説明

プリント配線基板およびその製造方法

【解決手段】感光性樹脂層を配置して選択的に導電性金属層を析出させて形成されたプリント配線基板であり、下記条件のいずれか一つの条件を満足する。すべての配線においてピッチ幅が(1)50μm以下;(2)50μm超100μm以下;(3)50μm以下と50μm超100μm以下の配線が混在し、ピッチ幅50μm超100μm以下の配線の幅a、ダミー配線の幅a'、ダミー配線無視時の隣接配線との距離b、配線と隣接するダミー配線との距離b'、ダミー配線無視時のピッチ幅Pとしたとき(A)aμm≧Pμm×0.5、bμm≦Pμm×0.5、25μm<aμm≦95μm;(B)ダミー配線を有し、a+a'μm≧Pμm×0.5、b'μm≦P×0.25、5μm≦aμm≦85μm、5μm≦a'μm≦85μmのいずれかを満足する。
【効果】セミアディティブ法を採用しているにも拘わらず、導電性金属析出厚の均質な配線パターンが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基板の表面に導電性金属層を介して導電性金属を電解析出して配線パターンを形成するプリント配線基板およびその製造方法に関する。さらに詳しくは本発明は、絶縁基板の表面に、Ni,Crなどを含む導電性金属層を有する導電性金属層付き絶縁基板(CCL)を用いて、この導電性金属層の表面にフォトレジストを用いて形成されたパターンをマスキング材として使用して選択的に導電性金属を電解析出させて配線パターンを形成したプリント配線基板であって、形成される配線パターンの線幅による導電性金属厚の変動幅の小さいプリント配線基板およびこのプリント配線基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を実装するためにプリント配線基板が使用されている。このようなプリント配線基板は、ポリイミドフィルムなどからなる絶縁フィルムと、この上に形成された銅などの導電性金属からなる配線パターンから形成されている。従来は、このようなプリント配線基板は、絶縁フィルムの表面に銅箔を配置し、この銅箔の表面にフォトレジスト層を形成し、このフォトレジスト層を露光・現像して所望のパターンを形成し、このパターンをマスキング材として、銅箔を選択的にエッチングして所望の配線パターンを形成していたが(サブトラクティブ法)、この方法では線幅を35μm以下にすることが極めて困難であり、最近の電子部品の高集積化に対応することが難しくなってきている。
【0003】
これに代わる方法として、近時、セミアディティブ法が着目されている。この方法は、絶縁基板の表面に導電性の基材金属層を形成し、この基材金属層の表面にフォトレジスト層を形成し、このフォトレジスト層に所望のパターンを形成し、こうして形成されたパターンから露出した基材金属層に導電性金属を電解析出させて配線パターンを形成しようとするものである。この方法によれば、線幅10μm程度の配線パターンも製造が可能であり、高密度化した電子部品の実装にも対応することができる。
【0004】
このようなセミアディティブ法を採用したプリント配線基板については種々の提案がなされている(例えば、特開2003-037137号公報、特開2003-258411号公報、特開2002-215059号公報)が、サブトラクティブ法により製造されたプリント配線基板と比較すると、安定性が低いという問題があることが判った。すなわち、本発明者は、このセミアディティブ法を採用して製造されたプリント配線基板の安定性の欠落について種々検討した結果、セミアディティブ法を採用して製造されたプリント配線基板には、配線幅やピッチ幅によって、析出する導電性金属の厚さにバラツキがあることが判った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-037137号公報
【特許文献2】特開2003-258411号公報
【特許文献3】特開2002-215059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、配線パターンの線幅やピッチによって電解析出する導電性金属層の厚さに差が生ずることがないプリント配線基板およびこのような均一性の高い配線厚さを有するプリント配線基板を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリント配線基板は、絶縁基板の表面に基材金属層を介して、基材金属層を含む導電性層の表面に所望の形状にパターンニングされた感光性樹脂層を配置して選択的に導電性金属層を析出させる工程を経て基材金属層及び導電性金属層からなる配線幅の異なる所望の形状の複数の配線のパターンが形成されてなり、
該プリント配線基板が下記の(1)〜(3)に記載の条件のいずれか一つの条件を満足するものであることを特徴としている。
【0008】
(1)すべての配線におけるピッチ幅が50μm以下の狭ピッチ幅である。
(2)すべての配線におけるピッチ幅が50μm超100μm以下である。
(3)上記プリント配線基板において、配線におけるピッチ幅が50μm以下の配線と、配線におけるピッチ幅が50μm超100μm以下の配線とが混在する場合であって、該プリント配線基板に形成されている配線幅のうち50μm超100μm以下の配線の配線幅をa、該プリント配線基板に形成されているダミー配線のダミー配線幅をa'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの隣接する配線との距離である配線ギャップ幅をb、該プリント配線基板に形成されている配線と隣接するダミー配線との距離であるギャップ幅をb'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの配線のピッチ幅をPとしたときに、
(A)aμm≧Pμm×0.5、bμm≦Pμm×0.5、25μm<aμm≦95μm;
(B)該プリント配線基板がダミー配線を有し、a+a'μm≧Pμm×0.5、b'≦Pμm×0.25、5μm≦aμm≦85μm、5μm≦a'μm≦85μm;
のいずれかを満足する。
【0009】
そして、本発明においては、プリント配線基板は、上記絶縁基板の表面に基材金属層を介して、基材金属層を含む導電性層の表面に所望の形状にパターンニングされた感光性樹脂層を配置して選択的に導電性金属層を析出させる工程を経て基材金属層及び導電性金属層からなる配線幅の異なる複数の配線のパターンが形成されてなり、
該プリント配線基板が
(3)上記プリント配線基板において、配線におけるピッチ幅が50μm以下の配線と、配線におけるピッチ幅が50μm超100μm以下の配線とが混在しており、該プリント配線基板に形成されている配線のうちピッチ幅が50μm超100μm以下の配線の配線幅をa、該プリント配線基板に形成されているダミー配線のダミー配線幅をa'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの隣接する配線との距離である配線ギャップ幅をb、該プリント配線基板に形成されている配線と隣接するダミー配線との距離であるギャップ幅をb'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの配線のピッチ幅をPとしたときに、
(A)aμm≧Pμm×0.5、bμm≦Pμm×0.5、25μm<aμm≦95μm;
(B)該プリント配線基板がダミー配線を有し、a+a'μm≧Pμm×0.5、b'μm≦P×0.25、5μm≦aμm≦85μm、5μm≦a'μm≦85μm
のいずれかを満足する関係を満足するものであることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のプリント配線基板においては、上記配線パターンの内で、ピッチ幅が、配線パターンの線幅とギャップ幅との合計からなり、ピッチ幅Pが、50μm<P≦100μmとなる配線パターンの間にダミー電極を配置して、該プリント配線基板を形成する配線パターンの導電性金属の厚さを8.5〜9.2μmの範囲内で均一化されてなるようにされているものであることが好ましい。
【0011】
すなわち、本発明のプリント配線基板においては、セミアディティブ法により形成される狭配線ピッチのプリント配線基板において、狭配線幅の配線パターンと、これよりも幅広の配線パターンが混在する場合に、形成される配線パターン幅の広狭に拘わらず、配線パターン厚さの均一なプリント配線基板を提供することができる。
【0012】
また、上記のようにセミアディティブ法により、配線パターンを形成すると、フォトレジスト層を露光・現像して導電性金属を析出させる際に、フォトレジストにより規制された導電性金属の析出部分に、配線パターンの両脇の長手方向に沿って導電性金属が析出しないえぐれ部が形成されることがある。これは、フォトレジスト層を所望の形状に露光した後、現像する際に、フォトレジストが底部に残留することによって発生するものであることが判った。
【0013】
このフォトレジストが残留するために、その残留物の部分に導電性金属が析出できずに、析出した導電性金属からなる配線パターンの底部に配線パターンの長さ方向に沿って、導電性金属が析出していないえぐれ部が発生するのである。
【0014】
このようなえぐれ部の発生原因となるフォトレジストが残留する要因について詳細には不明であるが、フォトレジスト層を露光し、現像した際に現像残渣が絶縁基板の上の基材導電性金属層(銅層)上の残ってしまうという事実があり、これがえぐれ部を形成する原因となっていることが判った。この未現像残渣の発生を防ぐために、導電性金属層(銅層)を化学研磨して新たに現れた導電性金属層(銅層)の表面を脱脂処理した後、3時間以内にフォトレジスト層を形成し、このように脱脂した後形成されたフォトレジスト層を露光し、次いで現像すれば、未現像残渣が残存しないので、絶縁フィルム上の導電性金属層(銅層)上に、配線パターンの幅方向の内側に食い込むえぐれ部が形成されることなく、絶縁フィルムの表面に対して略垂直な側面を有する配線パターンが形成される。
【0015】
さらに、本発明のプリント配線基板における配線パターンの厚さの配線相互の比較における標準偏差(STDE)(導電性金属層の厚さの標準偏差(STDE))が0.15μm以下であることが好ましい。
【0016】
またさらに、本発明のプリント配線基板は、上記配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)が、0.005〜0.018の範囲内にあることが好ましい。
【0017】
本発明において、上記配線は、通常はプリント配線基板に形成されたインナーリードまたはアウターリードである。
本発明における導電性金属は、基材金属層の表面に電解析出された銅もしくは銅合金であり、さらに、プリント配線基板を形成する絶縁基板の表面に形成されている基材金属層は、NiおよびCrを含む基材金属を介して銅層を有する導電性金属層付き絶縁基板を用いて形成されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明のプリント配線基板は、基材金属層を含む導電性層の表面に所望の形状にパターンニングされた感光性樹脂層を配置して選択的に導電性金属層を析出させる工程を経て基材金属層及び導電性金属からなる配線幅の異なる所望の形状の複数の配線のパターンを形成し、
絶縁基板の表面に基材金属層を介して、導電性金属からなる配線幅の異なる複数の配線のパターンが形成されたプリント配線基板を製造するに際して、
該配線パターンの内で、
線幅が5〜85μmであって、ギャップ幅が15〜95μmである場合に、該配線と隣接する配線との間のギャップにダミー配線が形成されるようにフォトレジスト層を形成し、
該配線と隣接するダミー配線とのギャップを5〜25μmの範囲内になるようにフォトレジスト層を形成して、導電性金属を析出させることにより製造することができる。
【0019】
そして、上記製造方法において、フォトレジスト層を形成する前に、導電性金属層の表面を脱脂処理した後、3時間以内にフォトレジスト層を形成することにより、えぐれ部の発生が有効に防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、導電性金属層付きの絶縁基板の導電性金属層の表面に、フォトレジストを塗布して、これを露光・現像することにより所望の形状のパターンを形成し、このパターンをマスキング材として、導電性金属層の表面に新たに導電性金属を電解析出させて所望の配線パターンを形成するに際して、配線パターンの線幅やピッチ幅によって電解析出する導電性金属の量を制御することができるので、析出した導電性金属の厚さが異なることが少ない。従って、本発明によれば均一性の高いプリント配線基板を得ることができる。
【0021】
殊に本発明によれば、導電性金属層の表面を脱脂処理した後、3時間以内にフォトレジスト層を形成することにより、このフォトレジスト層を露光して現像した際に、現像除去されるはずのフォトレジストが導電性金属層の表面に残存することがなく、従ってセミアディティブ法により、導電性金属(銅)を新たに析出させて配線パターンを形成しても、この配線パターンの側壁底部に長さ方向に沿ったえぐれ部が形成されることがなく、絶縁フィルム表面に対して略垂直の側壁を有する配線パターンを形成することができる。
【0022】
特に本発明は、デバイスホールを有しない厚さ12〜50μmの絶縁基板の表面に配線パターンを形成するチップオンフィルム(COF)に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明のプリント配線基板を製造する際の各工程における断面図である。
【図2】図2は、パターンメッキの電流の集中状態を模式的に示す図である。
【図3】図3は、セミアディティブ法により、析出する導電性金属厚を均一化する方法の例を示す具体例である。
【図4】図4は、線幅/ギャップ幅と、導電性金属の析出厚さとの関係を示すグラフである。
【図5】図5は、表4に示したピッチ、線幅、ギャップ、メッキ厚の関係を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明で規定する配線幅a、ダミー配線幅a'、配線ギャップ幅b、ギャップ幅b'、ピッチ幅Pの関係を示す図である。
【図7】図7は、従来の方法で感光性樹脂層(ドライフィルム)を、導電性金属層の表面に敷設して、露光し、現像工程を経て導電性金属を析出させて得られる配線パターンの断面の例を示す工程図であり、アンダーカットが発生した配線パターンが形成される工程を示すものである。
【図8】図8は、本発明の方法に従って、導電性金属層(銅層)の表面を脱脂した後、3時間以内に感光性樹脂層(ドライフィルム)を、導電性金属層の表面に敷設して、露光し、現像した後、導電性金属を析出させて得られるアンダーカットの発生しない本発明の工程の例を示す工程図である。
【図9】図9は、本発明の方法に従い導電性金属層表面を脱脂した後、感光性樹脂層を形成するまでの時間を変化させたときのアンダーカット(足残り)の発生状況を示した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明のプリント配線基板について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は、本発明のプリント配線基板を製造する際の製造工程により得られる基板の断面の例を示す断面図である。
【0025】
図1に示すように、本発明のプリント配線基板を製造するに際しては、まず、絶縁基板11の表面に基材金属層13を介して導電性金属層15が配置された導電性金属層付き絶縁基板(CCL)10を用意する。
【0026】
ここで絶縁基板としては、ポリイミドフィルムまたはポリアミドイミド樹脂フィルムであることが好ましい。特にこの絶縁フィルムがポリイミドフィルムであることが好ましく、この場合、ポリイミドフィルムの中でも、ピロメリット酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成される全芳香族ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成されるビフェニル骨格を有する全芳香族ポリイミドであることが好ましい。
【0027】
上記のようなCCLにおける絶縁フィルムの厚さは通常は5〜100μmの範囲内、好ましくは12〜75μmの範囲内にある。特に本発明のプリント配線基板がチップオンフィルム(COF)である場合には、デバイスホールを形成せずに、絶縁フィルムを透過した光量の差によって表面に形成された配線パターンの形状および位置を特定することから、充分な透過光量を確保できるように、絶縁フィルムの厚さを12〜50μmの範囲内にすることが特に好ましい。また、上記のような厚さの絶縁フィルムを絶縁基板11として用いることにより、CCL10の裏面側からボンディングツールを絶縁基板11に押しつけてボンディングする際に充分な熱と超音波とを接続するリード部分に伝達させることができる。
【0028】
上記のようなCCL10における基材金属層13は、絶縁基板11の表面に、通常は、ニッケル、クロムなど導電性基材金属を例えばスパッタリング法、真空蒸着法などの方法を利用して形成される。
【0029】
さらに、上記のようにして形成された基材金属層13の表面には導電性金属からなる導電性金属層15が形成されていることが好ましい。ここで導電性金属層15を形成する金属としては、銅若しくは銅合金を用いることが好ましい。
【0030】
この導電性金属層15は、基材金属層13を電極として電解析出させることにより形成することもできるし、無電解メッキ法を採用して形成することもできる。また、真空蒸着など、気相で形成することもできる。
【0031】
このようなCCL10の典型的な断面の例を図1の(a)に示す。
このようなCCL10において、基材金属層13の厚さは、通常は0.005〜0.04μm、好ましくは0.007〜0.025μmの範囲内にある。また、この基材金属層13の表面に形成されている導電性金属層15の厚さは、通常は0.1〜8μm、好ましくは0.1〜1.5μmの範囲内にある。本発明ではこのような厚さを有する導電性金属層15の上に配線パターンを直接形成してもよいが、より精度のよい配線パターンを形成するためには、導電性金属層15の少なくとも一部を、酸洗などにより除去した後、新たに導電性金属を選択的に析出させて配線パターンを形成することが望ましい。本発明において、導電性金属層15を形成する金属としては、後の工程で配線パターンを形成することを考慮すれば、銅または銅合金であることが望ましい。
【0032】
CCL10に予め形成されていた導電性金属層15の少なくとも一部を除去する場合、CCL10に形成されていた導電性金属層15の厚さが、最初に形成されていた導電性金属層の通常は0.1〜100%、好ましくは6〜100%、特に好ましくは6〜99%になるように導電性金属を除去する。このように予め形成されていた導電性金属層15の一部を除去した後、セミアディティブ法により配線パターンを形成することにより、より鮮明な配線パターンを形成することができる。図1(b)は導電性金属層15の一部を除去した状態のCCLの断面図である。なお、導電性金属層15をエッチングする際に用いるエッチング液としては、導電性金属を均一に溶解することができるものであれば特に限定されないが、通常は塩酸などの鉱酸をベースにして塩化鉄、塩化銅、過水硫酸系化合物などを含有するエッチング液を使用することが好ましい。
【0033】
上記のように必要により導電性金属層15の一部を除去した後、あるいは、このような導電性金属層15の除去を行うことなく、図1の(c)に示すように、導電性金属層15の表面にフォトレジスト層20を形成する。
【0034】
従来は、このようにして新たに露出した導電性金属層(銅層)15の表面に直にフォトレジスト層(感光性樹脂層)20を形成し、このフォトレジスト層を露光し、現像すると、図7に示すように導電性金属層15とフォトレジスト層20との境界部分にフォトレジストが残存することがあった。このようにフォトレジストが残存すると、導電性金属を析出させる次の工程でこの残存したフォトレジスト部分には導電性金属が析出できないので、図7に示すように析出した導電性金属にアンダーカットが発生する。このようにアンダーカットが発生すると、配線パターンと下地層を形成する金属の密着面積が減少し、配線パターンの剥がれの原因となる。
【0035】
本発明では、このようなフォトレジストの残留を防止するために種々検討した結果、前記工程で導電性金属をエッチングしてその一部を除去して、導電性金属からなる層の表面を整面し、この整面した導電性金属層の表面を脱脂処理した後、3.5時間以内、好ましくは3時間以内にフォトレジスト層を形成する。このように脱脂処理することにより、導電性金属層表面にある酸化物層などが除去され、フォトレジスト層を露光し、現像した際に現像されたフォトレジスト残渣が導電性金属層表面に残存せず、絶縁フィルムに対して垂直に切り上がったフォトレジスト層の側壁が形成される。
【0036】
従って、本発明の方法に従って、導電性金属層表面を脱脂処理した後に3.5時間以内、好ましくは3時間以内にフォトレジスト層を形成して露光し、現像した後に導電性金属を析出させて形成された配線パターンは、絶縁フィルムの表面から垂直に立ち上がったシャープな形状を有しており、アンダーカットなどは発生しない。このために下地層の導電性金属と、析出した導電性金属とが高い接着強度で接合しており、析出することにより形成された配線パターンが基材である導電性金属から剥離することがない。
【0037】
上記のような脱脂工程で使用する溶媒としては、通常は、酸性クリーナー、有機溶媒が使用される。ここで使用される有機溶媒としては、新たに露出した無機酸や導電性金属層表面に形成された酸化膜などの不純物を除去できる溶媒を使用する。このような有機溶媒の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセルソルブなどのアルコール類、アセトン、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。また、本発明で使用される酸性クリーナーとしては、例えば3〜7容量%硫酸を含有するクリーナーを使用することができる。なお、これらの溶媒は単独であるいは組合わせて使用することができる。このような溶媒を、布、不織布等にしみ込ませて、新たに露出した導電性金属層の表面を清拭するか、溶媒中に浸漬して表面を清拭する。脱脂工程に特に制限はないが、上記のような新たに露出した導電性金属面を一方向にこすって、導電性金属層の表面にある導電性金属以外のものを拭い去るようにするか、溶媒中に浸漬して脱脂することが好ましい。
【0038】
本発明において、上記のような脱脂工程は、常温で行うこともできるが、脱脂に用いる溶液を20〜40℃の温度にして、10〜120秒、好ましくは20〜90秒間溶液を接触させることが好ましい。このようにして脱脂することにより、新たに露出した導電性金属層の表面を清浄にすることができ、このような表面状態は通常は3.5時間、好ましくは3時間維持される。
【0039】
このようにして脱脂処理を行った後、この脱脂処理された導電性金属層表面にフォトレジスト層(感光性樹脂層)を3.5時間以内、好ましくは3時間以内に敷設する。すなわち、新たに露出した導電性金属層の表面に酸化物あるいはその他の成分が付着しないうちにフォトレジスト得層を形成することにより、感光し、露光した後に、この導電性金属層の表面の横断面の両縁にフォトレジストの足残りが発生せず、絶縁フィルムに対して略垂直に立ち上がった側壁を有する配線パターンを形成することができる。
【0040】
ここで使用するフォトレジストとしては、露光することにより、露光部分が硬化するタイプのフォトレジストを使用することもできるし、露光することにより、露光部分が現像液に可溶になるフォトレジストを使用することもできる。また、フォトレジスト層は、フォトレジストインクを塗布して形成することもできるし、シート状に予め形成されたフォトレジストシートを貼着して形成することもできる。
【0041】
こうして形成されるフォトレジスト層20の厚さは、形成しようとする配線パターンの厚さと略同一にすることが望ましく、通常は、5〜20μm、好ましくは8〜15μmである。
【0042】
こうしてフォトレジスト層20を形成した後、所望のパターンが形成されたマスク22をフォトレジスト層20の上に配置して、光源24から光線を照射して、図1の(e)に示すように、フォトレジスト層20を露光・現像して残存するフォトレジストからなるパターン28を形成する。
【0043】
本発明においては、上記のようにしてフォトレジストからなるパターンを形成した後、図1の(f)に示すように、上記のパターン28間に露出する導電性金属層15に電力を供給して、表面にある導電性金属層15の表面に新たに導電性析出金属層15'を電解析出させる。
【0044】
一般にプリント配線基板に形成される配線パターンには、図2に示すように、パターン28の幅によって、形成される配線パターンに線幅が狭い配線パターン30と線幅の広い配線パターン31が混在する。線幅の狭い配線パターン30は、比較的厚い配線パターンを形成しやすいが、配線幅の広い部分では、図2に示すように比較的薄い配線パターンが形成されやすい。こうした配線パターンの導電性金属層の厚さは、ピッチ(P)幅が広い場合には僅かな差であり、特に問題は生じなかった。しかしながら、電子部品の実装密度が高くなり、ピッチ幅(P)が狭くなるに従って、僅かな配線パターンの厚さの差が問題視されるに至っている。具体的には、一つの電子部品実装用のプリント配線基板に線幅の広い配線パターンと線幅の狭い配線パターンが共存する場合、配線パターンの厚さによって配線パターンの電気抵抗値などにも差が生じて電子部品が誤作動することがあり、また、ボンディングなどにより他の装置の電極との間で電気的接続を確立させようとする場合に接続不良を招来するなどの問題が生ずることがある。
【0045】
そこで、本発明では、例えばダミー配線を形成することなどにより、電解液が集中することおよび電流密度の上昇することを防止して、均質な配線を形成している。
すなわち、本発明では、配線パターンの内で、ピッチ幅Pが、配線パターンの線幅とギャップ幅との合計からなり、ピッチ幅Pが、50μm<P≦100μmとなる配線パターンの間にダミー電極を配置して、該プリント配線基板を形成する配線パターンの導電性金属の厚さを8.5〜9.2μmの範囲内で均一化されてなるようにして、この導電性金属厚さの範囲内で配線パターンを構成する導電性金属の厚さを均一化する。
【0046】
例えば、ピッチ幅が広い箇所では、図3(a)に示すように、配線間にダミー配線41を形成することにより、各配線における電流密度の上昇を抑制することができ、均一性の高いプリント配線基板が得られる。
【0047】
本発明のプリント配線基板は、上記のようなピッチ幅と配線幅と析出金属厚との関係を利用して、絶縁基板の表面に基材金属層を介して、導電性金属からなる配線幅の異なる複数の配線パターンを形成するものである。
【0048】
本発明においては、図6に示すように、本発明のプリント配線基板に形成されている配線幅のうち50μm超100μm以下の配線の配線幅をa、このプリント配線基板に形成されているダミー配線のダミー配線幅をa'、このプリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの隣接する配線との距離である配線ギャップ幅をb、このプリント配線基板に形成されている配線と隣接するダミー配線との距離であるギャップ幅をb'、このプリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの配線のピッチ幅をPとしたときに、本発明のプリント配線基板が下記の(1)〜(3)に記載の条件のいずれか一つを満足することにより、均質な配線パターンを形成することができる。
【0049】
(1)全ての配線におけるピッチ幅が50μm以下の狭ピッチ幅である。
(2)全ての配線におけるピッチ幅が50μm超100μm以下の広ピッチ幅である。
(3)上記プリント配線基板において、配線におけるピッチ幅が50μm以下の配線と、配線におけるピッチ幅が50μm超100μm以下の配線とが混在する場合において、該プリント配線基板に形成されている配線幅のうち50μm超100μm以下の配線の配線幅をa、該プリント配線基板に形成されているダミー配線のダミー配線幅をa'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの隣接する配線との距離である配線ギャップ幅をb、該プリント配線基板に形成されている配線と隣接するダミー配線との距離であるギャップ幅をb'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの配線のピッチ幅をPとしたときに、
(A)aμm≧Pμm×0.5、b≦Pμm×0.5、25μm<aμm≦95μm;
(B) 該プリント配線基板がダミー配線を有し、a+a'μm≧Pμm×0.5、b'≦Pμm×0.25、5μm≦aμm≦85μm、5μm≦a'μm≦85μm;
のAまたはBのいずれかを満足すれば足りる。
【0050】
特に本発明のプリント配線基板では、線幅とギャップとの比(線幅/ギャップ)を管理することで導電性金属の厚さを、8.5〜9.2μmの範囲で均一化できる。
例えば、線幅/ギャップ幅が、1.0以上、好ましくは1.0〜1.2の場合、導電性金属の厚さは、通常は、8.6〜9.0μm、好ましくは8.6〜8.7μmの範囲内になり、
また線幅とギャップとの比(線幅/ギャップ)が1.0未満0.5以上の場合、導電性金属の厚さが通常は8.6〜8.9μm、好ましくは8.6〜8.8μmの範囲内になり、
線幅とギャップとの比(線幅/ギャップ)が0.5未満、好ましくは0.4μm以上0.5μm未満の場合、導電性金属の厚さが通常は8.9μm〜9.2μm、好ましくは8.9〜9.1μmの範囲内になる。
【0051】
なお、本発明においてダミー配線は、このプリント配線基板においては、電気的な接続を形成し得ない配線である。
本発明においては、配線間に多少のばらつきは生ずるものの、上記の導電性金属の厚さの標準偏差(STDE)は、通常は、0.15μm以下、好ましくは0.13〜0.05μmの範囲内にあることが特に望ましい。
【0052】
また、上記のようにして形成されたプリント配線基板の中で該配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)を、好ましく0.005〜0.018の範囲内に調整された配線は、非常に均質性が高く、ボンディングの際に安定した接続を確立することができると共に、配線自体の電気抵抗値を一定の値に安定させることができる。
【0053】
このように配線幅、ギャップ幅との関係を調整することにより、セミアディティブ法の問題点とされていた析出導電性金属の厚さのばらつきを解消することができ、均一性の高い配線パターンを得ることができる。
【0054】
このようにして形成される配線は、通常は、プリント配線基板に直線的に形成されたインナーリードまたはアウターリードである。このようなインナーリードあるいはアウターリードに形成されている配線(リード)は同一の線幅を有していないことがあり、配線幅あるいはピッチ幅の異なるリードが隣接して形成されていることがある。
【0055】
上記のようにしてこの絶縁基板11の表面に形成された導電性金属層15、この導電性金属層15の表面に形成された所望の形状を有するパターン28、このパターンが形成されていない導電性金属層15の表面に析出した導電性金属層15'からなる積層体を図1の(f)に示す。ここで、導電性金属層15と析出した導電性金属層15'は、通常は銅あるいは銅合金のような同一の金属で形成されているので、導電性金属層15と析出した導電性金属層15'とは一体化するので、本発明では、特に区別する必要がない限り、導電性金属層15と表記する。
【0056】
こうして形成された積層体を例えばアルカリ洗浄することにより、フォトレジストからなるパターン28を除去することができる。パターン28が除去された状態を図1の(g)に示す。
【0057】
上記のようにしてパターン28を除去すると、パターン28が形成されていた部分には導電性金属層15が露出し、その下部には基材金属層13が存在している。
パターン28が形成されていた部分にある導電性金属層は、非常に薄いので、通常のエッチング液と短時間接触することにより除去することができる。また、この際に、基材金属層13を形成する金属の一部、例えばニッケルなども除去することができる。しかしながら、基材金属層13を形成しているクロムなどの金属は、上記のようなエッチング液との接触によって完全に除去することは困難である。このような場合、上記のようなエッチング工程を経た後、過マンガン酸カリウムのような酸化性のエッチング剤とこの基板とを接触させることにより、クロムなどの基材金属層13を形成していた金属を除去するか、あるいは、電気的に不働態化することができる。
【0058】
また、酸化性の処理液を用いることにより、絶縁基板表面を僅かに溶解することができるので、例えばスパッタリング法などにより基材金属層を形成した場合に、絶縁基板表面に食い込んだ基材金属を絶縁基板表面と共に除去することができる。さらに、スパッタリング法あるいは真空蒸着法などによって絶縁基板を形成する樹脂に生じた水酸基、アミド基などの極性基を含有する表面部分も同時に溶解除去されるので、イオンマイグレーションなどによる短絡が発生しにくいプリント配線基板を得ることができる。
【0059】
上記のようにして配線パターンを形成した後、通常は、電子部品と接続するインナーリードおよびこの配線基板と外部にある配線とを接続するアウターリードを露出するようにソルダーレジスト層を形成する。ソルダーレジスト層は、ソルダーレジストインクを所望の形状に開口したスクリーンを用いて塗布することにより形成することもできるし、ソルダーレジスト層を形成するフィルムを所望の形状に打ち抜いて、所定の位置に貼着することにより形成することができる。
【0060】
こうしてソルダーレジスト層を形成した後、ソルダーレジスト層から露出したインナーリードおよびアウターリードの表面に、スズメッキ層、ハンダメッキ層、金メッキ層、ニッケル・金メッキ層などのメッキ層を形成する。このようなメッキ層の厚さは、通常は0.1〜1μm、好ましくは0.2〜0.6μmの範囲内にある。なお、上記説明は、ソルダーレジスト層を形成した後、メッキ層を形成する方法に関するものであるが、メッキ層は、ソルダーレジスト層を形成する前に形成してもよく、さらにソルダーレジスト層を形成する前に配線パターン全体に薄いメッキ層を形成し、ソルダーレジスト層を形成した後、ソルダーレジスト層から露出したリード部分に改めてメッキ層を形成することもできる。
【0061】
このように本発明のプリント配線基板は、セミアディティブ法により配線パターンを形成する際に析出する導電性金属層の厚さを、配線パターンの線幅にかかわりなく一定の範囲内に調整することができる。このように導電性金属層の厚さを均一化することにより、配線パターンに電流が流れた際に生ずる抵抗値を一定にすることができ、電子部品に安定した電力あるいは電気信号を供給することができるので、電子部品の誤作動などを防止することができる。さらに、セミアディティブ法により均一性の高い配線パターンを形成することができる。セミアディティブ法は、サブトラクティブ法と比較して線幅の細い配線パターンを形成することが可能である半面、形成された配線パターンの厚さが一定しないという問題点を有しているが、本発明によれば均質性の高い細線を有するプリント配線基板を形成することができる。
【0062】
特にプリント配線基板中にピッチ幅あるいは線幅の異なる配線が混在していても、配線の太さによって、配線の厚さが変動しないという特性を有している。このような特性は実装される電子部品の高集積化がさらに進むにつれて、極めて重要になってくる。
【0063】
さらに、本発明のプリント配線基板は、絶縁フィルム上に形成された導電性金属層を部分的にエッチングしてその導電性金属層表面に形成された配線パターンの下端部にアンダーカットが形成されることがなく、配線パターンが強固に導電性金属層表面に接合し、形成された配線パターンが剥離することがない。
【実施例】
【0064】
次に本発明の実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
厚さ38μmのポリイミドフィルムの表面に厚さ0.025μmのニッケル、クロムからなる基材金属層が形成され、この基材金属層の表面に厚さ1.3μmの銅層が形成されたCCLを用意した。
【0065】
このCCLの導電性金属をエッチング液と接触させて、導電性金属の厚さを0.3μmに調整した。
このようにして表面にある導電性金属をエッチングして除去した後、この新たに露出した絶縁製金属層の表面を上村工業(株)製のスルカップACL-067を水で13%に希釈した液(30℃)に40秒間含浸させて脱脂した。このようにして脱脂した後、1時間後にフォトレジストをラミネートした。
【0066】
このように調整したCCLの導電性金属の表面に乾燥厚が厚さ15μmとなるようにフォトレジストをラミネートして、線幅/ギャップが表1に示すようになるように露光・現像した。
【0067】
上記のようにして露光したフォトレジスト層を電子顕微鏡で観察したが、図9の1hに示すようにフォトレジストの足残りは発生していなかった。
ここで形成される配線パターンはピッチ幅が50μm以下の狭ピッチのプリント配線基板でありダミー電極は形成されていない。
【0068】
上記のようなパターンを用いて常法に従って、セミアディティブ法によりプリント配線基板を製造した。
こうして形成された配線パターンの厚さを、接触式膜厚計であるニコンデジマイクロMD-5C(株式会社ニコン製)を用いて、3ピースについて同一箇所を2回測定した。
【0069】
上記の方法により形成されたプリント配線基板の配線パターンの平均厚さ(AVE)、配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)、配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)を求めた。
【0070】
結果を表1および図5に示す。
また、上記のようにしてフォトレジストの足残りが発生していないので、足残りに起因したアンダーカットが発生することはなかった。
【0071】
〔実施例2〕
実施例1において、ピッチ幅を表1に示すように50μm超100μm以下にした以外は同様にしてセミアディティブ法によりプリント配線基板を製造した。
【0072】
なお、この実施例2においても、実施例1と同様に表面にある導電性金属をエッチングして除去した後、この新たに露出した絶縁製金属層の表面を上村工業(株)製のスルカップACL-067を水で13%に希釈した液(30℃)に40秒間含浸させて脱脂した。このようにして脱脂した後、1時間後にフォトレジストをラミネートした。
【0073】
このようにしてフォトレジスト層を形成した後、フォトレジストを露光し、現像して電子顕微鏡を観察したが、図9と同様に、足残りは発生していなかった。
得られたプリント配線基板について、実施例1と同様に配線パターンの厚さを測定した。
【0074】
上記の方法により測定したプリント配線基板の配線パターンの平均厚さ(AVE)、配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)、配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)を実施例1と同様にして求めた。
【0075】
結果を表1および図5に示す。
また、上記のようにして形成された配線パターンを電子顕微鏡を用いて観察したが、アンダーカットは発生していなかった。
【0076】
〔実施例3〕
ピッチ幅を表1に示すように50μm以下の狭いピッチと50μm超100μm以下の広ピッチを混在させた以外は実施例1と同様にして下記条件を満たすように形成した。
aμm≧Pμm×0.5、
bμm≦Pμm×0.5、
25μm<aμm≦95μm
なお、この実施例3においても、実施例1と同様に表面にある導電性金属をエッチングして除去した後、この新たに露出した絶縁製金属層の表面を上村工業(株)製のスルカップACL-067を水で13%に希釈した液(30℃)に40秒間含浸させて脱脂した。このようにして脱脂した後、1時間後にフォトレジストをラミネートした。
【0077】
得られたプリント配線基板について、実施例1と同様に配線パターンの導電性金属のメッキ厚を測定した。
上記の方法により測定したプリント配線基板の配線パターンの平均厚さ(AVE)、配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)、配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)を実施例1と同様にして求めた。
【0078】
結果を表1および図5に示す。
また、上記のようにして形成された配線パターンを電子顕微鏡を用いて観察したが、アンダーカットは発生していなかった。
【0079】
〔実施例4〕
ピッチ幅を表1に示すように50μm以下の狭いピッチと50μm超100μm以下の広ピッチが混在するとき、50μm超100μm以下の広ピッチである部分(ピッチ幅100μm)に、下記条件を満たすようにダミーパターンを形成した。他の条件は実施例1と同一である。
【0080】
このようにしてフォトレジスト層を形成した後、フォトレジストを露光し、現像して電子顕微鏡を観察したが、図9と同様に、足残りは発生していなかった。
a+a'μm≧Pμm×0.5、
b'μm≦Pμm×0.25、
5μm≦aμm≦85μm、
5μm≦a'μm≦85μm、
得られたプリント配線基板について、実施例1と同様に配線パターンの導電性金属のメッキ厚を測定した。
【0081】
上記の方法により測定したプリント配線基板の配線パターンの平均厚さ(AVE)、配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)、配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)を実施例1と同様にして求めた。
【0082】
結果を表1および図5に示す。
また、上記のようにして形成された配線パターンを電子顕微鏡を用いて観察したが、アンダーカットは発生していなかった。
【0083】
〔比較例1〕
表1に示すように20μm、30μm、100μmピッチが混在している以外は実施例1と同様にプリント配線基板を製造した。
得られたプリント配線基板について、実施例1と同様に配線パターンの導電性金属のメッキ厚を測定した。
【0084】
上記の方法により測定したプリント配線基板の配線パターンの平均厚さ(AVE)、配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)、配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)を実施例1と同様にして求めた。
結果を表1および図5に示す。
【0085】
〔比較例2〕
表1に示すように20μm、40μm、75μmピッチが混在している以外は実施例1と同様にプリント配線基板を製造した。
【0086】
得られたプリント配線基板について、実施例1と同様に配線パターンの導電性金属のメッキ厚を測定した。
上記の方法により測定したプリント配線基板の配線パターンの平均厚さ(AVE)、配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)、配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)を実施例1と同様にして求めた。
結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

上記表1に示した結果から明らかなように、本発明のプリント配線基板は形成される配線パターンの厚さ(メッキ層の厚さ)にバラツキがなく、均質性の高い配線パターンが形成される。特に並行して多数の配線が形成され、しかもその配線のピッチ幅が異なる場合さらには、ピッチ幅が50μmを境にして大きく異なる場合には、本発明のプリント配線基板によれば、よりピッチ幅が大きく異なるにも拘らず、高い均質性を有する配線パターンを形成することができる。
【0088】
〔実施例5〕
実施例1において、脱脂工程から10分以内にフォトレジストシートを貼着した以外は同様にしてプリント配線基板を形成したが、フォトレジストの足残りは認められなかった。
【0089】
〔実施例6〕
実施例1において、脱脂工程から2時間後にフォトレジストシートを貼着した以外は同様にしてプリント配線基板を形成したが、フォトレジストの足残りは殆ど認められなかった。
【0090】
〔実施例7〕
実施例1において、脱脂工程から3時間後にフォトレジストシートを貼着した以外は同様にしてプリント配線基板を形成したが、フォトレジストの足残りはわずかに認められた。
【0091】
〔実施例8〕
実施例1において、脱脂工程から3時間15後にフォトレジストシートを貼着した以外は同様にしてプリント配線基板を形成したが、フォトレジストの足残りはわずかに認められたが、配線パターンの剥離強度の低下に至るような大きな足残りは発生しなかった。
【0092】
〔比較例3〜7〕
実施例1において、脱脂工程から4時間(4h、比較例3)、7時間(7h、比較例4)、18時間(18h、比較例5)、20時間(20h、比較例6)、24時間(24h、比較例7)経過した後、フォトレジストシートを貼着した後、露光し、現像を行い、このときの足残りの状態を実施例と同様にして観察した。
【0093】
脱脂後4時間経過後は、足残りの残留が顕著であり、4時間を超えても足残りの発生度合いは大幅には増加しない。
しかし、処理後1時間経過後にフォトレジストシートを貼着した実施例では、フォトレジストの足残りが極めて少なく、従って、セミアディティブ法を利用することにより、形成される配線パターンの側壁底部にアンダーカット部が形成されにくいことが明白である。特に3.5時間以内、好ましくは3時間以内にフォトレジスト層を形成すると、殆どアンダーカットは発生しないのに比し、脱脂後4時間を超えてフォトレジスト層を形成すると時間の経過と共にアンダーカットが大きくなり、約16時間まではこのアンダーカットは時間の経過と共に大きくなるが16時間を超えるとそれ以上のアンダーカットの増大は顕著には認められなくなる。
【符号の説明】
【0094】
10・・・CCL
11・・・絶縁基板
13・・・基材金属層
15・・・導電性金属層
15'・・・析出した導電性金属層
22・・・マスク
24・・・光源
28・・・パターン
30・・・線幅が狭い配線パターン
31・・・線幅が広い配線パターン
41・・・ダミー配線
42・・・太い配線
43・・・細い配線
a・・・プリント配線基板に形成されているピッチ幅が50μm超100μm以下の配線の配線幅
a'・・・プリント配線基板に形成されているダミー配線のダミー配線幅
b・・・プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの隣接する配線との距離である配線ギャップ幅
b'・・・プリント配線基板に形成されている配線と隣接するダミー配線との距離であるギャップ幅
P・・・プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの配線のピッチ幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の表面に基材金属層を介して、基材金属層を含む導電性層の表面に所望の形状にパターンニングされた感光性樹脂層を配置して選択的に導電性金属層を析出させる工程を経て基材金属層及び導電性金属層からなる配線幅の異なる複数の配線のパターンが形成されてなり、
該プリント配線基板が下記の(1)〜(3)に記載の条件のいずれか一つの条件を満足するものであるプリント配線基板;
(1)すべての配線におけるピッチ幅が50μm以下の狭ピッチ幅である;
または
(2)すべての配線におけるピッチ幅が50μm超100μm以下である;
(3)上記プリント配線基板において、配線におけるピッチ幅が50μm以下の配線と、配線におけるピッチ幅が50μm超100μm以下の配線とが混在する場合において、該プリント配線基板に形成されている配線のうちピッチ幅が50μm超100μm以下の配線の配線幅をa、該プリント配線基板に形成されているダミー配線のダミー配線幅をa'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの隣接する配線との距離である配線ギャップ幅をb、該プリント配線基板に形成されている配線と隣接するダミー配線との距離であるギャップ幅をb'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの配線のピッチ幅をPとしたときに、
(A)aμm≧Pμm×0.5、bμm≦Pμm×0.5、25μm<aμm≦95μm;
(B)該プリント配線基板がダミー配線を有し、a+a'μm≧Pμm×0.5、b'μm≦P×0.25、5μm≦aμm≦85μm、5μm≦a'μm≦85μm
のいずれかを満足する。
【請求項2】
上記絶縁基板の表面に基材金属層を介して、基材金属層を含む導電性層の表面に所望の形状にパターンニングされた感光性樹脂層を配置して選択的に導電性金属層を析出させる工程を経て基材金属層及び導電性金属層からなる配線幅の異なる複数の配線のパターンが形成されてなり、
該プリント配線基板が
(3)上記プリント配線基板において、配線におけるピッチ幅が50μm以下の配線と、配線におけるピッチ幅が50μm超100μm以下の配線とが混在しており、該プリント配線基板に形成されている配線のうちピッチ幅が50μm超100μm以下の配線の配線幅をa、該プリント配線基板に形成されているダミー配線のダミー配線幅をa'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの隣接する配線との距離である配線ギャップ幅をb、該プリント配線基板に形成されている配線と隣接するダミー配線との距離であるギャップ幅をb'、該プリント配線基板に形成されているダミー配線を無視したときの配線のピッチ幅をPとしたときに、
(A)aμm≧Pμm×0.5、bμm≦Pμm×0.5、25μm<aμm≦95μm;
(B)該プリント配線基板がダミー配線を有し、a+a'μm≧Pμm×0.5、b'μm≦P×0.25、5μm≦aμm≦85μm、5μm≦a'μm≦85μm
のいずれかを満足することを特徴とする請求項第1項記載のプリント配線基板。
【請求項3】
上記配線パターンの内で、ピッチ幅Pが、配線パターンの線幅とギャップ幅との合計からなる場合おいて、ピッチ幅Pが、50μm<P≦100μmとなる配線パターンの間にダミー電極を配置して、該プリント配線基板を形成する配線パターンの導電性金属の厚さを8.5〜9.2μmの範囲内で均一化されてなるようにすることを特徴とする請求項第1項または第2項記載のプリント配線基板。
【請求項4】
上記絶縁フィルムと接触する配線パターンの長手方向の両脇にそって、絶縁フィルムに配線パターンが接触していないアンダーカット部が形成されていないことを特徴とする請求項第1項乃至第3項のいずれかの項記載のプリント配線基板。
【請求項5】
上記導電性金属層の厚さの標準偏差(STDE)が0.15μm以下であることを特徴とする請求項第1項乃至第4項のいずれかの項記載のプリント配線基板。
【請求項6】
上記配線パターンの平均厚さ(AVE)に対する該配線パターンの厚さの標準偏差(STDE)の比(STDE/AVE)が、0.005〜0.018範囲内にあることを特徴とする請求項第1項乃至第5項のいずれかの項記載のプリント配線基板。
【請求項7】
上記配線が、インナーリードまたはアウターリードであることを特徴とする請求項第1項乃至第6項のいずれかの項記載のプリント配線基板。
【請求項8】
上記導電性金属層が、基材金属層の表面に電解析出された銅もしくは銅合金からなることを特徴とする請求項第1項乃至第7項のいずれかの項記載のプリント配線基板。
【請求項9】
上記プリント配線基板が、デバイスホールを有しない厚さ12〜50μmの絶縁基板の表面に直接配線パターンが形成されてなるチップオンフィルム(COF)であることを特徴とする請求項第1項乃至第8項のいずれかの項記載のプリント配線基板。
【請求項10】
上記プリント配線基板が、絶縁基板の表面にNiおよびCrを含む基材金属を介して銅層を有する導電性金属層付き絶縁基板を用いて形成されてなることを特徴とする請求項第1項乃至第9項のいずれかの項記載のプリント配線基板。
【請求項11】
基材金属層を含む導電性層の表面に所望の形状にパターンニングされた感光性樹脂層を配置して選択的に導電性金属層を析出させる工程を経て基材金属層及び導電性金属からなる配線幅の異なる所望の形状の複数の配線のパターンが形成され、
絶縁基板の表面に基材金属層を介して、導電性金属からなる配線幅の異なる複数の配線のパターンが形成されたプリント配線基板を製造するに際して、
該配線パターンの内で、
線幅が5〜85μmであって、ギャップ幅が15〜95μmである場合に、該配線と隣接する配線との間のギャップにダミー配線が形成されるようにフォトレジスト層を形成し、
該配線と隣接するダミー配線とのギャップを5〜25μmの範囲内になるようにフォトレジスト層を形成して、導電性金属を析出させることを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項12】
上記フォトレジスト層を形成する前に、導電性金属層の表面を脱脂処理した後、3時間以内にフォトレジスト層を形成することを形成することを特徴とする請求項第11項記載のプリント配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−29601(P2011−29601A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111003(P2010−111003)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】