説明

プリント配線基板およびその製造方法

【課題】 電源−グランド層共振を抑えることができ、かつ設計の自由度が高いプリント配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 電源層13、15とグランド層12、14、16とを有するプリント配線基板において、電源層とグランド層との間に、磁性金属材料を含む結合遮蔽層22が設けられているプリント配線基板10;および、結合遮蔽層22が樹脂フィルム21の表面に形成された結合遮蔽フィルム20を、電源層およびグランド層となる複数の金属箔の間に配置する工程を有するプリント配線基板10の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器には小型化、軽量化が求められており、プリント配線基板の多層化が進んでいる。
しかし、多層化されたプリント配線基板においては、電源層およびグランド層を構成する銅箔がプリント配線基板のほぼ全面にわたって拡がり、これら銅箔が、周端部が開放した平行平板構造をとるため、電源層とグランド層との間で共振(電源−グランド層共振)が起こり、基板の周端部から電磁波ノイズが発生する。
【0003】
電源−グランド層共振が抑えられたプリント配線基板としては、第1のグランド層に形成されるグランド領域と、第2のグランド層に形成されるグランド領域との間を電気的に接続する層間接続部材と、第1のグランド層および第2のグランド層の少なくとも一方に配線される電源線とが設けられたものが提案されている(特許文献1)。
しかし、該プリント配線基板においては、層間接続部材を設ける必要がある、各グランド層と電源線との位置関係に制限がある等のため、設計の自由度が著しく低くいという問題がある。
【0004】
特許文献2には、プリント配線基板の両面に、板状磁性粒子と板状非磁性粒子と結合剤を配したソルダレジスト層を形成したものが提案されている。
しかし、該プリント配線基板におけるソルダレジスト層は、信号配線から発生してしまった電磁波ノイズがプリント配線基板の外部に漏れることを防ぐものであって、電源−グランド層共振を抑えるものではない。よって、信号配線から発生した電磁波ノイズ、または電源−グランド層共振によって発生した電磁波ノイズによって、プリント配線基板自身(例えば、実装された電子部品、他の信号配線等)が影響を受けてしまう。
【特許文献1】特開2003−163467号公報
【特許文献2】特開平9−283939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の目的は、電源−グランド層共振を抑えることができ、かつ設計の自由度が高いプリント配線基板、および電源−グランド層共振を抑える対策を容易に行うことができるプリント配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリント配線基板は、電源層とグランド層とを有するプリント配線基板において、電源層とグランド層との間に、磁性金属材料を含む結合遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
前記電源層とグランド層との間に、さらに樹脂フィルムからなる層が設けられ、
前記結合遮蔽層が、磁性金属材料を前記樹脂フィルムの表面に、反応性ガス雰囲気下でスパッタリング法にて物理的に蒸着させて形成された層であることが好ましい。
前記磁性金属材料は、ニッケルまたはニッケルを含む合金であることが好ましい。
【0007】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、磁性金属材料を含む結合遮蔽層が樹脂フィルムの表面に形成された結合遮蔽フィルムを、電源層およびグランド層となる複数の金属箔の間に配置する工程を有することを特徴とする。
本発明のプリント配線基板の製造方法においては、前記結合遮蔽フィルムの一部に、結合遮蔽層がない非結合遮蔽部をあらかじめ形成しておいてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプリント配線基板は、電源−グランド層共振を抑えることができ、かつ設計の自由度が高い。
本発明のプリント配線基板の製造方法によれば、電源−グランド層共振を抑える対策を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<プリント配線基板>
図1は、本発明のプリント配線基板の一例を示す概略断面図である。プリント配線基板10は、パターン加工を施した信号配線層11と、グランド層12と、パターン加工を施した電源層13と、グランド層14と、パターン加工を施した電源層15と、グランド層16とが、絶縁層17を介して積層されたものであり、グランド層12と電源層13との間、電源層13とグランド層14との間、グランド層14と電源層15との間、電源層15とグランド層16との間には、結合遮蔽フィルム20からなる層が設けられている。
また、電源層13、15と、信号配線層11とを電気的に接続するスルーホール18が形成されている。
【0010】
信号配線層11、グランド層12、14、16、電源層13、15は、銅箔等の金属箔からなる層であり、導電性を有する層である。
絶縁層17は、ガラス布等の補強材にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させた層である。
【0011】
結合遮蔽フィルム20は、樹脂フィルム21と、該樹脂フィルム21の表面に形成された結合遮蔽層22とを有するものである。
結合遮蔽層22は、磁性金属材料を含む層であり、例えば、樹脂フィルム21上に、独立した複数のナノメーターレベルの磁性金属材料のマイクロクラスターと、これらの間に形成される磁性金属材料の存在しない欠陥とから構成される層である。
【0012】
図2は、結合遮蔽フィルム20を、結合遮蔽層22(上面)側から見た模式図であり、図3は、結合遮蔽フィルム20の斜視模式図である。マイクロクラスター23は、樹脂フィルム21上に磁性金属材料が非常に薄く物理的に蒸着されて形成されたものであり、充分な金属薄膜になっていない。マイクロクラスター23が互いに接触して集団化しているものの、集団化したマイクロクラスター23の間には、磁性金属材料の存在しない欠陥が多く存在しており、集団化したマイクロクラスター23はそれぞれ独立している。
【0013】
ここで、磁性金属材料のマイクロクラスターとは、数十〜数百個の磁性金属原子が集合して形成される集団である。該マイクロクラスターの凝集が進むと、超微粒子、微粒子、金属薄膜となるが、マイクロクラスターは、超微粒子になる手前のものであり、超微粒子、微粒子、金属薄膜とは明確に区別されるものである。
【0014】
図4は、樹脂フィルム21上に形成された結合遮蔽層22の表面を観察したフィールドエミッション走査電子顕微鏡像である。図5は、結合遮蔽層22の膜厚方向断面の高分解能透過型電子顕微鏡像である。また、図6は、結合遮蔽層22の電子線回折像である。図4〜図6から、非常に小さな結晶として数Å間隔の磁性金属原子が配列された結晶格子(マイクロクラスター)、および非常に小さい範囲で磁性金属材料が存在しない欠陥が認められる。すなわち、マイクロクラスター同士の間隔が空いた状態であり、明確な粒界は認められない。各マイクロクラスターの結晶方位は、無秩序であると認められ、磁性金属材料からなる均質な金属薄膜、超微粒子、微粒子等には成長していない。
【0015】
結合遮蔽層22の厚さは、5〜200nmが好ましい。結合遮蔽層22の厚さを5nm以上とすることにより、充分な結合遮蔽効果を発揮させることができる。一方、結合遮蔽層22の厚さが200nmを超えると、マイクロクラスター23が凝集し、磁性金属材料からなる均質な金属薄膜が形成され、バルクの磁性金属材料に戻ってしまい、金属反射が強まり、結合遮蔽効果も小さくなり、実効的ではない。ここで、結合遮蔽層22の厚さとは、欠陥を含めた結合遮蔽層22全体の平均厚さである。
【0016】
本発明においては、結合遮蔽層22が、単なる金属薄膜層として存在するのではなく、マイクロクラスター23が集団化した状態で存在することが重要である。このような状態は、結合遮蔽層22の表面抵抗の実測値から換算した体積抵抗率R1(Ω・cm)と磁性金属材料の体積抵抗率R0(Ω・cm)(文献値)との関係から確認することができる。すなわち、体積抵抗率R1と体積抵抗率R0とが、0.5≦logR1−logR0≦3を満足する場合に、磁性金属材料のマイクロクラスター23が、非常に近接した状態で、かつ個々が独立して存在することになり、優れた結合遮蔽効果が発揮される。
【0017】
樹脂フィルム21は、プリント配線基板10の製造の際の加熱に耐え、かつプリント配線基板10に要求される耐熱性を有することが好ましい。また、誘電率、誘電正接等、プリント配線基板10の設計に必要とされる特性値が既知であるのものが好ましい。よって、樹脂フィルム21の材質としては、ポリイミド;ガラス布等の補強材に、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニレンエーテル等の樹脂を含浸させた強化樹脂等が好ましい。
樹脂フィルム21の厚さは、2〜125μmが好ましい。樹脂フィルム21が厚すぎると、プリント配線基板10が厚くなる。樹脂フィルム21が薄すぎると、結合遮蔽フィルム20を取り扱いにくくなる。
【0018】
結合遮蔽フィルム20は、磁性金属材料を樹脂フィルム21の表面に物理的に蒸着させ、樹脂フィルム21の表面に結合遮蔽層22を形成することによって製造される。
結合遮蔽層22の形成方法としては、磁性金属材料を何らかの方法で気化させ、近傍に置いた樹脂フィルム21の表面上に堆積させる物理蒸着法(PVD)を適用することができる。
【0019】
物理蒸着法を磁性金属材料の気化方法で分類すると、蒸発系とスパッタ系に分けられる。蒸発系としては、EB蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。スパッタ系としては、マグネトロンスパッタリング法、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法等のスパッタリング法が挙げられる。これらのうち、スパッタリング法が、結合遮蔽層22の厚さ制御、樹脂フィルム21の熱ダメージの低さの点から好ましい。
【0020】
磁性金属材料としては、鉄、ニッケル、コバルト、これらを含む合金が挙げられる。合金としては、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al、Fe−Al−Si等が挙げられる。これらの磁性金属材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせて用いてもよい。ニッケルまたはニッケルを含む合金は、酸化に対して抵抗力があるため、好ましい。
【0021】
磁性金属材料の蒸着質量は、膜厚換算で5〜200nmが好ましい。5nm以上とすることでノイズ抑制のための充分な質量を確保することができ、200nm以下とすることで、マイクロクラスター状態を維持し、ノイズ抑制効果を得ることが可能となる。蒸着質量は、ガラス、シリコン等の硬質基体上に同条件で磁性金属材料を蒸着し、堆積した厚さを測定し、平均することによって求められる。
【0022】
磁性金属材料の蒸着質量が多くなると、マイクロクラスター状態が得られにくくなり、具体的には20nm程度以上では、通常のスパッタリング法では単なる金属薄膜層に成長しやすい傾向がある。そこで、磁性金属材料の蒸着時に、通常のアルゴンガスに加え、窒素、酸素、硫化水素、シラン等の反応性ガスを導入することで、マイクロクラスター状態を安定化させることが好ましい。特に、窒素ガスを使用することで、磁性金属材料が堆積する際の巨大結晶化が阻害され、極めて安定化されたマイクロクラスター状態とすることができる。
【0023】
以上説明したプリント配線基板10にあっては、電源層とグランド層との間に磁性金属材料を含む結合遮蔽層22が設けられているため、電源層とグランド層との間の電磁気的な結合を遮蔽し、電源−グランド層共振を抑えることができる。その結果、基板の周端部から電磁波ノイズが発生することを抑えることができる。また、電源層とグランド層との間に磁性金属材料を含む結合遮蔽層22を設けるだけでよいため、層間接続部材を設ける必要がなく、電源層とグランド層との位置関係にも制限がない。よって、プリント配線基板10の設計の自由度が高い。
【0024】
なお、本発明のプリント配線基板は、図示例のプリント配線基板10には限定はされず、電源層とグランド層とを有するプリント配線基板において、電源層とグランド層との間に、磁性金属材料を含む結合遮蔽層が設けられているものであれば、どのような形態のものであってもよい。
また、電源層またはグランド層と、信号配線層との間に結合遮蔽層を設けてもよいが、信号配線層の近傍に結合遮蔽層を設けた場合、信号電流が減衰し、信号伝播に悪影響を及ぼすおそれがあるため、信号配線層の近傍に結合遮蔽層を設けないことが好ましい。
【0025】
<プリント配線基板の製造方法>
プリント配線基板10は、結合遮蔽フィルム20を、絶縁層17となるプリプレグを介して、電源層13、15およびグランド層12、14、16となる複数の金属箔の間に配置し、さらに信号配線層11となる金属箔を重ね、これらを加熱プレスすることによって製造される。
【0026】
具体的は、(i)金属箔、プリプレグ、結合遮蔽フィルム20、プリプレグ、金属箔、プリプレグ、結合遮蔽フィルム20、プリプレグ、金属箔、プリプレグ、結合遮蔽フィルム20、プリプレグ、金属箔、プリプレグ、結合遮蔽フィルム20、プリプレグ、金属箔、プリプレグ、金属箔の順で積層し、これらを一括して加熱プレスする方法;(ii)金属箔、プリプレグ、結合遮蔽フィルム20の順で積層し、これらを加熱プレスした後、さらにこの上に、プリプレグ、金属箔の順で積層し、加熱プレスする工程と、さらにこの上にプリプレグ、結合遮蔽フィルム20の順で積層し、加熱プレスする工程とを順次繰り返す方法、等によって製造される。
【0027】
スルーホール18またはビアホール(図示略)は、(a)上記(i)の方法で得られたプリント配線基板10、または上記(ii)の方法の途中で得られた積層体に、ドリル等で穴を開け、穴の内壁に銅メッキ等を施す方法;(b)金属箔、プリプレグ、結合遮蔽フィルム20に、あらかじめ、スルーホール18またはビアホールに対応する穴を形成しておき、これらを積層した後に穴の内壁に銅メッキ等を施す方法、等によって形成される。穴の大きさは、スルーホール18またはビアホールと、グランド層および結合遮蔽フィルム20との間の絶縁を確保するために、最終的に形成されるスルーホール18またはビアホールよりも大きくすることが好ましい。
【0028】
金属箔を信号配線、電源配線等のパターンにあらかじめ加工する、または、金属箔にスルーホール、ビアホール等に対応した穴をあらかじめ形成してもよく;エッチング等によって、上記(ii)の方法の途中で得られた積層体の表面の金属箔を、信号配線、電源配線等のパターンに加工する、または、該金属箔にスルーホール、ビアホール等に対応した穴を形成してもよい。
【0029】
また、結合遮蔽フィルム20には、結合遮蔽層がない非結合遮蔽部をあらかじめ形成しておいてもよい。非結合遮蔽部は、スルーホールまたはビアホールに対応した位置、信号配線層11の信号配線に対応した位置等に形成することが好ましい。信号配線層11の信号配線の近傍に結合遮蔽層22が配置された場合、信号電流が減衰し、信号伝播に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0030】
非結合遮蔽部の形成方法としては、結合遮蔽層22にレーザーをあて、結合遮蔽層22をアブレーションさせ、除去する方法;結合遮蔽層22を残す部分にマスキングをし、マグキングされた部分以外の結合遮蔽層22をエッチングによって除去する方法;非結合遮蔽部に対応した樹脂フィルム21の表面にマスキングをし、マグキングされた部分以外に磁性金属材料を物理的に蒸着させる方法;結合遮蔽フィルム20に、抜き型による打ち抜き、レーザー加工、パンチングプレス等によって穴を開けて樹脂フィルム21ごと結合遮蔽層22を取り除く方法、等が挙げられる。
【0031】
以上説明したプリント配線基板10の製造方法にあっては、結合遮蔽フィルム20を、絶縁層17となるプリプレグを介して、電源層およびグランド層となる複数の金属箔の間に配置しているため、従来のプリント配線基板と同じように、各層の材料を積み重ねて加熱するだけでプリント配線基板10を製造することができる。よって、電源−グランド層共振を抑える対策を容易に行うことができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示す。
〔実施例1〕
樹脂フィルム21である厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン」)の片面に、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法により、以下の条件で、磁性金属材料であるニッケルを物理的に蒸着させて、結合遮蔽層22を形成し、結合遮蔽フィルム20を得た。
(条件)樹脂フィルム21の温度:常温(25℃)、ニッケルの蒸着質量(膜厚換算):25nm、反応ガス雰囲気:アルゴンガス60sccmおよび窒素ガス20sccm、電力:2kW。
【0033】
結合遮蔽フィルム20について、結合遮蔽層22の表面抵抗を、ダイアインスツルメンツ製、MCP−T600により、測定電圧10Vで直流4端子法で測定し、測定点数5点の平均値を求め、さらにこの平均値値と結合遮蔽層22の厚さとから体積抵抗率R1(Ω・cm)を算出した。体積抵抗率R1は、4.8×10-4Ω・cmであった。ニッケルの体積抵抗率R0(文献値)は、7.24×10-6Ω・cmであり、logR1−logR0は1.82となり、0.5≦logR1−logR0≦3の関係を満足した。
【0034】
図1に示すようなプリント配線基板10を製造した。
信号配線層11となる銅箔をあらかじめ信号配線のパターンに加工し、電源層13、15となる銅箔をあらかじめ電源配線のパターンに加工し、グランド層12、14となる金属箔にスルーホール18に対応した1.2mm穴をあらかじめ形成した。
また、結合遮蔽フィルム20には、炭酸ガスレーザー加工機を用いて、スルーホール18に対応した1.2mm穴をあらかじめ形成した。
これら銅箔の間に、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させた厚さ50μmのプリプレグを介して結合遮蔽フィルム20を挟み、これらを加熱プレスしてプリント配線基板10を得た。
【0035】
ついで、ドリルを用いてプリント配線基板10に直径1.0mmの穴を開け、穴の内壁に銅メッキを施し、スルーホール18を形成した。
ついで、信号配線層11上に、電源、信号発生用IC、およびアンプを、ハンダ付けによって実装し、電子部品が実装されたプリント配線基板10を得た。
【0036】
〔比較例1〕
結合遮蔽フィルム20を設けない以外は、実施例1と同様にして、電子部品が実装されたプリント配線基板を得た。
【0037】
〔評価〕
小型電波暗室内にて、プリント配線基板に0.1〜3GHzの高周波電流を流し、プリント配線基板の周端部から放出される電磁波を測定した。アンテナとしてログペリオディックアンテナを用い、測定器としてアジレントテクノロジー社製、EMCアナライザ「HP8594EM」を用い、3m法で測定を行った。
1GHzの周波数において、比較例1のプリント配線基板では51.16dBμVの電磁波が測定されたのに対し、実施例1の基板ではプリント配線基板では36.23dBμVにとどまり、約15dBの減衰効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のプリント配線基板は、電源−グランド層共振による電磁波ノイズの発生が問題となるような、0.3GHz以上の高周波電流が流れるプリント配線基板として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のプリント配線基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】結合遮蔽フィルムの上面模式図である。
【図3】結合遮蔽フィルムの斜視模式図である。
【図4】結合遮蔽層の表面のフィールドエミッション走査電子顕微鏡像である。
【図5】結合遮蔽層の断面の高分解能透過型電子顕微鏡像である。
【図6】結合遮蔽層の電子線回折像である。
【符号の説明】
【0040】
10 プリント配線基板
11 信号配線層
12 グランド層
13 電源層
14 グランド層
15 電源層
16 グランド層
17 絶縁層
18 スルーホール
20 結合遮蔽フィルム
21 樹脂フィルム
22 結合遮蔽層
23 マイクロクラスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源層とグランド層とを有するプリント配線基板において、
電源層とグランド層との間に、磁性金属材料を含む結合遮蔽層が設けられていることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
前記電源層とグランド層との間に、さらに樹脂フィルムからなる層が設けられ、
前記結合遮蔽層が、磁性金属材料を前記樹脂フィルムの表面に、反応性ガス雰囲気下でスパッタリング法にて物理的に蒸着させて形成された層であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線基板。
【請求項3】
前記磁性金属材料が、ニッケルまたはニッケルを含む合金であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプリント配線基板。
【請求項4】
磁性金属材料を含む結合遮蔽層が樹脂フィルムの表面に形成された結合遮蔽フィルムを、電源層およびグランド層となる複数の金属箔の間に配置する工程を有することを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記結合遮蔽フィルムの一部に、結合遮蔽層がない非結合遮蔽部をあらかじめ形成しておくことを特徴とする請求項4記載のプリント配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−294967(P2006−294967A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115520(P2005−115520)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】