、チャンバ内において処理対象物の上方に位置する電極と、電極に高周波電圧を印加する高周波電源部及び高周波電源部のインピーダンス整合を行う整合器とを備えており、チャンバ内(密閉空間内)に酸素ガス等のプラズマ発生用のガスを供給するとともに高周波電源部より電極に高周波電圧を与えて密閉空間内にプラズマを発生させることにより、プラズマ中の活性種(ラジカル)を処理対象物の表面に作用させ、処理対象物の表面をプラズマ処理するようになっている。
【0003】
一般的に、プラズマ処理装置では整合器をできるだけ電極に近い位置に配置することが望ましいとされており、特許文献1に示すようなPEタイプのプラズマ処理装置の場合でも整合器(マッチングボックス)は電極に近いチャンバの上部に配置される。
【特許文献1】特開平7−335627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように重量物である整合器がチャンバの上部に設けられていると、チャンバは上下開閉式の構成をとることが困難になるため、メンテナンス性がよくないという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、電極を処理対象物の上方に位置させてプラズマ処理を施す構成をとりつつメンテナンス性の向上を図ることができるようにしたプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のプラズマ処理装置は、上面に処理対象物を保持する保持部を備えたベース部と、ベース部の上方を移動自在に設けられ、ベース部の上面に上方から当接してベース部の上面との間に保持部を覆う密閉空間を形成する蓋部材と、蓋部材のベース部と対向する面に電気絶縁部材を介して取り付けられ、密閉空間内で保持部の上方に位置する電極と、ベース部に設けられ、密閉空間内で上端が電極と接触する導電部と、ベース部の下方に設けられ、導電部に接続された整合器と、整合器及び導電部を通じて電極に高周波電圧を印加する高周波電源部とを備えた。
【0007】
請求項2に記載のプラズマ処理装置は、請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、電極と蓋部材の間に空間が形成されており、電極は導電部と接触したときに導電部によって相対的に押し上げられ、電気絶縁部材を支点として上方に撓むようになっている。
【0008】
請求項3に記載のプラズマ処理装置は、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置であって、電極は、下面から下方に突出して延び、密閉空間内で下端が導電部と接触する接点部を備えた。
【0009】
請求項4に記載のプラズマ処理装置は、請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、導電部はベース部を上下方向に貫通してベース部の上面から突出しており、この導電部の突出する部分のうち、保持部に最も近接する部分を含む一定領域の側面が誘電体から成るカバー部材によって覆われている。
【0010】
請求項5に記載のプラズマ処理装置は、請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、前記保持部が複数設けられており、導電部はこれら複数の保持部のうちの2つの間に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、上面に処理対象物を保持する保持部を備えたベース部と、ベース部の上面に上方から当接してベース部の上面との間に保持部を覆う密閉空間を形成する蓋部材からチャンバが形成され、蓋部材のベース部と対向する面に電気絶縁部材を介して取り付けた電極が密閉空間内で保持部の上方に位置するようになっている。そして、ベース部には、密閉空間内で上端が電極と接触する導電部を設け、高周波電源部からベース部の下方に設けた整合器及び導電部を通じて電極に高周波電圧を印加するようにしている。すなわち、整合器はベース部の下方に取り付けられており、チャンバの上部(蓋部材の上部)には重量物は配置されていないので、電極を処理対象物の上方に位置させてプラズマ処理を行うPEタイプの構成でありながら、チャンバを(蓋部材を)上下開閉式にすることができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。また、導電部は真空状態にされた密閉空間内で電極と接触するため、プラズマ処理を高効率で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
図1及び図2は本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の斜視図、図3は本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の要部断面図、図4は本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置が備えるベース部の斜視図、図5は本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置が備えるベース部の平面図、図6は本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置が備える蓋部材を下方から見た斜視図、図7(a),(b)は本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の要部断面図、図8は本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の斜視図である。
【0013】
図1及び図2において、実施の形態1におけるプラズマ処理装置1は、基台2と、基台2の上部に設けられたチャンバ3とを有する。チャンバ3は基台2の上部に設けられたベース部4と、ベース部4に対して開閉される蓋部材5から成っている。
【0014】
図2及び図3において、ベース部4はベース部基部部材10とベース部基部部材10に上方から嵌合取り付けされた保持部取り付け部材11から成っている。図3、図4及び図5において、保持部取り付け部材11はベース部基部部材10の上面に設けられたシール部材12によって囲まれた領域(区画領域13)内に設けられており、保持部取り付け部材11の上面には2つの保持部14が備えらえている。
【0015】
蓋部材5は基台2上に設けられた蓋部材開閉機構20によってベース部4の上方を昇降自在に設けられており、ベース部4の上面に上方から当接してベース部4の上面(区画領域13)との間(チャンバ3の内部)に2つの保持部14を覆う密閉空間SPを形成する(図3)。
【0016】
図1及び図2において、蓋部材開閉機構20は基台2の上面から上方に垂直に延びて設けられた一対の支柱部材21と、一対の支柱部材21に両端が支持されて水平方向に延び
て設けられた水平部材22と、水平部材22の両端から水平部材22と直交する水平方向に延びて設けられた一対のアーム部材23を有して成り、蓋部材5はこれら一対のアーム部材23の先端部にヒンジ24を介して枢支されている。水平部材22の両端部は両支柱部材21に設けられたガイド部21aによって上下移動自在にガイドされており、基台2の上面に設けられた昇降シリンダ25の上下方向への突没動作に応じて上下方向に移動され、これによって蓋部材5がベース部4の上方で昇降してベース部4に対して開閉するようになっている。
【0017】
ベース部4を構成するベース部基部部材10は例えばアルミニウム等の金属材料から成り、保持部取り付け部材11はセラミック等の誘電体材料から成る。蓋部材5は例えばアルミニウム等の金属材料から成り、図6に示すように、上底部5a及び上底部5aの縁部から下方に延びて設けられた側面部5bを備えて下方に開口した形状を有している。図3において、ベース部基部部材10は接地線ER1によって接地されており、蓋部材5は接地線ER2によって接地されている。
【0018】
図3及び図6において、蓋部材5の上底部5aの下面(すなわちベース部4の上面と上下方向に対向する面)には電気絶縁性材料から成る電気絶縁部材30を介して平板状の電極31が水平面内方向に延びて取り付けられており、電極31の下面中央部には下方に突出した、電極31の一部としての突起状の接点部32が設けられている。電気絶縁部材30は電極31の上面側の全域を覆うように蓋部材5の上底部5aの下面に設けられているのではなく、電極31の周辺部にのみ設けられている。このため電極31の上面の中央部と蓋部材5の上底部5aの下面との間には所定間隔の空間Gが形成されている。
【0019】
各保持部14は図4及び図5に示すように保持部取り付け部材11の上面を平行に延びて設けられた2つの保持ガイド14aを有して成り、処理対象物(例えば基板B)は、これら2つの保持ガイド14aの間に水平方向に挿入されて、保持部14に取り付けられる。
【0020】
ベース部4の上面の区画領域13内には、ベース部基部部材10を上下方向に貫通して延びた通気孔10aが開口している。この通気孔10aは、蓋部材5の側面部5bの下縁がシール部材12に上方から当接してベース部4の上面と蓋部材5との間(チャンバ3の内部)に密閉空間SPが形成されたとき、密閉空間SP内に開口した状態となる(図3)。
【0021】
図3において、ベース部4には導体材料から成る導電部40が設けられている。導電部40はベース部4の上面(保持部取り付け部材11の上面)に設けられた2つの保持部14の間を通るようにベース部4(保持部取り付け部材11)を上下方向に貫通して延びて設けられた導電棒41と、ベース部4の下面側において導電棒41の下端部が結合された導電板42から成っている。導電板42はベース部4(ベース部基部部材10及び保持部取り付け部材11)の下面に電気絶縁性材料から成る電気絶縁部材43を介して取り付けられている。導電棒41は、蓋部材5がベース部4の上面(シール部材12)に上方から当接した状態で、上端が電極31の一部としての接点部32と上下方向に接触するようにその上下方向長さが調整されている。
【0022】
ベース部4の下面には導電部40の導電板42を下方から覆うように整合器収容筐体50が取り付けられている。この整合器収容筐体50内にはコンデンサやコイル等で構成された整合器51が収容されている。整合器51は整合器収容筐体50の外部に設けられた高周波電源部52と繋がっている。
【0023】
高周波電源部52は基台2の内部に設けられた制御装置60(図1、図2及び図3)か
ら制御されて作動し、蓋部材5がベース部4の上面に上方から当接し、導電棒41が蓋部材5に取り付けられた電極31に接触した状態で、整合器51及び導電部40(導電板42及び導電棒41)を介して電極31に高周波電圧を印加する。整合器51は、この高周波電源部52から電極31に印加される高周波電圧のインピーダンス整合を行う。
【0024】
基台2の内部には上記制御装置60のほか、真空排気部61、ガス供給部62及び大気開放部63の各機構が備えられている(図3)。これら真空排気部61、ガス供給部62及び大気開放部63は基台2の内部を通ってベース部基部部材10に設けられた通気孔10aに繋がる集合配管65を介してチャンバ3の内部(密閉空間SP内)に繋がっている。
【0025】
制御装置60は基台2上に設けられた操作入力部64(図3)からの操作入力を受けて、蓋部材開閉機構20を構成する昇降シリンダ25の作動制御のほか、真空排気部61、ガス供給部62、大気開放部63及び高周波電源部52の作動制御を行う。真空排気部61は制御装置60に制御されて作動し、集合配管65を介してチャンバ3内(密閉空間SP内)の空気を吸引(真空排気)する。ガス供給部62は制御装置60に制御されて作動し、集合配管65を介してチャンバ3内(真空状態にされた密閉空間SP内)に酸素ガス等のプラズマ発生用のガスを供給する。大気開放部63は制御装置60に制御されて作動し、集合配管65を介してプラズマ処理が終了した後のチャンバ3の内部を大気に開放する。
【0026】
このような構成のプラズマ処理装置1において、処理対象物Bに対してプラズマ処理の一形態としてのプラズマクリーニングを実行するには、オペレータは先ず、蓋部材5をベース部4に対して上昇させた蓋部材5の開放状態で(図2及び図7(a))、保持部14に処理対象物Bを取り付ける。そして、操作入力部64の操作を行い、プラズマクリーニングをスタートさせる。先ず制御装置60は昇降シリンダ25を作動させて、蓋部材5をベース部4に対して下降させ、蓋部材5の側面部5bの下端がベース部4の上面に設けられたシール部材12に上方から接触するようにして蓋部材5をベース部4の上面に当接させる。これによりベース部4の上面と蓋部材5との間に保持部14を(すなわち保持部14に保持された処理対象物Bを)覆う密閉空間SPが形成されるとともに、蓋部材5に取り付けられた電極31が保持部14の(すなわち処理対象物Bの)上方に位置し、導電棒41の上端と電極31の接点部32の下端が接触する(図1及び図7(b))。
【0027】
ここで、電極31の接点部32と導電棒41が接触したときに、導電棒41によって電極31が相対的に押し上げられるようにしてもよい(図7(b)参照)。このとき電極31は、その上面と蓋部材5の上底部5aの下面との間に空間Gがあることから、電気絶縁部材30を支点にして上方に凸となるように弾性変形する(撓む)ことになるが、この電極31の復元力によって電極31と導電棒41は互いに上下方向に押し合うので、電極31と導電棒41との間の良好な接触状態が保持される。また、このような構成により、蓋部材5に対する電極31の取り付け或いは導電部40のベース部4に対する取り付けにおける組み立て誤差を吸収することができる。
【0028】
ベース部4の上面と蓋部材5の間に処理対象物Bを覆う密閉空間SPが形成され、導電棒41の上端と電極31の接点部32の下端が接触したら、制御装置60は真空排気部61を作動させて、チャンバ3内(密閉空間SP内)の空気を真空排気する。制御装置60は、チャンバ3内の空気が所定の真空度に達したことを確認したら、ガス供給部62を作動させて、チャンバ3内(密閉空間SP内)にプラズマ発生用のガスの供給を開始する。
【0029】
制御装置60は、チャンバ3内の圧力が安定するタイミングで高周波電源部52を作動させて、整合器51及び導電部40(導電板42及び導電棒41)を介して電極31に高
周波電圧を印加する。これによりチャンバ3内にプラズマが発生し、プラズマ中の活性種(ラジカル)が処理対象物Bの表面(上面)に作用する。このプラズマ中の活性種の処理対象物Bの表面に対する作用(エッチング作用)により、処理対象物Bの表面の異物が除去され、プラズマクリーニングが行われる。
【0030】
制御装置60は、高周波電源部52を作動させてから所定時間が経過し、プラズマクリーニングが終了したら、高周波電源部52、ガス供給部62、真空排気部61を順次停止させる。その後、制御装置60は大気開放部63を作動させて、チャンバ3内を大気に開放する。チャンバ3内が大気に開放されて密閉空間SP内の圧力が大気圧レベルになったら、制御装置60は昇降シリンダ25を作動させて、蓋部材5をベース部4に対して上昇させる。これにより蓋部材5はベース部4の上面から離間し、蓋部材5は開放状態となる(図2及び図7(a))。また、蓋部材5の上昇によって電極31の接点部32と導電棒41は離間する。これにより処理対象物Bに対するプラズマクリーニングは終了する。
【0031】
このように実施の形態1におけるプラズマ処理装置1は、処理対象物Bの上方に電極31を配置してプラズマ処理を行う、いわゆるPE(Plasma Etching)タイプのプラズマ処理装置であるが、重量物である高周波電源部52及び整合器51がベース部4の下方に設けられているので、蓋部材5及びこの蓋部材5を支持する蓋部材開閉機構20が従来のように高周波電源部52及び整合器51を固定支持できるだけの強度及び剛性を有する必要はなく、蓋部材5を軽量なものとして製造コストを安価にすることができる。
【0032】
また、蓋部材5を軽量なものとすることができるので、図8に示すように、蓋部材5をヒンジ24回り(水平軸回り)に揺動させることができ、蓋部材5及び電極31のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、この蓋部材5のヒンジ24回りの揺動は、図示しないアクチュエータによって行う構成にしてもよいし、オペレータが手動で行う構成にしてもよい。
【0033】
なお、高周波電源部52から電極31に高周波電圧を印加したとき、図5及び図7(b)に示す導電棒41のベース部4の上方領域を延びる部分と各保持部14の間の距離Rが小さすぎると、導電棒41と処理対象物Bの間にアーク放電が発生して処理対象物Bにダメージを与えるおそれがあるため、上記距離Rがこのようなアーク放電が発生することのない値(例えば10mm程度)となるように、導電棒41と保持部14の間の距離を設定するようにする。
【0034】
(実施の形態2)
図9は本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置が備えるベース部の平面図、図10(a),(b)は本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の要部断面図、図11(a),(b),(c),(d)は本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置が備える導電棒と電極の部分拡大図である。
【0035】
実施の形態2におけるプラズマ処理装置1は、図9及び図10(a),(b)に示すように、前述の実施の形態1におけるプラズマ処理装置1の導電棒41のベース部4から突出する部分のうち、保持部14に最も近接する部分を含む一定領域(ここでは導電棒41のベース部4から突出する部分の全域)の側面が誘電体から成る筒状のカバー部材71によって覆われるとともに、電極31の接点部32の一定領域(ここでは接点部32の全域)の側面が同じく誘電体から成る筒状のカバー部材72によって覆われている。蓋部材5が開いた状態(図10(a))から下降してベース部4の上面に当接すると、導電棒41の上端と電極31の下端が接触するとともに、導電棒41の側面を覆って設けられたカバー部材71の上端と電極31の接点部32の側面を覆って設けられたカバー部材72の下
端が接触する(図10(b))。
【0036】
このように、導電棒41のベース部4の上方領域を延びる部分のうち、保持部14に最も近接する部分を含む一定領域の側面が誘電体から成るカバー部材71によって覆われていると、高周波電源部52から電極31に高周波電圧を印加したとき、導電棒41と処理対象物Bの間にアーク放電が発生しにくくなる。これにより、導電棒41と各処理対象物Bの間の距離Rを小さくすることができ、処理対象物Bのサイズアップ若しくはチャンバ3の(ひいてはプラズマ処理装置1全体の)小型化を図ることができる。
【0037】
ここで、導電棒41は図11(a)に示すように、ベース部4の上面から突出する部分のうち、保持部14に最も近接する部分を含む一定領域の側面を覆うように設けられていればよいが、図10(a),(b)に示したように、接点部32の側面も誘電体から成るカバー部材72によって覆われており、導電棒41と接点部32が接触した状態で両カバー部材71,72同士も接触し、導電棒41及び接点部32の密閉空間SP内に位置する部分の大部分がカバー部材71,72によって覆われるようになっていることがアーク放電の発生を確実に防止する点では好ましい。これには例えば、図11(b),(c)に示すようなカバー部材71,72の設け方が可能である。
【0038】
図11(b)は、導電棒41の側面を覆うカバー部材71の上端の位置が導電棒41の上端の位置よりも相対的に低くなるように設けられるとともに、接点部32の側面を覆うカバー部材72の下端の位置が接点部32の下端の位置よりも相対に低くなるように設けられた場合の例である。この例では、導電棒41の上端と接点部32の下端が接触した状態では、導電棒41の上端が接点部32の側面を覆うカバー部材72の内部に入り込むことによって、導電棒41の側面と接点部32の側面が完全に両カバー部材71,72によって覆われるようになるものである。また、これとは逆に、導電棒41の側面に設けられるカバー部材71の上端の位置が導電棒41の上端の位置よりも相対的に高くなるように設けられるとともに、接点部32の側面に設けられるカバー部材72の下端の位置が接点部32の下端の位置よりも相対に高くなるように設けられた場合であっても、接点部32の下端が導電棒41の側面を覆うカバー部材71の内部に入り込むことによって、同様の効果が得られる。
【0039】
図11(c)は、導電棒41がベース部4を上下方向に貫通しておらず、導電棒41の上端が保持部取り付け部材11の導電棒取り付け孔11aの内部に位置している場合の例である。この場合には、導電棒41の上端が導電棒取り付け孔11aからベース部4の上面側に露出した状態となっているので、蓋部材5が下降してベース部4の上面に当接するとき、接点部32の下端部が保持部取り付け部材11の導電棒取り付け孔11a内に上方から嵌入することによって、導電棒41の上端と接点部32の下端とが接触する。この図11(c)では、接点部32がカバー部材72によって覆われており、導電棒41の上端と接点部32の下端とが接触した状態で、カバー部材72の下端が保持部取り付け部材11の上面に上方から接触するので、アーク放電が発生しにくくなるという効果が得られる。
【0040】
図11(d)は、電極31が密閉空間SP内で導電部40(導電棒41)と接触する接点部32を備えていない場合の例である。実施の形態1及び上述の例(図11(a),(b),(c))では、電極31が接点部32を備えたものとなっていたが、これは、導電部40(導電棒41)の長さを短縮して導電部40の取り扱いを容易にすることができ、また図11(c)に示したように導電棒41がベース部4から上方に突出しないようにする構成をとることができるからである。
【0041】
しかし、電極31の接点部32は必ずしも備えられていなくてもよく、電極31に接点
部32が備えられていない場合であっても、図11(d)に示すように、導電部40(導電棒41)の上端が電極31の下面に接触するようにすることができ、また、導電棒41がカバー部材71によって覆われるようにすれば、アーク放電の発生が起きにくくすることもできる。
【0042】
(実施の形態3)
図12は本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置が備えるベース部の平面図、図13(a),(b)は本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の要部断面図である。
【0043】
実施の形態3におけるプラズマ処理装置1は、図12及び図13(a),(b)に示すように、前述の実施の形態1におけるプラズマ処理装置1が備える保持部14が1つである場合の例である。このように保持部14が1つであるときは、保持部14を区画領域13の中央に配置し、導電部40を区画領域13の端部に配置するようにすることができる。なお、保持部14が複数設けられている場合には、これら複数の保持部14を区画領域13の中央に配置するとともに、導電部40を複数の保持部14のうちの2つの間に設ける構成(実施の形態1において示した構成)をとることができるが、このような構成をとらずに、複数の保持部14を区画領域13の中央に配置しつつ、導電部40を区画領域13の端部に配置する(複数の保持部14のうちの2つの間を通らないように配置する)構成をとることも勿論可能である。
【0044】
以上説明したように、実施の形態1〜3におけるプラズマ処理装置1は、上面に処理対象物Bを保持する保持部14を備えたベース部4と、ベース部4の上方を移動自在に設けられ、ベース部4の上面に上方から当接してベース部4の上面との間に保持部14を覆う密閉空間SPを形成する蓋部材5と、蓋部材5のベース部4と対向する面(蓋部材5の上底部5aの下面)に電気絶縁部材30を介して取り付けられ、密閉空間SP内で保持部14の上方に位置する電極31と、ベース部4に設けられ、密閉空間SP内で上端が電極31(或いは電極31の一部としての接点部32)と接触する導電部40と、ベース部4の下方に設けられ、導電部40に接続された整合器51と、整合器51及び導電部40を通じて電極31に高周波電圧を印加する高周波電源部52を備えたものとなっている。
【0045】
実施の形態1〜3におけるプラズマ処理装置1では、上面に所定対象物Bを保持する保持部14を備えたベース部4と、ベース部4の上面に上方から当接してベース部4の上面との間に保持部14を覆う密閉空間SPを形成する蓋部材5からチャンバ3が形成され、蓋部材5のベース部4と対向する面に電気絶縁部材30を介して取り付けた電極31が密閉空間SP内で保持部14の上方に位置するようになっている。そして、ベース部4には、密閉空間SP内で上端が電極31と接触する導電部40を設けるとともに、ベース部4の下方に整合器51を設けた。高周波電源部52は整合器51及び導電部40を通じて電極31に高周波電圧を印加する。
【0046】
すなわち、実施の形態1〜3におけるプラズマ処理装置1では、整合器51はベース部4の下方に取り付けられており、チャンバ3の上部(蓋部材5の上部)には重量物は配置されていないので、電極31を処理対象物の上方に位置させてプラズマ処理を行うPEタイプの構成でありながら、チャンバ3を(蓋部材5を)上下開閉式にすることができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。また、導電部40は真空状態にされた密閉空間SP内で電極31と接触するため真空スイッチと同等な効果、すなわち接触部分でのアーク放電を防止するという効果を有する。アーク放電が発生するとプラズマ放電が不安定になってプラズマ処理を高効率で行うことが困難になるが、真空状態にされた密閉空間SP内で導電部40と電極31を接触させるのでそのような心配はない。
【0047】
また、実施の形態1〜3におけるプラズマ処理装置1では、電極31と蓋部材5の間に空間Gが形成されており、電極31は導電部40と接触したときに導電部40によって相対的に押し上げられ、電気絶縁部材30を支点として上方に撓むようになっているので、電極31と導電棒41は互いに上下方向に押し合い、電極31と導電棒41との間の良好な接触状態が保持される。
【0048】
また、実施の形態2におけるプラズマ処理装置1では、導電部40(導電棒41)はベース部4を上下方向に貫通してベース部4の上方領域を延びており、この導電部40(導電棒41)のベース部4の上面から突出する部分のうち、保持部14に最も近接する部分を含む一定領域の側面が誘電体から成るカバー部材71によって覆われているので、導電棒41と処理対象物Bの間にアーク放電が発生しにくく、処理対象物Bがダメージを受けることを防止することができる。
【0049】
また、実施の形態1のプラズマ処理装置のように、保持部14が複数設けられている場合には、導電部40はこれら複数の保持部14のうちの2つの間に設けるようにすればよく、導電部40の配置の自由度は比較的高いものとなっている。
【0050】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態におけるチャンバの形状等は特に限定されず、上面に処理対象物を保持する保持部を備えたベース部と、ベース部の上方を移動自在に設けられ、ベース部の上面に上方から当接してベース部の上面との間に保持部を覆う密閉空間を形成する蓋部材とから成るものであればよい。また、電極の形状等も限定されず、蓋部材のベース部と対向する面に電気絶縁部材を介して取り付けられ、密閉空間内で保持部の上方に位置するようになっていればよい。また、導電部の形状等も特に限定されず、ベース部に設けられ、密閉空間内で上端が電極と接触するようになっていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
電極を処理対象物の上方に位置させてプラズマ処理を施す構成をとりつつメンテナンス性の向上を図ることができるようにしたプラズマ処理装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の要部断面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置が備えるベース部の斜視図
【図5】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置が備えるベース部の平面図
【図6】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置が備える蓋部材を下方から見た斜視図
【図7】(a)(b)本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の要部断面図
【図8】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の斜視図
【図9】本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置が備えるベース部の平面図
【図10】(a)(b)本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の要部断面図
【図11】(a)(b)(c)(d)本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置が備える導電棒と電極の部分拡大図
【図12】本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置が備えるベース部の平面図
【図13】(a)(b)本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の要部断面図
【符号の説明】
【0053】
1 プラズマ処理装置
4 ベース部
5 蓋部材
14 保持部
30 電気絶縁部材
31 電極
32 接点部
40 導電部
51 整合器
52 高周波電源部
71 カバー部材
SP 密閉空間
G 空間
B 処理対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に処理対象物を保持する保持部を備えたベース部と、
ベース部の上方を移動自在に設けられ、ベース部の上面に上方から当接してベース部の上面との間に保持部を覆う密閉空間を形成する蓋部材と、
蓋部材のベース部と対向する面に電気絶縁部材を介して取り付けられ、密閉空間内で保持部の上方に位置する電極と、
ベース部に設けられ、密閉空間内で上端が電極と接触する導電部と、
ベース部の下方に設けられ、前記導電部に接続された整合器と、
前記整合器及び前記導電部を通じて前記電極に高周波電圧を印加する高周波電源部とを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
電極と蓋部材の間に空間が形成されており、電極は導電部と接触したときに導電部によって相対的に押し上げられ、電気絶縁部材を支点として上方に撓むようになっていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
電極は、下面から下方に突出して延び、密閉空間内で下端が導電部と接触する接点部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
導電部はベース部を上下方向に貫通してベース部の上面から突出しており、この導電部の突出する部分のうち、保持部に最も近接する部分を含む一定領域の側面が誘電体から成るカバー部材によって覆われていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記保持部が複数設けられており、導電部はこれら複数の保持部のうちの2つの間に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−244706(P2010−244706A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88917(P2009−88917)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】