説明

プラズマ処理装置

【課題】処理室の内側壁の温度を調節してスループットを向上させたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】真空容器内のプラズマが形成される処理室と、この処理室の下部に配置され試料が配置される試料台と、前記真空容器の上部に配置され前記処理室の上方を覆って内部を気密に区画する誘電体製の円板部材と、この円板部材の上方に配置されこの円板部材を透過して前記処理室内に供給される電界が導入される円筒形の空洞と、この空洞の中央部に連結された導波管であって内部を前記電界が伝播する導波管と前記空洞と、前記導波管との連結部の外周側に配置され前記空洞内部の外周から中央に向けて所定の高温のガスを供給する第一の供給口と、前記導波管に配置され低温のガスが供給される第二の供給口と、前記導波管に配置され前記第一及び第二の供給口から供給され内部を流れる前記ガスが排出される排出口とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を用いて処理室内に形成したプラズマを用いて処理室内に配置した半導体ウエハ等の試料を処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の真空近くに減圧した容器内に導入した反応ガスとマイクロ波等により、ガス放電を起こさせてプラズマを生成させ、このプラズマを基板表面に照射してエッチングや薄膜形成等の処理を行わせるプラズマ処理装置において、処理ガスの分子やプラズマにより発生した化学的な活性種,イオン、さらに、処理室内壁や被処理基板との反応で生じた反応生成物等は処理室内壁の温度変動により、処理室内壁への吸着量やプラズマ中の含有量が変化し、処理室内の状態が変化することでエッチング特性に影響を及ぼすことが判っている。
【0003】
また、従来から耐プラズマ壁の温度制御は、プラズマによる昇温で安定させている。しかし、量産時、ロットの到達タイミングは不定期で、ウエハ処理開始前の耐プラズマ壁面温度が毎回異なるのに対して、最適なプラズマ昇温時間を判断する指標は無く、毎回ある一定時間の放電により昇温させていた。結果、1枚目のウエハ処理温度とn枚目のウエハ処理温度が異なり、処理特性が変化することによる歩留まりの低下やプラズマ昇温に長時間の放電を要することからスループットの低下が問題となっていた。
【0004】
この課題に対し、耐プラズマ壁の温度制御を行うために、処理容器の外部に配置されたチラー等の温度調節器で温度が調節された流体の媒体を容器内部の処理室を囲む壁面を構成する部材内に導入し温度制御する方法や、当該壁部材の外周や内部にヒータを配置し温度を調節する方法により、処理室内の側壁面の温度を調節する技術が知られていた。このような従来の技術としては、特開2002−319577号公報(特許文献1),特開2008−034885号公報(特許文献2)に開示のものが知られている。
【0005】
特許文献1では、処理室のプラズマが形成される空間の周囲を囲んでプラズマに面する側壁を構成する部材の内部に温度が調節されたガス或いは液体等流体(熱媒体)が通流する通路を有して、半導体ウエハ等の試料を処理する最中に側壁の処理室内壁面の温度を調節する技術が開示されている。また、特許文献2では、外周にヒータが配置された真空容器の壁面と処理室のプラズマが形成される空間の外周を囲んでプラズマに面する側壁を構成する部材との間のすき間に熱伝達性のガスを供給してヒータと処理室側壁を構成する部材との間の熱伝達を向上させて当該処理室内壁の温度の調節の応答性や精度を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−319577号公報
【特許文献2】特開2008−034885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術では次の点についての考慮が十分なされておらず問題が生じていた。すなわち、上記の従来技術では、処理室の天上面を構成する部材、特に処理室内に試料台またはこの上に載せられた試料の上方から処理用のガスを導入するため孔が配置された板状の部材、所謂シャワープレートの温度を調節する点については十分に考慮されていなかった。
【0008】
特許文献1,2は、処理中において処理室の内側壁の温度を所定の範囲に調節することで、内側壁の表面と処理室内のプラズマとの相互作用を所望のものにして、処理室内に形成された生成物が当該内側壁へ付着する量や分布を調節することを目的としているものの、シャワープレートはバイアス電位を形成するための電力が供給されており、シャワープレートの表面の生成物はバイアス電位に起因したプラズマ中の荷電粒子がシャワープレートと衝突することによって取り除かれるものとしており、その温度を所期のものとすることは考慮されていなかった。このため、バイアス電位による生成物の付着の調節ができないか不十分となってしまうプラズマ処理装置において、処理室の内側壁とプラズマとの相互作用を調節するための構成について考慮されておらず、処理室の内側壁の温度が少なくとも一部分は不安定となってしまい試料の処理の歩留まりやスループットが損なわれてしまう虞が有る点について考慮が足りなかった。
【0009】
上記の従来技術では、処理室の内側壁を構成する部材の一つであるシャワープレートは試料の上方に配置されてこれを覆っており、その温度は試料のエッチングの速度や加工の精度等特性に大きく影響を及ぼすにもかかわらず積極的な温度制御は行われていなかった。特に、特許文献2に開示された、マイクロ波による電界と磁場との相互作用による、いわゆるECRによるプラズマを形成するプラズマ処理装置では、熱容量が大きい石英等の誘電体製の板部材が真空容器を構成して処理室の上方を覆い、その下面の下方でこれに近接してシャワープレートが配置される構成が一般的であり、石英製の板部材は直接プラズマに接しないことから、処理室の内側壁の温度を調節するその調節の対象であるシャワープレートの直上に熱容量が大きく大気側に接する部材が存在することになり、シャワープレートをプラズマにより加熱しようとしてもこれを所定の温度に安定させるために長時間の放電を要してしまい、結果としてスループットが低下してしまうという問題が生じていた。
【0010】
本発明の目的は、処理室の内側壁の温度を調節してスループットを向上させたプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される円筒形の処理室と、この処理室の下部に配置され試料がその上面に配置される試料台と、前記真空容器の上部に配置され前記処理室の上方を覆ってこの処理室内部を気密に区画する誘電体製の円板部材と、この円板部材の上方に配置されこの円板部材を透過して前記処理室内に供給される電界が導入される円筒形の空洞と、この空洞の中央部の上方に延在してこれに連結された導波管であって内部を前記電界が伝播する導波管と前記空洞と前記導波管との連結部の外周側に配置され前記空洞内部の外周から中央に向けて所定の温度に調節されたガスを供給する第一の供給口と、前記導波管に配置され前記所定の温度より低い温度のガスが供給される第二の供給口と、前記導波管に配置され前記第一及び第二の供給口から供給され内部を流れる前記ガスが排出される排出口とを備えたプラズマ処理装置により達成される。
【0012】
さらに、前記第二の供給口が前記導波管と前記空洞の中央部との連結部及び前記排出口の中間に配置され、前記排出されるガスの温度が前記空洞内部での温度より低くされることにより達成される。
【0013】
さらにまた、前記排出口が前記導波管と前記空洞の中央部との連結部及び前記第二の供給口との間に配置されたことにより達成される。
【0014】
さらにまた、前記導波管が、前記空洞の中央部の上方に延在する円筒形導波管とその一端部がこの円筒形導波管に連結されて水平方向に延在し他端部に前記電界を生成する手段が配置された矩形導波管とを備え、前記排出口が前記円形導波管と前記矩形導波管との連結部に配置されたことにより達成される。
【0015】
さらにまた、前記円板部材の温度を検出する検出器からの出力に基づいて前記第一の供給口から供給されるガスの温度または量或いは前記第二の供給口から供給される前記ガスの温度または量のいずれかを調節する制御器を備えたことにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係るがプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す実施例における上部の構成を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図2に示す実施例の変形例の構成の概略を拡大して示す縦断面図である。
【図4】図2に示す実施例の他の変形例の構成の概略を拡大して示す縦断面図である。
【図5】図2に示す実施例に係る導波管の排気口の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例について、以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
〔実施例〕
図1は、本発明の実施例に係るがプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。本実施例において、プラズマ処理装置は大きく3つの部位に分けられ、上方からプラズマ形成部,真空容器,排気部を含んで構成されている。
【0019】
本実施例では、プラズマ形成部はプラズマを処理室内に形成するための電界及び磁界の供給するための構成であり、電界を形成するためのマイクロ波源101と、マイクロ波源101がその一端部に配置され該マイクロ波源で形成されたマイクロ波帯の電界が内部を伝播する管路である導波管103と、この導波管103が他端側で管の軸が水平方向から垂直方向に曲げられたその他端部と接続されて円筒形上の内部の空間で電界が所定の周波数,モード,強度で共振する空洞共振部104と、導波管103,空洞共振部104の外周に配置されてこれを覆って配置され、プラズマを形成するための磁界を形成するソレノイドコイル105を備えている。
【0020】
本実施例のマイクロ波源101は、マイクロ波帯の電力を形成する電源を介して接地されている。さらに、これに隣接して自動整合機102が備えられ、負荷インピーダンスが調整されて反射波が自動的に抑制される。
【0021】
本実施例のマイクロ波源としては発振周波数2.45GHzのマグネトロンを用いている。導波管103はその管路の軸が水平方向の部分は断面が方形状を有し、空洞共振部104の上部と接続されたその上方の部分は断面が円形状を有している。その内部を伝播されたマイクロ波の電界は、所定のモードを有して上方から円筒状の空洞共振部104に伝播される。なお、本実施例では導波管103,空洞共振部104の内部はその周囲の雰囲気と同等の圧力,所謂鵜大気圧にされている。
【0022】
ソレノイドコイル105は、空洞共振部104の下方に配置された真空容器の外周に配置されて真空容器内部の処理室の上部に位置するプラズマが形成される空間(放電部)の外周を囲んで配置され、処理室の側方を囲む二段のリング状電磁石と空洞共振部104上方で導波管103を囲むリング状の電磁石1つが用いられており、この電磁石に通電する電流を変えることで、処理室内の静磁界の分布を制御することができる。
【0023】
真空容器内には空洞共振部104の下方には、真空容器上部を構成してその内外を気密に封止する部材であって上記電界がプラズマ処理室110に向けて透過する誘電体窓111が空洞共振部104の内部の空間の底面を構成して配置されている。その下方には、これとすき間を介してシャワープレート112が配置され、シャワープレート112の下面がプラズマ処理室110の上面を構成して、内部に形成されたプラズマPに面することになる。
【0024】
シャワープレート112と誘電体窓111との間のすき間は処理用ガスが導入される空間117となっており、この空間に拡散した処理用ガスがシャワープレート112の円筒形を有する試料台118の試料が載置される上面の上方でこれに対向する領域に均等な間隔で配置された複数の貫通孔を介してプラズマ処理室110内に試料台118に向けて導入される。プラズマ処理室110は試料台118上面を構成する載置面上に載置されプラズマ処理が施される大部分が円形を有するウエハ160上に均一なプラズマが形成されるよう円筒状に構成され、これと同様に誘電体窓111,シャワープレート112,円筒形を有する試料台118の断面及びその載置面も円形を有しており、これらの中心の軸は上下方向に合致するように配置されている。つまり、これらは上下方向に同軸となるように配置され組み立てられる。
【0025】
プラズマ処理室110のシャワープレート112の下方であってプラズマPが形成される空間の下方には、円筒状の試料台118がシャワープレート112とその上面の載置面を対向させて配置されている。その内部には導電体製の円板または円筒形状を有する下部電極120が配置され、高周波(Raidio Frequency)電力を発生するRF電源121と整合器122を介して電気的に連結されている。RF電源121から下部電極120に供給された高周波は、載置面上に載せられたウエハ160の上方でプラズマPとの間にバイアス電位を生起させ、プラズマPとの間の電位差によりプラズマP内部の荷電粒子をウエハ160表面に誘引して衝突させプラズマによる処理を促進させている。
【0026】
本実施例では、下記のように試料台118はプラズマ処理室110の内側でその上下に空間を介して保持されており、下方の空間を介した試料台118の直下方に配置された円形の排気口150の上方で、上記中心軸の周りに等角度で配置されて接続された梁によって中空に支持されている。上記梁同士の間の空間は試料台118の上方のプラズマPの形成される空間と下方の排気口150に面した空間とを接続して連通する空間であり、試料台118の上方に導入された処理用ガス,プラズマP,処理中に形成された生成物等の粒子がこの空間を通り下方の空間に流れて排気口150からプラズマ処理室110外に流出する。
【0027】
プラズマ処理室110内に導入される処理用ガスは、真空容器外に配置されてこれと管路で間を連結されたガス源130からのものが内部を通流して、誘電体窓111とシャワープレート112との間に配置され、その上面が誘電体窓111の外周縁の下面とシール部材を介して対向または接するガス導入リング113により外周を囲まれた空間117に導入される。このガスはシャワープレート112の貫通孔が配置された領域内全体にわたり空間117を拡散し貫通孔からプラズマ形成用の反応性ガスとして下方に流出する。処理用ガスはガス供給装置131によってその流量や速度が調節され、ガスバルブ132が管路を開放,遮断することでガスの供給を開始または終了する。
【0028】
上記のように真空容器は、その上部はマイクロ波の導入方向から円板形状の誘電体窓111,リング状のガス導入リング113を備えて構成され、ガス導入リング113の下方に金属製の放電ブロック壁114,電極外周リング115,下部チャンバ壁116を備えて構成されている。これらは円筒形状を有し、各部材の間はOリング等のシール部材により内外を気密に封止されており、内部の処理室内は外部に対して密封されている。
【0029】
真空容器下部に連結されて配置された排気部は、排気口150の下方で下部チャンバ壁の底部の下方に位置して試料台118の直下に位置している。上記試料台118下方の空間に流入した上方からの粒子は、排気口150を通りさらに下方に配置されたTMP(ターボ分子ポンプ)152等の排気ポンプの入口に流入して排気され、その流れ方向の下流側に配置された図示しない粗引きポンプを介してプラズマ処理装置100が設置される建屋外部に排出される(矢印)。上記プラズマ処理室110からの排気の流量,速度は、TMP152の入口と排気口150との間に配置された排気の流れの方向(本実施例では、円形の排気口150の中心を通る上下方向の軸の方向に沿っている)と交差する方向(本実施例では水平方向)の軸の周りに回転して排気の流れる通路の断面積を変動させる可動弁151によって調節される。この可動弁151の動作による排気の通路の断面積とガス供給装置131によって調節されシャワープレート112の貫通孔から導入される処理用ガスの流量または速度とのバランスによりプラズマ処理室110内部の圧力が調節される。なお、TMP152の内部で翼がその周りを回転する上下方向の軸は試料台118の上下方向の軸と合致するように配置されている。
【0030】
このようなプラズマ処理装置100において、ウエハ160にプラズマ処理を施す場合には、外部に配置されたカセット台上に載せられたカセットの内部から未処理のウエハ160が図示しない搬送装置によって取り出されてプラズマ処理室110内に搬送され、試料台118の上方において試料台118に受け渡される。搬送装置がプラズマ処理室110外に退出して図示しないバルブによって閉塞されると、ウエハ160は載置面上に載せられて載置面を構成する誘電体製の膜の内部に配置された静電吸着電極に供給された電力により生じる静電気によって載置面上に静電吸着されて保持される。
【0031】
ウエハ160と載置面との間に熱伝達用のガスが導入されるとともに、プラズマ処理室110内にシャワープレート112の貫通孔を通り処理用ガスが導入される。また、上記の動作の最中にも排気口150からプラズマ処理室110内のガス等の粒子は排出されており、この排出の流量,速度と供給される処理用ガスの流量,速度がバランスしてプラズマ処理室110内部が所定の圧力にされる。この状態で、排気口150,貫通孔等の一部を除きプラズマ処理室110内部は外部から遮断されており気密に封止されている。
【0032】
次に、マイクロ波源101から発振されたマイクロ波が導波管103を通り伝播して空洞共振部104に導入される。空洞共振部104において導入されたマイクロ波がその電界の分布をプラズマ処理に適した所定のモードに則した分布にされ、空洞共振部104内の円筒形の空間の底面を構成する石英等の誘電体製の誘電体窓111及び同様に石英等の誘電体製のシャワープレート112を透過してプラズマ処理室110内に導入される。また、ソレノイドコイル105により生起された磁界もプラズマ処理室110内に導入される。
【0033】
マイクロ波による電界とソレノイドコイル105による磁界との相互作用により生起されるECR(電子サイクロトロン共鳴)によって、反応性ガスが励起されてプラズマPが形成される。ECRとは、ソレノイドコイル105が生成する磁界の磁力線に沿って電子が回転しながら移動するところに、その回転の周期に対応した適切な周波数のマイクロ波をプラズマPに入射することで電子を選択的に加熱するものであり、プラズマPの効果的な加熱法である。また、静磁界を用いることで、静磁界の分布を変化させることでECRが発生する位置を制御することができ、プラズマ発生領域を制御することができる。さらにプラズマPは磁力線に対して垂直な方向に拡散が抑制されることが知られており、プラズマPの拡散を制御し、プラズマの損失を低減することができる等の利点が有る。
【0034】
さらに、下部電極120に接続されたRF電源121から周波数400kHzの高周波が整合器122を介して下部電極120に印加されることにより、試料台118上に載せられたウエハ160上面の上方にバイアス電位が形成され、プラズマPとの電位差に応じてプラズマP中からイオン等の荷電粒子をウエハ160表面の方向に引き込まれてウエハ160の処理が開始される。
【0035】
プラズマPによるウエハ160の処理が所期の状態に達した(例えば、処理対象の膜の下方の膜との界面に到達した、所定の深さの溝に到達した等の終点に達した)ことが検出されると、プラズマPは消失され下部電極120への高周波電力の印加が停止される。ウエハ160は、上記の搬入の際とは逆に真空搬送装置に試料台118上から受け渡され元のカセットの元の位置に戻されて、本プラズマ処理装置100による当該ウエハの動作は終了する。
【0036】
本実施例のプラズマ処理装置の上記の各部は、図示しない演算装置,記憶装置,信号の入出力装置を含む制御装置と通信手段を介して接続され、制御装置との間のセンサが検知した出力の信号や演算装置からの動作を指令する信号等が授受されて、適切なシーケンスで動作するようにそのタイミング,動作量を調節される。
【0037】
本実施例では、誘電体窓111、及びシャワープレート112の表面の温度を所定の範囲に調節することを行うため、空洞共振部104上部に外部の空気を加熱する加熱器を含むエアヒータ170、及び誘電体窓111またはシャワープレート112の温度を検知するセンサを備えた放射温度計173が配置されている。エアヒータ170は、プラズマ処理装置100の外部の雰囲気ガス、例えばプラズマ処理装置100が設置されるクリーンルーム等の建屋内の室内の空気を同じ温度で導入するガスライン172とその導入の流量,速度を調節するコントローラ171とに接続されている。また、放射温度計173は誘電体窓111の温度を検知しており、コントローラ171は放射温度計173からの出力の信号から検出される温度の値に基づいてエアヒータ170のON−OFFもしくは印加する電圧を変化させて加熱の増減を行い導入する空気の温度を使用者が設定した所望の範囲内となるように調節する。
【0038】
エアヒータ170により建屋内の室内温度から加熱されて昇温させられた外部の雰囲気である空気は、空洞共振部104内部の共振用空間に導入され、その底面を構成する誘電体窓111との間で熱交換してこれを加熱する。また、エアヒータ170で空気を加熱せずに元の温度のまま導入する場合には、処理中にプラズマPからの熱伝達を受けて加熱された誘電体窓111を冷却することも可能である。
【0039】
このような構成について、図2を併用して詳細に説明する。図2は、図1に示す実施例における上部の構成を拡大して示す縦断面図である。本図においては、図1に示す実施例のプラズマ処理装置の上部の部分のみ、特にガス導入リング113を含みその上方の部分を拡大して抽出している。
【0040】
図2に示すように、空洞共振部104の上部の外周側部分の複数箇所、特に上記誘電体窓111の中心の周方向に等角度に複数箇所に配置されたエアヒータ170から導入された空気は誘電体窓111と接触した後に空洞共振部104の中央側に向かって流れ、空洞共振部104の上部の中央部に接続された導波管103のその管の軸が上下方向に配置された部分(垂直部分と呼ぶ)下端部の開口から導波管103内部に進入する(図中矢印)。さらに垂直部分の内部を上昇して通過し、その上下方向の導波管103の垂直部分の上部に配置された排気口140から導波管103の外部に排出される。この排気口140は、導波管103の管の軸が水平方向に配置される部分(同水平部分)のマイクロ波源101が配置された一端部と反対の側の端部(他端部)に配置されている。
【0041】
一方、導波管103の水平部分の一端側にはマイクロ波源101,電源やスタブチューナ等の自動整合機102が配置されているので、エアヒータ170により加熱された空気がこれらが設置された箇所に流入してこれらを加熱すること、ひいてはこれらの正常な動作が可能な条件を越えて加熱してしまいその誤作動,異常の生起を防止する工夫が必要となる。また、導波管103内はマイクロ波の電界が通過する通路であるので、上記空気の通流,排気がプラズマ処理室110内に形成されるプラズマPの特性を変化させないようにする上で、導波管103内を通過するマイクロ波の電界の進行に支障が生じることを抑制する構成も必要となる。
【0042】
本図において、本実施例は、導波管103の垂直部分の側壁に冷却ユニット201を配置する。冷却ユニット201はガスライン172に連結されて接続されており、ガスライン172から導入された雰囲気と同じ温度のガスである空気が導波管103内部に導入され導波管103の垂直部分を上昇する空洞共振部104からのガスの温度を低下させる。冷却ユニット201は、導波管103の円筒形の垂直部分の管路の外周を囲むリング状のガス通路と、このリング状のガス通路と導波管103の垂直部分の内側側壁に開口されたスリット等の導入口と連通する通路を備えている。
【0043】
リング状のガス通路内に導入された雰囲気のガスは内部を流れて上記連通する通路を介して導波管103の垂直部分の内部に開口から上向きに導入される(図2に示す白抜きの矢印)。さらに、下方の空洞共振部104から流入して上昇する高温の空気とともに開口から上方に向かって流れて混合され、導波管103内部を流れる空気の温度は空洞共振部104内を流れるものよりも低減される。また、冷却ユニット201は、リング状のガス通路内の雰囲気ガスを冷却する手段、例えば、リング状のガス通路の外壁に雰囲気を導入して熱交換させて冷却する構成や、冷媒が循環する管路と熱的に接触させても良い。
【0044】
また、冷却ユニット201は、外部に設置されたコントローラ171により、加熱された空気導入時のみ導波管103内に冷却された空気を導入するようにエアヒータのON−OFFと同期され、非加熱時には、上記開口または連通する通路への雰囲気の導入を低減または停止するように調節されても良い。このような構成により、温度の低いガスが導波管103に導入されたことによる導波管103内部での結露が抑制される。
【0045】
このような構成により、本実施例では、誘電体窓111が加熱されてその温度が所定の範囲内に調節されるとともに、導波管103内部を通過する雰囲気ガスに冷却ユニット201からのより低温のガスを混入させることで、導波管103内部を通過するガスの温度を、導波管103の水平部分の一端側に配置されたマイクロ波源101や自動整合機102に向かって当該ガスが流入して到達してもこれらの動作に支障を来さない温度まで低下させる。また、上記より低温のガスを導波管103の上方(ガスの流れ方向あるいは電界の伝播方向の上流側)に向け導入することで、空洞共振部104内部の加熱された空気の流れを遮ることなく、また、低温にされたガスが誘電体窓111に到達することを抑制し導波管103内部を通過する空気の温度が所望の範囲に調節される。
【0046】
図3は、図2に示す実施例の変形例の構成の概略を拡大して示す縦断面図である。本図においても、図1に示す実施例のプラズマ処理装置の上部の部分のみ、特にガス導入リング113を含みその上方の部分を拡大して抽出している。
【0047】
本図に示す変形例では、排気口175はその排気流れの下流側にファン等の排気装置302が配置されている。排気口140より排出されたガスはファン等の排気装置302によってさらにプラズマ処理装置100の外部、あるいはプラズマ処理装置100が設置されたクリーンルーム等の建屋の室外に排気の経路を通り排出される。
【0048】
また、導波管103の水平部分の一端部のマイクロ波源のさらに電界の伝播方向の上流側にはガス供給口301が配置されており、排気装置302の動作によってガス供給口301から導波管103の内部に導入されたガスを排気口175に向かわせ該排気口175から外部に流出させる流れが生起される(図中ハッチング矢印)。この流れにより、誘電体窓111を加熱して導波管103の垂直部分を上昇し内部を通過してきたガスがマイクロ波源101や自動整合機102への向かう流れの流量や速度が低減される。
【0049】
また、ガス供給口301は空気を導入するためのガスライン303に接続される、もしくは外部の空気を導入するための開口を持ち、またその開口度は作業者あるいはプラズマ処理装置100のオペレータ等使用者が図示しない制御装置またはコントローラ171に指令信号を入力して可変に調節,設定できるようにしても良い。このような導入するガスの流量、もしくは開口面積の調節は、誘電体窓111の目標の温度にするために調節されるガスライン303とエアヒータ170を介して空洞共振部104の内部に上方から導入されて導波管103の垂直部分から排気口175を通り排出されるガスの流量または速度、つまり誘電体窓111或いはシャワープレート112の温度の調節の目標値の増減に応じて実施される。このようなガス供給口301から導波管103の水平部分に導入されて排気口175から排出される流量または速度の調節によっても、誘電体窓111またはシャワープレート112の温度の調節が実施される。
【0050】
図4は、図2に示す実施例の他の変形例の構成の概略を拡大して示す縦断面図である。本図においても、図1に示す実施例のプラズマ処理装置の上部の部分のみ、特にガス導入リング113を含みその上方の部分を拡大して抽出している。
【0051】
本変形例では、導波管103の垂直部分の上部または上端部に、ガスライン172に接続されたガス供給口401を配置している。ガス供給口401からは、雰囲気ガスと同等の温度もしくは図示しない冷却手段により冷却されたガスが、下方の誘電体窓111に向かって導入される。
【0052】
また、導波管103の垂直部分の外周壁を囲んでこれに沿って円筒形に配置されたすき間を有する排気通路405を備え、そのすき間の上端にはプラズマ処理装置100の外部と連通した排気口402が配置されている。また、排気通路405の下端は空洞共振部104内部の円筒形状の空間の上端部に臨んで配置された開口404と連通されており、この開口404の外周側に配置されたエアヒータ170から導入された昇温したガスは誘電体窓111を加熱して温度を調節しつつ中央側に向かって流れ空洞共振部104の上部中央に配置された導波管103の垂直部の下端部と接続した円形の開口の外周を囲んで配置された円形または円形と見なせる複数の円弧状のすき間から構成された開口404から排気通路405を通り上方の開口402から外部に流出する(図中矢印)。
【0053】
排気通路405の外周を囲む円筒形の金属製の部材の内部または外周壁には、排気通路405を通るガスを冷却するための流体が内部を通流する冷却管路403が配置されている。本変形例においては、導波管103の垂直部分の上部のガス供給口401から下方に向けて導入されるガスの流れにより、当該エアヒータ170から導入されたガスの垂直部分を上昇してマイクロ波源101や自動整合機102の方向へ向かう流れを低減し、高温のガスがこれらに到達してこれらに誤動作や停止等の異常が発生することが抑制される。
【0054】
上記の実施例においては、排気口140,175もしくはガス供給口301,401といった開口部を導波管103上に配置している。特に、上記実施例では、導波管103の垂直部分の上端部、あるいは水平部分と垂直部分との接続部の上面であって垂直部分の管路の軸方向の直上方の管路の投影面内に位置した導波管103の上面に配置している。この場合、上記開口は、上記垂直部分を介して空洞共振部104と導波管との接続部の開口及びその下方の誘電体窓111に面して、これらの開口部は内部のガスの排気及び内部に空気を供給するのに流れが抑制されることが少なく、その開口をコントローラ171や図示しない制御装置によって調節される場合にも、その精度や応答性が損なわれることが低減され高い性能を獲得できる。また、導波管103内部を通過するマイクロ波の伝播を阻害しないこと、更には開口部を通過するマイクロ波を十分に減衰させるために、設置場所や形状を検討する必要がある。
【0055】
導波管103は伝播方向に垂直な断面の形状は、伝播方向について水平部分の方形状から垂直部分の円形状に断面が変化している。その内部を通過するマイクロ波の電界分布への影響を抑制する上では、上記の開口部をこの変換部、すなわち、水平部分と垂直部分との連結部または接続部に配置する、さらに、開口部は導波管103の管路の軸の中心により近接させた位置に配置する構成がより効果的である。
【0056】
図5に、図2に示す実施例に係る導波管の排気口の構成を模式的に示す平面図である。特に、上記実施例または変形例における排気口140もしくはガス供給口301,401の開口部の形状を示す。これらの開口部の形状は、導波管103表面を通過する電流の流れを阻害し内部の電界がこれら開口部を通過したことによる擾乱が抑制されるように構成される。
【0057】
図5に示す例では、図5(a)に示すスリット型の排気口開口501及び図5(b)に示すパンチプレート型の排気口開口502を示している。図5(a)に示すスリット型の排気口開口501では開口は矩形状を有しており、その各スリットの開口の長辺を電界の進行方向に対して平行に配置し、開口の長辺寸法は導波管103内を通過する電界の波長λgに対して4分の1、短辺寸法は長辺のものより小さくしている。このことによって、マイクロ波の電界の伝播が阻害されることが抑制され、また排気口開口501を通過するマイクロ波の電界が効果的に減衰される。また、図5(b)のパンチプレート型の排気口開口502では、複数の円形状または楕円形状の開口が所定の間隔を空けて円形の部材の中央部の中心から所定の半径の範囲内の領域に配置されており、各複数の開口の径をより小さくすることが効果的である。
【0058】
更に、これらの実施例において、開口部の厚さ方向に寸法を持たせることや開口部にエキスパンドメタル等の導電性を持つメッシュを配置することもマイクロ波の漏洩を防止する上で効果的である。また、前述のように排気口140をその開口度は自由に変化できる構造とし、その開口度を制御することで、外部への排気量を制御することも可能である。
【0059】
上記の実施例により、プラズマを形成してウエハ160を処理する際の処理またはプラズマの特性に影響を及ぼすシャワープレート112またはそのシャワープレート112に近接している誘電体窓111の温度を調節して、任意のロットの複数のウエハ160を処理する間で、プラズマ処理室110の内側壁面の温度変動による複数のウエハ160同士での処理の結果や処理の特性の変動が低減され、処理の効率や歩留まりが向上する。
【符号の説明】
【0060】
101 マイクロ波源
102 自動整合機
103 導波管
104 空洞共振部
105 ソレノイドコイル
110 プラズマ処理室
111 誘電体窓
112 シャワープレート
113 ガス導入リング
114 放電ブロック壁
115 電極外周リング
116 下部チャンバ壁
118 試料台
120 下部電極
121 RF電源
122 整合器
130 ガス源
131 ガス供給装置
132 ガスバルブ
140,150,402 排気口
151 可動弁
152 TMP
160 ウエハ
170 エアヒータ
171 コントローラ
172 ガスライン
173 放射温度計
201 冷却ユニット
301 ガス供給口
302 排気装置
401 ガス供給口
403 冷却管路
501,502 排気口開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される円筒形の処理室と、この処理室の下部に配置され試料がその上面に配置される試料台と、前記真空容器の上部に配置され前記処理室の上方を覆ってこの処理室内部を気密に区画する誘電体製の円板部材と、この円板部材の上方に配置されこの円板部材を透過して前記処理室内に供給される電界が導入される円筒形の空洞と、この空洞の中央部の上方に延在してこれに連結された導波管であって内部を前記電界が伝播する導波管と前記空洞と前記導波管との連結部の外周側に配置され前記空洞内部の外周から中央に向けて所定の温度に調節されたガスを供給する第一の供給口と、前記導波管に配置され前記所定の温度より低い温度のガスが供給される第二の供給口と、前記導波管に配置され前記第一及び第二の供給口から供給され内部を流れる前記ガスが排出される排出口とを備えたプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、前記第二の供給口が前記導波管と前記空洞の中央部との連結部及び前記排出口の中間に配置され、前記排出されるガスの温度が前記空洞内部での温度より低くされるプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、前記排出口が前記導波管と前記空洞の中央部との連結部及び前記第二の供給口との間に配置されたプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、前記導波管が、前記空洞の中央部の上方に延在する円筒形導波管とその一端部がこの円筒形導波管に連結されて水平方向に延在し他端部に前記電界を生成する手段が配置された矩形導波管とを備え、前記排出口が前記円形導波管と前記矩形導波管との連結部に配置されたプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、前記円板部材の温度を検出する検出器からの出力に基づいて前記第一の供給口から供給されるガスの温度または量或いは前記第二の供給口から供給される前記ガスの温度または量のいずれかを調節する制御器を備えたプラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−156275(P2012−156275A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13557(P2011−13557)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】