説明

プラズマ超臨界装置

【課題】金属、セラミックス、プラスチック、有機物等の物質を短時間で大量にナノ化できる超臨界装置を提供する。
【解決手段】圧力容器1の周囲に誘導コイル9、40を巻回し、この誘導コイル9、40に発振器17から135600Hzのプラズマ波を与えて圧力容器1内をプラズマ雰囲気とするとともに炭酸ガス供給ライン8の炭酸ガスを昇圧ポンプ7で200気圧以上にして炭酸ガスを超臨界領域として圧力容器1内に送り込み、これらの雰囲気内で処理すべき原材料m及びこの原材料mと協働する物質を処理し製造排出ライン34から取り出し、前記発振器17はコントローラによって発振タイミングがコントロールされ、前記圧力容器内1は温度コントロール装置2によって所定温度に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COガス、水、エタノール等の超臨界流体を使用して、種々の物質をナノレベルまで小さく粉砕し別に供給された他の物質と組み合わせて所望の物質を得るためのプラズマ超臨界装置である。
【背景技術】
【0002】
従来、COガスを用いて超臨界雰囲気内で植物繊維を常温溶液と混合させ、圧力容器内に発生させたプラズマ波によってポリマー化状態に重合するプラズマ重合反応装置が存在している。また、超臨界状態の二酸化炭素とリン脂質又は糖脂質の均一の混合流体中に。封入物質を含む水相を加えてリポソームを作る超臨界装置も従来存在している。
【特許文献1】特開平06−100349号
【特許文献2】PCT/JP01/08907
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1のプラズマ重合反応装置は、単に圧力容器内で植物繊維と常温溶液とを混合することが開示されているだけで、その構造が具体的に開示されておらず、しかも圧力容器内で他の物質と反応させるために必要な温度コントロールシステムおよびプラズマを発生させるタイミング等についても何ら考慮されていない。
【0004】
また、前記特許文献2に開示された超臨界装置では、リポソームを一時に少量しか製造できず、しかも1バッチを処理するのに1時間を要するので実用的でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明のプラズマ臨界装置は、超臨界状態となる流体が供給される圧力容器と、この圧力容器内をプラズマ状態にさせるプラズマ雰囲気発生装置と、この圧力容器内の温度を所定温度に維持するための温度コントロール装置と、プラズマを発生させるタイミングをコントロールするためのコントローラとからなる。
【0006】
また、前記温度コントロール装置は圧力容器内を加温する加温装置と圧力容器内を冷却する冷却装置とからなることが好ましい。
【0007】
更に、前記プラズマ雰囲気発生装置は、プラズマ波を発生するプラズマ波発振装置と、前記圧力容器の周囲に巻回され超臨界流体となる流体を供給するとともに圧力容器内に電界を発生する誘導コイルの作用をする誘導コイル管とからなり、この誘導コイル管は絶縁されていることが好ましい。
【0008】
更に、また、前記プラズマ雰囲気発生装置は、プラズマ波を発生するプラズマ波発振装置と、前記圧力容器内に設けられた電極とから構成されてもよい。
【0009】
更にまた、前記プラズマ超臨界装置は、リン脂質、ライスワックス等の界面活性特性を有してリポソームを形成する材料の供給装置と、前記リポソーム内に保持する物質を供給する供給装置とを有してもよい。
【0010】
更にまた、前記圧力容器内には撹拌羽根が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、前述のように構成されているので、短時間で大量の物質をナノ化でき、 しかも2以上の物質を化学反応させてリポソームのような複雑な化学構造を有する物質を短時間で大量に製造可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
二酸化炭素、水又はエタノール等の超臨界状態となる流体が供給されその圧力と温度に耐え得るような圧力容器(例えば、Cr50%とCu50%との合金)の周囲に前記流体をその流体を収納したボンベから圧力容器内に供給する。前記圧力容器の周囲のコイル状配管(誘導コイル管)は誘導コイルの役割を果たし,圧力容器内に電界を生ぜしめるとともに誘導コイル管内を通る二酸化炭素に振動を与え、この二酸化炭素は圧力容器内でも振動し、圧力容器内の物質を短時間でナノ化する。この圧力容器の外周には、更に温度コントロール装置が設けられ、圧力容器内の温度を正確にコントロールする。この温度コントロール装置は各処理工程において短時間で加熱したり冷却したりすることができる。前記誘導コイル管にはプラズマ波発振装置によってプラズマ波が加えられ、この誘導コイル管とプラズマ波発振装置がプラズマ雰囲気発生装置を構成し、このプラズマ波を加えるのは、特に処理物資をナノ化する時期に必要であり、そのためにプラズマ波を発生させるタイミングをコントロールするコントローラが設けられている。
【実施例1】
【0013】
図1において、本発明のプラズマ超臨界装置を含むプラズマ超臨界処理システムMは、円筒状の圧力容器1を有し、この圧力容器1の下端は底板1aで閉塞され、その上端はフランジ時1bと協働する開閉蓋1cで閉塞され、開閉蓋1cはフランジ1bに対してクランプ1dで密閉されている。前記圧力容器1は例えば300気圧、100℃に耐えられるようにCr50%、Cu50%からなる特殊金属で作られている。前記圧力容器1は用途によってその容積が定められ、例えばリポソームを作る場合にはその容積は1l〜10l程度とされる。
【0014】
前記圧力容器1の外周には圧力容器1内の温度をコントロールするための温度コントロール装置2が設けられ、この温度コントロール装置2は、面状ヒータ3とその周囲に設けられた水ジャケット4とからなる。前記圧力容器1の外壁中央部には温度計1が設けられ、この温度計1からの信号はコントローラ15に送られ、コントローラ15は前記面状ヒータ3と水ジャケット4とをコントロールする。前記圧力容器1内には、配管8介してボンベ5内に収納された液化COが供給され、ボンベ5内のCOは弁6を介してポンプ7に送られ、ここで昇圧されて超臨界状態の圧力とされる。前記配管8は圧力容器1の外周に巻回されて誘導コイル管9を形成し、誘導コイル管9内を通ったCOは配管Pを通って圧力容器1の上部からその内部に送られる。
【0015】
前記誘導コイル管9は電気絶縁状態で圧力容器1に巻回され、この誘導コイル管9には、高周波発振器(プラズマ波発振装置)17から発振されたプラズマ波形(135600Hz)が与えられ、前記発振器17に接続された端子19を介して前記誘導コイル管には135600Hzの周波数の電流が伝えられ、これにより誘導コイル管9内を通過しているCOを振動させる。これとともに円筒状の圧力容器1の周壁には磁界が与えられるとともに空胴の圧力容器1内には、周方向の電界が生じる。したがって、圧力容器1内の超臨界COは振動するとともに圧力容器1内に存在する物質が陰陽荷電粒子に解離してナノレベルまで微細化される。
【0016】
前記配管P及び配管8には、絶縁駒20及び21が設けられ、誘導コイル管9、発振器17及び配管8の圧力容器1に近接した近接配管8a(弁16を有する)とが配線Cで接続され、これらによって封鎖回路が形成される。そして、前記誘導コイル管9及びプラズマ波振動装置17等がプラズマ雰囲気発生装置を構成している。前記発振器17には、コントローラ18が設けられ、このコントローラは発振器の電圧、発振タイミングをコントロールして圧力容器1内をプラズマ状態の強弱及びプラズマ状態にするタイミングをコントロールする。前記圧力容器1の底部には、真空ポンプ10が開閉弁11を介して接続され、これにより圧力容器1内が真空状態に保たれる。更に、前記圧力容器1の底部には、製品排出管34が設けられ、この排出管34の下端部は、圧力容器1内で処理されたナノオーダーの粒子が含まれた製品が回収される容器12内に伸びている。
【0017】
前記圧力容器1の上側には、原材料供給ライン22が伸び、このライン22はポンプPと開閉弁25を備え、このラインを介して容器23内に収納された原材料mが圧力容器1内へ供給される。なお、原材料mは圧力容器1の上端のクランプ1dを外し蓋体1cを開放して圧力容器1内へ直接供給することもできる。また、前記圧力容器1の上側には、液体供給ライン26が接続され、このライン26は開閉弁32、ポンプP、開閉弁28及び第1液容器27を備えるとともに、開閉弁30及び第2液容器29を備えた分岐ライン60がポンプ31と開閉弁28の間から分岐している。更に、これらライン22、26に加えて、圧力容器1の上側には洗浄ライン33がその下部には洗浄排出ライン80が接続されている。
【0018】
次に作用について説明する。
【0019】
本プラズマ超臨界処理システムは、各種物質をナノ化できるとともに、特に図4に示すように、界面活性粒子70をナノオーダーのカプセル71(リポソーム)に形成し、そのリポソーム内に金属ポリフェリン等のカプセル内封入物質72を保持させることができる。この場合においては、前記容器23内の原材料mはリン脂質又はライスワックス等のリポソーム形成原料であり、前記第1液容器27内には、例えば金属ポリフェリンを溶解させたジクロロメタン液が収納される。前記第2液容器29内には、リポソームに収納され得る金属ポリフェリン以外の物質である水、導電性粒子等を溶融した溶液が収納さえている。
【0020】
先ず、圧力容器1内に洗浄ライン33から洗浄液(水、アルコール等)が送られて圧力容器1内が洗浄され、この洗浄液は前記洗浄排出ライン80を経て排出される。洗浄後、真空ポンプ10が動作して圧力容器1内が真空とされる。
【0021】
次いで、原材料供給ライン22から所定量の原材料mが供給され、この原材料mは温度コントロール装置2によって所定温度に過熱され圧力容器内で溶融される。更に、配管8が動作し、すなわち、開閉弁6、16が開くとともに昇圧ポンプ7が作動して、ボンベ5からのCOは200気圧程度に加圧され、このCOは誘導コイル9及び配管Pを通って圧力容器1の上側からその内に注入される。このときにはコントローラ18からの指令によって発振器17が作動し、誘導コイル管9がその中を通過するCOを振動させるとともに圧力容器内に周方向の電界を生ぜしめ撹拌作用をする。この際、発振が交流のため電界の向きが振動数に応じて反転するので撹拌作用がより良好となる。圧力容器1内が超臨界状態となった後に、例えば、金属ポリフェリン等をカプセル内に封入したい場合には開閉弁28、32を開くとともにポンプ31を動作せしめて第1液容器27内の金属ポリフェリンを含んだジククロメタン液を圧力容器1の圧力(例えば200〜250気圧)以上の圧力で所定量供給する。
【0022】
このように圧力容器1内にジククロメタン液が注入されると圧液容器1内の超臨界二酸化炭素と混合しこの雰囲気内で界面活性粒子は活発に移動し分散している。一定時間この状態を維持し、互いに混合しているジククロメタン液と二酸化炭素との界面張力との関係で界面活性粒子は集合し、反応が終了したら二酸化炭素は開閉弁82を開くことにより排出ライン81から排出される。このときの圧力容器1内の圧力変化も関係して界面活性粒子は図4に示すように、その中に金属ポリフェリン72を保持した状態のナノカプセルを作ることになる。次いで製品排出管34の開閉弁34を開くと、ジククロメタン液内にナノカプセルが混入している状態でジククロメタン液が容器12内に回収される。このナノカプセルは例えばプラスチックに極少量入れられて燃焼したときの燃焼ガスからの炭酸ガスの発生を抑えることが確認されている。
【0023】
なお、圧力容器1内をプラズマ雰囲気とすると、圧力容器内は発熱することとなるため、そのときには、温度コントロール装置2を操作させて温度が一定以上にならないように抑えて界面活性粒子及び金属ポリフェリンが破壊されないようにコントロールする。すなわち、温度コントロール装置2は、原材料mを所定温度にして溶融するとともに必要以上に温度を上昇せしめてナノカプセルを作る界面活性粒子及びその中に保持される物質を破壊したりすることのないようにするものである。また、更に、プラズマ雰囲気は、処理全工程で必ずしも必要でない。原材料をナノオーダーまで微細化するときに短時動作せしめ、カプセル内に保持される物質が供給されて界面活性流体がカプセルを作るときには界面活性粒子の集合動作を妨害しないようにプラズマ雰囲気を消す必要があるのでこのときコントローラ18は発振器17の作動を停止せしめる。前記圧力容器1内の雰囲気すなわち、プラズマ臨界状態の雰囲気は目視(画像)で把握できるので、圧力容器1に形成された目視窓90に取り付けられたCCDカメラ91からの画像を解析してその信号がコントローラ18に送られ発振器17がコントロールされる。
【0024】
更に、また、カプセル内に金属ポリフィンの代わりに水等の第2溶融液を注入したい場合には前記液体供給ライン26の弁28を閉じ第1液容器27内の溶液の供給を停止するとともに分岐ライン60を開放させて第2液容器29内の溶液を供給すればよい。
【0025】
また、前記処理工程においては、第1、第2液は原材料mを溶融させてCO2を供給してから圧力容器1内に送られたが、物質によっては原材料mを供給すると同時に供給し、その後二酸化炭素を供給してプラズマ雰囲気とすることもできる。
【0026】
本処理システムにおいては、超臨界二酸化炭素内でのナノカプセルの作製について詳しく説明しているが、超臨界液体(二酸化炭素、水、エタノール)とプラズマ波との組合せは、単純に種々の物質(金属、導電性ポリマー等)を短時間で大量にナノ化するのに使用可能であり、この場合も温度コントロール装置2及びコントローラ18が処理物質に合わせてセットされる。
【実施例2】
【0027】
図1の実施例1においては、誘導コイル管9は二酸化炭素をとおすパイプの作用も有しているが、図2に示すように、二酸化炭素の供給ライン8を直接圧力容器1に接続し(コイル状には圧力容器1の外周に巻回させない)、単純な誘導コイル40とし、この誘導コイル40に端子41を介して発振回路17に接続し、回路19によってプラズマ波発振回路を形成してもよい。
【実施例3】
【0028】
前記圧力容器1には、図3に示すように、モータ51で回転する回転羽根50を取り付けてプラズマ雰囲気内での撹拌不足を補足することが可能であり、また、プラズマ雰囲気はガラス又はセラミックで出来た内筒52外に断面半円形の電極板53、53を設け、この電極板53、53に電圧100〜500V、周波数135600Hzのパルス電流を与えることで圧力容器1内をプラズマ雰囲気とすることも可能である。なお、前記電極板53、53は基板54に立設され、この電極板53、53には配線55、56によって図示しない発振器に接続される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のプラズマ超臨界装置は、金属、セラミック、有機物等をナノオーダーの粒子に短時間で大量に微粒化でき、新しいプラスチック材料等の新材料製造に適用でき、特に医療分野でのリポソームも効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のプラズマ超臨界装置を含む超臨界処理システムの概略構成図である。
【図2】本発明のプラズマ発生回路の他の実施例を示す図である。
【図3】本発明のプラズマ発生回路の更に他の実施例を示す図である。
【図4】本発明の超臨界装置によって製造される一例であるナノカプセルの構成図である。
【符号の説明】
【0031】
1…圧力容器
2…温度コントロール装置
5…COボンベ
7…昇圧ポンプ
8…CO供給ライン
9…誘導コイル管
17…発振器
18…コントローラ
22…原材料供給ライン
26…液体供給ライン
34…製品排出管
40…誘導コイル
52…内筒
53…電極
70…界面活性粒子
71…ナノカプセル
72…金属ポリフェリン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界状態となる流体が供給される圧力容器と、この圧力容器内をプラズマ状態にさせるプラズマ雰囲気発生装置と、この圧力容器内の温度を所定温度に維持するための温度コントロール装置と、プラズマを発生させるタイミングをコントロールするためのコントローラとからなるプラズマ超臨界装置。
【請求項2】
前記温度コントロール装置は圧力容器内を加温する加温装置と圧力容器内を冷却する冷却装置とからなる請求項1記載のプラズマ超臨界装置。
【請求項3】
前記プラズマ雰囲気発生装置は、プラズマ波を発生するプラズマ波発振装置と、前記圧力容器の周囲に巻回され超臨界流体となる流体を供給するとともに圧力容器内に電界を発生する誘導コイルの作用をする誘導コイル管とからなり、この誘導コイル管は絶縁されている請求項1又は2記載のプラズマ超臨界装置。
【請求項4】
前記プラズマ雰囲気発生装置は、プラズマ波を発生するプラズマ波発振装置と、前記圧力容器内に設けられた電極とからなる請求項1又は2記載のプラズマ超臨界装置。
【請求項5】
前記プラズマ超臨界装置は、リン脂質、ライスワックス等の界面活性特性を有してリポソームを形成する材料の供給装置と、前記リポソーム内に保持する物質を供給する供給装置とを有する請求項1乃至4記載のプラズマ超臨界装置。
【請求項6】
前記圧力容器内には撹拌羽根が設けられている請求項1乃至5記載のプラズマ超臨界装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−214004(P2007−214004A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33360(P2006−33360)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(501370945)株式会社日本ボロン (33)
【出願人】(503241261)日本ビスマス株式会社 (1)
【出願人】(591009705)株式会社 東京ウエルズ (47)
【Fターム(参考)】