プラズマ反応器
【課題】このプラズマ反応器は,誘電体と柵状電極から成るプラズマ反応構造体を用いて,放電空間でプラズマ放電を所定の場所で所定の等間隔に安定して発生させ,しかも柵状電極の加工を容易にして製造コストを安価にする。
【解決手段】このプラズマ反応器は,柵状電極1,2を複数の柵6とそれらを連繋する導電体7から形成し,互いに対向する柵状電極1,2の柵6を互いに異なった方向の延ばして交差させる。柵状電極1,2間に誘電体3を挿入して形成したプラズマ反応構造体5を複数並列に配設してガスGが通過できる放電空間10を1層以上形成する。柵状電極1,2と誘電体3間,又は柵状電極1,2を覆った誘電体3間の放電空間10にガスGが通過させて柵状電極1,2に電圧をかけてプラズマ放電を発生させ,ガスGを反応させる。
【解決手段】このプラズマ反応器は,柵状電極1,2を複数の柵6とそれらを連繋する導電体7から形成し,互いに対向する柵状電極1,2の柵6を互いに異なった方向の延ばして交差させる。柵状電極1,2間に誘電体3を挿入して形成したプラズマ反応構造体5を複数並列に配設してガスGが通過できる放電空間10を1層以上形成する。柵状電極1,2と誘電体3間,又は柵状電極1,2を覆った誘電体3間の放電空間10にガスGが通過させて柵状電極1,2に電圧をかけてプラズマ放電を発生させ,ガスGを反応させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,プラズマ放電を発生させるプラズマ反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは,高い熱効率を有することから,結果的にディーゼル車の普及は地球温暖化防止に寄与することになる。また,ディーゼルエンジンから排出される炭素系の粒子状物質(PM),NOx,有機化合物等の有害物質は,人体に有害であることから,近年,その排出量を益々低減するように規制されている。ディーゼル車から排出される排気ガスの温度が低いため,プラズマ反応による有害物質低減の技術は,PMの除去に有効であるとされている。PMがプラズマ反応によって低減されるのに使用されるプラズマ反応器は,概ね誘電体バリアを介したタイプの反応器がほとんどである。従来開発されて使用されているプラズマ反応器は,電極と誘電体との形状が異なっている。
【0003】
従来のプラズマ反応器について,電極は,板状,管状,球状,網状,多孔質状,凹凸状の形状のものが使用されている。また,誘電体は,板状,管状,球状,多孔質状,凹凸状の形状のものが使用されている。
【0004】
従来知られている排気ガス浄化方法は,還元剤含有排気ガス雰囲気で発生させたプラズマ下において,NOx吸着性が増大する吸着剤を使用してプラズマ下で排気ガス中のNOxを浄化するものであり,還元剤含有排気ガスの温度がNOx浄化触媒の作用温度以下であるときには,該プラズマ下NOx吸着剤の表面付近で放電し,還元剤含有排気ガス雰囲気でプラズマを発生させて該プラズマ下NOx吸着剤にNOxを吸着させ,作用温度以上のときには,放電を止めて該プラズマ下NOx吸着剤に吸着されていたNOxをNOx浄化触媒に導き,NOxの浄化を行うものである(例えば,特許文献1参照)。
【0005】
また,プラズマ下NOx吸着材としては,塩基成分を担持した多孔質担体からなり,プラズマ下において吸着性が増大する特性を有しているものが知られている(例えば,特許文献2参照)。
【0006】
排気浄化装置として,効率的にPMを含む排気ガスを浄化するものが知られている。該排気浄化装置は,内燃機関の排気に含まれる粒子状物質を帯電させる帯電手段と,前記帯電手段より排気下流側に設けられた接地極と,前記帯電手段と前記接地極との間で帯電された粒子状物質を捕集するフイルタを備えているものである(例えば,特許文献3参照)。
【0007】
従来知られているプラズマ反応器は,プラズマ発生電極と所定の成分を含むガスの流路を内部に有するケース体を有し,ガスがケース体のガス流路に導入されたときに,プラズマ反応器発生電極で発生したプラズマによりガスに含まれる所定の成分が反応するものである。前記プラズマ発生電極は,互いに対向する2つ以上の板状の単位電極を備え,単位電極相互間に電圧を印加することによってプラズマを発生させることが可能であり,単位電極が誘電体となるセラミック体と,該セラミック体の一方の表面に配設された導電膜と,該導電膜の露出面を被覆するように配設された金属膜から構成された第1の保護膜とを有するものである(例えば,特許文献4参照)。
【0008】
また,排ガス浄化装置として,PM堆積を検知することができるプラズマ放電を利用したものが知られている。該排ガス浄化装置は,絶縁性ハニカム構造体,その外周部に配置され外周電極として機能するケース,ケースの中心軸上に保持されている棒状の放電電極,及び粒子状物質検出用電極を有し,粒子状物質検出用電極がケースと回路を形成し,電極上に粒子状物質が堆積することによってケースとの間に電気的導通が形成され,電気的導通を検知することにより粒子状物質が堆積していることを把握することができるものである(例えば,特許文献5参照)。
【0009】
また,プラズマ電極の製作方法として,電極本体及び誘電体を有し,電圧の印加によってプラズマを発生させるためのプラズマ電極を作製するものであって,ディップコーティングによってガラスを電極本体に被覆して誘電体を形成するものである(例えば,特許文献6参照)。
【0010】
また,低温領域においてガスを効率良く改質する反応制御装置が知られている。該反応制御装置は,第一電極と,第一電極に対向して配置された第二電極と,前記各電極の対向面側における第一電極又は第二電極のいずれか一方に積層された誘電体と,を備え,前記各電極の対向面側の電極又は誘電体の少なくとも一方の表面上に,所定の周期間隔により溝又は細孔が形成されている(例えば,特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−182525号公報
【特許文献2】特開2001−232185号公報
【特許文献3】特開2003−269134号公報
【特許文献4】特開2005−93107号公報
【特許文献5】特開2007−90255号公報
【特許文献6】特開2009−117175号公報
【特許文献7】特開2005−138098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで,プラズマ反応器によるPMの除去には,プラズマで生成した活性酸素種をPMと効率的に接触させ,反応させる必要があった。また,プラズマ反応器では,放電空間でプラズマ放電を所定の場所で発生させる必要があった。これまで開発された凹凸状のプラズマ反応器は,PMの除去に適しているが,例えば,特許文献7に示すように,誘電体を凹凸状に作製するのはコスト高となり,プラズマ放電によるPMの除去技術は,実用化するのに困難な面があった。
【0013】
この発明の目的は,上記の問題を解決することであり,誘電体と柵状電極とを組み合わせたプラズマ反応構造体を用いることによって,放電空間でプラズマ放電を所定の場所で安定して発生させることができ,しかも電極の加工が安価に作製でき,著しく低コスト化できるプラズマ反応器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は,互いに対向する2つの導電性電極,及び前記導電性電極間に挿入された誘電体から構成されたプラズマ反応構造体を有し,前記導電性電極に電圧を印加することによりプラズマ反応を発生させることから成るプラズマ反応器において,
前記プラズマ反応構造体は複数並列に配設されており,前記導電性電極は互いに隔置状態の複数の柵と前記柵に連結して前記柵同士を連繋する導電体から柵状電極に形成され,対向する前記柵状電極の前記柵の方向は互いに異なって交差しており,前記柵状電極と前記誘電体との対向間又は前記柵状電極を覆った前記誘電体の対向間にガスが通過でき且つ前記ガスの入口と出口を備えた放電空間が1層以上設けられていることを特徴とするプラズマ反応器に関する。
【0015】
また,このプラズマ反応器において,前記柵状電極の前記柵は,幅が0.1mm〜10mm,長さが1mm〜1000mm,厚さが0.001mm〜10mmであり,前記柵間の距離が0.5mm〜100mmの範囲である。更に,前記柵状電極における多数の前記柵は,それぞれ同一サイズで前記導電体に所定の等間隔に連結されている。前記柵状電極の前記柵を同一サイズで所定の等間隔に構成することによってプラズマ放電を等間隔の規則正しい状態で発生させることができ,好ましいものである。
【0016】
また,このプラズマ反応器は,前記柵状電極の前記導電体を枠状導電体に形成し,前記枠状導電体に前記柵の少なくとも一端が固定されており,対向する前記枠状導電体間にスペーサを介在させて対向する前記柵状電極間に前記放電空間が形成されているものである。
【0017】
また,前記柵状電極の間に挿入された前記誘電体は,一層以上設けることができる。
【0018】
また,前記誘電体は,金属酸化物,プラスチック,ゴム,及びガラスから選択された1種以上の材料から板状,円筒状,又は球状に形成されており,前記誘電体の厚さが0.1mm〜10mmの範囲内である。また,前記柵状電極は,電圧を印加できるリード線が結線され,電気通過できる鉄,銅,ステンレス,亜鉛,アルミニウム,チタン等の金属,インジウム錫酸化物,酸化亜鉛等の金属酸化物,導電性プラスチックである。
【0019】
また,このプラズマ反応器について,前記放電空間に接する前記誘電体及び/又は前記柵状電極の表面には,化学反応を促進する触媒が担持されているものである。
【0020】
また,このプラズマ反応器は,前記放電空間の前記入口から供給する前記ガスとして含酸素ガスを使用し,前記放電空間で発生するプラズマ反応によってオゾンガスを生成し,前記放電空間の前記出口から前記オゾンガスを回収することができるオゾン発生装置に適用することができる。或いは,このプラズマ反応器は,前記放電空間の前記入口から供給する前記ガスとして粒子状物質,窒素酸化物,有機化合物,硫黄酸化物の有害な物質を含むガスを使用し,前記放電空間で発生するプラズマ反応によって前記有害な物質を消失し,前記放電空間の前記出口から浄化されたガスを回収することができる排気ガス浄化装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0021】
このプラズマ反応器は,上記のように,柵状電極における対向する柵の方向が互いに異なって交差しているので,柵状電極における多数の柵の交差領域が柵同士が最も近接する最短距離の位置となり,電極間の最短距離でまずプラズマ放電が発生し,柵の交差領域で確実に安定してプラズマ放電が発生することになり,放電状態が放電空間に進展していくことになる。また,導電性電極が多数の柵の簡潔な形状であるので,柵状電極の製作が簡素化し,柵が異なった方向に延びている柵状電極を交互に積層することによってプラズマ反応器が簡単に作製でき,製造コストが安価になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明によるプラズマ反応器を構成する柵が一方向に延びている柵状電極を示す平面図である。
【図2】この発明によるプラズマ反応器を構成する柵が他方向に延びている柵状電極を示す平面図である。
【図3】この発明によるプラズマ反応器を構成するプラズマ反応構造体の組立工程を示し,(A)は柵が一方向に延びている柵状電極と誘電体との組立工程を示し,(B)は柵が他方向に延びている柵状電極と誘電体との組立工程を示す斜視図である。
【図4】この発明によるプラズマ反応器を構成する一対の柵状電極と誘電体(図示せず)とから成るプラズマ反応構造体を示す平面図である。
【図5】この発明によるプラズマ反応器を構成するプラズマ反応構造体でプラズマ放電が発生する部位を示す説明図である。
【図6】この発明によるプラズマ反応器における柵状電極と一対の誘電体で覆われた一方の柵状電極とから成るプラズマ反応構造体を示す断面図である。
【図7】この発明によるプラズマ反応器における柵状電極が一対の誘電体でそれぞれ覆われたプラズマ反応構造体を示す断面図である。
【図8】図6に示すプラズマ反応構造体を複数重ねた状態を示す断面図である。
【図9】図7に示すプラズマ反応構造体を複数重ねた状態を示す断面図である。
【図10】この発明によるプラズマ反応器を構成する複数のプラズマ反応構造体を積層する組立工程を示す斜視図である。
【図11】この発明によるプラズマ反応器を容器に収容した状態を示し,オゾン発生装置又は排気ガス浄化装置に適用できる例を示す斜視図である。
【図12】この発明によるプラズマ反応器を排気ガス浄化装置に適用できる例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,図面を参照して,この発明によるプラズマ反応器の実施例を説明する。
このプラズマ反応器は,概して,互いに対向する2つの導電性電極1,2,及び導電性電極1,2間に挿入された誘電体3から構成されたプラズマ反応構造体5を有し,導電性電極1,2に電圧を印加することによりプラズマ反応を発生させることから構成されている。この発明によるプラズマ反応器は,特に,プラズマ反応構造体5を複数並列に配設し,導電性電極1,2が空間4を有する互いに隔置状態の複数の柵6と,該柵6を連繋する導電体7とから柵状電極1,2に形成され,対向する柵状電極1,2の柵6が延びる方向を互いに異ならせて対向する柵を交差させ,柵状電極1,2と誘電体3との対向間,又は柵状電極1,2を覆った誘電体3の対向間にガスGが通過でき且つガスGの入口8と出口9を備えた放電空間10を1層以上有していることに特徴を有している。
【0024】
このプラズマ反応器については,複数の柵状電極1,2に印加される電圧の波形は,交流,直流,パルス,任意波を用いることができる。このプラズマ反応器は,排気ガスや含酸素ガス等の処理ガスの性質に応じて,高圧電源の出力を制御し,放電による化学反応を制御することができる。また,プラズマ反応器20の全部または一部を電気炉や冷却装置中に設置し,プラズマ反応器の温度やプラズマ反応器に導入するガスGの温度を制御することもできる。
【0025】
また,このプラズマ反応器において,柵状電極1,2の柵6は,幅が0.1mm〜10mmであり,長さが1mm〜1000mmであり,厚さが0.001mm〜10mmであり,柵6間の距離即ち隔置空間4が0.5mm〜100mmの範囲にある形状に構成されている。
【0026】
また,このプラズマ反応器は,図10に示すように,柵状電極1,2の導電体7を枠状導電体7に形成し,枠状導電体7に柵6の両端が固定されており,対向する枠状導電体7間にスペーサ14を介在させて,対向する柵状電極1,2間に放電空間10が形成されているものである。また,柵状電極1,2の間に挿入された誘電体3は,図6に示すように,一層設けるか,又は,図8に示すように2層設けることができる。このプラズマ反応器では,柵状電極1,2における柵6が枠状導電体7に等間隔に延びるように形成することが,プラズマ放電を放電空間10で所定の等間隔,即ち,一定間隔で同様に発生させることができ,好ましいものである。
【0027】
このプラズマ反応器において,誘電体3は,金属酸化物,プラスチック,ゴム,及びガラスから選択された1種以上の材料から板状,円筒状,又は球状に形成されている。また,誘電体3の厚さが0.1mm〜10mmの範囲内である。また,柵状電極1,2は,電圧を印加できるリード線11が結線され,電気通過できる鉄,銅,ステンレス,亜鉛,アルミニウム,チタン等の金属,インジウム錫酸化物,酸化亜鉛等の金属酸化物,導電性プラスチックで形成されている。
【0028】
また,このプラズマ反応器について,放電空間10に露出する誘電体3及び/又は柵状電極1,2の表面には,ガスGとの化学反応を促進する触媒12を担持させることが好ましいものである。
【0029】
また,このプラズマ反応器は,放電空間10の入口8から供給するガスGとして含酸素ガスGを使用し,放電空間10で発生するプラズマ反応によってオゾンガスを生成し,放電空間10の出口9からオゾンガスを回収することができるオゾン発生装置に適用することができる。
【0030】
或いは,このプラズマ反応器は,放電空間10の入口8から供給するガスGとしてエンジン等から排出される粒子状物質,窒素酸化物,有機化合物,硫黄酸化物の有害な物質を含有する排気ガスを使用し,放電空間10で発生するプラズマ反応によって有害な物質を反応焼却除去し,放電空間10の出口9から浄化されたガスを回収することができる排気ガス浄化装置に適用することができる。また,このプラズマ反応器を排気ガス浄化装置に適用した場合には,プラズマ反応器20の後方に,図示していないが,触媒層や吸着層を設けて,化学反応を促進することができる。また,プラズマ反応器20中の放電空間10に,又は放電空間10の後方に,更に他のガスや液体,固体粉末を導入し,化学反応を促進させることができる。更に,ディーゼルエンジン15の回転数,排気温度,圧力等を計測して得た計測値に相当する電気信号等の情報に応答して高圧電源の出力電圧と周波数を制御することができる。
【0031】
次に,このプラズマ反応器について,具体的に説明する。図1及び図2には,ステンレス製の柵状電極1,2の平らな板状の形状例が示されている。図3及び図4には,対になる柵状電極1,2と,平らな板状の形状のアルミナ製の誘電体3とからなる基本構造であるプラズマ反応構造体5が示されており,図6〜図9には,プラズマ反応構造体5の積層した場合の構造例が示されている。柵状電極1,2における柵6は,横軸方向(X方向)との間の傾斜角度がそれぞれ45°と135°に傾斜しているが,この傾斜角度に限るものではない。
【0032】
図6には,2つの柵状電極1,2と一対の誘電体3からなる基本構造であるプラズマ反応構造体5Aが示されており,図6に示すように,柵状電極1は,両側の誘電体3の表面に接しているが,柵状電極2は,誘電体3の表面との間に空間ができるように設置され,柵状電極1と接している誘電体3の下に放電空間10を形成して柵状電極2が設置されている。2つの柵状電極1,2の柵6の傾斜角度が互いに逆向きに延びて異なることによって,誘電体3の両側の柵6が互いに交差することになる。柵状電極1,2の間にリード線11を通じて電圧を印加すると,柵状電極1と接している誘電体3の表面と柵状電極2との間に形成されている放電空間10に存在するプラズマガスにプラズマ放電を発生して化学反応が起きることになる。図8には,図6に示すプラズマ反応構造体5Aを多数積層した状態が示されている。
【0033】
また,図7には,一対の柵状電極1,2と二対の誘電体3からなる基本構造であるプラズマ反応構造体5Bが示されており,中間部に位置する誘電体3間に放電空間10が形成されている。2つの柵状電極1,2の柵6の傾斜角度が互いに逆向きに延びて異なることによって,誘電体3の両側の柵6が互いに交差することになる。図9には,図7に示すプラズマ反応構造体5Bを多数積層した状態が示されている。
【0034】
図5には,プラズマ反応構造体5A,5Bの間に電圧を印加した場合に,放電空間10において柵状電極1,2の隔置状態の交差領域25(図4参照)で放電が発生した放電箇所26と,放電していない非放電箇所27とを示している。放電箇所26を検証してみると,対向した柵状電極1,2の柵6が交差した箇所に一致していることが分った。即ち,柵6が交差した領域は,柵6が均等に隔置して連繋導電体即ち枠状導電体7に固定されている場合であって,放電箇所26と放電していない非放電箇所27が均一に等間隔に分布することになることが確認できた。また,放電で生成した活性種が放電箇所26にある放電空間10で化学反応に寄与するが,それらの活性種が放電をしていない非放電箇所27に進展即ち拡散して更にプラズマが化学反応に寄与することになり,言い換えれば,放電によって生成した活性種が基になって放電空間10全領域でプラズマ反応が発生することに有効に寄与できるものである。
【0035】
次に,図3を参照して,このプラズマ反応器を組み立てる工程について説明する。
図3には,このプラズマ反応器を柵状電極1,2と誘電体3との組立工程を示しており,(A)では誘電体3上に設置された柵状電極1と誘電体3,及び(B)では誘電体3上に設置された柵状電極2と誘電体3とを,誘電体3の外周に付着された接着剤24により接着する工程が示されている。また,図10には,誘電体3で挟まれた柵状電極1,2から成るプラズマ反応構造体5Bの間に,スペーサ14を挿入し,これらを順次に積層する。これによって,プラズマ反応構造体5Bの間には,スペーサ14によって放電空間10が形成される。
【0036】
次に,図11には,多数のプラズマ反応構造体5を組み込んだオゾン発生装置或いは排気ガス浄化装置に適用できるプラズマ反応器20が示されている。図10に示すように,プラズマ反応器20を作製する工程は,プラズマ反応構造体5Bとスペーサ14とを順次に積層し,これをステンレス製の容器13内にセットする。ステンレス製容器13は,入口8と出口9を備えている。ガス,液体及び/又は固体を含むガスGが入口8に導入され,スペーサ14で形成された放電空間10を通して,出口9から流出される。積層した柵状電極1,2を電極連結線21で連結した後に,外部高圧電源をリード線22で接続する。リード線22とステンレス製の容器13との間は,絶縁管23で絶縁されている。
【0037】
図12には,プラズマ反応器20を用いてディーゼルエンジン15から排出される粒子状物質(PM)の除去に応用した例が示されている。ディーゼルエンジン15からの排気ガスGは,排気管16を通して,プラズマ反応器20に導入される。プラズマ反応器20の中で放電によって発生する化学反応で,排気ガスG中に含まれるPMが反応して焼却除去される。PMが除去された排ガスGが排気管16から大気に排出される。プラズマ反応器20は,高圧電源17とリード線22で接続されている。高圧電源17から供給される電力によってプラズマ放電がプラズマ反応器20中の放電空間10で発生する。高圧電源17の出力は,制御ユニット18でディーゼルエンジン15の回転数,排気ガス温度と圧力に相当する電気信号を取り入れて制御される。高圧電源17へは,ディーゼルエンジン15に備えた発電機や外部電力とライン19で結線され駆動される。PM除去効果は,定められた方法で計測した。その結果,このプラズマ反応器20を用いれば,排気ガスG中のPMを除去することが可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明によるプラズマ反応器は,ディーゼルエンジン等の炭化水素系燃焼機関からの排気ガスに含まれる煤,黒煙や,環境中に浮遊する固体粒子状物質を酸化反応させたり燃焼させたりして消滅させるために適用したり,含酸素ガスを用いてオゾンを生成させるオゾン発生装置に適用したり,空気中の微粒子等の有害物質を反応させ焼却して除去する空気清浄器等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 柵状電極
2 柵状電極
3 誘電体
5,5A,5B プラズマ反応構造体
6 柵
7 枠状導電体
8 入口
9 出口
10 放電空間
11 リード線
12 触媒
13 容器
14 スペーサ
20 プラズマ反応器
25 対向した柵の交差領域
G ガス
【技術分野】
【0001】
この発明は,プラズマ放電を発生させるプラズマ反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは,高い熱効率を有することから,結果的にディーゼル車の普及は地球温暖化防止に寄与することになる。また,ディーゼルエンジンから排出される炭素系の粒子状物質(PM),NOx,有機化合物等の有害物質は,人体に有害であることから,近年,その排出量を益々低減するように規制されている。ディーゼル車から排出される排気ガスの温度が低いため,プラズマ反応による有害物質低減の技術は,PMの除去に有効であるとされている。PMがプラズマ反応によって低減されるのに使用されるプラズマ反応器は,概ね誘電体バリアを介したタイプの反応器がほとんどである。従来開発されて使用されているプラズマ反応器は,電極と誘電体との形状が異なっている。
【0003】
従来のプラズマ反応器について,電極は,板状,管状,球状,網状,多孔質状,凹凸状の形状のものが使用されている。また,誘電体は,板状,管状,球状,多孔質状,凹凸状の形状のものが使用されている。
【0004】
従来知られている排気ガス浄化方法は,還元剤含有排気ガス雰囲気で発生させたプラズマ下において,NOx吸着性が増大する吸着剤を使用してプラズマ下で排気ガス中のNOxを浄化するものであり,還元剤含有排気ガスの温度がNOx浄化触媒の作用温度以下であるときには,該プラズマ下NOx吸着剤の表面付近で放電し,還元剤含有排気ガス雰囲気でプラズマを発生させて該プラズマ下NOx吸着剤にNOxを吸着させ,作用温度以上のときには,放電を止めて該プラズマ下NOx吸着剤に吸着されていたNOxをNOx浄化触媒に導き,NOxの浄化を行うものである(例えば,特許文献1参照)。
【0005】
また,プラズマ下NOx吸着材としては,塩基成分を担持した多孔質担体からなり,プラズマ下において吸着性が増大する特性を有しているものが知られている(例えば,特許文献2参照)。
【0006】
排気浄化装置として,効率的にPMを含む排気ガスを浄化するものが知られている。該排気浄化装置は,内燃機関の排気に含まれる粒子状物質を帯電させる帯電手段と,前記帯電手段より排気下流側に設けられた接地極と,前記帯電手段と前記接地極との間で帯電された粒子状物質を捕集するフイルタを備えているものである(例えば,特許文献3参照)。
【0007】
従来知られているプラズマ反応器は,プラズマ発生電極と所定の成分を含むガスの流路を内部に有するケース体を有し,ガスがケース体のガス流路に導入されたときに,プラズマ反応器発生電極で発生したプラズマによりガスに含まれる所定の成分が反応するものである。前記プラズマ発生電極は,互いに対向する2つ以上の板状の単位電極を備え,単位電極相互間に電圧を印加することによってプラズマを発生させることが可能であり,単位電極が誘電体となるセラミック体と,該セラミック体の一方の表面に配設された導電膜と,該導電膜の露出面を被覆するように配設された金属膜から構成された第1の保護膜とを有するものである(例えば,特許文献4参照)。
【0008】
また,排ガス浄化装置として,PM堆積を検知することができるプラズマ放電を利用したものが知られている。該排ガス浄化装置は,絶縁性ハニカム構造体,その外周部に配置され外周電極として機能するケース,ケースの中心軸上に保持されている棒状の放電電極,及び粒子状物質検出用電極を有し,粒子状物質検出用電極がケースと回路を形成し,電極上に粒子状物質が堆積することによってケースとの間に電気的導通が形成され,電気的導通を検知することにより粒子状物質が堆積していることを把握することができるものである(例えば,特許文献5参照)。
【0009】
また,プラズマ電極の製作方法として,電極本体及び誘電体を有し,電圧の印加によってプラズマを発生させるためのプラズマ電極を作製するものであって,ディップコーティングによってガラスを電極本体に被覆して誘電体を形成するものである(例えば,特許文献6参照)。
【0010】
また,低温領域においてガスを効率良く改質する反応制御装置が知られている。該反応制御装置は,第一電極と,第一電極に対向して配置された第二電極と,前記各電極の対向面側における第一電極又は第二電極のいずれか一方に積層された誘電体と,を備え,前記各電極の対向面側の電極又は誘電体の少なくとも一方の表面上に,所定の周期間隔により溝又は細孔が形成されている(例えば,特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−182525号公報
【特許文献2】特開2001−232185号公報
【特許文献3】特開2003−269134号公報
【特許文献4】特開2005−93107号公報
【特許文献5】特開2007−90255号公報
【特許文献6】特開2009−117175号公報
【特許文献7】特開2005−138098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで,プラズマ反応器によるPMの除去には,プラズマで生成した活性酸素種をPMと効率的に接触させ,反応させる必要があった。また,プラズマ反応器では,放電空間でプラズマ放電を所定の場所で発生させる必要があった。これまで開発された凹凸状のプラズマ反応器は,PMの除去に適しているが,例えば,特許文献7に示すように,誘電体を凹凸状に作製するのはコスト高となり,プラズマ放電によるPMの除去技術は,実用化するのに困難な面があった。
【0013】
この発明の目的は,上記の問題を解決することであり,誘電体と柵状電極とを組み合わせたプラズマ反応構造体を用いることによって,放電空間でプラズマ放電を所定の場所で安定して発生させることができ,しかも電極の加工が安価に作製でき,著しく低コスト化できるプラズマ反応器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は,互いに対向する2つの導電性電極,及び前記導電性電極間に挿入された誘電体から構成されたプラズマ反応構造体を有し,前記導電性電極に電圧を印加することによりプラズマ反応を発生させることから成るプラズマ反応器において,
前記プラズマ反応構造体は複数並列に配設されており,前記導電性電極は互いに隔置状態の複数の柵と前記柵に連結して前記柵同士を連繋する導電体から柵状電極に形成され,対向する前記柵状電極の前記柵の方向は互いに異なって交差しており,前記柵状電極と前記誘電体との対向間又は前記柵状電極を覆った前記誘電体の対向間にガスが通過でき且つ前記ガスの入口と出口を備えた放電空間が1層以上設けられていることを特徴とするプラズマ反応器に関する。
【0015】
また,このプラズマ反応器において,前記柵状電極の前記柵は,幅が0.1mm〜10mm,長さが1mm〜1000mm,厚さが0.001mm〜10mmであり,前記柵間の距離が0.5mm〜100mmの範囲である。更に,前記柵状電極における多数の前記柵は,それぞれ同一サイズで前記導電体に所定の等間隔に連結されている。前記柵状電極の前記柵を同一サイズで所定の等間隔に構成することによってプラズマ放電を等間隔の規則正しい状態で発生させることができ,好ましいものである。
【0016】
また,このプラズマ反応器は,前記柵状電極の前記導電体を枠状導電体に形成し,前記枠状導電体に前記柵の少なくとも一端が固定されており,対向する前記枠状導電体間にスペーサを介在させて対向する前記柵状電極間に前記放電空間が形成されているものである。
【0017】
また,前記柵状電極の間に挿入された前記誘電体は,一層以上設けることができる。
【0018】
また,前記誘電体は,金属酸化物,プラスチック,ゴム,及びガラスから選択された1種以上の材料から板状,円筒状,又は球状に形成されており,前記誘電体の厚さが0.1mm〜10mmの範囲内である。また,前記柵状電極は,電圧を印加できるリード線が結線され,電気通過できる鉄,銅,ステンレス,亜鉛,アルミニウム,チタン等の金属,インジウム錫酸化物,酸化亜鉛等の金属酸化物,導電性プラスチックである。
【0019】
また,このプラズマ反応器について,前記放電空間に接する前記誘電体及び/又は前記柵状電極の表面には,化学反応を促進する触媒が担持されているものである。
【0020】
また,このプラズマ反応器は,前記放電空間の前記入口から供給する前記ガスとして含酸素ガスを使用し,前記放電空間で発生するプラズマ反応によってオゾンガスを生成し,前記放電空間の前記出口から前記オゾンガスを回収することができるオゾン発生装置に適用することができる。或いは,このプラズマ反応器は,前記放電空間の前記入口から供給する前記ガスとして粒子状物質,窒素酸化物,有機化合物,硫黄酸化物の有害な物質を含むガスを使用し,前記放電空間で発生するプラズマ反応によって前記有害な物質を消失し,前記放電空間の前記出口から浄化されたガスを回収することができる排気ガス浄化装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0021】
このプラズマ反応器は,上記のように,柵状電極における対向する柵の方向が互いに異なって交差しているので,柵状電極における多数の柵の交差領域が柵同士が最も近接する最短距離の位置となり,電極間の最短距離でまずプラズマ放電が発生し,柵の交差領域で確実に安定してプラズマ放電が発生することになり,放電状態が放電空間に進展していくことになる。また,導電性電極が多数の柵の簡潔な形状であるので,柵状電極の製作が簡素化し,柵が異なった方向に延びている柵状電極を交互に積層することによってプラズマ反応器が簡単に作製でき,製造コストが安価になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明によるプラズマ反応器を構成する柵が一方向に延びている柵状電極を示す平面図である。
【図2】この発明によるプラズマ反応器を構成する柵が他方向に延びている柵状電極を示す平面図である。
【図3】この発明によるプラズマ反応器を構成するプラズマ反応構造体の組立工程を示し,(A)は柵が一方向に延びている柵状電極と誘電体との組立工程を示し,(B)は柵が他方向に延びている柵状電極と誘電体との組立工程を示す斜視図である。
【図4】この発明によるプラズマ反応器を構成する一対の柵状電極と誘電体(図示せず)とから成るプラズマ反応構造体を示す平面図である。
【図5】この発明によるプラズマ反応器を構成するプラズマ反応構造体でプラズマ放電が発生する部位を示す説明図である。
【図6】この発明によるプラズマ反応器における柵状電極と一対の誘電体で覆われた一方の柵状電極とから成るプラズマ反応構造体を示す断面図である。
【図7】この発明によるプラズマ反応器における柵状電極が一対の誘電体でそれぞれ覆われたプラズマ反応構造体を示す断面図である。
【図8】図6に示すプラズマ反応構造体を複数重ねた状態を示す断面図である。
【図9】図7に示すプラズマ反応構造体を複数重ねた状態を示す断面図である。
【図10】この発明によるプラズマ反応器を構成する複数のプラズマ反応構造体を積層する組立工程を示す斜視図である。
【図11】この発明によるプラズマ反応器を容器に収容した状態を示し,オゾン発生装置又は排気ガス浄化装置に適用できる例を示す斜視図である。
【図12】この発明によるプラズマ反応器を排気ガス浄化装置に適用できる例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,図面を参照して,この発明によるプラズマ反応器の実施例を説明する。
このプラズマ反応器は,概して,互いに対向する2つの導電性電極1,2,及び導電性電極1,2間に挿入された誘電体3から構成されたプラズマ反応構造体5を有し,導電性電極1,2に電圧を印加することによりプラズマ反応を発生させることから構成されている。この発明によるプラズマ反応器は,特に,プラズマ反応構造体5を複数並列に配設し,導電性電極1,2が空間4を有する互いに隔置状態の複数の柵6と,該柵6を連繋する導電体7とから柵状電極1,2に形成され,対向する柵状電極1,2の柵6が延びる方向を互いに異ならせて対向する柵を交差させ,柵状電極1,2と誘電体3との対向間,又は柵状電極1,2を覆った誘電体3の対向間にガスGが通過でき且つガスGの入口8と出口9を備えた放電空間10を1層以上有していることに特徴を有している。
【0024】
このプラズマ反応器については,複数の柵状電極1,2に印加される電圧の波形は,交流,直流,パルス,任意波を用いることができる。このプラズマ反応器は,排気ガスや含酸素ガス等の処理ガスの性質に応じて,高圧電源の出力を制御し,放電による化学反応を制御することができる。また,プラズマ反応器20の全部または一部を電気炉や冷却装置中に設置し,プラズマ反応器の温度やプラズマ反応器に導入するガスGの温度を制御することもできる。
【0025】
また,このプラズマ反応器において,柵状電極1,2の柵6は,幅が0.1mm〜10mmであり,長さが1mm〜1000mmであり,厚さが0.001mm〜10mmであり,柵6間の距離即ち隔置空間4が0.5mm〜100mmの範囲にある形状に構成されている。
【0026】
また,このプラズマ反応器は,図10に示すように,柵状電極1,2の導電体7を枠状導電体7に形成し,枠状導電体7に柵6の両端が固定されており,対向する枠状導電体7間にスペーサ14を介在させて,対向する柵状電極1,2間に放電空間10が形成されているものである。また,柵状電極1,2の間に挿入された誘電体3は,図6に示すように,一層設けるか,又は,図8に示すように2層設けることができる。このプラズマ反応器では,柵状電極1,2における柵6が枠状導電体7に等間隔に延びるように形成することが,プラズマ放電を放電空間10で所定の等間隔,即ち,一定間隔で同様に発生させることができ,好ましいものである。
【0027】
このプラズマ反応器において,誘電体3は,金属酸化物,プラスチック,ゴム,及びガラスから選択された1種以上の材料から板状,円筒状,又は球状に形成されている。また,誘電体3の厚さが0.1mm〜10mmの範囲内である。また,柵状電極1,2は,電圧を印加できるリード線11が結線され,電気通過できる鉄,銅,ステンレス,亜鉛,アルミニウム,チタン等の金属,インジウム錫酸化物,酸化亜鉛等の金属酸化物,導電性プラスチックで形成されている。
【0028】
また,このプラズマ反応器について,放電空間10に露出する誘電体3及び/又は柵状電極1,2の表面には,ガスGとの化学反応を促進する触媒12を担持させることが好ましいものである。
【0029】
また,このプラズマ反応器は,放電空間10の入口8から供給するガスGとして含酸素ガスGを使用し,放電空間10で発生するプラズマ反応によってオゾンガスを生成し,放電空間10の出口9からオゾンガスを回収することができるオゾン発生装置に適用することができる。
【0030】
或いは,このプラズマ反応器は,放電空間10の入口8から供給するガスGとしてエンジン等から排出される粒子状物質,窒素酸化物,有機化合物,硫黄酸化物の有害な物質を含有する排気ガスを使用し,放電空間10で発生するプラズマ反応によって有害な物質を反応焼却除去し,放電空間10の出口9から浄化されたガスを回収することができる排気ガス浄化装置に適用することができる。また,このプラズマ反応器を排気ガス浄化装置に適用した場合には,プラズマ反応器20の後方に,図示していないが,触媒層や吸着層を設けて,化学反応を促進することができる。また,プラズマ反応器20中の放電空間10に,又は放電空間10の後方に,更に他のガスや液体,固体粉末を導入し,化学反応を促進させることができる。更に,ディーゼルエンジン15の回転数,排気温度,圧力等を計測して得た計測値に相当する電気信号等の情報に応答して高圧電源の出力電圧と周波数を制御することができる。
【0031】
次に,このプラズマ反応器について,具体的に説明する。図1及び図2には,ステンレス製の柵状電極1,2の平らな板状の形状例が示されている。図3及び図4には,対になる柵状電極1,2と,平らな板状の形状のアルミナ製の誘電体3とからなる基本構造であるプラズマ反応構造体5が示されており,図6〜図9には,プラズマ反応構造体5の積層した場合の構造例が示されている。柵状電極1,2における柵6は,横軸方向(X方向)との間の傾斜角度がそれぞれ45°と135°に傾斜しているが,この傾斜角度に限るものではない。
【0032】
図6には,2つの柵状電極1,2と一対の誘電体3からなる基本構造であるプラズマ反応構造体5Aが示されており,図6に示すように,柵状電極1は,両側の誘電体3の表面に接しているが,柵状電極2は,誘電体3の表面との間に空間ができるように設置され,柵状電極1と接している誘電体3の下に放電空間10を形成して柵状電極2が設置されている。2つの柵状電極1,2の柵6の傾斜角度が互いに逆向きに延びて異なることによって,誘電体3の両側の柵6が互いに交差することになる。柵状電極1,2の間にリード線11を通じて電圧を印加すると,柵状電極1と接している誘電体3の表面と柵状電極2との間に形成されている放電空間10に存在するプラズマガスにプラズマ放電を発生して化学反応が起きることになる。図8には,図6に示すプラズマ反応構造体5Aを多数積層した状態が示されている。
【0033】
また,図7には,一対の柵状電極1,2と二対の誘電体3からなる基本構造であるプラズマ反応構造体5Bが示されており,中間部に位置する誘電体3間に放電空間10が形成されている。2つの柵状電極1,2の柵6の傾斜角度が互いに逆向きに延びて異なることによって,誘電体3の両側の柵6が互いに交差することになる。図9には,図7に示すプラズマ反応構造体5Bを多数積層した状態が示されている。
【0034】
図5には,プラズマ反応構造体5A,5Bの間に電圧を印加した場合に,放電空間10において柵状電極1,2の隔置状態の交差領域25(図4参照)で放電が発生した放電箇所26と,放電していない非放電箇所27とを示している。放電箇所26を検証してみると,対向した柵状電極1,2の柵6が交差した箇所に一致していることが分った。即ち,柵6が交差した領域は,柵6が均等に隔置して連繋導電体即ち枠状導電体7に固定されている場合であって,放電箇所26と放電していない非放電箇所27が均一に等間隔に分布することになることが確認できた。また,放電で生成した活性種が放電箇所26にある放電空間10で化学反応に寄与するが,それらの活性種が放電をしていない非放電箇所27に進展即ち拡散して更にプラズマが化学反応に寄与することになり,言い換えれば,放電によって生成した活性種が基になって放電空間10全領域でプラズマ反応が発生することに有効に寄与できるものである。
【0035】
次に,図3を参照して,このプラズマ反応器を組み立てる工程について説明する。
図3には,このプラズマ反応器を柵状電極1,2と誘電体3との組立工程を示しており,(A)では誘電体3上に設置された柵状電極1と誘電体3,及び(B)では誘電体3上に設置された柵状電極2と誘電体3とを,誘電体3の外周に付着された接着剤24により接着する工程が示されている。また,図10には,誘電体3で挟まれた柵状電極1,2から成るプラズマ反応構造体5Bの間に,スペーサ14を挿入し,これらを順次に積層する。これによって,プラズマ反応構造体5Bの間には,スペーサ14によって放電空間10が形成される。
【0036】
次に,図11には,多数のプラズマ反応構造体5を組み込んだオゾン発生装置或いは排気ガス浄化装置に適用できるプラズマ反応器20が示されている。図10に示すように,プラズマ反応器20を作製する工程は,プラズマ反応構造体5Bとスペーサ14とを順次に積層し,これをステンレス製の容器13内にセットする。ステンレス製容器13は,入口8と出口9を備えている。ガス,液体及び/又は固体を含むガスGが入口8に導入され,スペーサ14で形成された放電空間10を通して,出口9から流出される。積層した柵状電極1,2を電極連結線21で連結した後に,外部高圧電源をリード線22で接続する。リード線22とステンレス製の容器13との間は,絶縁管23で絶縁されている。
【0037】
図12には,プラズマ反応器20を用いてディーゼルエンジン15から排出される粒子状物質(PM)の除去に応用した例が示されている。ディーゼルエンジン15からの排気ガスGは,排気管16を通して,プラズマ反応器20に導入される。プラズマ反応器20の中で放電によって発生する化学反応で,排気ガスG中に含まれるPMが反応して焼却除去される。PMが除去された排ガスGが排気管16から大気に排出される。プラズマ反応器20は,高圧電源17とリード線22で接続されている。高圧電源17から供給される電力によってプラズマ放電がプラズマ反応器20中の放電空間10で発生する。高圧電源17の出力は,制御ユニット18でディーゼルエンジン15の回転数,排気ガス温度と圧力に相当する電気信号を取り入れて制御される。高圧電源17へは,ディーゼルエンジン15に備えた発電機や外部電力とライン19で結線され駆動される。PM除去効果は,定められた方法で計測した。その結果,このプラズマ反応器20を用いれば,排気ガスG中のPMを除去することが可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明によるプラズマ反応器は,ディーゼルエンジン等の炭化水素系燃焼機関からの排気ガスに含まれる煤,黒煙や,環境中に浮遊する固体粒子状物質を酸化反応させたり燃焼させたりして消滅させるために適用したり,含酸素ガスを用いてオゾンを生成させるオゾン発生装置に適用したり,空気中の微粒子等の有害物質を反応させ焼却して除去する空気清浄器等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 柵状電極
2 柵状電極
3 誘電体
5,5A,5B プラズマ反応構造体
6 柵
7 枠状導電体
8 入口
9 出口
10 放電空間
11 リード線
12 触媒
13 容器
14 スペーサ
20 プラズマ反応器
25 対向した柵の交差領域
G ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する2つの導電性電極,及び前記導電性電極間に挿入された誘電体から構成されたプラズマ反応構造体を有し,前記導電性電極に電圧を印加することによりプラズマ反応を発生させることから成るプラズマ反応器において,
前記プラズマ反応構造体は複数並列に配設されており,前記導電性電極は互いに隔置状態の複数の柵と前記柵に連結して前記柵同士を連繋する導電体から柵状電極に形成され,対向する前記柵状電極の前記柵の方向は互いに異なって交差しており,前記柵状電極と前記誘電体との対向間又は前記柵状電極を覆った前記誘電体の対向間にガスが通過でき且つ前記ガスの入口と出口を備えた放電空間が1層以上設けられていることを特徴とするプラズマ反応器。
【請求項2】
前記柵状電極の前記柵は,幅が0.1mm〜10mm,長さが1mm〜1000mm,厚さが0.001mm〜10mmであり,前記柵間の距離が0.5mm〜100mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項3】
前記柵状電極における多数の前記柵は,それぞれ同一サイズで前記導電体に等間隔に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ反応器。
【請求項4】
前記柵状電極の前記導電体を枠状導電体に形成し,前記枠状導電体に前記柵の少なくとも一端が固定されており,対向する前記枠状導電体間にスペーサを介在させて対向する前記柵状電極間に前記放電空間が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項5】
前記柵状電極の間に挿入された前記誘電体は,一層以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項6】
前記誘電体は,金属酸化物,プラスチック,ゴム,及びガラスから選択された1種以上の材料から板状,円筒状,又は球状に形成されており,前記誘電体の厚さが0.1mm〜10mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項7】
前記柵状電極は,電圧を印加できるリード線が結線され,電気通過できる鉄,銅,ステンレス,亜鉛,アルミニウム,チタン等の金属,インジウム錫酸化物,酸化亜鉛等の金属酸化物,導電性プラスチックであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項8】
前記放電空間に接する前記誘電体及び/又は前記柵状電極の表面には,化学反応を促進する触媒が担持されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項9】
前記放電空間の前記入口から供給する前記ガスとして含酸素ガスを使用し,前記放電空間で発生するプラズマ反応によってオゾンガスを生成し,前記放電空間の前記出口から前記オゾンガスを回収することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項10】
前記放電空間の前記入口から供給する前記ガスとして粒子状物質,窒素酸化物,有機化合物,硫黄酸化物の有害な物質を含むガスを使用し,前記放電空間で発生するプラズマ反応によって前記有害な物質を除去し,前記放電空間の前記出口から浄化されたガスを回収することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項1】
互いに対向する2つの導電性電極,及び前記導電性電極間に挿入された誘電体から構成されたプラズマ反応構造体を有し,前記導電性電極に電圧を印加することによりプラズマ反応を発生させることから成るプラズマ反応器において,
前記プラズマ反応構造体は複数並列に配設されており,前記導電性電極は互いに隔置状態の複数の柵と前記柵に連結して前記柵同士を連繋する導電体から柵状電極に形成され,対向する前記柵状電極の前記柵の方向は互いに異なって交差しており,前記柵状電極と前記誘電体との対向間又は前記柵状電極を覆った前記誘電体の対向間にガスが通過でき且つ前記ガスの入口と出口を備えた放電空間が1層以上設けられていることを特徴とするプラズマ反応器。
【請求項2】
前記柵状電極の前記柵は,幅が0.1mm〜10mm,長さが1mm〜1000mm,厚さが0.001mm〜10mmであり,前記柵間の距離が0.5mm〜100mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項3】
前記柵状電極における多数の前記柵は,それぞれ同一サイズで前記導電体に等間隔に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ反応器。
【請求項4】
前記柵状電極の前記導電体を枠状導電体に形成し,前記枠状導電体に前記柵の少なくとも一端が固定されており,対向する前記枠状導電体間にスペーサを介在させて対向する前記柵状電極間に前記放電空間が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項5】
前記柵状電極の間に挿入された前記誘電体は,一層以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項6】
前記誘電体は,金属酸化物,プラスチック,ゴム,及びガラスから選択された1種以上の材料から板状,円筒状,又は球状に形成されており,前記誘電体の厚さが0.1mm〜10mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項7】
前記柵状電極は,電圧を印加できるリード線が結線され,電気通過できる鉄,銅,ステンレス,亜鉛,アルミニウム,チタン等の金属,インジウム錫酸化物,酸化亜鉛等の金属酸化物,導電性プラスチックであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項8】
前記放電空間に接する前記誘電体及び/又は前記柵状電極の表面には,化学反応を促進する触媒が担持されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項9】
前記放電空間の前記入口から供給する前記ガスとして含酸素ガスを使用し,前記放電空間で発生するプラズマ反応によってオゾンガスを生成し,前記放電空間の前記出口から前記オゾンガスを回収することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【請求項10】
前記放電空間の前記入口から供給する前記ガスとして粒子状物質,窒素酸化物,有機化合物,硫黄酸化物の有害な物質を含むガスを使用し,前記放電空間で発生するプラズマ反応によって前記有害な物質を除去し,前記放電空間の前記出口から浄化されたガスを回収することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ反応器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−11106(P2011−11106A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155015(P2009−155015)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(509185192)株式会社 ACR (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(509185192)株式会社 ACR (9)
【Fターム(参考)】
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